説明

大物を高場から単独で取り込む為のギャフ掛け方法、及び其れに使用するするロープギャフ用補助システムとプッシャー兼プーラー

【課題】短竿の場合を除いて、竿下まで寄せた大物を、釣り人が十分に離れた高く安全な場所から、誰の手助けも無く単独で、容易に、確実性高く、且つ安全に、実質的に捕獲し、且つ、足元まで上げる事は、先行技術では、事実上成し遂げられていない.
【解決手段】ロープギャフ用補助システムを使用して、ギャフに対するガイドとしての機能を果たす柔軟性の巻き体を、道糸ごと竿に巻くか、或いは巻き体に替わる柔軟性のループ体を竿尻から通してリールの前に持ってきて、それによりギャフを、竿そしてライン伝いに落とし込み、魚の口元に到達させた後、ロープを上下動させることと魚自体の暴れを利用して、口に掛かっている鈎に繋がっているライン上の口元に近い箇所を揺動支点として、ギャフを魚体周りに振ってやり、其れによって、フッキングさせるギャフ掛け方法を実践する事により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大物を高場から単独で取り込む為のギャフ掛け方法及び其れに使用するロープギャフ用補助システムとプッシャー兼プーラーに関する。
【背景技術】
【0002】
魚はハリスや仕掛けが大きくなると食いが悪くなる為、釣り人は予想される魚種やそのサイズに合わせて、必要以上に大きくならないように注意しながら、それらを使用する傾向にある。従って魚を掛けて竿下まで寄せたあと、それを取り込むには、また別の対策を講じる必要がある。この為に使用するのがタモ(柄の先端に円環状の網がついた物)やギャフである。通常のギャフは柄が付いていてその先端にフックが付いており、そのフックを魚体に打ち込み取り込む。此処でタモはその構造上大型魚には適さない(強度的に無理)ので、大型魚の取り込みにはギャフが使われる事が多い。船釣りの場合は水面から船縁までの距離が1.5mから2mと短いので取り込みが問題になる事は殆ど無い。
【0003】
問題に為るのは船釣り以外の場合、すなわち、堤防釣り及び磯釣りに於いてである。船釣りに満足できない釣り人も多くいて、その人たちが堤防や磯(岩場)から大物を狙う場合に工夫が必要になる。此処で留意すべきは、船からだと近場でも大物が簡単に釣れることがあるが、磯や堤防からギャフを必要とする大物を、期待を持って狙える場所というのは、多くが外洋や南海の波の荒い離島などの堤防や磯であるという点である。それらの堤防はしばしば長さ数百メートル、幅(外側と内側との間の厚み)50−60メートル、水面からの高さは平均潮位で8−10メートルもある。10メートルだとすると、干潮時のそれは11−12メートルである。又磯はしばしば足元から切れ落ち、絶壁。そのようは所であればある程、水深が有り、潮通しもよく、大物が期待できるから釣り人は好んでその様な場所に行くことになる。前記堤防の高さが8−10メートルとした場合、寄せた魚と釣り人との距離は約10−13メートルとなる。これをギャフか何か他の方法(例えば落としダモ・・・特大の自作円形網を予め取り込み予想水中に設置し、其処に魚を誘導しロープで引き上げ)で取り込まなければならない。
【0004】
上記項において、基本的な高さ、距離について述べたが、以下に従来法の個々のやり方、道具や使い勝手、危険性について詳しく述べる。
【0005】
「柄付きギャフ」について。このギャフは強度的には其れなりにあるが最長で柄の長さは2メートル前後である。継ぎ部で強度が著しく低下するので継ぎ部一箇所、すなわち、振り出し(入れ子式)二本継ぎが事実上の限界となり、携行性からして、柄の長さ2メートル前後、全長2.5メートル未満が実質上の限界となる。堤防に於いては前記高さの関係から全く使えない。20キロ以上の魚でも取り込めることを前提としているのがギャフであるから、2メートル前後であっても重さも結構ある。次に磯ではどうか。それは地形による。磯は地磯(車から徒歩でいける磯)と沖磯(瀬渡し船で渡る磯)とがある。地磯は沖に突き出た突端の様な所が多く、荒波に削られて地形が概して険しく、波うち際2メートルまで近づけない事のほうが多い。従ってこのギャフは使えない事の方が多い。次に沖磯について。瀬渡し船は舳先(ホースヘッド)を瀬に押し付けて釣り人を渡す。外洋の瀬の周りは水面から高さ5−6メートルは波に削られて多くが垂直または其れに近い急斜面であるが、舳先の高さは2−2.5メートルであるから、瀬渡し船は釣り人が乗り渡り易い足場が舳先の高さと略一致する場所を予め見つけておいてそこに釣り人を渡している。すなわち、水面まで2−2.5メートルの所まで降りていけるという事である。瀬に渡った釣り人は荷物を安全な高場まで運び、水面から5−6メートル上の足場の比較的良い場所で釣りを行うことになる。大物釣りは青物(主としてヒラマサ)狙いと巨魚(底物・・アラ、モロコ、クエ、及び回遊魚・・ヒラアジ、磯マグロ、等)狙いが考えられる。青物の場合(主として昼釣り)はやりとりの後、船着場(瀬付け場)の近くに降りてタモで掬うことになるので特に何も問題ない。問題なのは巨魚釣りの場合(主として夜釣り)である。此処で留意すべきは水位の変動(満潮時と干潮時の水位差)が2−3メートルあり(これも大潮と小潮とでは異なる)、又沖では波が無い状態でも、外洋では波打ち際で1.5−2メートルの波が常に上下しているのは当たり前の状態だという点である。巨魚がヒットした場合、釣り人が二人(A,B)いれば危険は過度とまではいえない。Aが竿を煽ってBが道糸を掴み、Bが道糸をコントロールすれば(磯からの夜釣り、大物狙いの場合、アラ(クエ)狙いでの釣行も多く、その場合、アラは根魚で掛かったら根に潜るため、根ずれにも強く太さ十分な編み糸・・・シーハンター80号、強度150k、など・・・が使われることが多い)、Aは竿から手を離して、ギャフを掴み(この状態で片手が空いている)降りていって、波の状態、魚の動きに合わせて、両手でギャフを打ち込み、その後二人で引き上げる。しかし一人の場合だとどうなるか。必ず道糸を片方の手で掴まなければならないし(掴む事自体が一人だと困難だが、アラ狙いだと竿も道糸も強い)、もう一方の手は重いギャフを掴んでいる(すなわち両手が塞がっている)。魚は大きく、水面の上下動と魚の大暴れで大きく振られる。その状態で魚との距離を2メートルまで詰めて、タイミングをみて、片手の道糸をはなし、両手でギャフを打ち込む。しかし運悪くこの時少し大きい波が来たとすれば、釣り人は魚どころか自らの身を波に攫われることになる。危険極まりない行為と言える。大型魚狙いはしばしば夜に行われる。昼間だと数十メートル先に大波がきているのが目に入るとしても、夜だとヘッドランプの明かりで可視範囲は10−20メートルしかなく何も見えない所から突然大波がドンと来ることになる(波の高さにはムラがある)。すなわち、魚まで2メートルの所まで近づかなければならない以上、沖磯の場合で、複数の人数で行うグループ釣行であっても、このギャフには危険が存在する。(図24、図25参照)
【0006】
「フライングギャフ」について。この方式は柄の代用品として、主としてタモの柄を利用して、魚体にギャフをひっかけて、引っ掛けた後は、タモの柄から、ギャフを切り離し(フライングとよんでいる)て、ギャフに予め作り付けしてあるリングに結んだロープを引っ張って、上げるもので実用性が高く広く利用されている。これは柄が構造上大荷重に耐えるのは無理なので、その弱点を補うもので実用性が高い。この場合について述べると、実際問題として、タモの柄は6メートルぐらいまでしかない。何故そうなのかというと強度や操作性からしてそのあたりが限界だということである。しかも魚体にギャフを打ち込まなければならない訳であるからクロ(メジナ)用のヘナヘナ柄ではだめで、少なくとも青物用のしっかりした柄でなければならない。しかも先端に軽いタモ枠(アルミ)ではなく一定の重さのステンレスのギャフを取り付け、そのギャフからは引き上げ用の太いロープが少なくとも柄の長さ出ている訳であるから、重みがある。釣り人は片手で竿を立てているわけで、残りの片手でこの6メートルタモ柄ギャフを操作してフッキングさせる事は不可能である。必ずもう一人の人間が必要でこの人が両手でギャフを操作し、フッキングさせなければ、フィニッシュできない。長さ的には沖磯では何も問題ない。地磯でこれが使えるかどうかは地形による。堤防においては前記した通り(8−10m)であるから高さが足りず全く使えない。仮に高さが5mだとしても、6mタモ柄ギャフでフッキングさせるのはかなり厳しい。魚が竿下に居るといっても岸から1−3mの所で暴れているのであって、足から魚までの距離は6−7mある。両手でギャフを持ったギャフ専任者が、しゃがんだ状態で高い波が来たのを利用し、かつ魚が手前に寄ったのを見計らって、フッキングできるかどうかといったところである。釣り人自身がそれをやることは前記したとおり、不可能である。(図26、図27、図28参照)
【0007】
「イカリ型ギャフ(仮称)」について。このギャフは一般的には知られていないが一部地域で地元の釣り人が自作し、使っており、又島を訪れた釣り人もその次から同様の物を自作してきて使ったりしているので公知技術として此処に記述し、説明する。前記2点(柄付きギャフとフライングギャフ)は柄若しくはその代用物(タモの柄)を操作して、其れにより先端についているギャフを魚体に打ち込むのであるから、機能的にも構造的にも、大物用落し込みダブルギャフ(=ロープギャフ・・・ロープを操作して行うギャフ)とは、何の関係もない。問題点や危険性、使用限界を明らかにする為に上記したにすぎない。このイカリ型ギャフ(仮称)が唯一、大物用落し込みダブルギャフ(ロープギャフ)に類する物である。このイカリ型ギャフの基本的な構造は、中心軸の周りの略円周上に3本ないし4本のフックを軸と略平行に等間隔に立て、反対側(針先を上向きにした場合の軸の上側)にリングをつけたもので、このリングにロープを直接結びつける。平均的な大きさとしては間口(フトコロ・・・フック先と軸との間隔)が約14−5cmで直径約30cm、長さ約30−35cm、軸径約10−12mmで、重さは、約1.5kg位はある。カエシも無く焼きも入っていない。使い方としては魚を竿下に寄せた後、このイカリ型ギャフをドボーンと魚の沖側に投げ込み、着水点と魚との方向関係から(前記の通り魚と釣り人との距離は12−3メートルある)、ギャフが魚に引っ掛かるよう、ギャフ投入者自身が横方向に移動しながら、ギャフを魚に一致させ、フッキングさせるという使い方である。このやり方は有効で安全性も高い。このギャフの問題点(不備・・・不完全な所)について述べると次の通りである。1)魚の沖側に投げ込むが魚も暴れて動いており、うまくタッチしても、フッキングしないで、乗り越えてしまった場合にはもう一回上げて、投げなおしをしなければならず、結局一回のキャスティングではうまくゆかず、2−3回やり直しになることが多い。2)この時釣り人は通常竿を立てている訳であるから、片手は少なくとも塞がっており、残りの片手で上記動作を行うことは不可能である。何故ならばギャフ投入者は片手(此処では仮に左手とする)でロープ端側を握り、もう一方の手(右手)でギャフを投げ込み(投げ込んだギャフは沈んでいく)、ギャフが沈まない様にロープを操作しながら、ギャフが魚に一致するよう、自分の立ち位置を変えながら、フッキングさせなければならない。すなわち、魚を掛けた本人以外にもう一人の人間が必ず必要である。3)堤防では問題なく使えるこのイカリ型ギャフであるが、磯ではどうであろうか? 磯が堤防と同じように垂直に切り立っていれば同じように使える可能性もある。しかし、若し45度位の傾斜で前下がりになっているような地形だとしたら(45度ぐらいだが危険で下には下れないような場所はいくらでもある)、どうであろうか?投げ下ろしは下方向に急角度で投げる事は容易だが、斜め下遠方に投げる事は難しい。また其れが出来たとして、魚は岸から1−3メートルの所に居る訳で、そのすぐ下は岩であり、岩表面の出っ張りや割れ目に何本もあるフックが引っ掛かって、一発で根掛かりし、外す事も出来なくなるであろう。すなわち、磯ではこのギャフは使えない。4)間口が前記したように14−5cmもあり、その結果、大きさ、形状、重量とも、著しいものとなり、携行性が著しく劣る。では、何故、間口が14−5cmもあるのかというと、其れ位ないと,魚が引っ掛かりにくいからである。その引っ掛かりにくさは、魚とギャフとのコンタクトの不確実性からきている。(図29、図30参照)
【0008】
上記の通り、ギャフ使用に関して、公知、先行技術三ギャフ、「柄付きギャフ」、「フライングギャフ」、「イカリ型ギャフ(仮称)」について、その詳細を述べた。結論から言えば、磯釣りでは「フライングギャフ」を使うのが、適切であるが、使用限界は高さ4−5m迄、又この場合でも、最低二人居なければ事実上使えない、ということであり、又堤防釣りでは「イカリ型ギャフ」しか使えないという事であり、この場合でも、最低二人居なければ使えない、という事である。又この場合も一発フッキングが出来ないという問題(不確実性)が存在する。
そして又、IPDL検索の結果、ロープギャフに関して下記の五点の資料が存在する事が分かった。公開実用新案公報(U)昭61−72177、公開実用新案公報(U)昭61−186372、公開実用新案公報(U)昭61−204482、実用新案公報(Y2)実公平7−11587、公開特許公報(A)特開2004−135581である。このうち公開実用新案公報(U)昭61−186372と公開実用新案公報(U)昭61−204482は同一考案者であり基本的に同じ考え方に基づく物である。この五点に関し、直接は知らないが、釣り人としての感性から、資料に基づきこれらの問題点を以下に論じる。
【0009】
「公開実用新案公報(U)昭61−72177」に関して。このギャフはロープを使って行うロープギャフであり、大物用落し込みダブルギャフに類するものである。ライン伝いに落とすという点は共通するが他はコンセプトが異なる(本発明に関しては後に詳述する)。このギャフは実用において使用できると思われる。第一図の符号2(道糸通し、事実上のリング)の中にあるスリット(切れ目)から、道糸をこの「道糸通し、リング」に通して、魚まで落として、ロープで操作するギャフであり、実際に魚は上げられるだろう。このギャフの問題点は以下の通りである。フックが一本である事はマイナーな点(二本より掛かりが悪い)であり、下のリングが魚の邪魔になる事も懸念され、且つ携行性にも劣る。しかし、最大の問題点は魚を寄せてラインにテンションが掛かった状態で、釣り人自身が自分の道糸を自分で掴むことが、硬い竿を使っている時は(ギャフを必要とする釣りをやっている時は常に硬い竿である)、非常に困難である、ということである。つまり、柔らかい竿だと、ドラッグを少し緩め、竿を後ろに倒せば、目の前に道糸が垂れてくるから、簡単に道糸を掴める。しかし、硬い竿だと、竿を後ろに倒しても、竿は「つ」の字型に大きく曲がらないから、手が届く所まで、道糸は来ない(石鯛竿で5−5.4m、アラークエ竿で4.8m)。ドラッグをフリーにすれば道糸を掴めるがそれは、魚が突っ走るからできない。この局面でラインをフリーにする事は釣り人が最もやりたくない事、すなわち出来ない事である。其れをやれば、魚は突っ込んで根ずれ(海底の障害物・・・岩の突起やテトラにラインが擦れる事、従ってラインが切れる)を起こすか魚が根(岩の割れ目やテトラの間の隙間)に入ってしまい出てこなくなる(この時ラインは角に接している訳であるから、引っ張れば切れる)可能性が著しく高まる。又、竿を倒して、手をスライドさせて、道糸に片手が届く所まで握り変えていく事も出来ない(ドラッグをフリーにすればできるが、そうすれば上記と同じ)。何故ならば竿はリールシートの周辺を握れば、簡単には折れないが、先端から1.5mぐらい(両手の間隔)の所を握って、魚が突進したら、通常竿は簡単に折れてしまう。此処ではギャフを必要とする大きい魚を釣っているのである。突進する十分な力がある。又、竿尻を角側(海側)に持ってきて、穂先側を手前側(陸側)に位置させ(即ち、竿を体に対して斜めに位置させ)、竿の中ほど(簡単に折れない部分)を持って、ラインを掴もうとしてもうまくいかない。何故なら、その場合、釣り人は角際より手前側(角より少し離れた場所)に立たなければならず、魚は角略真下で暴れており、ラインが角を擦れば一発で切れるからである。
以上の理由により、釣り人自身がこのギャフを自分の道糸にセットする事は、魚が掛かった状態ではできず、それをやってもらう為には、もう一人の人間が必要である。やり方としては釣り人が自分の立ち位置を後ろに下がりながら,竿をギャフ掛け人の方に寝かせ、竿の弾力とドラッグによるラインのテンションコントロールを釣り人側で維持したまま、ギャフ掛け人に道糸を取ってもらい(掴むのではなく片手を輪状にしてラインを包み其れによりラインの横振れを無くす)、ギャフ掛け人はもう一方の手で掴んだギャフのガイドのスリットをラインに掛けることによってラインを内側に通す。其れにより、始めてギャフを落とすことが可能になる。或いは逆にこの人に竿を持ってもらって、上記動作を自分でやらなければならない。
【0010】
「公開実用新案公報(U)昭61−186372と公開実用新案公報(U)昭61−204482」に関して。この二つの出願は同一考案者によってなされており、同じ考え方による物である。まず、「昭61−186372」に関して。6ページ目に「このギャフは釣竿などに予めロープ10によって支承させておき、釣針14を付けた釣糸15を、そのギャフの2つのリング状体2,3(1,2の間違い?)に貫通させておき、この釣糸15の水面下の長さを竿先の穂先を上げ下げして調整する。なお、このときギャフはこのときは必要ないので十分に上方に引き上げておく」とある(3ページ目にも同様の記述)。フック(抜け止め部材13)によるライン切れの危険の指摘の前に上記文章に直面し、驚いた。釣りというのは竿の操作によってライン、仕掛けを動かし、行うものである。この文章は竿先と鈎との間に前もってこのかご型ギャフ(仮称)を介在させておく、と言って入る訳であるから、これでは釣りがやれない。実使用不能と推測される。浮き釣り100%不能(浮きは動く)、硬くてえさ持ちのいい大型餌を使った底釣り(重い錘を使って餌を固定させておく釣法)でも100%不能(仕掛けを投げられないし、又実釣では大物一匹に対してウツボ数百匹食いついてくる有様・・・海では・・・、こんな物が有ったら邪魔でしょうがない)と思われる。次に「昭61−204482」に関して。2ページ目に「そこで、本考案者は、このような欠点を解決するものとして、既に第1図及び第2図に示す如く魚釣り用のギャフを提供した」とある。そこでよく見ると、この第1図と「昭61−186372」の第1図とは、同じ案件を言っているはずなのに、形は基本的に同じだがフック(抜け止め部材、13)の数が違っている。「昭61−186372」では二本(本文中でも一対と記されている、5ページ目)描かれていたが、本図では四本(二対)描かれており、本文中には「適数」と書かれている(3ページ目)。また本文の説明も大きく違っている。「昭61−186372」では、前記したように「釣針14を付けた釣糸15を、そのギャフの2つのリング状体2,3(1,2の間違い?)に貫通させておき、」となっていたのに(6ページ目)、この「昭61−204482」では「リング状体(1)(2)の鈎部(5)(6)より鈎棒(7)を引き抜いてリング状体(1)(2)を開口しておき、魚がかかった時又は魚を近くに引き寄せた時に、釣竿又は釣糸にリング状体(1)(2)の開口よりはめ込み鈎部(5)(6)に鈎捧(7)を嵌合して取り付け、」となっている(4ページ目)。これで、論理的には一応釣りがやれる道具になった(しかしながら、「上記動作を片手操作でやれるのか?」という疑問が生じる、・・・片手は竿を支えている訳であるから、もう一方の手しか空いていない・・・、図を見る限り、片手ではできそうにない、又竿から落とすとなると、ラインガイド・・・のべ竿は別にして・・・に抜け止め部材13及びリング状体1,2が引っ掛かる)。要するに前回、自分で出した出願に関して、言及という形を取りながら、前回の内容をそのまま書かずに、まずかった点、理屈が通らない点を、勝手に書き換えてしまっている。そしてこの「昭61−204482」の本題であるが、書き換えた内容に改良を加えた物として、複数個のリング状体を設け、そのうちの少なくとも2つにフック(抜け止め部材、13)を配置した内容となっている(第3図において三個のリング状体のうち二個に計八個のフック・・・抜け止め部材13が描かれている)。<結論>このかご型ギャフは実使用不能と推断せざるを得ない。理由は以下の通りである。魚はこういう物が目の前に下りてきたら、自分から頭を突っ込むとは考えられず、必死になって前後左右に暴れる。そうすれば、かごは目の前で止まったままで、かごの内側に立っている多数のフック13(自ら「先鋭状の抜け止め部材」と記している・・・5ページ目)がラインを横に擦り、ラインは簡単に切れる。故に実使用不能である。
【0011】
「実用新案公報(Y2)実公平7−11587」「実用登録2091605」について。この考案は、道糸にスライド部材を通して(掛けて)、ギャフ(三本針−12)を道糸伝いに落とす物である。(これに対して、大物用落とし込みダブルギャフは、竿を握る手元で巻き体を道糸ごと竿に巻きつけるか、または実質上巻き体に替わるループ体を竿尻から竿に通してリールの前に持ってきて、竿伝いそして道糸伝いに落とす物である・・・後に詳述)。この考案がどれ位の魚を対象としているのか,はっきりしないが(サイズも分からないし)、この出願書を読んで全体から感じた印象からすると、「大物」という言葉は使われているものの、この考案者は、通常の釣りに於ける大物という観念ではないかと推測される。なぜなら、「カミツブシ」(3ページ目右欄中段)といった言葉や「先端に複数のハリを一定の間隔で取り付けた所謂枝バリを使用する場合」(4ページ目左欄中段)といった表現が出てくる。こういう物は通常大物釣りでは使用しない。カミツブシなどは小物釣り(クローメジナ釣り)などの代表的な小道具である。(これに対して、大物用落とし込みダブルギャフは明確に大物・・・青物含む・・・及び巨魚をターゲットにしている・・・対象3キロー100キロ)
以下に具体的にこの考案(7−11587)の問題点を論ずる。この考案は道糸にガイド(本件ではスライド部材13)を通してギャフを落とすというやり方からして(形は違うが)「公開実用新案公報(U)昭61−72177」(0009項に詳述)に近い考え方である。(0009)項では,まともな魚が掛かった状況では、「竿を持った釣り人は、自分で自分の道糸は掴めない」という事とその理由を詳しく述べた。この考案(7−11587)に於ける釣りでも基本的に同じである。この考案では「第5図」が「同実施例に係る釣りの補助用具を装着する状況を示した説明図」(5ページ目)となっている。この図では釣り人が片手で竿の中ほどを持ち、もう一方の手で「スライド部材13」を持ち、「その側面13cからバネ性を利用し」(3ページ目左欄上)とりつけている姿が描かれている。ところが実釣では通常この図の体勢にはなれない。この図では人形(人間)の約1.8倍の長さで竿が描かれているが、実際には大きくちがう。磯竿の基本寸法は5mから5.4mであるが(堤防では通常磯竿が使われる)、ギャフを必要としている釣りをしているとすれば、ヒサマサ竿(磯竿5号相当)又は石鯛竿を使用していると考えるのが最も自然で、それらも普通5mから5.4mである。もし、人間の身長が168cmで竿長さが5.3mだとすると、竿は身長の約3.1倍であり、図のイメージと実際は大きく異なる。両竿共腰(即ち、魚に対しての竿の剛性)を強くする為にバット側(竿尻側)は強く硬いが、逆にティップ側(穂先側)は当たりを取る為に細く柔らかくヘナヘナ(又柔らかくないと仕掛けも遠投できない)。両手間隔は約1.5mであるから先端から1.5m位の所を片手で掴まざるを得ず、そうすれば前記(0009)項「昭61−72177」に書いた事と同じ事となる。又、逆向きに、竿尻を堤防端側に位置させ、穂先側を手前側に持ってきて、体に対して、斜め後ろ側(水面とは反対側)に穂先を位置させ、5メートル以上ある竿の中ほどを持って、道糸を掴もうとしてもうまくいかない。何故なら、魚は下で暴れて動いており、道糸が堤防端の角を擦れば、それでラインは切れるからである(0009項に書いたのと同じ)。即ち、本考案にある「第5図」で意図している、道糸を掴むという行為は、実際には極めてリスキーな事であり、其れがやれる場合というのは、竿やライン等が魚に対して、明確に優位にある場合に限られる。そうでない場合に其れをやるとなれば、何か(竿折れ、ラインブレイク、バラシ)がおこる可能性大である。釣り人はなるだけ狙う魚種や予想されるサイズにマッチングした(バランスした)道具やラインサイズで釣りを行おうと努める(食いを良くする為)。釣り人はマンタベルトをした腹部に竿尻をあて、竿を立て、リールのドラッグ機能を有効に作動させている場合に、最も安定した体勢であり、魚に対して優位性を保て、釣り人がイニシアチブを持って魚をコントロールする事ができる。釣り人が竿先1.5m位の所を持って道糸に何か仕掛けるとなると、そのイニシアチブを完全に失うという事を明確に意味する。その間、魚はじっとしていてはくれない。従って、前記した何か(竿折れ、ラインブレイク、バラシ)が起こる可能性が大である。まともな魚が掛かった状態では、釣り人は自分で自分の道糸は掴めないのである。物理的にもできないし、リスク的にもできない。実釣シミュレーションとしては、ヒラマサ竿を使い、ナイロンハリス12号で、釣り人は5キロのヒラマサを竿下まで何とか寄せたものの、バレないよう竿を支えているのがやっとで、高さは8mあり、「早く誰か何とかしてくれー」という状況に如何に対処するかという事が問われているのである。この時竿先1.5m位の所を釣り人は掴めない。
但し、次の場合は別である。釣り人が通常の釣り(餌を付けた釣り)をやっているのではなく、ルアー(キャスティング)をやっている場合。ルアーのキャスティングロッドは約3メートルであるから、釣り人がラインを掴んだり、触れたりする事は、相手が特に大きくなければ、可能だろう。
結論としては、本考案に於けるやり方では、(0009)項で述べた「公開実用新案公報(U)昭61−72177」と同様、釣り人自身がこのギャフを自分の道糸にセットする事は、まともな魚が掛かった状態ではできず、それをやってもらう為には、もう一人の人間が必要である。やり方としては釣り人が自分の立ち位置を後ろに下がりながら,竿をギャフ掛け人の方に寝かせ、竿の弾力とドラッグによるラインのテンションコントロールを釣り人側で維持したまま、ギャフ掛け人に道糸を取ってもらい(掴むのではなく片手を輪状にしてラインを包み其れによりラインの横振れを無くす)、ギャフ掛け人はもう一方の手で掴んだギャフのスライド部材13の側面の切れ目13cから道糸をこのスライド部材13に通すか、逆にこの人に竿を持ってもらって、釣り人自身が今言った動作を行う必要がある。従って二人の人間が必要となる。
この考案の基本的な問題は以上述べた通りであるが、この考案の付随的な問題を以下に記す。フック(針)の問題である。フックに関しては、「先端側が各々120°の角度となるように3方向に均等に向けて構成された3本バリ12」(3ページ目左欄上)とあるのみで、具体的なサイズ等は不明であるが、「補助用具10を収納した収納用具30においては、ベルト用穴35を腰のベルトに通すことにより、常に、持ち運びが可能となる」(4ページ目右欄上)という記述もあるので、それほど大きい魚を考えているのではないのではという推測も成り立つが、そのフックの形状の問題点について指摘しなければならない。此処で、第8図のハリ(12)の形状が、魚のサイズによっては大きな問題となってくる。この3本バリは、基本的には(0007)項「イカリ型ギャフ(仮称)について」で詳しく述べた「イカリ型ギャフ」に類するものであるが、この「イカリ型ギャフ」とも正確に言えば異なる。「イカリ型ギャフ」は前記したとおり、フックの方向が軸と概略平行になっており、大変大きく、明確に巨魚を対象にしている。この考案の3本バリは、そのサイズに関して具体的記述が無いものの、上記した文章などから推測すると、それほど大きくは無いようである。しかし、その形状は第8図に明確に描写されている通りである。すなわち、ハリ先が外側を向いている。120度間隔で配置された3本バリのハリ先が外側を向いていれば、当然の事として「掛かりーフッキング」が良い。出願書中に記載されているように確かに略一発で掛かるだろう。しかし、その掛かりの良さは、魚を掛けた後の引き上げ途中における、ハリ掛かりしていない残りの2本のフックの岩又は堤防表面の障害物への引っ掛かりの良さをも同時に意味する。磯では略100%このギャフは使えないだろう。堤防ではどうか。魚が2−3キロや3−4キロと小さければ特に問題ともならない。どうにでもなる。しかし魚が大きければ大きい程、大きい問題になってくる。魚の姿勢によっては魚の重みが、ハリ掛かりしていないフックの針先を堤防表面に押し付け、針先が表面を擦り上げながら上がってくることになる。堤防表面には貝等の付着物もあるのに加えて、表面そのものが真平らではない。堤防(ケーソン)は完全に一個のコンクリートの塊ではなくて、その建設工法上、トーフ状の大きなコンクリートのブロックを横方向に並べ、高さ方向に積み重ね、長さ方向に延長させていき、全体として積み木ブロックのような形になっており、個々のブロックとブロックの間には段差や部分的オーバーハングが存在する。これらは全て障害になる。故にこのハリ先角度は大型魚には向かない。(図31、図32参照)
【0012】
「公開特許公報(A)特開2004−135581」「特許3738905」に関して。この発明も「公開実用新案公報(U)昭61−72177」や「実用新案公報(Y2)実公平7−11587」「実用登録2091605」と同様、道糸にガイド(本体枠部2)をその側面から通して道糸伝いに落とすやり方である。「(発明の目的)この発明は、アジ、サバ、ブリ、アマダイ、イカ、タコ等といった、船上や防波堤等から釣り上げる比較的大型の魚類を、竿釣りや手釣りによって捕獲する際に有用な捕獲補助具に関するもの」(3ページ目)とあるが、「比較的大型の魚類」とはいうものの、その構造からしても所謂大物、巨魚を対象として考え出された物ではなさそうである。この発明は主として海底の岩にへばり付いたタコを主として取り込むために考え出されたもの(4ページ目、0004項、0005項)のようで、大型魚類にも使えるとしている。此処で上に列記されている魚で3キロ以上に成長しうる魚というのは、実釣に於いては、ブリだけである。(「ブリ」と「防波堤」の部分だけが大物用落とし込みダブルギャフとアプリケーションがオーバーラップする部分である)。以下にこの魚類捕獲補助具を論ずる
この魚類捕獲補助具の問題点は、「公開実用新案公報(U)昭61−72177」や「実用新案公報(Y2)実公平7−11587」「実用登録2091605」と同様、堤防から磯竿を使い、まともなサイズ(5キロ以上)の魚と対峙した場合、自分で自分の道糸が掴めず、結局自分で、セットできないという事である。この事は前記二点で詳しく述べたので、ここで繰り返し述べるのは省略する。仮に道糸がうまく掴めたとしても、道糸を掴めば、魚は暴れているわけであり、瞬間的なサージテンションがラインに発生し、ラインが切れるリスクが著しく高まる。又高い堤防の上で、暴れている魚相手にそういう動作をしていれば、魚に引っ掛ける前に、何本もあるフックが自分の手足に引っ掛かる危険もある。以上の理由により大型魚の取り込みにはこの魚類捕獲補助具は向かない。
【0013】
以上述べた様に、このガイド道糸通し方式(仮称、・・・「公開実用新案公報(U)昭61−72177」、「実用新案公報(Y2)実公平7−11587」「実用登録2091605」、及び「公開特許公報(A)特開2004−135581」「特許3738905」が此れに該当)には重大な欠点がある。釣り人はまともな魚と対峙した状況に於いては、自分で自分の道糸を事実上掴めないのである(短竿使用のルアーの場合を除いて)。従って誰か他の人間にギャフの道糸へのセットをやってもらうか、逆に竿を誰かに持ってもらって、自分でセットしなければならない。誰もいなくて、自分だけで其れをやるとなると、竿先1.5メートル付近を掴まざるを得ず、それは大変リスク(竿折れ、ラインブレイク、バラシ)の大きいもので、釣り人は魚取り込みに於けるイニシアチブを完全に失う。釣り人が魚とのファイトに於いて、最も優位にある体勢とはいうのは、竿尻を、マンタベルトをした腹部にあて、左手で竿を支え、右手をリールのハンドルに掛け(この時リールのドラッグは既に最適に調整されている)、両足を少し開いて、腰を少し落した姿勢である。この体勢時には、竿の弾力が効き、且つリールのドラッグが最適に作動し、ラインに高いサージテンションが発生せず、釣り人は完全にイニシアチブを維持している。先行技術は、この体勢をキープしながら、ギャフを自分で取り付けるという事が出来なかったのである。(後で詳述するが、本発明の取り込みシステムは、工夫をこらす事により、出来るだけこの体勢を保持しながら、単独で竿に巻き体を巻く事を可能にし、其れにより、ライン伝いにギャフを落すことを可能にしたものである)(図31、図32参照)
【0014】
此処で、ギャフとは直接関係ないが、前記(0003)項で触れた「落としダモ」について、詳しく述べたい。これは上記した様に、特大の自作円形網(要するにタモから柄を取り外したような物)を予め取り込み予想水中に設置し、其処に魚を誘導しロープで引き上げる物である。まず輪を作るのであるが、輪に硬性を持たせる為に、ワイヤーを通したチュープなどを使ったりして作る。この輪の120度間隔三箇所に補助ロープをつけ、この他端を一箇所で集結させ、この集結部にメインロープを取り付け、又前記集結部の近く辺りにブイ(浮き)などを取り付けて、予め、水中に輪が沈むように設置しておき、魚を此処に誘導する。大きさは輪の直径が、巨魚用で1.5−2m、網の深さ2mぐらいある。又青物(ヒラマサ)狙いでも、通常3−8K位を狙うので、直径1mぐらいはないと、役に立たない。この落としダモは実際に使われていて、有効である。此処で実釣であるが、竿を持っている釣り人自身が巨魚用落としダモを、片手で操作することは完全不可能、又青物用においても(魚が小さかったら別だが)、かなり厳しく、事実上無理である。釣り人は暴れている魚を、設置ダモ上に、自分の立ち位置を変えながら、誘導し、タモ係は、潮(水)の抵抗を受けて重い設置ダモを、魚の動きに合わせて、ロープで引き上げる。拠って二人以上の人間が必ず、必要になる。又携行性が著しく劣る。(図33参照)
【0015】
又此処で、ギャフとは直接関係ないが、前記(0005)項で触れた,通常のタモを使った青物(主としてヒラマサ)釣りについて述べる。(0005)項では「青物の場合(主として昼釣り)はやりとりの後、船着場(瀬付け場)の近くに降りてタモで掬うことになるので特に何も問題ない」と書いたが、「何も問題がない」というのは、そういう使い方をするのに何も支障が無いという意味であって、そうすれば簡単に青物(ヒラマサ)がタモ入れできると言っている意味ではない。タモの柄はグラス製(安価だが重い)とカーボン製(軽いが高価)が有るが、ヒラマサはクロ(メジナ)などと違って大きく重い訳であるから、ヘナヘナの柄ではダメで、ヒラマサが掬えるだけの強度を持っていなければならない。加えて先端のタモ枠(円形環状部)も大きくなければならず、その大きい枠が先端に付くわけであるから、カーボン製であっても、6mあれば十分に重い。加えて先端の大きいタモ(網)が上下する水面で潮(水)の抵抗を受けるのであるから、さらに重く、釣り人自身が片手で竿を持ち、片手でタモ入れする事は極めて難しい。さらに言えば、釣り人はリールのドラッグを調整して、やり取りをした結果、魚を竿下まで寄せられたはずである。ドラッグというのは、一定の力以上の引力が働いた場合、ラインが自動的に引き出されて、其れによって、ライン切れや、のされ(竿が引き倒される事)或いは竿折れ等を防止するリール内の機構であり、その設定は釣り人が調整できる。目の前にタモが出されれば魚は再び突進し、ラインは引き出される。ドラッグを締めればラインは出ないが、切れるから其れは出来ない。ラインが出てしまえば、竿先と魚との距離がありすぎるから、竿を立てても、魚は傍に寄らない。再びリールを巻かなければならない。左手で竿を持ち、右手でタモ柄を持っていると、リールを巻けない。リールを巻くには手がもう一本、合計三本必要となる。実際には上記した様に6mの青物用タモを片手で操作する事は無理で両手が必要であり、拠って、中大型青物(ヒラマサ)の取り込みには、竿を握っている釣り人とは別に、タモ掬い専任者が必ず必要になる。但し(小型2−3k)でタモ長さ4mぐらいまでで済む場合はこの限りではない。又中大型青物が期待できるような外洋の堤防の高さは前記したとおり(8−10m)であるからこのタモは堤防では使えない。(図34参照)
【0016】
此処で、「巨魚ファイトの現状」に付いて、説明を行う。便宜上、3キロから100キロまでの魚釣りを、現実的なところで、3−4キロから10キロ前後までの青物(主としてヒラマサ)釣り(磯及び堤防)と、20キロから60−70キロの大型回遊魚(ヒラアジ、磯マグロ)釣り(磯及び堤防)と、10キロから30−40キロの底物(アラ、クエ)釣り(主として磯)との三タイプとに分けて説明する。今まで、途中のファイトスタイルには、言及せず、最終取り込み局面で、前記「安定した体勢」(スタンディング状態)になっている事を前提として話をしてきた。現実には其れで収まらない、それを超えたファイト、取り込みが存在する。此処で、途中ファイトと最終取り込みの二つの局面に分けて考えてみると以下のようになる。巨魚には該当しない青物はサイズからして、途中ファイト、最終取り込み共に、スタンディング状態である。巨魚である大型回遊魚は、堤防と磯とで若干異なる。堤防はドリルで孔を開けてボルトを打つという行為が禁止されているので(竿受けはボルト、ナット固定方式が基本)、現在では、竿受けを使わないで、アラ竿に比べて比較的柔らかい、石鯛竿の強いタイプを使って、大型両軸リールに大量の糸を巻いて、走らせて、疲れさせて、取り込むというスタイルが主流と成りつつある。この場合、途中ファイトは手持ちファイト(尻餅ファイト・・・股に竿尻を挟む+ハーネス・・・腕力ロスを防ぐ)で、取り込みはスタンディング状態である。堤防で剛力ファイト(剛竿・・クエ竿・・使用の枕全荷重受け=置き竿釣法)を行う場合は、前記した様にボルトが使えない(即ち、市販の竿尻受け、竿受けが使えない)ので、工夫が必要になる。磯の場合は、アラ、クエ竿を使用して、巨魚である底物(アラ、クエ)釣りと同様、竿受けを設置する。竿受けは一体型(竿受けは基本的に後方に位置して竿尻の浮き上がりを抑える部分・・・竿尻受け・・・と前方に位置して竿を下から上に支える部分・・・前受け部とからなり、両方を一体化した物、代表例:板バネ方式)と両方を切り離した分離型(セパレート方式)とがある。ファイト中は竿受けで全荷重をうける(置き竿ファイトと呼ばれる、又、竿を起こして相棒に肩入れ、・・・竿の前で釣り人と向かいあって腰を落す形で、肩で竿の荷重を受ける・・・、をやってもらう事もある)が、取り込み時にはやり方が分かれる。竿尻受け(ロータリーピトン)から竿をはずしてスタンディング状態に移行する場合(前記「安定した体勢」と、腹に当てないで、片手で下向きに押さえ、もう一方の手で上向に支える、・・・腹に当てるには剛竿ではモーメント、トルクが高すぎて人間の痛みも強すぎて逆にコントロールできない・・・、やり方が考えられる、・・・結局、普通この体勢になる)と、竿尻受けから竿を外さないで、そのまま次のステップに進む場合とがある。磯の場合は次のステップでは竿を傾け、相棒に道糸を掴んで(正確に言えば、取って)もらって、二人のうちの何れかがフライングギャフを握って打ち込みにいく事になる。堤防の場合は、竿を起こした状態で魚をコントロールしながら、相棒が前記イカリ型ギャフを投げ下ろす事になる。何れにしても二人の人間が連携しなければ、一人ではどうしようもない、どうする事もできない。大物、巨魚釣りにおいて、ファイト自体が一人では、圧倒的に不利だが、仮に其れが出来たとしても、最終局面に於ける、竿起こし(置き竿の場合、・・・剛竿+巨魚だと強いモーメント、トルクが働く)、ライン掴み、ギャフ掛けが一人では出来ない、という事が致命的である。堤防及び磯の何れの場合(堤防からの大型回遊魚;最終取り込み→スタンディング中心、・・・石鯛竿・・・、だが竿尻固定のまま、・・・アラ竿・・・、もあり:磯からの大型回遊魚及びアラ;アラ竿を使ったとして、最終取り込み→スタンディングと言うより両手握り状態又は竿尻固定のまま)でも、先行技術では一人ではギャフ掛けが出来ないので、事実上魚の取り込みが出来ない。
剛力ファイト(アラ、クエ竿+竿受け=置き竿釣法)に於いては、途中のファイトスタイル(肩入れ又は置き竿のまま、竿受けにて全荷重受け)の如何に関わらず、最終取り込みに於いては、必ず竿は立てなければならない。そうしなければ、次の動作への移行、即ち、ギャフ掛けが出来ない。二人居れば、この一連の動作は可能である。しかし、独りで此れをやるとなると、非常に困難と言うよりも、事実上不可能といえる。置き竿をやると言うことは、剛竿(=アラ、クエ竿)が使われていることは当然である。剛竿の基本寸法は4.8mである。剛竿は硬く、胴(=手元、竿を掴んでいる所)からは曲がらない。魚が竿の真下に寄ったとして、以下の事が理屈として言える。竿が曲がって、平面視における、竿尻から竿先までの距離が4mになったとして、竿を握っている所が竿尻から1mと仮定すると、此処で釣り人が単独で竿を引き起こし、魚をあしらうには、魚の引き×4倍以上の力を釣り人が発揮しなければならない(ファイトの末、腕力を消耗した状態で)。しかも両手を其れに完全に取られれば他の動作(リールを巻く事、そして最終的にはギャフを掛けなければならない)が出来なくなる。魚が数キロであれば、それは可能である。しかし、魚が20kから40kであるとすると、それは現実的なこととはいえない。つまり、剛竿であることは、竿受けを利用して、魚の走りを止める点では有利に働くが、取り込みの段階では、剛竿であることは釣り人に不利に作用する。剛竿+巨魚で高いモーメント=トルクが発生するからである。其れに加えて、前述したように、単独では道糸掴みの困難性が存在する。二人の人間が居れば、この二つの問題は連携することによって解決できるのであるが、独りで此れをやるとなると、それはとてつもなく難しいことであり、事実上不可能といわざるを得ない。単独での大物、巨魚とのファイト、取り込みの困難性は全般に亘るが、其れを極度に困難にしている事の主体は、単独でのギャフ掛けの困難性にある。以上の理由により、結局、事実上単独で大物釣り、巨魚釣りには行けなかった。(後で詳述するが、完全置き竿釣法は完全単独での巨魚の取り込み、及び大型外道処理を可能にした)
【0017】
最後に、「抜き上げ」に付いて触れる。「抜き上げ」とは釣り人が道糸を直接掴んで手に巻きつけるなどして、引っ張り上げる事である。狙っている魚の予想サイズに合わせて、道具や仕掛けを準備している訳であるが、それを大幅に下回る魚が食ってきた場合に、この「抜き上げ」が可能になる。此処で、極端な例を考えてみれば、例えば、アラ竿の中でも特に硬い、重量2k以上の竿を使い、それに道糸がシーハンター80号(強度150k)を巻いていた様な場合で4−5kの魚が食って来て、竿下に寄せた場合の引き上げは、これだけ道糸が太ければ、ドラッグを緩めて、多少走られて、根に擦られたとしても、道糸は簡単には切れない訳で、道糸を掴めて、又糸の摩擦も大きいので、皮手袋をした手を巻きつけて、4−5Kを10メートル上まで引っ張り上げるのは容易にできる。シーハンター80号だと、10k前後まで、抜き上げは容易である。人気のPE(ナイロンの2.5−3倍の強度)ライン30号(強度100k)だと滑るので10k位だときつい(手が痛い)だろう。此処で何が言いたいのかというと、捕獲を完了する事がそのままでは困難な状況において何か工夫を凝らすことにより目的を達成する事を「取り込み」と普通いうのであって、抜き上げが可能な状況でそれを行ったとして、それは此処で論ずる「取り込み」の範疇には入らない。石鯛釣りをしていて、石鯛仕掛けに20cmのアラカブが食いついてきて、クーラーに仕舞ったとしても「アラカブを取り込んだ」とは言わない。実釣シミュレーションとしてはナイロンハリス10−14号ぐらいで釣りをやっていて、竿下まで寄せた3−8キロのヒラマサをどうやって8メートル上の堤防まで上げようかいう事、或いはそれ以上の事が問題なのである。
【0018】
以上により、先行技術、公知技術の説明は完了とする。結論として言えることは、「5−6k以上の魚を、5mを超える高場から単独で取り込むことは、短竿使用のルアーの場合を除いて、事実上出来ない」という事である(二人の人間がいればこれらの技術のうちその状況に適したものを使用すれば可能な事ではあるが)。仮にたまたま其れが出来たとしても、其れはただ単に幸運だっただけで、まぐれにすぎない。そして、そのまぐれが起こる確率は、魚が大きくなればなるほど、限りなくゼロに近づく。釣り具の進歩は著しい。軽くて強い材質の竿やタモ、高機能なリール、等。それらには科学技術の粋が尽くされている。それらを以ってしても、この単純な課題は解決されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】公開実用新案公報(U) 昭61−72177
【特許文献2】公開実用新案公報(U) 昭61−186372
【特許文献3】公開実用新案公報(U) 昭61−204482
【特許文献4】実用新案公報(Y2) 実公平7−11587、 実用登録2091605
【特許文献5】公開特許公報(A) 特開2004−135581、 特許3738905
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
「背景技術」(0002)から(0018)において詳しく述べた様に、短竿使用のルアーの場合を除いて、竿下まで寄せた大物、巨魚を、釣り人が十分に離れた高く安全な場所から、誰の手助けも無く単独で、容易に、確実性高く、且つ安全に、実質的に捕獲(本発明ではギャフ掛けによって其れを行う)し、且つ、足元まで上げる事は、先行技術、公知技術では如何なる技法によっても、事実上成し遂げられていない。本発明の目的はそれを成し遂げられる技術を提供する事であり、又堤防、磯の区別無く、地形に関係無く幅広い使用範囲に適用できる技術を提供する事である。具体的には「5−6k以上の魚を、5メートルを超える高場から釣り人が単独で取り込む」という課題を先行技術、公知技術は、短竿使用のルアーの場合を除いて、事実上解決していない。本発明は「約3キロから約40キロの魚を、5メートルを超える高場(上限は実用上制限無し)から釣り人が単独で掛け、単独で足元まで上げ、取り込む」ことを、如何なるタイプの竿であっても、可能にする。本発明を以ってすれば、十分に離れた高く安全な場所から(高さ5メートルを大きく超える場所であっても、実用上高さ制限無しに)、相手(魚)側にギャフを送りつけ、届け、フッキングさせ、約3キロから約40キロまでの魚を足元まで上げることが、完全単独で、高い成功率でできる(この事は何回もの実釣により確認済み、また40キロという数値は目安でコンクリート又は岩表面の状態、摩擦抵抗による)。又人間が二人居れば約70−80キロを上げることが可能であり(この事も確認済み、この場合も70−80キロという数字は目安でコンクリート又は岩表面の状態、摩擦抵抗による)、さらに言えば、本発明を応用すれば、少しシステムが複雑になるが、平均的体力の釣り人が単独で約70−80キロの魚を掛け、10メートル上の堤防上まで完全単独で上げることが可能であろうと推論でき、さらに100キロの魚に対しても可能性を残す。一人でやれるのと、二人居なければやれないのとではえらい違いである。二人居なければやれない方式というのは、一人しか居なかったら、貴重な大物が掛かったとしても、どうしようも無いことである。本発明の目的とする所は、単独での、高場からの大物、巨魚の取り込みである。一言でいえば、本発明を以ってすれば、一人で高場から大物を掛け、且つ上げる事ができます、という事なのである。先行技術では其れが出来なかったのである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明のギャフ掛け方法は、ギャフに対するガイドとしての機能を果たす柔軟性の巻き体を、道糸ごと竿に巻くか、或いは巻き体に替わる柔軟性のループ体を竿尻から通してリールの前に持ってきて、それによりギャフを、竿そしてライン伝いに落とし込み、魚の口元に到達させた後、ロープを上下動させることと魚自体の暴れを利用して、口に掛かっている鈎に繋がっているライン上の口元に近い箇所を揺動支点として、ギャフを魚体周りに振ってやり、其れによって、魚体にフッキングさせることを特徴とする。
【0022】
本発明のロープギャフ用補助システムは上記0021項に記載のギャフ掛け方法の実施に使用するシステムであり、脱落防止機能付き円環状連結具と、ギャフと前記円環状連結具とを接続する柔軟性を有する接続体と、その一端は前記円環状連結具に掛けられ、その他端はフリーとなっていて前記円環状連結具に掛けることが可能な柔軟性の巻き体と、その一端を前記円環状連結具に掛けられたロープとを含んで構成されるギャフ用大物補助システムか、ギャフの一端側に連設され、リールを越えられる寸法を有する柔軟性のループ体と、同ループ体に脱落防止機能付き円環状連結具を介して連結されるか又は介さないで連結されたロープとを含んで構成されるギャフ用簡易型補助システムか、脱落防止機能付き円環状連結具と、ギャフと前記円環状連結具とを接続する柔軟性を有する接続体と、その一端は前記円環状連結具に掛けられ、その他端はフリーとなっていて前記円環状連結具に掛けることが可能な柔軟性の巻き体と、前記円環状連結具に掛けられた負荷軽減体と、同負荷軽減体に通されたロープとを含んで構成されるギャフ用巨魚補助システムか、の何れかから構成される。
【0023】
本発明のプッシャー兼プーラーは上記0021項に記載のギャフ掛け方法の実施に使用するアクセサリーであり、軸部の反対側にU字型プーシャー部と同プッシャー部の一端側に位置するフック型のプーラー部とを一体成形した構造をなし、置き竿適用に於いて、前記軸部をタモの柄に取り付けて、前記プッシャー部で、ギャフに取り付けた上記0022項に記載のロープギャフ用補助システムを押し出すのに使用する。
【0024】
【0025】
【0026】
【発明の効果】
【0027】
本発明の落し込みダブルギャフは、ギャフの構造を大物、巨魚の取り込みに最適化する為、従来にない特別なものにした。それにより、1)第一に、針掛かりしていない残りのフックの、引き上げる途中に於ける障害物への引っ掛かりの問題を、軽減できる。2)第二に、ロープを引く力を、ロス無く、フックを魚体に食い込ませる力として作用させる事が出来る。又、ロープの上下動と魚自体の暴れを利用して、口元を揺動支点として、ギャフを振ってやり、其れにより、フッキングさせるという、独創的なやり方を使用上の特徴としている。それにより、3)第三に、フックの数を事実上二本に抑えながら、効率的なフッキングを可能にした。それは、更に引っ掛かりの軽減に資する事にもなる。又、本発明の取り込みシステムは、ガイド(巻き体)を、道糸に取り付けるのではなく、竿を握った手元で竿に巻きつけるか、又は予めループにして竿尻から通して、リール前に持って来られる様にした。其れにより、4)第四に、釣り人が安定した姿勢を維持しながら、単独で(自分一人で)ギャフを取り付け、竿伝い、そしてライン伝いに、落す事を可能にした。其れにより、5)第五に、バラシやラインブレイク、竿折れ等のトラブルが発生するリスクを大幅に軽減した。又、本発明の取り込みシステムは、従来釣りでは使用される事の無かった負荷軽減体(滑車)やストッパー(ユマール、チェストアッセンダー)といった機能器具をシステムに組み込んだ。其れにより、6)第六に、滑車の使用により、引き上げ時の負荷を半減できる。これは、単独で約40キロまでの魚を上げられる事を意味し(実際は表面状態、摩擦抵抗による)、これは実釣において、青物の約100%、アラの約98%、回遊魚の約80%、をカバーするものである。7)第七に、ユマール又はチェストアッセンダーの追加使用により、引き上げ時の安定性が向上し、不安感が軽減する。更に、本発明は、プッシャー兼プーラーを開発した。其れにより、8)第八に、落とし込みダブルギャフとの併用により、完全置き竿釣法が可能となり、この方法を用いることにより、釣り人は単独でも、巨魚とのファイト及び取り込みを、完全優位に完了できる。又、9)第九に、大型外道の際の単独でのライン切りを容易化した。以上の事を総合すると、結論として、以下の事が言える。
先行技術が、短竿使用のルアーの場合を除いて、今まで事実上出来無かった、「竿下まで寄せた大型魚を、釣り人が十分に離れた高く安全な場所から、誰の手助けも無く単独で、容易に、確実性高く、且つ安全に、実質的に捕獲(本発明ではギャフ掛けによって其れを行う)し、且つ、足元まで上げる事」、を本発明による技術は可能にした。本技術は、堤防、磯の区別無く、地形に関係無く幅広い使用範囲に適用できる。具体的には、先行技術が、短竿使用のルアーの場合を除いて、今まで事実上解決できなかった、「5−6k以上の魚を、5メートルを超える高場から釣り人が単独で取り込む」という課題を、本発明は解決できる。本発明は「約3キロから約40キロの魚を、5メートルを超える高場(実用上上限無しに)から釣り人が単独で掛け、単独で足元まで上げ、取り込む」ことを、如何なるタイプの竿であっても、可能にする。本発明を以ってすれば、十分に離れた高く安全な場所から(高さ5メートルを大きく超える場所であっても、高さ制限無しに)、相手(魚)側にギャフを送りつけ、届け、フッキングさせ、約3キロから約40キロまでの魚を足元まで上げることが、完全単独で、高い成功率でできる(40キロという数値は目安で、表面状態、摩擦抵抗による、又二人居れば約70−80キロが可能)。以上の理由により、青物の高場からの単独取り込みを容易化し、又単独での大物、巨魚取り込みを可能とし、そして大型外道の際のラインカット処理を容易化し、延いては、其れまで二人居なければ事実上行けなかった、大物、巨魚釣りに、単独で行ける様にした。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は本発明の大物用落し込みダブルギャフの平面図である。
【図2】図2は本発明の大物用落し込みダブルギャフの正面図である
【図3】図3は本発明の大物用落し込みダブルギャフの側面図である。
【図4】図4は本発明の大物用落し込みダブルギャフの斜視図である。
【図5】図5は本発明の大物取り込みシステムを示した説明図である(ラッピングワイヤー両端の両ループ共閉じた状態を示す)。
【図6】図6は本発明の大物取り込みシステムにおける、ラッピングワイヤー巻き付けのキーポイントを示した説明図である。
【図7】図7は本発明の大物取り込みシステムの竿へ巻き付けが完了した状態を示した説明図である。
【図8】図8は本発明の大物取り込みシステムのラッピングワイヤー事前ループ方式の竿尻通過前の状態を示した説明図である。
【図9】図9は本発明の大物取り込みシステムのラッピングワイヤー事前ループ方式の竿尻通過後の状態を示した説明図である。
【図10】図10は本発明の大物取り込みシステムのフッキングのメカニズムを示した説明図である。
【図11】図11は本発明の大物取り込みシステムのフッキングにおける引抜のメカニズムを示した説明図である。
【図12】図12は本発明の簡易型大物取り込みシステムの基本タイプを示した説明図である。
【図13】図13は本発明の簡易型大物取り込みシステムの第一の変形タイプを示した説明図である。
【図14】図14は本発明の簡易型大物取り込みシステムの第二の変形タイプを示した説明図である。
【図15】図15は本発明の巨魚取り込みシステムを示した説明図である(ラッピングワイヤー両端の両ループ共閉じた状態を示す)。
【図16】図16は本発明の完全置き竿釣法に適用された巨魚取り込みシステム、基本モデルの全体の使用状況を示した説明図である。
【図17】図17は本発明のプッシャー兼プーラー示した説明図である。
【図18】図18は本発明の完全置き竿釣法における、プッシャー兼プーラーのプッシャー部の使用状況を示した説明図である。
【図19】図19は本発明の完全置き竿釣法における、プッシャー兼プーラーのプーラー部の使用状況を示した説明図である。
【図20】図20は本発明の完全置き竿釣法に適用された巨魚取り込みシステム、途中休み可能モデルでの魚引き上げのキーポイントを示した説明図である。
【図21】図21は本発明の完全置き竿釣法に適用された巨魚取り込みシステム、休み休みモデルでの魚引き上げのキーポイントを示した説明図である。
【図22】図22は本発明の完全置き竿釣法に適用された巨魚取り込みシステム、休み休み変形モデルでの魚引き上げのキーポイントを示した説明図である。
【図23】図23は本発明の完全置き竿釣法に適用された、巨魚取り込みシステムを応用した超巨魚チャレンジモデルでの魚引き上げのキーポイントを示した説明図である。
【図24】図24は従来法の柄付きギャフを示した説明図である。
【図25】図25は従来法の柄付きギャフを使った取り込み状況を示した説明図である。
【図26】図26は従来法のフライングギャフを示した説明図である。
【図27】図27は従来法のフライングギャフを使った取り込み状況を示した説明図である。
【図28】図28は従来法のフライングギャフを切り離した状況を示した説明図である。
【図29】図29は従来法のイカリ型ギャフ(仮称)を示した説明図である。
【図30】図30は従来法のイカリ型ギャフ(仮称)を使った取り込み状況を示した説明図である。
【図31】図31は従来法のガイド道糸通し方式(仮称)を単独で使った場合のリスキーな状況を示した説明図である。
【図32】図32は従来法のガイド道糸通し方式(仮称)のリスクを回避する為の現実的な使用状況を示した説明図である。
【図33】図33は従来法の落としダモの使用状況を示した説明図である。
【図34】図34は従来法のタモの使用状況を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
先行技術が解決できなかった、0020項に於いて結論付けた課題を解決する事が本発明の目的である。下記の四点の工夫を凝らす事により、「竿下まで寄せた大物、巨魚を、釣り人が十分に離れた高く安全な場所から、誰の手助けも無く単独で、容易に、確実性高く、且つ安全に、実質的に捕獲し、且つ、足元まで上げる」という目的を、操作性及び携行性に優れる構成で実現した。1)まず、第一の工夫はギャフの構造を大物、巨魚の取り込みに最適化する為、従来にない特別なものにした事である。2)第二の工夫はガイド(本発明に於ける巻き体)を、道糸に取り付けるのではなく、竿を握った手元で、道糸ごと竿に巻きつけるか、予めループにしておいて、竿尻から通して、リール前に持ってこられる様にした事である。3)第三の工夫は、従来釣りでは使用される事の無かった負荷軽減体やストッパーといった機能器具をシステムに組み込むことにより、単独での巨魚対応(概略40キロまで・・・実際は堤防や岩場の表面状態、摩擦抵抗による、応用編は含まず)を可能にした事である。4)第四の工夫は、プッシャー兼プーラーを開発し、本発明のダブルギャフとの併用により、完全置き竿釣法を可能にした事である。以下の実施例に於いて、図を参照しながら、この四点の工夫に関して詳しく述べる。
【実施例1】
【0030】
本発明の大物用落し込みダブルギャフの一実施例を示す、図1(平面図)、図2(正面図)、図3(側面図)、及び図4(斜視図)を参照しながら、まず、第一の工夫である「ギャフの構造の工夫」に関して述べる。本発明の大物用落とし込みダブルギャフ1は、約3キロから約100キロまでの魚を対象としている(小型化すれば、其れより小さい魚も可能)が、その最適使用範囲を約5キロから約70キロと仮定している。このうち単独での実取り込み限界が概略40キロ(実際は表面状態、摩擦抵抗による、応用編は含まず)、二人での実取り込み限界が概略70−80キロである(実際は表面状態、摩擦抵抗による)。すなわち、大型魚を対象として開発した物であるが、10キロ以下の青物の取り込みでも、タモなどでやるよりは、これでやった方が簡単で確実ですよ、しかも独りでやれますよ、という考え方である。其れを現実の物とする為、幾つかの工夫がなされている。本発明の大物用落とし込みダブルギャフ1は、軸11の一端に二本又はそれ以上のフック12を備え、他端にリング13を備え、前記二本又はそれ以上のフック12の全体の角度幅が180°未満である事を構造上の特徴としているが、その最適モデルにおいては、フック12は二本であり(二本で十分、それ以上は不要)、しかも二本の間隔は50度から55度である(図3、50°表示)。従って、ここではその最適モデルを前提として、説明を進める。此処で、フックの数は二本より三本のほうが、そして三本より四本の方が当然の事として、掛かりがよく、且つフックの間隔は50度から55度でなくて、なるだけ離れていた方が、掛かりがよく、即ち、軸の周りの円周上に3本から4本のフックが均等間隔で配置された方が、最も掛かりがよく、しかもフックの先端が外側を向いていれば、尚掛かりがよいと言える。本発明の大物用落とし込みダブルギャフ1は、ここに書いた事の全てに関して、その逆をいくものである(その必要がない)。又、間口(フック12の針先と軸11との間隔、フトコロ)が、大きいほど掛かりがよいと言えるが、本発明の大物用落とし込みダブルギャフ1はその対象魚の大きさを考えれば、それほど大きくはない(その必要がない)。まず、フック12の数とその相対角度に関して説明する。フックの数が多いほど、そしてその相対角度が離れているほど掛かりがよい。しかし、フックの数が多くしかも離れていれば、魚体にフッキングするフックは一つで、他のフックは魚体から離れた位置で大きく突き出ている事になる。これは魚体を引き上げる途中に於ける岩や堤防の表面の障害物に引っ掛かることになる。本発明の大物用落とし込みダブルギャフ1は、フック12を二本にし、しかもその間隔を50度から55度としたので(図3、50°表示)、うまくすれば二本同時に魚体に掛かることもあり、二本掛からない場合でも、残りの一本のフック12は魚体表面近くにあまり突き出ないで位置する事になるので、障害物に引っ掛かりにくい。そして次に、本発明の大物用落とし込みダブルギャフ1の最大の特徴であるフック12の先端(針先)の軸11に対する角度について説明する。通常ギャフというのは、フック12の先端(針先)が略例外なく軸11に対して、外側を向いている(平行なのは知る範囲で前記「イカリ型ギャフ」しかない)。内側を向いているギャフというのは見た事がない。其れは当然の事として、魚を引っ掛けやすくするために、フックの先端(針先)を外側に向けているのである。一本フックの場合は、魚体の外に出ているフックは何もない訳だから、それで取りあえずの問題はないが、二本フック以上だと、魚に掛けやすい針先というのは、魚体にフッキングしていない残りのフックの引き上げ途中に於ける表面の障害物への引っ掛かりやすさも同時に意味する。それを避ける為、本発明の大物用落とし込みダブルギャフ1のフック12の先端(針先)は軸11に対して、内側に向けている。具体的には平面視(図1)及び正面視(図2)の何れにおいても二本のフック12の針先は、その外接線(A,B,C)の延長線(A´,B´,C´)が他端に於けるリング13の、接続体の掛け部の位置に略来るように、内側に曲げてある。内側に曲がることにより、上記引っ掛かりの問題を軽減するとともに以下に説明する力学上の利点をも持つ事になる。此処で、フッキングのプロセスを細かく見てみると次の様になる。針先がわずかに引っ掛かった(カエシ14が魚体に入るか入らない程度の)第一段階と、魚体がカエシ14を大きく超え、針湾曲部中央までグサリと刺さった第二段階である。通常の柄付きギャフは、カエシがない場合も多いが、この第一段階と第二段階とを、柄を操作する事により、略同時に行う。本発明の大物用落とし込みダブルギャフ1はロープギャフ(ロープで操作するギャフ)であるから、これとは大きく異なる。打ち込めないのである。本発明の大物用落とし込みダブルギャフ1は、「別体の巻き体を、道糸ごと実質的に竿に巻き、竿伝い、ライン伝いに落とし込み、魚の口元に到達させた後、別体のロープを上下動させることと魚自体の暴れによって、口に掛かっている鈎に繋がっているライン上の口元に近い箇所を揺動支点として、ギャフ1を魚体周りに振ってやり、其れによって、魚体にフッキングさせる」ことを、使用上の特徴としている。此処で言うフッキングとは正確には上記プロセスの第一段階を指している。実釣では、ギャフ1を口元に到達させた後、ロープを片手(通常右手)で持って、肘を支点に、鯛のテンヤ釣りをする要領(ダンベルを上下するようなやり方・・・本ダブルギャフ1は最適モデルで300グラム程度)で、手先を上下させていると(見て操作するのではなく・・・夜だと見ても見えない・・・又、ロープだからコントロールも出来ない)、程無くズシリと重みが掛かる。これは針先がフッキングした証拠だから(第一段階)、そしたら力一杯ロープを引っ張り上げてやると、ガシリとギャフ1が食い込み第二段階に到る。この時、ロープの方向と針先の方向が略一致しているから、ロープを引く力がロス無く針先に魚体を引き抜く力として伝わるのである。上記した力学上の利点を持つ事になる。すなわち、柄つきギャフの様に打ち込むのではなく、引き抜く訳である。尚、補足説明として、ギャフ1が口元に到達したかどうかを目視確認する必要もない。ギャフ1及びその他部材は適度の重みがあるから、ロープにその重みがある状態とハリスにその重みが移った状態とは、感覚的に明らかに違いがあり、見なくても識別できる(夜だとヘッドランプの明かりでは、10メートル以上離れていると細かいことまでよく見えない)。尚此処で、二本のフック12の角度が50度から55度でしかも針先が内側を向いていて、実際にフッキングするのかという疑問を抱く必要は全くない。簡単に、容易に、比較的短時間(ここのところはムラがあるが、通常10秒から20秒程、長くても一分以内)に、確実にフッキングする(この事は多くの実釣によって、確認済み)。故にフック間隔を56度以上に広げる必要もないし、針先を外側に向ける必要もないし、又間口(フトコロ)を、巨魚狙いだからといって特別大きくする必要もないので、携行性にも優れる。
【実施例2】
【0031】
次に、図5、図12、図13、図14、図15を参照しながら、第二の工夫である「ガイド(本発明に於ける巻き体4、図12、図13、図14ではループ体7、7Va、7Vbが同役目を果たす)の取り付け方法の工夫」に関して述べる。先行技術のガイド道糸通し方式(仮称、先述済み、0013項)が成し得なかった、安定した体勢(竿尻を、マンタベルトをした腹部にあて、左手で竿を支え、右手をリールのハンドルに掛け、両足を少し開いて、腰を少し落した姿勢)を維持しながら、釣り人自身が、ガイド、即ち、其れに繋がるギャフを、自分で取り付けると言う行為を、本発明は事実上、可能にした。本発明の取り込みシステムは、工夫をこらす事により、出来るだけこの体勢を保持しながら、単独で竿に巻き体4を巻く事を可能にし、其れにより、ライン伝いにギャフを落すことを可能にしたものである。本発明の取り込みシステムには、基本的に三つある。「大物取り込みシステム」、「簡易型大物取り込みシステム」、そして「巨魚取り込みシステム」である(図5は大物取り込みシステムを示した説明図であり、図12、図13、図14は簡易型大物取り込みシステムを示した説明図であり、図15は巨魚取り込みシステムを示した説明図である)。この三システムのうち、「大物取り込みシステム」に関して、以下に詳細を説明する。
【0032】
図5、図10、図11を参照しながら、「大物取り込みシステム」に関して詳細を述べる。この「大物取り込みシステム」は、本発明の大物用落し込みダブルギャフ1と、円環状連結具2と、前記大物用落し込みダブルギャフ1と前記円環状連結具2とを接続する、柔軟性を有する接続体3aと、その一端41は前記円環状連結具2に掛けられ、その他端42はフリーとなっていて前記円環状連結具2に掛けることが可能な巻き体4(図5は両端とも連結具2に掛けられ、閉じた状態を示す)と、その一端5a1を前記円環状連結具2に掛けられたロープ5aとを含んで構成される。本発明の大物用落し込みダブルギャフ1は、既に、0030項に於いて詳しく説明した。次に、「円環状連結具2」に関して、詳しく説明する。円環状連結具2は、セーフティ機能(脱落防止機能)付き円環状連結具2を使用する。より具体的には「安全環付きカラビナ2」を使用する。カラビナ2(標準長さ約11cm、軸径約11ф)の詳しい説明を行うと、基本的な形状(構造)は略D型(略台形状)をしており(O型もある)、向き合った平行な二辺の長辺のうち、短い方の辺が開閉部(ゲート)21となっており、その一端側22は固定ピン23によって本体側と接続されており、その他端側(開口側)24が相手側の本体に対して、内側に開閉自在となっているが、ピン23側の開閉部(ゲート)21の内部にバネが組み込まれており、開口側24は常に本体側(外側)に一定の力で押し付けられている。つまり、一定の力で開口側24を内側に押した時のみ、ピン23を支点として、内側に開く。通常は、カラビナ2内部にセットされた道具は、外側に対しては力が掛かるが、内側に対しては、力が掛からないから、外れることはない。しかし、一定の条件が揃ったときなどは、其れが簡単におこり得る。例えば、ロープにキンクが発生しているような時、中に入っているロープを引っ張っただけなのに、キンクが開口部を内側に押してしまい、内に入っていたはずのロープがカラビナの外に出てしまった、といった事が簡単におこり得る。大暴れしている魚の口元に送り込むわけであるから、何が起こるか全く予測が付かない。重要な道具を全て、カラビナの中に入れている訳であるから、何が有っても、道具が外れる事があってはならない。此れを現実の物にするのが「安全環付きカラビナ2」の使用である。この安全環付きカラビナ2の仕組みは、次の通りである。前記開閉部(ゲート)21の途中に環(安全環)25がセットされており、此の環25は内側に雌ねじが切ってあり、又ゲート21には雄ねじが切ってあり、組み合わされている。即ち、ピン23側を手元として見た場合、左に環25を回せば環25は後退し(開口側24:開口自在)、又逆に右に回せば前進し、相手側本体部を噛む(開口側24:開口不能=ロック)。此れにより、この円環状連結具(安全環付きカラビナ)2にセットされている各種道具は、魚が如何に暴れようとも、脱落防止される。通常のカラビナは大物釣りに使用されているが、「安全環付きカラビナ」が釣りに使用されることは無い(その必要がなかった、又その存在自体が釣り人には知られていない、両カラビナとも山用品であるが、特に安全環付きカラビナは、山では主として安全の確実性が求められるボディ周りに使用される物である)。この安全環付きカラビナ2の利用は本「大物取り込みシステム」に於ける、重要なポイントの一つである。次に、「柔軟性を有する接続体3a」に関して詳しく説明する。この柔軟性を有する接続体3aは、柔らかい繊維系素材により、これを製作する。具体的にはナイロンシュリンゲ3aを使用する(補足説明として、「シュリンゲ」は主として山用語・・・語源ドイツ語Schlinge、英語だとSling・・・で広く使用されており、補助ロープ又はテープを短く切って通常輪状にして、荷重を支える為に使われる事が多く、太くて長いメインロープに対比する用語であり、此処で補助ロープとするよりも、シュリンゲとした方が、概念が明確になる)。このナイロンシュリンゲの一端3a1を本発明の大物用落とし込みダブルギャフ1の他端に設けてあるリング13にプーリン結び3a3等を利用して遊動可能に接続し(振れをよくする為)、又その他端3a2はループにして、前記安全環付きカラビナ2に掛ける。シュリンゲ3a(太さ5ф〜6ф)に柔らかい繊維系素材(ナイロン)を使用するのには十分な理由がある。本発明の大物用落とし込みダブルギャフ1は、巻き体4を、道糸ごと実質的に竿に巻き、竿伝い、ライン伝いに落とし込み、魚の口元に到達させた後、ロープ5aを上下動させることと魚自体の暴れを利用して、口に掛かっている鈎に繋がっているライン130−1上の口元に近い箇所を揺動支点として、ギャフ1を魚体周りに振ってやり、其れによって、魚体にフッキングさせることを使用上の特徴としている(図10、図11参照)。ギャフ1自身が適度の重さを有していることと、このシュリンゲ3aが適度な太さと適度な柔らかさ(=適度な硬さ)を有している事は、ギャフ1の過度の跳ね上がりを抑えつつ、魚体周りでよく振れ、結果として鰓下から魚体中央までの間にギャフ1がフッキングする、という目的を達するのに有効である。次に、「巻き体4」に付いて詳しく説明する。巻き体4は線状体により製作し、具体的には、全体としての適度な柔らかさと部分的な硬さとを有するステンレスワイヤー4の両端41、42を折り返して、スリーブ43、44止めにして、両端にループを作った、ラッピングワイヤー4により完成する。このラッピングワイヤー4の発想は、前記安全環付きカラビナ2の使用と共に、本「大物取り込みシステム」の核心をなす物である。大型用竿(例えばアラ・・・クエ竿)は直径3cm以上あり、又大型リール(代表的な物ペン、セネター9/0やダイワ、シーライン900)をセットした場合の、リール上側での竿下から糸上までの寸法は14−5cmもある。先行技術は此処にガイドを通す事が出来なかった訳である。それだけの開口寸法を有するガイドを用意できなかったのである。その結果、釣り人が単独で「安定した体勢で、ガイド、即ち、それに繋がったギャフを取り付ける」という事が出来なかった訳である。本発明は、線条体を用いて、ラッピングワイヤー(巻き体)4を完成させ、竿に巻きつけて、取り付け容易で脱落防止機能付きの前記安全環付きカラビナ(円環状連結具)2に掛ける事により、この問題を解決した。ラッピングワイヤー4の一端側のループ41を前もって安全環付きカラビナ2に掛けて置き、取り込み時に、前記「安定した体勢」を維持しながら、竿に巻きつけ、他端側のループ42を前記安全環付きカラビナ2に掛けることは、容易に単独でできる。「安定した体勢」とは、「釣り人がマンタベルトをした腹部に竿尻をあて、竿を立て、リールのドラッグ機能を有効に作動させている姿勢」である。この姿勢の時、釣り人は、魚に対して優位性を保て、釣り人がイニシアチブを持って魚をコントロールする事ができるのである。このコントロールを維持しながら、釣り人が自分でギャフ1を取り付けられる、という事が本発明の最大の利点であり、先行技術がなし得なかったことである。両端にループ41,42を備えたこのラッピングワイヤー4の寸法は、最適モデルで、全長約62cmで軸径約2mmであり、円形(リング)にした場合の直径は約20cm弱である。基本的な使い方は、前記した様に一端のループ41を前以って前記安全環付きカラビナ2にセットしておき、取り込み時に、ラッピングワイヤー4を竿に巻いて、他端のループ42を前記カラビナ2にセットする事を基本とするが(数秒でやれる簡単なこの手順は本発明が単独で、且つ安定した体勢を維持して、やれることを証明する上で、重要な事であるので、以下に詳しく説明する)、カラビナ2の操作に慣れていなくて、不安を感じる人は、前以って、他端のループ42も前記カラビナ2にセットしておき、其れによって、ラッピングワイヤー4のループ(リング)を完成させておき(図5が正にその状態を表す)、取り込み時に、このループ(=ラッピングワイヤー4)を竿尻から通して、リールを越えて、その前に持ってくることも出来る。此れだとさらに簡単である。そうする事も出来るように、前記した様な十分なサイズにしてある。最後にロープ5aについて説明すると、一端をループ5a1にして、前記安全環付きカラビナ(円環状連結具) 2に掛けてあり、又他端もループにして、ハーケン等の支点(正確に言えば、ハーケンに掛けられた別のシュリンゲに掛けられた別のカラビナ)に掛けておくのがベストである(堤防の上でもハーケンは打てる)。材質はナイロン又はポリプロピレンの編みロープ5aで、最適モデルで、太さ8ф−10фで、長さ約15m−17mである(長さも太さもいくらでも可能である)。次に、本発明の単独可能の論拠となる、ギャフ1取り付けの全ムーブを以下に詳述する。
【0033】
図5、図6、図7、図8、図9を参照しながら、「大物取り込みシステムに於けるギャフ取り付けの全ムーブ」に関して述べる。まず、事前準備として、ロープの一端のループ5a1と、接続体(シュリンゲ)3aの他端のループ3a2と、ラッピングワイヤー4の一端のループ41とをこの順序で、安全環付きカラビナ2に、前記開閉部(ゲート)21から、掛けて、ラッピングワイヤー4の一端のループ41だけ、安全環25を越えて固定ピン23側に移動させておく。其れにより、前記固定ピン23を手前側とし、ゲート21を上側とした場合、手前側から、ロープ5aのループ5a1、シュリンゲ3aのループ3a2、そしてゲート21の固定ピン23側(手前側)にラッピングワイヤー4のループ41が順に位置する事になる(ラッピングワイヤー4のループ41は手で持っては安全環25を越えられるが、手を離せば安全環25に引っ掛かる程度にスペース調整・・・スリーブ43位置調整されている)。そして、ロープ5aの他端は前記した様に、支点(ハーケンにシュリンゲ経由で掛けられたカラビナ、図示略)に掛けておく。また、ロープ5aはキンクが起きない様、十分に扱いて伸ばした上で、又縺れない様にハーケン側が下に位置し、ギャフ1側が上に位置するように配慮して置く。安全環25は完全に後退ではなくロックの少し手前に調整しておく。そして、このギャフセットを足元に、取りやすい様に、注意を持って配置しておく(即ち、図5の状態から、ラッピングワイヤー4の他端のループ42のみが外れた状態になっている)。此処までが、事前準備で、此処から釣り開始である。魚が掛かって、ファイトを経て、竿下まで魚を寄せた。この時釣り人は通常、前記した「安定した体勢」、即ち、「マンタベルト140をした腹部に竿尻110−1をあて、左手で竿110を持ち、右手をリール120のハンドル120−1に掛け、両足は少し開き、腰を少し落した体勢」(この時ドラッグは有効に機能している)にある筈である。此処から、「ギャフ1取り付けの全ムーブ」の開始である。1)先ず、基本体勢を維持したまま、腰を少し下げ、右手をリールハンドルから離し、右手の指を、ギャフセットを構成している、安全環付きカラビナ2に掛け、取る。2)次に、竿110を持っている左手の人差し指を開き、右手指から、左手人差し指にカラビナ2を受け渡す。この時、各ループ3a2、5a1は重みがあるので、ラッピングワイヤー4の一端のループ41を除いて、カラビナ2先端側コーナーに寄っており、カラビナ2は先端側が下を向いている。3)左手人差し指も合わせて竿110を握る。即ち、左手の他の四本の指は直接竿110を握り、左手人差し指はカラビナ2を間に挟んで竿110を握る事になる。4)次に、右手で、反対側(=他端側42)がフリーになってぶら下がっているラッピングワイヤー4を掴み、竿110及び道糸130を越えて、反対側に投げ下ろす。5)すると、ワイヤー4は重みがあり、適度に柔らかいから、フリーの側(=他端側42)が竿110の向こう側に垂れ下がる。6)右手を竿110の下側から伸ばし、フリーになっているループ42を掴む。この時、手のひらを返して(手のひらが腹部側・・・手前側・・・ではなく前方側を向くように)、小指と薬指でワイヤー4のスリープ44下(この姿勢だとループ42が下でスリーブ44が上に位置しているが、その表現からするとスリープ44の上側)を掴み、親指と人差し指でループ42を摘むようにする。7)摘んだループ42を上向にして、ワイヤー4をゲート21の開口部に押し当てやると、ワイヤー4は適度の硬さがあるので、開口部がバネに抗して、開き(図6の状態)、パチリと言う音と共に、ループ42がカラビナ2内部に嵌まり込む。8)右手で安全環25を右(図6の描写だと左)に回し、開口部をロックする。此れで、ギャフセットの竿110への取り付けは完了した(図7の状態)。以上により、「安定した体勢」を略維持しながら、取り付けは終了した。後は竿110を傾けて落すだけである。
尚、上記ムーブは実際には数秒で終わる簡単なものであるが、この方法のバリエーション(V)として、カラビナ2の操作に慣れていなくて、不安を感じる人は、前以って、他端のループ42も前記カラビナ2にセットしておき、其れによって、ラッピングワイヤー4自体のループ(リング)を完成させておき(図5の状態)、取り込み時に、このループ4を竿尻110−1から通して、リール120を越えて、その前に持ってくることも出来る。此れだと、全く簡単である。この場合は、ラッピングワイヤー4の両端のループ41、42を安全環付きカラビナ2に入れて、環25を前進させ、開口部をロックさせた上で(図5の状態)、取りやすい様に足元に置いておく。此処までが事前準備である。ラッピングワイヤー4は大きなループを形成している。この場合のムーブは以下の通りである。V1)「安定した体勢」から、腰を下げ、ループ(=ラッピングワイヤー4)を右手で掬い取り、そのまま右手首に掛ける。この時竿尻110−1は、腹部下部のマンタベルト140に位置し、腹部を後ろ上に撥ね上げる力が働いており(上半身前傾)、又左手はリール120上側で竿110を下から支え、このままだと、ループ4を竿尻110−1に掛けることは出来ない。V2)それで、左手はそのままで、右手(手首にはループ4)で竿尻110−1近くを掴み(図8の状態)、下に押し、右に竿尻110−1をずらすと、竿尻110−1がマンタベルト140から外れる。V3)竿尻110−1を少し前に出し気味にし、竿110の軸線と腕の軸線とを平面視略一致させるよう、手首を捻り起こすと、ループ4が竿尻110−1を通過する(図9の状態)。V4)それで、竿尻110−1を再びマンタベルト140に戻す。此れで竿110上にループ4が通った(実際には右手首に掛かっている)。V5)そのまま、右手首に掛かったループ4を前進させ、りール120を超えて、その前に出す。以上により、ギャフ取り付けは完了した(図7の状態)。これは簡単である。
【0034】
次に、図5、図7,図10、図11を参照しながら、「大物取り込みシステムに於けるギャフ1の落とし込み、及びギャフ掛け」に関して述べる。以下に、ギャフセットの竿への取り付け完了後の落とし込み及びギャフ掛けについて詳述する。此処で道具(竿及びりール)はヒラマサ竿+大型スピニングリールの組み合わせ(青物狙い)と石鯛竿又はクエ竿+大型両軸リールの組み合わせ(大型回遊魚、底物・・・アラ、クエ・・・狙い)が考えられるが、青物狙いは「簡易型大物取り込みシステム」がベストマッチであるので、そちらで述べる(スピニングリール方式と両軸リール方式とでは手順が若干異なる)。「大物取り込みシステム」は7−8キロから23―24キロ(単独の場合、二人だとその倍)の魚を対象と考えたシステムであるので、石鯛竿又はクエ竿+大型両軸リールの組み合わせで、大型回遊魚(ヒラアジ、磯マグロ等)や底物(アラ、クエ)を狙っているものとして、話を進める。この場合の手順は以下の通りである(此処では途中のファイト方式には言及しない、最終取り込み局面に於いて、前記「安定した体勢」・・・スタンディング状態・・・になっている事が前提である、・・・実際にはそれを超えた状況、方式が存在する、此れについては、後の「巨魚取り込みシステム」で言及する)。前記0033項に於いて、リール120前の竿110に道糸130ごと、ラッピングワイヤー4が巻かれたステップになった(図7の状態)。次に竿110を傾けて落す訳であるが、両軸リール120は竿110の上側に付いており、竿110上にはラインガイドが、立っている訳で、此れが落す際の障害になるので、まず、竿110及びリール120を180度回転させ、リール120を下側に向ける。次に、石鯛竿又はクエ竿は、ラバーグリップが長めに巻かれているので、その先まで、片手でラッピングワイヤー4をスライドさせる。次に、立てていた竿先を前に倒さなければならない。この時が、本システムに於いて、唯一緊張する時である(竿110の張りが少なくとも弱くなる訳であるから)。この時のやり方は大変重要である。下側に向けた事によって、リール120のハンドル120−1は左側にきているので、左手をハンドル120−1に掛け、巻き方向に力を加え、回しながら(上側・・・正常時・・・だと右側面視、時計廻り、下側だと、左側面視、時計廻り、即ち逆)、竿先を下げる。此れで、弛みが生じてバレが発生するということはない。堤防で高さ8メートルだとすると、腰位置1メートルで計9メートル、竿先を3メートル下に下げるとしても(実際には3メートルも下げなくても、ギャフは重みがあるので落ちる)、魚との高度差は6メートルあり、5メートルの磯でやっていたとしても高度差は3メートルあるから、慣れれば、不安を感じることもない。ワイヤー4が竿先を通過したら(通常3−4秒で通過)、再び竿先を立てる。此れで、ギャフ1は自動的に魚の口元に到達する。ギャフ1を口元に到達させた後、ロープ5aを片手(通常右手)で持って、肘を支点に、鯛のテンヤ釣りをする要領(ダンベルを上下するようなやり方・・・本ダブルギャフ1は最適モデルで300グラム程度)で、手先を上下させる(図10の状態)。ギャフ1の重みがロープ5aに掛かっている状態とライン(=ハリス130−1)に掛かっている状態とは、重みが異なるから、目視確認しなくても、感覚的に、ギャフ1の状況が識別できる。ロープ5aだからコントロールは出来ないが、程無くズシリと重みが掛かる。これは針先がフッキングした証拠だから、そしたら力一杯ロープ5aを引っ張り上げてやると、ガシリとギャフ1が食い込み、引き上げOKとなる(図11の状態)。後は引き上げるだけである。この引き上げ時に、本発明の第一の工夫(二本フックの間隔を鋭角・・・50度から55度・・・とした事と、針先を正面視及び平面視のいずれに於いても軸線に対して内側に向けた事、0030項に詳述)が効果を発揮して、魚が比較的にスムーズに上がってくる事になる。
【実施例3】
【0035】
図12を参照しながら、「簡易型大物取り込みシステム」に関して説明する。この「簡易型大物取り込みシステム」は、本発明の大物用落し込みダブルギャフ1と、その一端側71を前記大物用落し込みダブルギャフ1に掛けられ、実質的に巻き体(ガイド)としての機能を果たす、柔軟性を有するループ体7と、前記ループ体に掛けられたロープ5bとを含んで構成されるシステムで、0032項に記載の「大物取り込みシステム」を簡易化して、機動性を高め、特に動きの激しいヒラマサ等の青物などに対応する為のシステムである。ループ体7は5ф乃至6фのナイロンシュリンゲの両端をフィシャーマン結び73等によって結んで、ループ(輪)にした物で、長さは、狙う魚の大きさに合わせる。仮に5キロから10キロのヒラマサを狙っているとすれば、引っ張った状態での一端部71から他端部72までの長さは34−5cmが適当である。一端部71をダブルギャフ1のリング13に通して、他端部側72を一端部側71中に潜らせ、引っ張ると、長さ約30cmのループ7ができる(長さには制限ないが、短さには制限あり、即ち、青物に使用される大型スピニングリール又は中型両軸リールを越えられる、通過できる長さが最低必要である)。この時、一端側71は、二本のフック12先端を結んだ線を前とした場合、背側(後ろ側)からリング13に通す。又、前記フィシャーマン結び73の結び目は、真他端に位置させないで、背側からシュリンゲ7を見た場合、真他端から少し左下あたりに位置させる。又ロープ5bの一端をこのループ体(シュリンゲ)7に繋ぐが、固定しないで、プーリン結び5b2等を利用して、ループ5b1を作り、ループ体(シュリンゲ)7内を遊動できるようにする。この場合のロープ5bの他端はループを作ってカラビナを掛けておく(ヒラマサは動きが激しく、釣り人も、上で動き、ハーケン等には通常固定しない、クーラー等があればそれに掛けておいてもよいが)。ライフジャケットやマンタベルトの紐等に掛けておいてもよいが、その場合、ギャフ1の取り付けが済んだら、落す前に必ず、竿尻近くの尻手リング(石鯛竿有り、ヒラマサ竿無し、・・・ヒラマサ竿だと、細紐で竿尻近くに小さなループを作りつけておくのが一番良い)か、竿を支える手指に移さないと危険である(そうしないと失敗した場合、ギャフロープ5bで体を魚に引っ張られ、バランスを崩す可能性がある・・・ギャフロープ5bと体とは絶対に繋がないことが前提)。ロープ5bは、材質はナイロン又はポリプロピレンの編みロープで、最適モデルで、太さ6фで、長さ約15mである(長さも太さもいくらでも可能である)。ループ体7に軟性、繊維系素材(ナイロンシュリンゲ)を使用した本図12が簡易型大物取り込みシステムの基本タイプとなる。
取り付けのムーブは、もうすでにループ7が出来ているので、基本的に0033項「大物取り込みシステムに於けるギャフ取り付けの全ムーブ」の後段の「バリエーションV」と同じである。1)「安定した体勢」から、腰を下げ、ループ7を右手で掬い取り、そのまま右手首に掛ける(この時シュリンゲ・・・ループ7は背側から手首を入れる、其れにより二本のフックが前側、即ち魚側を向く)。この時竿尻は、腹部下部のマンタベルトに位置し、腹部を後ろ上に撥ね上げる力が働いており(上半身前傾)、又左手はリール上で竿を下から支え、このままだと、ループ7を竿尻に掛けることは出来ない。2)それで、左手はそのままで、右手(手首にはループ7)で竿尻近くを掴み(下に押す力)、右に竿尻をずらして、軸線を平面視略一致させるよう、手首を捻じり起こすと、ループ7が竿尻を通過し、竿上に位置する。3)それで、竿尻を再びマンタベルトに戻す。此れで竿上にループ7が通った(実際には右手首に掛かっている)。4)そのまま、右手首に掛かったループ7を前進させ、りールを超えて、その前に出す。此れで、取り付けは完了した。以下は落とし込みである。ヒラマサの場合は、リールは両軸リール及び大型スピニングリールの両方が考えられるが、一般的にはスピニングのほうが多い。両軸の場合は、竿及びリールを引っくり返す動作が入るが、これは0034項「大物取り込みシステムに於けるギャフの落とし込み、及びギャフ掛け」に於いて詳しく述べており、其れと同じであるので、此処での説明は省略する。スピニングの場合であるとして、話を進める。5)此処で、ロープ5bの他端のカラビナ(図示略)をボディ周りに掛けておいた場合に、それを尻手リング(石鯛竿の場合)か、ヒラマサ竿の場合だと左手指にカラビナを必ず移す(ギャフ掛けを行う前にそうしないと危険)。6)スピニングリールだとラインガイドは下側を向いているから、ギャフ1を落すのに何の障害もないので、竿先を下向けて、ギャフ1をそのまま落す。当然の事として、リールのハンドルを巻きながら竿先を下げる。後の全ムーブは0034項「大物取り込みシステムに於けるギャフの落とし込み、及びギャフ掛け」に詳述した内容と全く同じであるので、此処での説明は省略する。
【実施例4】
【0036】
図13を参照しながら、「簡易型大物取り込みシステム」の第一の変形タイプ(Va)に付いて述べる。図12はループ体7に軟性、繊維系素材(ナイロンシュリンゲ)を使用していた。此れに対して、本図13はループ体7Vaに硬性、金属性素材(ステンレスワイヤー)を使用したシステムであり、その両端をギャフ1のリング13に巻いてスリーブ止めにして作成する。簡易型大物取り込みシステムは動きの激しい青物(主としてヒラマサ)をターゲットとして、システムを簡易化して機動性を高めた物である。青物釣りでは遠投カゴを浮きの下に使用することが多く(若しくは一体型)、此のカゴ(ナイロンカゴとステンレスカゴの2タイプ有り)がループ体の通過の際の障害になり得る。ナイロンカゴの場合は柔らかいからあまり問題にならない。問題になり得るのはステンレスカゴの場合である。途中の障害を通過するにはループ体がなるだけ円形を維持していたほうが(即ち硬い方が)有利である。又ギャフをよく振らせて効率的にフッキングさせるには柔らかい方が有利である。ナイロンシュリンゲはその硬さ、すなわち円形の程度を調整できないのに対して、ステンレスワイヤーはその硬さ、即ち、太さを用途、用法に合わせて、両方の機能を持ちうるように適切に選択し、調整する事が可能である。簡易型大物取り込みシステムに於けるループ体7Vaは、大物取り込みシステム、巨魚取り込みシステムに於ける接続体3a、3cの機能と巻き体4の機能とを同時に果たさなければならない。即ち、1)ガイドとしての機能(途中の障害物を乗り越えていく機能)、2)揺動支点からのギャフの位置を魚のフッキングを狙った適度な個所に位置させる機能、3)ギャフを良く振らせて(動かして)効率的にフッキングさせる機能、そして、4)フッキング後の荷重受け体としての機能である。硬いワイヤーを使えばカゴの通過は有利だが、振れ(=フッキングの良さ)は悪くなる。ワイヤーはその軸心に対する捻じり方向への動きが殆どできないので、その両端のループ7Va1,7Va2は大き目に作り、其れにより動き代を大きく取り、又ロープ5bVaの連結には図示の通り、大きな内部スペース(即ち大きな動き代)を有する円環状連結具(安全環付きカラビナ)2を使った方が振れの点で有利であるが、点線で描写したようにロープ5bVaを、プーリン結び等で遊動状態にして、ループ体7Vaに直接連結することも可能である。又振れ改善の為にはリング13にシャックルをセットしてスイベルを連結した上で、このスイベルにループ体7Vaの両端ループ7Va1、7Va2を連結してもよいし(図示略)、又このループ体7Vaを金属固定形リングとして、リング13から離れて別置きにし、両者間を軟性、繊維系素材で連結してもよい(図示略)。使い方としては図12の場合と同じで、背側から此のループ体7Vaに手首を通して、マンタベルトから外した竿尻を通過させる。カラビナ2は重みがあるので、リング13側に寄っており、図8、図9と同様(類似)の形となる。後は上記0035項と同じであるので説明は省略する。
【実施例5】
【0037】
図14を参照しながら、「簡易型大物取り込みシステム」の第二の変形タイプ(Vb)に付いて述べる。此処でも同様にループ体7Vbとしてワイヤーを使用する。此処では、両端のループ7Vb1、7Vb2は円環状連結具(安全環付きカラビナ)2の側に位置させ、ギャフのリング13を此のループ体7Vbに通す。この場合、ギャフは良く動く。此のループ体7Vbに背側から手首を入れればギャフ1は重みがあるのでカラビナ2側に寄り、竿尻をマンタベルトから外して通過させる。図8、図9と同様(類似)の形となる。後は図12及び図13の場合と同じである。
【実施例6】
【0038】
次に、図15を参照しながら、「巨魚取り込みシステム」に関して詳細を述べ、第三の工夫の内の負荷軽減体の使用について、説明する。「巨魚取り込みシステム」は本発明の大物用落し込みダブルギャフ1と、円環状連結具2と、前記大物用落し込みダブルギャフ1と前記円環状連結具2とを接続する、柔軟性を有する接続体3cと、その一端41は前記円環状連結具2に掛けられ、その他端42はフリーとなっていて前記円環状連結具2に掛けることが可能な巻き体4(図15は両端とも連結具2に掛けられ、閉じた状態を示す)と、前記円環状連結具2に掛けられた負荷軽減体6と、前記負荷軽減体6に通されたロープ5cとを含んで構成される。円環状連結具(安全環付きカラビナ)2は0032項、大物取り込みシステムで述べた物と同じ物である。柔軟性を有する接続体3c(シュリンゲ)も基本的には同じ物であるが、此処では、フィッシャーマン結び3c3等で、両端を結んでループにしたシュリンゲ3cを使用する。一端側3c1をダブルギャフ1のリング13に掛け、他端側3c2を安全環付きカラビナ2に掛ける。巻き体4も0032項、大物取り込みシステムで述べたのと同じラッピングワイヤー4である。此処では負荷軽減体6が新たに加わった。負荷軽減体6は具体的には滑車6を使用する。滑車6を動滑車として作動させ、負荷を半減させるものである。これは、単独で約40キロまでの魚を上げられる事を意味し(実際は表面状態、摩擦抵抗による)、これは実釣において、アラの約98%、回遊魚の約80%、をカバーするものであり、これは概ね、単独での巨魚引き上げを可能にするものである。滑車6の上部に付いているリング61を、前記安全環付きカラビナ2に掛ける。この滑車6にロープ5cを通し、滑車6がロープ5cの真ん中に位置するようにする。両端は夫々ループにして、リス(細い割れ目、隙間)に打たれたハーケン等の支点に掛けられたシュリンゲにセットされたカラビナに掛けておく(図示略)。材質はナイロン又はポリプロピレンの編みロープ5cで、最適モデルで、太さ8ф−10фで、長さ約30mである(長さも太さもいくらでも可能である)。滑車6で二つ折りにして、ダブルで使うので、最適モデルの場合で、高さ15m、実高距約14メートルまで使える。安全環付きカラビナ2内の位置は、手前側から、滑車6、シュリンゲ3c、そしてゲートの固定ピン側にラッピングワイヤー4の一端のループ41(他端42はフリー)となる(図15は両端とも閉じた状態を示している)。此処ではロープ5cの扱い、事前準備が特に大事で、キンクが起きない様、十分に扱いて伸ばした上で、又縺れない様にハーケン側が下に位置し、ギャフ1側が上に位置するように配慮して置く。ロープ5cは、撚りロープは特にキンクしやすいので、滑車6使用の本「巨魚取り込みシステム」では、編みロープ5cである事が不可欠であるが、編みロープであっても、キンクする。ロープは通常ループ(輪)にして、持ち運ぶ。このループにする時一回巻くごとに、一回捻ってしまっているのである(捻るつもりが無くともそうなる)。そのまま、両端を持って引き伸ばせば、ロープ内に多数の捩れが存在する事になる。一端側から扱いて他端まで、伸ばし、今度は他端側から一端側まで扱いて伸ばし、この作業を2−3回繰り返す。滑車6をロープ5c中央に持ってきた後、今度は滑車6側(ロープ中央側)から、両端側に二本一緒に扱いて伸ばす。その上で両端部をループにして、前記ハーケン側のカラビナに掛ける。此れで、キンクは完全にとれた。ロープ5cをダブル状態で、縺れない様にハーケン側が下に位置し、ギャフ1側が上に位置するように配慮して置く。此れにより、事前準備が完了した。この後のラッピングワイヤー4の取り付け、落とし込みのムーブは、スタンディング(前記安定した姿勢)からの取り込みであれば、0033−0034項に述べた大物取り込みシステムの其れと、基本的に同じである(滑車6が加わってロープ5cがダブルになっただけである)ので、単独で其れが可能なことは既に説明されている。しかし、此れは巨魚取り込みシステムであり、巨魚をターゲットにした物である。0016項の「巨魚ファイトの現状」に付いて、で述べたように、最終局面において単純にスタンディングになっているとは限らない。本発明の目的とするところは0020項に於いて述べたように、単独での、高場からの大物、巨魚の取り込みである。取り込みはその前のファイトと密接に関連したものになる。以後、中硬竿(石鯛竿クラス)+尻餅ファイト→スタンディング取り込み(竿先下げてのギャフ落し込み)ではなく、剛力ファイト(アラ竿+竿受け全負荷受け)→置き竿取り込みへの本巨魚取り込みシステムの適用について話を進める。
【0039】
図15、図16及び図20(一部参考)を参照しながら、「巨魚取り込みシステム」の全体の使用状況について説明を行う。図16は本発明の完全置き竿釣法(後に詳述)に適用された巨魚取り込みシステムの全体の使用状況を示した説明図であり、これが基本モデル(最もシンプルな使用モデル)である。本巨魚取り込みシステムの使用方法には、この基本モデルの他に、三つのバリエーション(途中休み可能モデル、休み休みモデル、休み休み変形モデル)と、其の応用版としての超巨魚チャレンジモデルがある。これ等に関しては後で詳述する。此処では基本モデルを詳述する。図20は巨魚取り込みシステムの途中休み可能モデルでの魚引き上げのキーポイントを示した説明図であるが、この途中休み可能モデル(図20)は基本モデル(図16)にユマール170とシュリンゲ150dが加わっただけであるので、この図20から170と150dを外したものが図16の上側(足元側)の詳細図と見ることが出来る(下側、魚側=ギャフセット、図15は超巨魚チャレンジモデルを除いて全モデル同じ、又超巨魚チャレンジモデルは滑車が一車から二車に変わり、ロープが四重になる)。先ず、釣り人は、安全性確保の為に、セルフビレイ(自己確保=万一に備えて、自分の体を落ちないよう固定すること)を取っている。腰の周りにシュリンゲを巻き(=腰紐)、此れにカラビナA、10aを掛け、カラビナ10aからはシュリンゲ160aが伸び、これはカラビナB、10bに接続されている。カラビナB,10bからは、シュリンゲ160b及び160cが伸び、160bはリス(細い割れ目、接合部)Bに打たれたハーケンA、9aに掛けられ、160cはリスCに打たれたハーケンB,9bに掛けられている。ハーケン9a及び9bは相互にバックアップの役目を果たす。又シュリンゲ160aは釣り人が転んでも、堤防角を越えない長さに事前調整されている。以上により、体に対して二重の安全策が取られている。次に、道具及び魚荷重ラインであるが、竿尻110−2にシュリンゲが巻かれ、これが、リスAに打たれたハーケンD、9dに掛けられたカラビナD、10dに掛けられている。カラビナ10dにはシュリンゲ150aの一端が掛けられ、此の他端はカラビナC,10cに掛けられており、カラビナ10cからはシュリンゲ150bが伸び、これはリスDに打たれたハーケンC,9cに掛けられている。シュリンゲ150a及び150bは弛まない様に長さ調節されている。即ち、ハーケン9cは同9dに対して、バックアップの役目を果たす。また、カラビナ10dにはシュリンゲ150cが掛けられ、これにはカラビナE、10eが掛けられ、このカラビナ10eにロープ5cの両端のループ5c1、5c2が掛けられている。即ち、ロープ5cは中間に滑車6を介してギャフセット(図15)が取り付けられた状態で巨大なループを形づくり、ギャフセットはラッピングワイヤー4により、ラインに掛かった状態になっている。又、カラビナ10eにはシュリンゲ150eが掛けられ、これはリスAに打たれたハーケンE,9eに掛けられたカラビナF,10fに掛けられている。カラビナF,10fは、リスAに打たれたハーケンF、9fに掛けられたカラビナG,10gと共に、前受け(枕)180aをシュリンゲで固定するのに使用されている。
此処で、ハーケンについて補足説明を行うと、「ハーケンは二本並べて、同じリスに打つな」(二本打つとどちらも甘くなって効かなくなる)ということが基本原則になっている。自然界の岩に対しては、リスは特定の岩(例えば、花崗岩・・・スラブ、一枚岩が発達しやすく、その結果リスが少ない)を除いて、いくらでもあるので、ハーケンを打つのに苦労することはないし、又ハーケン以外の固定方法も可能であるので、通常困ることはない。此処ではリスAにハーケン9d、9e、9fと三本続けて打たれており、問題ではあるが、致し方ない。人工構造物である堤防ではドリルで穴を開けてボルトを打つことが、禁じられている(中にはそれをやってしまう人もいるが)し、剛竿(=アラ竿)を使って堤防で剛力ファイトを行う(しかも単独で)となると、ハーケンで其れをやるしかなく、ハーケンが打てる場所というのは、ブロックとブロックの接合部(リス)しかなく、又ハーケンは竿尻110−2固定に一本、前受け(枕)180a固定に二本必要であるので、三本必要で、一本のリスにハーケン3本打つしかない。此処(図20)で最も抜ける危険が高いのはハーケンD,9dである。ハーケンは打たれた方向に正反対の方向への力に対して耐力が弱く、この場合、魚が掛かると、梃子の原理で竿尻110−2を撥ね上げる訳であるから、ハーケンD,9dが抜ける危険は充分ある(特に最初の一撃で)。魚が掛かった場合、前受け(枕)180aには主として、下方向に押す力が加わり、一部分力が前側に掛かる。これはハーケン9eを前に引く力となって作用し、この場合のハーケン9eの耐力も充分とはいえない。魚が横走りした場合は、ハーケン9e及びハーケン9fに、軸に対して横方向の力が作用する事になるが、ハーケンは自身の軸に対して、直角方向の力に対しては比較的耐力があるので、此れに対しては比較的、効くといってよい。以上の事を充分念頭に置いたうえで、この三本のハーケンを打ち込む必要がある。即ち、ハーケンD,9dを最も効かせるべきであり、三本に対して増し打ちを行いながら、最後の打ち込みを9dに行うべきである。ハーケンが効いているか、効いていないかはその音で判別できる。効いていれば、高い金属音がし、効いていなければ、鈍い音がする。そして、ハーケン9dに対するバックアップとしての機能を果たすハーケンC,9cは別のリスDに打たれており、前記三本のハーケンとは無関係であり、これ等とは距離があり(図16では堤防角とリスB及びリスDのラインとの距離は其れほどでもないようなイメージで書いたが、実際にはもっとある、10mとかそれ以上、・・・ブロックは大変大きい)、ハーケンD,9dが抜けて、荷重がこのハーケンC、9cに掛かった場合(シュリンゲ150aは弛み無くピンと張られている)の荷重の方向は横方向であり、ハーケンはその軸に対して直角方向の荷重に対して、耐力があるので、このハーケンC、9cが抜ける危険性は・・・打ち込んだ時点で効いていれば(=高い金属音)・・・極めて低い。万が一、其れも抜けてしまった場合には、シュリンゲ150eを介してカラビナ10fとつながり、其れは又シュリンゲを介してカラビナ10gと繋がっているので、これ等がバックアップとなるので、四本のハーケン9c〜9f全てが抜けない限り、道具は落下しない。以上の特性を充分理解したうえで、釣り人は、竿セット状態で、リールのドラッグを締め切ることはせず、適度に調整し、魚がヒットした後、通常(右利きの人であれば)右足で、竿尻を踏みつけ、自己の体重の三分の二程を右足にかけながら、皮手袋をした右手でドラッグを締めていき、其れによりブレーキを掛け続け、走りが止まったら、皮手袋をした左手で糸抜きをしながら、右手でリールを巻き、魚との距離を詰める(この時、全荷重は前受け(枕)180aで受ける。以上のファイトにより、魚が竿下に寄った。
この置き竿の前受け(枕)180aの先側に本巨魚取り込みシステム(図15)のラッピングワイヤー4を巻いてギャフ1を落とし込んでやれば、フッキングの後に、図16が示す、魚引き上げの状態になるのであるが、竿尻110−2はシュリンゲを介してカラビナD,10dに固定されており、竿先は上側を向いている。スタンディングからの落とし込みと違って、此処でどうやってギャフ1を落とすのかということが問題になってくる。カラビナD,10dからシュリンゲを外して、竿を傾ければギャフ1を落とす事はできるが、大物、巨魚の強い力が跳ね上げる力として、竿尻110−2には働いており、そういう事をやっていたのでは、釣り人は安定性(=取り込みにおけるイニシアチブを維持すること)を維持できない。竿尻110−2をカラビナD,10dから外さないで、其れにより、単独であっても、この安定性を完全に維持したまま、ギャフ1を取り付け、落とし込み、取り込みに至ることを、置き竿であっても、可能にする、0029項記載の本発明の第四の工夫に関して、次に述べる。
【実施例7】
【0040】
図15、図16,図17、図18、図19、図20(一部参考)を参照しながら、此処では、0029項記載の第四の工夫である、プッシャー兼プーラー8を開発し、本発明のダブルギャフ1(ベストマッチは巨魚取り込みシステム、図15)との併用により、完全置き竿釣法を可能にした事について述べる。本発明の目的とするところは0020項に於いて述べたように、単独での、高場からの大物、巨魚の取り込みである。本発明はスタンディング取り込みであれ、置き竿取り込みであれ、単独による巨魚取り込みを可能にした。「巨魚取り込みシステム」図15のスタンディング状態からのギャフの取り付け、落とし込み、ギャフ掛けは「大物取り込みシステム」(図5)の其れ(0033項、0034項に詳述)と基本的に同じである(シングルロープ5aが滑車6付のダブルロープ5cに変わり、シュリンゲがシングル3aからダブル3cに変わっただけである)ので、此処では説明を省略する(単独で其れが可能である事は既に説明されている)。そして、巨魚釣りに於ける「置き竿釣法」での取り込みに付いて、以下に詳述する。従来法による置き竿釣法(=剛力ファイト)では、0016項に詳述したように、途中のファイトスタイル(肩入れ又は置き竿のまま、竿受けにて全荷重受け)の如何に関わらず、最終取り込みに於いては、竿を立てなければ、次のギャフ掛けに移行できなかった。この事が致命的ネックとなり、単独での大物、巨魚釣りを事実上不可能なものにしてきた。
本発明はこの問題を解決した。しかも、独りでありながら、二人でやる以上の安定性、確実性、そして必要とされる力の少なさ、でこれを実現した。「大物、巨魚とのファイト及び取り込み及び大型外道(エイ、サメ等)の際に必要となる、道糸先端でのラインカット処理、即ち、仕掛け投入後の全プロセスを、竿を竿受けに置いたまま、一切起こす事無く、一人で完遂できる、究極の大物単独釣法」を、「完全置き竿釣法」と呼ぶ事にする。本発明はこの「完全置き竿釣法」を完遂できる様に、重要な発明を行った。プッシャー兼プーラー8(図17)を開発した。このプッシャー兼プーラー8を「巨魚取り込みシステム」(図15)に適用することにより、「完全置き竿釣法」が完成する。此れが完成するためには落とし込みダブルギャフ1とプッシャー兼プーラー8の併用が不可欠であり、両者は不可分の存在である。この完全置き竿釣法が実現することにより、剛力ファイト(置き竿ファイト)→置き竿取り込みにおいて、0020項に記載の本発明の目的(単独での、高場からの大物、巨魚の取り込み)が成就する(既に、中硬竿ファイト→手持ち=尻餅ファイト→スタンディング取り込みでは、このプッシャー兼プーラー8無しで、既に目的は成就している)。
このプッシャー兼プーラー8は、Y字型をした金具の一端をフック型に折り戻しして、押すのと引くのと両動作できるようにして、タモの柄190の先端に取り付けられる様にしたアクセサリーである。プッシャー(Y字部)81とプーラー(フック部)82とが一体となった上側とネジが切ってある下部(基部)83とからなる。基部83のネジは、タモの柄190の先端の雌ネジ(標準インチネジ・・・ウイットネジ、1/2)に取り付けられるように、ウイットネジ、1/2の雄ネジ(1/2W−12)が切ってある。タモの柄190は4m前後の軽い、小物用のタモの柄を使用し(其れで充分)、其の先端につける。Y字部81を、ラッピングワイヤー4に当て、竿は竿受け(=前受け180a又は前立て180b)にセットしたまま、ギャフセットを竿前方に押し出す事が出来る(図18参照)。竿先は下に曲がっているので、後は勝手に落ちていく。此れにより、竿を立てたり、竿受け180a/180bから、外したりする必要はなくなる。(従来法で竿を竿受けから外したり、或いは其のまま起こしたりしたのは、相棒に道糸を取ってもらうためであり、そうしなければギャフ掛けが出来なかったからである)。本発明は、竿を竿受け180a/180bに置いたまま、ギャフ1のセット及び落とし込みを可能にした。これで、ファイト中から、取り込みまで、釣り人は事実上竿に触れる必要も無くなり、此処に「完全置き竿釣法」が完成する。完全置き竿釣法では、ファイト中は、竿受け180a/180bが魚の全荷重を受け、取り込み中は荷重の半分をハーケンD、9d/G,9gが受けることになる。しかし、此処のところを、もう少し詳しく見てみると、「ファイト中」から「取り込み中」に至るその間にギャフ掛けの局面が存在するのである。この局面に於いて従来法では、竿起こし、ライン掴み、ギャフ掛けに、持っている全エネルギー、全体力、全腕力を傾注しなければならなかった。しかし、本発明の完全置き竿釣法では、魚の全負荷を、安定していて大荷重を受けられる竿受け180a/180bが受け、竿尻110−2はハーケンD、9d(図20)又はボルト(グリップアンカー)200−1(図18)が押さえているので、釣り人には何の負荷も掛からない。釣り人は自身に何の負荷も掛かっていない状態で、しかも両手を使って、巨魚取り込みシステム(図15)を竿にセットして、タモの柄190に取り付けられたプッシャー兼プーラー8でこれを落としてやればよい。これにより、相手が巨魚であっても、釣り人は安定性を維持し、不確実性を排除して、取り込みにおけるイニシアチブを完全に保持して、事を優位に進められる。しかも、その全作業を単独でやれるので、相棒も必要ない。此れにより、置き竿(剛力ファイト=置き竿ファイト→置き竿取り込み)に於ける単独釣法が完成する。
フック部82を何に使うかを以下に説明する。近場での釣りだと、外洋でも、大物は殆どアラ(クエ)しか期待できない。外道も大物が食ってくる可能性は低い。大型回遊魚をも含めて狙うとなると、南海に行かざるを得ない。ところが南海では、自分が狙う魚以外にも、大型外道(サメやエイ等)がうようよいて、本命が食う前にこれ等がすぐに食いついてくることになる。最終的に寄せて、姿を確認するまでは、何の魚であるかは分からない訳であるから、釣り人はファイトの末に疲れ果てた後、外道の姿を確認し、ラインを切る事になる。この時、大物用ラインは高価であり、又、釣り人は狙う大物がヒットした時に備えて、リールのキャパ一杯にラインを巻き込んでおきたい訳であるから、手元(即ち、魚の口元から10m以上も手前)でラインを切るようなことは出来ない。ディープシャークという道具(道糸にセットして落し、魚の口元近くでラインを切れる)を使って、ラインを切る事になる(根掛かりのときも此れで切る)。相棒がいれば、道糸を掴んでもらって、ディープシャークをセットして落してもらって、ラインを先端できることができるのであるが、一人だと、今まで何度も述べたように、自分で道糸を掴むのが困難であり、下手をすると、本命に食わせる前に、外道相手の糸切り処理で、竿先を折ってしまって、釣りがやれないで、帰ってくる結果になりかねない。この時、プッシャー兼プーラー8のフック部82が役に立ってくれる事になる。ドラッグを少し弱めて、此れでラインを引っ掛けて掴むことができ(図19参照)、自分でディープシャークをセットして落せばよい。タモ柄190は、プッシャー兼プーラー8は其れほど力が掛からないし、長さも、アラ(クエ)竿(標準長さ4.8m、竿受けセットに1m弱要するから実際の張り出しは4mない、しかも先端は下がっている)上でギャフを押し出せばよい訳だから最長4m有れば良いので、小物用約4mで充分であり、軽いので、片手操作が充分可能である。結論として、この「プッシャー兼プーラー8」は「完全置き竿釣法」を可能にすると共に大型外道の際の単独でのライン切りも容易化する。又、フック部82は、釣法の如何に関わらず、外道の際のラインカット処理の道糸掴みに、利用することができる。こうして、本プッシャー兼プーラー8は一品二役の役目を果たすので、ファイト中に他の動作、準備ができない単独釣法の完遂に大きく資する(単独釣法では事前にすべての準備、シミュレーションが完了していなければならない)。ファイトの結果、姿を現して初めて本命か外道かの判別ができるのである。本命であればプッシャー(Y字部)81を使用してギャフ1セット(図15)を押し出し、また外道であればプーラー(フック部)82を使用して道糸を掴んで、次の動作(ディープシャークのセット、糸切り処理)に移る事になる。
【0041】
図15、図16,図17、図18、図19、図20(一部参考)を参照しながら、竿がセパレート方式の竿受けで支えられている場合における、「完全置き竿釣法」実行のための基本構成を、以下に説明する。図16及び図20は堤防での「完全置き竿釣法」の一実施例を示しており、図18及び図19は磯での同法の一実施例を示している。図16は巨魚取り込みシステムの基本モデルを示し、図20は巨魚取り込みシステムの途中休み可能モデル(後で詳述)を示しているが、この途中休み可能モデルは、基本モデル(図16)にユマール170とシュリンゲ150dが加わっただけであるので、この図20から、170と150dを取り除いたものが、図16の上側(足元側)での詳細を示すものと考えることが出来る。下側(魚側、すなわちギャフセット、図15)は全モデル同じである。図20に於いて、竿は前受け180aにセットされ、この前受け180aはハーケンE、9e及びハーケンF、9fによってシュリンゲを通して固定されている。又、竿尻110−2にはシュリンゲが巻きつけられ、これはカラビナD、10dに掛けられ、同カラビナはハーケンD、9dに掛けられている。すなわち、竿は前受け180aが支え、竿尻の浮き上がりはハーケン9dが押さえている。図18に於いて竿は前立て180bが受け、この前立てはセンターピトン180b−1により固定される。竿尻110−2は竿尻受け(ロータリーピトン)200にセットされ、それはボルト(グリップアンカー)200−1で固定されているので、竿尻の浮き上がりはグリップアンカー200−1が押さえている。既に述べた様に、完全置き竿釣法は、竿のセッティングの仕方(=竿受け等のやり方・・・其れは堤防と磯では違ってくるし、釣り人の道具立てによっても違ってくる)などではなくて、本発明の落とし込みダブルギャフ1とプッシャー兼プーラー8の駆使により、竿を起こす必要がなくて、しかも独りでギャフ掛けが可能となる、取り込み方法を主軸とした釣法である。
【0042】
図15、図16,図17、図18、図19、図20(一部参考)を参照しながら、取り付け、落とし込み、ギャフ掛けの全ムーブを以下に述べる。0038項に詳述した事前準備を完了させておく(ラッピングワイヤー4の他端42はフリー)。又、前記プッシャー兼プーラー8はタモ柄190(四メートル前後)先端にセットしておき(ネジ止め)、竿後ろ側に於いておく。竿は竿受け180a/180bに完全に支えられているので、両手が使える。全ムーブは以下の通りである。1)両手を使って、ラッピングワイヤー4を道糸ごと竿のリール上側(竿受け180a/180bより先)に巻き、他端のループ42を安全環付きカラビナ2に入れ、環を回して、ロックさせる。2)先端にプッシャー兼プーラー8の取り付いたタモ柄190を取り、Y字部81をラッピングワイヤー4に当て、ギャフセット(巨魚取り込みシステム、図15)を竿先側に押し出す(図18参照)。3)すると、竿下部は少し上向きになっているとしても、竿先側は魚の重みで、下向きになっているので、ギャフ1は自重で落ちる(竿長さはアラ竿、基本長さ4.8m)。4)すると、ギャフ1は自動的に魚の口元に到達するので、ダブルになったロープ5cを片手(通常右手)で一緒に掴んで、肘を支点に、鯛のテンヤ釣りをする要領(ダンベルを上下するようなやり方・・・本ダブルギャフは最適モデルで滑車6を含んで400−450グラム程度)で、手先を上下させる。5)すると、程無くズシリと重みが掛かる。これは針先がフッキングした証拠だから、そしたら力一杯ダブルになったロープ5cを一緒に引っ張り上げてやると、ガシリとギャフ1が食い込み、引き上げOKとなる。6)後は引き上げるだけであるが、引き上げる時は、ダブルになったロープ5cの片方(5c2側)を離し、もう一方(5c1側)だけを引き上げる。これに先立って、ロープ5cの両端は支点(正確に言えば、ハーケンD、9d/G,9gにセットされたシュリンゲにセットされたカラビナE、10e/K、10k )に掛けられているので、ロープ5cは滑車6を介してギャフセットを中間に位置させた状態で巨大なループを形づくり、ギャフセットはラッピングワイヤー4により、ラインに掛かった状態になっている(図16参照)。上記ロープ5cの一方だけを引けば、安全環付きカラビナ2にセットされた滑車6は動滑車として作動して、荷重は半分(摩擦抵抗は含めず)となるので、35キロから40キロの魚でも、一人で8メートルから10メートルの高さであっても、8ф−10фのロープ5cで、引き上げる事が出来る(当然の事として、事前に厚手の皮手袋をしておく)。此れが本発明の完全置き竿釣法に於ける、巨魚取り込みシステムの「基本モデル」である。此れで、魚は基本的に上がる。
【実施例8】
【0043】
図15、図16(一部参考)及び図20を参照しながら、完全置き竿釣法における、巨魚取り込みシステムの「途中休み可能モデル」について述べる。此処では0029項に於いて述べた、機能器具のもう一つ(一つ目は滑車、此れの応用については既に詳述した)、ストッパー170について説明し、其れの応用による「途中休み可能モデル」の実現を述べる。前述した、巨魚取り込みシステムの「基本モデル」(図16)で基本的に、大物、巨魚が上がる。しかし、高さが10mあり、魚が30−40kもあって、釣り人に経験がない場合、途中で腕力が尽きたらどうしようという不安がよぎるのも事実である。この不安を解消するのに、役立つのが、ストッパー170である。ストッパー170を組み合わせて使えば、安定性が向上し、不安感が減少する。ストッパー170とは具体的にはユマール170及びチェストアッセンダーを指す。両器具(山用品)とも通常この呼び方で呼ばれているが、敢えて日本語に直せば登高器(固定したロープを登るのに使用・・・主として荷揚げ目的)と訳される。両器具とも基本的な仕組みは同じで、内部にカム170−1が入っていて、このカム170−1はバネで一方向に押し付けられていて、ロープ5cを対向面に押し付けるようになっている。カム170−1のロープ接触面は半割りパイプ内面状(即ち、軸方向に直角方向の断面形状が凹面状)になっていて、此処に多数の小突起が設けられている。この小突起がロープ5cを反対方向に通そうとすると、ロープ5c表面に食い込んでロープ5cをブロックする。この結果、ロープ5cを一方方向には軽微負荷で通すが、逆方向には通さない。此れを利用すれば、荷重をそれにシフトできる。即ち、ストッパー170としての役目を果たさせうる。山用品として開発された両器具を此処で釣り用に応用する。両器具とも、通常は(山では)上に向かって使う(固定ロープにセットし・・・通し・・・て、自らのボディを上げる為に使う、・・・ユマール170とチェストアッセンダーの基本的な違いは前者が手で掴むように出来ているのに対して、後者はボディにセットして使うようにできている)ものであるが、此処(魚取り込み)では下に向かって使用する(荷重は下にあるので)。巨魚取り込みシステムの「基本モデル」(図16)に両ストッパーの何れかを組み合わせることにより、バリエーションが出来上がる。巨魚取り込みシステム(図15)の使用方法には、基本モデルの他に、下記三つのバリエーションがある。「途中休み可能モデル」と、「休み休みモデル」と、「休み休み変形モデル」である。此処で、ユマール170を使った、巨魚取り込みシステムの「途中休み可能モデル」について、以下に詳述する。
図20は本発明の完全置き竿釣法における、巨魚取り込みシステムの途中休み可能モデルでの魚引き上げのキーポイントを示した説明図である(図16にシュリンゲ150dとユマール170を加えた物の足元側詳細図が図20とみる事ができる)。この図20に於いて、カラビナE、10eからシュリンゲ150dが伸び、其れにユマール170が取り付けられ、ユマール170はそのカム170−1でロープ5cを噛んでいる。この図は釣り人がロープ5cから手を離して、途中休憩した状態を示している。この時、荷重はロープ5cの他方側ループ5c2と滑車6の間と、滑車6からこのユマール170経由シュリンゲ150dの間に同荷重が掛かっている。この時、ロープ5cの一方側のループ5c1とユマール170の間には荷重は掛かっていない。事前にシュリンゲ150dの長さを適度に調節した上で、ユマール170を足元に用意しておき、途中で腕が疲れてきたら、片手で荷重を維持し、もう一方の手でユマール170をロープ5cにセットすれば、ユマール170に荷重が移り、両手を離して、途中で休む事が出来る。ユマール170は完全に片手操作が可能である。カム170−1の下側(図20の姿勢だと上側)にバネ仕掛けで安全バーが立っている(カムからの意図しないロープ外れを防ぐ為)ので、ハンドル部を握った状態で、中指で安全バーを手前に引き、親指でカム170−1を手前に引けば、スペースが開くので、その状態で、片手で保持したロープ5cにセットして、前記親指と中指を開放すれば、自動的にロープ5cを噛むので、ユマール170を前進させて、弛みをとる。それで釣り人は両手をロープ5cから離すことができる(魚の高度位置はその場で維持される)。尚、図20は堤防での状況を示しているが、それは説明の為の例として図示しているのであって、本タイプは、磯/堤防の区別は問わない。
【実施例9】
【0044】
次に、図15、図20(一部参考)、と図21を参照しながら、完全置き竿釣法における、巨魚取り込みシステムの「休み休みモデル」に付いて詳しく述べる。此処では、ストッパーとして、ユマール170ではなくて、チェストアッセンダー175を使用する。此れにも同様に内部にカム175−1が仕組まれていて、ロープ5cの反対方向への通過をブロックする。図21は「休み休みモデル」の上側(足元側)の魚引き上げのキーポイントを示した図である(下側=魚側は図15で同じ)。セッティングとしては、カラビナE,10e(図20参照)に掛けられた他方側ループ5c2から伸びたロープ5cの途中にループ5c3を作り、此のループ5c3をチェストアッセンダー175の一端側穴に掛けたカラビナH、10hに掛け(事前に長さ調節をしておく)、更にその先にループ5c4を作り、此のループ5c4をチェストアッセンダー175の他端の穴に掛けたカラビナI、10iに掛ける。此のループ5c4から先は魚側ギャフセット(巨魚取り込みシステム、図15)に繋がり、其の滑車6から出てきたロープ5cをチェストアッセンダー175のカム175−1と対向部との間に通す。此のロープの元側は一方側ループ5c1となって、此れも又、カラビナE,10eに掛けられている(図20参照)。カム175−1はロープ5cを一方側(図21の姿勢で上方向)には通すが、他方側(同下方向)には通さない。チェストアッセンダー175には魚の荷重が懸かっているので、下方向に強く引っ張られ、安定している。ロープ5cの一方側(5c1側)を掴んで引っ張れば、荷重半分(摩擦抵抗、通過抵抗含まず)の力で、ロープ5cは引き上げられ、力を緩めれば、カム175−1がロープ5cを噛んで、ロープ5cの下方向への動きはブロックされ、全荷重がチェストアッセンダー175にシフトし、魚はその高度で保持される。此れにより、引っ張れば引っ張った分だけ上がり、手を離せばその場でとまる、「休み休みモデル」が完成する。カラビナE,10e側に付いては、図20を参考に見ることができる。すなわち、図20からシュリンゲ150dとユマール170とを外して、代わりにチェストアッセンダー175を図21の通り、取り付けたものが此の「休み休みモデル」である。尚、此の「休み休みモデル」は堤防では略完璧に機能するが、あまり磯で使うのには向いていない。堤防だと、角から下が完全垂直であるので、何も問題ないが、磯だと、そういう訳にはいかない。磯で、足元より下先に出っ張りが有る様な地形で、チェストアッセンダー175がその手前に位置するという、悪いケースを考えてみると、チェストアッセンダー175は荷重が懸かっていて、岩表面に張り付くから、引き側のロープ5cが、前記出っ張りとチェストアッセンダー175の間で摩擦抵抗を受けることになるので、磯にはあまり向かない。
【実施例10】
【0045】
次に図15、図20(一部参考)、と図22を参照しながら、完全置き竿釣法における、巨魚取り込みシステムの「休み休み変形モデル」について述べる。此処でも同じくチェストアッセンダー175を使用するが、前項の「休み休みモデル」と違って、ロープ5cをチェストアッセンダー175に固定する事はせず、此処では、重り176を取り付けたチェストアッセンダー175を、カラビナE,10eから伸ばしたシュリンゲ150dにぶら下げ、此れにロープ5cの滑車6からの出側(一方側)5cを通す。ロープ5cは両端5c1,5c2とも、カラビナE、10eに掛けられている。即ち、カラビナE,10eに掛けられた、他方側ループ5c2から伸びたロープ5cは、ギャフセット(巨魚取り込みシステム、図15)の滑車6に入り、滑車6から出たロープ5cはチェストアッセンダー175のカム部に入り、此処から出たロープ5cの末端(=一方側ループ5c1)は又カラビナE、10eに戻る。釣り人が、チェストアッセンダー175から出たロープ5c(一方側ループ5c1側)を引けば、荷重半分(摩擦抵抗、通過抵抗含まず)の力でロープ5cは上がり、チェストアッセンダー175は重り176の重さでスライドし、その場に留まり、手を離せばカムがロープ5cを噛んでブロックし、荷重(魚の重みの半分)がチェストアッセンダー175(=シュリンゲ150d)にシフトし、魚はその高度で保持される。重り176は150号から200号もあれば十分である。カラビナE,10e側に付いては、図20を参考に見ることができる。すなわち、図20からユマール170を外して、代わりにチェストアッセンダー175を図22の通り、取り付けたものが此の「休み休み変形モデル」である。此れにより、前項「休み休みモデル」と同様に、引っ張れば引っ張った分だけ魚は上がり、手を離せばその場でとまる。此の「休み休み変形モデル」の利点は、「休み休みモデル」がチェストアッセンダー175の下迄(正確に言えば5c4下迄)しか滑車6が機能しないのに対して、堤防角までフルに滑車6を機能させられる点にある(それは僅かな距離だが単独巨魚引き上げで最も苦労するのが角の乗り越である)。又、此の「休み休み変形モデル」はチェストアッセンダー175が、「休み休みモデル」の場合と違って、引いている状態では、表面に張り付かないので、途中休み可能モデル(図20)と同様、磯で使うのにも、何も問題が無い。又、本「休み休み変形モデル」に於けるチェストアッセンダー175の代わりに前記ユマール170を代用することも可能である。
【実施例11】
【0046】
図15(一部参考)、図20(一部参考)、と図23を参照しながら、80キロから100キロの超巨魚に単独でチャレンジすることを想定した、本発明の完全置き竿釣法における、巨魚取り込みシステムを応用した「超巨魚チャレンジモデル」に付いて述べる。図23は「超巨魚チャレンジモデル」の上側(足元側)の魚引き上げのキーポイントを示した説明図である。下側(=魚側)に関して、先ず、ギャフセット(図15)の滑車6(シングル)を二列滑車(二車)220に変え(図示略)、ロープ5cを四重にする(他は同じ)。チェストアッセンダー175の他端側の穴に掛けたカラビナJ、10jにも滑車210(シングル)を掛け、カラビナE、10eに掛けられた他方側ループ5c2から伸びたロープ5cをギャフセットの二列滑車220の一列目に入れ、そこから出たロープ5cをチェストアッセンダー175に掛けられたカラビナJ、10jに掛けられた滑車210に入れ、其処から出たロープ5cを更に二列滑車220の二列目に入れ、其処から出たロープ5cをチェストアッセンダー175のカム部を通し、其の先端(元側)の一方側ループ5c1もカラビナE、10eに掛ける。チェストアッセンダー175はシュリンゲ150dでカラビナE、10eに掛けられている。カラビナE,10e側に付いては、図20を参考に見ることができる。すなわち、図20からユマール170を外して、代わりに、滑車210をカラビナJ、10jを介して取り付けたチェストアッセンダー175を、図23の通り取り付けたものが此の「超巨魚チャレンジモデル」である。ロープ5cは四重となるので、堤防の高さが10mとして、57−8m以上の長さが必要である。此処において、上記したシステム以外に、滑車を組み付け、ロープをダブルとしたフライングギャフを2セットから3セット事前に準備し、ユマールも同数準備し、ハーケンもできれば別のリスにそれぞれ打ち込み、其処から伸びた各シュリンゲ(その先端にユマール)の長さ調節を適度にしておき(ユマールが適度の位置にくるように)、手鈎を用意する等の事前準備を全て完了しておく(フライングギャフのロープの他端側はカラビナ、シュリンゲを介して支点・・・ハーケンに固定、図示略)。これらの準備を整えた上で、以下に述べることは推論であり、シミュレーションである(これはチャレンジである)。魚の重量が80Kとして80÷4=20K、100Kとして100÷4=25K(摩擦抵抗、通過抵抗を含めず)であるから、魚は少なくとも堤防角下迄上るだろう(疲れたらいくらでも手を離して休める訳であるから)。此の時、魚の鰓蓋下から胴体上部にギャフ1が掛かっていたとしても、此れだけ魚が大きいと、口はすでに堤防の高さを越えている筈である。問題は堤防の角を魚が越えられるかどうかである。それで一発目のフライングギャフ(図示略)を尾側に打ち込み、荷重の主部をメインギャフ(=ダブルギャフ1)で保持した状態で、尾側のフライングギャフをできるだけ引上げ、魚を横向きに寝かし、其処で、ユマールで一発目のフライングギャフのロープを固定、維持する。二発目のフライングギャフ(図示略)を口側近くに打ち込み、其れを出来るだけ引いて、同じくユマールでロープを固定、維持する。更に、必要、状況に応じて、三発目のフライングギャフ(図示略)を胴体中央に打ち込み、同じく引いてユマールでロープを固定、維持する。此れで、三個のフライングギャフと一個のメインギャフ(ダブルギャフ1)の計四個のギャフが打たれたことになる。魚は比較的に柔らかく(=適度に硬く)、100Kを三個のフライングギャフで荷重均等分散すれば、100÷3=約33.3Kとなる(このうちの半分はハーケンで受け、釣り人が引く力は約16.7K)が、荷重は均等ではなく、魚は適度に柔らかいから、三個のフライングギャフのうち、最も荷重の少ないギャフのロープを、引くことができ、摩擦抵抗、通過抵抗を含めないと、16.7K以上でどれかのロープを引く事ができる理屈になる(引けたらそこでユマール固定・・・ユマール位置は全てのことを考慮して、事前調整しておく、又タイブロックやプルージックの技術を駆使すれば、支点の変更も可能)。成人男子の腰を入れて引く力は、短時間は40−50K十分可能であるので、堤防角を越えられる可能性は十分ある。80Kでフライングギャフ二個、100Kだと三個で可能と推論する。尚、堤防では問題なく使える此の「超巨魚チャレンジモデル」ではあるが、磯には向かない。チェストアッセンダー175が表面に張り付くし、四本のロープ全てが岩表面との間で摩擦抵抗を受けないとは、磯では考えられないからである。
【実施例12】
【0047】
図5(一部参考)、図12(一部参考)、図13(一部参考)、図14(一部参考)、及び図15(一部参考)を参照しながら、「ギャフ用大物補助システム」、「ギャフ用簡易型補助システム」、「ギャフ用巨魚補助システム」に付いて述べる。ギャフ用大物補助システムとは、図5(大物取り込みシステム)のうち、大物用落とし込みダブルギャフ1を除く他の全ての部材によって構成されるシステムを指し、ギャフ用簡易型補助システムとは、図12、図13、及び図14(何れも簡易型大物取り込みシステム)のうち、其々において大物用落とし込みダブルギャフ1を除く他の全ての部材によって構成されるシステムを指し、ギャフ用巨魚補助システムとは、図15(巨魚取り込みシステム)のうち、大物用落とし込みダブルギャフ1を除く他の全ての部材によって構成されるシステムを指すものである。これらの細かい内容、使用方法に関しては、既に説明されている。
【産業上の利用可能性】
【0048】
寄せた大魚を、十分離れた場所から取り込む事が出来るので、釣り人は釣り場の形状、水面からの高さ等の現場の状況の制約を受けずに釣りを行う事ができ、又、自己の安全性を維持して取り込みを行うことができ、更に、単独でできるので、適用範囲の拡大、利便性の向上、安全性の確保、単独大物釣行の可能化、大物釣行の低経費化及び一般化を促進するポテンシャルを秘めており、釣り産業で利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 大物用落とし込みダブルギャフ
11 軸
12 フック
13 リング
14 カエシ
2 円環状連結具(安全環付きカラビナ)
21 開閉部(ゲート)
22 一端側
23 固定ピン
24 他端側(開口側)
25 安全環
3a 接続体(ナイロンシュリンゲ)
3a1 一端(ループ)
3a2 他端(ループ)
3a3 プーリン結び
3c 接続体(ナイロンシュリンゲ)
3c1 一端側
3c2 他端側
3c3 フィシャーマン結び
4 巻き体(ラッピングワイヤー)
41 一端側のループ
42 他端側のループ
43 一端側のスリーブ
44 他端側のスリーブ
5a ロープ
5a1 一端(ループ)
5b ロープ
5b1 一端(ループ)
5b2 プーリン結び
5bVa ロープ
5bVb ロープ
5c ロープ
5c1 一方側ループ
5c2 他方側ループ
5c3 アッセンダー上側ループ
5c4 アッセンダー下側ループ
6 負荷軽減体(滑車)
61 リング
7 ループ体(ナイロンシュルンゲ)
71 一端部
72 他端部
73 フィシャーマン結び
7Va ループ体(ステンレスワイヤー)
7Va1 一端のループ
7Va2 他端のループ
7Vb ループ体(ステンレスワイヤー)
7Vb1 一端のループ
7Vb2 他端のループ
8 プッシャー兼プーラー
81 プッシャー(Y字部)
82 プーラー(フック部)
83 基部
9a〜9g ハーケンA〜ハーケンG
10a〜10k カラビナA〜カラビナK
110 竿
110−1 竿尻
110−2 竿尻
120 リール
120−1 ハンドル
130 道糸
130−1 ハリス
140 マンタベルト
150a〜150e シュリンゲa〜シュリンゲe
160a〜160c セルフビレイ用シュリンゲa〜セルフビレイ用シュリンゲc
170 ストッパー(ユマール)
170−1 カム
175 ストッパー(チェストアッセンダー)
175−1 カム
176 重り
180a 竿受け(前受け、枕)
180b 竿受け(前立て)
180b−1 センターピトン
190 タモ柄
200 竿尻受け(ロータリーピトン)
200−1 グリップアンカー
210 滑車
220 二列滑車(二車)
A−A´,B−B´,C−C´ フックの針先の外接線とその延長線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープを使ってギャフ掛けを行うロープギャフによるギャフ掛け方法において、ギャフに対するガイドとしての機能を果たす柔軟性の巻き体を、道糸ごと竿に巻くか、或いは巻き体に替わる柔軟性のループ体を竿尻から通してリールの前に持ってきて、それによりギャフを、竿そしてライン伝いに落とし込み、魚の口元に到達させた後、ロープを上下動させることと魚自体の暴れを利用して、口に掛かっている鈎に繋がっているライン上の口元に近い箇所を揺動支点として、ギャフを魚体周りに振ってやり、其れによって、魚体にフッキングさせることを特徴とするギャフ掛け方法。
【請求項2】
上記請求項1に記載のギャフ掛け方法の実施に使用するロープギャフ用補助システムであり、脱落防止機能付き円環状連結具と、ギャフと前記円環状連結具とを接続する柔軟性を有する接続体と、その一端は前記円環状連結具に掛けられ、その他端はフリーとなっていて前記円環状連結具に掛けることが可能な柔軟性の巻き体と、その一端を前記円環状連結具に掛けられたロープとを含んで構成されるギャフ用大物補助システムか、ギャフの一端側に連設され、リールを越えられる寸法を有する柔軟性のループ体と、同ループ体に脱落防止機能付き円環状連結具を介して連結されるか又は介さないで連結されたロープとを含んで構成されるギャフ用簡易型補助システムか、脱落防止機能付き円環状連結具と、ギャフと前記円環状連結具とを接続する柔軟性を有する接続体と、その一端は前記円環状連結具に掛けられ、その他端はフリーとなっていて前記円環状連結具に掛けることが可能な柔軟性の巻き体と、前記円環状連結具に掛けられた負荷軽減体と、同負荷軽減体に通されたロープとを含んで構成されるギャフ用巨魚補助システムかの何れかから構成された、ロープギャフ用補助システム。
【請求項3】
上記請求項1に記載のギャフ掛け方法の実施に使用するアクセサリーであり、軸部の反対側にU字型プーシャー部と同プッシャー部の一端側に位置するフック型のプーラー部とを一体成形した構造をなし、置き竿適用に於いて、前記軸部をタモの柄に取り付けて、前記プッシャー部で、ギャフに取り付けた上記請求項2に記載のロープギャフ用補助システムを押し出すのに使用するプッシャー兼プーラー

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate


【公開番号】特開2013−34471(P2013−34471A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−46650(P2012−46650)
【出願日】平成24年3月2日(2012.3.2)
【分割の表示】特願2011−170926(P2011−170926)の分割
【原出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【特許番号】特許第4988970号(P4988970)
【特許公報発行日】平成24年8月1日(2012.8.1)
【出願人】(710010630)
【Fターム(参考)】