説明

大腸癌検出用マーカーおよびそれを用いた大腸癌検出方法

【課題】大腸癌を早期かつ確実に検出することのできる大腸癌検出用マーカー、およびそれを用いた大腸癌検出方法などの手段を提供すること。
【解決手段】被検体から採取した体液試料におけるKSR2タンパク質又はその部分ペプチドからなる大腸癌検出用マーカーの量を測定する工程、および、その量に基づいて前記被検体における大腸癌の罹患の有無を決定する工程を含む、大腸癌検出方法、ならびにKSR2タンパク質又はその部分ペプチドに対する抗体を含む大腸癌検出薬およびキット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大腸癌を早期かつ確実に検出することのできる新規大腸癌検出用マーカーおよびそれを用いた大腸癌検出方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
大腸は、ヒトにおいて全長が約1.6メートルの管であり、盲腸からはじまり上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、虫垂、直腸で構成される。大腸は消化吸収された残りの腸内容物をため、そこから水分を吸収しながら大便にする、重要な消化器系器官である。また多量の腸内の細菌を排泄することによって防御する役割を持つ。
【0003】
大腸に発生する癌は大きく分けて、腺癌、扁平上皮癌、腺扁平上皮癌があり、大部分が腺癌で大腸ポリープ(polyp)より発生する。有茎のポリープはキノコの様な形状に増殖し、通常は良性腫瘍であるが、そのうちの一部が腺癌に進行する。また現在は、ポリープ由来でない平坦な病変や陥凹性病変から進行大腸癌になることがあることも明らかになっている。
【0004】
日本人においてはS状結腸と直腸が大腸癌のできやすい部位である。食生活の欧米化に応じて増加する傾向にあり、肺癌についで2番目に多い癌である。年齢別にみた大腸癌(結腸・直腸・肛門癌)の罹患率は、50歳代付近から増加し始め、加齢につれて高くなる。大腸癌の罹患率、死亡率はともに男性のほうが女性の約2倍と高い傾向にあり、結腸癌より直腸癌において男女差が大きい傾向がある。大腸癌の危険因子としては遺伝学的要因も知られているが、一般的には喫煙、肥満、飲酒などを挙げることができる。
【0005】
大腸癌の治療としては内視鏡治療、外科手術、化学療法、放射線療法などが、病期、腫瘍の大きさ・深達度、転移の度合などを勘案し施される。治療方針の決定にあたっては大腸癌研究会により作成された「大腸癌治療ガイドライン」が参考にされる。早期大腸癌である場合は内視鏡切除、あるいは外科手術によって完全に切除することが可能であり、再発率も非常に低い。進行大腸癌である場合は肺、肝臓、リンパ節や腹膜などに切除困難な転移がおこり、また切除した部位に局所再発がおこることもある。こうした時期では、手術に加え放射線療法や化学療法(抗癌剤治療)が行われる。
【0006】
このように、大腸癌は比較的早期で発見された場合、予後は比較的良く、初期癌での治療ではほぼ100%近くが完治する。しかし、大きな腫瘍や転移のある腫瘍の治療成績は劣り、早期発見の重要性が認識されている。
【0007】
しかしながら、大腸癌を自覚症状によって早期発見することは難しい。ほとんどの早期大腸癌の段階では無症状であり、癌が進行してからでないとはっきりとした自覚症状が現れないことが多いからである。大腸癌の進行につれて血便、便が細くなる(便柱細少)、残便感、腹痛、下痢と便秘の繰り返しなど排便に関する症状や、貧血、嘔吐などの症状が現れる。最も多いのが血便であるが、痔等と混同される場合も多い。
【0008】
大腸癌の検査法としては直腸指診、便潜血検査、超音波検査、CT検査、大腸内視鏡検査、注腸造影検査などがある。大規模な集団検診で行われる代表的な検査法は大便の免疫学的潜血反応である。この段階で精密検査を受ける人をスクリーニングできるが、偽陰性、偽陽性判定も多い。精密検査で大腸癌の確定診断を行う方法には大腸内視鏡検査、注腸造影検査、画像診断などの方法があるが、便を全て排出しなければならない、場合によっては苦痛を伴うなど、患者の肉体的、精神的負担が大きく、事前のスクリーニング段階での偽陰性、偽陽性判定を減らすことが求められている。
【0009】
そこで、大腸癌をスクリーニング段階で検出するために、便潜血検査に加えて、特異的で感受性が高い血中腫瘍マーカー(tumor marker)を発見しそれを用いた検査を行うことが強く望まれている。血中マーカーのレベルを計測することにより、比較的安価でハイスループットな検査・診断が可能になると考えられる。これまでに、大腸癌のマーカーとしてCEA、CA19−9などが臨床応用されている。しかしながら、大腸癌を特異的に、早期に発見できる腫瘍マーカーは現時点において存在せず、進行大腸癌であっても約半数が陽性を示すのみである。また、近年のゲノム解析又はプロテオーム解析の進歩に伴い、様々な新規の腫瘍マーカー候補が発見されているが、実際に臨床応用されているものはいまだ存在しない。
【0010】
一方、「KSR2」(hKSR2、Kinase suppressor of Ras 2)タンパク質は、TKL Ser/Thr Protein Kinaseファミリーに属する細胞内シグナル伝達関連タンパク質である。このタンパク質は、MAPキナーゼであるMEKK3タンパク質活性を阻害することによって、炎症反応や細胞の増殖・分化など様々な生命現象に関与することが報告されている(Channavajhala P.L.ら、2005年、Biochem.Biophys.Res.Commun.、第334巻、p. 1214-1218;Channavajhala P.L.ら、2003年、Journal of Biological Chemistry、第278巻、p. 47089-47097)。また、このタンパク質をコードする遺伝子のアンチセンス鎖核酸を用いて、RAS媒介性の肺癌、膵臓癌、皮膚癌、膀胱癌を治療できる可能性が示唆されているが(特許文献1)、これまでKSR2タンパク質と大腸癌との関連性に関する報告はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2007−512844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、大腸癌を早期かつ確実に検出することのできる大腸癌検出用マーカー、およびそれを用いた大腸癌検出方法などの手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するため、大腸癌患者の血液と健常者の血液に存在するタンパク質群を比較したところ、大腸癌患者の血液において有意に発現量が増加するタンパク質を見出し、該タンパク質がKSR2(Kinase suppressor of Ras 2)タンパク質であると同定した。さらに、該KSR2タンパク質に対する抗体を作成して大腸癌患者の血液と健常者の血液におけるKSR2タンパク質を測定したところ、大腸癌患者では健常者に比べて血中KSR2タンパク量が有意に増加していることを確認し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)被検体から採取した体液試料におけるKSR2タンパク質又はその部分ペプチドからなる大腸癌検出用マーカーの量を測定する工程、および、その量に基づいて前記被検体における大腸癌の罹患の有無を決定する工程を含む、大腸癌検出方法。
【0015】
(2)前記KSR2タンパク質が、以下の(a)〜(c)のいずれかのポリペプチドである、(1)に記載の方法。
(a) 配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b) 配列番号1に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、大腸癌に応答して発現が増加するポリペプチド
(c) 配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有し、かつ大腸癌に応答して発現が増加するポリペプチド
【0016】
(3)被検体の前記大腸癌検出用マーカーの量が健常体のそれと比較して統計学的に有意に多いときに大腸癌に罹患していると決定する、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)前記統計学的に有意に多い量が健常体の2倍以上である、(3)に記載の方法。
(5)前記測定が前記大腸癌検出用マーカーと特異的に結合可能な物質を用いる、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
【0017】
(6)前記結合可能な物質が、KSR2タンパク質又はその部分ペプチドに対する抗体又はその断片である、(5)に記載の方法。
(7)前記大腸癌が早期大腸癌である、(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8)前記体液試料が血液又は尿である、(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(9)KSR2タンパク質又はその部分ペプチドに対する抗体又はその断片を含む、
大腸癌検出薬。
(10)KSR2タンパク質又はその部分ペプチドに対する抗体又はその断片を含む、大腸癌検出用キット。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、被検者に与える侵襲性が低く、大腸癌を高感度かつ高精度で検出することが可能な方法が提供される。本発明の大腸癌検出方法を用いることより、大腸癌患者の血液等の体液試料中に含まれるKSR2タンパク質の量を測定するだけで、大腸癌であるか否かを容易にかつ早期に判定することができる。また、本発明の大腸癌検出方法によれば、早期癌の場合であっても検出が可能な点で有効である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】大腸癌患者8名及び健常者6名の血漿中のKSR2タンパク質を、ウェスタンブロット法により検出した図を示す。
【図2】大腸癌患者26名及び健常者87名の、それぞれの血漿中のKSR2タンパク質の濃度をHigh−density Reverse−phase Protein Microarray法によって半定量的に解析し、各群別に濃度をプロットした図を示す(横線は各群の定量値の平均値を表す)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.大腸癌検出方法
本発明の第一の態様は、大腸癌検出用マーカーとしてKSR2タンパク質(Kinase suppressor of Ras 2)を用いる大腸癌検出方法である。本発明は、KSR2タンパク質が健常者よりも大腸癌患者の血液中に多く存在する知見に基づくものであり、被検体から採取した体液中に存在する当該タンパク質の量の多寡によって、その被検体の大腸癌の罹患を検出することができる。
【0021】
本発明において「大腸癌検出用マーカー」とは、大腸癌を検出するための生物学的マーカーであって、被検体が大腸癌に罹患していることを示す指標となる物質をいう。
【0022】
本発明の大腸癌検出用マーカーは、KSR2タンパク質、KSR2タンパク質の変異体、KSR2タンパク質の部分ペプチド(以下、これらをまとめて「KSR2タンパク質等」と称する場合がある)で構成される。
【0023】
上記「KSR2タンパク質」は、950アミノ酸からなるTKL Ser/Thr Protein Kinaseファミリーに属する細胞内シグナル伝達関連タンパク質である。本発明における「KSR2タンパク質」は、各生物種KSR2タンパク質を包含するが、好ましくは配列番号1に示されるヒト由来のKSR2タンパク質(GenBank アクセッションNP_775869.3)をいう。
【0024】
また、上記「KSR2タンパク質の変異体」としては、野生型KSR2タンパク質のアミノ酸配列、好ましくは配列番号1に示されるヒト由来の野生型KSR2タンパク質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、大腸癌に応答して発現が増加するポリペプチドが挙げられる。ここで、欠失、置換若しくは付加されてもよいアミノ酸の数としての「数個」とは、約10、9、8、7、6、5、4、3又は2個以下の整数を指す。
【0025】
また、上記「KSR2タンパク質の変異体」としては、野生型KSR2タンパク質のアミノ酸配列、好ましくは配列番号1に示されるヒト由来の野生型KSR2タンパク質のアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有し、かつ大腸癌に応答して発現が増加するポリペプチドもまた挙げられる。上記80%以上の配列同一性は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最もこのましくは97%以上、98%以上、99%以上の配列の同一性(%同一性)をいう。「%同一性」とは、BLASTやFASTAによるタンパク質の検索システムを用いて、ギャップを導入して又はギャップを導入しないで、決定することができる。
【0026】
「KSR2タンパク質の変異体」の具体例として、被検体の種類(例えば、被検者の場合は人種)や個体に基づく多型(SNIPsを含む)、スプライス変異等が挙げられる。
【0027】
また、上記「KSR2タンパク質の部分ペプチド」とは、野生型KSR2タンパク質のアミノ酸配列、好ましくは配列番号1で示されるヒト由来の野生型KSR2タンパク質のアミノ酸配列若しくはその変異配列のうち少なくとも10個以上、好ましくは20個以上、30個以上、40個以上、または50個以上の連続するアミノ酸残基からなり、1個又は複数のエピトープを保持する部分ペプチドをいう。
【0028】
このような部分ペプチドは、後述する本発明に関わる抗体又はその断片と免疫特異的に結合することができる。このような部分ペプチドをKSR2タンパク質に包含する理由は、たとえ断片化されていても血液中のKSR2タンパク質を定量できれば、本発明の目的を達することができ、また、血液中の上記野生型KSR2タンパク質(好ましくは配列番号1で示されるヒト由来の野生型KSR2タンパク質)又はその変異体の全長ポリペプチドが、例えば、血液中に存在するプロテアーゼやぺプチダーゼ等によって断片化されて存在する可能性があるからである。
【0029】
本発明の大腸癌検出方法は、被検体から採取した体液試料における、(1)KSR2タンパク質又はその部分ペプチドからなる大腸癌検出用マーカーの量を測定する工程(大腸癌検出用マーカー測定工程)、および、(2)その量に基づいて前記被検体における大腸癌の罹患の有無を決定する工程(罹患決定工程)を含む。以下、それぞれの工程について詳細に説明をする
【0030】
(1)大腸癌検出用マーカー測定工程
「大腸癌検出用マーカー測定工程」とは、被検体から採取した体液試料に存在する大腸癌検出用マーカー、すなわち、KSR2タンパク質又はその部分ペプチドの量をインビトロで測定する工程である。
【0031】
本明細書において、「被検体」とは、大腸癌の罹患の検出対象となる検体であって、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、特に好ましくはヒトが該当する。本明細書において、被検体がヒトの場合には、以降、特に「被検者」とする。
【0032】
本明細書において「体液試料」とは、大腸癌検出のために供される試料であって、生物学的流動体を意味する。体液試料は、本発明の大腸癌検出用マーカーKSR2が含まれる可能性のある生物学的流動体であればよく、特に限定はされない。例えば、血液、尿、リンパ球培養上清、髄液、消化液(大腸液、唾液を含む)、汗、腹水、鼻水、涙、膣液、精液等が含まれる。好ましくは、血液又は尿である。ここでいう「血液」とは、全血、血漿及び血清を含む。全血は、静脈血、動脈血又は臍帯血を問わない。体液試料は、同一個体から得られる異なる二以上の組合せであってもよい。本発明の大腸癌の検出方法は、侵襲性の低い血液や尿からも検出可能であることから、簡便な検出法として非常に有用である。
【0033】
「被検体から採取した体液」とは、被検体から既に採取された体液をいい、体液を採取する行為自体は、本発明の態様には包含されない。被検体から採取した体液は、被検体から採取されたものを直ちに本発明の方法に供してもよいし、採取後、直接、又は適当な処理を施した後に、冷蔵又は凍結したものを本発明の方法に供する前に、室温に戻して使用してもよい。冷蔵又は凍結前の適当な処理としては、例えば、全血にヘパリン等を添加して抗凝固処理を施した後、又は血漿若しくは血清として分離すること等が含まれる。これらの処理は、当該分野で公知の技術に基づいて行なえばよい。
【0034】
本明細書において「本発明の大腸癌検出用マーカーの量」とは、被検体から採取した体液中に存在するKSR2タンパク質等の分量をいう。この分量は、絶対量又は相対量のいずれであってもよい。絶対量の場合、所定の体液中に含まれる大腸癌検出用マーカーの質量又は容量が該当する。相対量の場合、特定の測定値に対する被検体由来の大腸癌検出用マーカーの測定値によって表わされる相対的な値をいう。例えば、濃度、蛍光強度、吸光度等が挙げられる。
【0035】
大腸癌検出用マーカーの量は、インビトロで公知の方法を用いて測定することができる。例えば、前記タンパク質等と特異的に結合可能な物質を用いて測定する方法が挙げられる。
【0036】
本明細書において「特異的に結合可能」とは、ある物質が、本発明の標的である大腸癌検出用マーカー、すなわち、KSR2タンパク質又はその部分ペプチドとのみ実質的に複合体を形成することを意味する。ここで、「実質的に」とは、非特異的な結合以外の結合を意味する。
【0037】
「特異的に結合可能な物質」としては、例えば、KSR2結合タンパク質が挙げられる。より具体的には、例えば、KSR2タンパク質を抗原とし、それを認識して結合する「抗KSR2抗体」、好ましくは配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを認識し結合する抗体が挙げられる。または、KSR2タンパク質の変異体を抗原とし、それを認識して結合する「抗KSR2変異体抗体」、好ましくは配列番号1のアミノ酸配列の変異配列を有するポリペプチドを認識し結合する抗体であってもよい。また、「特異的に結合可能な物質」としては、「抗KSR2抗体」又は「抗KSR2変異体抗体」の抗原結合断片であってよく、それらの化学修飾誘導体であってもよい。
【0038】
上記「抗原結合断片」は、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメント、Fvフラグメント、ScFvフラグメント等が含まれるが、抗原に特異的に結合できる限りこれらに限定されない。また、「化学修飾誘導体」とは、前記抗KSR2抗体、抗KSR2変異体抗体、及びそれらの抗原結合断片(以下、これらをまとめて「抗KSR2抗体等」と称する場合がある)のKSR2タンパク質等との特異的な結合活性を獲得又は保持する上で必要な機能上の修飾、又は抗KSR2抗体等を検出する上で必要な標識のための修飾のいずれをも含む。機能上の修飾には、例えば、グリコシル化、脱グリコシル化、PEG化が挙げられる。標識上の修飾には、例えば、蛍光色素(FITC、ローダミン、テキサスレッド、Cy3、Cy5)、蛍光タンパク質(例えば、PE、APC、GFP)、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、グルコースオキシダーゼ)、又はビオチン若しくは(ストレプト)アビジン)による標識が挙げられる。
【0039】
抗KSR2抗体等は、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体のいずれであってもよい。特異的検出を可能にするため、好ましくは、モノクローナル抗体である。また、本発明のモノクローナル抗体には、キメラ抗体、例えば、ネズミモノクローナル抗体のヒト化型も含まれる。
【0040】
本発明において、ポリクローナル抗体(抗KSR2ポリクローナル抗体、抗KSR2変異体ポリクローナル抗体、それらのポリクローナル抗体の断片を含む)又はモノクローナル抗体(抗KSR2ポリクローナル抗体、抗KSR2変異体モノクローナル抗体、それらのモノクローナル抗体の断片を含む)は、後述する方法によって作製することができる。また、抗ヒトKSR2ポリクローナル抗体は、ABNOVA等より市販されており、それを利用することもできる。
【0041】
抗KSR2抗体等のグロブリンタイプは、上記特徴を有するものである限り、特に限定されるものではなく、IgG、IgM、IgA、IgE、IgDのいずれでもよいが、IgG及びIgMが好ましい。
【0042】
本発明において、抗KSR2抗体等には、遺伝子工学技術によって産生可能な抗体断片及び誘導体もまた含まれる。そのような抗体には、例えば合成抗体、組換え抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、単鎖抗体等が含まれる。
【0043】
以下、本発明で使用する抗KSR2ポリクローナル抗体等及びモノクローナル抗体等の作製方法について具体的に説明をする。
【0044】
(免疫原の調製)
本発明において抗体を作製するにあたり、免疫原(抗原)としてのKSR2タンパク質等を調製する。本発明において免疫原として使用可能なKSR2タンパク質は、例えば、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するヒトKSR2タンパク質若しくはその変異体又はそれらの部分ペプチド、あるいはそれらと他のペプチド(例えば、シグナルペプチド、標識ペプチド等)との融合ポリペプチドである。免疫原としてのKSR2タンパク質は、例えば、配列番号1のアミノ酸配列情報を利用して、当技術分野で公知の手法、例えば固相ペプチド合成法等により、免疫原として使用するためのKSR2タンパク質断片を合成することができる。免疫原としてKSR2タンパク質断片を使用する場合は、KLH、BSA等のキャリアータンパク質に連結させて使用するのが好ましい。
【0045】
また、免疫原としてのKSR2タンパク質等は、公知のDNA組換え技術を利用して得ることができる。KSR2タンパク質等をコードするcDNAは、cDNAクローニング法によって作製できる。免疫原KSR2遺伝子等を発現する大腸上皮細胞等の生体組織からtotal RNAを抽出し、それをオリゴdTセルロースカラムで処理して得られるポリA(+)RNAからRT−PCR法によってcDNAライブラリーを作製し、このライブラリーからハイブリダイゼーションスクリーニング、発現スクリーニング、抗体スクリーニング等のスクリーニングによって目的のcDNAクローンを得ることができる。必要に応じて、cDNAクローンをさらにPCR法によって増幅することもできる。これによって目的の遺伝子に対応するcDNAを得ることができる。これらのcDNAクローニングは、当該分野において周知の技術を用いて行うことができる。
【0046】
続いて、上記の方法等で得られたcDNAクローンを発現ベクターに組み込み、該ベクターによって形質転換又はトランスフェクションされた原核又は真核宿主細胞を培養することによって、目的のKSR2タンパク質等を該細胞から得ることができる。このとき、目的のタンパク質等を培養上清中から得る場合には、そのポリペプチドをコードするDNAの5’末端に、分泌シグナル配列をコードするヌクレオチド配列をフランキングすることによって細胞外に成熟ポリペプチドを分泌させることができる。
【0047】
発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例えばpET21a、pGEX4T、pC118、pC119、pC18、pC19等)、枯草菌由来のプラスミド(例えば、pUB110、pTP5等)、酵母由来のプラスミド(例えば、YEp13、YEp24、YCp50等)等が挙げられ、ファージDNAとしてはλファージ(λ gt11、λZAP等)が挙げられる。さらに、ワクシニアウイルス等の動物ウイルス、バキュロウイルス等の昆虫ウイルスベクターを用いることもできる。ベクター及び発現系は、Novagen社、宝酒造、第一化学薬品、Qiagen社、Stratagene社、Promega社、Roche Diagnositics社、インビトロgen社、Genetics Institute社、Amersham Bioscience社等から入手可能である。
【0048】
発現ベクターにKSR2タンパク質等のcDNAを挿入するには、まず、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、適当な制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法等が採用される。ベクターには、該タンパク質をコードするDNAの他に、調節エレメント、例えばプロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、リボソーム結合部位、複製開始点、ターミネーター、選択マーカー等を含むことができる。またポリペプチドの精製を容易にするために標識ペプチドをポリペプチドのC末端又はN末端につけた融合ポリペプチドとしてもよい。代表的な標識ペプチドには、6〜10残基のヒスチジンリピート、FLAG、mycペプチド、GFPタンパク質等が挙げられるが、標識ペプチドはこれらに限られるものではない。DNA断片とベクター断片とを連結させるには、公知のDNAリガーゼを用いる。
【0049】
宿主細胞としては、細菌等の原核細胞(例えば、エシェリヒア・コリ:Escherichia coli等の大腸菌、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)等の枯草菌)、酵母(例えば、サッカロマイセス・セレビシアエ)、昆虫細胞(例えば、Sf細胞)、哺乳動物細胞(例えば、COS、CHO、BHK)等を用いることができる。宿主細胞への組換えベクターの導入方法は、それぞれの宿主へDNAを導入する方法であれば特に限定されるものではない。細菌に該ベクターを導入する方法であれば、例えば、ヒートショック法、カルシウムイオンを用いる方法、エレクトロポレーション法等が挙げられる。これらの技術は、いずれも当該分野で公知であり、様々な文献に記載されている。また、動物細胞に該ベクターを導入する方法であれば、例えば、リポフェクチン法、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポソームを用いる方法、DEAE−Dextran法等が好適に用いられる。
【0050】
大腸菌や酵母菌等の微生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。培養は、通常、振盪培養又は通気攪拌培養等の好気的条件下、37℃で6〜24時間行う。培養期間中、pHは中性付近に保持する。pHの調整は、無機又は有機酸、アルカリ溶液等を用いて行う。培養中は必要に応じてアンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。哺乳類細胞等の形質転換体を培養する場合においても、それぞれの細胞に適した培地中で培養後、培養上清又は細胞内に生産されたタンパク質を回収する。このとき培地には血清を含んでもよく、含まなくてもよいが、無血清培地での培養がより望ましい。KSR2タンパク質等が菌体内又は細胞内に生産される場合には、菌体又は細胞を破砕することによりタンパク質を抽出する。また、KSR2タンパク質等が菌体外又は細胞外に生産される場合には、培養液をそのまま使用するか、遠心分離等により菌体又は細胞を除去する。
【0051】
標識ペプチドを付けずに本発明に係るタンパク質を生産した場合には、その精製法として例えばイオン交換クロマトグラフィーによる方法を挙げることができる。またこれに加えて、ゲルろ過や疎水性クロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィー等を組み合わせる方法でもよい。一方、当該タンパクにヒスチジンリピート、FLAG、myc、GFPといった標識ペプチドを付けている場合には、一般に用いられるそれぞれの標識ペプチドに適したアフィニティークロマトグラフィーによる方法を挙げることができる。単離・精製が容易となるような発現ベクターを構築するとよい。特にポリペプチドと標識ペプチドとの融合タンパク質の形態で発現するように発現ベクターを構築し、遺伝子工学的に当該タンパク質を調製すれば、単離・精製も容易である。KSR2タンパク質等が得られたか否かは、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動等により確認することができる。
【0052】
(抗体の作製)
このようにして得られたKSR2タンパク質等を抗原としてKSR2タンパク質等を特異的に認識する抗体を得ることができる。
【0053】
より具体的には、KSR2タンパク質、KSR2変異体タンパク質、部分ペプチド、融合タンパク質等は、抗体形成を引き出す抗原決定基又はエピトープを含むが、これら抗原決定基又はエピトープは、直鎖でもよいし、より高次構造(断続的)でもよい。なお、該抗原決定基又はエピトープは、当該技術分野に知られるあらゆる方法によって同定できる。
【0054】
本発明のタンパク質によってあらゆる態様の抗体が誘導される。該タンパク質の全部若しくは一部又はエピトープが単離されていれば、慣用的技術を用いてポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体のいずれも調製可能である。
【0055】
ポリクローナル抗体の作製
ポリクローナル抗体を作製するために、まず、得られたKSR2タンパク質等を緩衝液に溶解して免疫原を調製する。なお、必要であれば、免疫を効果的に行うためにアジュバントを添加してもよい。アジュバントの例としては、市販の完全フロイントアジュバント(FCA)、不完全フロイントアジュバント(FIA)等が挙げられ、これらを単独で又は混合して用いることができる。
【0056】
次に、前記調製した免疫原を、哺乳動物、例えばラット、マウス(例えば近交系マウスのBalb/c)、ウサギ等に投与し、免疫する。免疫原の1回の投与量は、免疫動物の種類、投与経路等により適宜決定されるものであるが、動物1匹当たり約50〜200μgとされる。免疫原の投与方法としては、例えば、FIA又はFCAを用いた皮下注射、FIAを用いた腹腔内注射、又は0.15mol/L塩化ナトリウムを用いた静脈注射が挙げられるが、この限りでない。また、免疫の間隔は特に限定されず、初回免疫後、数日から数週間間隔で、好ましくは1〜4週間間隔で、2〜10回、好ましくは3〜4回追加免疫を行う。初回免疫の後、免疫動物の血清中の抗体価の測定をELISA(Enzyme−Linked Immuno Sorbent Assay)法等により繰り返し行い、抗体価がプラトーに達したときは、免疫原を静脈内又は腹腔内に注射し、最終免疫とする。免疫後、血液からKSR2タンパク質等に対するポリクローナル抗体を回収する。回収は、KSR2タンパク質またはその断片をアガロース等の担体に結合したカラムに、前記免疫後の動物の血清を通し、カラムに結合した抗体を酸等を用いて溶出することによって行う。
【0057】
モノクローナル抗体の作製
モノクローナル抗体もまた、下記の抗体産生細胞のハイブリドーマ生成工程、ハイブリドーマの選別及びクローニング工程、および抗体の回収工程を含む常套的な方法により作製できる。
【0058】
KSR2タンパク質等を特異的に認識する抗KSR2モノクローナル抗体を生産するハイブリドーマは、慣用的技術によって生成し、そして同定することが可能である。こうしたハイブリドーマを生成するための1つの方法は、動物を本発明のタンパク質で免疫し、免疫された動物から抗体産生細胞を採取し、その抗体産生細胞を骨髄腫(ミエローマ)細胞株に融合させ、それによりハイブリドーマ細胞を生成し、そしてKSR2タンパク質等に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを同定すればよい。抗体産生細胞としては、脾臓細胞、リンパ節細胞、末梢血細胞等が挙げられるが、脾臓細胞又は局所リンパ節細胞が好ましい。これらの細胞は、KSR2タンパク質等で免疫した動物から摘出又は採取したものを用いればよい。動物に免疫する方法は、前記ポリクローナル抗体の作製に準ずる。抗体産生細胞と融合させる骨髄腫細胞株としては、マウス等の動物の一般に入手可能な株化細胞を使用することができる。使用する細胞株としては、薬剤選択性を有し、未融合の状態ではHAT選択培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミンを含む)で生存できず、抗体産生細胞と融合した状態でのみ生存できる性質を有するものが好ましい。また株化細胞は、免疫動物と同種系の動物に由来するものが好ましい。骨髄腫細胞株の具体例としては、BALB/cマウス由来のヒポキサンチン・グアニン・ホスホリボシル・トランスフェラーゼ(HGPRT)欠損細胞株であるP3X63-Ag.8株(ATCC TIB9)、P3X63‐Ag.8.U1株(JCRB9085)、P3/NSI/1‐Ag4‐1株(JCRB0009)、P3x63Ag8.653株(JCRB0028)又はSp2/0‐Ag14株(JCRB0029)等が挙げられる。
【0059】
細胞融合は、血清を含まないDMEM、RPMI−1640培地等の動物細胞培養用培地中で、抗体産生細胞と骨髄腫細胞株とを約1:1〜 20:1の割合で混合し、細胞融合促進剤の存在下にて融合反応を行う。細胞融合促進剤として、平均分子量1500〜4000ダルトンのポリエチレングリコール等を約10〜80%の濃度で使用することができる。また場合によっては、融合効率を高めるために、ジメチルスルホキシド等の補助剤を併用してもよい。さらに、電気刺激(例えばエレクトロポレーション)を利用した市販の細胞融合装置を用いて抗体産生細胞と骨髄腫細胞株とを融合させることもできる。
【0060】
細胞融合処理後の細胞から目的とする抗KSR2抗体等を産生するハイブリドーマを選別する。その方法として、細胞懸濁液を、例えばウシ胎児血清含有RPMI−1640培地等で適当に希釈後、マイクロタイタープレート上に200万個/ウエル程度まき、各ウエルに選択培地を加え、以後適当に選択培地を交換して培養を行う。培養温度は、20〜40℃ 、好ましくは約37℃である。ミエローマ細胞がHGPRT欠損株又はチミジンキナーゼ欠損株のものである場合には、ヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジンを含む選択培地(HAT培地)を用いることにより、抗体産生能を有する細胞と骨髄腫細胞株のハイブリドーマのみを選択的に培養し、増殖させることができる。その結果、選択培地で培養開始後、約14日前後から生育してくる細胞をハイブリドーマとして得ることができる。
【0061】
次に、増殖してきたハイブリドーマの培養上清中に、目的とする抗体が存在するか否かをスクリーニングする。ハイブリドーマのスクリーニングは、通常の方法に従えばよく、特に限定されない。例えば、ハイブリドーマとして生育したウエルに含まれる培養上清の一部を採取し、酵素免疫測定法(EIA:Enzyme Immuno Assay、及びELISA)、放射免疫測定法(RIA:Radio Immuno Assay)等によって行うことができる。融合細胞のクローニングは、限界希釈法等により行い、最終的にモノクローナル抗体産生細胞であるハイブリドーマを樹立する。本発明のハイブリドーマは、後述するように、RPMI−1640、DMEM等の基本培地中での培養において安定であり、大腸癌に由来するKSR2タンパク質と特異的に反応するモノクローナル抗体を産生、分泌するものである。
【0062】
モノクローナル抗体は、慣用的技術によって回収可能である。すなわち樹立したハイブリドーマからモノクローナル抗体を採取する方法として、通常の細胞培養法又は腹水形成法等を採用することができる。細胞培養法においては、ハイブリドーマを10% ウシ胎児血清含有RPMI−1640培地、MEM培地又は無血清培地等の動物細胞培養培地中で、通常の培養条件(例えば37℃、5%CO濃度)で2〜10日間培養し、その培養上清から抗体を取得する。腹水形成法の場合は、ミエローマ細胞由来の哺乳動物と同種系動物の腹腔内にハイブリドーマを約1000万個投与し、ハイブリドーマを大量に増殖させる。そして、1〜2週間後に腹水又は血清を採取する。
【0063】
上記抗体の採取方法において、抗体の精製が必要とされる場合は、硫安塩析法、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィー等の公知の方法を適宜に選択して、又はこれらを組み合わせることにより、精製された本発明のモノクローナル抗体を得ることができる。
【0064】
上記で作製した抗KSR2抗体等は、インビトロ及びインビボのいずれにおいても、KSR2タンパク質等の存在を検出するためのアッセイに使用可能である。アッセイにおける特異的検出を可能にするために、モノクローナル抗体の使用が好ましいが、ポリクローナル抗体であっても、精製ポリペプチドを結合したアフィニティーカラムに抗体を結合させることを含む、いわゆる吸収法によって、特異抗体を得ることができる。本発明の抗体はまた、免疫アフィニティークロマトグラフィーによってKSR2タンパク質等を精製することにも使用することにも利用できる。
【0065】
抗KSR2抗体等を用いた被検者由来の体液中に存在する本発明の大腸癌検出用マーカー、すなわち、KSR2タンパク質等の量をインビトロで測定する方法としては、免疫学的手法によるのが簡便かつ好適である。例えば、免疫学的測定法としては、酵素免疫測定法(ELISA、EIA)、蛍光免疫測定法、放射免疫測定法(RIA)、発光免疫測定法、免疫比濁法、ラテックス凝集反応、ラテックス比濁法、赤血球凝集反応、粒子凝集反応又はウェスタンブロット法が挙げられる。
【0066】
本発明の大腸癌検出用マーカー測定方法を、酵素免疫測定法、蛍光免疫測定法、放射免疫測定法又は発光免疫測定法等の標識を用いた免疫測定法により実施する場合には、前記抗KSR2抗体等を固相化するか、又は試料中の成分を固相化して、それらの免疫学的反応を行うことが好ましい。固相担体としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルトルエン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリメタクリレート、ラテックス、ゼラチン、アガロース、セルロース、セファロース、ガラス、金属、セラミックス又は磁性体等の材質よりなるビーズ、マイクロプレート、試験管、スティック又は試験片等の形状の不溶性担体を用いることができる。固相化は、固相担体と前記抗KSR2抗体等又は試料成分とを物理的吸着法、化学的結合法又はこれらの併用等の公知の方法に従って結合させることにより行うことができる。
【0067】
本発明においては、前記抗KSR2抗体等と、体液中の大腸癌細胞に由来する本発明の大腸癌検出用マーカーとの反応を容易に検出するために、前記抗KSR2抗体等を標識することにより該反応を直接検出するか、又は標識二次抗体を用いることにより間接的に検出する。本発明の大腸癌検出方法においては、感度の点で、後者の間接的検出(例えばサンドイッチ法等)を利用することが好ましい。
【0068】
標識物質としては、酵素免疫測定法の場合には、ペルオキシダーゼ(POD)、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコースオキシダーゼ、乳酸脱水素酵素、アミーゼ又はビオチン− アビジン複合体等を、蛍光免疫測定法の場合には、フルオレセインイソチオシアネート、テトラメチルローダミンイソチオシアネート、置換ローダミンイソチオシアネート、ジクロロトリアジンイソチオシアネート、Alexa又はAlexaFluoro等を、そして放射免疫測定法の場合にはトリチウム、ヨウ素125又はヨウ素131等を用いることができる。また、発光免疫測定法は、NADH−、FMNH2−、ルシフェラーゼ系、ルミノール−過酸化水素−POD系、アクリジニウムエステル系又はジオキセタン化合物系等を用いることができる。
【0069】
標識物質と抗体との結合法は、酵素免疫測定法の場合にはグルタルアルデヒド法、マレイミド法、ピリジルジスルフィド法又は過ヨウ素酸法等の公知の方法を、放射免疫測定法の場合にはクロラミンT法、ボルトンハンター法等の公知の方法を用いることができる。測定の操作法は、公知の方法により行うことができる。例えば、前記抗KSR2抗体等を直接標識する場合には、体液中の成分を固相化し、標識した前記抗KSR2抗体等と接触させて、本発明の大腸癌検出用マーカー(KSR2タンパク質等)−抗KSR2抗体等の複合体を形成させる。そして未結合の標識抗体を洗浄分離して、結合標識抗体量又は未結合標識抗体量より体液中の大腸癌検出用マーカー(KSR2タンパク質等)の量を測定することができる。
【0070】
また、例えば、標識二次抗体を用いる場合には、本発明の抗体と試料とを反応させ(一次反応)、さらに標識二次抗体を反応させる(二次反応)。一次反応と二次反応は逆の順序で行ってもよいし、同時に行ってもよいし、又は時間をずらして行ってもよい。一次反応及び二次反応により、固相化した本発明の大腸癌検出用マーカー−抗KSR2抗体等−標識二次抗体の複合体、又は固相化した抗KSR2抗体等−本発明の大腸癌検出用マーカー−標識二次抗体の複合体が形成する。そして未結合の標識二次抗体を洗浄分離して、結合標識二次抗体量又は未結合標識二次抗体量より試料中の大腸癌検出用マーカーの量を測定することができる。
【0071】
具体的には、酵素免疫測定法の場合は標識酵素にその至適条件下で基質を反応させ、その反応生成物の量を光学的方法等により測定する。蛍光免疫測定法の場合には蛍光物質標識による蛍光強度を、放射免疫定法の場合には放射性物質標識による放射能量を測定する。発光免疫測定法の場合は発光反応系による発光量を測定する。
【0072】
また、免疫比濁法、ラテックス凝集反応、ラテックス比濁法、赤血球凝集反応又は粒子凝集反応等の免疫複合体凝集物の生成を、その透過光や散乱光を光学的方法により測るか、目視的に測る測定法により実施する場合には、溶媒としてリン酸緩衝液、グリシン緩衝液、トリス緩衝液又はグッド緩衝液等を用いることができ、更にポリエチレングリコール等の反応促進剤や非特異的反応抑制剤を反応系に含ませてもよい。
【0073】
本発明の検出法の好ましい実施形態の一例を示す。最初に、本発明の抗体を一次抗体として不溶性担体に固定する。そして好ましくは、抗原が吸着していない固相表面を、抗原とは無関係のタンパク質(仔ウシ血清、ウシ血清アルブミン、ゼラチン等)によりブロッキングする。続いて、固定化された一次抗体と被検試料とを接触させる。次いで、上記一次抗体と異なる部位で本発明の大腸癌検出用マーカーと反応する標識二次抗体とを接触させ、該標識からの信号を検出する。ここで用いる「一次抗体と異なる部位で大腸癌検出用マーカーと反応する二次抗体」は、一次抗体と大腸癌検出用マーカー(KSR2タンパク質等)との結合部位以外の部位を認識する抗体であれば特に制限はなく、免疫原の種類を問わず、ポリクローナル抗体、抗血清、モノクローナル抗体のいずれでもよく、またこれらの抗体の断片(Fab、F(ab’)、Fab、Fv、ScFv等)を用いることもできる。更に、二次抗体として複数種のモノクローナル抗体を用いてもよい。
【0074】
また、これとは逆に、本発明の抗体に標識を付して二次抗体とし、本発明の抗体と異なる部位で、大腸癌検出用マーカーと反応する抗体を一次抗体として不溶性担体に固定し、この固定化された一次抗体と被検試料とを接触させ、次いで、二次抗体として標識を付した本発明の抗体とを接触させ、前記標識からの信号を検出してもよい。
【0075】
(2)罹患決定工程
「罹患決定工程」とは、(1)の大腸癌検出用マーカー測定工程で測定されたタンパク質の量に基づいて大腸癌の罹患を決定する工程である。測定された大腸癌検出用マーカー、すなわち、KSR2タンパク質等の量に基づいて大腸癌の罹患を決定する決定方法の一例として、例えば、被検体の大腸癌検出用マーカーの量が健常体のそれと比較して統計学的に有意に多いときに大腸癌に罹患していると決定する方法が挙げられる。
【0076】
ここで、「健常体」とは、少なくとも大腸癌に罹患していない個体、好ましくは健康な個体をいう。さらに、健常体は、被検体と同一の生物種であることを要する。例えば、検査に供する被検体がヒト(被検者)の場合には、健常体もヒト(本明細書では、以降「健常者」とする)でなければならない。健常体の身体的条件は、被検体と同一又は近似することが好ましい。身体的条件とは、例えば、ヒトの場合であれば、人種、性別、年齢、伸長、体重等が該当する。
【0077】
「統計学的に有意」とは、例えば、得られた値の危険率(有意水準)が5%、1%又は0.1%より小さい場合が挙げられる。それ故、「統計学的に有意に多い」とは、被検体と健常体のそれぞれから得られた大腸癌検出用マーカーの量的差異を統計学的に処理したときに両者間に有意差があり、かつ被検体の前記タンパク質の量が健常体のそれと比較して多いことをいう。通常、体液中の大腸癌検出用マーカーの量に関して、被検体が健常体の2倍以上、好ましくは3倍以上、より好ましくは4倍以上、最も好ましくは5倍以上多い場合が該当する。量的差異が3倍以上であれば信頼度は高く、統計学的にも有意に多いといえる。統計学的処理の検定方法は、有意性の有無を判断可能な公知の検定方法を適宜使用すればよく、特に限定しない。例えば、スチューデントt検定法、多重比較検定法を用いることができる。
【0078】
健常体の体液中における大腸癌検出用マーカーの量は、(1)で説明をした被検体の体液中における大腸癌検出用マーカーの量の測定方法と同様の方法で測定することが好ましい。健常体の体液中における大腸癌検出用マーカーの量は、被検体の体液中における大腸癌検出用マーカーの量を測定する都度、測定することもできるが、予め測定しておいた大腸癌検出用マーカーの量を利用することもできる。特に、健常体の様々な身体的条件における大腸癌検出用マーカーの量を予め測定しておき、その値をコンピューターに入力してデータベース化しておけば、被検体の身体的条件を当該コンピューターに入力することで、その被験体との比較に最適な身体的条件を有する健常体の大腸癌検出用マーカーの量を即座に利用できるので便利である。
【0079】
被検体の体液中の大腸癌検出用マーカーの量が健常体の体液中の大腸癌検出用マーカーの量よりも統計学的に有意に多い場合、その被検体は大腸癌に罹患していると判定する。本発明において対象となる大腸癌の病期は、特に限定はなく、早期大腸癌から末期大腸癌に及ぶ。特に、早期大腸癌であっても、その検出が可能である点において、本発明の実益がある。「早期大腸癌」とは、腫瘍が発生した局所(粘膜内)に限局していて、周囲組織への浸潤の無いもの、あるいは浸潤があってもその範囲が局所に限局しているものを言う。早期大腸癌は、ステージ分類のステージ0とステージIを含む。大腸癌の早期検出は、5年生存率を著しく向上させる。
【0080】
このように、本発明の大腸癌の検出方法によれば、体液試料中の大腸癌検出用マーカーを、抗体を用いて免疫学的に測定することを含む。本発明の方法によって、被検体が大腸癌に罹患しているか否かを判定することができるだけでなく、大腸癌患者と非大腸癌患者の識別を可能にする。
【0081】
2.大腸癌検出薬
本発明の第2の態様は、大腸癌検出薬である。上述したように、KSR2抗体等は、大腸癌細胞に由来する大腸癌検出用マーカーと特異的に反応するため、大腸癌検出用薬として用いることができる。本発明の大腸癌検出薬を用いて、大腸癌への罹患が疑われる個体から採取した体液試料中に含まれる大腸癌細胞に由来する大腸癌検出用マーカーを検出することによって、該個体の大腸癌の罹患を検出することができる。
【0082】
本発明の大腸癌検出薬は、免疫学的測定を行うための手段であればいずれの手段においても利用することができるが、当技術分野で公知の免疫クロマト用テストストリップ等の簡便な手段と組み合わせて用いることによって、さらに簡便かつ迅速に大腸癌を検出することができる。
【0083】
免疫クロマト用テストストリップとは、例えば、試料を吸収しやすい材料からなる試料受容部、本発明の検出薬を含有する試薬部、試料と検出薬との反応物が移動する展開部、展開してきた反応物を呈色する標識部、呈色された反応物が展開してくる提示部等から構成されるものであり、妊娠診断薬と同様の形態とすることができる。まず、試料受容部に試料を与えると、試料受容部は試料を吸収して試料を試薬部にまで到達させる。続いて、試薬部において、試料中の大腸癌細胞由来の大腸癌検出用マーカーと抗KSR2抗体等との反応が起こり、反応した複合体が展開部を移動して標識部に到達する。標識部においては、上記反応複合体と標識二次抗体との反応が起こって、その標識二次抗体との反応物が提示部にまで展開すると呈色が認められることになる。上記免疫クロマト用テストストリップは、使用者に対し苦痛や試薬使用による危険性を一切与えないものであるため、家庭におけるモニターに使用することができ、その結果を各医療機関レベルで精査・治療(外科的切除等)し、転移・再発予防に結びつけることが可能となる。また現在、このテストストリップは、例えば特開平10−54830号公報に記載されるような製造方法により安価に大量生産できるものである。また、本発明の検出薬と既知の大腸癌の腫瘍マーカーに対する検出薬とを組み合わせて使用することにより、さらに信頼性の高い診断が可能になる。
【0084】
3.大腸癌検出用キット
本発明の第3の態様は、大腸癌検出キットである。「大腸癌検出用キット」とは、大腸癌の罹患の有無、罹患の程度若しくは改善の有無や改善の程度を検出するために、また大腸癌の予防、改善又は治療に有用な候補物質をスクリーニングするために、直接又は間接的に利用されるものをいう。
【0085】
本発明の大腸癌検出用キットは、その構成物として、大腸癌の罹患に関連して体液試料中、特に血液、血清、血漿において発現が変動するKSR2タンパク質、好ましくは配列番号1に示されるアミノ酸配列又はその変異配列を有するタンパク質を特異的に認識し、また結合可能な物質を含む。具体的には、例えば、前述の抗KSR2タンパク質抗体等が挙げられる。
【0086】
本キットにはさらに、抗体の固定化、抗体の検出等に用いることのできる物質や器具等を含んでいてもよい。抗体の固定化のためには、マイクロタイタープレート等の担体、炭酸緩衝液等の固相化用液体、ゼラチンやアルブミン等を含むブロッキング液を含めることができる。また、抗体の検出のためには、例えば、標識物質、標識二次抗体、さらには標識の検出に必要な基質、担体、洗浄バッファー、試料希釈液、酵素基質、反応停止液のほか、精製された標準物質としてのKSR2タンパク質、使用説明書等を含んでいてもよい。
【実施例】
【0087】
本発明を以下の実施例によってさらに具体的に説明する。しかし、本発明は、この実施例によって制限されないものとする。
(参考例)中空糸フィルターの作製
分画分子量約5万の孔径を膜表面に有するポリスルホン中空糸を100本束ね、中空糸中空部を閉塞しないようにエポキシ系ポッティング剤で両末端をガラス管に固定し、ミニモジュールを作成した。該ミニモジュール(モジュールA)は血清又は血漿中の高分子量タンパク質の除去に用いられ、その直径は約7mm、長さは約17cmである。同様に低分子量タンパク質の濃縮に用いられるミニモジュール(モジュールB)を分画分子量約3千の孔径の膜を用いて作成した。ミニモジュールは片端に中空糸内腔に連結する入口があり、反対側の端は出口となる。中空糸入口と出口はシリコンチューブによる閉鎖循環系流路であり、この流路内を液体がペリスタポンプに駆動されて循環する。また、中空糸外套のガラス管には、中空糸から漏出してきた液体を排出するポートを備え、1つモジュールセットが構成される。流路途中にT字のコネクターによって、モジュールを連結し、モジュールA3本と、モジュールB1本をタンデムに連結してひとつの中空糸フィルターとした。この中空糸フィルターを蒸留水にて洗浄し、PBS(0.15mM NaClを含むリン酸緩衝液、pH7.4)水溶液を充填した。分画原料の血清又は血漿は該中空糸フィルターの流路入口から注入され、分画・濃縮後に流路出口から排出される。該中空糸フィルターに注入された血清又は血漿は、モジュールA毎に分子量約5万で分子篩が作用し、分子量5万よりも低分子の成分はモジュールBで濃縮され、調製されるようになっている。
【0088】
(実施例1)
(1)大腸癌及び健常人血液のタンパク質同定
大腸癌患者22名と健常者21名からインフォームドコンセントを得て採血を行い、血漿を調製した。各血漿サンプルをポアサイズ0.22μmのフィルターでろ過して夾雑物質を取り除いた。この血漿0.5mLに対して、25mM重炭酸アンモニウム溶液(pH8.0)を3.5mL加えて希釈し、参考例に示した中空糸フィルターによって分子量による分画を行った。分画後の血清サンプルを凍結乾燥した後、トリプシン(プロメガ、sequencing-grade modified)によるペプチド化処理を行った。そのペプチドを、ナノフローHPLC(日立ハイテクノロジーズ)で分離し、ESI−QTOF型の質量分析計(Q−Tof Ultima、ウォーターズ社)によって分析した。データの測定および解析は2DICAL法によりおこなった。2DICAL法とは、複数のMSスペクトラムからなるLC/MSデータを、質量電荷比(m/z)、保持時間(RT)の2軸を持つ平面に描出し、これにより同一ペプチド由来のピークが、強度(intensity)を変数にもつm/z, RT座標に変換され、複数サンプル間での無標識定量比較が可能な方法である。2DICAL法の詳細はOno,M.ら、2006年、Mol Cell Proteomics、第5巻、p.1338−1347に詳細に記載されている。2DICAL法で血漿タンパク質プロファイルの群間比較を行い、大腸癌症例と健常者との間で有意に差のあるピークを同定した。その結果、質量電荷比(m/z)589.3、保持時間(RT)46.6分の位置に有意な差(t-test P=0.003)を示すペプチドピークを見出した。さらに、そのペプチドピークに対しタンデム質量解析を行い、そのピークが血液中のKSR2タンパク質に由来するピークであることを同定した。
【0089】
(2)ウェスタンブロット法による血液中のKSR2タンパク質の検出
(1)で用いた血漿サンプルのうち、大腸癌患者8名と健常者6名分について、Sigma社のSeppro−IgY12マイクロビーズを用いて、血漿中の主要な12種のタンパク質を除去する処理を行った。その処理サンプルについてSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけた後、タンパク質をPVDF膜へ移した。その膜をAbnova社の抗KSR2マウスモノクローナル抗体を一次抗体として、続いてhorseradish peroxidase(HRP)標識された抗マウスIgG抗体を二次抗体として、ブロッティング操作を行った。ブロットの検出はGEヘルスケア社のECL基質を用いて可視化し行った。その結果、大腸癌患者において、健常対照者と比べてより強いバンドが検出され、血中KSR2濃度が大腸癌患者において健常者に比べて増加していることを確認した(図1)。
【0090】
(3)High−density Reverse−phase Protein Microarray法による血液中のKSR2タンパク質の検出
(1)で採血した人を含まない、大腸癌患者26名と健常者87名から、(1)と同様にインフォームドコンセントを得て採血を行い、血漿を調製した。これらの血漿について、(2)と同様に主要タンパク質の除去処理を行った。処理後の血液を、Kaken Geneqs社のProtein Microarrayer Robotを用いて、ランダムにProteoChipガラススライド(Proteogen社) 上にスポットした。そのスライドを、(2)で用いた抗KSR2マウスモノクローナル抗体で同様にインキュベートした。さらにそのスライドを、ビオチン化抗マウスIgG抗体 (Vector Laboratories社)、続いてStreptavidin-HRP conjugate (GEヘルスケア社)で同様にインキュベートした。スライドに結合したHRPの活性をTyramide Signal Amplification Cyanine 5 System (PerkinElmer)を用いて蛍光検出し、InnoScan 700ALマイクロアレイスキャナーを用いて蛍光強度をスキャンした。蛍光強度は解析ソフトMapixを用いて解析し、半定量値として群別にプロットした(図2)。その結果、大腸癌症例では健常者に比べて有意に血中KSR2濃度が上昇していることが(2)と同様に明らかになった(t−test P=0.00007)。
【0091】
以上(2)および(3)の結果から、本発明は、大腸癌を検出する上で極めて優れた方法であることが立証された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体から採取した体液試料におけるKSR2タンパク質又はその部分ペプチドからなる大腸癌検出用マーカーの量を測定する工程、および、その量に基づいて前記被検体における大腸癌の罹患の有無を決定する工程を含む、大腸癌検出方法。
【請求項2】
前記KSR2タンパク質が、以下の(a)〜(c)のいずれかのポリペプチドである、請求項1に記載の方法。
(a) 配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b) 配列番号1に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、大腸癌に応答して発現が増加するポリペプチド
(c) 配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有し、かつ大腸癌に応答して発現が増加するポリペプチド
【請求項3】
被検体の前記大腸癌検出用マーカーの量が健常体のそれと比較して統計学的に有意に多いときに大腸癌に罹患していると決定する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記統計学的に有意に多い量が健常体の2倍以上である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記測定が前記大腸癌検出用マーカーと特異的に結合可能な物質を用いる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記結合可能な物質が、KSR2タンパク質又はその部分ペプチドに対する抗体又はその断片である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記大腸癌が早期大腸癌である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記体液試料が血液又は尿である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
KSR2タンパク質又はその部分ペプチドに対する抗体又はその断片を含む、大腸癌検出薬。
【請求項10】
KSR2タンパク質又はその部分ペプチドに対する抗体又はその断片を含む、大腸癌検出用キット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−18119(P2012−18119A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156611(P2010−156611)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【出願人】(510097747)独立行政法人国立がん研究センター (35)
【Fターム(参考)】