説明

大ビームレーザポリッシングを用いて眼の表面を改変する装置およびその装置を制御する方法

【課題】レーザポリッシングまたはディザリングを用いて角膜矯正を行い、眼の一部を切除するために使用されるショットをランダムにまたは別の方法で治療の中心軸から移動させて、治療ゾーンにおける大きな隆起の形成を防止する装置及び方法を提供する。
【解決手段】角膜のある領域から組織を除去するレーザ系であって、治療の垂直軸を有する角膜上のある位置に中心を有するあるサイズのレーザスポットを生成するレーザ系を制御する方法であって、(a)該領域のサイズの10%から90%の間に該スポットサイズを設定するステップ、および(b)該治療の軸から離れた少なくとも1つの位置へ該角膜に沿って該スポット中心位置をランダムに振動させながらレーザスポットの連続ショットを発射させるステップ、を包含する、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼の角膜の曲率を外科的に改変する装置、およびその装置を制御する方法に関し、特に、様々な角膜欠陥を速やかに矯正する装置およびその装置を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
矯正レンズの開発当初から、視力欠陥を矯正するための新規でさらに改善された方法が開発されている。二焦点レンズおよび長期装用ソフトコンタクトレンズから角膜切開および整形に至るまで、眼科学の分野は、近視、遠視および乱視などの様々な視力欠陥を矯正する際の適性、安全性および確実性において多大な発展を遂げてきた。
【0003】
矯正レンズは依然として広く一般的なアプリケーションで使用されているが、眼科医は、このような欠陥を矯正するための手術に力を注いでいる。最も一般的な外科技術の1つに放射状の角膜切開があるが、この角膜切開では、医師は、角膜の外面に放射状の切り込みを形成し、角膜を整形して改変を施し、患者の視力欠陥を矯正する。この技術は開発の途上にあるが、レーザの誕生および医学分野へのレーザの導入により、新規で非常に革命的な眼科手術の方法が開発された。特に、エキシマレーザの開発および眼科手術へのその応用により、眼科手術に新たなアプローチが切り開かれた。
【0004】
エキシマレーザは、約193nmの非常に短い波長をもつコヒーレント光を生成する。これらの波長およびそれによって生じる高エネルギーで、エキシマレーザは、隣接の組織をあまり加熱せずに、分子レベルで組織を除去または切除する。従って、エキシマレーザは、組織を「焼き」尽くすというより、文字通り、分子の結合を切断し、それによって切除された組織は切除表面から駆出され、比較的無傷の表面は実質的に傷跡を残すことなく治癒する。エキシマレーザのこの特徴は現在公知であり、例えば、1988年11月15日付けで発行された「Far Ultraviolet Surgical and Dental Procedures」という名称の特許文献1にさらに詳細に記載されている。
【0005】
エキシマレーザの用語「エキシマ」は、元来、分子の動作原理から得られたものであった。当初、エキシマレーザは、Xe,KrまたはFの形態のキセノン、クリプトンまたはフッ素などの励起された二量体のレーザ動作に基づいていた。レーザに適用されている用語「エキシマ」は、現在では誤った名称である。なぜなら、眼科手術に用いられる最も一般的なエキシマレーザは二量体を使用せず、フッ化アルゴンを使用しているからである。エキシマレーザはまた、レーザ共振器内のフッ化アルゴン混合物のレーザ動作を刺激するために他のレーザを用いているという点で、ポンプレーザでもある。「エキシマレーザ」は、現在では、400nm未満の紫外線波長を有するレーザ群全体に適用されるようになっている。
【0006】
眼科手術に用いられる場合には、エキシマレーザをパルスにするのが好ましい。なぜなら、パルスにすることによって熱的な加熱なしに高エネルギーを与えることが可能になるからである。これらのパルスは、角膜に与えられる高エネルギーレーザ光の非常に短いバーストである。例えば、このようなレーザは、通常、10から20nsのパルス期間で1から50Hzの間でパルスされる。しかし、エキシマレーザの欠点は、ビーム全体のエネルギー密度が、大スケールおよび小スケールな不均等性を有する傾向があることである。エキシマレーザの外科手法への適用は、1988年11月15日付けで発行された「Far Ultraviolet Surgical and Dental Procedures」という名称の特許文献2に記載されている。エキシマレーザの眼科手術への応用および開発の歴史的背景については、非特許文献1を参照すること。
【0007】
1983年頃には、研究者は、エキシマレーザ光の角膜整形への応用の可能性を見いだした。それ以来、近視矯正のためのサイズ可変型円形アパーチャ、遠視矯正のためのサイズ可変型リング状アパーチャ、および乱視矯正のためのサイズ可変型スリット状アパーチャなどの様々な技術を用いて、角膜を整形する多数のシステムが開発されている。これらの技術は、総称して、光屈折角膜切開として知られるようになった。近視を矯正するためのこのようなアパーチャ、例えば、徐々にスポットサイズが小さくなっていく一連のエキシマレーザショットは、角膜の一部を切除し、角膜に「矯正レンズ」を効果的に形成し得ることが認識されている。これらの技術は、例えば、1990年11月27日付けで発行された「Surgical Apparatus for Modifying the Curvature of the Eye Cornea」という名称の特許文献3および1988年3月8日付けで発行された「Apparatus for Performing Ophthalmic Laser Surgery」という名称の特許文献4に記載されている。レーザ眼科手術の当業者は、これらのサイズ可変型アパーチャを用いて、様々な程度の近視、遠視および乱視ならびにこれらの症状の組み合わせを適切に矯正するために必要な露光パターンを広範囲に開発した。
【特許文献1】米国特許第4,784,135号
【特許文献2】米国特許第4,784,135号
【特許文献3】米国特許第4,973,330号
【特許文献4】米国特許第4,729,372号
【非特許文献1】Color Atlas/Text of Excimer Laser Surgery,c1993 Igaku−Shoin Medical Publishers, Inc.の第1章
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、これらのマルチプルアパーチャシステムは、多数の欠点を有している。これらのマルチプルアパーチャシステムは、複雑で柔軟性がないため多数のアパーチャホイール(aperture wheel)またはマスクを必要とし、近視および遠視の矯正には円形対称、乱視の矯正には円筒形対称といった標準的な矯正形態を提供するだけである。しかし、人間の眼は、もっと微妙な欠陥を有する傾向がある。従って、これらの欠陥に対応でき、さらに順応性のある解決法を提供するシステム、および物理的に簡単な構成要素が有利であろう。
【0009】
眼から組織を切除する装置は、上記の米国特許第4,973,330号に記載されている。この装置はエキシマレーザを有し、レーザビームはその軸を眼の視軸と一致させた状態で角膜に衝突する。さらに、フィールドストップが、レーザビームによって照射された角膜のレーザスポットの面積を限定する。このフィールドストップのサイズは、除去される領域の厚さが眼の視軸からの距離の関数となるように、除去される領域のプロファイルに応じて一時的に可変な方法で設定される。
【0010】
米国特許第4,973,330号に記載されているシステムは、角膜上に「堆積されたレーザエネルギー(laser energy deposited)」を、眼の視軸からの距離の関数としてこのように設定することが可能である。但し、これは、エネルギー分布(すなわち、レーザビームスポットのパワー)が均一または少なくとも軸対称の条件下においてのみ行われる。しかし、これは特にエキシマレーザが常に満足できる条件ではない。パワー分布が不均一であると、組織の除去は非軸対称となる。さらに、米国特許第4,973,330号に記載されているシステムでは、乱視ではなく球状の収差の矯正が可能となるだけである。
【0011】
同一の基本概念に基づいた装置は、1991年2月19日付けで発行された「Surface Shaping Using Lasers」という名称の米国特許第4,994,058号から公知である。この装置は、一時的に可変なアパーチャを有するフィールドストップの代わりに、「破壊できるフィールドストップマスク」を用いている。
【0012】
組織を除去することによって角膜を整形する他のクラスの装置は、様々なL’Esperance特許から公知である。これらには、1987年5月19日付けで発行された「Method for Ophthalmological Surgery」という名称の米国特許第4,665,913号;1987年6月2日付けで発行された「Method and Apparatus for Analysis and Correction of Abnormal Refractive Errors of the Eye」という名称の米国特許第4,669,466号;1988年1月12日付けで発行された「Apparatus for Ophthalmological Surgery」という名称の米国特許第4,718,418号;1988年1月26日付けで発行された「Apparatus for Analysis and Correction of Abnormal Refractive Errors of the Eye」という名称の米国特許第4,721,379号;1988年3月8日付けで発行された「Apparatus for Performing Ophthalmic Laser Surgery」という名称の米国特許第4,729,372号;1988年3月22日付けで発行された「Method for Performing Ophthalmic Laser Surgery」という名称の米国特許第4,732,148号;1988年9月13日付けで発行された「Method of Laser−Sculpture of the Optically used Portion of the Cornea」という名称の米国特許第4,770,172号;1988年9月27日付けで発行された「Method of Laser−Sculpture of the Optically used Portion of the Cornea」という名称の米国特許第4,773,414号;および1989年1月17日付けで発行された「Method of Laser−Sculpture of the Optically used Portion of the Cornea」という名称の米国特許第4,798,204号が含まれる。この装置では、小さな焦点スポットを有するレーザビームが、二次元走査システムによって除去される領域上を移動する。「スキャナ」として動作するこの装置は、「除去される領域に」堆積されたエネルギーの任意の二次元プロファイルを作成できるという利点を有している。しかし、ビームスポットが小さく、また単位面積当たりのパワーを特定の「臨界」値よりも大きくできないため、治療時間が非常に長くなる。
【0013】
従って、現在の技術は、エキシマレーザの非線形エネルギー分布を十分に考慮していない。エキシマレーザは、そのエネルギー分布内に大スケールおよび小スケールの非線形性を両方とも有している。これにより、治療中の眼のある領域が過剰に切除されたり、切除が十分に行われなかったりし得る。従って、眼に堆積された有効なエネルギーをさらに均一にするシステムを提供することが所望される。
【0014】
アパーチャを使用して徐々にサイズが小さくなる一連のショットを形成するシステムはまた、角膜の治療ゾーンに鋭い隆起を形成するという欠点を有する。特に治療ゾーンの周辺付近では、通常、各特定のスポットサイズで切除を必要な深さとするために、多数のショットが必要である。各ショットの典型的な切除の深さは0.2μmである。単一のアパーチャーサイズで複数のショットが必要とされる場合には、隆起の深さが増強され、0.2μmの数倍の有効な隆起が形成される。例えば、5ショットは、1.0μmの高さの隆起を形成することになる。治療ゾーンのこれらの鋭い隆起は、特にひどいジオプタ欠陥を矯正する場合に、望ましくない上皮の再成長を導き得る。このような隆起を最小限にするシステムは、速やかな上皮の治癒を促進し、過剰な再成長を防止し、矯正された眼がその矯正を長期間、かつ、より安定して保持できるようにする。
【0015】
大抵の電流エキシマ技術では、切除の前に眼から上皮層を物理的にそぎ取ることが必要とされる。これは患者に外傷を与える可能性があり、高度な正確性が医師に要求される。あるいは、角膜を一部切除する前に上皮を除去する非侵入的(less invasive)方法が所望される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明による方法および装置は、レーザ「ポリッシング(polishing)」または「ディザリング(dithering)」を用いて角膜矯正を行う。この角膜矯正では、眼の一部を切除するために使用されるショットを、ランダムにまたは別の方法で治療の中心軸から移動させ、治療ゾーンにおける大きな隆起の形成を防止する。
【0017】
さらに本発明によると、様々なアパーチャ形状を用いる代わりに、所望の遠視矯正線または乱視矯正線に沿って比較的大きなビームを移動し、ショットが重複する線を形成する。さらに矯正が必要な場合には、重複線を様々なビームサイズを用いて形成し、角膜内に所望の矯正曲線を形成する。
【0018】
さらに本発明によると、この走査ビーム技術を用いれば、重複ショットの移動線を変更することによって、または一連のショットを他の方法で発生させることによって、非対称欠陥を適切に切除し、「湾曲」乱視などの様々な非対称視力欠陥が矯正される。
【0019】
さらに本発明のシステムおよび方法では、レーザ切除を用いて上皮が除去される。まず、上皮は赤外蛍光染料で染色される。次に、上皮は、赤外走査装置が上皮のある部分が除去されたことを蛍光の欠失によって確認するまで、除去されるべき上皮の領域をカバーするビームを用いて連続して切除される。次に、手動またはコンピュータ制御下で、スポットサイズが減少され、まだ蛍光を発している領域が、蛍光を発しなくなるまで切除される。上皮が治療領域全体から除去されるまでこれを繰り返す。この技術はまた、上皮の初期の厚さを除去前にマップすることが可能である。
【0020】
1つの局面において、本発明は、角膜のある領域から組織を除去するレーザ系であって、治療の垂直軸を有する角膜上のある位置に中心を有するあるサイズのレーザスポットを生成するレーザ系を制御する方法であって、
(a)この領域のサイズの10%から90%の間にこのスポットサイズを設定するステップ、および
(b)この治療の軸から離れた少なくとも1つの位置へこの角膜に沿ってこのスポット中心位置を移動させるステップ、を包含する方法を提供する。
【0021】
好ましい実施形態において、本発明は、上記スポット位置を移動させるステップが、
(a)上記レーザスポットの最大幅よりも小さい直径を有するディザリング領域の範囲内で上記スポット中心位置をランダムに振動させるステップ、
をさらに包含する、レーザポリッシングを行うための上記方法を提供する。
【0022】
さらに好ましい実施形態において、本発明は、上記スポット位置を移動させるステップが、
(a)上記レーザスポットの最大幅よりも小さい最大幅を有するディザリング領域の周囲に沿って上記スポット中心位置を移動させるステップ、
をさらに包含する、レーザポリッシングを行うための上記方法を提供する。
【0023】
さらに好ましい実施形態において、本発明は、上記スポット位置を移動させるステップが、
(a)上記レーザスポットの最大幅よりも小さい直径を有する円形ディザリング領域の周辺に沿って上記スポット中心位置を移動させるステップ、
をさらに包含する、レーザポリッシングを行うための上記方法を提供する。
【0024】
さらに好ましい実施形態において、本発明は、上記スポット位置を移動させるステップが、
(a)上記治療の軸に垂直な少なくとも1つの軸に沿って上記スポット中心位置を移動させるステップ、
をさらに包含する、レーザポリッシングを行うための上記方法を提供する。
【0025】
さらに好ましい実施形態において、本発明は、上記スポット位置を移動させるステップが、
(a)第1の円に沿って上記スポット中心位置を移動させるステップ、
(b)上記スポットサイズを変更するステップ、および
(c)この第1の円の中心に対応する中心を有する第2の円に沿ってこのスポット中心位置を移動させるステップ、
をさらに包含する、遠視を矯正するための上記方法を提供する。
【0026】
さらに好ましい実施形態において、本発明は、上記スポット位置を移動させるステップが、
(a)線に沿って上記スポット中心位置を移動させるステップ、
(b)上記スポットサイズを変更するステップ、および
(c)この線に沿ってこのスポット中心位置を移動させるステップ、
をさらに包含する、乱視を矯正するための上記方法を提供する。
【0027】
さらに好ましい実施形態において、本発明は、上記スポット位置を移動させるステップが、
(a)円弧に沿って上記スポット中心位置を移動させるステップ、
(b)上記スポットサイズを変更するステップ、および
(c)この円弧に沿ってこのスポット中心位置を移動させるステップ、
をさらに包含する、乱視を矯正するための上記方法を提供する。
【0028】
別の局面において、本発明は、角膜上のある位置に中心を有するあるサイズのレーザスポットを生成して、刺激されると蛍光を発する染料を用いて染色された角膜上の除去領域から上皮を除去するレーザ系であって、この除去領域からの蛍光発光を検出する結像系を備えているレーザ系を制御する方法であって、
(a)このスポットサイズをこの除去領域のサイズに設定するステップ、
(b)この除去領域へこのレーザスポットを与えるステップ、および
(c)この除去領域全体が蛍光を発しているかどうかを検出し、発光していればステップ(b)へ戻るステップ、を包含する方法を提供する。
【0029】
好ましい実施形態において、本発明は、(d)上記レーザスポットが与えられた上記除去領域の最後の部分が全体的に蛍光を発していなければ、継続するステップ、
(e)以下を行うステップ、
(1)このレーザスポットが最後に与えられた時に蛍光を発したこの除去領域の部分のサイズに上記スポットサイズを設定するステップ、
(2)ステップ(e)(1)において決定されたこの除去領域のこの部分の中心へ上記スポット位置を設定するステップ、
(3)この除去領域のこの部分へこのレーザスポットを与えるステップ、および
(4)このステップ(e)(3)でこのレーザスポットが与えられたこの除去領域の部分全体が蛍光を発しているかどうかを検出し、発していればステップ(e)(3)へ戻るステップ、ならびに
(f)ステップ(e)(3)又はステップ(c)においてこのレーザスポットが最後に与えられた時にこの除去領域のいずれかの部分が蛍光を発したままであるかどうかを判定し、発したままであればステップ(e)へ戻るステップ、
をさらに包含する、上記方法を提供する。
【0030】
別の局面において、本発明は、角膜のある領域から組織を除去するレーザ系であって、治療の垂直軸を有する角膜上のある位置に中心を有するあるサイズのレーザスポットを生成するレーザ系を制御する方法であって、
(a)この領域のサイズおよび位置に応じてこのスポットのサイズおよび位置を設定するステップ、および
(b)このレーザスポットを振動させるステップ、を包含する方法を提供する。
【0031】
好ましい実施形態において、本発明は、上記レーザスポットを振動させるステップが、このレーザスポットのサイズの半分を超えない量だけこのスポットを振動させるステップをさらに包含する、上記方法を提供する。
【0032】
さらに好ましい実施形態において、本発明は、上記レーザスポットを振動させるステップがこのレーザスポットをランダムに振動させるステップをさらに包含する、上記方法を提供する。
【0033】
さらに好ましい実施形態において、本発明は、上記レーザスポットを振動させるステップがこのレーザスポットを円形パターンで振動させるステップをさらに包含する、上記方法を提供する。
【0034】
さらに好ましい実施形態において、本発明は、上記レーザスポットを振動させるステップがこのレーザスポットを少なくとも1つの軸に沿って振動させるステップをさらに包含する、上記方法を提供する。
【発明の効果】
【0035】
本発明による方法および装置は、レーザ「ポリッシング(polishing)」または「ディザリング(dithering)」を用いて角膜矯正を行う。この角膜矯正では、眼の一部を切除するために使用されるショットを、ランダムにまたは別の方法で治療の中心軸から移動させ、治療ゾーンにおける大きな隆起の形成を防止する。
【0036】
さらに本発明によると、様々なアパーチャ形状を用いる代わりに、所望の遠視矯正線または乱視矯正線に沿って比較的大きなビームを移動し、ショットが重複する線を形成する。さらに矯正が必要な場合には、重複線を様々なビームサイズを用いて形成し、角膜内に所望の矯正曲線を形成する。
【0037】
さらに本発明によると、この走査ビーム技術を用いれば、重複ショットの移動線を変更することによって、または一連のショットを他の方法で発生させることによって、非対称欠陥を適切に切除し、「湾曲」乱視などの様々な非対称視力欠陥が矯正される。
【0038】
さらに本発明のシステムおよび方法では、レーザ切除を用いて上皮が除去される。まず、上皮は赤外蛍光染料で染色される。次に、上皮は、赤外走査装置が上皮のある部分が除去されたことを蛍光の欠失によって確認するまで、除去されるべき上皮の領域をカバーするビームを用いて連続して切除される。次に、手動またはコンピュータ制御下で、スポットサイズが減少され、まだ蛍光を発している領域が、蛍光を発しなくなるまで切除される。上皮が治療領域全体から除去されるまでこれを繰り返す。この技術はまた、上皮の初期の厚さを除去前にマップすることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下の好ましい実施態様の詳細な説明を以下の図面と組み合わせて考慮することによって、本発明がより理解され得る。
【0040】
図1Aは、本発明のエキシマレーザ20を示す。エキシマレーザ20は、同じく集束要素を含むビームホモジェナイザ24にビームを与える。そして、ビームホモジェナイザ24は、比較的均等なビーム22を、ダイアフラム36の形態を取るフィールドストップに与える。フィールドストップは制御ユニット64によって調節され、眼44上のレーザスポットの最大サイズを、乱視もしくは遠視の矯正のため切除を行う際に組織が除去されるべき領域の面積の約10%から90%の間になるようにする。この好ましい最大サイズは、何らかの一定のパーセンテージよりも、むしろ切除されるべき領域の形状及びサイズに依存し、従って、例えば約20%から80%であり得る。使用可能なスポットのサイズが大きいほど治療時間が短縮され、優れた使用が可能である。
【0041】
さらに、走査ミラー42の形態を取るビーム操作ユニットが装備され、これも制御ユニット64によって調節される。走査ミラー42は、眼44上での組織が除去されるべき領域の少なくとも一部分にわたって、ビーム22の軸を移動させる。
【0042】
このように本発明は、組織の除去により角膜を整形する眼科システム10を提供する。このシステムにより、非軸対称なプロファイルの除去を比較的短時間で実現できる。さらに、眼科システム10は、ビームスポット上の不均等なエネルギー配分を補償する。
【0043】
この手段により、走査ユニットを用いた場合のように極めて微小なスポットを照射できるのみならず、比較的広い領域も照射でき、比較的迅速に治療を行うことができる。治療時間を短縮するには、眼44上のレーザスポットのサイズを可能な限り長時間にわたって、可能な限り広く、例えば治療すべき範囲のサイズの少なくとも50%に維持することが好ましい。
【0044】
図示のように、走査ミラー42は、少なくとも一本の軸の周辺もしくは周囲を傾動し得る。使用できるミラー要素、特に二本の軸の周囲で傾動し得るミラー要素は、例えば米国特許第4,175,832号に記載されている。
【0045】
さらに、制御ユニット64は、眼44上のレーザスポットのサイズを、(走査ミラー42の使用を通じて)眼44上でのビーム軸の動きに相関して調節でき、それにより眼44の一定領域上に堆積されるエネルギーを正確に調節する。このようにして、非軸対称なプロファイルを眼44の角膜表面上に発生させ得る。また、中央を塞いだ長円形や円形など、別タイプのダイアフラム36も使用できる。
【0046】
さらに、走査ミラー42は、ビーム22中でダイアフラム36の後側ばかりでなく手前にも配置し得る。その場合は、ダイアフラム36を走査ミラー42と同調して動かすことが好ましい。
【0047】
球面収差を補正するには、矢印12で示されるように、ビーム22をショット毎に少なくとも一方向に振動させるように、制御ユニット64が走査ミラー42を動かすことが好ましい。このような振動が、ビーム22上のエネルギー配分の不均等を補償する。この振動は、最大ビームサイズとは無関係に適用される。
【0048】
乱視を矯正するには、どちらも眼44の治療軸と共線的ではない少なくとも二方向の間で、走査ミラー42がビーム22の軸を動かす。これにより、最新の研究では1つではなく2つの頂点を有する、つまり、ラクダのコブの形だとされる乱視の眼を、理論の制約を受けずに治療することが可能になる。また、制御ユニット64は走査ミラー42を調節し、ビーム22の軸が少なくとも一次元的に各方向の周辺を振動し、ビーム22の均等性を補償するようにする。
【0049】
遠視を矯正するには、ビーム22の軸が円錐形のシェル表面上で動かされることが好ましい。ビーム22の不均等性を補償するため、少なくとも一次元的である振動を重畳することも可能である。円錐形シェル表面上を移動することにより、重複ショットの円形パターンが眼44上に投射される。
【0050】
ダイアフラム36をエキシマレーザビーム断面の典型的な形状に適合させるにあたって、ダイアフラム36もまた非軸対称形状を有し得る。その場合には、円錐形シェル上でビーム22の軸が動く間に堆積エネルギーを均等化させるために、ダイアフラム36は回転される。ダイアフラム36の回転が円錐形シェル上でのビーム22の軸の回転に同調せずに起こるならば、この均等化は強められる。
【0051】
図1Bは、本発明による方法および装置が実現され得る典型的な眼科システム10をさらに詳しく示す図である。エキシマレーザ20は、光学要素26から反射した後のパルスビーム22を、ビームホモジェナイザ24に与える。パルスビーム22のビームホモジェナイザ24への伝達を遮断するため、シャッタ28も備えられている。エキシマレーザ20は、この技術では周知である典型的なエキシマレーザであり、好ましくは、最大パルスエネルギー400mJ/pulseで波長193nmのビームを与える。エキシマレーザ20は、好ましくは、パルス周波数10Hzかつパルス長18nsで、治療部位に最大1Wのパワーを与える。無論、他の様々なエキシマレーザも使用できる。さらに、本発明による装置および方法は、エキシマレーザ以外のレーザの使用にも適用できる。例を挙げると、レーザからの光の波長は400nmより小さいことが好ましい。熱的な加熱を軽減した所望の切除作用が可能だからである。さらに、典型的な繰り返し率を1秒当り60から100パルス、典型的なパルス長を10から30nsとし、200mJ/pulseまで下げるなどした他のパルスエネルギーを与えることも可能である。これらは全て単なる典型値であって、本発明による装置及び方法の精神の範囲内での変更も可能である。そのようなレーザシステムの例は、1987年5月19日付けで発行された「Method for Ophthalmogical Surgery」という名称の米国特許第4,665,913号、および1988年3月8日付けで発行された「Method for Performing Ophthalmic Laser Surgery」という名称の米国特許第4,729,372号に記載されている。
【0052】
ビームホモジェナイザ24は、好ましくは、均等化および集束のための標準的なハードウェアを備える。このハードウェアは、ビームの光学的混合およびビームの回転に基づくものであり得る。典型的なビーム均等化ハードウェアの一例は、1990年3月27付けで発行された「Sculpture Apparatus For Correcting Curvature Of The Cornea」という名称の米国特許第4,911,711号を参照されたい。その参照文献に示されたビーム均等化ハードウェアに比べると、下記に述べる本発明に従って「ディザリング(dithering)」を備えることにより、ビームホモジェナイザ24はより簡潔になり得ている。ビームホモジェナイザ24からのパルスビーム22は、次に光学要素30から反射される。この光学要素30はまた、パイロットレーザ32からの赤色パイロットレーザビームを透過させる。このパイロットレーザ32は、好ましくは、パワーが1mW以下の633nmヘリウムネオンレーザである。パイロットレーザ32からの赤色パイロットビームもまた、シャッタ34で遮断され得る。パイロットレーザ32は、その光学的経路がパルスビーム22と一致するように整合されている。パイロットレーザ32は、眼44の治療軸上にビーム22をセンタリングする機能を有し、また、後述するように、眼44の上への集束を可能にする。さらに、パイロットレーザ32は、患者のための光学的固定点を与え得る。但し、他のレーザもしくは光源をその目的のために備えることもできる。
【0053】
光学要素30からのパルスビーム20(パイロットレーザ32からのビームにも共整合されている)は、次に、調節可能なダイアフラム36を透過する。ダイアフラム36は、最後の光学要素に入射する前に、ビームサイズを調節することを可能にする。ダイアフラム36の後では、所定位置にあるスポットモードレンズ38がビーム22をさらに集中させる。これにより、屈折手術よりもむしろ治療的手術を行う医師が、眼の一定の欠陥をスポット切除するのを可能にする。このように、スポットモードレンズ38は、治療処置と屈折処置のどちらを希望するかに応じて、所定位置に移動されたり所定位置から外されたりする。
【0054】
スポットモードレンズ38の次に、集束レンズ40が、ビーム22を走査ミラー42に向ける。走査ミラー42は、ビーム22を反射して患者の眼44上に照射する。後述するように、パイロットレーザ32からのビーム22の一部分は、眼科手術システム10全体からの眼44の距離を調節するため、および、センタリングを行うために使用されることに留意されたい。集束レンズ40は、光を集束させ、眼44が最適の距離にあるときにビーム22が適切に眼44上に集束されるようにする。
【0055】
これらの種々のレンズおよびミラーは、このように組み合わされてエキシマビームを角膜に供給する光学系を形成する。この光学系は、角膜上にレーザスポットを生成するが、そのスポットのサイズは、スポットの位置に応じて調節可能である。そのようなビームを光学的に供給するために、広範囲に渡る種々のシステムを利用できることは、すぐに理解されるであろう。例えば、スポットサイズを調節するため、アパーチャではなくむしろレンズを利用できる。また、走査ミラーの代わりに、患者もしくは患者の眼44を物理的に移動させ、眼44上の異なる場所にショットを供給することができる。
【0056】
本発明によれば、このシステムにはまた、集束レーザ46も備えられている。このレーザのビームもまた、シャッタ48によって遮断され得る。この集束レーザ46は、好ましくは、パワーが1mWより小さく、波長が535nmのビームを供給する緑色ヘリウムネオンレーザである。集束レーザ46からのビームは、光学素子50を通って進み、ある角度で眼44に衝突する。眼科手術システム10からの眼44の距離は、パイロットレーザ32からのビームと集束レーザ46からのビームの両方が、眼44の表面の同一点に衝突するよう調節される。
【0057】
さらに、公知の従来技術である付加的な固定マスク52が装備され、手術中の眼44を安定させるのに使用される。これは組織片除去要素を含んでもよく、典型的には、真空吸引リングもしくはフックを介して眼44に取り付けられる。また、クリーンガス浄化ユニット54が、システム内の光学要素およびビームから浮遊組織片を無くすことを可能にする。
【0058】
顕微鏡56は、眼44の表面切除中に、医師が進行状況を観察するため装備される。この顕微鏡56は、倍率が3.4倍、5.6倍および9.0倍であるZEISS OPMI 「PLUS」 part No. 3033119910であることが好ましい。視野の照射は不図示の冷光源により行われるが、この光源はSchott KL1500 Electronic, ZEISS part No. 417075であることが好ましい。この顕微鏡56は、走査ミラー42を介して焦点調節し、また、分離ミラー58を介して焦点調節する。さらに、分離ミラーが、後述する上皮組織切除に使用される赤外線ビデオユニット60に眼44の像を与える。赤外線ビデオユニット60は、好ましくは、収集(capturing)ビデオスクリーン62および制御ユニット64に映像出力を与える。赤外線ビデオユニット60は、好ましくは、赤外光と可視光の両方を感知する。
【0059】
制御ユニット64は、典型的には、International Business Machines Corp.,のIBM PCと互換性のある高性能コンピュータであり、さらに好ましくは、シャッタ28、34、48、ダイアフラム36、スポットモードレンズ38および走査ミラー42を含む、眼科手術システム10の全ての要素を制御する。
【0060】
図2Aは、近視矯正が行われた典型的な眼44の角膜を示す単純化正面図である。幅Sの治療ゾーン100は、その中心が治療軸102上に位置するようにされている。しかし、治療軸102は必ずしも眼44の視軸に一致する必要はない。治療ゾーン100の境界は第1の外側切除リング104によって決定され、それに続く切除リング106〜114は、治療軸102に接近するほど広い間隔で示されている(好ましくは小さいショットから先に行われることに留意すること)。
【0061】
典型的なシステムにおいては、スポット間におけるスポット径の変化は実際には一定であり得るが、治療ゾーン100の周縁部に接近するほど多数のショットが行われるため、このような間隔の広がりは実質的にはトポグラフ的である。六つの切除ゾーンのみが図示されているが、典型的な切除パターンでは、より多くのスポットサイズが使用され、また、より多くのショットが行われる。近視用切除の必要深さを計算するための切除関数は、図7Aに関連して後に説明する。
【0062】
近視用の高度光屈折矯正を行う場合、後述の標準的切除関数を用いると、治療軸102に沿って過度の深さまで切除してしまう恐れがある。図2Bに示すように、近視切除のための標準的等式では、治療軸102に沿った非常に深い切除を導くとともに治療ゾーン100の角のエッジ122を鋭くするような、曲線120を形成する。簡潔な記載のため、図2Bには、角膜表面ではなく平坦な表面に行われた治療の結果を示す。そのような高度の矯正に当たっては、移行ゾーンの使用により、治癒におけるエッジの影響を大幅に軽減し、また、治療軸102に沿った切除の中心の深さを減少させることができる。これらの移行ゾーン124および126は、多重焦点レンズを効果的に形成する。図2Bでは、より浅い切除曲線128をもたらす二つの移行ゾーン124および126が示される。これらの移行ゾーンのうちの第1のもの124は、所望の最終的矯正よりも矯正度を軽度にして、治療ゾーン100の幅S全体に近視切除を行うことにより形成される。移行ゾーン124の半径の範囲内に納まる半径のショットのみが行われるが、移行ゾーン124内の表面は次の治療のために均一に切除した状態で残される。この結果、第1の曲線130が得られる。
【0063】
次に、いくらか矯正度を大きくして、しかし、より小さい「治療ゾーン」を使用して、さらに一連の近視切除ショットを行う(実際の治療では、小さいショットから行うことが好ましい)。この一連の近視切除ショットは、後述の近視切除関数を利用する。この結果、曲線および一様に切除された領域132が、第2の移行ゾーン126を形成する。最後に、完全な所望の矯正のために一連のショットを行うが、これは再び狭い治療ゾーンを使用して行う。その結果、最後の曲線134が形成される。移行ゾーンを使用することは、光屈折角膜切除の技術分野ではよく知られており、例えば、Color Atlas/Text of Excimer Laser Surgery,1993 Igaku−Shoin Medical Publishers, Inc.のChapter 6に記載されている。これらの移行ゾーン124および126は鋭いエッジ122の形成を減少させるが、これは、減少されなければ上皮の再成長という有害なパターンを招く恐れのあるものである。また、治療軸102に沿った最終的な切除深さも減少される。
【0064】
以下に、移行ゾーンの典型的な表を2つ示す。幅5mmの治療ゾーン100に渡って−9.00ジオプタの近視を矯正する処置には、下記の治療ゾーンが使用できる。
【0065】
番号 最小 最大 矯正
[mm] [mm] [ジオプタ]
1 0.50―4.00 −9.00
2 4.00―4.20 −7.50
3 4.20―4.40 −6.00
4 4.40―4.60 −4.50
5 4.60―4.80 −3.00
6 4.80―5.00 −1.50
所望の−9.00ジオプタの矯正のために、幅4.00mmの治療ゾーンに渡って、この表を利用した後述の等式を用いた標準的な近視矯正がまず行われる。これにより、中心の4.00mmゾーンに、完全な度合の矯正がなされる。そして、より軽度の−7.50ジオプタの矯正を使用して4.00mmから4.20mmを切除することにより、一つの移行部が形成される。これを表中のその後の記載内容について繰り返すことによって、より大きい半径を有する移行ゾーンを形成する。
【0066】
移行ゾーンのない場合は、治療軸102において88μmが削除される。一方、移行ゾーンのある場合には71μmしか除されない。これは20%の減少であり、角膜の安定に有利である。
【0067】
以下に、7.00mm治療ゾーン100の全体に−12.00ジオプタの矯正を行う治療の例を示す。
【0068】
番号 最小 最大 矯正
[mm] [mm] [ジオプタ]
1 0.05―2.00 −12.00
2 2.00―2.20 −11.54
3 2.20―2.40 −11.08
4 2.40―2.60 −10.62
5 2.60―2.80 −10.15
6 2.80―3.00 −9.69
7 3.00―3.20 −9.23
8 3.20―3.40 −8.77
9 3.40―3.60 −8.31
10 3.60―3.80 −7.85
11 3.80―4.00 −7.38
12 4.00―4.20 −6.92
13 4.20―4.40 −6.46
14 4.40―4.60 −6.00
15 4.60―4.80 −5.54
16 4.80―5.00 −5.08
17 5.00―5.20 −4.62
18 5.20―5.40 −4.15
19 5.40―5.60 −3.69
20 5.60―5.80 −3.23
21 5.80―6.00 −2.77
22 6.00―6.20 −2.31
23 6.20―6.40 −1.85
24 6.40―6.60 −1.38
25 6.60―6.80 −0.92
26 6.80―7.00 −0.46
図3Aおよび3Bは、図2Aの切除リング104〜114の内の1つに該当する切除パターンを示す。しかし、ここでは、本発明に従って、レーザ「ディザリング」または「ポリッシング」が用いられる。「ディザリング」という語は、ここでは、特定の誤差を「スムーズ」にするために、微小なランダムもしくは疑似ランダム揺動をビーム22に追加する、という意味で用いられている。この特定の誤差は、ディザリングを行わなければ蓄積される。図2Aの切除リング104〜114の内の1つには特定のスポットサイズの5つのショットが含まれると仮定すると、図3Aおよび3Bは、本発明の方法および装置に従って達成される効果を示す。図3Aには治療軸102が示されるが、図2Aに示されるように、過去のシステムにおけるショットの中心が形成されている。
【0069】
しかしながら、本発明によれば、5つのショットの中心はディザリングゾーン140内でランダムに分布し、各ショットの中心軸は治療軸102から外れている。ランダムに分布した中心142〜150を用いる5つのショットは、5つの別個のエキシマレーザ切除ショット152〜160をもたらす。好ましくは、ディザリングゾーン140の半径は、ショット自体の半径よりも幾分小さい。示されるように、強化、つまり、単一ショットの隆起高さを越える隆起高さは、偶然にしか発生しないものであって、一般に隆起はディザリングバンド162上に分布される。これが「スムージング」の効果をもたらし、平均隆起高さを下げる。
【0070】
図3Bは、このポリッシングを行う別の手法を示している。この手法では、ショット中心142〜150がディザリングゾーン140の周縁部の周りに均等に分布される。この場合は、たとえ半径が同じであっても、切除ショット152〜160に強化隆起を形成するものがないことが確実になる。
【0071】
この手法によれば、近視矯正の切除の間に、眼44の一層スムーズな表面が形成される。この「ポリッシング」または「ディザリング」は、角膜上におけるレーザスポットの「振動(oscillation)」と記述することもできる。このディザリングはまた、二次元ではなくむしろ一次元でもあり得る。また、マスク52もしくは患者自信を震動させるなどして患者の眼44を震動させることにより、生成することもできる。例えば、小型の機械震動器を患者台もしくはマスク52に配置することができるが、これによって、必要な振動をおこすことができる。容易に理解されるように、そのようなディザリング技術は、従来技術で知られている遠視および乱視の矯正のためのリングアパーチャおよびスリットアパーチャの使用など、他の形態の矯正にも適用できる。さらに、このディザリングは、遠視および乱視のためなど他のいかなるショットパターンにも適用でき、そのようにして、隆起高さおよびビーム22の不均等の両方の影響を軽減する。
【0072】
図4は、乱視矯正のために使用される本発明のシステムおよび方法による大ビーム走査パターンを示す。従来技術では、この矯正を行うために可変サイズスリットが一般に用いられていたが、これはハードウェアの追加と柔軟性を欠く矯正パターンを一般的に伴うものであった。
【0073】
しかし、本発明による方法及び装置では、治療ゾーン100内で乱視を矯正する。ここでは、幅Sおよび長さLの治療ゾーン100内で、乱視を矯正すべき領域において一連の重複ショットによって生成された一連の線170および172を通じて、矯正が行われる。図では第1の線170および第2の線172のみが示され、第1の線は第2の線172よりも小さいスポットサイズを用いて作成されている。本発明の方法によれば、乱視の矯正を所望の度合で行うには、より小数もしくは多数の線が使用される。この結果、図4Bに示されるような切除プロファイルが得られる。このプロファイルは、一般に近視切除に必要なカーブに相当するが、その公式は図7Aに関連して後述する。
【0074】
−2.00ジオプタの矯正で乱視を矯正するための切除に使用される典型的なパターンは、下記のショットを含む。
【0075】
番号 スポットサイズ ショット
1 1.067 11
2 1.679 8
3 2.141 7
4 2.484 7
5 2.726 6
6 2.885 6
7 2.977 6
8 3.019 6
9 3.022 6
10 3.000 6
各スポットサイズにおいて、線102および104に相当する1本の線が作成され、好ましくはショットが約88%重複する。これにより、−2.00ジオプタの乱視矯正に相当する適切な修正カーブが作成される。これらは、治療ゾーン100の3mm幅S全体に渡って広がっている。
【0076】
図5は、非対称乱視の矯正に使用されるショットパターンの図である。この場合、単一の治療線174のみが示される。典型的にはもっと多数の線が使用されるが、簡単のために、単一の治療線174で、眼44の治療軸102に沿って線状に延びていない湾曲乱視の治療を示している。このようにして、より多様なタイプの乱視が矯正可能になる。
【0077】
図6Aは、本発明による遠視矯正に使用される大ビーム走査を示す。この走査では、リングアパーチャを使用しない。その代わりに、スポットサイズの調節に単一のダイアフラム36のみが使用される。そして、遠視切除を行う当業者に周知であるように、異なるスポットサイズで様々に重複する多重リングを使用して、治療ゾーン100上に環状切除リング180が作成される。適切な切除プロファイルは、図6Bに示される。遠視切除のための曲率の式は、図7Bに関して以下に説明される。
【0078】
遠視切除用のショットは、幅Sの治療ゾーン100を越えて延びている。この領域外でのショットは、光学的矯正ではなく遠視切除のエッジにおけるスムーズな移行をもたらす。さらに、環状切除リング180は治療軸102までずっと延びるようには図示されていないが、最大スポットサイズにおける最終シリーズのショットは、好ましくはその軸のごく近くまで延び、治療軸102の中心から治療ゾーン100のエッジにかけて、スムーズなプロファイルを与える。
【0079】
5.00ジオプタの遠視矯正のための典型的なショットパターンは、以下のショットを含む。
【0080】
番号 スポットサイズ ショット 重複
1 2.000 1052 99.25[%]
2 2.469 128 95
3 3.060 104 95
4 3.966 80 95
5 4.600 27 87
このパターンでは、眼44の治療軸102から半径2.5mmの位置に中心を有するリングを形成するために、各一連のショットが利用される。この場合、好ましい重複は治療リングごとに可変であって、表に示されている。
【0081】
図示されたショットパターンは環状アパーチャを使用している。しかし、本発明による遠視矯正パターンおよび乱視矯正パターンを作成するには、他のアパーチャ形状も使用できることは理解されるであろう。例えば、長円形ショット形状も利用でき、その長円形を遠視矯正の最中に回転させ、長円形の一方の軸が眼44の治療軸102を指すようにすることができる。もしくは、この長円形を治療軸102の周辺での回転と非同調的に回転させてもよい。このようにして、ビーム22の不均等性の影響がさらに軽減される。
【0082】
図7Aおよび7Bは、前述の切除パターンの切除プロファイルが有する様々な数学的特性を示す。図7Aは近視切除の典型的な切除プロファイルを、図7Bは遠視切除のための典型的な切除プロファイルを、それぞれ示す。どちらの図でも、眼44の角膜の当初の半径をROLD、眼44の角膜の新しい所望の半径をRNEWとしている。治療の絶対ゾーン100は幅Sで示されており、矯正的機能を果たす有効領域に該当する。これは典型的には2mmから8mmであるが、より大きい領域もしくは小さい領域も可能である。幅Sの治療ゾーン100内の任意の点における切除深さは、切除深さを表す変数Aで与えられる。治療軸102からの距離は、変数ρで与えられる。
【0083】
新しい半径RNEWを計算するには、当初の半径ROLDおよび所望のジオプトリック矯正DCORRが下記の等式で使用される。
【数1】

【0084】
NEW_RADIUSは、与えられたROLDおよびDCORRに対して、必要な矯正の新しい半径を示すパラメータであるRNEWを返す。RNEWおよびROLDは、どちらもメートル単位で計測され、典型的には5mmと15mmの間である。
【0085】
図7Aに示されるような近視矯正に必要な切除深さを計算するための式を以下に示す。
【数2】

【0086】
近視切除関数MYO_ABLATEは、眼44のカーブの矯正していない半径ROLD、所望の矯正ゾーンS、所望の矯正度DCORRを与えられると、治療軸102からの特定の距離ρにおける必要切除深さを返す。関数MYO_ABLATEはまた、図4Aおよび図4Bで示されるような乱視の矯正に使用される溝の幅Sに渡って、適切な矯正度を与える。
【0087】
次に図7Bに移る。遠視切除の式を以下に示す。
【数3】

【0088】
遠視切除関数HYP_ABLATEは、矯正の光学的ゾーンSを必要としないため、3つのパラメータを使用するだけである。
【0089】
適切なカーブを作成するためのこのような特定のアルゴリズムは当該技術分野において公知であり、MUNNERLYN, C. AND KOONS, S., PHOTOREFRACTIVE KERATECTOMY: A TECHNIQUE FOR LASER REFRACTIVE SURGERY, Cataract Refract Surg.,Vol. 14, (Jan. 1988)に記載されている。
【0090】
さらに、図9〜14に関連して後述される切除を行うためのルーチンでは、これらの逆関数が必要である。上記の等式は、所定の矯正度に対する特定の値ρにおいて必要な切除深さをもたらすが、逆関数は、全く反対のことを行う。それらは、特定の矯正度が与えられたときに、特定の切除深さが必要になる特定の値ρを返す。これらの等式を以下に示す。
【数4】

【0091】
逆近視切除関数INV_MYO_ABLATEは、切除深さAが与えられたときに、切除中心からのρに相当する距離を示すパラメータを返す。この距離と切除深さはメートルで表される。この関数は、パラメータROLD、SおよびDCORRも使用する。
【0092】
逆遠視切除関数INV_HYP_ABLATEも、ある矯正DCORRでの切除深さAが与えられると、ρに相当する切除中心からの半径をメートル単位でもたらす。この関数は、ある切除深さが見いだされる箇所が切除の中心からどの程度外れているかを示すρを返す。
【0093】
図8は、切除軸の照準および可変スポットサイズを用いたシステムが、非軸対称の表面形状(topography)も含めて、正常ではない眼44の任意の表面形状をどのように矯正し得るかを示す。図8では、所望の治療表面形状190の1本の線が示される。これは、例えば、眼44の表面における様々な異常点を示すコンピュータ化された眼科表面形状システムから得ることができる。そのような表面形状システムを用いることにより、眼科手術システム10は、制御ユニット64を用いて一連のショットを行う。これらは、8つのショット192〜206として簡潔に示されている。実際の操作では、はるかに多数のショットが利用されるであろう。各点における必要な切除がわかっているため、システムは、所望の表面形状マップを作成し、様々な点に照準を合わせた様々なショットサイズを使用して切除を行って、必要な矯正を行う。このようにして、リンゴやバナナの形状、その他の異常な形状を有する角膜の多様な非対称欠陥を矯正することができる。
【0094】
図9は、好ましくは制御ユニット64上で実行されるCALCULATEルーチン700を示すフローチャートである。CALCULATEルーチン700は、様々な状態を矯正するための眼44の所望の切除を行うために必要な一連のショットパターンを計算する。本実施例では、前出の図2Aから7と関連させて説明した乱視、遠視、および近視を矯正するためのショットパターンが生成される。更に、図3および図4に示したディザリングが近視矯正ショットパターンに用いられる。
【0095】
好ましくは、CALCULATEルーチン700は、必要なショット計算を切除シーケンス開始前に行う制御ユニット64中で実行される。全てのポイントを前もって計算することによって、計算の遅れがなくなり、エキシマレーザ20の準備ができ次第、各連続ショットが素早いシーケンスで行われ得る。これにより、処置時間が速くなり、患者の中心を光学的固定点に位置させることが容易になる。
【0096】
ステップ702から開始し、CALCULATEルーチン700は、変数START_DITHERを1に設定する。この変数は、ディザリングが開始する最初の切除ショットを示すものであり、以下に説明される。全ての切除ショットは好ましくはアレイ状に記憶され、START_DITHERはそのアレイ中の位置を示していることに注意されたい。制御はステップ702からステップ704に進み、ルーチン700によって乱視矯正が所望であるかどうかが決定される。これは、医師によって前もって入力され、最大処置範囲とともに乱視矯正の角度および度合を含んでいる。ルーチン700は、非対称乱視の場合、乱視矯正線の曲率を要求してもよく、乱視領域の一端または他端の方向にさらに広範囲な矯正を提供してもよいことは明らかである。
【0097】
乱視矯正が所望である場合は、制御はステップ704からステップ706に進み、ASTIGMATISMルーチン750が実行され(以下に図10と関連して説明)、所望の乱視矯正に適切なショットパターンが生成される。これらのショットパターンは、例えば、図4Aおよび4Bと関連させて説明したものに対応する。
【0098】
乱視矯正のためのショットパターンがステップ706で計算されれば、制御はステップ708に進み、START_DITHERが変数LAST_VECTORに設定される。LAST_VECTORは、切除実行のためのアレイ中最後に計算されたショットを指し、この場合、ASTIGMATISMルーチン750によって計算された最後のベクトルを指す。ディザリングを行うこともできるが、乱視は潜在的強化ショットよりもむしろ重複ショットに関係するので、本実施例中の乱視矯正においては、ディザリングは好ましくは行われない。
【0099】
制御は、乱視矯正が所望でない場合はステップ704から、そしていかなる場合でもステップ708から、ステップ710に進み、CALCULATEルーチン700によって近視矯正が所望であるかどうかが決定される。もし所望でなければ、遠視矯正が必要であるので、制御はステップ712に進み、図12に関連させて後述されるHYPEROPIAルーチン850が実行される。遠視の矯正は、線状よりむしろ円状のショットを用いること以外は乱視の矯正と同様であるため、本実施例においては、好ましくはディザリングは行わない(行ってもよい)。よって、制御は次にステップ714に進み、ルーチン700がマスタールーチンに戻り、そのことによって医師がCALCULATEルーチン700によって計算されたショットシーケンスの実行を開始することが可能になる。
【0100】
もしステップ710で近視矯正が所望であると決定された場合、CALCULATEルーチン700はステップ716に進み、移行ゾーンが要求されるかどうかを決定する。もし要求されていれば、初期「移行ゾーン」列を近視矯正の実行によって生成して、多数の近視ショット列を形成しなければならない。このことは、図2Bに関連させて前述した。よって、制御はステップ718に進み、移行ゾーンを生成するためにMYOPIAルーチンが実行される。これは、移行ゾーンに対する標準的な近視矯正ショット列を生成する。
【0101】
再びステップ716に進み、移行ゾーンがさらに必要かどうかがもう一度決定される。もし最後の移行ゾーンショット列が計算されているか、必要でなければ、制御はステップ720に進み、MYOPIAルーチンが再び実行され、今回は近視の最終矯正が行われる。
【0102】
近視矯正のためのショット列の生成は、公知である。上述のMYO_ABLATE関数によって決定される必要切除深さが与えられると、治療軸102は放射状に離れている各ポイントにおいて、必要切除深さに対して適切なショットサイズを用いてショットパターンが生成される。
【0103】
制御は、次に、ステップ722に進み、ステップ708に関連して説明したステップ702またはステップ708にて設定されたSTART_DITHERからLAST_VECTORまでの全てのショットに対して、図13および14に関連させて後述するように、DITHERルーチン940または970がディザリングまたはランダマイジングを実行する。この時点で切除ショット列の計算は完了したので、制御はステップ714に進み、CALCULATEルーチン700がメインプログラムに戻ることによって、医師が現在アレイ状に記憶されている切除を実行することが可能になる。
【0104】
図10は、所望の乱視の光屈折度(dioptric degree)を得るための重複線の「溝」を特定の軸に沿って生成するために必要なショットベクトルの計算に用いられる、ASTIGMATISMルーチン750のフローチャートである。適当な数の溝が生成され、各溝は好ましくは漸進的に大きくなるスポットサイズを用いて生成される。ステップ752から開始し、切除全体の必要な深さが溝列の最深部において計算される。これは、図7Aに関連させて上述した近視切除関数MYO_ABLATEを用いて行われる。溝の中心での必要深さ(最深部)を表す変数MAX_ABLATEが、ρ=0を用いてMYO_ABLATEが返す値に設定される。未矯正曲率半径ROLD、および必要なジオプトリック矯正度DCORR、および乱視治療ゾーン幅Sも、MYO_ABLATEに渡される。Sは乱視治療ゾーンの長さでなく幅に等しいことに注意されたい。
【0105】
制御は次にステップ754に進み、溝毎の必要切除深さが計算される。これは好ましくは上記MAX_ABLATEと同様に計算されるが、溝毎の切除量を表す変数ABLATEをMAX_ABLATEを10で割った値に等しい値に設定している。これは、好ましくは10個の溝が作られるべきであることを示している。ただし、溝毎の切除量が計算された結果、より少ない数が要求されることもあリ得る。
【0106】
制御は次にステップ756に進み、変数DEPTHが、既に計算された値MAX_ABLATEマイナスABLATEに等しく設定される。DEPTHは、所望の矯正度を実現するために実行されるべき残りの切除量を表している。
【0107】
制御は次にステップ758に進み、溝一つを生成するために用いられる最少のスポット径を表す最少スポット径MIN_SPOT_DIAMが計算される。MIN_SPOT_DIAMは、逆近視切除関数INV_MYO_ABLATEの返す半径の2倍に等しく設定される。INV_MYO_ABLATEは、初期曲率半径ROLD、DEPTHプラスABLATE/2に設定されるA、所望のジオプトリック矯正度を表わすDCORR、および治療ゾーン幅を表すSを用いて呼び出される。従って、この関数を呼び出すことによって返される値は、必要切除深さ全体の95%が行われ得る半径であり、この半径は好ましくは治療軸の中心比較的近い。すなわち、この半径は各溝の全体幅に比較して小さい。
【0108】
ステップ760に進み、最大スポット径MAX_SPOT_DIAMが、Sに等しく設定される。Sは単に、乱視治療ゾーン100の幅である(長さではない)。
【0109】
ステップ762に進み、必要な乱視矯正度全体を実現するために必要な一連の溝を生成するループに入る。まず、ステップ762でDEPTHがゼロより大であるか否かが判断される。DEPTHは、切除が必要な深さの残りであり、所望の矯正度を実現するために十分な数の溝が生成されていなければ、ゼロより大きな値になる。
【0110】
もしDEPTHがゼロより大であれば、制御はステップ764へ進み、スポット径SPOT_DIAMが、INV_MYO_ABLATEがDEPTHに等しく設定されたAを用いて呼び出された時に返す結果の2倍に等しく設定される。これは、最終必要切除がDEPTHに等しくなる半径を返す。DEPTHは、初期には必要切除深さ全体にほぼ等しいので、初期スポット径は小さくなる。
【0111】
ステップ766に進み、スポット径SPOT_DIAMに経験的補正を行う。これは、SPOT_DIAMを(1+(0.3・SIN(π・(SPOT_DIAM − MIN_SPOT_DIAM)/(MAX_SPOT_DIAM − MIN_SPOT_DIAM))))に等しく設定することによって行われる。これによって、より良い結果を生み、矯正全体を乱視を矯正するために必要な所望のカーブに近づけるための経験的調整が、スポット径に対して行なわれる。
【0112】
ステップ768に進み、各連続ショットにおいてスポットターゲットを移動する量を表す変数STEPが、SPOT_DIAM・(DEPTH_PER_SHOT/ABLATE)に等しく設定される。DEPTH_PER_SHOTは、ショット毎の切除量であり、典型的には0.2μmである。その後、ステップ770において、変数OVERLAPが100・(SPOT_DIAM − STEP)/SPOT_DIAMに等しく設定される。これは、各ショットに必要な重複量をパーセントで表したものである。
【0113】
ステップ772に進み、図11に関連させて後述するルーチンLINE800が、乱視の線を生成するための角度に設定されるθ、乱視ショット列の所定の長さプラス2・SPOT_DIAMに設定されるLENGTH変数、スポットサイズを表すSPOT_DIAM_、およびOVERLAPとともに呼び出される。
【0114】
線に必要な一連のショットが生成されると、制御は774に進み、溝毎の切除量であるABLATEだけDEPTHが減じられ、制御は次にステップ762にループし、減じられたDEPTHの値がもう一度ゼロと比較される。このループが繰り返され、DEPTHがゼロより小さくなるまで、スポット径が漸進的に大きくなるショットの線を生成する。所望の矯正度を実行するために必要な切除ショットを実質的に全て計算したとき、DEPTHはゼロより小さくなる。
【0115】
DEPTHがゼロより小さくなると、制御はステップ776に進み、DEPTHプラスABLATEがDEPTH_PER_SHOTより大であるかどうかが判断される。もし大でなければ、これ以上の線状切除は過度な矯正につながるので行われるべきではない。よって、制御はステップ778に進み、ASTIGMATISMルーチン750はCORRECTIONルーチン700に戻る。
【0116】
もしステップ776で必要な切除の「残り」がDEPTH_PER_SHOTを越えていなければ、制御はステップ780の方に進む。そして、SPOT_DIAMが、乱視線の溝のための治療ゾーン100の幅であるSの最少スポット径に設定され、STEPがSPOT_DIAM・DEPTH_PER_SHOT/(ABLATE+ DEPTH)に等しく設定され、OVERLAPが(SPOT_DIAM − STEP)・100/SPOT_DIAMに設定される。
【0117】
制御は次にステップ782に進み、ステップ780でスポット幅に設定された変数を用いてルーチンLINE800を呼び出すことによって、最終溝が生成される。ルーチン750はその後ステップ778でリターンする。
【0118】
このように、ASTIGMATISMルーチン750は、図4Aに関連させて上述したようにショットパターンを生成する。
【0119】
図11は、LINEルーチン800のフローチャートである。このルーチン800は、乱視矯正ショットシーケンスの生成に用いられる線の生成のためのショットを計算する。所望のスポットサイズが変数SPOT_DIAMでルーチン800に渡され、重複パーセンテージが変数OVERLAPで渡され、線の長さがLINEルーチン800に渡されるLENGTH変数によって決定される。
【0120】
ステップ802から開始し、LINEルーチン800は、まずステップサイズを計算する。ステップサイズはSPOT_DIAM・(1− OVERLAP)に等しい。ステップ804に進み、必要ショット数が(LENGTH− SPOT_DIAM+ STEP)/STEPの切り捨て値に等しく計算される。ステップ806に進み、カウンター変数Iが、LAST_VECTOR + 1に等しい変数START_VECTORに等しく設定される。LAST_VECTORは、LINEルーチン800の完了とともにIに等しく設定される。
【0121】
制御は次にステップ808に進み、治療軸102からのX軸変位に対応する変数が((LENGTH− SPOT_DIAM)/2)・cosθに等しく設定される。ここで、θは、所望の乱視矯正の角度である。ステップ810で、Yが対応して((LENGTH− SPOT_DIAM)/2)・ sinθに等しく設定される。
【0122】
制御は次にステップ812に進み、IがSTART_VECTORプラスSHOTSに等しいか否かが判断される。SHOTSは、ショット線の端を表す。もし等しくなければ、制御はステップ814に進み、この特定のショットのショット位置に対応するアレイ位置X_SHOT[I]がXに等しく設定され、Y_SHOT[I]が対応してIに等しく設定される。次に、ステップ816で、Xが X+ (STEP・cosθ)に等しく設定され、Yが Y+ (STEP・sinθ)に等しく設定される。これが次のショットに必要なデルタ増分である。
【0123】
制御は次にステップ818に進み、Iが増分され、ルーチンはステップ812にループする。SHOTSはこの線の端を表すが、IがSTART_VECTOR+ SHOTSに等しくなると、ルーチンはステップ820でASTIGMATISMルーチン750に戻る。
【0124】
図12は、治療軸102周りに環状溝を形成するHYPEROPIAルーチン850のフローチャートである。これはASTIGMATISMルーチン750に類似しているが、(近視矯正関数を用いる)乱視ではなく遠視を矯正するのに適切なプロファイルの環状溝を形成する。
【0125】
ステップ852から開始され、変数DEPTHは、図7Bに関連して上記に述べたHYP_ABLATEによって返されるパラメータに等しく設定され、このときρはS/2 − MIN_SPOT_RADIUSに等しく設定される。ここで、Sは適切な治療領域の直径であり、MIN_SPOT_RADIUSは遠視切除のために用いられる最小スポットサイズであって、これは例えば200μmに設定され得る。HYP_ABLATEはまた、眼44の非矯正曲率を表わすROLD、および所望のジオプトリック矯正度を表わすDCORRを用いて呼び出される。従って、DEPTHは切除すべき残りの深さに等しい。これは最初は切除すべき全深さより小さい。何故なら、S/2からMIN_SPOT_RADIUSを差し引いたものとして示されているように、ρは切除円のちょうど内側に設定されており、これが切除すべき最初のスポット半径である。
【0126】
ステップ854に進むと、この遠視治療のために切除すべき量を示す変数ABLATEは、S/2に等しいρを用いて呼び出されるHYP_ABLATEによって返されるパラメータに等しく設定され、この返されたパラメータはDEPTH量だけ減少される。従って、ABLATEは、S/2によって示される治療領域のエッジの深さと、この治療領域のちょうど内側の距離MIN_SPOT_RADIUSでの深さとの差である。
【0127】
ステップ856に進むと、変数SPOT_DIAMはMIN_SPOT_RADIUM・2に、変数STEPはSPOT_DIAM・DEPTH_PER_SHOT/ABLATEに、および変数OVERLAPは((SPOT_DIAM − STEP)/SPOT_DIAM)・100(すなわち、パーセント表示)に等しく設定される。従って、最初の環状溝は、MIN_SPOT_RADIUM・2によって示される最小スポット直径を用いてショットされる。
【0128】
ステップ858に進むと、ルーチンCIRCLE_LINEが呼び出され、変数SPOT_DIAM、STEP、およびOVERLAPが与えられると、環状溝を切除するのに必要な一連のショットが計算される。CIRCLE_LINEルーチンはLINEルーチン800に直接対応する。ただし、円は1本の線に沿ってショットされるのではなく、S/2によって与えられる固定半径でショットされる。この実行はLINEルーチン800に対応する。ただし、各連続するショットは、1本の線に沿ってではなく、S/2に等しい半径ρに沿って増分される。
【0129】
ステップ860に進むと、ABLATEは、HYP_ABLATEがS/2に等しいρを用いて呼び出されるときにHYP_ABLATEにより返されるパラメータに等しく設定され、この返されたパラメータは次に10で割算される。これは、遠視を矯正するための適切な曲率のプロファイルを形成するために切除される、好ましくは10個の溝に対応する。
【0130】
ステップ862に進むと、DEPTHは次にDEPTHマイナスABLATEに設定される。これは、遠視用溝を切除するのに必要な全深さの1/10だけDEPTHを減らす。
【0131】
ルーチン850は次にステップ864に進み、ここで、切除すべき残りの全深さを示すDEPTHがゼロより大であるかどうかが決定される。大であれば、切除すべき溝が残されていることになるため、ルーチンはステップ866に進み、ここで、SPOT_DIAMは、INV_HYP_ABLATEがDEPTHに等しいAを用いて呼び出されるときにこの関数によって返されるパラメータに等しく設定される。従って、これは、遠視用の適切な矯正を行うためにDEPTHの現行値に等しい深さまで切除が行われなければならない半径を返す。しかし、この返されたパラメータは、治療軸102からの半径である。実際のスポット直径を計算するためには、SPOT_DIAMは2・(S/2 − SPOT_DIAM)に等しく設定される。これは、SPOT_DIAMを、実際の治療領域の半径から現行の切除深さが生じるときの半径を引いた差の2倍に設定する。従って、この半径の差に2を掛けると、切除すべき現行の溝のためのスポット直径に等しくなる。
【0132】
ステップ868に進むと、STEPは、SPOT_DIAM・DEPTH_PER_SHOT/ABLATEに等しく設定される。ステップ870に進むと、OVERLAPは、((SPOT_DIAM − STEP)/SPOT_DIAM)・100に等しく設定され、これは適切な重複をパーセントで設定する。
【0133】
SPOT_DIAMおよびOVERLAPのこれらの値を用いて、ならびにρをS/2に等しくして、ステップ872でルーチンCIRCLE_LINEが呼び出され、環状溝が形成される。ステップ874に進むと、DEPTHは再びDEPTHマイナスABLATEに等しく設定される。次にルーチンはループに入ってステップ864に戻り、DEPTHがゼロより大でなくなるまで、ステップ866から874の間を連続的にループする。
【0134】
ステップ864でDEPTHがゼロより大でなくなると、ルーチン850はステップ876に進み、ここで、ABLATEプラスDEPTHがRESIDUEより大であるかどうかが決定される。ここで、RESIDUEは、この値では別の溝が切除されることはないような任意の値である。この値は好ましくは500ミクロンであるが、他の値でもよい。ABLATEプラスDEPTHがRESIDUEより大である場合は、このRESIDUE値を超えるものは切除の必要があるため、ルーチン850はステップ878に進む。このステップでは、2・(S/2− MIN_SPOT_SIZE)のSPOT_DIAM、および((SPOT_DIAM − STEP)/SPOT_DIAM)・100のOVERLAPを用いて、最後の溝が形成される。次に、ステップ876およびステップ878の後、ルーチンはステップ880でリターンする。
【0135】
図13は、図9のステップ722で述べたDITHERルーチンに対応するRAND_DITHERルーチン940のフローチャートである。RAND_DITHERルーチン940は、START_DITHからLAST_VECTORまでの前述のアレイにおけるすべてのベクトルをランダムにディザーする。START_DITHは、乱視の矯正に用いたショットに続く最初のアレイ位置に等しくなるように、図9のステップ702またはステップ708で既に設定されている。従って、ディザリングは好ましくは乱視の矯正ではなく近視の矯正に適用される。RAND_DITHルーチン970は、図3Aに示すようなショットパターンを形成する。
【0136】
RAND_DITHERルーチン940は、カウンター変数IをSTART_DITHに設定することによって、ステップ942から開始される。制御は次にステップ944に進み、ここで、中間変数X_DUMは、−.5から.5の間のランダム数RANDOMにAMPLITUDEおよびSPOT_SIZE[I]を掛けたものに等しく設定される。変数AMPLITUDEは、ディザリングの適切な振幅をスポットサイズの分数パーセンテージで示すものとして、RAND_DITHERルーチン940に渡されたものであり、SPOT_SIZE[I]はこの特定のショットのためのスポットサイズに対応する。
【0137】
制御は次にステップ946に進み、ここで、ルーチン940は、X_DUMの絶対値が、システムにより決定される変数LIMITによって表される制限サイズより大きいかどうかを決定する。X_DUMが大きい場合は、制御は次にステップ948に進む。このステップでは、X_DUMはLIMIT X_DUM/ABS(X_DUM)に等しく設定され、これにより、X_DUMは適切な符号を付けたLIMITに設定される。
【0138】
ステップ946でX_DUMが大きくない場合、およびステップ948からのすべての場合に、制御は次にステップ950に進む。このステップでは、X_SHOT[I]はX_SHOT[I] + X_DUMに等しく設定され、これにより本発明のランダムディザリング効果が提供される。次に制御はステップ952、954、956、および958に進み、これらのステップでは、X_SHOT[I]がステップ944から950でディザーされたように、Y_SHOT[I]がランダムディザリングにより調整される。
【0139】
制御は次にステップ958からステップ960に進む。このステップでは、RAND_DITHERルーチン940は、所望の最後のベクトルがディザーされたことを示すI = LAST_VECTORが成立するかどうかを決定する。成立しない場合は、制御はステップ962に進み、ここでIが増分される。制御は次にループに入ってステップ944に戻り、次のショットを行う。
【0140】
ステップ960でIがLAST_VECTORに等しい場合は、RAND_DITHERルーチン940は完了し、よって、ルーチン940はステップ964でリターンする。
【0141】
図14は代替のルーチンCIRCLE_DITH970を示し、このルーチンはRAND_DITHルーチン940の代わりに使用され得る。CIRCLE_DITHルーチン970により形成されるショットパターンを、図3Bに示す。CIRCLE_DITHルーチン970はステップ972から開始され、このステップでは、変数NUM_VECTは、共に呼び出しルーチンによって渡されたLAST_VECTOR − START_VECTORに設定される。ステップ974に進むと、NUM_VECT/ROTATIONSが10より小さいかどうかが決定される。変数ROTATIONSは、ショットのすべてを調整するときに、治療軸102周りに何回の円形回転が行われるかを示すために、ルーチン970に渡される。不十分なショットがある場合、過剰な回転数を避けるためにステップ974でチェックされる。例えば、20ベクトルしかない場合は、10回転すると、各々が180゜離れた10個のショットが2組できる結果となる。NUM_VEC/ROTATIONSが少なくとも10であることを任意に要求することにより、ショットがこのように集中することは避けられ、ショットは、治療軸102周りの少なくとも異なる10箇所にわたって分布されるよう要求される。NUM_VECT/ROTATIONSが10より小さいときは、制御はステップ976に進み、ここではROTATIONSはNUM_VECT/10の切捨て値に等しく設定される。ステップ976、およびこのステップが真でなかったときはステップ974から、制御は次にステップ978に進み、ここで、IはSTART_VECTORに等しく設定される。
【0142】
制御は次にステップ980に進み、ここで、X_SHOT[I]はX_SHOT[I] + (DIAM/2)・cos((2π・I・ROTATIONS)/NUM_VECT)に等しく設定される。これは、各ショットの中心を円形に調整する。Y_SHOT[I]は、ステップ982で同様に調整される。
【0143】
制御はステップ982からステップ984に進み、ここで、IがLAST_VECTORに等しいかどうかが決定される。等しくない場合は、制御は次にステップ986に進み、ここでIが増分され、再びステップ980および982を通過して後に続くベクトルを調整する。
【0144】
ステップ984からIがLAST_VECTORに等しい場合は、制御は次にステップ988に進み、ここで制御はCALCULATEルーチン700に戻る。
【0145】
このディザリングすなわち振動は、一次元的にも適用され得るものであり、遠視および乱視矯正用にも同様に用いられ得る。
【0146】
図15は、赤外染料を用いて、および本発明の走査用大ビームを用いて上皮切除を行うときの、ビデオユニット56によって与えられる画像を示す。上皮は、典型的には約50μmの厚さである。本発明のシステムSで用いられる好適なエキシマレーザ20は1ショット当り約.2μmを切除するので、典型的には上皮が切除されるまでには250回の初期ショットが必要である。しかし、この時点に到るまでの時点では、上皮の厚さの違いが影響を及ぼす。例えば、40μmの厚さの箇所もあれば、60μmの厚さの箇所もある。
【0147】
本発明のシステムSは、上皮の少なくとも一部を完全に取り除いた時点を感知することにより、および次に残りを選択的に取り除くことにより、上皮を除去する。図15は上皮除去領域1000を示し、この領域では、この上皮除去領域1000のサイズであるスポットサイズを用いて、所定数のショットが既に行われている。各ショット後、赤外ビデオユニット56は、眼44から発光される赤外蛍光を捕捉する。この蛍光は、先ず、上皮の下の層は染色しない赤外蛍光染料を用いて上皮を染色することによって形成される。この染料は好ましくは赤外蛍光性であり、これにより、ダメージを与える周波数でダメージを与えるエネルギーのポンプレーザ発光作用が、眼44の中で起こる可能性が低減される。眼44を損傷させ得るポンプレーザ発光作用が起こらないことが保証されるならば、可視光発光染料などの他の染料も使用し得る。赤外蛍光染料はまた、上皮が切除されている間に、患者にとって気を散らすような光学的な影響を避けるのにも好適である。
【0148】
所定数のショットが行われた後、ビデオユニット56は、上皮除去領域1000のうち蛍光を発しない部分を検出する。これは、この位置には赤外蛍光染料はないことを示し、また、同様に、この地点では上皮は完全に切除されていることを示す。
【0149】
図15では、上皮のすべてが所定数のショットにより除去されている2つの領域1002および1004が示されている。この時点で、スポットサイズは縮小され、赤外蛍光染料によって示される上皮がまだ残っている領域1006がさらに切除される。
【0150】
コンピュータ制御、または医師による制御の下で、図16に示されるような選択的な切除が行われる。図16では、残りの領域1006は縮小したスポットサイズを用いてさらに切除され、さらに上皮の除かれた領域1008、1010、1012、1014、および1016が形成される。ビデオユニット56は、これら残りの領域の各々が切除されている間、上皮除去領域1000をさらに観察し、これら領域の所定の部分が蛍光を発しなくなる時点を検出する。この場合も、これら領域の各々にわたる上皮の深さが異なることによって、これら残りの領域の上皮は部分的に切除される結果となり得る。例えば、さらに切除された領域1008内に残っている上皮の島部1018が示されている。このような島部は、後の切除によって切除されなかった上皮1006の残りの部分と共に、さらに切除されなければならない。
【0151】
上皮除去領域1000のコンピュータマップを、その領域内の各々の特定の地点に射光されたショット数と共に保持することによって、上皮の厚さマップを作製し得る。各ショットの切除深さを、各ショットが射光された場所と共に知ることによって、上皮のすべてがこの領域から除去される前に特定の地点が受けるショット数が得られる。これにより、上皮の厚さマップが作製される。このマップは、図8に関連して述べた非対称の光学収差を矯正するときに作製されるものと類似する。
【0152】
本発明の大ビーム走査およびディザリングは、眼44の表面のみに適用される必要はない。例えば、1990年2月27日付けで発行された「Method and Apparatus for Performing a Keratomileusis or the Like Operation」という名称の米国特許第4、903、695号は、眼から角膜の一部を除去した後に露出表面を切除する方法を開示している。よって、本発明の方法および装置は、このような角膜切開型の方法により得られる露出表面にも使用され得る。このような場合には、治療軸102は、角膜の切除部分または一部が切除された角膜の表面のいずれにも及ぶ。
【0153】
本発明の上記の開示および記述は例示的および説明的なものであって、サイズ、形状、材料、構成部品、回路要素、および光学部品、そして、図示したシステムおよび構成ならびに操作方法の詳細における様々な変更は、本発明の精神から離れることなく行われ得る。
【0154】
目から組織を除去する装置を制御する装置および方法が比較的大きなビームを用いて各種タイプの矯正を行うが、このビームは、組織除去工程の間に強化リッジを形成しないように振動又はディザリングされる。さらに、遠視および乱視の矯正などの各種タイプの矯正が、重複ショットを用いて切除されるべき領域にわたって走査される大きなビームを用いて行われる。さらに、治療されるべき領域における上皮は、上皮を染める赤外蛍光染料を用いて、その後は除去されるべき上皮領域からの蛍光発光パターンを観察することによって、除去される。レーザショット後に、ある領域がもはや蛍光を発していなければ、より小さなショットが次に与えられて、残りの領域から上皮が選択的に除去される。もう一度蛍光発光パターンが観察されて、上皮が残らなくなるまでこの工程が繰り返される。この時、全ての上皮が除去され、さらに、上皮が除去された領域における各点での初期の上皮の厚さのマップが形成される。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1A】本発明の装置および方法を実施することが可能な通常のエキシマレーザを用いた眼科手術システムを示す概略図
【図1B】図1Aのシステムを示すさらに詳細な図
【図2A】近視を矯正するための典型的な大ビーム切除パターンを示す治療ゾーンの中心軸に沿った図
【図2B】移行ゾーンの使用をさらに示す図2Aの側面プロファイル
【図3A】本発明によるランダムディザリングを示す治療ゾーンの中心軸に沿った図
【図3B】本発明による円形ディザリングを示す治療ゾーンの中心軸に沿った図
【図4A】本発明による乱視矯正用ショットパターンを示す図
【図4B】本発明による乱視矯正用ショットパターンを示す図
【図5】本発明による湾曲乱視用ショット治療パターンを示す治療ゾーンの図
【図6A】本発明による遠視の治療用ショットパターンを示す図
【図6B】本発明による遠視の治療用ショットパターンを示す図
【図7A】近視および遠視の矯正用治療ゾーンの初期および末期曲率半径を示す角膜の側面プロファイル
【図7B】近視および遠視の矯正用治療ゾーンの初期および末期曲率半径を示す角膜の側面プロファイル
【図8】本発明にしたがって眼の一般的な非対称収差を矯正するために使用されるショットパターンの図
【図9】本発明にしたがって、ランダムまたは円形ディザリングおよび大ビーム走査を用いて、乱視、遠視および近視の矯正を行うために使用される計算ルーチンを示すフローチャート
【図10A】図9の計算ルーチンによって使用される乱視ルーチンを示すフローチャート
【図10B】図9の計算ルーチンによって使用される乱視ルーチンを示すフローチャート
【図11】図9の計算ルーチンによって使用される乱視ルーチンを示すフローチャート
【図12】図9の計算ルーチンによって使用される遠視ルーチンを示すフローチャート
【図13】図9の計算ルーチンによって使用されるランダムディザリングルーチンのフローチャート
【図14】図9の計算ルーチンによって使用される円形ディザリングルーチンのフローチャート
【図15】本発明による上皮の切除を示す眼の治療軸に沿った図
【図16】本発明による上皮の切除を示す眼の治療軸に沿った図
【符号の説明】
【0156】
10 眼科システム
20 エキシマレーザ
22 ビーム
24 ビームホモジェナイザ
26 光学要素
28 シャッタ
30 光学要素
32 パイロットレーザ
34 シャッタ
36 ダイアフラム
38 スポットモードレンズ
40 集束レンズ
42 走査ミラー
44 眼
46 集束レーザ
48 シャッタ
50 光学素子
52 固定マスク
54 クリーンガス浄化ユニット
56 顕微鏡
58 分離ミラー
60 赤外線ビデオユニット
62 収集ビデオスクリーン
64 制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
角膜のある領域から組織を除去するレーザ系であって、治療の垂直軸を有する角膜上のある位置に中心を有するあるサイズのレーザスポットを生成するレーザ系を制御する装置であって、
(a)該領域のサイズの10%から90%の間に該スポットサイズを設定する手段、および
(b)該スポットサイズの設定に相関付けて該治療の軸から離れた少なくとも1つの位置へ該角膜に沿って該スポット中心位置をランダムに振動させながら前記レーザスポットの連続ショットを発射させる手段、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記手段(b)が、前記レーザスポットの最大幅よりも小さい直径を有するディザリング領域内で前記スポット中心位置をランダムに振動させる手段、をさらに備える、レーザポリッシングを行うための請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記手段(b)が、前記レーザスポットの最大幅よりも小さい最大幅を有するディザリング領域の周囲に沿って前記スポット中心位置を移動させる手段、をさらに備える、レーザポリッシングを行うための請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記手段(b)が、前記レーザスポットの最大幅よりも小さい直径を有する円形ディザリング領域の周辺に沿って前記スポット中心位置を移動させる手段、
をさらに備える、レーザポリッシングを行うための請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記手段(b)が、前記治療の軸に垂直な少なくとも1つの軸に沿って前記スポット中心位置を移動させる手段、をさらに備える、レーザポリッシングを行うための請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記手段(b)が、
(i)第1の円に沿って前記スポット中央位置を移動させる手段、
(ii)前記スポットサイズを変更する手段、および
(iii)該第1の円の中心に対応する中心を有する第2の円に沿って該スポット中心位置を移動させる手段、
をさらに備える、遠視を矯正するための請求項1から5の何れか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記手段(b)が、
(i)線に沿って前記スポット中央位置を移動させる手段、
(ii)前記スポットサイズを変更する手段、および
(iii)該線に沿って該スポット中心位置を移動させる手段、
をさらに備える、乱視を矯正するための請求項1から5の何れか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記手段(b)が、
(i)円弧に沿って前記スポット中心位置を移動させる手段、
(ii)前記スポットサイズを変更する手段、および
(iii)該円弧に沿って該スポット中心位置を移動させる手段、
をさらに備える、乱視を矯正するための請求項1から5の何れか一つに記載の方法。
【請求項9】
角膜のある領域から組織を除去するレーザ系であって、治療の垂直軸を有する角膜上のある位置に中心を有するあるサイズのレーザスポットを生成するレーザ系を制御する装置であって、
(a)該領域のサイズおよび位置に応じて該スポットのサイズおよび位置を設定する手段、および
(b)前記レーザスポットをランダムに振動させながら該レーザスポットの連続ショットを発射させる手段であって、(i)該レーザスポットのサイズの半分を超えない量だけ該レーザスポットを振動させる手段;(ii)該レーザスポットをランダムに振動させる手段;(iii)環状パターンで該レーザスポットを振動させる手段;および(iv)少なくとも1つの軸に沿って該スポットレーザを振動させる手段からなる群より選択される手段、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項10】
(c)眼の角膜においてレーザスポットを振動させる手段であって、該レーザスポットを振動させる手段は、(i)該レーザスポットのサイズの半分を超えない量だけ該レーザスポットを振動させる手段;(ii)該レーザスポットをランダムに振動させる手段;(iii)環状パターンで該レーザスポットを振動させる手段;および(iv)少なくとも1つの軸に沿って該スポットレーザを振動させる手段からなる群より選択される手段、
をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−175546(P2007−175546A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92459(P2007−92459)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【分割の表示】特願2003−297907(P2003−297907)の分割
【原出願日】平成5年9月30日(1993.9.30)
【出願人】(506121788)テクノラス ゲーエムベーハー オフタルモロギッシェ システム (6)