説明

多組成樹脂ヘルドおよびその製法

【課題】アイおよび2つの端部小穴を有するヘルド本体を含むヘルドを提供する。
【解決手段】ヘルド本体11は、異なる樹脂材料および/または複合材料から、望ましくは流し込みか多組成射出成形によって、製造される。それはヘルド本体の長さ方向Lに互いに続く、少なくとも2つの長手方向部分14、15、16を備える。直接互いに接合される2つの長手方向部分14、15または15、16は、異なる樹脂材料から、または異なる複合材料からなる。複合材料は、添加要素を含む樹脂母材からなる。長手方向部分を有するヘルド本体11は、単一の製造工程で製造され、隣接する長手方向部分は、互いに接合される。長手方向部分各々に異なる樹脂または複合材料を用いることにより、関係する長手方向部分の所望の特性と合う部材とすることができる一方、ヘルド10を経済的に製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は織機のヘルド枠のためのヘルドに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘルドは、おおよその長さ方向の中央に、たて糸を保持するためのアイ(糸穴)を有するヘルド本体を備えている。ヘルドにより制御されるたて糸は、ひ口を開閉するためのヘルド枠の動作によって位置決めされる。ヘルドは大きな応力にさらされる。
【0003】
現代の織機は高速度で稼働する。これはすなわち、織機に配置されるヘルド枠およびヘルドが鋭く加減速されることを意味する。アイによって案内されるたて糸と、2つの隣接したヘルド間を通過する別のヘルド枠により制御されるたて糸は、ヘルドに対して運動するので、ヘルドを摩耗させることになる。たて糸として使用する糸にもよるが、この糸により極端に急速なヘルドの摩耗が引き起こされる。これらのヘルドは交換しなければならないが、これにより広範囲なそして高価につく織機停止がおこる。
【0004】
平坦な鋼片または二重ワイヤからなるヘルド本体が特許文献1に説明されている。樹脂材料が平坦な鋼片上の端部小穴(耳穴)の部分に吹き付けられ、ヘルド枠のヘルド支持レールと接触するそれらの端部小穴の部分に少なくとも塗布される。このようにして、制動および騒音低減が達成される。
【0005】
特許文献2は、さらに、全面的に樹脂でヘルドを製造する可能性を説明している。樹脂材料は、各種の繊維撚り糸からなるブレードホース(braided hose)に接合される樹脂母材としての役割を担う。ヘルド製造のために、この複合材料はバルクストックとして製造されて、その後所望の長さに切断される。アイおよび端部小穴は、続いて熱可塑性成形工程により形成される。
【0006】
ヘルドの糸を案内する領域は、特に大きな摩耗にさらされる。このために、ヘルドのアイは特に耐摩耗性のあるように作製されなければならない。この理由により金属製のヘルド本体が多く用いられている。しかしながら、そのような金属ヘルド本体は比較的に大きな質量を有する。使用される材料にもよるが、さらに、ヘルド本体の錆の発生を止めるために、特にヘルドが水噴射ジェット織機において使われる場合は、表面処理が必要となろう。
【0007】
他方、全面的に樹脂から作成される樹脂ヘルドも知られている。糸を案内する部分は特に耐摩耗性でなければならないが、耐摩耗性樹脂または複合材料からヘルド本体を製造することは、しかしながら、きわめて高くつく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】スイス国特許第601532号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0403429号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、経済的に製造できる、軽量な耐摩耗性ヘルドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、ヘルドのヘルド本体は、多数の異なる樹脂または複合材料から製造される。ヘルド本体は、それに沿って互いに接合される少なくとも2つ、望ましくは3〜5の長手方向部分からなる。互いに直接隣接するヘルド本体の2つの長手方向部分は、異なる樹脂または複合材料からなる。長手方向の何れの1つの部分も、1つの一様な樹脂または複合材料が使われる。
【0011】
このようにして、ヘルド本体の長手方向部分ごとに、この長手方向の領域に必要とされる特性を備えた樹脂または複合材料を使用することが可能となる。例えば、アイを有する長手方向部分は、ヘルド本体の別の長手方向部分を製造するために用いられる樹脂または複合材料より、更に耐摩耗性を有する樹脂または複合材料から作成され得る。端部小穴の領域では、ヘルド支持レールに対して良好な摺動特性を備え、大きな耐久性を備えた、樹脂または複合材料が使われ得る。
【0012】
ヘルド本体が流し込みまたは射出成形される際に、ヘルド本体の長手方向部分は金型内で互いに接合され、その後の接合工程、例えば接着または溶接は必要ない。個々の長手方向部分間の固定結合は、したがって1工程ステップで、換言すれば、ヘルド本体が流し込みまたは射出成形される時に形成される。ヘルド本体を製造するために多組成射出成形が使用されるのが望ましい。隣接する長手方向部分のための、流動性の液体または粉体材料が、順にまたは同時に、金型に入れられ、そしてそれらがなお金型内にある間に、移行個所で互いに接合する。特に耐摩耗性樹脂材料は、製造金型のどの空洞にも注入するというわけにはいかない。本発明は、ヘルド本体のための、その特により低い程度の摩耗にさらされる長手方向部分の設計の自由度を増すことを可能とする。所望の形状を流し込み成形するのに適当な樹脂または複合材料を、このような長手方向部分のために使うことができる。ヘルド本体に使用するすべての樹脂は熱可塑性樹脂である。
【0013】
2つの隣接する長手方向部分の間の移行個所は、いかなる特別な成形も必要としない平断面として形成されると都合がよく、それがヘルドの製造をさらに簡単にする。これに代わるものとして、2つの隣接する長手方向部分は、2つの長手方向部分間の接触領域を増すために、補完的な突出部および/またはへこみを備えることもできる。ヘルド本体が金型内で製造される際に、2つの長手方向部分の間に確実なかみ合わせに基づく接合個所も形成され得る。
【0014】
ヘルド本体の長手方向部分の各々は、1つの一様な樹脂または複合材料から成るのが好ましい。長手方向部分のいずれの1つのも、従って、1つの樹脂または複合材料だけが使われる。2つの連続した長手方向部分間の移行領域において、2つの長手方向部分の間に、したがってまた2つの異なる合成樹脂または複合材料の間に、ある程度の重複部分が作成される場合であっても、これは当てはまる。2つの異なる樹脂または複合材料間のこの種類の重複部分は、しかしながら、2つの長手方向部分間の重なり合う部分が特に最大10〜15mmまでに制限される。
【0015】
少なくとも1つの長手方向部分が複合材料からなると都合がよく、その場合樹脂は、添加要素を組み込む樹脂母材として作用する。添加要素は、短繊維(ウィスカーとして知られる)および/または球面要素および/または別の組織体で構成され得る。このようにして、例えば、樹脂母材として作用する樹脂材料の耐摩耗性および/または引張強さを、さらに増すことができる。炭素および/またはガラスおよび/またはセラミックおよび/または金属および/または耐摩耗性樹脂が、添加要素の材料として適当である。
【0016】
以下の合成樹脂の1つ以上が、ヘルド本体の長手方向部分を製造するための樹脂として使用できる。ポリアミド、コポリマー、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、フェノール樹脂、など。これらの樹脂が、単独で、または添加要素と組み合わせて複合材料として、長手方向部分に用いられ得る。
【0017】
ヘルドは、アイを含む中心長手方向部分を備えることが望ましい。特に、2つの長手方向の端部区間も備えられ、それぞれがヘルドの端部小穴のうちの1つを含む。中心長手方向部分は、移行長手方向部分によって、2つの長手方向端部区間の各々に接続してもよい。ヘルドがこのように3つまたは5つの長手方向部分に分けられる場合、製造のため各場合において、使用する樹脂または複合材料は、特に関係する長手方向部分の機能に適応させることができ、従って、特に長い耐用年数を有するヘルドを作成できる。同時に、高価な樹脂または複合材料の使用は、このような材料の使用を必要とする特別な長手方向部分に限定できる。
【0018】
1つの実施例においては、アイを含む長手方向部分は、最も耐摩耗性で、従って、特に、複合材料から製造される。逆に、移行長手方向部分は、耐摩耗性でない添加要素のない樹脂材料、たとえばポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリカーボネート、から製造され得る。ポリアミドは、それ単独で、または添加要素と組み合わせて複合材料として、製造に使われてもよく、アイを含む中心長手方向部分のために特に考慮されてもよい。
【0019】
いかなる挿入物も使わずに、例えば、アイがヘルド本体中に、またはその中心長手方向部分中に直接形成されると、ヘルドの製造は簡単になる。アイとして留め具(maillon)を挿入する必要はない。特別な場所でヘルド本体を補強するために必要であるか、それが望ましい場合、ヘルド本体に、短い「ウィスカー」の10倍を超えるような長繊維またはプレート状をした要素、例えば金属板、からなる補強を取り入れることも可能である。金属板の形の補強は、例えば、2つの連続した長手方向部分の間の移行個所に設けら得る。
【0020】
ヘルドとそのヘルドのための製法の利点のある実施態様は、従属する特許請求の範囲および以下の記載から理解されるであろう。これらの記載は本発明の主要な特徴に限定されている。図面も同様に参照される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】5つの長手方向の部分を備えたヘルドの実施例の概略平面図である。
【図2】図1のヘルドを、概略平面図と複数の断面図で示す図である。
【図3】繊維状の添加物を含む複合材が製造に使われた、概略的に中心長手方向部分を示す部分図である。
【図4】球状の添加物を含む複合材が製造に使われた、概略的に中心長手方向部分を示す部分図である。
【図5】ヘルド本体の長さ方向に沿って相互に直接続く、2つの縦部分間の移行領域の可能な形態を示す概略図である。
【図6】ヘルド本体の長さ方向に沿って相互に直接続く、2つの縦部分間の移行領域の可能な形態を示す概略図である。
【図7】ヘルド本体の長さ方向に沿って相互に直接続く、2つの縦部分間の移行領域の可能な形態を示す概略図である。
【図8】ヘルド本体の長さ方向に沿って相互に直接続く、2つの縦部分間の移行領域の可能な形態を示す概略図である。
【図9】ヘルド本体の長さ方向に沿って相互に直接続く、2つの縦部分間の移行領域の可能な形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1および図2に、長さ方向Lに延びる、ヘルド本体11を有するヘルド10が示されている。ヘルド本体11は、各端部に端部小穴(耳穴)12を備え、それはヘルド10をヘルド枠のヘルド支持レールに留めるために用いられる。図示の実施例のように、端部小穴12は、その1ヶ所が開いていることがある。この種類の端部小穴12は、開口の両側に2つのほぼ等しい突起を有するか、Cの形をした端部小穴として、または開口の両側に異なる長さの2つの突起を有するJの形をした端部小穴として、実施できる(図1)。代案として、端部小穴は、すべての経路を取り囲むことができる、Oの形をした端部小穴として実施できる。
【0023】
ヘルド本体11は中央にアイ(糸穴)13を備えており、それはたて糸を保持するために用いられる。たて糸は、ヘルド本体11の長さ方向Lの横断方向にアイ13を通過する。
【0024】
ヘルド本体11は、全体が多くの樹脂あるいは複合材料から製造される。それは、アイ13を備える中心長手方向部分14を含み、その端に移行長手方向部分15が接続されている。ヘルド本体11は、2つの長手方向端部部分16をも含み、その各々は端部小穴12を備える。2つの長手方向端部部分16は、各々移行長手方向部分15のうちの1つに、直接取り付けられる。図示の実施例とは別に、長手方向端部部分16が中心長手方向部分14に直接接続することも可能であり、結果として、移行長手方向部分15は省略される。長手方向部分の数は、異なり得る。
【0025】
ヘルド本体11の長さ方向Lの互いに続く2つの長手方向部分14、15または15、16は、異なる樹脂または複合材料で作成される。ヘルド本体11の所望の特性により、関連した長手方向部分14、15、16用に適切な樹脂または複合材料を選択し、対応する長手方向部分を製造するためにそれらを使用することが可能である。ヘルド10は、従って、多組成(multi-component)樹脂ヘルドと説明されることもある。ヘルド本体11は、流し込み、特に射出成形により、金型により製造される、個別の長手方向部分14、15、16間の接合は、ヘルド本体11の製造段階で、金型中で直接形成される。後の接合工程、例えば、接着や溶接は必要とされない。
【0026】
長手方向部分14、15、16の各々は、一様な、そして好ましくは均質な樹脂または複合材料からなる。ヘルド本体のために使用された材料は、例えば、もはや使用しないヘルド10の材料を再利用するために、個別の長手方向部分14、15、16の機械的切り離しにより、きわめて容易に分離され得る。1つの長手方向部分14、15、16内では、単一の樹脂または複合材料が製造のために使われ、ヘルド本体11を製造するために、金型の対応する空洞に充填されるか、注入される。製造金型の長手方向部分14、15、16に関連した空洞は、長さ方向Lにおいて、直接に隣接する長手方向部分を製造するために用いられる、隣接した空洞と、同時にまたは異なる時に、充填され得る。これらの場合のいずれにおいても、2つの隣接する長手方向部分14、15または15、16間の接合は、ヘルド本体11の製造金型内で形成される。
【0027】
耐摩耗性樹脂が、中心長手方向部分14のための樹脂として用いられる。中心長手方向部分14に形成されるアイ13が、それを通過するたて糸との接触により大きな摩耗にさらされるからである。ポリアミドは、例えば、この目的にかなう樹脂である。概略的に図3および図4に示されるように、中心長手方向部分14のために使用される樹脂は樹脂母材であり、それはその中に分布する添加要素20と共に複合材料を作成する。添加要素20は、ウィスカー21として知られている短繊維、球体、または別の形状の添加要素20からなってもよい。この種類の添加要素20は、好ましい実施態様においては、炭素、ガラス、セラミックまたは金属で製造されて、樹脂母材に加えられる。異なる材料および/または異なる形状からなる添加要素20の組合せも可能である。中心長手方向部分14においては、添加要素20はヘルド本体11の耐摩耗性を増すのに役立ち得る。
【0028】
好ましい実施態様においては、アイ13はヘルド本体11によって直接囲まれる。結果として、アイを形成するために、留め具(maillon)のような挿入物は、中心長手方向部分14には挿入されない。にもかかわらず、変更された実施態様においては、留め具23を中心長手方向部分14に挿入することも有利であり得る。留め具23は、ヘルド本体11の製造の後に挿入されるか、あるいは、ヘルド本体を製造するのに用いる金型に挿入でき、その周辺に樹脂または複合材料が注入される。
【0029】
2つの長手方向端部部分16を製造するために、ポリアミドを、添加要素素20とともに、または添加要素20なしに使用することも可能である。長手方向端部部分16のために使用する樹脂または複合材料にとって重要なことは、ヘルド支持レールに対して好ましい摺動特性を備えていること、必要とされる耐久性または弾力を備え、ヘルド支持レールに対する端部小穴12の遊びによって、そして、ヘルド支持レールに対する、または、ヘルド枠に対するヘルド10の相対的な動きによって、過剰な摩耗が生じないこと、である。
【0030】
耐摩耗性の要求は、移行長手方向部分15については大きくない。従って、より簡単な樹脂材料を、これらの長手方向部分15のために使うことができる。添加要素20のない一様な樹脂材料、従って、複合材料でないものが、移行長手方向部分15のために使われるのが望ましい。このようにして、ヘルド10の製作費は節約できる。ポリカーボネート、ポリエチレンまたはポリプロピレンが、例えば、移行長手方向部分15の製造のための樹脂材料として適当である。
【0031】
ヘルド本体の異なる長手方向部分14、15、16のために異なる樹脂または複合材料を用いることにより、ヘルド本体11の関係する長手方向部分14、15、16に個別に所望の特性、例えば所望の引張強さおよび/または所望の耐摩耗性、を与えるような材料を選択することが可能である。この効果は、さらに、異なる長手方向部分14、15、16において、ヘルド本体11の輪郭が異なることで、補強され得る。図2に示すように、ヘルド本体11の幅は、アイ13の方へ向かって増加する。この幅は、長さ方向Lに対し横断方向に、そしてたて糸Kの方向に対し横断方向に、計測される。アイ13まわりの中心長手方向部分14において、ヘルド本体11の厚みも、たて糸の方向Kに見られるように、増加する。金属ヘルド本体とは違って、異なる樹脂または複合材料からヘルド本体11を製造することは、流し込みまたは射出成形によって製造することにより、ヘルド本体11の幅および厚みを異ならせることがきわめて容易なことを意味する。
【0032】
長さ方向Lの相互に続く長手方向部分14、15、16は、移行個所25で各々隣接している。長さ方向Lにおいて、ヘルド本体11の材料は、したがって、移行個所25で変化する。ここで、移行箇所25の長さ方向Lの限られた部分は、共に接合される2つの長手方向部分14、15または15、16との重複部分を、例えば、図6〜図9に示すように組み入れることが可能である。
【0033】
図5〜図9は、例として、そしてかなり理想化された形状で、長さ方向において、共に接合される2つの長手方向部分14、15または15、16間の移行ができる可能な方法の選択肢を例示する。
【0034】
特に製造容易である可能な1つが図5に図示されており、そこでは、2つの材料間の接合面は、長さ方向Lに基本的に直角に配置される。しかしながら、これの変形として、2つの長手方向部分14、15または15、16間の移行個所25の部分の接触面を、例えば、図6および7に示されるように、拡大することも可能である。このために、一つ以上の突出部26を移行箇所25の1つの長手方向部分14、15、16に、そして補完的なへこみ27を嵌合する長手方向の部分14、15、16に設けてもよい。突出部26および対応するへこみ27の数および輪郭は異なってもよい。ここでは、角、縁または角のない輪郭も実施され得る。
【0035】
突出部26またはへこみ27の射出成形の段階で、直接アンダーカットを作ることも可能であり、2つの長手方向部分14、15、16の部材間の材料結合に加えて、噛み合いにより連結した接合個所も、例えば、図8および図9に図示するように、形成され得る。
【0036】
ヘルド本体11の強度の局所的な改善を図るために、ヘルド本体11に、または長手方向部分14、15、16の各々に、長繊維またはプレート状の要素の形で、補強を入れることも可能である。図2は、例えば、ヘルド本体11の外面の、移行長手方向部分15および端部区間16の間の移行箇所25に設けられた窪み30を示し、それは移行個所25を越えて延び、部分的には長手方向端部部分16に、そして部分的には移行長手方向部分15にある。実施例では、この窪み30は、ヘルド本体11の対向する2つの表面に位置する。あるいは、この窪みは、単に1つの平坦な側だけにあることでもよい。
【0037】
プレート31、例えば金属板が窪み30に挿入され、移行長手方向部分15と長手方向端部部分16との間の移行箇所25の部分での引張強さを増すために、補強として作用する。図の実施例の変形として、補強プレート31を有するこの種類の窪み30は、多組成ヘルド11を局所的に補強するために、別の移行箇所25にも、また長手方向部分14、15、16の1つの中にも設けられ得る。
【0038】
本発明はアイ13および2つの端部小穴12を有するヘルド本体11を含むヘルド10に関する。ヘルド本体11は、異なる樹脂材料および/または複合材料から、望ましくは流し込みか多組成射出成形によって、製造される。それはヘルド本体11の長さ方向Lに互いに続く、少なくとも2つの長手方向部分14、15、16を備える。直接互いに接合される2つの長手方向部分14、15または15、16は、異なる樹脂材料から、または、異なる複合材料からなる。複合材料は、添加要素20を含む樹脂母材からなる。長手方向部分14、15、16を有するヘルド本体11は、単一の製造工程で製造され、隣接する長手方向部分14、15、16は、互いに接合される。長手方向部分14、15、16各々に異なる樹脂または複合材料を用いることにより、関係する長手方向部分14、15、16の所望の特性と合う部材とすることができる一方、ヘルド10を経済的に製造できる。
【符号の説明】
【0039】
10 ヘドル
11 ヘドル本体
12 端部小穴
13 アイ(糸穴)
14 中央長手方向部分
15 移行長手方向部分
16 端部長手方向部分
20 添加要素
21 繊維
22 球体
23 留め具(Maillon)
25 移行個所
26 突出部
27 へこみ
30 窪み
31 プレート
K たて糸の方向
L 長さ方向





【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向(L)に延び、そしてたて糸を保持するためのアイ(13)を備えた、ヘルド本体(11)であって、
長さ方向(L)に互いに隣接した、少なくとも2つの長手方向部分(14、15、16)を備え、
2つの軸方向に直接隣接する当該長手方向部分(14および15、15および16)は、異なる樹脂または複合材料からなる、
当該ヘルド本体(11)を有する、ヘルド・フレームのためのヘルド(10)。
【請求項2】
2つの軸方向に直接隣接する前記長手方向部分(14および15、15および16)は、金型に樹脂材料の各々を同時にまたは異なる時に充填することによる前記ヘルド本体(11)の製造中、互いに直接に接合される、ことを特徴とする請求項1に記載のヘルド。
【請求項3】
前記ヘルド本体(11)の前記長手方向部分(14、15、16)の各々は、1つの一様な合成樹脂または複合材料から製造される、ことを特徴とする請求項1に記載のヘルド。
【請求項4】
少なくとも1つの前記長手方向部分(14)は、金属および/またはガラスおよび/またはセラミックの添加要素(20)が加えられた樹脂母材を有する複合材料からなる、ことを特徴とする請求項1に記載のヘルド。
【請求項5】
前記添加要素(20)は、樹脂材料中で繊維(21)および/または球体(22)の形態で配列される、ことを特徴とする請求項4に記載のヘルド。
【請求項6】
前記アイ(13)を有する中心長手方向部分(14)が設けられ、そして2つの長手方向端部部分(16)が設けられ、それぞれは端部小穴(12)を備える、ことを特徴とする請求項1に記載のヘルド。
【請求項7】
前記中心長手方向部分(14)はその各端部で、長手方向端部区間(16)に移行長手方向部分(15)を介して接続している、ことを特徴とする請求項6に記載のヘルド。
【請求項8】
前記中心長手方向部分(14)のために使用する前記樹脂または複合材料および/または前記長手方向端部区間(16)のために使用する前記樹脂または複合材料は、前記移行長手方向部分(15)のために使用する前記樹脂または複合材料より更に耐摩耗性を有する、ことを特徴とする請求項7に記載のヘルド。
【請求項9】
添加要素(20)を含まない前記樹脂材料が、前記移行長手方向部分(15)のために使われる、ことを特徴とする請求項7に記載のヘルド。
【請求項10】
アイ(13)は、ヘルド本体(11)によって、直接形成される、ことを特徴とする請求項1に記載のヘルド。
【請求項11】
補強(31)が、ヘルド本体(11)に設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載のヘルド。
【請求項12】
第1の長手方向部分(14、15、16)を製造するために金型に樹脂または複合材料を充填するステップと、
同時に、または、別の時に、第1の長手方向部分(14、15、16)に直接隣接するさらなる長手方向部分(14、15、16)を製造するために金型に別の樹脂または複合材料を充填するステップ
からなり、
それにより、2つの隣接する当該長手方向部分(14、15または15、16)は、金型中で互いに接合される、
長さ方向(L)に延び、たて糸を保持するために用いるアイ(13)を備えたヘルド本体(11)を有する、
ヘルド(10)の製造のための方法。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−207356(P2012−207356A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−45092(P2012−45092)
【出願日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【出願人】(598132646)グロツ・ベッケルト コマンディートゲゼルシャフト (77)