説明

多面付け現像パターン形成済プリント配線板用基材の製造方法および検査方法、多面付けプリント配線板の製造方法および検査方法、半導体装置の製造方法、ならびに露光マスク

【課題】測定機等を使用したり工程数が増えたりしてコストアップを招くことなく、多面付けプリント配線板に形成された隣接する単位毎の配線パターン同士の相対位置ズレ量が規定値を超えること、または超えたことを、容易に判定する。
【解決手段】プリント配線板用基材3上の感光性樹脂膜5が電光マスク6を介して露光されて、位置精度判定用の露光済パターン部22aと未露光パターン部21aが形成され、基材3がステップ送りされて、感光性樹脂膜に、露光済パターン部22aと対応する位置にはそれより小面積の未露光パターン部21aが、また未露光パターン部21aと対応する位置にはそれよりも大面積の露光済パターン部22aが形成され、隣接する単位毎の相対位置ズレ量が規定値Kを超えるときは、未露光パターン部の一部が位置ズレ判定用未露光パターン23として残され、それが現像されて位置ズレ判定用現像パターン23aが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リジッド配線板、フレキシブルプリント配線板、TAB(Tape Automated Bonding)テープ、COF(Chip On Film)テープなどの、単位毎の配線パターンが多数形成された多面付けプリント配線板の製造方法、および隣接する単位パターン同士の相対位置ズレ量が規定値を超えているかどうかを検査する多面付けプリント配線板の検査方法に関する。ならびに、そのような多面付けプリント配線板の製造過程における多面付け現像パターン形成済プリント配線板用基材の製造方法および検査方法に関する。ならびに、多面付け現像パターン形成済プリント配線板用基材の製造方法で用いる露光マスクに関する。ならびに、多面付けプリント配線板の検査方法を利用して半導体素子の搭載が決定される半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント配線板は、微細化、小型化になる傾向にあり、生産性の向上や基材のコストダウンの関係から基材を広幅化または長尺化するなどして広面積化し、単位毎の配線パターンの面付け数を増やした、多面付けプリント配線板の製造が行われ、また形成された多面付けプリント配線板の電気的な導通検査が行われている。
【0003】
従来、多面付けプリント配線板である多面付けCOFテープは、例えば図11(A)ないし(G)に示すようにして製造されていた。まず、図11(A)に示すように、絶縁基材101の表面に配線パターン形成用の導電体102をベタ状に設けたプリント配線板用基材103が用意され、(B)に示すように、金型などを用いて両縁に沿ってスプロケットホール104が打ち抜かれ、次いで図11(C)に示すように、導電体102の表面に感光性樹脂を塗布して乾燥させて感光性樹脂膜105が形成される。
【0004】
それから、図12に示す露光マスク106を用い、その露光マスク106に形成されたスプロケットホールマスクパターン114と上述のスプロケットホール104を、光学式認識装置によって認識し、それぞれの位置が重なり一致するように位置制御を行って位置決めされた後、図11(D)に示すように露光マスク用フレーム130を通して露光光線107を照射して露光が行われる。図12に示す露光マスク106において、ハッチングのない部分が透光部106Aであり、ハッチングのある部分が遮光部106Bであり、このように露光が行われると、感光性樹脂膜105に、露光マスク106の配線パターン用マスクパターン108Aが投影された部分には光が当らないので、図11(D)に示すように露光されない状態のままの未露光配線パターン部108aが生成される。
【0005】
その後、露光された感光性樹脂膜105を有するプリント配線板用基材103がステップ送りされ、図12に示す露光マスク106の単位パターン領域A寸法に相当する分だけ搬送される。そして、露光マスク106に設けられたスプロケットホールマスクパターン114とスプロケットホール104とが光学式認識装置によって認識され、それらのスプロケットホールマスクパターン114とスプロケットホール104とが重なり一致するように位置制御された後、再び露光光線107を照射して露光が行なわれる。
【0006】
これらを繰り返し行って単位毎の未露光配線パターン部108aが多数生成され、次に現像を行って図11(E)に示すように配線用現像パターン108cが形成され、また同時にスプロケットホール104周囲の未露光状態である感光性樹脂膜105も補強パターン用現像パターン108fとして残され、多面付け現像パターン形成済プリント配線板用基材109が形成される。
【0007】
なお、一般的に、露光によって露光光線が照射され露光された部分の感光性樹脂膜が現像処理によって除去されるポジ型と、露光光線が照射されない部分の未露光状態の感光性樹脂膜が現像処理により除去されるネガ型があるが、以上の説明は、感光性樹脂膜105が現像処理によって除去されるポジ型の場合である。
【0008】
次いで、配線用現像パターン108cおよび補強パターン用現像パターン108fをエッチングレジストにして、導電体102がエッチングされてから、エッチングレジストがアルカリ溶液で除去される。これにより、図11(F)に示すように、絶縁基材101の表面に、単位毎の配線パターン108dとその一部であるテストパット部108eが絶縁基材101の長さ方向に並べて複数形成され、また同時に補強パターン108gが形成され、それらの表面に防錆および半導体素子の接続に必要な例えば錫めっき126が施された多面付けCOFテープ110が完成される。図13には、その多面付けCOFテープ110の平面を示す。図11(F)は、そのD4−D4線に沿う矢示方向断面である。
【0009】
ところが、スプロケットホール104は、一般的にプリント配線板用基材103の両端近くに金型を用いて打ち抜き形成される。打ち抜かれたプリント配線板用基材103を構成する絶縁基材101は、ポリイミドなどを用いているため湿度の影響を受けて伸縮する。そのため、プリント配線板用基材103に形成された各スプロケットホール104間の寸法は、露光時には設計値と異なる場合がある。
【0010】
また、スプロケットホール104には、金型による打ち抜きで、バリ、ヒゲ、カス等が発生する場合があり、また露光工程前の加工工程を経ることで、スプロケットホール104が変形することがある。そのため、光学式認識装置によって認識し、スプロケットホールマスクパターン114とスプロケットホール104とが重なり合うように位置制御しても、プリント配線板用基材103と露光マスク106との間に、相対的な位置ズレが発生することがあった。
【0011】
プリント配線板用基材103と露光マスク106の位置関係に相対的なズレが発生した場合、結果的に隣接する単位毎の配線パターン108d同士の位置関係にも位置ズレが発生する。図13は、従来の露光マスク106を用いて、単位パターン領域A1からA2の順番に露光を行ったとき、単位毎に形成された配線パターン108d群同士の位置関係においても相対位置ズレが発生し、相対位置ズレ量の規定値Kよりも+αだけずれた状態、すなわちK+αだけずれた状態を示す。ここで、相対位置ズレ量の規定値Kは、後に行う導通検査時にテストパット部108eからプローブピンが外れないようにするために定めた値である。
【0012】
ところで、このようにして形成された図13に示す多面付けCOFテープ110は、一般的に光学式認識装置による外観検査装置を用いて検査が行われている。しかし、光学式認識装置の分解能の限界を超えるような極細線によるショート108hが発生していた場合、そのショート108hが検出されずに誤判定になる可能性がある。そこで、外観検査装置による検査の後、配線パターン108dの一部であるテストパット部108eにプローブピンを当接させて導通検査が行われている。
【0013】
この導通検査は、検査の効率を上げるために、例えば図13に示すプローブピンの当接位置120のように、例えば単位パターン領域A2とA3に形成された2つの単位毎の配線パターン108d群のテストパッド部108eにプローブピンを同時に当接させることで、同時に行われている。さらに効率を上げるために、この導通検査は、3つ以上の単位毎の配線パターン108d群に対して同時に行われることもある。
【0014】
ところが、図示例では、単位パターン領域A2およびA3に形成された単位毎の配線パターン8d群同士の相対位置ズレ量が、テストパット部108eからプローブピンが外れないようにするために定めた規定値Kよりも+αだけ大きく、プローブピンがテストパット部108eから外れてしまった状態を示している。よって、図示例のような場合には、導通検査を正確に行うことができない問題があった。そして、仮に配線パターン108d間にショート108hが発生して電気的な短絡状態になっていたとしても、ショート不良の判定にはならず、良品と誤判定してしまう問題があった。なお、この例の導通検査は、ショート検査のみであって、オープン検査は行っていない事例である。
【0015】
図13に示すプローブピンの当接位置120は、単位パターン領域A2に形成された単位毎の配線パターン108dのテストパット部108eを認識してプローブピンの位置決めを行った場合の状態を示したものである。ところで、図示しないが、単位パターン領域A3に形成された単位毎の配線パターン108dのテストパッド部108eを認識して、プローブピンの位置決めを行った場合は、単位パターン領域A2に形成されたテストパット部8eからプローブピンが外れてしまう問題が発生する。
【0016】
さて、図11(F)や図13示すように製造された多面付けCOFテープ110には、図11(G)に示すように各単位パターン領域A毎に半導体素子111が搭載されて単位毎の配線パターン108dに金バンプ112を介して接続され、封止樹脂113で封止されて各単位毎の半導体装置127Aが形成され、多面付け半導体装置127が製造される。図14には、その多面付け半導体装置127の平面を示す。図11(G)は、そのD5−D5線に沿う矢示方向断面である。
【0017】
よって、図14に示すように、例えば単位パターン領域A3に形成された単位毎の配線パターン108dは、ショート108hが発生しているため正しくは不良であるが、導通検査により良品と誤判定されるため、半導体素子111が搭載されてしまい無駄になる問題があった。
【0018】
ところで、多数の半導体素子111を搭載して多面付け半導体装置127を形成した後に、プローブピンをテストパット部108eに当接させて、電気的な検査を行うが、検査の効率を上げるために、例えば図14に示すプローブピンの当接位置120のように、単位パターン領域A2とA3に形成されたテストパッド部108eにプローブピンが同時に当接され、同時に電気的な検査が行われることがある。また、さらに効率を上げるために、3つ以上の単位毎の半導体装置127Aに対して同時に電気的な検査が行われることもある。
【0019】
このようなとき、単位パターン領域A2に形成された単位毎の配線パターン108dに対して単位パターン領域A3に形成された単位毎の配線パターン108dが、相対的にS1ズレて形成され、単位パターン領域A2のテストパット部108eを認識して位置決めし、プローブピンを当接した場合、プローブピンは単位パターン領域A3に形成されたテストパット部108eから外れてしまい、電気的な検査を行うことができないので不良と判定される。この単位毎の半導体装置127Aには、ショート108hがあって不良であるため、不良判定に対する問題はないが、すでに搭載されてしまった、半導体素子111が無駄になる問題があった。
【0020】
また、逆に単位パターン領域A3に形成されたテストパット部108eを認識し基準にしてプローブピンを当接した場合は、プローブピンが単位パターン領域A2に形成されたテストパット部108eから外れてしまうことになる。そのため、パターン領域A2に形成された単位毎の半導体装置127Aが仮に良品であっても、電気的な検査を行うことができず、不良判定になってしまう問題がある。
【0021】
このように、従来技術では、隣接する単位毎の配線パターン108d群同士の相対位置ズレ量が、規定値を超えても不良判定にすることができないので、結果的に単位毎の配線パターン108d群に半導体素子111が搭載されてしまい、半導体素子111が無駄になる問題があった。
【0022】
ところで、従来技術の中には、特許文献1に記載されるような露光用原図基板(露光マスク)を用いた露光方法も提案されている。具体的には、重ね合わせ精度評価用のマークを設ける露光用原図基板を用いて、例えば図15ないし図17に示すように被露光基板上が露光される。図において、斜線で示すハッチング部が、遮光部に対応しているパターン部分であり、点線で示すパターン部が、前の露光によって被露光基板上にあらかじめ形成されているパターン部分を示す。このように、被露光基板上にすでに形成されているパターンと後から形成されたパターンとを組み合わされるようにし、測長機で、それらのパターンの相対位置ズレを求めて、露光パターンの重ね合わせ精度を評価するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開平06−337515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
ところが、このような従来技術では、測定機で測定して、被露光基板上にすでに形成されているパターンと後から形成されたパターンの相対位置ズレ量が規定値外であるか否かを判定しなければならず、測定機を必要とし、かつ相対位置ズレ量を測定のための工程を必要とするから、その分相対位置ズレ量が規定値外であるか否かの判定が煩雑となった。また、判定を自動で行うこととすると、測定装置や検査装置などが大変複雑で大がかりになり、コスト高になる問題があった。
【0025】
そこで、この発明の目的は、測定機等を必要としたり工程数が増えたりしてコストアップを招くことなく、多面付けプリント配線板に形成された隣接する単位毎の配線パターン同士の相対位置ズレ量が規定値を超えること、または超えたことを、容易に判定することができる、多面付け現像パターン形成済プリント配線板用基材の製造方法および検査方法、多面付けプリント配線板の製造方法および検査方法、半導体装置の製造方法、ならびに露光マスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
かかる目的を達成すべく、この発明の第1の手段は、多面付け現像パターン形成済プリント配線板用基材の製造方法であり、
プリント配線板用基材が単位パターン領域毎にステップ送りされ、
前後のステップで、前記プリント配線板用基材の導電体を被う感光性樹脂膜が電光マスクを介して露光されて、未露光配線パターン部とともに、ステップ送りの前後で対応する位置に、位置精度判定用未露光パターン部と、それより大面積の位置精度判定用露光済パターン部とが生成され、
前ステップで前記位置精度判定用未露光パターン部が生成されているときは、次ステップでそれがすべて前記位置精度判定用露光済パターン部により露光された状態に変化される一方、前ステップで前記位置精度判定用露光済パターン部が生成されているときは、次ステップでそこがすでに露光状態になっているので、前記位置精度判定用露光済パターン部が現れないようにされ、
隣接する単位毎の前記未露光配線パターン部同士の相対位置ズレ量が規定値を超えたときは、対応する前記位置精度判定用未露光パターン部と前記位置精度判定用露光済パターン部の位置がズレて、前記位置精度判定用未露光パターン部の一部が位置ズレ判定用未露光パターンとして残され、
その後、前記未露光配線パターン部が現像されて配線用現像パターンが形成されるとともに、前記位置ズレ判定用未露光パターンが現像されて位置ズレ判定用現像パターンが形成される、
ことを特徴とする。
【0027】
この発明の第2の手段は、請求項1に記載の製造方法により形成される多面付け現像パターン形成済プリント配線板用基材の検査方法であって、
前記位置ズレ判定用現像パターンが検出されることにより、隣接する単位毎の前記配線用現像パターン同士の相対位置ズレ量が規定値を超えていると判定されることを特徴とする。
【0028】
この発明の第3の手段は、多面付けプリント配線板の製造方法であり、
プリント配線板用基材が単位パターン領域毎にステップ送りされ、
前後のステップで、前記プリント配線板用基材の導電体を被う感光性樹脂膜が電光マスクを介して露光されて、未露光配線パターン部とともに、ステップ送りの前後で対応する位置に、位置精度判定用未露光パターン部と、それより大面積の位置精度判定用露光済パターン部とが生成され、
前ステップで前記位置精度判定用未露光パターン部が生成されているときは、次ステップでそれがすべて前記位置精度判定用露光済パターン部により露光された状態に変化される一方、前ステップで前記位置精度判定用露光済パターン部が生成されているときは、次ステップでそこがすでに露光状態になっているので、前記位置精度判定用露光済パターン部が現れないようにされ、
隣接する単位毎の前記未露光配線パターン部同士の相対位置ズレ量が規定値を超えたときは、対応する前記位置精度判定用未露光パターン部と前記位置精度判定用露光済パターン部の位置がズレて、前記位置精度判定用未露光パターン部の一部が位置ズレ判定用未露光パターンとして残され、
その後、前記未露光配線パターン部が現像されて配線用現像パターンが形成されるとともに、前記位置ズレ判定用未露光パターンが現像されて位置ズレ判定用現像パターンが形成され、
それらの配線用現像パターンおよび位置ズレ判定用現像パターンを用いて前記導電体がエッチングされてから、それらの現像パターンが剥離され、前記プリント配線板用基材上に配線パターンとともに、位置ズレ判定用エッチングパターンが形成される、
ことを特徴とする。
【0029】
この発明の第4の手段は、請求項4に記載の製造方法により形成される多面付けプリント配線板の検査方法であって、
前記位置ズレ判定用エッチングパターンが検出されることにより、隣接する単位毎の前記配線パターン同士の相対位置ズレ量が規定値を超えていると判定されることを特徴とする。
【0030】
この発明の第5の手段は、半導体装置の製造方法であり、
請求項4に記載の検査方法により、隣接する単位毎の前記配線パターン同士の相対位置ズレ量が規定値を超えていると判定されたとき、判定された配線パターンには、半導体素子を搭載しないことを特徴とする。
【0031】
この発明の第6の手段は、請求項1または3に記載の製造方法で使用される露光マスクであって、
透光部と遮光部とからなり、
前記透光部には、前記未露光配線パターン部を形成する配線パターン用マスクパターンと、前記位置精度判定用未露光パターン部を形成する第1の位置精度判定用マスクパターンとが設けられている一方、
前記遮光部には、前記位置精度判定用露光済パターン部を形成する第2の位置精度判定用マスクパターンが設けられている、
ことを特徴とする。
【0032】
この発明の第7の手段は、請求項6に記載の露光マスクにおいて、
前記第1の位置精度判定用マスクパターンと前記第2の位置精度判定用マスクパターンとが、複数組み設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
この発明の第1の手段による多面付け現像パターン形成済プリント配線板用基材の製造方法によれば、隣接する単位毎の未露光配線パターン部同士の相対位置ズレ量が規定値を超えたときは、対応する位置精度判定用未露光パターン部と位置精度判定用露光済パターン部の位置がズレて、位置精度判定用未露光パターン部の一部が位置ズレ判定用未露光パターンとして残され、その後、その位置ズレ判定用未露光パターンが現像されて位置ズレ判定用現像パターンが形成されるようにするので、その位置ズレ判定用現像パターンが拡大鏡による目視や光学式認識装置により検出されることによって、測定機等を使用したり工程数が増えたりしてコストアップを招くことなく、多面付けプリント配線板に形成された隣接する単位毎の配線パターン同士の相対位置ズレ量が規定値を超えることを容易に検出して認識可能とすることができる。
【0034】
この発明の第2の手段による多面付け現像パターン形成済プリント配線板用基材の検査方法によれば、位置ズレ判定用未露光パターンが現像されて形成された位置ズレ判定用現像パターンが検出されたとき、隣接する単位毎の配線用現像パターン同士の相対位置ズレ量が規定値を超えていると判定されるので、多面付けプリント配線板に形成された隣接する単位毎の配線パターン同士の相対位置ズレ量が規定値を超えることを容易に検出して認識可能とすることができる。
【0035】
この発明の第3の手段による多面付けプリント配線板の製造方法によれば、隣接する単位毎の未露光配線パターン部同士の相対位置ズレ量が規定値を超えたときは、対応する位置精度判定用未露光パターン部と位置精度判定用露光済パターン部の位置がズレて、位置精度判定用未露光パターン部の一部が位置ズレ判定用未露光パターンとして残され、その後、その位置ズレ判定用未露光パターンが現像されて位置ズレ判定用現像パターンが形成され、その位置ズレ判定用現像パターンを用いて導電体がエッチングされてから、それらの現像パターンが剥離され、プリント配線板用基材上に配線パターンとともに、位置ズレ判定用エッチングパターンが形成されるようにするので、その位置ズレ判定用エッチングパターンが拡大鏡による目視や光学式認識装置により検出されることによって、測定機等を使用したり工程数が増えたりしてコストアップを招くことなく、多面付けプリント配線板に形成された隣接する単位毎の配線パターン同士の相対位置ズレ量が規定値を超えたことを容易に検出して認識可能とすることができる。
【0036】
この発明の第4の手段による多面付けプリント配線板の検査方法によれば、導電体がエッチングされてから、そのエッチングに用いた位置ズレ判定用現像パターンが剥離されてプリント配線板用基材上に位置ズレ判定用エッチングパターンが形成されるようにし、その位置ズレ判定用エッチングパターンが検出されたとき、隣接する単位毎の配線パターン同士の相対位置ズレ量が規定値を超えていると判定されるので、相対位置ズレ量が規定値を超えたことを容易に検出して認識可能とすることができる。
【0037】
この発明の第5の手段による半導体装置の製造方法によれば、隣接する単位毎の配線パターン同士の相対位置ズレ量が規定値を超えていると判定されたとき、判定された配線パターンには、半導体素子を搭載しないので、半導体素子の無駄な消費をなくすことができる。
【0038】
この発明の第6の手段による露光マスクによれば、それを用いて多面付けプリント配線板を製造する場合、隣接する単位毎の未露光配線パターン部同士の相対位置ズレ量が規定値を超えたときは、対応する未露光パターン部と露光済パターン部の位置がずれて、プリント配線板用基材の上に、未露光パターン部の一部が位置ズレ判定用未露光パターンとして残され、その後、その位置ズレ判定用未露光パターンが現像されて位置ズレ判定用現像パターンが形成され、またはその位置ズレ判定用現像パターンを用いて位置ズレ判定用エッチングパターンが形成されるようにするので、それらの位置ズレ判定用現像パターンや位置ズレ判定用エッチングパターンを、拡大鏡による目視や光学式認識装置により検出することによって、単位毎の配線用現像パターン同士の相対位置ズレ量が規定値を越えること、または超えたことを容易に検出して認識可能とすることができる。
【0039】
この発明の第7の手段による露光マスクによれば、第1の位置精度判定用マスクパターンと第2の位置精度判定用マスクパターンとが、複数組み設けられているので、隣接する単位毎の配線用現像パターン同士の相対位置ズレ量が規定値を超えたことを検出して認識する精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】(A)ないし(H)は、COFテープに半導体素子を搭載した半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図2】図1に示す製造工程で使用する露光マスクの平面図である。
【図3】同製造工程でプリント配線板用基材がステップ送りされて、第1の位置精度判定用未露光パターン部が第2の位置精度判定用マスクパターンに重なり、露光されて変化した状態を示す平面図である。
【図4】(A)は、図2に示す露光マスクに形成された第1の位置精度判定用マスクパターン、(B)は、第2の位置精度判定用マスクパターンの寸法を示す平面図である。
【図5】(A)ないし(C)は、それぞれ図1に示す製造工程で製造するときの第1の位置精度判定用未露光パターン部と第2の位置精度判定用露光済パターン部の位置関係を示す平面模式図である。
【図6】図1に示す製造工程で製造された多面付け現像パターン形成済プリント配線板用基材の平面図である。
【図7】図1に示す製造工程で製造された多面付けCOFテープの平面図である。
【図8】(A)および(B)は、図1に示す製造工程で製造された位置ズレ判定用現像パターンと位置ズレ判定用エッチングパターンの関係を示す模式断面図である。
【図9】図1に示す製造工程で製造された多面付け半導体装置の平面図である。
【図10】この発明による製造工程に基づき製造された他例である多条取り多面付け現像パターン形成済プリント配線板用基材の平面図である。
【図11】(A)ないし(G)は、COFテープに半導体素子を搭載した半導体装置の従来の製造工程を示す断面図である。
【図12】図11に示す製造工程で使用する露光マスクの平面図である。
【図13】図11に示す製造工程に基づき製造された多面付けCOFテープの平面図である。
【図14】図13に示すCOFテープに半導体素子を搭載した半導体装置の平面図である。
【図15】(A)および(B)は、各々従来の重ね合わせ精度評価用のマークの例を示す平面図である。
【図16】(A)および(B)は、各々別の従来の重ね合わせ精度評価用のマークの例を示す平面図である。
【図17】(A)ないし(C)は、それぞれまた別の従来の重ね合わせ精度評価用のマークの例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照しつつ、この発明の実施の形態につき説明する。
図1(A)ないし(H)には、COFテープに半導体素子を搭載した半導体装置の製造工程を示す。
【0042】
図示製造工程では、図1(A)に示すような絶縁基材1の表面に、配線パターン形成用の導電体2をベタ状に設けたプリント配線板用基材3を用意する。絶縁基材1としては、一般には、厚さが12.5〜50μmのポリイミドが使用される。例えば、宇部興産(株)製の商品名「ユーピレックス」や、東レ・デュポン(株)製の商品名「カプトン」などが用いられる。そして、そのような絶縁基材1の片面上に、スパッタ法や電解めっき法を用いて金属で形成された導電体2が形成される。この例では、ニッケル合金をスパッタリングして後、銅めっきにより導電体2を形成した、住友金属鉱山(株)製の商品名「エスパーフレックス」が使用されている。
【0043】
プリント配線板用基材3には、金型で打ち抜いて、図1(B)に示すように、両縁に沿って長さ方向にスプロケットホール4が一定間隔置きに左右対応して設けられる。
【0044】
その後、図1(C)に示すように、スプロケットホール4を用いてプリント配線板用基材3を搬送するとともに、導電体2の表面に感光性樹脂を、ロールコータなどを用いて一様に塗布し、乾燥硬化させて、導電体2を被う感光性樹脂膜5が形成される。一般的には、露光によって露光光線が照射された部分の感光性樹脂膜5が現像処理によって除去されるポジ型と、露光光線が照射されない部分の感光性樹脂膜5が現像処理により除去されるネガ型があり、この例では、ポジ型の感光性樹脂膜5を用いた場合について説明する。
【0045】
次いで、図2に示す露光マスク6を用いて、図1(D)に示すように露光される。図2において、ハッチングのない6Aが透光部、ハッチングのある6Bが遮光部である。透光部6Aには、導電体2上に後述する未露光配線パターン部8aを生成する配線パターン用マスクパターン8Aと、位置精度判定用未露光パターン部21a、21bを生成する第1の位置精度判定用マスクパターン21A、21Bとが設けられている。一方、遮光部6Bには、導電体2上に後述する位置精度判定用露光済パターン部22a、22bを生成する第2の位置精度判定用マスクパターン22A、22Bと、スプロケットホールマスクパターン14とが設けられている。
【0046】
ここで、第2の位置精度判定用マスクパターン22Aは、第1の位置精度判定用マスクパターン21Aよりも大きな面積に形成され、また同じく第2の位置精度判定用マスクパターン22Bは、第1の位置精度判定用マスクパターン21Bよりも大きな面積に形成されている。なお、露光マスク6に設ける第1の位置精度判定用マスクパターン21A(21B)および第2の位置精度判定用マスクパターン22A(22B)の寸法については、図4を用いて後述する。
【0047】
そして、図2に示す露光マスク6のスプロケットホールマスクパターン14と、プリント配線板用基材3に形成したスプロケットホール4とを光学式認識装置によって認識し、それぞれの位置が一致するように位置制御を行って位置決めした後、図1(D)に示すように露光光線7を照射し、露光マスク用フレーム30で露光範囲を規定してほぼマスク面全面に露光(前の露光)を行う。このとき、プリント配線板用基材3上の感光性樹脂膜5は、露光マスク6を透過して露光光線7が照射された部分だけ露光された状態に変化し、露光マスク6によって遮光された部分は、露光されない状態のまま維持される。
【0048】
これにより、第1の位置精度判定用マスクパターン21A、21Bと配線パターン用マスクパターン8Aによって遮光されているので、露光によって投影されて露光されない状態のままである第1の位置精度判定用未露光パターン部21a、21bおよび未露光配線パターン部8aが生成される。また、スプロケットホールマスクパターン14の周囲も遮光されているので、未露光補強パターン8iも同時に生成される。一方、前の露光時には、第2の位置精度判定用マスクパターン22A、22Bを介して、露光光線7が照射され、露光された状態の第2の位置精度判定用露光済パターン部22a、22bが生成される。なお、図1(D)の露光マスク6は、図2のM1−M1線に沿う矢示方向断面である。
【0049】
そして次に、図2に示す露光マスク6の−Y方向に、単位パターン領域Aに相当する寸法だけ、プリント配線板用基材3をステップ送りした後、前記と同様にスプロケットホールマスクパターン14とスプロケットホール4の位置が一致するように位置制御を行って位置決めした後、同じように露光光線7を照射し、露光マスク用フレーム30で露光範囲を規定してほぼマスク面全面に次の露光(後の露光)を行う。そして、この後の露光によって、同様に露光されない状態の第1の位置精度判定用未露光パターン部21a、21b、未露光配線パターン部8aおよび未露光補強パターン8iが同時に生成される。一方、後の露光時には、第2の位置精度判定用マスクパターン22A、22Bを介して、露光光線7が照射され、露光された状態の第2の位置精度判定用露光済パターン部22a、22bが生成される。
【0050】
また、このとき位置決めが正しく行われ、隣接する単位毎の未露光配線パターン部8a同士の位置ズレ量が規定値以内であると、図3に示すように、第2の位置精度判定用マスクパターン22Aに対応する位置には第1の位置精度判定用未露光パターン部21aが、第1の位置精度判定用マスクパターン21Bに対応する位置には第2の位置精度判定用未露光パターン部22bが来る。そして、第2の位置精度判定用マスクパターン22Aにより第2の位置精度判定用露光済パターン部22aが生成されて、それより小面積の第1の位置精度判定用未露光パターン部21aがその第2の位置精度判定用露光済パターン部22a内に入り込んですべてが露光された状態に変化する。また、第1の位置精度判定用マスクパターン21Bにより遮光されても、そこにはすでにそれより大面積の第2の位置精度判定用露光済パターン部22bが生成されて露光済状態になっているので、第1の位置精度判定用露光済パターン部21bが現れない。
【0051】
このように、ステップ送りの前後で対応する位置に、位置精度判定用の未露光パターン部21a、21bと、それより大面積の露光済パターン部22a、22bとが生成され、前ステップで位置精度判定用未露光パターン部21aが生成されているときは、次ステップでそれがすべて位置精度判定用露光済パターン部22aにより露光された状態に変化される一方、前ステップで位置精度判定用露光済パターン部22bが生成されているときは、次ステップでそこがすでに露光状態になっているので、生成された位置精度判定用露光済パターン部21bが現れないようになっている。
【0052】
このようなプリント配線板用基材3の位置決め、そのプリント配線板用基材3上の導電体2を被う感光性樹脂膜5を電光マスク6を介して行う露光、単位パターン領域Aに相当する寸法毎のステップ送りが繰り返して行われる。ステップ送りは、−Y方向に限らず、+Y方向に行ってもよい。
【0053】
ところで、上述したように、スプロケットホール4は、一般的にプリント配線板用基材3の両端近くに金型を用いて打ち抜き形成され、打ち抜かれたプリント配線板用基材3を構成する絶縁基材1は、ポリイミドなどを用いているため湿度の影響を受けて伸縮する。そのため、プリント配線板用基材3の両端近くに形成された、スプロケットホール4は、他方のスプロケットホール4との間の寸法が露光時には設計値と異なる場合がある。
【0054】
他方、金型によって打ち抜き形成されたスプロケットホール4には、バリ、ヒゲ、カス等が発生し、また露光工程前までの加工工程を経ることで、スプロケットホール4が変形することがある。そのため、スプロケットホールマスクパターン14とスプロケットホール4は、光学式認識装置によって認識し、それぞれの位置が重なり一致するように位置制御を行っても、相対的な位置ズレが発生してしまうことがある。そして、光学式認識装置と位置制御の精度の限界値も加わるため、相対位置ズレ量がさらに大きくなる問題があった。
【0055】
このような理由から、スプロケットホールマスクパターン14とスプロケットホール4の相対的な位置ズレが生じると、前の露光と後の露光によって生成される第1の位置精度判定用未露光パターン部21a(21b)と第2の位置精度判定用露光済パターン部22a(22b)の位置関係においても相対位置ズレが生じることになる。そしてまた同時に、前の露光と後の露光によって生成された、隣接する未露光配線パターン部8a群同士の相対位置についても、同量の相対位置ズレが生じる。
【0056】
ところで、従来と同様に後に行う導通検査時にプローブピンがテストパッド部から外れないようにするために、相対位置ズレ量には、規定値Kが設定されている。
【0057】
そして、第1の位置精度判定用未露光パターン部21a(21b)と第2の位置精度判定用露光済パターン部22a(22b)との相対位置ズレ量が相対位置ズレ量の規定値Kを超えた場合、後の露光時に第1の位置精度判定用未露光パターン部21a(21b)の一部には第2の位置精度判定用露光済パターン部22a(22b)の周囲の遮光部によって、露光光線7が当たらないようにし、未露光状態のまま残るようにして、図1(E)に示すように相対位置ズレ判定用未露光パターン23が形成されるようにする。なお、図1(E)に示す露光マスク6は、図2に示す露光マスク6のM2−M2線に沿う矢示方向断面である。
【0058】
次に、露光マスク6に設ける第1の位置精度判定用マスクパターン21A(21B)および第2の位置精度判定用マスクパターン22A(22B)の寸法について述べる。いま、図4(A)および(B)に示すように、露光マスク6に設けた第1の位置精度判定用マスクパターン21A(21B)の各寸法をW1、H1とし、第2の位置精度判定用マスクパターン22A(22B)の寸法をW2、H2とする。
【0059】
ここで、まず露光マスク6に設けた、第1の位置精度判定用マスクパターン21A(21B)および第2の位置精度判定用マスクパターン22A(22B)の寸法は、相対位置ズレ量の規定値をKとした場合、K=(W2−W1)/2およびK=(H2−H1)/2の関係が成り立つようにして、W2、H2、W1、H1の値を設定する。そして、相対位置ズレ量の規定値Kを30μm(以下)に設定した場合、関係式により、例えば、W2=H2=100μmにすると、W1=H1=40μmが求められる。
【0060】
次に、この設定値の場合において、第1の位置精度判定用未露光パターン部21a(21b)と第2の位置精度判定用露光済パターン部22a(22b)との相対位置ズレ量をSとし、仮にS=31μm発生した場合、相対位置ズレ量の規定値Kに対しさらにオーバーした値はS−K=1μmになる。そして、図5(A)の模式図に示すように、第1の位置精度判定用未露光パターン部21a(21b)の一部が、後の露光によっても露光されないので、未露光状態のまま残って、位置ズレ判定用未露光パターン23が幅Z=1μmで生成される。
【0061】
このようにして、位置ズレ判定用未露光パターン23が幅Z=1μmで生成した場合、後に行う現像後でも除去されずに残って、同じ幅の位置ズレ判定用現像パターン23aが1μmの幅で形成される。ところが、このようにして形成した位置ズレ判定用現像パターン23aの幅が1μmでは、拡大鏡による目視検出または光学式認識装置で検出することが困難である。
【0062】
そこで、拡大鏡による目視または光学式認識装置で検出可能にするために、定数βを設定し、K−β=(W2−W1)/2およびK−β=(H2−H1)/2の関係式が成り立つようにして、W2、H2、W1、H1の値を設定する。この関係から、例えば、β=5μmに設定し、W2=H2=100μmに設定した場合、W1=H1=50μmが求められる。ここで、前記と同様に相対位置ズレ量S=31μm発生した場合、図5(B)示すような状態になり、位置ズレ判定用未露光パターン23が幅Z=6μmで生成される。これらの関係から、Z=S−(K−β)が成り立ち、相対位置ズレ量S=31μm、K−β=25μmであるので、位置ズレ判定用未露光パターン23が幅Z=6μmで生成される。そして、さらに現像を行って、相対位置ズレ判定用現像パターン23aが幅6μmで形成される。
【0063】
このように、定数βを設定することで、相対位置ズレ量Sが相対位置ズレ量の規定値K=30μmよりも僅かにオーバーした場合であっても位置ズレ判定用未露光パターン23の幅は、定数βの値だけさらに広く形成されることになるので、定数βを設定することによって安全率を確保することにもなる。なお、定数βの値は、拡大鏡による目視または光学式認識装置の検出能力を考慮すると、β=5μm程度に設定することが好ましい。
【0064】
ところで、上述したように、前の露光で、露光されない状態になっている第1の位置精度判定用未露光パターン部21aは、後の露光で第2の位置精度判定用マスクパターン22Aを透過した露光光線7によって重なり露光されて露光された状態に変化するが、次には、β=5μm、W2=H2=100μm、W1=H1=50μmに設定し、相対位置ズレ量SがS=35μm発生した場合について述べる。図5(C)の模式図に示すように、第1の位置精度判定用未露光パターン部21aの一部分は、露光光線7が照射されないため、露光されない状態のまま維持されて、位置ズレ判定用未露光パターン23が、Z=S−(K−β)の関係から、幅Z=10μmの幅で生成される。そして、さらに現像を行うことで、位置ズレ判定用現像パターン23aが10μmの幅で形成される。
【0065】
いま、位置ズレ判定用未露光パターン23が幅Z=10μmで生成されている場合、現像を行うと、図1(F)に示すように、第1の位置精度判定用未露光パターン23の部分は除去されずに残り、位置ズレ判定用現像パターン23aが10μmの幅で形成される。また、同時に未露光配線パターン部8aおよび未露光補強パターン部8iも除去されずに残るので、配線用現像パターン8cおよび補強パターン用現像パターン8fが形成される。このようにして、単位毎の配線用現像パターン8cを複数形成した多面付け現像パターン形成済プリント配線板用基材9が形成される。図6には、その平面を示す。図1(F)は、この図6のD1−D1線に沿う矢示方向断面である。
【0066】
図6は、単位パターン領域A1からA2の順に位置決め、露光、ステップ送りを繰り返し行った後、現像を行った状態の平面図であり、単位パターン領域A2の露光位置と単位パターン領域A3の露光位置が、相対的に35μmズレ、および単位パターン領域A3の露光位置と単位パターン領域A4の露光位置が、相対的に35μmズレた時の現像後の状態を示したものである。すなわち、隣接する単位毎の配線用現像パターン8c群同士の相対位置ズレ量が35μm発生した状態を示している。そして、このように隣接する単位毎の配線用現像パターン8c群同士の相対位置ズレ量が35μm発生しているので、単位パターン領域A2、A3、A4には、相対位置ズレ判定用現像パターン23aが10μmの幅で形成されている。
【0067】
次に、位置ズレ判定用現像パターン23aが拡大鏡による目視または光学式認識装置で検出された場合は、検出された位置ズレ判定用現像パターン23aと同じ単位パターン領域に形成された、単位毎の配線用現像パターン8c群を不良判定にする。ここで、不良判定になった単位毎の配線用現像パターン8c群と同じ単位パターン領域には、その後の目視検査において不良検出が容易になるように、エッチングレジストとして作用するインク等を用いて、目視によって検出が容易にできる程度の大きさで、現像後の不良判定マーク24が形成されるようにするとよい。
【0068】
それから、図1(G)に示すように、エッチングと剥離を行って、配線パターン8dと補強パターン8gとともに、位置ズレ判定用エッチングパターン23bを形成する。図1(G)には図示されていないが、このとき現像後の不良判定マーク24が形成されている場合は、それをエッチングレジストにして、エッチング後の不良判定マーク25(図7参照)を形成する。そして、それらの表面には、防錆または後に半導体素子を接続して搭載するために適しためっきとして、例えば錫めっき26を施して、多面付けプリント配線板であるCOFテープ10を形成する。図7には、その平面を示す。図1(G)は、この図7のD2−D2線に沿う矢示方向断面である。
【0069】
なお、現像後の不良判定マーク24を設け、この現像後の不良判定マーク24をエッチングレジストにして、不良判定マーク25を形成するとき、その不良判定マーク25の大きさを拡大鏡を用いない目視検査であっても認識が容易にできる程度の大きさにし、不良の判定を容易に行うことができるようにするとよい。
【0070】
しかし、現像後の不良判定マーク24を設けなかった場合は、エッチング後の不良判定マーク25が形成されないので、位置ズレ判定用エッチングパターン23bを拡大鏡による目視または光学式認識装置で検出することとなる。そして、検出された場合は、同じ単位パターン領域に同時に露光されて形成された、単位毎の配線パターン8dを、不良として判定する。
【0071】
さて、位置ズレ判定用エッチングパターン23bは、位置ズレ判定用現像パターン23aをエッチングレジストにしてエッチングを行って形成するが、図8(A)の模式図に示すように、導電体2の厚さPHの値と位置ズレ判定用現像パターン23aの幅の関係によっては、位置ズレ判定用エッチングパターン23bのトップ幅PT1が0μmになり、位置ズレ判定用現像パターン23aが取れてしまう場合がある。このように、位置ズレ判定用現像パターン23aが取れてしまうと、位置ズレ判定用エッチングパターン23bは、エッチングが急速に進み消失してしまう。
【0072】
そこで、図8(B)に示すように、エッチングを行っても位置ズレ判定用現像パターン23aが取れない状態を維持するために必要なトップ幅をPT2とし、そのときの位置ズレ判定用現像パターン23a幅をRW2とすると、トップ幅≧PT2となり、位置ズレ判定用現像パターン23a幅≧RW2になるように設定する。これらの値は、導電体2の厚さPHの値とエッチング量によって異なるため、実験等によって求めて設定することが好ましい。そして、これらの実験結果から、位置ズレ判定用現像パターン23aが幅≧RW2になるように、逆算して定数βを設定することが好ましい。ところで、エッチング後の不良判定マーク25を設ける方法であれば、エッチングを行っても消失しない程度の大きさに設けることが容易であり、より好ましい。
【0073】
このようにして形成したCOFテープは、一般的に光学式認識装置を用いた外観検査装置による検査が行われる。しかし、図7に示すように、光学式認識装置の分解能の限界を超えるような極細線によるショート28が発生していた場合、不良判定されない問題があるので、外観検査装置による検査の後、テストパッド部8eにプローブピンを当接させて導通検査が行われる。この導通検査は、効率を上げるために、例えば図7に示すプローブピンの当接位置20のように、単位パターン領域A2とA3に形成された2つの単位毎の配線パターン8dの一部であるテストパッド部8e群にプローブピンを同時に当接して、同時に導通検査が行われる。なお、この導通検査は、さらに効率を上げるために、2つに限らず、3つ以上の単位毎の配線パターン8dのテストパッド部8e群に対して、同時に行うこともある。
【0074】
ところで、隣接する単位毎の配線パターン8d群同士に関する相対位置ズレ量の規定値は、テスパット部8eからプローブピンが外れないようにするために、テストパット部8eの大きさ等から算出して決定される。
【0075】
そして、図7には、単位パターン領域A2に形成された単位毎の配線パターン8dのテストパッド部8e群を認識して、プローブピンの位置決めを行った場合のプローブピンの当接位置20を示している。また、このとき、単位パターン領域A2とA3に形成された、テスパット部8e群および単位毎の配線パターン8d群同士の相対位置ズレ量が、35μm発生した状態を示している。この値は、相対位置ズレ量の規定値の30μm(以下)よりも大きい。そのため、プローブピンは、単位パターン領域A3に形成されたテストパット部8eから外れてしまい、導通検査が正確に行えない状態となっている。
【0076】
また図示しないが、単位パターン領域A3に形成された単位毎の配線パターン8dの一部であるテストパッド部8eを認識して、プローブピンの位置決めを行った場合は、単位パターン領域A2に形成されたテストパット部8eからプローブピンが外れてしまうことになる。
【0077】
そしてまた、図7に示すようにショート28が発生していた場合、導通検査によるプローブピンがテストパット部8eから外れているので、ショートを検出することができず、導通検査の結果は良品判定になり、誤判定になってしまう問題がある。
【0078】
そこで、この発明では、単位毎の配線パターン8d同士の相対位置ズレ量が規定値である30μm(以下)より大きい場合、相対位置ズレ判定用現像パターン23a、現像後の不良判定マーク24、位置ズレ判定用エッチングパターン23bのいずれかを、拡大鏡による目視または光学式認識装置を用いて検出して、検出された場合には、導通検査を行う前に不良判定にすることができるので、導通検査の誤判定の問題をなくすことができる。
【0079】
さて、図1(G)に示す製造工程で形成した多面付けプリント配線板であるCOFテープ10には、図1(H)に示すように、単位毎の配線パターン8dに、金バンプ12を介して半導体素子11を接続し、封止樹脂13で封止して半導体素子11を搭載して図9に示すように半導体装置27Aを多数形成した多面付け半導体装置27を形成する。このとき、エッチング後の不良判定マーク25または位置ズレ判定用エッチングパターン23bのどちらか一方を検出し、検出された場合は、同じ単位パターン領域に形成された単位毎の配線パターン8dには半導体素子11を搭載しないようにする。なお、図1(H)には、図9の平面図のD3−D3線に沿う矢示方向断面を示す。
【0080】
このようにして、多面付け半導体装置27を形成し、図9に示すように、プローブピンをテストパッド部8eに当接させて電気的な検査が行われる。ところが、単位パターン領域A2、A3、A4に形成された隣接するテストパッド部8e群同士は、相対位置ズレ量が35μm発生しているため、プローブピンがテストパッド部8eから外れてしまうが、前記の不良判定によってすでに半導体素子11が搭載されていないため、導通検査による誤判定は問題がない。そしてまた、すでに半導体素子11が搭載されていないので、半導体素子11を無駄にすることもない。
【0081】
ところで、これまでの説明は、プリント配線板用基材3が図2に示す露光マスク6の−X方向、すなわちプリント配線板用基材3が、幅方向にズレた場合について述べたが、この方向に限るものではなく、長さ方向(Y方向)のズレや回転方向(θ方向)のズレによる相対位置ズレの場合であってもよく、またこれらのズレが組み合わされた場合であってもよい。
【0082】
また、これまでの説明は、1条取りのCOFテープの例で説明したが、生産性を向上するために、例えば、COFテープを3条に設けて形成してもよい。この場合、例えば一度に行う露光領域として、幅方向は3条分、長さ方向は単位毎の配線パターン群が3個分、すなわち単位毎の配線パターン群を9個同時に露光してもよい。その後、現像を行って多条取り多面付け現像パターン群を形成する。図10には、その多条取り多面付け現像パターン形成済プリント配線板用基材29の平面を示す。
【0083】
図10は、単位パターン領域A1から順番に露光を行い、単位パターン領域A2の露光時に回転方向にθだけズレて露光され、このズレによって隣接する単位毎の配線パターン群同士の相対位置ズレ量が規定値を超えたため、現像後に位置ズレ判定用現像パターン23aが形成された状態を示している。また、形成された位置ズレ判定用現像パターン23aを検出し、後の検査で不良判定を容易にするために、エッチングレジストとして作用するインク等を用いて、検出を容易にできる大きさで、現像後の不良判定マーク24を形成した状態を示している。そして、単位パターン領域A2の中央部の3個の単位毎の配線パターン群には、位置ズレ判定用現像パターン23aは形成されないが、同時に露光され位置ズレが発生しているので、不良判定にするために現像後の不良判定マーク24を形成したものである。
【0084】
ところで、図10に示すように、露光によって回転方向のズレθが発生した場合、回転方向のズレの中心から離れるほど、位置ズレ量は大きくなるので、一度に行う露光領域の幅と長さが大きくなるほど位置ズレ量が大きくなる。よって、COFテープを形成するときの条数が多くなり、一度に行う露光領域の幅と長さが大きくなるほど、位置ズレ量が大きくなり、隣接する単位毎の配線パターン同士の相対位置ズレ量も大きくなって、本願発明の効果が増すこととなる。多条取り多面付け現像パターン群は、次にエッチング、錫めっきを行って後、適した工程でスリットし、1条の多面付けCOFテープとして形成される。
【符号の説明】
【0085】
1 絶縁基材
2 導電体
3 プリント配線板用基材
4 スプロケットホール
5 感光性樹脂膜
6 露光マスク
7 露光光線
8A 配線パターン用マスクパターン
8a 未露光配線パターン部
8c 配線用現像パターン
8d 配線パターン
8e テストパッド部
8f 補強パターン用現像パターン
8g 補強パターン
8h ショート
8i 未露光補強パターン部
9 多面付け現像パターン形成済プリント配線板用基材
10 多面付けCOFテープ
11 半導体素子
12 金バンプ
13 封止樹脂
14 スプロケットホールマスクパターン
20 プローブピンの当接位置
21A 第1の位置精度判定用マスクパターン
21a 第1の位置精度判定用未露光パターン部
21B 第1の位置精度判定用マスクパターン
21b 第1の位置精度判定用未露光パターン部
22A 第2の位置精度判定用マスクパターン
22a 第2の位置精度判定用露光済パターン部
22B 第2の位置精度判定用マスクパターン
22b 第2の位置精度判定用露光済パターン部
23 位置ズレ判定用未露光パターン
23a 位置ズレ判定用現像パターン
23b 位置ズレ判定用エッチングパターン
24 現像後の不良判定マーク
25 エッチング後の不良判定マーク
26 錫めっき
27 多面付け半導体装置
27A 半導体装置
28 ショート
29 多条取り多面付け現像パターン形成済プリント配線板用基材
30 露光マスク用フレーム
A 単位パターン領域
K 相対位置ズレ量の規定値
S 相対位置ズレ量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント配線板用基材が単位パターン領域毎にステップ送りされ、
前後のステップで、前記プリント配線板用基材の導電体を被う感光性樹脂膜が電光マスクを介して露光されて、未露光配線パターン部とともに、ステップ送りの前後で対応する位置に、位置精度判定用未露光パターン部と、それより大面積の位置精度判定用露光済パターン部とが生成され、
前ステップで前記位置精度判定用未露光パターン部が生成されているときは、次ステップでそれがすべて前記位置精度判定用露光済パターン部により露光された状態に変化される一方、前ステップで前記位置精度判定用露光済パターン部が生成されているときは、次ステップでそこがすでに露光状態になっているので、前記位置精度判定用露光済パターン部が現れないようにされ、
隣接する単位毎の前記未露光配線パターン部同士の相対位置ズレ量が規定値を超えたときは、対応する前記位置精度判定用未露光パターン部と前記位置精度判定用露光済パターン部の位置がズレて、前記位置精度判定用未露光パターン部の一部が位置ズレ判定用未露光パターンとして残され、
その後、前記未露光配線パターン部が現像されて配線用現像パターンが形成されるとともに、前記位置ズレ判定用未露光パターンが現像されて位置ズレ判定用現像パターンが形成される、
ことを特徴とする多面付け現像パターン形成済プリント配線板用基材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法により形成される多面付け現像パターン形成済プリント配線板用基材の検査方法であって、
前記位置ズレ判定用現像パターンが検出されることにより、隣接する単位毎の前記配線用現像パターン同士の相対位置ズレ量が規定値を超えていると判定されることを特徴とする多面付け現像パターン形成済プリント配線板用基材の検査方法。
【請求項3】
プリント配線板用基材が単位パターン領域毎にステップ送りされ、
前後のステップで、前記プリント配線板用基材の導電体を被う感光性樹脂膜が電光マスクを介して露光されて、未露光配線パターン部とともに、ステップ送りの前後で対応する位置に、位置精度判定用未露光パターン部と、それより大面積の位置精度判定用露光済パターン部とが生成され、
前ステップで前記位置精度判定用未露光パターン部が生成されているときは、次ステップでそれがすべて前記位置精度判定用露光済パターン部により露光された状態に変化される一方、前ステップで前記位置精度判定用露光済パターン部が生成されているときは、次ステップでそこがすでに露光状態になっているので、前記位置精度判定用露光済パターン部が現れないようにされ、
隣接する単位毎の前記未露光配線パターン部同士の相対位置ズレ量が規定値を超えたときは、対応する前記位置精度判定用未露光パターン部と前記位置精度判定用露光済パターン部の位置がズレて、前記位置精度判定用未露光パターン部の一部が位置ズレ判定用未露光パターンとして残され、
その後、前記未露光配線パターン部が現像されて配線用現像パターンが形成されるとともに、前記位置ズレ判定用未露光パターンが現像されて位置ズレ判定用現像パターンが形成され、
それらの配線用現像パターンおよび位置ズレ判定用現像パターンを用いて前記導電体がエッチングされてから、それらの現像パターンが剥離され、前記プリント配線板用基材上に配線パターンとともに、位置ズレ判定用エッチングパターンが形成される、
ことを特徴とする多面付けプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
請求項4に記載の製造方法により形成される多面付けプリント配線板の検査方法であって、
前記位置ズレ判定用エッチングパターンが検出されることにより、隣接する単位毎の前記配線パターン同士の相対位置ズレ量が規定値を超えていると判定されることを特徴とする多面付けプリント配線板の検査方法。
【請求項5】
請求項4に記載の検査方法により、隣接する単位毎の前記配線パターン同士の相対位置ズレ量が規定値を超えていると判定されたとき、判定された配線パターンには、半導体素子を搭載しないことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1または3に記載の製造方法で使用される露光マスクであって、
透光部と遮光部とからなり、
前記透光部には、前記未露光配線パターン部を形成する配線パターン用マスクパターンと、前記位置精度判定用未露光パターン部を形成する第1の位置精度判定用マスクパターンとが設けられている一方、
前記遮光部には、前記位置精度判定用露光済パターン部を形成する第2の位置精度判定用マスクパターンが設けられている、
ことを特徴とする露光マスク。
【請求項7】
請求項6に記載の露光マスクにおいて、
前記第1の位置精度判定用マスクパターンと前記第2の位置精度判定用マスクパターンとが、複数組み設けられていることを特徴とする露光マスク。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2010−192610(P2010−192610A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34260(P2009−34260)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(391022186)新藤電子工業株式会社 (23)