説明

多葉コリメータ

内部葉漏れ及び画素化問題を軽減する多葉コリメータが示されている。コリメータは、第一多葉コリメータセットと、前記第一に対して鋭角に配置された第二多葉コリメータセットと、前記第二に対して鋭角に配置された第三多葉コリメータセットと、を備えている。各葉列コリメータは、通常、互いに対向して配置された一対の葉列を有している。第一の多葉コリメータセットと第二の多葉コリメータセット間の鋭角の角度は、第二の多葉コリメータセットと第三の多葉コリメータセット間の鋭角の角度と同一であることが好ましい。適切な角度は約60°である。半影特徴を改善するため、(i)放射線源に最も近い多葉コリメータの葉は、放射線源からより離れた多葉コリメータの葉よりも放射線方向の深さを大きくすることができ、(ii)放射線源から最も遠い多葉コリメータの葉は、放射線源により近い多葉コリメータの葉よりも放射線方向の深さを小さくすることができ、(iii)多葉コリメータの葉の先端は円形にすることができ、(iv)放射線源に最も近い多葉コリメータの葉の先端の曲率半径を、放射線源からより離れた多葉コリメータの葉の先端の曲率半径よりも大きくすることができ、(v)放射線源から最も離れた多葉コリメータの葉の先端の曲率半径を、放射線源により近い多葉コリメータの葉の先端の曲率半径よりも小さくすることができる。一般的に、第一多葉コリメータが放射線源に最も近くに配置され、第三多葉コリメータが放射線源から最も遠くに配置され、第二多葉コリメータが第一及び第三多葉コリメータの間に配置されていることも好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多葉コリメータに関する。
【背景技術】
【0002】
多葉コリメータ(MLC)は放射線治療の分野で(主に)使用されている。放射線ビームは患者の方向を向けられ、処理される領域の形状に合うように平行にされなければならない。その形状の外部領域にある線量をできる限り低くすることを確実にすることが重要であるが、全領域を処理することも重要である。処理されない領域があると再発する傾向にあるが、一方で、非処理領域に照射されると、健常組織に大きな副作用が生じたり、処理後の回復時間が長くなったりするダメージが引き起こされる。
【0003】
処理領域が略直線の場合には、多葉コリメータが用いられる。これらは、放射線吸収材料からなる指型の葉が配列されており、各々は並列関係に配列され、相対的に長手縦方向に移動することができる。各葉を選定位置に移動させることにより、非直線状の縁を有するコリメータが得られる。一般的に、このような配列(又は列)はビームの両側面に設けられる。
【0004】
多葉コリメータには、一般的に2つの欠点がある。一つは、葉列間からの放射線漏れであり、もう一つは、葉がしばしば四角形の端部を有しているため、葉列方向に垂直でない縁で配列されると、画素パターンが発生してしまう。
【0005】
漏れ率を改善するために様々なデザインが用いられ、葉がステップ状の縁を有し、このため、葉が(ある程度)連結し、葉間の明瞭な隙間を制限するようなデザインも用いられている。しかしながら、内部の葉漏れは、処理時間がかなり長い、強度変調放射線治療(IMPT)のような治療計画において制限要素になっている。
【0006】
画素化の問題は、葉列の分解能に関する要素であるため、この問題を軽減する試みは、狭い葉を使用することに関連する傾向がある。しかしながら、このことはコリメータを複雑にし、かなりの技術挑戦を必要とする。特開平03−009767には葉が他の葉間のギャップを覆うようにオフセットしている葉列を使用することが提案されている。このことにより、分解能が改善され、漏れを減らすことができるが、画素効果がまだ残っている。
【特許文献1】特開平03−009767
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の要約
本発明は、内部葉の漏れや画素化の問題をより軽減し、分解能を改善し、フィールドサイズを大きくする多葉コリメータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様によると、第一多葉コリメータセットと、前記第一に対して鋭角に配置された第二多葉コリメータセットと、前記第二に対して鋭角に配置された第三多葉コリメータセットと、を備えた放射線ビーム用のコリメータが提供される。
【0009】
本発明の第二の態様によると、所定の深さを有する第一多葉コリメータと、前記第一セットの深さよりも浅い深さであって、前記第一に鋭角で配置される第二多葉コリメータセットと、前記第二セットの深さより浅い深さであって、前記第二に鋭角で配置される第三多葉コリメータセットと、を備えた放射線ビーム用コリメータを提供される。
【0010】
通常、各多葉コリメータセットは、互いに対向して配置された一対の葉列を有している。
【0011】
第一多葉コリメータセットと、第二多葉コリメータセットとの間の鋭角の角度は、好ましくは、第二セットと第三セットとの間の鋭角の角度と同じであることが好ましい。好ましい角度は約60°であるが、他の適切な角度を用いても良い。
【0012】
半影は、照射フィールド縁に近い領域にある。半影の幅は、所定の軸における線量の20%と80%が得られる点の間の距離によって典型的には規定される。小さな半影は良いビーム鮮明度を示し、目的とする体積に対する最大線量を与え、周縁の通常の健常組織に向かって半影に隣接する領域で急速に線量が降下する。
【0013】
このようなコリメータにおける多くの設計特徴は、半影の特徴を改善するために選ばれる。
【0014】
放射線源に最も近い多葉コリメータの葉は、放射線源からより離れた多葉コリメータの葉よりも放射線方向に深くすることができる。
【0015】
放射線源から最も遠い多葉コリメータの葉は、放射線源により近い多葉コリメータの葉よりも放射線方向に浅くすることができる。
【0016】
多葉コリメータの先端を円形にすることができる。
【0017】
放射線源に最も近い多葉コリメータの葉の先端の曲率半径は、放射線源からより離れた多葉コリメータの葉の先端の曲率半径よりも大きくすることができる。
【0018】
放射線源から最も離れた多葉コリメータの葉の先端の曲率半径は、放射線源により近い多葉コリメータの葉の先端の曲率半径よりも小さくすることができる。
【0019】
一般的に、第一多葉コリメータは放射線源に最も近くに配置され、第三多葉コリメータは放射線源から最も遠くに配置され、第二多葉コリメータは第一及び第三多葉コリメータの間に配置されていることも好ましい。
【0020】
本発明の実施の形態は、添付図面を参考として、例を示すことによって記載される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は従来のビームコリメータ1の要部を示している。コリメータ1は、装置4から放射されるX線や他のビーム3の方向に直交する面内に配置された1セットの一対の多葉列2,2aを有している。
【0022】
図2は、従来のコリメータを示した図1の垂直面(すなわち、ビーム3方向)に対応する本発明によるコリメータ10を示している。コリメータは、3セットの多葉11a,11b,11cを有しており、各セットは、X線の両側に配置された多葉列を有しており、垂直断面において列状に配置されている。図2においては、葉が互いに60°の方向で配置されているといったように、3列が異なる方向に配置されていることは示されていない。
【0023】
図3は、不規則な直線形状を有する典型的な臨床サンプル20を示し、臨床サンプル20はIMRTのような治療計画を使用して処理される。X線や他の放射線によって処理されなければならない組織が、形状の周囲を形取る黒い実線内のエリアに配置されている。処理エリアの周りの組織、すなわち健常組織が、影響を受けないように、処理される当該エリアが放射線処理を受ける間、健常組織は、適切な放射線遮断材料を使用して放射線から遮断されなければならない。
【0024】
図4は、特開平03−009767に示される従来型の二列多葉コリメータを使用してえられたX線パターンを示している。この典型例における葉列の幅は10mmである。葉列の幅はビーム方向に直交する面内で測定される。図示されるように、健常組織の大部分は、従来の二列多葉コリメータを用いて得られるあいまいな境界によって照射される。
【0025】
良い分解能を得るために、本実施の形態においては葉列の幅が4mmのミニコリメータを得るために、葉列の幅を狭くした場合には、図5に示すように、得られる照射パターンは処理される組織のパターンに近くなる。もちろん、葉列を狭くすると分解能は良くなるが、葉列は、工学技術によって達成することのできる範囲までしか狭くできない。さらに、葉列の幅を狭めると、実質的に得られるフィールドサイズが小さくなり、大きな領域を処理することが難しくなる。
【0026】
この従来の二列多葉コリメータのフィールドサイズは、40×40cmのオーダーである。ミニコリメータのフィールドサイズは、16×20cmのオーダーである。しかしながら、本発明によるコリメータのフィールドサイズは、少なくとも直径40cm以上である。
【0027】
図6には、10mm幅の葉列を有する本発明によるコリメータを使用して得られる照射パターンが示されている。図示されているように、標的照射パターンは、10mm幅の葉列を有する従来の二列多葉コリメータや、図5のパターンを得るために使用された、より狭い幅のミニコリメータを用いて得られる標的照射パターンを大幅に改善する。
【0028】
図7は、過剰線量、すなわち方向に関する標準的な試料に用いられる健常組織への照射(平均距離P50ブロック(mm))を示す。図示されるように、従来の二列コリメータを使用すると、過剰線量は二方向、すなわち処理される領域が垂直又は水平縁を有し、従来のコリメータの葉がこの縁に近接して配置されているときに、最小となる。ミニコリメータにも同様のことが当てはまり、やはり過剰線量は2方向で最小となる。本発明によるコリメータの結果は、過剰線量の減少に関して際だって優れた結果を示しており、グラフから分かるように、過剰線量線の大方の部分は、ミニコリメータを使用して得られる線よりもかなり下にくる。
【0029】
図8は本発明の第二の態様による実施の形態を示す。部分的にアクセレータに取り付けられた多葉コリメータセットが示されている。アクセレータは、放射線を生成するターゲットと、部分的にビーム3を平行にする第一のコリメータ31と、ビームをフィルターにかけるフィルター32とを有している。ビームは、本発明の第二の態様による多葉コリメータを通過する。葉の深さは、X線ビーム3に平行な方向で測定される。葉31aの列の深さは最も深く、第二列の深さは葉の第一列の深さより浅く、葉31cの列の深さは葉の第二列の深さより浅い。
【0030】
葉はビームに平行な方向に湾曲もしており、葉31aの第一列の曲率半径は葉31bの第二列の曲率半径よりも大きい。葉31cの第三列の曲率半径は葉の第二列の曲率半径よりも小さい。
【0031】
図9は本発明の第二の態様によって得られる半影を示し、従来の二列コリメータと比べてほぼ2倍改善されている。従来の二列コリメータに対する放射線の20−100%を受けるコリメータパターンの外部領域のパーセンテージは、典型的には13%のオーダーである。ミニコリメータにおいては、そのパーセンテージは約8%まで減少するが、本発明による複列コリメータによれば約7%程度までなだらかになる。
【0032】
それゆえ、本発明による複列多葉コリメータは、従来の大きな二列のコリメータのフィールドサイズに関する利点を含みつつ、ミニコリメータのなだらかさ、分解能及び性能をも有している。
【0033】
さらに、本発明によるコリメータを使用すると、MLCヘッドの設計がかなりシンプルになる。葉は結合部における凸縁及び溝機構が必要なくなり、上方及び/又は下方にある他の葉列がこれらの結合部をカバーすることができる。さらに、コリメータの方向性が無くなるため、コリメータヘッドを回転できるようにする必要が無くなる。
【0034】
もちろん、本発明の範囲から離れない範囲で、上述した実施の形態に対して様々な変形を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】既知の一列多葉コリメータの垂直断面図。
【図2】本発明による多葉コリメータの垂直断面図。
【図3】典型的な臨床例を示す図。
【図4】10mmの葉間を有する二列多葉コリメータを用いて得られる照射パターンを示す図。
【図5】4mmの葉間を有する二列多葉コリメータを用いて得られる照射パターンを示す図。
【図6】10mmの葉間を有する本発明による三列多葉コリメータを用いて得られる照射パターンを示す図。
【図7】方向に関する標準試料に用いられる過剰線量を示す図。
【図8】本発明の第二の態様による多葉コリメータに部分的に取り付けられたアクセレータを通過する垂直断面図。
【図9】図8の多葉コリメータにより得られる半影のグラフを示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線ビーム用のコリメータにおいて、
第一多葉コリメータセットと、
前記第一に対して鋭角に配置された第二多葉コリメータセットと、
前記第二に対して鋭角に配置された第三多葉コリメータセットと、
を備えたことを特徴とするコリメータ。
【請求項2】
各多葉コリメータセットは、互いに対向して配置された一対の葉列を有することを特徴とする請求項1記載のコリメータ。
【請求項3】
第一の多葉コリメータセットと第二の多葉コリメータセット間の鋭角の角度は、第二の多葉コリメータセットと第三の多葉コリメータセット間の鋭角の角度と同一であることを特徴とする請求項1又は2に記載のコリメータ。
【請求項4】
鋭角の一つは60°であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のコリメータ。
【請求項5】
放射線源に最も近い多葉コリメータの葉は、放射線源からより離れた多葉コリメータの葉よりも放射線方向の深さが大きいことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のコリメータ。
【請求項6】
放射線源から最も遠い多葉コリメータの葉は、放射線源により近い多葉コリメータの葉よりも放射線方向の深さが小さいことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のコリメータ。
【請求項7】
多葉コリメータの葉の先端は円形になっていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のコリメータ。
【請求項8】
放射線源に最も近い多葉コリメータの葉の先端の曲率半径は、放射線源からより離れた多葉コリメータの葉の先端の曲率半径よりも大きいことを特徴とする請求項7記載のコリメータ。
【請求項9】
放射線源から最も離れた多葉コリメータの葉の先端の曲率半径は、放射線源により近い多葉コリメータの葉の先端の曲率半径よりも小さいことを特徴とする請求項7又は8に記載のコリメータ。
【請求項10】
第一多葉コリメータは放射線源に最も近くに配置され、
第三多葉コリメータは放射線源から最も遠くに配置され、
第二多葉コリメータは第一及び第三多葉コリメータの間に配置されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のコリメータ。
【請求項11】
概ねここに、添付図面を参照として記載された及び/又は添付図面に示されたことを特徴とするコリメータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2009−513172(P2009−513172A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518132(P2006−518132)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007433
【国際公開番号】WO2005/004987
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(500321704)エレクタ、アクチボラグ (18)
【氏名又は名称原語表記】ELEKTA AB
【Fターム(参考)】