説明

多錘用溶融紡糸口金パック

【課題】複合合成繊維用の口金パックにおいて、口金を保持する口金ホルダーのみを各口金に対応するように分割化することで、複合紡糸用口金間の高さ寸法差を解消し、口金の重ね合わせ面間に必要なポリマーシール軸力を確保することが可能な複合紡糸用口金パックを提供する。
【解決手段】既存の複合紡糸用口金パッは、一般的に一つのパック内に複数個の口金を保持するるが、一つの口金ホルダーで複数の口金を保持した場合、各口金の高さ寸法のばらつきに起因する口金の締付け力不足が生じる。結果、ポリマー洩れによる糸物性低下、安定生産の阻害を招き、これを抑制するためのパック構造や口金設計が困難である。コンジュゲート口金の締結力を充分に確保し、且つ設計が容易で安価なパック構造を有し、紡糸した糸条の品質を確保することが今後の大きな課題である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つの紡糸口金パックに装着された複数組の口金から熱可塑性ポリマーからなる多錘の繊維をそれぞれ溶融紡糸するための多錘用溶融紡糸口金パックに関する。
【背景技術】
【0002】
互いに異なる2成分以上の熱可塑性ポリマーを個別の溶融押出機から押し出し、紡糸口金パック(以下、単に「パック」とも言う)の内部で合流させて複合繊維を生産することは一般的に行なわれている溶融紡糸プロセスである。このようにして製造される複合繊維としては、サイドバイサイド型、海島型、芯鞘型及びこれらの組合わせ型などがある。また、一個のパックから複数本のマルチフィラメント糸を溶融紡糸するための多錘用パックも近年において生産性向上などを目的として多用されるようになって来た。
【0003】
ここで、このような既存の多錘用の複合紡糸パックについて図2を用いて簡単に説明する。なお、図2は、既存の多錘用の複合紡糸パックを模式的に例示した正断面図である。この図2において、符号1はトッププレートと称される部品、符号2は、パックボディと称される部品、符号3は、口金ホルダーと称される部品であって、これらの部品はパック本体を構成している。
【0004】
更に、これらパック本体の内部には、その詳細についての説明は省略するが、トッププレート1のポリマー導入流路4からパック内部に導入されたポリマーを濾過するための濾過層5などの公知の紡糸部品を内蔵している。また、符号6は紡糸口金(以下、単に「口金」とも言う)である。通常、この口金6は、その最上面にシール材付きの口金直上フィルター(図示せず)を介してパックボディ2と接続している。このとき、口金6とパックボディ2との締付は、口金ホルダー3によって締付ボルト7により行なわれる。
【0005】
以上に説明した多錘用複合紡糸パックを使用して行なう複合繊維の溶融紡糸プロセスは、例えば溶融押出機(図示せず)からそれぞれ溶融押出された2成分以上のポリマー別々にパック本体内に導入し、口金6内で合流させて複合ポリマー流とし、この複合ポリマー流を口金6から紡出することによって行なわれる。このとき、口金6内で形成される複合ポリマー流については、要求される複合繊維の型に対応してその合流形態が様々に変化させられることは言うまでもない。
【0006】
このように、複合繊維を溶融紡糸するための口金には、製造する複合繊維のそれぞれの型に対応させて複雑なポリマー流路を形成することが要求される。しかしながら、複雑なポリマー流路を一枚の口金板に加工することは、極めて難しく不可能であると言わざるを得ない。
【0007】
そこで、どうしても複数枚の口金板に分解して、これら口金板のそれぞれにポリマー流路を加工した後、これら口金板群を互いに重ねて組合わせることによって、その内部に複雑なポリマー流路を形成せざるを得ない。なお、図2では、4枚の口金板によって一個の口金6が形成されている例が示されている。
【0008】
このとき、図2に例示したように、複数の口金板群(図では4枚の口金板が例示されている)を重ね合わせて構成された口金6では、口金板同士が互いに接触する各接合面をシール材を介してシールすることは、複雑な流路加工が施されていることから困難である。それ故、これらの接合面は平面性良く仕上げられた面接合によりメタルタッチでシールされるのが一般的である。
【0009】
ところが、このような口金板同士のメタルタッチによるシール方法を採用するとなれば、互いに接合させるメタルタッチ面に対して均等にシール圧力を付与することが必要となる。何故ならば、メタルタッチ面に不均等なシール圧力がかかると、片当りが生じて不良接触によってシール性が悪くなり、シール面(メタルタッチ面)からポリマー漏れが発生する可能性が大きくなるからである。言うまでもなく、このようなポリマー漏れは様々なトラブルの原因となるため、ポリマー漏れの発生を防止することは、紡糸パックにとっての基本条件である。
【0010】
したがって、複数個の複合紡糸用口金を一個のパックに組み込んだ複合紡糸用多錘パックを設計する上で重要なことは、一個のパックに組み困れた複数個の口金6に対して、各口金6に均一なシール圧力をそれぞれ付与することである。しかし、一般に使用される複合紡糸用多錘パックでは、図2に例示したように、一個の口金ホルダー3で複数個の口金6の全てをパックボディ2に対して締付ボルト7によって締め付ける構成となっている。そのため、均一なシール圧力をそれぞれの口金6に付与するには、各口金6の高さ寸法を均一に揃えることとが必要となる。
【0011】
つまり、各口金6間に高さ方向(口金板の積層方向)に寸法差が発生した場合、全ての口金6をパックボディ2に押し当てて締付ボルト7によって締結すると、ポリマー洩れを防止するためのシール面圧が、いずれか高さ寸法が小さな口金6において不足することとなり、その結果、ポリマーの漏洩が生じることとなる。そのため、口金6を構成する各口金板の加工は、複雑なポリマー流路の加工と共に各口金板の高さ寸法(厚さ寸法)についても非常に精度が厳密な精密加工を行なうことが要求される。
【0012】
しかも、口金6の直上で、かつ濾過層5の下端に設ける口金直上フィルターに関しては、シール性を確保するためにシール材の押潰し量を考慮したシール材の設計も必要となる。例えば、特許文献1および特許文献2に開示されているように、パック内部からのポリマー漏れを抑制する手段としてパックを構成する部品間のシール構造を工夫することが行なわれている。この場合、アルミニウムあるいはその合金等の延性を有する金属材料を塑性変形させるシール材が一般的に使用されるので、このような材料によるシール構造にも特別な配慮をしなければならない。
【0013】
しかしながら、このような手段も口金6の高さの寸法公差が一定の基準値に収まっていることが前提である。このため、シール構造の設計段階でシール性についての十分な設計検討と現物での実施検証が必須となり、設備の設計や検証期間の増大を招いている。なお、このような十分な対策を講じたとしても、長期間の使用による経時変化などによって、仮に口金板の重合わせ接合面からポリマー洩れが発生した場合、本来口金6のポリマー吐出面に穿孔された吐出孔(図示せず)から紡出されるべきポリマー供給がその途中で漏れてしまって確実に行われないため、糸条の繊度斑が発生し安定した紡糸が行なえないこととなる。
【0014】
また、シール性が悪いために口金板のメタルタッチ面から漏れ出したポリマーが口金板の接合面間に残留して長期間にわたる滞留によってポリマーの熱劣化が発生する。そして、この劣化したポリマーがフレッシュなポリマーへ混入したりすると断糸や物性低下を招くことになる。更には、生産時のパック組立において、各口金6を口金ホルダー3によってパックボディ2へ締結する際に締付けボルト7の偏締めを発生させないよう締付トルクの管理と締付け条件が十分に満足しているのを確認した上で、締付けバランスを考慮した組立が必要となる。そうすると、熟練した専任の作業者による組立が必要となるなど、運転管理面でも非常に大きな負担を強いられている。
【0015】
また、複合紡糸用の多錘パックでは、口金6を構成する複数枚の口金板群の重ね合わせ時の高さ寸法に個体差を発生させないよう、一定の許容公差値内に収まるように口金板の製作精度を管理する必要があり、それ故に、一般的に口金6の製作コストは高価なものとならざるを得ない。その上、パック構造についても口金直上フィルターのシール性などを考慮した設計が必要となるので、設計段階と同様に製作が完了したパックについても実物によるポリマー漏れの発生がないことの検証が必要となる。このように現状の複合紡糸用の多錘パックは、設備設計上、糸品質上、あるいは設備管理上において大きな問題を抱えている。
【0016】
【特許文献1】特開2004−232092号公報
【特許文献2】特開2004−211250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
以上に説明した従来技術が有する諸問題に鑑み、本発明の目的は、一個のパック内に複数の複合紡糸用口金を装着する多錘パックにおいて、各口金の高さ寸法のバラツキに起因するシール不良によって、複数枚の口金板を重ね合わせて積層した口金を構成する口金板同士のメタルタッチ面からのポリマー漏れを防止すると共に、複合紡糸用の多錘パックからのポリマー漏れを防止できる設計とその検証を簡便に実施できる複合紡糸用多錘口金パックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
ここに、前記課題を解決するための本発明として、「一つの紡糸口金パックに対して複数組の口金を口金ホルダーによって装着固定し、各組の口金から溶融した熱可塑性ポリマーを紡出して多錘糸条を溶融紡糸する多錘用溶融紡糸口金パックにおいて、複数組の前記口金に一対一に対応するように前記口金ホルダーを分割し、分割した口金ホルダーによって各組の口金のそれぞれを装着固定することを特徴とする多錘用溶融紡糸口金パック」が提供される。
【0019】
このとき、前記の本発明は、複数組の前記口金が複数枚の口金板群を重ね合わせた構造を有し、かつ、前記各口金板を重ね合わせた面がメタルタッチのシール構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の多錘用溶融紡糸口金パックであることが、口金を構成する口金板群間のメタルタッチのシール構造部から漏れ出すポリマーを好適に抑止できるために好ましい。
また、前記の本発明は、複数組の前記口金が複合紡糸用口金であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、多錘パックに組み込まれる各組の口金に一対一で対応した分割型口金ホルダーによって重ね合わされた口金板群を個別にそれぞれ締結できるため、全組の口金を一つの口金ホルダーで締付ける際に生じる各組の口金間での高さ寸法差の影響で生じるシール力のバラツキを解消することが可能となる。更には、ポリマー漏れを防止するために、困難を極めていた口金とパックの組合せと締結構造に関する設計も容易となるため設計期間の短縮、口金製作期間の短縮に繋がることから生産までのリードタイムを短縮でき機会損失の低減が図れる。
【0021】
更に、紡糸口金パックを組立てる際に、ボルトの締付けトルクを管理して適切に規定することによって、作業者間の熟練度や作業手順の違いといった不確定要素を除外でき、作業者間での組立ばらつきに起因する締結力のばらつきを抑制することも可能となり、生産性の向上を図ることができる。
【0022】
また、各組の口金を構成する口金板群やパック本体の製作においても加工公差を緩和でき、一般公差での製作が可能となり精密な加工が不要となる。このため、加工工数や製品の検査に費やす時間と費用を大幅に低減することが可能となる。特に、口金板群は、消耗品でありある程度の期間に渡って使用すれば交換が必要となり、また、パック等と異なり製作数量が多いことから、口金板群の製作費用を低減できることは大きな利点である。
【0023】
更に、何よりもパックや口金6などは、高品質な糸を生産するために使用されるものであるから、糸の品質を低下させるような要素を持つ設備であってはならない。そのような観点から1組の口金を構成する口金板群の重ね合わせ部からの微小なポリマー漏れなどの糸品質に影響を与える要因を排除しなければならないが、本発明によりポリマーの漏洩を防ぐことが可能となり、熱劣化による異物混入を抑制し高品質な糸条を得ことができ、安定な生産が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る複合紡糸用の多錘口金パックの一実施形態例を模式的に例示した正断面図である。すなわち、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンなどの熱可塑性ポリマーからなる互いに異なる2成分以上のポリマーが、一本のフィラメント(単繊維)中に繊維軸方向に沿って貼り合わされて形成された複合繊維を紡糸するパック構造の一実施形態例を示したものである。
【0025】
ただし、図1に使用した符号に関して、既に説明した従来のパック(図2に記載のもの)と実質的に同じ機能を有する部品については、図1と図2とで共通符号を使用した。また、以下の説明においては、複合紡糸用の溶融紡糸口金パックについて行なうが、単一のポリマーを溶融紡糸する場合についても、その効果は複合紡糸用の溶融紡糸口金パックに対して幾分劣ることにはなるが、多錘用の溶融紡糸口金パックにおいても、同様であることを付言しておく。
【0026】
ここで、本発明を例示した図面に使用した参照符号について簡単に説明すると、前記図1において、符号1はトッププレート、符号2はパックボディ、符号3a及び3bは分割された各口金ホルダー、符号4はポリマー導入流路、符号5はポリマー濾過層、符号6は紡糸口金、そして、符号7は締付ボルトをそれぞれ示す。
【0027】
以上に説明した本発明に係るパックの実施形態例において、図示省略したスピンブロックのパックドームに装着されたパックのトッププレート1内部に形成されたポリマー導入流路4から導入される。なお、図1には、一個の口金6に対して導入されるポリマー導入流路4が一つだけしか記載されていないが、当然のことながら、サイドバイサイド型、海島型、芯鞘型及びこれらの組合わせ型などの複合繊維を溶融紡糸するのに必要なポリマー成分の数だけ形成されることは言うまでもない。
【0028】
ただし、それぞれの型の複合繊維に応じてポリマー導入流路4の数や形状が異なるため、図1では、一つのポリマー導入流路4で便宜上代表させた。したがって、実際の複合紡糸用の多錘パックとは異なる。しかし、実際と異なる記載とした理由は、その詳細については後述するが、本発明においては、複数個の口金6を一個のパックに装着し、多数の複合単繊維からなるマルチフィラメント糸条を各口金6からそれぞれ紡出する多錘パックの口金取付構造を問題とするのであって、それ以外の詳細なパック構造については、本発明と直接的に関係しないからである。
【0029】
以上に説明したように、互いに異なるポリマー成分の数だけ形成されたポリマー導入流路4から導入されたポリマーは、各口金6の直上に設けられた口金直上フィルター(図示せず)とこのフィルター上部のパックボディ2内部にポリマー導入流路4の数に一対一で対応する数だけ形成された濾過層5(なお、図1及び図2では、各一個の濾過層だけ形成された態様が便宜的に記載されている)をそれぞれ通過して各ポリマー中に含まれる異物や凝集物が濾過される。
【0030】
次いで、前述のようにして濾過された各ポリマー成分は、各口金6へそれぞれ流入して、この口金6に形成された複雑なポリマー流路を通過することによって、各種の複合繊維の型に対応した複合ポリマー流が形成され、最終的に口金6に穿設されたポリマー吐出孔群(図示せず)から複合マルチフィラメント糸条として紡出される。
【0031】
なお、一本の複合マルチフィラメント糸条は、複数枚の口金板群から構成される一組の口金6から紡出されるが、この口金6は多錘用パックでは一個のパックに対して複数個所にそれぞれ装着されることは既に説明した通りである。このように多錘パックが利用される理由は、その組立作業性、運転管理、製作費用を低減するためであり、このために、一つのパックに複数個の紡糸口金を保有する形態が一般に行なわれているのである。
【0032】
このとき、各組の口金6内部で成分の異なるポリマーを合流させ一本の複合繊維として形成するために、前述のように複雑なポリマー流路が加工された複数枚の口金板群が重ね合わせて使用されるが、これらの口金板群はピンなどにより位置決めされ、口金ホルダー3とパックボディ2間でボルト7の締結力によって固定される。なお、重ね合わされた各口金板は金属同士のメタルタッチによってシールされ、シール材などは用いられない。
【0033】
このように、メタルタッチシールを使用すると、図2に示すような従来の複合紡糸用のパックにおいて、口金6,6を締結固定する場合に、例えば、2組の口金6,6の内で一方の組の口金6の重ね合わせ高さが、0.2〜0.3mm程度異なるだけでも口金ホルダー3によって締結した後に紡糸を行なった場合、口金高さ寸法の低い側の口金のメタルタッチ部からポリマー洩れが発生することが分かっている。
【0034】
したがって、ポリマー漏れを防止するためには、各組の口金6の高さ寸法差が少なくとも0.1mm以下に収まるようにする必要があり、例えば、図2に示すような四枚重ねの口金板群からなる従来の口金6,6を使用した場合、一枚の口金板の厚みの加工精度を±0.0125mmの範囲に収める必要が生じる。そうすると、加工精度を確保するために加工費用が高価となるばかりでなく、口金の加工精度の検査に多大な時間を費やすこととなり生産的ではない。
【0035】
また、実際の紡糸口金パックの組立作業において、2組の口金6のバランスを考慮して口金ホルダー3をパックボディ2に対してボルト7によって締付けて組立なければならず、組立時の締付力の管理が必要となると共に、作業者の熟練度合いなどによっても締付けのばらつきが生じ易いので、作業者の個人差に対しての対応も必要となる。
【0036】
そこで、本発明においては、図1に示すように、2組の複合紡糸用口金6,6を固定する口金ホルダー3を各組の口金6と6とに対応させて、口金ホルダー3aと口金ホルダー3bとに分割する。そして、分割した口金ホルダー3aと3bとで口金6と6をパックボディ2に対してボルト7によってそれぞれ締付ける構造を採用する。そうすると、各組の口金6と6は、それぞれ口金ホルダー3aと3bによって個別に締付けられることとなるので、各口金6の寸法高さのばらつきに起因して高さの低い組の口金6の締結力が不足するという問題を解消することができる。
【0037】
以上に説明したように、各組の口金6,6に対応した締付けが可能な分割型口金ホルダー3a,3bとすることにより、例えば2組の口金6,6の内、一組の口金6の口金板群を重ね合わせた際の高さの差が0.5mm程度あった場合でも、それぞれの口金6を個別に締結できるため、各組の口金6,6間の高さ寸法差の影響を解消することが可能となる。
【0038】
更に、紡糸口金パックを組立てる際に、ボルトの締付けトルクを管理して適切に規定することによって、作業者間の熟練度や作業手順の違いといった不確定要素を除外でき、作業者間での組立ばらつきに起因する締結力のばらつきを抑制することも可能となり、生産性の向上につながる。
【0039】
また、口金6,6を構成する口金板群やパック本体の製作においても加工公差を緩和でき、これによって加工工数や製品の検査に費やす時間と費用を大幅に低減することが可能となる。特に、口金6は、基本的には消耗品であり交換が必要となること、またパック等と異なり製作数量が多いことから、1組の口金6の製作費用を低減できることは大きなメリットである。
【0040】
更に、何よりもパックや口金6などは、高品質な糸を生産するために使用されるものであるから、糸の品質を低下させるような要素を持つ設備であってはならない。そのような観点から1組の口金6を構成する口金板群の重ね合わせ部からの微小なポリマー漏れなどの糸品質に影響を与える要因を排除しなければならないが、本発明により前述のポリマー漏れの発生を防止できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の複合紡糸用口金パックの一実施例を示す概要図である。
【図2】既存の複合紡糸用口金パックの一実施例を示す概要図である。
【符号の説明】
【0042】
1.トッププレート
2.パックボディ
3.口金ホルダー
3a.口金ホルダー(A)
3b.口金ホルダー(B)
4.ポリマー導入流路
5.ポリマー濾過層
6.紡糸口金
7.締付ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの紡糸口金パックに対して複数組の口金を口金ホルダーによって装着固定し、各組の口金から溶融した熱可塑性ポリマーを紡出して多錘糸条を溶融紡糸する多錘用溶融紡糸口金パックにおいて、複数組の前記口金に一対一に対応するように前記口金ホルダーを分割し、分割した口金ホルダーによって各組の口金のそれぞれを装着固定することを特徴とする多錘用溶融紡糸口金パック。
【請求項2】
複数組の前記口金が複数枚の口金板群を重ね合わせた構造を有し、かつ、前記各口金板を重ね合わせた面がメタルタッチのシール構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の多錘用溶融紡糸口金パック。
【請求項3】
複数組の前記口金が複合紡糸用口金であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の多錘用溶融紡糸口金パック。

【図1】
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【図2】
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