説明

大量のドライパウダーをエアロゾル化する改良された装置

本発明は、エアロゾル化可能な材料の計量供給およびエアロゾル化のための装置に関する。この装置は、エアロゾル化チャネルを有するボディを有していて、エアロゾル化チャネルが、該エアロゾル化チャネルにガスの圧力パルスを供給するキャリアガスの供給源に接続可能な遠位のアタッチメント部分と、エアロゾル化された材料を患者に向かって放出するための近位のアタッチメント部分とを有しており、さらに装置は、エアロゾル化された材料を収容するためのリザーバを有しており、該リザーバが、壁を有していて、かつガス密な形式で前記ボディに接続されていて、かつエアロゾル化チャネルに流体接続している。壁の少なくとも一部が自己励振式の膜であり、該膜が、圧力パルスにより振動されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル化可能な材料、たとえば吸入のための医薬調製物のような特に粉末状の医療物質の計量供給およびエアロゾル化のための装置に関する。この装置は、特に肺サーファクタント調製物のエアロゾル化のために適している。
【0002】
背景技術
エアロゾル化可能(噴霧化可能)な乾燥材料をエアロゾル化する装置(乾式噴霧)は、当業者に知られている。たとえば、粉末状の医薬調製物のエアロゾル化のためには、いわゆるドライパウダー式吸入器(DPI)が挙げられる。これらの装置では、エアロゾル化可能な材料、たとえば粉末状の医療物質が、圧縮ガスまたはキャリアガスによって特別に設けられたチャンバへ移動され、チャンバ内で、エアロゾルまたはドライミストと呼ばれる状態に変更される。材料の粒子は、この場合、有利には均質かつ微細に拡散された形で、圧縮ガスまたはキャリアガスの全体積にわたって存在していて、次いで上記の状態でチャンバから適当な装置を介して排出させられる。
【0003】
このような装置は、自発的に呼吸をしている患者または換気される、つまり人工呼吸器を装着された(ventilated)患者への医療物質の投与のために使用され得る。自発的に呼吸をしている患者への使用のためには、装置は、一般的に、適当なマウスピースまたは呼吸マスクに接続されている。侵襲的な使用、つまり換気される患者への使用では、これらの装置は、エアロゾル化された医療物質を人工呼吸器システム内に供給し、次いで人工呼吸器システムはエアロゾル化された材料を患者の肺に送る。
【0004】
しかし、粉末状の材料をエアロゾル化する従来公知の装置では、設備に関する大きな費用を伴ってのみ、たとえば高価な機械的計量供給装置を使用した場合にのみ、大量の医療物質を患者に送ることができるという一般的な問題がある。一般的に、公知の装置は、約1μgから約20mgの範囲の医薬的な量のエアロゾル化に適していた。しかし、たとえば肺サーファクタント調製物のような所定の医療物質は、たとえば100mgより多いか、またはグラムの範囲ですらある大量の投与を要求し、このような大量の投与は、従来のドライパウダー式吸入器(DPI)を使用した場合、極めて長い吸入時間を要求する。従来技術から公知の装置の第2の問題は、患者に送られたエアロゾル化された材料の量の再現性であり得る。このことは特に、貯蔵中にまたは吸入器の作動中にすらエアロゾル化可能な材料の粒子が凝集し、異なる空気力学的挙動を備えた大きな粒子を形成する場合である。大きな粒子は、そのターゲットである肺の奥深くに到達する可能性がかなり小さい。なぜならば、これらの大きな粒子は、上方の気道、喉または吸入装置内のどこかに堆積する傾向にあるからである。
【0005】
肺サーファクタント調製物のような大量のエアロゾル化可能な材料の、正確な投与量での投与の問題は、吸入のために使用される装置の全ての区分、すなわち、空気供給部、空気供給部の制御装置、エアロゾル化ユニット自体、管路、弁システム(存在する場合には人工呼吸器システムの内面を含む)および呼吸端部片(マスク、チューブ)に関係し、換言すれば、エアロゾル化された粒子の不都合な堆積、ひいては患者に送られる投与量の減少および閉塞による制御不能な損失が起こり得る全ての区分に関係する。
【0006】
従来のエアロゾル化ユニットにおいて、貯蔵容器、たとえば市販の医薬バイアル内に緩いチャージ(loose charge)として存在するエアロゾル化可能な材料は、その表面品質および/または水分含量により凝集する傾向にあり、このことは、バイアルの比較的に狭い開口横断面の閉塞を起こし得るという問題がある。このような凝集は、肺サーファクタント調製物でも起こり得る。バイアルのこのような閉塞は、通常、適当な機械的手段によってのみ除去することができ、これによって、エアロゾル化可能な材料の連続的な計量供給をかなり長い期間にわたって保証することができる。付加的に、上記で指摘したように、たとえば肺サーファクタント調製物のようなエアロゾル化可能な材料の凝集した粒子は、一般的に、小さな凝集していない粒子と同じ効率で、したがって同じ局所的な拡散/堆積パターンでは、肺に到達することができない。
【0007】
英国特許第24848号明細書から公知のエアロゾル化ユニットでは、エアロゾル化可能な材料のリザーバは、狭い通路を介してチャンバに接続されており、このチャンバ内へ注射器によって供給空気が圧入される。エアロゾル化された粒子の解凝集は、供給された空気がさらにリザーバ内に押し込まれて、このリザーバ内で渦巻き運動を実施する際に行われる。その後、拡散されたエアロゾル化可能な材料はチャンバを通じて放出されて、患者に向かってノズルから出る。これとは反対に、仏国特許出願公開第2598918号明細書では、エアロゾル化可能な材料が、アルキメデスポンプにより、圧縮された空気のジェット内に運ばれて、そこで拡散が行われる。
【0008】
多くの場合、エアロゾル化可能な材料を、肺胞に到達可能な形で、肺の中に一定の用量で、間断なく数分の期間にわたって、高速にかつ高い投与量で投与することを保証することが必要である。しかし、上記2つのシステムは、エアロゾル化可能な材料の高い投与量を提供することができず、その形状と拡散メカニズムとにより、いまだ、たとえばチャンバ内、またはスクリューを備えるホッパ内で凝集する傾向があるので、正確な計量供給は問題のまま残っている。実際、上記のような投与は、設備に関する大きな費用を伴ってのみ可能である。
【0009】
国際公開第2006/108558号は、計量供給および粉末エアロゾル化のための装置を開示している。この装置では、粉末状の肺サーファクタント調製物のようなエアロゾル化可能な材料の解凝集は、装置のエアロゾル化チャネル内に送られる圧力パルス間の圧力補償により達成される。解凝集に必要となる剪断力は、パルス中の高圧を利用することによって形成される。このシステムは、搬送されたエアロゾル化された材料の濃度に関して公知先行技術によるシステムよりも優れた結果をもたらすが、リザーバ壁またはエアロゾル化チャネルの底部のようなシステムの内面に付着するエアロゾル化可能な材料の残留に関する問題は残っている。
【0010】
別の問題は、国際公開第2006/108558号に開示されているような計量供給装置の放出特性に関する。この計量供給装置は圧力パルスを解凝集に使用しているので、患者に対する作用に関する問題が生じる。圧力パルスは、かなりの大きさであり、しがたって計量供給装置は、自発的に呼吸をしている患者の場合のマスクのような、患者の呼吸先端に直接に接続することはできない。換気される患者のためには、この計量供給装置の出力部は、適正かつ正確な用量と必要な酸素供給の両方を可能にするために、人工呼吸器に接続されなければならない。さらに、幼児の場合、供給されるエアロゾルの体積および用量、酸素分圧および気道内圧は、成人の場合に比べてさらに決定的であり、特別な考慮が必要である。幼児にとって、圧力式人工呼吸器およびチューブを介した空中薬供給の従来のアプローチは、極めてストレスが多く、特化された装置と部屋とが要求される。
【0011】
発明の概要
したがって本発明の課題は、エアロゾル化可能な材料の残留の上記問題を克服し、装置内に存在する実質的に全てのエアロゾル化可能な材料をエアロゾル化し、患者に送ることを可能にし、この場合、投与される必要のある乾燥した粉末が大量である場合にも、未だに達成されていない計量供給精度を可能にする、エアロゾル化可能な乾燥材料の計量供給およびエアロゾル化のための装置を提供することである。
【0012】
本発明による装置の用途は、診断および/または治療のために用いられる物質のような、医療状況で使用される物質の計量供給およびエアロゾル化に限定されていないので、本発明の別の課題は、エアロゾル化可能な乾燥材料の計量供給およびエアロゾル化のための装置であって、エアロゾル化可能な材料の残留の問題を克服し、かつ装置内に存在する実質的に全てのエアロゾル化可能な物質をエアロゾル化することを可能にする、エアロゾル化可能な乾燥材料の計量供給およびエアロゾル化のための装置を供給することである。
【0013】
さらに本発明の課題は、エアロゾル化可能な乾燥材料の計量供給およびエアロゾル化のためのシステムであって、自発的に呼吸をしている患者の治療も、換気される患者の治療も可能にし、成人にも幼児にも使用することができるシステムを提供することである。
【0014】
上記課題は、請求項1に記載の、エアロゾル化可能な乾燥材料の計量供給およびエアロゾル化のための装置により解決される。本発明の有利な実施形態および変化形は、それぞれ従属請求項に記載されている。
【0015】
本発明の第1の態様では、エアロゾル化可能な材料の計量供給およびエアロゾル化のための新規の装置は、エアロゾル化チャネルを備えたボディを有していて、該エアロゾル化チャネルは、このエアロゾル化チャネルにガスの圧力パルスを供給する、パルス化されたキャリアガスの供給源に接続可能な遠位のアタッチメント(取付け)部分と、エアロゾル化された材料(エアロゾル)を患者に向かって放出するための近位のアタッチメント部分とを有している(「遠位」および「近位」は患者から見たものとする)。さらに有利には、この装置は、形成されたエアロゾルをエアロゾル化チャネルまたはリザーバから患者向かって搬送するために役立つ、パルス化されていないキャリアガスの供給源に接続可能なアタッチメント部分を有している。リザーバは、壁を有しており、ガス密な形式でボディに接続されていて、かつエアロゾル化チャネルに流体接続している。複数の壁の少なくとも一部は膜であり、この膜は、振動され得る。振動を、一種のアクチュエータにより実現することもできるが、膜が圧力パルスにより振動され得る自己励振式(self-exiting)の膜であると有利である。
【0016】
有利には、この新規の装置が、膜の種々異なる領域の間で振動を伝達する手段を有している。この手段が、圧力パルスにより形成された振動エネルギを再利用することができると有利である。振動エネルギを、膜の振動がより強い領域から、振動が弱い領域に伝達することができると有利である。このことは、複数の膜の間の圧力差を補償するために役立つ。したがって、振動がより弱い領域を活性化する。このような伝達は、たとえば、近位のアタッチメント部分および/またはエアロゾル化チャネルと、装置の遠位のリザーバとの管路接続により確実にされ得る。
【0017】
本明細書において用語「膜」は、ガス、液体およびエアロゾル化可能な材料に対して不透過性のあらゆるシート状の構造体であり、リザーバ内のエアロゾル化可能な材料のための格納容器の少なくとも一部を形成する。本明細書において使用される用語「自己励振式」とは、弾性変形し、装置に供給されたキャリアガスの圧力パルスに反応して振動する膜の特性に関する。したがって、膜の材料の機能として、膜は、圧力パルスにより変形されるように十分に薄くかつフレキシブルであることが必要であると理解され得る。膜材料の例は、シリコーンのような弾性ポリマーであるが、当業者にとっては別の材料も明らかである。
【0018】
膜壁が設けられていることにより、本発明による装置は、リザーバ内に貯蔵されたエアロゾル化可能な乾燥材料の実質的に全ての量を利用することができ、エアロゾル化可能な乾燥材料をエアロゾルに変換する。なぜならば、リザーバの膜壁の振動が、エアロゾル化可能な材料を緩めて、これによりエアロゾル化可能な材料は、リザーバの下方の計量供給チャンバ内に落下することができるからである。エアロゾル化のプロセスは、たとえば国際公開第2006/108558号に記載されている。
【0019】
したがって、本発明によれば、各圧力パルスのあとに、エアロゾル化可能な乾燥材料の均質な緩いチャージを、計量供給およびエアロゾル化のための装置内に提供することが可能であり、その結果、材料の徐々に増大する締め固めが回避され、均質な計量供給がかなりの期間にわたって保証されている。したがって、本発明による装置は、エアロゾル化可能な材料を、大量に、再現性の高い形式で、かつ有利には可動部分なしに計量供給することを簡単に可能にする。さらに、エアロゾル化チャネルとリザーバとの間の圧力補償の間に、エアロゾル化可能な材料のチャージを緩めることが達成される。したがって、圧縮されたキャリアガスと材料との混合物は、主に、解凝集された粒子、有利には専らまたはほぼ専ら、エアロゾル化可能な材料の凝集されていない一次粒子のサイズを有する粒子を含んでいる。エアロゾル化された材料が、粉末状肺サーファクタントのような粉末状の医療物質の形である場合、リザーバ内に位置する医療物質の一次粒子が、圧縮されたガスと材料との混合物中に存在することが可能である。この点で、本発明による装置は、有利には機械的な可動部分が完全に存在しないことを可能にし、エアロゾル化可能な乾燥材料の、一次粒子のサイズにまで下げられた最適なエアロゾル化を可能にする。
【0020】
有利な場合、本発明による装置は、治療および/または診断目的のための物質の計量供給およびエアロゾル化のために使用される。エアロゾル化可能な材料の一次粒子のサイズは、有利には、粒子が肺、すなわち気道または肺の肺胞における作用部位に到達することができるように、空気力学的質量中央径(MMAD)に相当する。肺に到達することができる粒子のMMADは、1〜5μmの範囲である。結果として、圧縮ガスと材料との混合物内の粒子の所望のMMAD範囲は、本発明によれば、1〜5μmの範囲である。
【0021】
有利には、エアロゾル化チャネルに向かって先細りした漏斗部分が、ボディ内に、リザーバとエアロゾル化チャネルとの間に設けられており、漏斗部分の壁は、自己励振式の膜である。漏斗部分は、エアロゾル化可能な材料が落下し、かつエアロゾル化チャネルに侵入する前に、リザーバから堆積する場所である。ベンチュリ原理を利用した圧力パルスの結果として形成される差圧パルスは、圧力勾配を形成する。この圧力勾配は、エアロゾル化可能な材料をエアロゾル化チャネル内に吸い込むために役立ち、エアロゾル化可能な材料をキャリアガス流内に取り込む。これによって、高濃縮のエアロゾルが形成される。漏斗部分の壁が自己励振式の膜であるので、漏斗部分に堆積した材料が、漏斗部分の壁に付着して残留することはなく、実質的に全ての材料がキャリアガス内に取り込まれ得る。
【0022】
リザーバは、有利には蓋を設けられていてよく、この蓋は、リザーバに面した膜を有している。このようなカバーは、リザーバが(再)充填されることを可能にし、カバーの膜は振動し、かつ完全な解凝集と、エアロゾル化可能な材料の、リザーバの内面からの分離とを支援する。必要であれば、膜と蓋との間に、ガスおよび/または湿気吸収体が挿入されていてよい。
【0023】
付加的には、自己励振式の膜が、エアロゾル化チャネルの底部の一部として、エアロゾル化チャネルとリザーバとの接続部の下方に設けられていてよい。エアロゾル化可能な材料がエアロゾル化チャネル内に落下する場合、全てのエアロゾル化可能な材料が常に迅速にキャリアガス流内に取り込まれるのではなく、いくらかの材料が上記接続部の下方に沈殿しかつ堆積する。この領域に自己励振式の膜を設けることにより、エアロゾル化チャネルを通じて送られた圧力パルスが、この膜を励振して、これにより材料がキャリアガス内に再び取り込まれる。このような構成は、「受動的に制御された」膜と呼ぶことができる。膜に接続されたアクチュエータを配置して、それにより膜を振動させることも考えられる。これは「能動的な制御」と呼ばれる。
【0024】
最後に、リザーバとボディとが一体的に形成されていると有利である。このことは、エアロゾル化可能な材料の全体的な投与量が製造者により注意深く制御され、不正確な充填による汚染および間違った用量が阻止され得る、使い捨ての装置が供給され得るという利点を有している。
【0025】
本発明の第2の態様では、エアロゾル化可能な乾燥材料の計量供給およびエアロゾル化のシステムが、エアロゾル化可能な乾燥材料の計量供給およびエアロゾル化のための上記の装置を有している。さらに、第1の中空スペーサが、装置の近位のアタッチメント部分に接続されていて、この第1の中空スペーサは、装置の近位のアタッチメント部分に向かって先細りした内壁を備えた遠位の部分と、患者に向かって先細りした内壁を備えた近位の部分とを有しており、有利には、遠位の部分と近位の部分との間に円筒状の中央の部分を有している。
【0026】
本明細書で使用される用語「スペーサ」は、行き来する呼吸またはキャリアガス/エアロゾルのための通路の付加的な部分片である。この部分片は、パルスガス流のための拡張スペースを提供する。第1の中空スペーサの形状は、エアロゾルを患者に運ぶガスの圧力パルスを減衰することを可能にすると同時に、サイレンサ(消音器)とほぼ同じように関連する騒音を減衰することを可能にする。したがって、自発的に呼吸をしている患者にも、換気される患者にも、エアロゾルがより均質にかつ許容不能な圧力スパイク(圧力のピーク)なしに到達する。
【0027】
有利な実施形態によれば、第1の中空スペーサの遠位の部分、中央の部分および/または近位の部分の内壁が、自己励振式の膜を有している。差圧パルスがシステム内に到達すると、膜がその弾性に基づいて振動するので、この構造は、エアロゾルからの粒子がスペーサの壁に付着して残ることを阻止している。
【0028】
第1の中空スペーサの遠位の部分と中央の部分との間に環状のギャップが設けられていると有利である。この環状ギャップは、補助空気供給部に接続可能である。この環状ギャップには補助空気を供給することができ、補助空気は、スペーサの内部を洗浄し、エアロゾル化可能な材料の残留物が壁に付着して残らないことを確実にする。環状ギャップの形状は、スペーサの円筒状の部分の壁に沿った補助空気のシース(包囲)流を形成することを可能にし、これによりスペーサに進入するエアロゾル流を包囲して、エアロゾル化された粒子がスペーサの壁に堆積することを阻止することを効果的に支援することができると最も有利である。
【0029】
好適な実施形態では、本発明の第2の態様によるシステムが、さらに第2の中空スペーサを有している。この第2のスペーサは、第1の中空スペーサの近位の部分に接続されており、かつ遠位で患者のコネクタに接続されている。この第2の中空スペーサは、逆止弁を備える周囲空気流入口を遠位の端部に有していて、かつ呼気ガス流出口が第2の中空スペーサの近位の端部に設けられている。第2の中空スペーサは、有利には、前述の第1の中空スペーサよりも大きな横断面と体積とを有していて、有利には円筒状であるが、本発明は形状に関していかなる制限もしない。
【0030】
上記配置は、エアロゾル化された材料を、自発的に呼吸をしている患者へ投与するために特に有利である。第1の中空スペーサのように、第2の中空スペーサは、計量供給およびエアロゾル化装置を通る圧縮空気供給部からの差圧パルスを減衰し、かつ関連する騒音を減じるために役立つ。しかし、第2の中空スペーサは、エアロゾルの中間貯蔵部を提供するという機能も有している。エアロゾルは、キャリアガス内に取り込まれたエアロゾル化された材料である。患者のマウスピースに接続されたこの中間貯蔵部から、自発的に呼吸をしている患者は、予め規定された投与量のエアロゾル化された材料を吸入することができる。第2の中空スペーサの、第1の中空スペーサよりも拡大された横断面とより大きな体積とにより、第2の中空スペーサからエアロゾル化された材料を引き出し吸入するために必要となる吸気陰圧は、計量供給およびエアロゾル化のための装置と第1の中空スペーサとが直接に患者に接続されている場合の吸気陰圧を越えることはない。さらに、第1のスペーサまたは第2のスペーサからのエアロゾル化された材料の吸入は、上記の補助空気の供給によってより容易にされている。
【0031】
択一的な有利な実施形態では、エアロゾル化装置は、患者への換気補助を実行するCPAP(continuous positive airways pressure:持続的気道陽圧法)システムとして運転された人工呼吸器システムに接続されている。このような配置では、エアロゾルは人工呼吸器またはCPAPシステム内へ、患者側の呼吸先端へのT字形コネクタを介して導入される。このシステムは、機械的に換気された患者または換気支援された患者、特に幼児や新生児の場合に多くの利点を提供している。緊急時には、幼い患者はエアロゾル化された医療物質の、注意深く制御された投与を必要とすることがある。人工呼吸器またはCPAPシステムと、計量供給およびエアロゾル化の装置とを、当該装置を人工呼吸器に並列に接続するT字形コネクタを介して接続することによって、(空気および/または酸素の圧力を制御することによって)どのくらいの量の空気または酸素を人工呼吸器から供給するか、かつ別個に、どのくらいの量のエアロゾル化された材料を患者に供給するかを両方とも制御することが可能になる。さらに、呼吸器の吸気管内にエアロゾルを搬送することとは反対に、希釈が最小限にされるので、この構成は患者に搬送されるガス内の高いエアロゾルの濃度を可能にする。
【0032】
上述のように、膜の1つのエリアから別のエリアに振動エネルギを伝達するための手段が設けられていてよい。
【0033】
有利には、補償管路が、第1の中空スペーサの内部と、漏斗部分の内部との間に設けられている。この管路は、スペーサとリザーバとの間の圧力差を補償するために役立ち、同時に漏斗の膜を活性化するために役立つ。
【0034】
上述のシステムは、肺サーファクタントのようなエアロゾル化可能な材料を呼吸ガス内に定期的に投与/添加するための標準的な人工呼吸器システムに組み込まれていてよい。
【0035】
上記エアロゾル化装置を様々な技術分野で使用することができることは、当業者にとって明らかである。実際に、本発明による装置は、粉末の効率的かつ均質なエアロゾル化が望まれるときはいつでも使用可能となる。本発明による装置の好適な用途が、治療および吸入可能な薬、医薬調製物および別の医療物質、特に肺サーファクタントの投与の分野である一方で、本発明による装置は、100mgに満たない範囲の全種類のエアロゾル化可能な物質から数グラムまでの物質のエアロゾル化のために使用され得る。適当に寸法設計された装置により、技術的規模に従ってより大量の物質のエアロゾル化を可能にすることも考えられる。エアロゾル化されるべき材料の粒子サイズおよび粒子サイズの分布は、特定の用途に関連する。たとえば、従来技術から知られているように、吸入器により肺に投与され得る粒子は、理想的には、1〜5μmの範囲のMMADを有している。もちろん、本発明による装置は、上記サイズの粒子のエアロゾル化に限定されるものではない。むしろ、上記範囲よりも小さい粒子も、大きな粒子も、この装置を使用することによりエアロゾル化することができる。例として、近年かなりの重要性を有している加工物の粉末コーティングも考えられる用途であり、粉末コーティングでは、極めて小さなサイズ(たとえば、<1μm)を有する比較的大量の粒子がエアロゾル化されなければならない。
【0036】
したがって、本発明は、エアロゾル化可能な材料の計量供給およびエアロゾル化のための装置であって、エアロゾル化チャネルを備えたボディが設けられており、エアロゾル化チャネルが、該エアロゾル化チャネルにガスの圧力パルスを供給する、キャリアガスの供給源に接続可能な遠位のアタッチメント部分と、エアロゾル化された材料を患者に向かって出力するための近位のアタッチメント部分とを備えており、さらに、エアロゾル化可能な材料を収容するためのリザーバが設けられていて、リザーバは、壁を有していて、かつボディにガス密な形で接続されており、かつエアロゾル化チャネルに流体接続している形式のものにおいて、壁の少なくとも一部が、自己励振式な膜であり、膜が圧力パルスにより励振されるようになっていることを特徴とする、エアロゾル化可能な材料の計量供給およびエアロゾル化のための装置に関する。
【0037】
さらに本発明は、上記の装置であって、エアロゾル化チャネルに向かって先細りした漏斗部分が、ボディ内に、リザーバとチャネルとの間に設けられていて、漏斗部分の壁が、自己励振式の膜である装置に関する。
【0038】
さらに本発明は、上記の装置であって、リザーバに上部カバーが設けられていて、上部カバーが、リザーバに面した自己励振式の膜を有している装置に関する。
【0039】
さらに本発明は、上記の装置であって、自己励振式の膜が、エアロゾル化チャネルの壁内に、エアロゾル化チャネルとリザーバとの接続部の下方に設けられている装置に関する。
【0040】
さらに本発明は上記の装置であって、リザーバとボディとが一体的に形成されている装置に関する。
【0041】
さらに本発明は、上記の装置であって、リザーバが弁を介してエアロゾル化チャネルに接続されている装置に関する。1つの実施形態では、この弁は回転弁である。
【0042】
要約すると、本発明は、たとえば圧縮されたガスの膨張により形成された圧力パルスのエネルギを弾性的な構成要素の励振に使用する。上述したように、これらの構成要素は膜、特に自己励振式の膜であってよい。膜の励振により、もともとの圧力パルスからエネルギを取り出すことができ、したがって、圧力パルスを減衰させる。その結果、エアロゾル化可能な材料は、減衰されていない圧力パルスにより開始された急速な出力におけるよりも、より連続的、一定かつ均質な形でエアロゾル化される。このような圧力パルスの減衰によって、製造されたエアロゾルは患者によって快適に呼吸され得る。
【0043】
付加的に、特にリザーバ内でのエアロゾル化可能な材料の凝集が阻止される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明による計量供給およびエアロゾル化のためのシステムの1実施形態の長手方向の断面図である。
【図2】自発的に呼吸をしている成人患者に用いられる、計量供給およびエアロゾル化のためのシステムの実施形態を示す概略図である。
【図3】換気される幼児に用いられる、計量供給およびエアロゾル化のためのシステムの実施形態を示す概略図である。
【図4】換気される成人に用いられる、計量供給およびエアロゾル化のためのシステムの実施形態を示す概略図である。
【0045】
有利な実施形態の詳細な説明
図1には、計量供給およびエアロゾル化のためのシステムの第1の実施形態の長手方向の断面図が示されている。このシステム100は、計量供給およびエアロゾル化のための装置1を有している。装置1内では、エアロゾル化チャネル3が、ボディ2の内側に配置されている。ボディ2は、その(患者から見て)遠位の端部(図1で右側)に、毛管シート4を有している。この毛管シート4内に、毛管13を支持する毛管ホルダ14が組み込まれている。この毛管ホルダ14はまた、接続線路および弁(両方とも図示せず)を介して、パルス状の圧縮されたキャリアガスの供給部に接続されていてよい。エアロゾル化チャネル3の(患者から見て)近位の端部は、拡散ノズル5内に開いており、拡散ノズル5の横断面は、毛管13から離れる方向で連続的に増大している。
【0046】
エアロゾル化チャネル3の上方に、装置1は、エアロゾル化されるべき粉末状の材料のためのリザーバ(容器)9を有している。リザーバ9は、外壁10と、内側部分とを有していて、内側部分は円筒壁11と円錐状に先細りする壁12とを備えている。壁11および壁12は、たとえば医療グレードのシリコーンから形成された、約0.5mmの肉厚を有する自己励振式(self-exiting)の膜である。外壁10と円筒状の壁11との間および外壁10と円錐状の壁12との間には、それぞれスペース6,7が形成されている。リザーバ9の底部は、エアロゾル化チャネル3の上方に配置された開口19を形成している。開口19は、計量供給チャンバ8の部分的に組み込まれた部分である。エアロゾル化されるべき粉末のチャージ(図示せず)は、この開口19の上に配置される。粉末のチャージは、エアロゾル化チャネル3内にほとんどエアロゾル化可能な材料の粒塊(grain)が侵入しない状態にまで圧縮されていてよい。複数の部分5,3,15,8,13および4を含むアッセンブリ全体は、装置の長手方向軸線を中心として90度だけ回転されてよく、これにより粉末がチャンバ8内に落下することを阻止する、つまりリザーバを閉じる。したがって、前記アッセンブリは、ボディ2と相俟って回転弁を形成している。この回転弁は、リザーバ9内に貯蔵された粉末の、計量供給チャンバ8とエアロゾル化チャネル3内への供給を遮断することを可能にする。
【0047】
リザーバ9の上部には、蓋16が設けられている。蓋16はリザーバを堅く閉じている。蓋の底部側、つまりリザーバの内室に面して、自己励振式の膜17が設けられている。この膜17は、リザーバ9の上部開口を密閉している。膜の上方で、湿気(または一般的にはガス)吸収器18が、カバーに含まれており、この湿気吸収器18は、リザーバ9内の、さもなければ不都合な効果を及ぼし得る残留した湿気または別の微量ガスを取り除く。さらに、膜17と湿気吸収器18との間にはスペースが形成されている(図示せず)。
【0048】
図1に示した実施形態では、リザーバ9と、エアロゾル化チャネル3を備えたボディ2とが一体に形成されていて、この場合、気密性および無菌性が保証されている。しかし、リザーバ9とボディ2とが別個の構成部材であってもよく、互いに気密な形式で組み付けられていることも考えられる。
【0049】
拡散ノズル5は、(患者から見て)近位のアタッチメント片2a内に開いている。アタッチメント片2aは、ボディ2の、組み込まれた構成部分である。アタッチメント片2a上には、中空スペーサ20が気密な形式で組み付けられている。スペーサ20は、円筒状の外壁21と、(患者から見て)遠位に向かって先細りする円錐形の内壁22を備える遠位の部分と、近位に向かって先細りする円錐状の内壁24を備える近位の部分と、遠位の部分と近位の部分との間に配置された、円筒状の壁23を備える中央の部分とを有している。リザーバと同様に、スペーサ20の壁22,23および24は、たとえばシリコーンから成る自己励振式の膜である。外壁21と壁22,23,24との間には相応するスペース25,26,27が設けられている。スペーサ20の遠位の部分と、中央の部分との間には、環状ギャップが形成されていて、補助ガス供給部(図示せず)に接続されている。
【0050】
運転時には、キャリアガスの圧力パルスが、装置1のエアロゾル化チャネル3内に毛管13を通じて進入し、毛管13から出たガスとリザーバ9との間でベンチュリ原理により形成された圧力差に基づいて、エアロゾル化可能な材料が、リザーバ9からエアロゾル化チャネル3内に吸い出され、拡散し、キャリアガス内に取り込まれる。同時に、差圧パルスが、リザーバ9の膜壁11,12と、スペーサ20の膜壁22,23,24に作用し、これらの膜壁を、圧力パルスの周波数により膨張させかつ振動させる。したがって、これらの壁に付着しているエアロゾル化可能な材料は、大部分の材料内に再び取り込まれて、キャリアガス流中に進入することができる。
【0051】
択一的な実施形態では、装置の内壁のいくつかだけが自己励振式の膜として実施されていることも考えられる。たとえば、択一的な実施形態では、先細りした壁12だけが自己励振式の膜である。当然ながら、装置の、自己励振式の膜として実施されていない各壁は、この内壁と対応する外壁との間の中空スペースを要求としない。たとえば、先細りした壁12だけが自己励振式の膜として実施されている場合、スペース6および25,26,27は省略することができる。
【0052】
本発明による装置およびシステムにより投与され得るエアロゾル化可能な材料の量は、50mgを上回り、かつ計量供給の高い精度を伴う。一方では、この精度が、極めて狭い「治療濃度域」を有する薬の使用を可能にし、他方では、上述の大きな量が、大量に投与される必要のある物質の使用にシステムを適合させる。たとえば、本発明による装置の使用により投与され得る、肺サーファクタント以外のエアロゾル化可能な医療物質は、抗生物質、核酸、遅延剤(retard formula)、ペプチド/タンパク質、ワクチン、抗体、インスリン、マンニトール、ヒドロキシエチル澱粉、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、その他の塩のような浸透活性物質、酵素(たとえばDNアーゼ)、Nアセチルシステイン等を含む。
【0053】
次に、図2を見ると、計量供給およびエアロゾル化のためのシステム200の実施形態が示されている。このシステム200は、自発的に呼吸をしている患者の、大量のドライパウダー吸入のために使用される。このシステム200は、計量供給およびエアロゾル化のための装置1と、第1の実施形態に設けられた第1のスペーサ20とを有している。この場合、付加的に、補償管路29が、リザーバのスペース6,7を、スペーサ20のスペース25,26,27に接続させる。上流側では、システム200は、制御装置50を有している。制御装置50は、圧縮空気線路51を介して、圧縮空気供給部52(たとえば病院の圧縮空気供給部)に接続されている。圧縮空気供給部52は、圧縮された空気を、主接続線路41を通じて、計量供給およびエアロゾル化のための装置1に供給する。主接続管路41は、装置1の毛管ホルダ14(遠位のアタッチメント部分)に接続されている。装置に向かう圧縮された空気の流れは、高速スイッチング・ソレノイド弁40により制御されている。高速スイッチング・ソレノイド弁40は、制御装置から送られる電流パルス43により開閉させられ、これによって空気圧力パルスの規定された数、期間および周波数を達成するようにされる。使用時に、圧縮された空気の流れは、制御装置によって自動的に引き起こされてもよいが、患者の呼吸によっても引き起こすことができるので、エアロゾル化のタイミングおよび第2のスペーサ内に供給されたエアロゾル化された材料の体積を患者の呼吸特性に適合させることができる。
【0054】
補助接続線路42は、パルス状でない空気を、スペーサ20の環状ギャップ28(接続部は図示せず)に供給し、これによって、スペーサからエアロゾル化可能な材料の残留物を洗流する。両接続線路41,42は、不都合な粒子による汚染を阻止するためのフィルタFを有している。
【0055】
下流側で、第2のスペーサ30が、第1のスペーサ20に接続されている。同時に、逆止弁32を有する周囲空気流入口31が、第2のスペーサ30の(患者側から)遠位の端部に設けられている。第2のスペーサ30の(患者側から)近位の端部には、マウスピース35を備えた直線コネクタ34が位置決めされている一方で、呼気ガス流出口36(任意でフィルタFを備える)が、直線コネクタ34から垂直方向に分岐している。
【0056】
図3は、計量供給およびエアロゾル化のためのシステムの1実施形態を示している。このシステムは、特に、幼児または新生児のような極めて幼い子どもの急性呼吸治療のために適している。図1および図2に関して説明された構成要素と同一であるかまたは同等である幾つかの構成要素は、同じ参照符号を有しており、繰り返し説明しない。システム300は、計量供給およびエアロゾル化のための装置1と、スペーサ20と、制御装置50とを有している。制御装置50は、図2に示した実施形態と同様の形式で接続されている。スペーサ20の出力部に、人工呼吸器管路60が接続されている。この人工呼吸器管路60はまた、T字形片61の第1のポートに接続されている。さらに、この実施形態では、CPAP(持続的気道陽圧法)モードの人工呼吸器が設けられており、この人工呼吸器は、人工呼吸器の圧力を一定のレベルに維持しながら、呼吸ガスを、呼吸ガス線路64を介してマニホールド(多岐管)65に供給する。マニホールド65から、共通の換気線路62がT字形片61の第2のポートに接続されている。T字形片61の第3のポートは、鼻咽頭チューブ66に接続されている。鼻咽頭チューブ66は、幼児の鼻を通じて導入され、これにより鼻咽頭チューブ66の先端部は、声門の真上に位置決めされている。
【0057】
さらに流量センサ67が、共通線路62内のガスのガス流量V3を測定するためにマニホールドに配置されている。測定信号は、人工呼吸器70にフィードバックされ、人工呼吸器70は、線路64および線路63内の圧力を、それぞれの流量を制御することによって直接に制御し、したがって流量V3を間接的に制御する。この圧力制御によって、拡散計量供給ユニットからの付加的な流れにより、流量V3は減少するように制御される。これにより、圧力、ひいては幼児への全体の流れ(V5)は一定に維持されている。
【0058】
付加的に、酸素センサ69が、T字形コネクタ61の第3のポートに設けられている。酸素センサ69は、肺または幼児に実際に投与される呼吸ガス混合物の酸素含有量をモニタリングする。各測定信号は、人工呼吸器70にフィードバックされて、そこで、流量情報と共に、供給される呼吸ガス混合物の特性の包括的な状況が得られる。次いで、この特性は、人工呼吸器70により制御される。要約すれば、装置1を呼吸器システムと並列に接続することにより、酸素リッチな呼吸ガスと、肺サーファクタントのようなエアロゾル化された材料の正確な投与量とを供給することが可能になる。
【0059】
最後に図4には、計量供給およびエアロゾル化のためのシステムの別の実施形態が示されている。システム400は、換気される、つまり人工呼吸器を装着された成人の患者により使用され、計量供給およびエアロゾル化のための装置1と、制御装置50と、人工呼吸器71と、中空スペーサ80とを有している。制御装置は、上述の形式で病院の空気供給部52に接続され、かつまさに前述の実施形態で説明したように弁40を有する主接続線路41を介して装置1に接続されている。しかしこの実施形態では、スペーサ80の直径および体積は両方とも、スペーサ20におけるよりもはるかに大きく、これによって、成人の、換気される患者のニーズに適合させることができる。スペーサ80の遠位の端部は、装置1の近位のアタッチメント片2aに接続されており、スペーサ80の近位の端部は、呼吸マスク85に導かれる直線コネクタ84を有している。逆止弁82を備える呼吸ガス流入口81は、スペーサ80の遠位の端部に側方で配置されていて、通常の形式で、フィルタと呼吸ガス線路64とを介して人工呼吸器71に接続されている。同様に、スペーサ80の近位の側で、呼気ガス流出部86が、逆止弁82と呼気ガス戻り線路63を介して人工呼吸器71に接続されている。
【0060】
本発明による装置およびシステムで投与され得るエアロゾル化可能な材料の量は、50mgを上回り、かつ計量供給の高い精度を伴う。一方では、この精度が、極めて狭い「治療濃度域」を有する薬の使用を可能にし、他方では、上述の大きな量が、大量に投与される必要のある物質の使用にシステムを適合させる。たとえば、本発明による装置の使用により投与され得る、肺サーファクタント以外のエアロゾル化可能な医療物質は、造影剤、抗生物質、核酸、遅延剤(retard formula)、ペプチド/タンパク質、ワクチン、抗体、インスリン、およびマンニトール、ヒドロキシエチル澱粉、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、その他の塩のような浸透活性物質、酵素(たとえばDNアーゼ)、Nアセチルシステイン等を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル化可能な材料の計量供給およびエアロゾル化のための装置であって、
エアロゾル化チャネルを有するボディが設けられていて、エアロゾル化チャネルが、該エアロゾル化チャネルにガスの圧力パルスを供給するキャリアガスの供給源に接続可能な遠位のアタッチメント部分と、エアロゾル化された材料を患者に向かって放出するための近位のアタッチメント部分とを有しており、
エアロゾル化された材料を収容するためのリザーバが設けられており、該リザーバが、壁を有していて、かつガス密な形式で前記ボディに接続されていて、かつエアロゾル化チャネルに流体接続している形式のものにおいて、
前記壁の少なくとも一部が自己励振式の膜であり、該膜が、圧力パルスにより振動されるようになっていることを特徴とする、エアロゾル化可能な材料の計量供給およびエアロゾル化のための装置。
【請求項2】
エアロゾル化チャネルに向かって先細りした漏斗部分が、ボディ内に、前記リザーバと前記エアロゾル化チャネルとの間に設けられており、漏斗部分の壁が自己励振式の膜である、請求項1記載の装置。
【請求項3】
リザーバに上部カバーが設けられており、該上部カバーが、リザーバに面した自己励振式の膜を有している、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
自己励振式の膜が、エアロゾル化チャネルの壁内に、エアロゾル化チャネルとリザーバとの接続部の下方に設けられている、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記リザーバと前記ボディとが一体に形成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記リザーバが、弁を介してエアロゾル化チャネルに接続されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
前記弁が、回転弁である、請求項6記載の装置。
【請求項8】
噴霧化可能な材料の計量供給および乾式噴霧のためのシステムであって、
請求項1から7までのいずれか1項記載の、噴霧化可能な材料の計量供給および乾式噴霧のための装置が設けられており、第1の中空スペーサが、前記装置の近位のアタッチメント部分に接続されていて、かつ該近位のアタッチメント部分に向かって先細りする内壁を備える遠位の部分と、患者に向かって先細りする内壁を備える近位の部分とを有しており、有利には近位の部分と遠位の部分との間に円筒状の中央の部分を備えることを特徴とする、噴霧化可能な材料の計量供給および乾式噴霧のためのシステム。
【請求項9】
前記第1の中空スペーサの遠位の部分の内壁、中央の部分の内壁および/または近位の部分の内壁が、自己励振式の膜を有している、請求項8記載のシステム。
【請求項10】
前記第1の中空スペーサの遠位の部分と中央の部分との間に環状ギャップが設けられていて、該環状ギャップが、補助空気供給部に接続可能である、請求項8または9記載のシステム。
【請求項11】
さらに第2の中空スペーサが設けられていて、該第2の中空スペーサが、遠位では第1の中空スペーサの近位の部分に、かつ近位ではマウスピースに接続されており、第2の中空スペーサが、遠位の端部に設けられた、逆止弁を備える周囲空気流入口と、第2の中空スペーサの近位の端部に設けられた呼気ガス出口とを備えている、請求項10記載のシステム。
【請求項12】
さらに人工呼吸器またはCPAP弁が設けられており、第1の中空スペーサの近位の部分と、人工呼吸器またはCPAP弁とが、Y字形コネクタを介して患者側の呼吸先端に接続されている、請求項10記載のシステム。
【請求項13】
人工呼吸器の空気搬送ポートと、人工呼吸器の呼気ガスポートとが、Y字形コネクタを介してマニホールドに接続されている、請求項12記載のシステム。
【請求項14】
患者側の呼吸先端が、鼻咽頭チューブである、請求項12または13記載のシステム。
【請求項15】
噴霧化可能な材料の計量供給および乾式噴霧のためのシステムであって、請求項1から7までのいずれか1項記載の、噴霧化可能な材料の計量供給および乾式噴霧のための装置が設けられており、さらに中空スペーサと、人工呼吸器とが設けられており、中空スペーサが、遠位で前記装置の近位のアタッチメント部分に、かつ近位で呼吸先端に接続されており、前記中空スペーサが、さらにその遠位の端部で、逆止弁を介して人工呼吸器の空気搬送ポートに接続されており、かつその近位の端部で人工呼吸器の呼気ガスポートにさらに接続していることを特徴とする、噴霧化可能な材料の計量供給および乾式噴霧のためのシステム。
【請求項16】
流量センサおよび酸素センサのいずれか1つが、人工呼吸器またはCPAP弁と、患者との間に設けられている、請求項12から15までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項17】
流量センサが、前記マニホールドに設けられていて、酸素センサがY字形コネクタの患者側のポートに設けられている、請求項13または14記載のシステム。
【請求項18】
第1の中空スペーサまたは中空スペーサの内部と、漏斗部分の内部との間に、補償管路が設けられている、請求項8から17までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項19】
システムが、装置にキャリアガスの圧力パルスを供給するための制御ボックスを有しており、該制御ボックスが、病院側の圧縮空気供給部に接続可能であり、かつ装置ボディの遠位のアタッチメント部分に弁を介して接続されており、制御ボックスは、キャリアガスの圧力パルスの数および周波数と、キャリアガスの流量とをバルブを制御することにより制御するようになっている、請求項8から18までのいずれか1項記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−524571(P2012−524571A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506501(P2012−506501)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055345
【国際公開番号】WO2010/122103
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(507229021)ニコメッド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (90)
【氏名又は名称原語表記】Nycomed GmbH
【住所又は居所原語表記】Byk−Gulden−Str. 2, D−78467 Konstanz, Germany