説明

多色記録感熱ラベル用シート

【目的】 多色記録のできる多色記録感熱ラベル用シートを提供する。
【構成】 支持体の片面に感圧性接着剤層を介して剥離紙を付し、支持体の他面に、有機塩基性化合物とそれらにより熱時発色する染料前駆体A、フェノール性物質か有機酸類とそれらにより熱時発色する染料前駆体B、並びに接着剤を主成分とした単層以上の多色感熱発色層、オーバーコート層を積層した多色記録感熱ラベル用シートで、多色感熱発色層の発色開始温度を85〜110℃とするものである。特に、感熱発色層と支持体の間に顔料と接着剤主体のアンダーコート層を設ける方が好ましい。
【効果】 記録保存性、耐熱性が良好で、発色色相が鮮やかなコントラストを持った多色記録感熱ラベル用シートを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、感熱ラベル用シートに関し、特に、鮮やかなコントラストを持った多色記録が可能で、地肌部の耐熱性にも優れた保存性良好な多色記録感熱ラベル用シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】昨今、POS(販売時点情報管理)システム用のバーコードラベル、価格表示ラベル類、その他配送、商品仕訳ワッペン、切手や郵送用シールなどの用途には感熱記録方式が多く用いられている。その理由は、印字方式が熱による瞬間的な化学反応により発色画像を得るものであり、装置も小型で記録スピードも速く、騒音、環境汚染も少なく、コストが安い等の利点があるためである。ところが、用途によっては、特に明確に表示したいデータや文字、他と区別したい記載事項があり、それらの場合には鮮やかなコントラストを有する多色記録が要望される。その為、異なった発色熱エネルギーで異なった色調に発色する高温、低温発色層を有する感熱ラベルシートが開発されている。それは大きく2種類に分かれる。その一つは、低温加熱で単色を得、高温で混色を得る、所謂混色系(特開昭48−15540号公報、特開昭49−4342号公報、特開昭49−65239号公報)、他の一つは、高温発色させる場合に、低温発色層を消色させる消色剤を用いて単色に近い色調を得る、所謂消色系(特開昭48−8251号公報、特開昭51−37542号公報、特開昭53−47843号公報、特開昭55−139290号公報、特開昭55−161688号公報)である。しかし、混色系の場合は、低温発色の色相は淡く、高温発色の色相は明度、彩度の低い色に限定される。一方の消色系は、色の組み合わせが自由に選択できる他、使用頻度の高い黒系統の印字を低温で発色させられる利点を有しているため、混色系に比べて有利である。
【0003】また、感熱ラベル用シートに要求される品質として、(1)水に濡れても塗層が剥離せず、記録部が鮮明である事、(2)食用油、ハンドクリーム、整髪料等の接触や可塑剤を含んだ包装用フィルムの長期接触でも記録部が鮮明である事、が挙げられる。それらの要求に対して、感熱発色層中に特定の接着剤、耐水化剤や撥水剤等の使用、及び感熱発色層の表面へ特定の高分子化合物主体の層を設ける事で大幅に改良される。しかしながら、更なる要求品質として、電子レンジや温蔵庫等に用いる食品ラベルや高温になる機械に貼付される工業用ラベル等の用途でも地肌発色が殆ど無く、記録部の読み取りが可能である事が要望されている。これらの特性を改良する方法として、感熱発色層の成分の選択により静的な発色開始温度を上げる対策が取られてきたが、実使用可能な濃度まで発色させるために多くのエネルギーが必要になる為、多色記録感熱ラベルの場合には低温発色温度が上がり、消色剤が部分的に溶解し発色を阻害して発色濃度が下がったり発色の鮮やかさに劣るようになる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、記録保存性、耐熱性が良好で、且つ発色色相が鮮やかなコントラストを持った多色記録感熱ラベル用シートを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明の多色記録感熱ラベル用シートは、支持体の片面に感圧性接着剤層を介して剥離紙を付し、該支持体の他面に、有機塩基性化合物、該有機塩基性化合物により熱時発色しうる染料前駆体A、フェノール性物質もしくは有機酸類、該フェノール性物質もしくは有機酸類により熱時発色しうる染料前駆体B、並びに接着剤を主成分として適宜組み合わせた単層又は二層以上の多色感熱発色層、水性高分子化合物を主成分とするオーバーコート層を順次積層してなる多色記録感熱ラベル用シートであり、熱傾斜試験機を用いて500g/cm2の圧力で該多色記録発色層面に5秒間印加した時の光学濃度が0.2に達する温度を発色開始温度として、該多色感熱発色層面における該発色開始温度が、85〜110℃であることを特徴とするものである。
【0006】更に、本発明の多色記録感熱ラベル用シートは、支持体と多色感熱発色層の間に無機又は有機の顔料と接着剤を主成分とするアンダーコート層を設けるものである。
【0007】本発明において、発色開始温度は、熱傾斜試験機により特定の温度で、500g/cm2の圧力により多色感熱発色層面に5秒間印加し、マクベス濃度計RD−514(フィルターW−106)で印加部の光学濃度を測定し、その値が0.2に達する温度を発色開始温度と称する。
【0008】多色感熱発色層の発色開始温度が、85〜110℃であれば高温での保存でも地肌部の変色に問題は無く、実使用での低温発色の印字濃度も十分であり、高温発色との色相のコントラストも鮮明である。一方、85℃未満では高温での保存では地肌部が発色し、所謂地肌かぶりが発生する。110℃を超えると実使用での低温発色の印字濃度が低く、多色感熱発色層と支持体との間にアンダーコート層を設けてもまだ不十分である。印加エネルギーを上げても消色剤の影響により印字濃度が上がらず、高温発色との色相のコントラストも不鮮明になる。
【0009】本発明の剥離紙としては、例えば、その表面をシリコーン系樹脂等の離型剤で処理した紙が一般的に用いられているが、ベースは紙の他に合成紙、合成樹脂フィルム等が使用出来る。
【0010】感圧性接着剤としては、例えば、スチレン・ブタジエンブロック共重合体やスチレン・イソプレンブロック共重合体、天然ゴムラテックス、イソブチレンラテックス、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸等のアクリル系エマルジョン等が挙げられる。
【0011】感圧性接着剤と支持体の間には、ポリビニルアルコール、スチレン・無水マレイン酸共重合体、スチレン・ブタジエンブロック共重合体、ポリアクリルアミド、ヒドロキシメチルセルロース、デンプン、又はそれらの誘導体等を主成分とする高分子化合物からなる塗層を設けてもよい。
【0012】本発明の感熱記録層に使用される有機塩基性化合物、該有機塩基性化合物により発色しうる染料前駆体A、フェノール性物質もしくは有機酸、該フェノール性物質もしくは該有機酸により発色しうる染料前駆体B、並びに接着剤について、以下に具体例を挙げるが、これらは本発明を限定するものではない。
【0013】本発明の有機塩基性化合物としては、グアニジン誘導体が優れているが、それ以外には、フェニルチオ尿素、ヘキサデシルアミン、トリベンジルアミン、デカメチレンジアミン、2−アミノベンゾオキサゾール、2−アミノベンゾイミダゾール、キニン、シクロヘキシルベンジルアミン、オクタデシルベンジルアミン等が利用できる。グアニジン誘導体としては、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジシクロヘキシル−2−フェニルグアニジン、1,3−ジシクロヘキシル−2(2’,4’−ジメチル)フェニルグアニジン、1,3−ジシクロヘキシル−2(2’,5’−ジメトキシ)フェニルグアニジン、1,3−ジシクロヘキシル−2−シクロヘキシルグアニジン等、本出願人による特公平2−5196号公報の明細書11頁21欄40行から同16頁31欄33行に記載されているものを使用することができる。
【0014】本発明の有機塩基性化合物により発色する染料前駆体Aとしては、アルカリ性で発色或は色変化を生ずるようなpH指示薬、フルオレッセン誘導体、フェノールフタレイン誘導体、pH値のアルカリ側への変化により広義での酸化又は還元が行われて変色現象を起こす物質、ニンヒドリン誘導体などが使用される。具体的には、2,4,5,7−テトラブロムフルオレッセイン、3,4,5,6−テトラクロルフルオレッセイン、3,6−ジアセチルオキシフルオラン、1,8−ジメチルフルオレッセイン等、本出願人による特公平2−5196号公報の明細書3頁6欄22行から同10頁20欄21行に記載されているものを使用することができる。
【0015】本発明のフェノール性物質もしくは有機酸類としては、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(2−クロルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2−ターシャリーブチルフェノール)、4,4’−セカンダリーブチリデンジフェノール、4,4’−(1−メチルーノルマルーヘキシリデン)ジフェノール、4−フェニルフェノール、4−ヒドロキシジフェノール、メチル−4−ヒドロキシベンゾエート、フェニル−4−ヒドロキシベンゾエート、4−ヒドロキシアセトフェノン、サリチリ酸アニリド、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、4,4’−シクロヘキシリデンビス(2−メチルフェノール)、4,4’−ベンジリデンジフェノール、4,4’−チオビス(6−ターシアリーブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2−メチルフェノール)、4,4’−エチレンビス(2−メチルフェノール)、4,4’−シクロヘキシリデンビス(2−イソプロピルフェノール)、2,2’−ジヒドロキシジフェニル、2,2’−メチレンビス(4−クロロフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェノール)−シクロヘキサン、2,2’−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、ノボラック型フェノール樹脂、ハロゲン化ノボラック型フェノール樹脂、α−ナフトール、β−ナフトール、3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸、3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸、3−メチル−5−t−ブチルサリチル酸、フタル酸モノアニリドパラエトキシ安息香酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフォン、4−ヒドロキシ−4’−イソプロピルオキシジフェニルスルフォン、ジ−(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルフォン、4−ヒドロキシ−4’−ベンジルオキシジフェニルスルフォン、4−ヒドロキシ−4’−t−オクチルオキシジフェニルスルフォン、パラベンジルオキシ安息香酸、パラヒドロキシ安息香酸ベンジルエステル等が使用される。
【0016】本発明のフェノール性物質もしくは有機酸類で発色する染料前駆体Bとしては、クリスタルバイオレットラクトン、3−インドリノ−3−p−ジメチルアミノフェニル−6−ジメチルアミノフタリド、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−シクロヘキシルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−5−メチル−7−t−ブチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−p−ブチルアニリノフルオラン、2−(N−フェニル−N−エチル)アミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−7−シクロヘキシルアミノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−トルイジノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチルシクロヘキシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン等が使用される。
【0017】本発明の接着剤としては、酸化澱粉、リン酸エステル化澱粉、エーテル化澱粉等の澱粉類、ヒドロキシエチルセルロース、メチレンセルロース、ポリビニルアルコール、スチレンーアクリル、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム、カゼイン等の水溶性結合剤、又はそれらの誘導体、スチレン−ブタジエンラテックス等のラテックス類が使用される。
【0018】本発明の多色感熱発色層に使用される顔料としては、ケイソウ土、タルク、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、尿素−ホルマリン樹脂等が挙げられる。又、これらの顔料は、一種以上併用してもよい。その他、添加剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩、パラフィン、酸化パラフィン、ポリエチレン、酸化ポリエチレン等のワックス類、ジオクチルスルホコハク酸塩等の湿潤剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系などの紫外線吸収剤、さらに界面活性剤、蛍光染料等が用いられる。
【0019】本発明の多色感熱発色層のオーバーコート層の主成分としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアマイド、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、スチレン−ブタジエン系重合体等、又はそれらの誘導体が挙げられる。
【0020】本発明に用いられる支持体としては、紙が用いられるが、合成紙、金属箔、ポリエチレン等によるラミネート紙、ポリエチレンテレフタレート等のフィルム、等を単独、或はそれらを組み合わせたシートを用いることも出来る。
【0021】本発明に用いられる支持体には、アンダーコート層を設けることができる。アンダーコート層の主成分としては、無機又は有機の顔料、及び接着剤からなる。該顔料としては、有機の顔料であるスチレン−アクリル系樹脂のような中空樹脂粒子が特に好ましい。又、接着剤は、上記多色感熱発色層に使用されたものを利用できる。
【0022】本発明の多色記録感熱ラベル用シートにおいて、特に各塗層の塗工量を限定するものではない。しかし、多色感熱発色層としては、120℃での黒色発色濃度が光学濃度0.9以上、160℃での赤色発色濃度が光学濃度0.7以上であれば実使用で問題なく、これを基準として塗工量を適宜調製すればよい。オーバーコート層としては、乾燥固型分で0.5〜10g/m2が好ましい。又、アンダーコート層としては、乾燥固型分で2〜15g/m2が好ましい。
【0023】本発明のアンダーコート層、多色感熱発色層、オーバーコート層等の塗工に用いる装置は、エアーナイフコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロッドコーター、カーテンコーター、ダイコーター、リップコーター、ブレードコーター等が用いられる。特にアンダーコート層の場合は、紙の抄紙工程で使用されるサイズプレス装置、ゲートロール装置等も用いられる。又、オフセット、シルクスクリーン等の印刷法も用いられる。更に、塗工した物の表面平滑性を改良するために、マシンカレンダー、スーパーカレンダー、グロスカレンダー、ブラッシング等が利用される。
【0024】
【実施例】以下、実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の部、及び%は重量部、及び重量%を示す。
【0025】実施例1(1)アンダーコート紙の作成以下の配合の液を攪拌、分散してアンダーコート塗液を調整し、坪量70g/m2の原紙に、乾燥後の塗工量が6g/m2になるように塗工、乾燥してアンダーコート紙(イ)を得た。
アンダーコート塗液:焼成カオリン(エンゲルハード社製、アンシレックス) (固形)100部アクリル系分散剤10%水溶液 (固形)0.5部酸化デンプン20%水溶液 (固形) 10部スチレン−ブタジェンラテックス48%水分散液 (固形) 10部水 (固形) 80部
【0026】(2)多色感熱記録層塗液の作成以下の配合によるA液、B液、C液、D液を各々別々にサンドグラインダーで3時間粉砕する。
A液:3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフリオラン(固形)100部スチレン−無水マレイン酸共重合体塩25%水溶液 (固形) 5部水 150部B液:4−ヒドロキシ−4’−イソプロピルオキシジフェニルスルフォン (固形)100部スチレン−無水マレイン酸共重合体塩25%水溶液 (固形) 5部水 150部C液:2,4,5,7−テトラブロムフルオレッセイン (固形)100部ヒドロキシエチルセルロース5%水溶液 (固形) 5部水 200部D液:1,3−ジシクロヘキシル−2−フェニルグアニジン (固形)100部ヒドロキシエチルセルロース5%水溶液 (固形) 5部水 200部
【0027】以上で得られたA液、B液、C液、D液を用いて感熱記録層塗液を作成した。
(3)感熱記録下塗り層液D液: 10部ヒドロキシエチルセルロース10%水溶液 10部水 10部上記の感熱記録下塗り層液を、アンダーコート紙(イ)に乾燥後の塗工量が4g/m2になるように塗工、乾燥して感熱記録下塗り紙(ロ)を得た。
【0028】
(4)感熱記録上塗り層液焼成カオリン(エンゲルハード社製、アンシレックス) (固形) 20部A液 4部B液 15部C液 6部スチレン−無水マレイン酸塩25%水溶液 20部水 60部上記の感熱記録上塗り層液を、感熱記録下塗り紙(ロ)の上に乾燥後の塗工量が7g/m2になるように塗工、乾燥して多色記録感熱紙(ハ)を得た。
【0029】
(5)オーバーコート液炭酸カルシウム(白石工業製 Brt15) (固形) 8部ポリビニルアルコール10%水溶液 (固形) 30部上記のオーバーコート液を、多色記録感熱紙(ハ)の上に乾燥後の塗工が3g/m2になるように塗工、乾燥して多色記録感熱オーバーコート紙(ニ)を得た。
【0030】得られた多色記録感熱オーバーコート紙(ニ)の裏面に感圧性接着剤を塗工し、剥離紙と貼り合わせて、本発明の多色記録感熱ラベル用シートを作成した。
【0031】実施例2実施例1の多色感熱記録層塗液の作成において、A液の染料前駆体Bを3−(N−メチルシクロヘキシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオランに代え、B液のフェノール性物質をビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフォンに代えた以外は同様にして多色記録感熱ラベル用シートを作成した。
【0032】実施例3実施例1においてアンダーコート塗液を塗工しないで、原紙に直接感熱記録下塗り層液を塗工する以外は同様にして多色記録感熱ラベル用シートを得た。
【0033】比較例1実施例1の多色感熱記録層塗液の作成において、B液のフェノール性物質をビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸−n−ブチルに代えた以外は同様にして多色記録感熱ラベル用シートを得た。
【0034】比較例2実施例1の多色感熱記録層塗液の作成において、A液の染料前記体Bを3−(N−メチルシクロヘキシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオランに代え、B液のフェノール性物質を4,4’−イソプロピリデンジフェノールに代えた以外は同様にして多色記録感熱ラベル用シートを得た。
【0035】以上、実施例1〜3、比較例1〜2で得られた多色記録感熱ラベル用シートを以下の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
【0036】(発色開始温度)熱傾斜試験機により、特定の試験温度で圧力500g/cm2で5秒間印加し、印加部の濃度をマクベス濃度計RD−514(フィルターW−106)で測定し、その値が0.2に達する温度を発色開始温度とする。
(耐熱性)80℃、ドライの条件で一昼夜放置後の地肌部の濃度をマクベス濃度計RD−514(フィルターW−106)で測定する。
(発色濃度)熱傾斜試験機により特定の試験温度で発色開始温度の測定と同じ条件で発色させ、120℃と160℃での濃度をマクベス濃度計RD−514(120℃はフィルターW−106、160℃はフィルターW−58)で測定した。
【0037】
【表1】


【0038】表1において、各実施例、比較例とも120℃の印加エネルギーでは、黒色発色を呈し、160℃の印加エネルギーでは、先の黒色発色を消色させて赤色発色を呈する。実施例1〜3では、発色開始温度が本発明の範囲内にあるため耐熱性試験で、それぞれ0.09、0.06、0.08と地肌の光学濃度が低い。一方、比較例1では、発色開始温度が76℃と範囲未満であり、耐熱性試験で地肌の光学濃度が0.28と高く、地肌カブリがある。又、比較例2では、発色開始温度が115℃と範囲を超えているため、地肌の光学濃度が0.06と低いが、120℃の発色濃度も低く、実用的でない。
【0039】
【発明の効果】本発明の多色記録感熱ラベル用シートは、記録保存性、耐熱性が良好で、発色色相が鮮やかなコントラストを持った多色記録画像を得ることができ、実用性が高いものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 支持体の片面に感圧性接着剤層を介して剥離紙を付し、該支持体の他面に、有機塩基性化合物、該有機塩基性化合物により熱時発色しうる染料前駆体A、フェノール性物質もしくは有機酸類、該フェノール性物質もしくは有機酸類により熱時発色しうる染料前駆体B、並びに接着剤を主成分として適宜組み合わせた単層又は二層以上の多色感熱発色層、水性高分子化合物を主成分とするオーバーコート層を順次積層してなる多色記録感熱ラベル用シートであり、熱傾斜試験機を用いて500g/cm2の圧力で該多色記録発色層面に5秒間印加した時の光学濃度が0.2に達する温度を発色開始温度として、該多色感熱発色層面における該発色開始温度が、85〜110℃であることを特徴とする多色記録感熱ラベル用シート。
【請求項2】 支持体と多色感熱発色層の間に無機又は有機の顔料及び接着剤を主成分とするアンダーコート層を設けることを特徴とする請求項1記載の多色記録感熱ラベル用シート。

【公開番号】特開平5−318906
【公開日】平成5年(1993)12月3日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−127021
【出願日】平成4年(1992)5月20日
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)