多重モード水晶振動子

【目的】減衰特性の良好な多重モード水晶振動子を容易に得ることが目的である。
【構成】水晶片の他方の主面に形成された共通電極と接地間の接続に関して、従来の接続固定方法に加えて共通電極の引出電極の共通電極の近傍からワイヤーボンディングの手法を用いて短距離で接地に接続することにより、減衰特性が著しく改善されて目的が達成された。

【発明の詳細な説明】
【０００１】
【産業上の利用分野】表面実装型の多重モード水晶振動子の良好な電気的特性を実現する水晶片の取付方法及び電気的接続方法に関する。
【０００２】
【従来の技術】多重モード水晶振動子は、水晶片の主面に入出力電極を形成し他の主面に共通電極が形成され、それぞれの電極からの接続電極を介してそれぞれに対応する容器の端子へ接続又は接続を兼ねた固着により、電気的に接続されていた。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】従来技術では、通常水晶片の入出力電極及び共通電極は特性を考慮して水晶片のほぼ中央に配置され、接続電極は接続上の利便を考慮して水晶片の端に配置される。この電極と接続電極の間は引出電極で接続されている。しかし、この引出電極が長くなると特性に悪影響を与える。特に共通電極とその接続電極の間を結ぶ引出電極が長くなる減衰特性が著しく悪化すると言う課題があった。
【０００４】
【課題を解決する手段】課題を解決するために、共通電極３と接地間の接続に関して、従来の接続固定方法に加えて共通電極３の近傍からワイヤーボンディング６の手法を用いて短距離で接地に接続することにより、減衰特性が著しく悪化すると言う課題が解決された。
【０００５】
【実施例】多重モード水晶振動子は、水晶片１を気密容器に封入されている。水晶片１には主面に入出力電極２を配置し、入出力電極２から引出電極５を介して接続電極４に接続されている。なお、接続電極４は水晶片１の対角線上の角に配置されており、この接続電極４は他の主面に同じ接続電極４を有し回り込み電極にて接続されている。このことにより、共通電極１の配置されている他の主面と同一面から容器８への接続が可能になる。他の主面（図面では表の面）に共通電極３が配置され、共通電極３から引出電極５を介してそれぞれの接続電極４に接続されている。なお、接続電極４は水晶片１の入出力電極２の接続電極４とは異なる他の対角線上の角に配置されている。容器８は、入出力用端子及びシールド電極９を有する基板、枠部、溶接リングを積層した容器１本体と、金属製蓋部１０からなり、シールド電極９と溶接リング１１は内部で電気的に接続されており、溶接リング１１と接続される金属製蓋部１０もシールド電極９と同電位（接地）になる。容器８のシールド電極９、端子，その他導体等は、容器１本体の焼成時に一体的に形成され、容器１の開口部に溶接リング９をロー付けされている。なお、水晶片１の接続電極４に相当する位置と共通電極３の短距離アースをワイヤーボンディング６する接地位置のメタライズは、水晶片取付台１２として重ねメタライズにより厚めに出来ている。容器８に水晶片１を搭載する。容器１を、左上と右下を入出力端子になる向きに置き、水晶片１の入出力電極２の面を容器８のシールド電極９と向かい合わせに、しかも左上と右下を入出力端子になる向きに置き、左の２点を導電接着剤７で固着すると共に導通を確保する。右の２点は、ワイヤーボンディング６にて接続する。図４に９０ＭＨｚ帯に於ける多重モード水晶振動子の通過帯域外の減衰特性の一例を示す。図４（ａ）は、共通電極近傍ワイヤーボンディングによる接地接続の無い場合を示し、図４（ｂ）には、共通電極近傍ワイヤーボンディングによる接地接続の有る場合を示した。通常は、公称周波数ｆ₀より−９１０ｋＨｚがイメージ周波数になるので、この位置の減衰量が一応の目安になるのでこの点で比較すると図４（ａ）では、約５５ｄＢ減衰しているのに対して、図４（ｂ）では約７８ｄＢ減衰しており図４（ｂ）の方が約２３ｄＢ減衰特性が向上している。
【０００６】また、前記の共通電極近傍ワイヤーボンディングについては、容器の底面の水晶片取付台としての重ねメタライズが、水晶片の下に迄形成されておりワイヤーボンディングの際の水晶片の支えを兼ねている。このメタライズと水晶片の重なり幅は、共通電極縁と水晶片の縁のほぼ中央が一応の目安であるが、実際には水晶片の縁から共通電極の縁まで使える。
【０００７】図２に示す様に、水晶片１と水晶片取付台１２としての重ねメタライズは、通常は実線で示す位置に有るので接触しなので、前記の様に水晶片１と水晶片取付台１２としての重ねメタライズが重なる形で配置されていても、影響は無い。このギャップは比較的小さいので、水晶片１はワイヤーボンディング時にはキャピラリに押されて点線の位置迄下がり、水晶片１の下に有る水晶片取付台１２としての重ねメタライズに押しつけられて、水晶片１を支えて台の役目を果たし、確実なワイヤーボンディング６が行われる。ワイヤーボンディング６が終了しキャピラリが水晶片１から離れると、水晶片１も元の実線の位置に戻り水晶片取付台１２の重ねメタライズから離れる。ここに挙げたのは、一実施例に過ぎず他のパターンの位置や形状にの場合でも有効で有る。
【０００８】
【発明の効果】本発明により、水晶片の共通電極の近傍から容器内の接地に、ワイヤーボンディングにより短距離で接続出来るので、通過帯域外の減衰特性が著しく改善されたので良好な多重モード水晶振動子が容易に得られる様になったばかりでなく、水晶片取付台としてのメタライズを設けたことにより、破損及び特性不良が減少し、ローコストで信頼性の高い多重モード水晶振動子の提供が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図１】図１は、本発明による実施例を示す平面図である。
【図２】図２は、本発明の実施例を示す図１のＡ−Ａ’の断面図である。
【図３】図３は、本発明の実施例を示す容器底面の平面図である。
【図４】図４（ａ）は、本発明のエッチング溝にレジスト膜を形成した状態の実施例を示す断面図である。図４（ｂ）は、本発明のエッチング溝にレジスト膜を形成した状態の実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
１水晶片
２入出力電極
３共通電極
４接続電極
５引出電極
６ワイヤーボンディング
７導電接着剤
８容器
９シールド電極
１０金属製蓋部
１１溶接リング
１２水晶取付台
１３メタライズ

【特許請求の範囲】
【請求項１】主面に、入出力電極が形成され、他方の主面に共通電極が形成された水晶片と、前記水晶片の電極に対向する側にシールド電極が形成された底面を有する容器と、該容器の開口部の周囲に接地電位に接続された溶接リングと、該溶接リング上に金属製の蓋を有し、且つ前記水晶片の容器への固着及び接続が前記水晶片の該入出力電極を容器底面のシールド電極に対向させて、２点が導電接着剤による固着導通、他の２点がワイヤーボンディングによる導通する構造において、該共通電極の各々の引出電極の共通電極の近傍からワイヤーボンディングにて接地へそれぞれ接続することを特徴とする多重モード水晶振動子。
【請求項２】該共通電極の各々の該引出電極の該共通電極の近傍から行うワイヤーボンディングの近傍まで、前記水晶片の下へ水晶片取付台が延長されていることを特徴とする特許請求の範囲第１項記載の多重モード水晶振動子。

【図１】