説明

多軸ロボットアーム

【課題】アームの姿勢が変化する場合であっても、線状部材の変形を大きく抑えることのできる多軸ロボットアームを提供する。
【解決手段】多関節ロボットアーム1は、アーム部材10と、アーム部材10同士を連結する関節軸11と、を有するアーム8と、アーム部材10に先端側と根元側とが支持される線状部材17と、を備える多関節ロボットアーム1において、線状部材17の根元側を支持するアーム部材10Cに設置され、アーム8の動きに追従させるように線状部材17の根元側を支持する追従支持装置20を備え、追従支持装置20は、アーム部材10Cに固定されるアーム固定部21と、線状部材17を支持する線状部材支持部22と、複数の追従可動軸25を有し、固定部21と線状部材支持部22とを連結する追従可動部23,25と、追従可動軸25を駆動する追従駆動手段27と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の可動軸を有する多軸ロボットアームに関し、特に、アームにワイヤやケーブル等の線状部材が接続される構成の多軸ロボットアームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、種々のロボットアームが提供されており、下記特許文献1〜3には、アーム先端に溶接用トーチが具備された溶接ロボットが開示されている。溶接ロボットには、溶接用トーチに供給するために、トーチケーブル内に通したワイヤをアーム先端へ向けて送り出すための送給装置が設置されており、このワイヤ送給装置は、アームの所定部分に設置されている。
【0003】
ここで、溶接ロボットにおいては、溶接に適した位置へと順次アーム先端が自在に移動して溶接が行われる。アーム先端の移動は、アームの関節軸においてアーム部材が回転やスライドをすることで実現されるため、アームの移動により、上述したトーチケーブルに捩り、曲げ、引っ張り等の力が作用してしまう。
【0004】
このような力が作用することでトーチケーブルが変形し、折れ曲がるような箇所が生じてしまうと、ワイヤをトーチケーブル内にスムーズに通すことができず、ワイヤの送給に支障が出るおそれがある。
【0005】
このため、特許文献1乃至3においては、ワイヤ送給装置をアームに対してスライド可能に設置したり、アームに対して揺動可能に設置したりすることが開示されている。このように、ワイヤ送給装置をアームに対して移動可能に設置しておけば、トーチケーブルに過剰な力が作用した際に、トーチケーブルの動きに応じてワイヤ送給装置も移動することで、トーチケーブルに働く力を逃がして、ワイヤの送給に悪影響を与えるようなトーチケーブルの変形を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−67893号公報
【特許文献2】特開2005−254404号公報
【特許文献3】実開平5−60669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1〜3に開示されているアームロボットでは、アーム先端が動くことでトーチケーブルに作用する力をケーブルの剛性によりワイヤ送給装置に伝達して、ワイヤ従動的にアームに対して移動させている。
【0008】
このため、特許文献1〜3においては、トーチケーブルの形状や柔軟度等によってワイヤ送給装置に作用する力が大きく変化する。例えば、ケーブルが軟らかい場合には、アーム先端が移動してもワイヤ送給装置が十分に移動することができない。
【0009】
また、ケーブルがある程度の剛性を有していたとしても、ケーブルは一般に変形しやすく、ケーブルの動きに従動するだけでは、アーム先端の動きに比べて、ワイヤ送給装置は僅かに動くだけになってしまう。これでは、ワイヤの送給に悪影響を与えるようなトーチケーブルの変形を抑えることは困難である。
【0010】
このような問題は、溶接ロボットのトーチケーブルに限らず、アームロボットの溶接用トーチ等の作業ツールに、エネルギー、信号、物質等を供給するために用いられるケーブル、チューブ、パイプ等の線状部材全体に生じうる。
【0011】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、アームの姿勢が変化する場合であっても、アーム部材に支持される線状部材の変形を大きく抑えることのできる多軸ロボットアームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係る多軸ロボットアームは、少なくとも3つのアーム部材と、前記アーム部材同士を連結する少なくとも2つの可動軸と、を有する多軸アームと、前記アーム部材に先端側と根元側とが支持される線状部材であって、先端側を支持する前記アーム部材と、根元側を支持する前記アーム部材との間に少なくとも2つの前記可動軸が介在している線状部材と、を備える多軸ロボットアームにおいて、前記線状部材の根元側を支持する第一の前記アーム部材に設置され、前記多軸アームの動きに追従させるように前記線状部材の根元側を支持する追従支持装置を備え、前記追従支持装置は、前記第一のアーム部材に固定されるアーム固定部と、前記線状部材を支持する線状部材支持部と、複数の追従可動軸を有し、前記固定部と前記線状部材支持部とを相対的に移動可能に連結する追従可動部と、前記追従可動軸を駆動するための追従駆動手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アームの姿勢が変化した場合であっても、追従支持装置により線状部材をアームの動きに追従させることで、線状部材の変形を大きく抑えることが可能な多軸ロボットアームを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る多関節ロボットアームの構成を示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に係る多関節ロボットアームの上部拡大正面図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態に係る多関節ロボットアームの上部拡大斜視図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態に係る多関節ロボットアームの上部拡大斜視図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態に係る多関節ロボットアームの上部拡大正面図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態に係る多関節ロボットアームの上部拡大斜視図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態に係る多関節ロボットアームの上部拡大正面図である。
【図8】図8は、本発明の実施形態に係る多関節ロボットアームの上部拡大斜視図である。
【図9】図9は、本発明の実施形態に係る追従支持装置の正面図である。
【図10】図10は、本発明の実施形態に係る追従支持装置の斜視図である。
【図11】図11は、本発明の実施形態に係る追従支持装置が動作した状態の多関節ロボットアームの正面図である。
【図12】図12は、本発明の実施形態に係る追従支持装置が動作した状態の多関節ロボットアームの正面図である。
【図13】図13は、本発明の実施形態に係る追従支持装置が動作した状態の多関節ロボットアームの正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る多軸ロボットアームである多関節ロボットアームについて説明する。本実施形態では、ろう付けにより金属を接合する溶接装置に用いられるロボットアームを例に挙げて説明する。図1は、本実施形態に係る多関節ロボットアームの構成を示す図であり、図1(a)は、多関節ロボットアームの正面図、図1(b)は、多関節ロボットアームの左側面図、図1(c)は、多関節ロボットアームの右側面図である。なお、図1に示す姿勢が、本実施形態に係る多関節ロボットアーム1の基本姿勢である。
【0016】
図2は、本発明の実施形態に係る多関節ロボットアームの上部を拡大して示す拡大正面図である。図3及び図4は、本発明の実施形態に係る多関節ロボットアームの上部拡大斜視図である。
【0017】
図1〜図4に示すように、本実施形態に係る多関節ロボットアーム1は、アーム8と、アーム8の先端部にろう材となるワイヤ18を供給するワイヤ供給装置15と、後述するワイヤ案内チューブ17の根元側をアーム8の先端側の動きに追従させるための追従支持装置20とを備えている。
【0018】
アーム8は、床に設置されるスタンド5と、5つのアーム部材B−F10B〜10Fと、スタンド5を含むアーム部材10同士を相対的に可動可能に連結する6つの関節軸A−F11A〜11Fと、アーム8の先端に設置されるトーチ14とを備えている。なお、本実施形態では、スタンド5もアーム8を構成するアーム部材の一つである。
【0019】
各関節軸11は、各軸を駆動するための関節駆動アクチュエータA−F13A〜13Fをそれぞれ備えている。但し、関節駆動アクチュエータA,E,Fについては、アーム8内部に設置されているため、図示を省略する。スタンド5は、アーム8の延在方向に平行な回動軸である関節軸A11Aにより、地面に対して固定された土台に連結されており、関節駆動アクチュエータA13Aの駆動により、関節軸A11A周りに旋回回動する。
【0020】
アーム部材B10Bは、アーム8の延在方向に垂直な回動軸である関節軸B11Bによってスタンド5に連結されており、関節駆動アクチュエータB13Bの駆動により、関節軸B11B周りに回動する。アーム部材C10Cは、アーム8の延在方向に垂直な回動軸である関節軸C11Cによってアーム部材B10Bに連結されており、関節駆動アクチュエータC13Cの駆動により、関節軸C11C周りに回動する。
【0021】
アーム部材D10Dは、アーム8の延在方向に平行な回動軸である関節軸D11Dによってアーム部材C10Cに連結されており、関節駆動アクチュエータD13Dの駆動により、関節軸D11D周りに回動する。アーム部材E10Eは、アーム8の延在方向に垂直な回動軸である関節軸E11Eによってアーム部材D10Dに連結されており、関節駆動アクチュエータE13Eの駆動により、関節軸E11E周りに回動する。
【0022】
アーム部材F10Fは、アーム8の延在方向に平行な回動軸である関節軸F11Fによってアーム部材E10Eに連結されており、関節駆動アクチュエータF13Fの駆動により、関節軸F11F周りに回動する。アーム部材F10Fの先端に、トーチ14が設置されており、トーチ14に供給されるワイヤ18は、トーチ14が発生する火炎によって加熱されて溶融する。なお、ここでは、トーチ14への燃焼ガスの供給路や制御ケーブル等の図示を省略している。
【0023】
なお、本実施形態では、アーム8の延在方向に垂直な回動軸であり、アーム8を手首のように折れ曲げるように動かす関節軸B,C,E11B,11C,11Eを手首関節軸と称し、アーム8の延在方向に平行な回動軸であり、アーム8を延在方向周りに旋回するように動かす関節軸A,D,F11A,11D,11Fを旋回関節軸と称する。
【0024】
ワイヤ供給装置15は、ワイヤ送給装置16と、ワイヤ案内チューブ17と、ワイヤ18とを備えている。ワイヤ18は、図示しないワイヤロールにロール状に収容されており、このワイヤロールから引き出されたワイヤ18がトーチ14へと供給される。ワイヤ案内チューブ17は、ワイヤ送給装置16とアーム8先端のトーチ14との間に介在する中空の可撓性チューブである。
【0025】
すなわち、ワイヤ案内チューブ17の先端側がトーチ14等を介してアーム部材F10Fに支持され、根元側がワイヤ送給装置16及び追従支持装置20を介してアーム部材C10Cに支持されている。ワイヤ案内チューブ17の内部には、ワイヤ18が挿通されている。
【0026】
ワイヤ送給装置16は、ワイヤ18をトーチ14へと送り出したり、引き戻したりするための駆動ローラーを有する駆動装置であり、追従支持装置20を介して、アーム部材C10Cに設置されている。
【0027】
追従支持装置20は、ワイヤ送給装置16が設置されているアーム部材C10Cよりも先端側のアーム8の動きにワイヤ案内チューブ17の根元側を追従させるように支持するめの装置であり、ワイヤ送給装置16を介してワイヤ案内チューブ17の根元側を支持している。
【0028】
このように、ワイヤ案内チューブ17をアーム8の先端の動きに追従させることで、アーム8の移動によってワイヤ案内チューブ17に過大な曲げや捩りなどの変形が生じたり、ワイヤ案内チューブ17が多関節ロボットアーム1周囲の周辺機器と干渉したりしてしまうことを防止することができる。
【0029】
追従支持装置20は、アーム固定枠21と、送給装置支持枠22と、中間枠23と、追従可動軸A,B25A,25Bと、リンク機構A,B27A,27Bと、ワイヤガイド29とを備えている。以下、図5〜図10をさらに参照しながら、追従支持装置20の構成について詳細に説明する。
【0030】
図5は、本実施形態に係る多関節ロボットアームの上部拡大正面図、図6は、本実施形態に係るロボットアームの上部拡大斜視図である。図5及び図6においては、リンク機構A27Aの構成を分かり易くするために、ワイヤ送給装置16、送給装置支持枠22及びリンク機構B27B等を除いて示している。
【0031】
図7は、本実施形態に係る多関節ロボットアームの上部拡大正面図、図8は、本実施形態に係るロボットアームの上部拡大斜視図である。図7及び図8においては、リンク機構B27Bの構成を分かり易くするために、アーム固定枠21、追従可動軸A,B25A,25B及びリンク機構A27A等を除いて示している。
【0032】
図9は、本実施形態に係る追従支持装置の正面図、図10は、本実施形態に係る追従支持装置の斜視図である。
【0033】
図6等に示すように、アーム固定枠21は、アーム部材C10Cの根元側端部(図6において、右下側端部)に固定されている。中間枠23は、アーム部材C10Cの延在方向に平行な回動軸である追従可動軸A25Aによって、アーム固定枠21に連結されている。中間枠23は、リンク機構A27Aによって駆動力を伝達供給されて、追従可動軸A25A周りに回動する。
【0034】
図10等に示すように、送給装置支持枠22は、アーム部材C10Cの延在方向に垂直な回動軸である追従可動軸B25Bによって、中間枠23に連結されており、リンク機構B27Bによって駆動力を伝達供給され、追従可動軸B25B周りに回動する。
【0035】
ここで、追従可動軸A25Aは、関節軸D11Dに対応する追従軸であり、これと同一軸上の回動軸である。追従可動軸B25Bは、関節軸E11Eに対応する追従軸であり、関節軸E11Eと平行な回動軸である。もちろん、追従可動軸A25Aと関節軸D11Dが偏心していても良い。
【0036】
リンク機構A27Aは、関節軸D11Dを駆動させる関節駆動アクチュエータD13Dの駆動力を追従可動軸A25Aに機械的に直接伝達する駆動力伝達部材である。リンク機構A27Aは、高剛性の金属製の部材から構成され、その一端が関節軸D11D周りに回動するアーム部材D10Dに固定され、他端が追従可動軸A25A周りに回動する中間枠23に固定されている。
【0037】
これにより、リンク機構A27Aは、アーム部材D10Dと中間枠23とが、関節軸D11D及び追従可動軸A25A周りに一体に動くように固定・連結する連結固定部材として機能する。すなわち、関節駆動アクチュエータD13Dの駆動によりアーム部材D10Dが関節軸D11D周りに回転すると、リンク機構A27Aによって連結された中間枠23も、追従回動軸A25A周りにアーム部材D10Dに追従して一体に同じ角度だけ回転する。
【0038】
なお、中間枠23が追従可動軸A25A周りに回動する際には、追従支持装置20において、中間枠23よりも先端側に設置されている追従可動軸B25B、送給装置支持枠22及びワイヤ送給装置16も中間枠23と一体に回動することになる。
【0039】
リンク機構B27Bは、関節軸E11Eを駆動させる関節駆動アクチュエータE13Eの駆動力を追従可動軸B25Bに機械的に伝達する駆動力伝達部材である。リンク機構B27Bは、高剛性の金属製の部材を組み合わせて構成され、その一端が関節軸E11E周りに回動するアーム部材E10Eに固定され、他端が追従可動軸B25B周りに回動する送給装置支持枠22に固定されている。
【0040】
但し、リンク機構B27Bは、リンク機構A27Aのようにアーム部材D10Dと中間枠23とを一体に固定して連結するのではなく、関節軸E11E周りのアーム部材E10Eの回転運動をいったん直線運動に変換し、この直線運動を追従可動軸B25B周りの送給装置支持枠22の回転運動に再度変換して駆動力を伝達するように、アーム部材E10Eと送給装置支持枠22とを連結している。
【0041】
このため、リンク機構B27Bは、アーム部材E10Eに固定されるアーム側固定部27B−1と、直線運動を行うスライド部27B−3と、送給装置支持枠22に固定される追従側固定部27B−5と、回転運動と直線運動とを変換するための5つの変換軸27B−7と、を備えている(図7〜図10参照)。
【0042】
アーム側固定部27B−1とスライド部27B−3とは、3つの変換軸27B−7によって連結されており、アーム部材E10Eの関節軸E11E周りの回転に伴ってアーム側固定部27B−1が回転すると、スライド部27B−3が直線運動を行う。スライド部27B−3には、スライドユニット27B−4が設置されており、スライド部27B−3に固定されるレールと、リンク機構A27A側に固定される二つのユニットとにより、スライド部27B−3が直線運動をするように規制している。
【0043】
スライド部27B−3と追従側固定部27B−5とは、2つの変換軸27B−7によって連結されており、スライド部27B−3が直線運動を行うと、追従側固定部27B−5が回転運動を行う。なお、本実施形態では、追従側固定部27B−5と変換軸27B−7の一方がほぼ同じ場所に設置されている。
【0044】
リンク機構B27Bが追従する関節軸E11Eは、アーム8の延在方向に垂直な方向の回動軸であり、アーム部材E10Eの回転を回転運動のまま追従可動軸B25Bに伝達しようとすると、リンク機構全体が回転運動することでアーム8から大きく離れてしまう場合が生じ、ロボットアーム1の操作性に支障をきたすおそれもある。これに対して、本実施形態のように、いったん直線運動に変換して回転運動を伝達することで、リンク機構をコンパクトに構成することが可能となる。
【0045】
なお、本実施形態では、リンク機構B27Bは、関節軸E11Eの回転角と同じ角度だけ追従可動軸B25Bにおいても回転するように駆動力を伝達するように構成されているが、変換軸27B−7の位置等を調整することで、追従可動軸B25B側の回転角度を適宜調整することもできる。
【0046】
続いて、本実施形態では、主として、関節軸F11Fが回転したときにワイヤ案内チューブ17に作用する力のうち、捩りの動きにワイヤ案内チューブ17が追従することができるように、ワイヤ案内チューブ17は、回転自在にトーチ14及びワイヤ送給装置16に支持されている。
【0047】
ワイヤガイド29は、アーム部材D10Dに一体に固定されたガイド部材であり、旋回関節軸である関節軸D11D周りにアーム部材D10Dやリンク機構A27Aと一体となって回動する。ワイヤガイド29は、二本の棒状部材に挟まれたスリット領域にワイヤ案内チューブ17を通すことで、ワイヤ案内チューブ17の位置を規制しており、ワイヤ案内チューブ17もワイヤガイド29等と一体となって、関節軸D11D周りに回動する。
【0048】
以上、ロボットアーム1の構成について説明したが、続いて、本実施形態における追従支持装置20の動作について、図11〜図13を参照しながら説明する。図11〜図13は、本実施形態に係る追従支持装置が動作した状態の多関節ロボットアームの正面図である。
【0049】
図11は、図1に示す多関節ロボットアーム1の基本姿勢から、関節駆動アクチュエータE13Eにより関節軸E11Eのみを駆動した状態を示しており、図11(a)は、図中左回りにアーム部材E10Eを回転させた状態を示し、図11(b)は、図中右回りにアーム部材E10Eを回転させた状態を示している。
【0050】
同図(a)に示すように、アーム部材E10Eが左回りに回転したときには、リンク機構B27Bによって、この回転力が送給装置支持枠22へと伝達され、送給装置支持枠22もアーム部材E10Eに追従して追従可動軸B25B周りに左回りに回転する。また、同図(b)に示すように、アーム部材E10Eが右回りに回転したときには、同じく送給装置支持枠22も右回りに回転する。
【0051】
送給装置支持枠22がアーム部材E10Eの動きに追従して回転しない場合には、ワイヤ送給装置16とアーム8先端のトーチ14との間に介在するワイヤ案内チューブ17において、ワイヤ送給装置16側が固定端となるのに対して、トーチ14側のみが図11において左右方向に大きく移動するため、ワイヤ案内チューブ17が折り曲げられたり、引っ張られたりする。
【0052】
このため、ワイヤ案内チューブ17内をワイヤ18がスムーズに移動することができなくなって、溶接に支障が生じたり、ワイヤ案内チューブ17に繰り返し大きなストレスがかかることで、チューブが劣化したりといった不具合が発生してしまう。
【0053】
これに対して、本実施形態のように、送給装置支持枠22をアーム部材E10Eの動きに追従して動かすことで、ワイヤ案内チューブ17に過大な変形が発生するのを抑え、良好なワイヤ18の供給等を実現することができる。
【0054】
続いて、図12は、図1に示す多関節ロボットアーム1の基本姿勢から、関節駆動アクチュエータD13Dにより関節軸D11Dのみを駆動し、アーム部材D10Dが関節軸D11D周りに60°程度回転した状態を示している。また、回転方向は、アーム8先端側(図中、左側)から見た場合に、右回りである。
【0055】
同図に示すように、アーム部材D10Dが回転したときには、リンク機構A27Aによって、この回転力が中間枠23へと伝達され、中間枠23もアーム部材D10Dに追従して追従可動軸A25A周りに一体となって回転する。
【0056】
よって、中間枠23がアーム部材D10Dの動きに追従して回転しない場合には、ワイヤ送給装置16とアーム8先端のトーチ14との間に介在するワイヤ案内チューブ17において、ワイヤ送給装置16側が固定端となるのに対して、トーチ側14のみがアーム部材D10Dと一緒に関節軸D11D周りに回転するため、ワイヤ案内チューブ17に余計な力が作用してしまう。
【0057】
これに対して、本実施形態のように、中間枠23をアーム部材D10Dの動きに追従して一体に動かすことで、ワイヤ案内チューブ17に余計な力が作用するのを抑え、良好なワイヤ18の供給等を実現することができる。
【0058】
続いて、図13は、図1に示す多関節ロボットアーム1の基本姿勢から、関節駆動アクチュエータD,E13D,13Eにより、関節軸D,E11D,11Eの双方を駆動した状態を示している。関節軸D,E11D,11Eのそれぞれの動きは、上述した図11及び図12に示した動きと同じであり、図13(a)が、図中左回りにアーム部材E10Eを回転させた状態を示し、図13(b)が、図中右回りにアーム部材E10Eを回転させた状態を示している。
【0059】
同図に示すように、アーム部材D,E10D,10Eの双方が各軸周りに回転した場合であっても、各アーム部材10の動きに追従させて、中間枠23及び送給装置支持枠22を同じように回転させることで、ワイヤ案内チューブ17に過剰な力が作用するのを防止することができる。
【0060】
以上、本実施形態に係る多関節ロボットアーム1について詳細に説明したが、本実施形態によれば、アーム8の先端側の姿勢変化の際に、ワイヤ案内チューブ17の先端側がアーム部材F10Fと一体に移動するのに対して、ワイヤ送給装置16を介してワイヤ案内チューブ17の根元側を支持する追従支持装置20により、ワイヤ案内チューブ17の根元側を追従移動させるように構成しているので、ワイヤ案内チューブ17に過剰な折れや捩れが発生して、ワイヤ18の送給に悪影響を及ぼすといったことを防止することができる。
【0061】
また、本実施形態に係る追従支持装置20は、アーム8の所定の関節軸11に対応して同じ動きをする追従可動軸25を備え、この追従可動軸25を介してワイヤ送給装置16を追従させるように構成しているので、所定の関節軸11周りのアーム部材10の動きにほぼ正確にワイヤ送給装置16を追従させることができ、アーム8の姿勢変化によるワイヤ案内チューブ17の変形を最小限に抑えることができる。
【0062】
また、本実施形態では、ワイヤ送給装置16及び追従支持装置20を介してワイヤ案内チューブ17の根元側を支持するアーム部材C10Cよりも先端側に位置する関節軸D−F11D〜11Fのうち、手首関節軸である関節軸E11Eに対応して同じ動きをする追従可動軸B25Bを追従支持装置20に設置しているので、アーム8の姿勢変化によるワイヤ18の送給への悪影響を大きく抑えることができる。
【0063】
旋回関節軸である関節軸D,F11D,11Fが駆動した場合、ワイヤ案内チューブ17には主として捩りの変形が生じるのに対して、手首関節軸である関節軸E11Eが駆動した場合には、ワイヤ案内チューブ17には主として曲げの変形が生じる。ワイヤ18の送給に支障を来すのは、ワイヤ案内チューブ17に曲率の小さな曲げが生じたときであるため、本実施形態のように、アーム8側の関節軸11のうち、少なくとも手首関節軸に対応する追従可動軸25を追従支持装置20に設置すれば、ワイヤ18の送給への悪影響を大きく抑えることができる。
【0064】
また、本実施形態では、同じくアーム部材C10Cよりも先端側に位置する関節軸D−F11D〜11Fのうち、根元側に位置する関節軸D11Dに対応して同じ動きをする追従可動軸A25Aを追従支持装置20に設置していることによっても、アーム8の姿勢変化によるワイヤ18の送給への悪影響を大きく抑えることができる。
【0065】
一般に、アーム8の先端部からの距離が遠いほど、関節軸11が駆動した際のアーム8先端部の移動距離が大きくなる。よって、アーム部材C10Cよりも先端側に位置する関節軸D−F11D〜11Fのうち、先端側から最も離れる根元側の関節軸D11Dに対応する追従可動軸A25Aを設置することで、アーム8の姿勢変化によるワイヤ案内チューブ17の変形を最小限に抑えることができる。
【0066】
なお、追従支持装置20に複数の追従可動軸25を設置する場合の根元側から先端側への設置順序は、本実施形態のように、各追従可動軸25が対応する関節軸11のアーム8における設置順序と同じにするのが望ましい。所定の関節軸11が駆動すると、当該関節軸11よりも先端側に位置するアーム部材10は全て当該関節軸11周りに回転することになるため、追従支持装置20側でも対応する関節軸11と同じ順序で追従可動軸25を根元側から設置しておくことで、追従支持装置20の先端に位置するワイヤ送給装置16をアーム8の先端部にスムーズに追従させることができる。
【0067】
以上、本実施形態について詳細に説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施形態に限られるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、多関節ロボットアームを構成する関節軸の数は複数であれば適宜変更可能である。
【0068】
また、追従支持装置における追従関節軸の数も適宜変更可能であり、複数の関節軸の何れかに対応する追従可動軸を複数有していれば良い。また、追従支持装置を設置する場所も適宜変更可能であり、先端側に複数の関節軸が設置されるアーム部材であれば、適宜所定の位置のアーム部材に設置することができる。例えば、上記実施形態におけるアーム部材Bやアーム部材C、床面に対して固定されるスタンド(アーム部材)に設置しても良い。
【0069】
また、上記実施形態では、アーム側の関節軸の駆動力を追従支持装置側の追従可動軸に伝達する手段として、アーム部材の動きを追従支持装置の枠に機械的に伝達するリンク機構を採用しているが、追従可動軸を駆動するためのアクチュエータを別途設置するようにしても良い。
【0070】
この場合には、追従可動軸を関節軸の動きに追従させるための追従駆動手段として、関節駆動アクチュエータへの駆動指令信号を受けて追従可動軸を同様に駆動させるように制御する制御手段を設置したり、関節軸の動きを検知するセンサを設置すると共に、このセンサ信号に基づいて追従可動軸を関節軸と同様に駆動させるように制御する制御手段を設置したりする必要がある。
【0071】
また、上記実施形態では、追従駆動手段としてのリンク機構が、関節軸の回転角度と同じ角度で追従可動軸が駆動するように動力を伝達しているが、関節軸と追従可動軸の回転角が1:1でなくても良く、例えば、追従可動軸の追従角度を関節軸の回転角の8割程度に設定するようにしても良い。
【0072】
また、上記実施形態では、多軸ロボットアームを構成する可動軸が手首関節軸及び旋回関節軸である場合について説明したが、可動軸の一部がスライド軸の多軸ロボットアームであっても本発明を適用することができる。スライド軸の場合には、回転駆動力ではなく、スライド駆動力を伝達するように追従支持装置を構成する必要がある。
【0073】
また、上記実施形態では、ろう付けにより金属を接合する溶接装置において用いられるロボットアームに本発明を適用した場合を例に挙げて説明したが、ろう付け以外のアーク溶接等による他の溶接装置を始め、移載装置、切断装置、研磨装置等の種々の多軸アームロボットに本発明を適用することができる。
【0074】
また、線状部材も溶接装置のワイヤ案内チューブに限らず、アームにエネルギー、信号、物質等を供給するために用いられるケーブル、チューブ、パイプ等、アームに接続される種々の線状部材に適用することができる。さらに、本実施形態では、線状部材の根元側をワイヤ送給装置及び追従支持装置を介してアーム部材で支持しているが、単なる中継支持部及び追従支持装置を介して線状部材の根元側を支持する構成であっても良いのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0075】
1 多関節ロボットアーム
5 スタンド
8 アーム
10 アーム部材
11 関節軸
13 関節駆動アクチュエータ
14 トーチ
15 ワイヤ供給装置
16 ワイヤ送給装置
17 ワイヤ案内チューブ
18 ワイヤ
20 追従支持装置
21 アーム固定枠
22 送給装置支持枠
23 中間枠
25 追従可動軸
27 リンク機構
29 ワイヤガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つのアーム部材と、前記アーム部材同士を連結する少なくとも2つの可動軸と、を有する多軸アームと、
前記アーム部材に先端側と根元側とが支持される線状部材であって、先端側を支持する前記アーム部材と、根元側を支持する前記アーム部材との間に少なくとも2つの前記可動軸が介在している線状部材と、を備える多軸ロボットアームにおいて、
前記線状部材の根元側を支持する第一の前記アーム部材に設置され、前記多軸アームの動きに追従させるように前記線状部材の根元側を支持する追従支持装置を備え、
前記追従支持装置は、
前記第一のアーム部材に固定されるアーム固定部と、
前記線状部材を支持する線状部材支持部と、
複数の追従可動軸を有し、前記固定部と前記線状部材支持部とを相対的に移動可能に連結する追従可動部と、
前記追従可動軸を駆動するための追従駆動手段と、を有することを特徴とする多軸ロボットアーム。
【請求項2】
前記追従可動部は、
中間部材と、
前記アーム固定部と前記中間部材とを相対的に移動可能に連結する第一の前記追従可動軸と、
前記中間部材と前記線状部材支持部とを相対的に移動可能に連結する第二の前記追従可動軸と、を備えることを特徴とする請求項1記載の多軸ロボットアーム。
【請求項3】
前記追従駆動手段は、前記可動軸における駆動力を前記追従可動軸における駆動力として機械的に伝達するために、前記アーム部材と前記中間部材又は前記線状部材支持部とを連結するリンク機構を備えることを特徴とする請求項2記載の多軸ロボットアーム。
【請求項4】
前記第一の追従可動軸は、前記可動軸のうち、前記第一のアーム部材の先端側を連結する第一の前記可動軸に対応して同じ動きをする軸であることを特徴とする請求項2又は3記載の多軸ロボットアーム。
【請求項5】
前記第二の追従可動軸は、前記第一の可動軸の先端側に位置する第二の前記可動軸に対応して同じ動きをする軸であることを特徴とする請求項4記載の多軸ロボットアーム。
【請求項6】
前記第一の可動軸は旋回関節軸であり、前記第二の可動軸は手首関節軸であることを特徴とする請求項5記載の多軸ロボットアーム。
【請求項7】
前記追従駆動手段は、前記第一の可動軸の動きを前記第一の追従可動軸における駆動力として伝達するために、前記第一のアーム部材と前記中間部材とを連結固定するリンク機構を備えることを特徴とする請求項6記載の多軸ロボットアーム。
【請求項8】
前記追従駆動手段は、前記第二の可動軸の動きを前記第二の追従可動軸における駆動力として伝達するために、前記第二の可動軸の先端側に位置する前記アーム部材の回転運動を直線運動に変換し、さらに直線運動を再度回転運動に変換して前記線状部材支持部に伝達するリンク機構を備えることを特徴とする請求項6又は7記載の多軸ロボットアーム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−99825(P2013−99825A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245324(P2011−245324)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(508242263)
【Fターム(参考)】