説明

多項目検出装置

【課題】多項目検出装置を提供する。
【解決手段】検体処理液を封入し得る密閉可能な第一容器と、該第一容器を収納する密閉可能な第二容器とからなり、前記検体処理液に検体が投入され被検物質が抽出された検体抽出液について一本以上のイムノクロマト担体を同時に適用することにより、被検物質に関し、一項目以上の被検項目の検出を行う多項目検出装置であって、前記第一容器は、検体採取棒と、検体処理液とを備えてなり、前記第二容器は、検体抽出液が浸透したとき該検体抽出液中の被検物質と特異的に反応することにより前記被検項目を検出するイムノクロマト担体であって、個々のイムノクロマト担体は互いに異なる種類の被検項目を検出可能なイムノクロマト担体を一本以上備えてなり、そして前記第二容器内に前記第一容器を収納するとき、該第一容器の奥が破れて前記検体抽出液が漏れ出るようにするための検体抽出液の漏出手段を備えてなる多項目検出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多項目検出装置、更に詳しくは、被検物質が抽出された検体抽出液について、密閉系にて、被検物質に関し、一項目以上の被検項目のイムノクロマト担体(イムノクロマトグラフィー用担体)による検出を一つの検出装置にて行う多項目検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
血液、尿、唾液、鼻腔粘液、検便試料等の検体について、被検物質に関して検出すべき項目、即ち被検項目が多数ある場合には、通常、検体試料を溶解又は懸濁した検体抽出液を多数の検出装置(又は、試験管や試験セルなどの検査容器)に入れ、これらの検出装置のそれぞれについて、検出すべき項目に応じた異なる分析操作を行う。
このような検出手法を用いると、検出すべき項目の増加につれて多数の検出装置を準備しなければならず、また多数の検出装置を取り替えて個別に分析操作を行う必要があるので、分析操作に時間がかかると共に分析操作が煩雑となる。
更に、感染性の又は感染の恐れのある検体、或いは公衆衛生の確保の点で非常に重要な検体、例えば法定伝染病、インフルエンザ、エイズなどの感染性疾患に感染した者又は感染の恐れのある者に関する検体や、PCBなどの毒性物質、発癌性物質、極微量の物質等を含む又は含んでいる可能性がある検体を取り扱う場合には、分析操作時に検出装置が周囲環境に対して開放された状態(例えば、蓋が開けられた状態;開放系)で分析操作が行われると、分析操作を行う者(作業者)への感染の危険が生じたり、反対に、作業者及び/又は作業環境に由来する試料の汚染により誤った分析結果が得られる可能性がある。
また、多数の使用済み検出装置を廃棄する場合、安全性の確保の点でも深刻な問題が生じ得る。
従って、一つの検体について多数の被検項目を検出する場合においては、できる限り少数の検出装置、可能であれば一つの検出装置を使用し、且つ検体試料を調製した後の分析操作を全て密閉系にて行うことが好ましい。
【0003】
検体についての多くの分析手段のうちの一つとして、イムノアッセイが挙げられる。従来、イムノアッセイのための種々の方法及び/又は装置が提案されている。その中で、代表的なものについて以下に説明する。
特表平6−504846号公報(特許文献1)には、温度制御も含めた検出のための機器を必要とせずに、被検物質に関する被検項目の検出を簡便に実施できる形態として、細片状のイムノクロマト担体を用いた検出方法が提案されている。また、特表平9−501494号公報(特許文献2)には、検体に前処理を実施した後に、該検体に細片状のイムノクロマト担体(マトリックス)を適用する技術が示されている。更に、特開平8−946184号公報(特許文献3)には、二種類以上の被検物質を一つのイムノクロマト担体(細片状の試験片)で検出する方法が提案されている。一方、特開2006−194688号公報(特許文献4)には、細片状のイムノクロマト担体を、一端が開放された管状の試験容器(試験管状容器)に挿入したイムノクロマトグラフィー用キットが提案されている。
【0004】
検体についての、機器を用いる分析手段も提案されている。例えば、特表平9−503581号公報(特許文献5)には、使い捨て可能な電子的検定装置であって、決定すべき分析物質を含む体液のサンプルを受けるサンプル・レセプタ手段と、サンプル体液成分と反応して、前記サンプルの分析物質の量と相関し且つ物理的に検出することができる変化を生じるサンプル処理手段と、前記物理的に検出することができる変化に応答して、前記サンプルの分析物質の量と相関する電気信号を生成する検出器手段と、前記検出器手段に
接続され、前記電気信号をディジタル試験結果出力へ変換する信号処理手段と、前記信号処理手段に接続され、前記試験結果信号を受信し提示する視覚的に読み出し可能な出力手段と、を備えるカード型のハウジングを具備する装置が開示されている。
【特許文献1】特表平6−504846号公報
【特許文献2】特表平9−501494号公報
【特許文献3】特開平8−946184号公報
【特許文献4】特開2006−194688号公報
【特許文献5】特表平9−503581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜4に記載されたイムノクロマト担体を使用する場合、検出操作並びに分析結果の判定及び表示は、ヒトがマニュアルにて行う。特許文献3に記載されたイムノクロマト担体を使用すると、二種類以上の被検物質を一つのイムノクロマト担体で検出することができ、また特許文献1、2及び4に記載されたイムノクロマト担体も、二種類以上の被検物質を検出するために使用することが可能である。
しかしながら、特許文献1〜3に記載されたイムノクロマト担体は容器中に密封された状態で使用されるものではない。特許文献4に記載されたイムノクロマト担体も、一端が開放された試験管状容器を使用する。それ故、これらのイムノクロマト担体を使用する場合には、検体の採取及び分析を完全な密閉系にて行うことができない。
特許文献5に記載された電子的検定装置を使用すると、検出操作並びに分析結果の判定及び表示は、自動的に行われる。特許文献5に記載された電子的検定装置を使用すると、二種類以上の被検項目、例えば光の透過率や反射率、pH等を検出することができる。
しかしながら、特許文献5に記載された電子的検定装置の試料レセプターは大気に開放されており、試料レセプターによる検体の受け入れ及びその後の分析は開放系にて行われる。
特許文献1〜5に記載された技術は何れも開放系の技術であり、検体の採取及び分析に際して、作業者への危険が生じたり、また試料の汚染による分析結果の過誤を避けることができない。より具体的には、検体中の有害試料(例えば、感染性病原体や毒性物質など)による作業者の羅患又は被毒を防止することが不可能又は非常に困難であり、また、作業者自身が微量の検出すべき物質(被検物質)を放出する場合(例えば、人体に含まれている微量の物質を検出する場合など)には、作業者が発する被検物質により、分析結果に対する判断を誤る(例えば、本来は陰性であるのに、陽性と判断する)可能性がある。
従来、一つの検出装置を使用して、密閉系にて、検体中の被検物質に関する多数の被検項目を検出することができる多項目検出装置は知られていなかった。また、この多項目検出装置を使用し、更に検出操作、分析結果の判定及び表示等を電子機器により自動的に行い得る多項目分析装置は知られていなかった。
本発明者らは、検体採取容器内に検体を採取した後、検出反応を行い、検体中の被検物質に関する多数の被検項目を検出するまでの工程を全て密閉系にて行うことが可能な多項目検出装置及び該多項目検出装置を使用する多項目分析装置について鋭意研究した結果、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の対象は、検体処理液を封入し得る密閉可能な第一容器と、該第一容器を収納する密閉可能な第二容器とからなり、前記検体処理液に検体が投入され被検物質が抽出された検体抽出液について一本以上のイムノクロマト担体を同時に適用することにより、被検物質に関し、一項目以上の被検項目の検出を行う多項目検出装置であって、
前記第一容器は、検体採取棒と、検体処理液とを備えてなり、
前記第二容器は、検体抽出液が浸透したとき該検体抽出液中の被検物質と特異的に反応することにより前記被検項目を検出するイムノクロマト担体であって、個々のイムノクロ
マト担体は互いに異なる種類の被検項目を検出可能なイムノクロマト担体を一本以上備えてなり、そして
前記第二容器内に前記第一容器を収納するとき、該第一容器の奥が破れて前記検体抽出液が漏れ出るようにするための検体抽出液の漏出手段を備えてなる
ことを特徴とする多項目検出装置である。
本発明の第二の対象は、前記検体抽出液の漏出手段として、
前記第一容器の奥に切れ込みが設けられてなり、そして
前記第二容器の内奥面に前記第一容器の奥を押圧して破るための突起及び
前記第二容器内に前記第一容器を収納するとき、該第二容器の蓋が閉められ該第二容器が密閉されると共に該第一容器の奥が破れて前記検体抽出液が漏れ出るようにするために、前記第二容器の蓋の下面に、前記第一容器の蓋の上面を押圧するための凸部
が設けられてなることを特徴とする第一の対象の多項目検出装置である。
本発明の第三の対象は、第一の対象の多項目検出装置であって、前記一本以上のイムノクロマト担体が前記第二容器の内周面に周方向に並んで配置されてなる多項目検出装置と、
取り付けられた該多項目検出装置を、一本以上のイムノクロマト担体から被検項目に関するデータを読み取り可能に回転させる固定・回転手段と、
該一本以上のイムノクロマト担体が該データを読み取り可能な位置に達したことを確認する位置合わせ手段と、
該一本以上のイムノクロマト担体から該データを読み取るセンサーと、
該一本以上のイムノクロマト担体から該データが順次読み取られるように、前記固定・回転手段の一時停止及び再始動を繰り返すための制御手段と、
前記センサーから得られたデータを記録する記録手段
とを備えてなることを特徴とする多項目分析装置である。
本発明の第四の対象は、前記センサーが電荷結合素子(CCD)イメージセンサーであり、前記位置合わせ手段がバーコードリーダーであることを特徴とする第三の対象の多項目分析装置である。
本発明の第五の対象は、前記固定・回転手段が回転台とモーターとからなることを特徴とする第三の対象の多項目分析装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の多項目検出装置を使用すると、検体採取容器内に検体を採取した後、検出反応を行い、検体中の被検物質に関する多数の被検項目を検出するまでの工程を全て密閉系にて行うことが可能であり、有害な又は有害である可能性がある試料について、作業者の安全を確保しつつ、一項目以上、とりわけ多数の被検項目について分析操作を行うことができる。
本発明の多項目検出装置においては、分析作業時に、分析結果に影響を及ぼす物質が作業者から検体に混入するのを防止し得るので、分析結果の信頼性が向上する。
また、多数の被検項目の検出に必要な検出装置の個数を、最小1個まで低減することができるので、使用済みの検出装置の廃棄が容易である。
更に、本発明の多項目検出装置からの検出データの読み取り、記録及び解析を自動的に行うことが可能な本発明の多項目分析装置を使用すれば、分析操作における作業効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第一容器は、検体処理液を封入し得る密閉可能な容器であればよく、その材質、形状及び大きさは適宜選択することができる。
第二容器は、前記第一容器を収納する密閉可能な容器であればよく、その材質、形状及び大きさは適宜選択することができる。
第一容器及び第二容器は縦置き又は横置きとすることができる。第一容器及び第二容器
が縦置きとする容器である場合には、「奥」とは「底」を意味する。第一容器及び第二容器が横置きとする容器である場合には、「奥」とは、第一容器については、検体抽出液を漏れ出すために破る側端を意味し、第二容器については、第一容器の側端面を破るための突起などを設ける側端を意味する。
第一容器又は第二容器の材質は例えば透明又は半透明のプラスチック、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等を単独又は組み合わせて使用することができる。形状は例えば、円筒状、角筒状、それらの組み合わせ等であってよい。大きさは、第一容器を第二容器内に収納し得る大きさとする必要がある。
検体採取棒及び検体処理液は、分析すべき対象である検体に応じて、適するものを選択する。検体採取棒の材質、形状及び大きさ、並びに検体処理液の組成及び容量は適宜選択する。検体採取棒は、例えば、検体採取用の綿球を備えた綿棒であってよい。
イムノクロマト担体は、第一容器を第二容器内に収納した場合に、第一容器と第二容器との間隙に位置するように、第二容器内に少なくとも一本以上配置する。イムノクロマト担体の大きさや形状は、密閉された状態で第二容器内に収納され得るように適宜選択する。イムノクロマト担体の材料は、検体抽出液が浸透し得る材料とする必要があり、例えば、セルロース、ガラス繊維などの、この分野で慣用の材料を単独又は組み合わせて使用することができる。
イムノクロマト担体には、検体抽出液が浸透したとき該検体抽出液中の被検物質と特異的に反応し得る試薬を含浸又は担持させるか、或いは、前記試薬を含浸又は担持させた検出部分を設ける。前記検出部分は、予め形成したものを取り付けてもよい。また検出部分以外に、例えば、固形分を濾過するための濾過部分等の、検出に先立って前処理するための前処理部分などを適宜設けることができる。
イムノクロマト担体に対しては、表面の損傷や汚れに対する保護や変形の防止等を行い、安定した分析を可能とするために、ケーシングを利用してもよい。具体的には、イムノクロマト担体の少なくとも一面、例えば対向する両面を透明又は不透明なポリマーシート等で挟み込むか、又は、イムノクロマト担体をポリマーケース(例えば、角筒状又は円筒状の透明ポリマーケースなど)に収納してもよい。
一本以上のイムノクロマト担体は、外側から検出結果を読み取ることができるように、また二本以上の場合には、互いに接触しないように(即ち、互いの検出結果に影響を及ぼさないように)隔てて、例えば、前記第二容器の内周面に周方向に並んだ状態で、前記間隙内に配置することが好ましい。この場合、適する大きさ及び形状の区画部材を使用することにより、二本以上のイムノクロマト担体を互いに適する間隔で隔てて配置することができる。イムノクロマト担体の種類は、検体について検出すべき被検項目に応じて選択する。
一本以上のイムノクロマト担体において、二本以上の場合には、個々のイムノクロマト担体は互いに異なる種類の被検項目を検出可能なものとする。
またイムノクロマト担体は、一つのイムノクロマト担体にて一項目を検出可能なものであってもよいし、又は、一つのイムノクロマト担体にて二項目以上の多数の項目を検出可能なものであってもよい。例えば、イムノクロマト担体として、特開2002−286716号公報、特開2004−184295号公報、特表2007−506115号公報等に記載されているような、一つのイムノクロマト担体に2箇所以上の検出部を設け、一つのイムノクロマト担体にて多数の項目を検出可能にしたものを使用してもよい。
第一容器は密封可能なものであり、例えば、嵌合又はねじ込みなどにより該第一容器を密閉し得る着脱自在な蓋を備えていてよい。第二容器も、第一容器と同様密封可能なものであり、例えば、嵌合又はねじ込みなどにより該第二容器を密閉し得る着脱自在な蓋を備えていてよい。
【0009】
検体抽出液の漏出手段は、第二容器内に第一容器を収納するとき、該第一容器の奥が破れて検体抽出液が漏れ出るようにするための手段であれば特に限定されない。
例えば第一容器は、針状、円錐状、角錐状等の突起により押圧されたとき、破壊され得
る又は少なくとも一部が破れる奥を備えてよい。前記奥は、破壊され又は破れ易いように、薄肉にて形成するか又は切れ込みを設けることが好ましい。また第二容器は、前記第一容器の奥を押圧して破るための突起を設けた内奥面を備えてよい。前記突起は、第二容器と一体に形成してもよいし、又は、別途形成したものを第二容器の内奥面に配置又は貼着してもよい。突起の数は1個でよいが、2個以上であってもよい。
第一容器の奥に設ける切れ込みは、前記奥を破壊され又は破れ易くするものであればよく、前記奥の何れかの一面又は両面に設けてよい。切れ込みは、例えば、奥中心から放射状に多数本設けることができ、その幅や深さは適宜選択する。
第二容器の蓋の対面に、前記第一容器の蓋を押圧するための凸部を設け、該凸部の大きさ及び形状を適宜選択すると、第二容器の蓋を閉めて第二容器を密閉すると同時に又は密閉後に、前記第一容器の奥を凸部にて押圧して破るようにすることが可能である。
【0010】
本発明の多項目検出装置であって、前記一本以上のイムノクロマト担体が前記第二容器の内周面に周方向に並んで配置されてなる多項目検出装置を備えてなる本発明の多項目分析装置においては、各イムノクロマト担体からのデータが順次読み取られ、記録される。本発明の多項目分析装置における制御手段として、例えばディスプレイ及び印刷機を備えたパーソナルコンピューターを使用すると、前記固定・回転手段の一時停止及び再始動が適切に繰り返されるようにすることができると共に、読み取られたデータの表示、記録、分析並びに分析結果の表示、記録及び印刷を自動的に行う多項目分析装置を構成することが可能である。本発明の多項目分析装置における記録手段は、例えばハードディスク、USBメモリー、MO等の、一般的に使用される記録手段であってよい。本発明の多項目分析装置をネットワークに接続して使用してもよい。
前記センサーとしては、電荷結合素子(CCD)イメージセンサーを使用することができ、また前記位置合わせ手段としては、バーコードリーダーを使用することができる。該バーコードは、例えば各イムノクロマト担体の所定位置に設けてよく、このバーコードにより、各イムノクロマト担体の種類を確認し、またそれがデータを読み取り可能な位置に達したことを確認することができる。
前記固定・回転手段は、例えば回転台とモーターとからなっていてよく、該回転台及びモーターの大きさや形状は、本発明の多項目検出装置の大きさや形状に応じて適宜選択する。
【実施例】
【0011】
以下に示す実施例において、本発明を具体的且つ更に詳細に説明する。下記実施例は本発明の説明のためのみのものであり、これらの実施例により本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
実施例1:
図1に、本発明の実施例1の縦置きの多項目検出装置の分解斜視図を示す。図1(a)に示す第一容器14の中には検体処理液15が入っている。第一容器14は上端にネジ溝(図示せず)が切られており、内側にネジ溝(図示せず)が切られた蓋16をネジ閉めすることにより密閉することができる。図1(b)は、第一容器14を収納するための第二容器17である。第二容器17の内部には多数の区画部材18が設けられており、二つの区画部材18の間隙のそれぞれに、一本以上のイムノクロマト担体19が、互いに接触しないように隔てて配置されている(一本のイムノクロマト担体19のみを図示する)。イムノクロマト担体19は、ケーシング(例えば、対向する両面を透明又は不透明なポリマーシート等で挟み込む)を利用したものであってもよい。第二容器17内の中央には、第一容器14を収納し得る空間が設けられている。第二容器17は上端にネジ溝(図示せず)が切られており、内側にネジ溝(図示せず)が切られた蓋20をネジ閉めすることにより密閉することができる。蓋20の下面21には、凸部22が設けられている。また、第二容器17の内奥面23には、突起24(例えば、三角錐状又は四角錐状)が設けられている。図1(c)は、検体を採取するための綿球25を備えた綿棒26である。
【0012】
以下、図1の多項目検出装置の使用方法を説明する。
(1)綿棒26の綿球25で、鼻腔粘液、下痢便などの検体を採取する。
(2)綿球25が検体処理液15内に入るように綿棒26を第一容器14内に入れ、蓋16を閉めた後、第一容器14を振震撹拌する。
(3)一本以上のイムノクロマト担体19が配置された第二容器17内の中央の空間に第一容器14を収納し、蓋20を閉める。蓋20によって第二容器17が密閉されると同時に又は密閉後に、蓋20の下面21に設けられた凸部22により第一容器14の蓋16の上面27が押圧される。すると、第一容器14の奥28が第二容器17の内奥面23に設けられた突起24に押圧され破壊されるか、又は、少なくとも一部が破られる。。
(4)第一容器14から漏れ出た検体抽出液(被検物質が検体処理液15に抽出されたもの)がイムノクロマト担体19に下端から浸透し、個々のイムノクロマト担体19において予め定められた互いに異なる種類の被検物質との特異的な反応(検出反応)が開始される。
(5)そのまま所定時間(例えば、数分)放置後、一本以上のイムノクロマト担体19について順に分析結果を目視にて読み取り、判定する。なお、後述のように、前記(4)の状態の第二容器17を専用クロマトリーダーに投入し、多数のイムノクロマト担体19について順に分析結果を自動的に読み取り、判定することも可能である。
(6)第二容器14をそのまま廃棄処理する。
前記(2)〜(5)の工程は全て密閉された状態で行うことができるので、作業者の安全が確保され、分析に影響を及ぼす物質が作業者から検体に混入することが防止され、且つ使用済みの検出装置の廃棄が容易である。
【0013】
図2に第一容器14の説明図を示す。図2(a)は、検体処理液15を入れて蓋16を閉めた状態の第一容器14の斜視図、図2(b)は、綿球25が検体処理液15内に入るように綿棒26が図2(a)の第一容器14内に入れられており、そして蓋16が閉められる前の状態を示す正面図、図2(c)は、図2(b)の第一容器14の下面図である。本実施例では、図2(c)に示す奥28の下面側に、下面中心から放射状に6本の切れ込み29が設けられている。
図3に第二容器17の説明図を示す。図3(a)は、イムノクロマト担体19が入っておらず、そして蓋20が閉められる前の状態を示す正面図、図3(b)は、イムノクロマト担体19(一本のみ図示する)を区画部材18の間に挿入し、そして蓋20が閉められた後の状態を示す正面図である。
図4は、第一容器14を第二容器17内に収納し、蓋20を閉めた状態の本発明の多項目検出装置30を示す説明図である(イムノクロマト担体19は図示せず)。突起24により第一容器14の奥28が押圧されて破られ、第一容器14内に入っていた検体抽出液15’が第二容器17内にも流出して、イムノクロマト担体19の下端から検体抽出液15’が浸透する。
【0014】
図5に、図3(b)のI−I線に沿った断面図を示す[図5(a)]。図5(b)は図5(a)におけるイムノクロマト担体19の断面図、図5(c)は図5(a)における区画部材33の断面図である。二つの区画部材18のなす角度θは区画部材18の数に応じて、例えば50°のように、適宜選択する。区画部材18は第二容器17の内壁面31に円周方向に沿って、中心に対して放射状に配置することができる。第二容器17の内壁面31及び/又は内奥面23には、区画部材18を係止するための手段、例えば溝や凹部などを設けることができる。区画部材18を第二容器17と一体形成してもよい。
区画部材18の大きさ、形状、数は、区画部材18の間に配置するイムノクロマト担体19の大きさ、形状、数に応じて適宜選択する。例えば、区画部材18は、長手方向に直行する断面が矩形の細片であってよい。或いは、区画部材32のように、長手方向に直行する断面がL字形の細片であってよいし、又は、区画部材33のように、長手方向に直行
する断面がT字形の細片であってよい。
第二容器17の外径L1 は、第二容器17内に第一容器14を収納し得るように適宜選択する。第二容器14の外径L2 は、最大で、区画部材18、32、33の内側端部に接する円の直径L2 までである。例えばL1 は18.0mm、L2 は12.0mmである。
イムノクロマト担体19の縦寸法L3 及び横寸法L4 は、図5(a)に示すように、イムノクロマト担体19を二つの区画部材32又は33の間に固定・配置し得るように選択する。例えばL3 は5.0mm、L4 は1.0〜2.0mmである。
図5(c)に示す区画部材33の各部の寸法は、例えばL5 が1.5mm、L6 が2.0mm、L7 が0.7mmである。
【0015】
図6は、本発明の多項目分析装置34の使用方法を説明する図である。多項目分析装置34は、本発明の多項目検出装置30に加えて、多項目検出装置30の一本以上のイムノクロマト担体19から被検項目に関するデータを読み取る電荷結合素子(CCD)イメージセンサー35と、一本以上のイムノクロマト担体19がデータを読み取り可能な位置に達したことを確認するバーコードリーダー36とを備えている。
図4に示すところの、第一容器14を第二容器17内に収納し、蓋20を閉めた状態の本発明の多項目検出装置30を、図中の大矢印のように多項目分析装置34の回転台37に取り付け固定する。次いで多項目分析装置34を、回転台37をモーター38にて回転させることにより、図中の小矢印のように右回りに回転させる。回転台37は、制御手段(例えば、パーソナルコンピューター;図示せず)にて、一本以上のイムノクロマト担体19からデータが順次読み取られるように、一時停止及び再始動を繰り返す。センサー35にて読み取られたデータは、記録手段(例えば、ハードディスクやUSBメモリー;図示せず)に記録される。
所望により、パーソナルコンピューターに接続されたディスプレイに、検出結果、分析結果等を表示し、印刷機にて印刷する。
【0016】
実施例2:
図7に、本発明の実施例2の横置きの多項目検出装置の説明図を示す。第一容器39をL字型の第二容器40内に収納し、蓋(図示せず)を閉めると、第一容器39の奥41が第二容器40の内奥面42に設けられた突起43に押圧され破壊されるか、又は、少なくとも一部が破られる。第一容器39から漏れ出た検体抽出液(図示せず)は第二容器40の垂直部44の下部に溜まり、L字型のイムノクロマト担体45(一本のみを図示する)に浸透する。以下、実施例1の縦置きの多項目検出装置の場合と同様にして、被検項目の検出を行う。イムノクロマト担体45を二本以上使用することもできる。
第二容器40をL字型として、検体抽出液を溜めるための垂直部44を設ける代わりに、第二容器40の一端部(奥側)に、検体抽出液を溜めるための凹所を少なくとも一つ設けるか、又は、第二容器40の一端部(奥側)に吸収性物質(例えば、スポンジや濾紙など)を配置して、検体抽出液を吸収させてもよい。
実施例1の場合と同様に、イムノクロマト担体45は、ケーシング(例えば、対向する両面を透明又は不透明なポリマーシート等で挟み込む)を利用したものであってもよい。
イムノクロマト法の検出結果の判定を目視で行う場合には、縦置きの多項目検出装置を使用するよりも横置きの多項目検出装置の使用する方が、イムノクロマト担体から検出結果を示す位置を読み取り易く、正確に検出結果を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施例1の多項目検出装置の分解斜視図である。
【図2】図2は、図1の多項目検出装置における、検体処理液を封入し得る密閉可能な第一容器の説明図である。
【図3】図3は、図1の多項目検出装置における、第一容器を収納する密閉可能な第二容器の説明図である。
【図4】図4は、本発明の多項目検出装置の使用中の状態を示す正面図である。
【図5】図5は、本発明の多項目検出装置における、イムノクロマト担体の配置状態を説明する図である。
【図6】図6は、本発明の多項目分析装置の使用方法を説明する図である。
【図7】図7は、本発明の実施例2の多項目検出装置の説明図である。
【符号の説明】
【0018】
14,39:第一容器 15:検体処理液
15’:検体抽出液 16,20:蓋
17,40:第二容器 18,32,33:区画部材
19:イムノクロマト担体 21:下面
22:凸部 23,42:内奥面
24,43:突起 25:綿球
26:綿棒 27:上面
28,41:奥 29:切れ込み
30:多項目検出装置 31:内壁面
34:多項目分析装置 35:センサー
36:バーコードリーダー 37:回転台
38:モーター 44:垂直部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体処理液を封入し得る密閉可能な第一容器と、該第一容器を収納する密閉可能な第二容器とからなり、前記検体処理液に検体が投入され被検物質が抽出された検体抽出液について一本以上のイムノクロマト担体を同時に適用することにより、被検物質に関し、一項目以上の被検項目の検出を行う多項目検出装置であって、
前記第一容器は、検体採取棒と、検体処理液とを備えてなり、
前記第二容器は、検体抽出液が浸透したとき該検体抽出液中の被検物質と特異的に反応することにより前記被検項目を検出するイムノクロマト担体であって、個々のイムノクロマト担体は互いに異なる種類の被検項目を検出可能なイムノクロマト担体を一本以上備えてなり、そして
前記第二容器内に前記第一容器を収納するとき、該第一容器の奥が破れて前記検体抽出液が漏れ出るようにするための検体抽出液の漏出手段を備えてなる
ことを特徴とする多項目検出装置。
【請求項2】
前記検体抽出液の漏出手段として、
前記第一容器の奥に切れ込みが設けられてなり、そして
前記第二容器の内奥面に前記第一容器の底を押圧して破るための突起及び、
前記第二容器内に前記第一容器を収納するとき、該第二容器の蓋が閉められ該第二容器が密閉されると共に該第一容器の奥が破れて前記検体抽出液が漏れ出るようにするために、前記第二容器の蓋の下面に、前記第一容器の蓋の上面を押圧するための凸部
が設けられてなることを特徴とする請求項1記載の多項目検出装置。
【請求項3】
請求項1記載の多項目検出装置であって、前記一本以上のイムノクロマト担体が前記第二容器の内周面に周方向に並んで配置されてなる多項目検出装置と、
取り付けられた該多項目検出装置を、一本以上のイムノクロマト担体から被検項目に関するデータを読み取り可能に回転させる固定・回転手段と、
該一本以上のイムノクロマト担体が該データを読み取り可能な位置に達したことを確認する位置合わせ手段と、
該一本以上のイムノクロマト担体から該データを読み取るセンサーと、
該一本以上のイムノクロマト担体から該データが順次読み取られるように、前記固定・回転手段の一時停止及び再始動を繰り返すための制御手段と、
前記センサーから得られたデータを記録する記録手段
とを備えてなることを特徴とする多項目分析装置。
【請求項4】
前記センサーが電荷結合素子(CCD)イメージセンサーであり、前記位置合わせ手段がバーコードリーダーであることを特徴とする請求項3記載の多項目分析装置。
【請求項5】
前記固定・回転手段が回転台とモーターとからなることを特徴とする請求項3記載の多項目分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−216651(P2009−216651A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62909(P2008−62909)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000120456)栄研化学株式会社 (67)