説明

天井クレーン

【課題】複数のホイスト及び吊具を用いて吊荷を吊り下げる天井クレーンであっても、簡
単に吊荷を旋回させることができる天井クレーンを提供すること。
【解決手段】ガーダ3と、ガーダ3がガーダ走行部30を介して走行する走行レール2、
2と、ガーダ3に沿って横行するトロリ4とを備え、トロリ4に旋回ベアリング41を介
して回転体5を配設するとともに、回転体5に旋回ベアリング41の回転中心軸41aが
対称の中心となるようにして複数台のホイスト6を配設し、回転体5を旋回ベアリング4
1の周面に形成した歯車42と噛合する回転体5の旋回駆動機構50のピニオン51を回
転駆動することによって旋回させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井クレーンに関し、特に、吊荷を作業者の手作業によらずに旋回させるこ
とができる天井クレーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、工場等の構造物内に設置される天井クレーンは、構造物内にある吊荷を吊り下
げて搬送するために利用され、ガーダと、ガーダがガーダ走行部を介して走行する、所定
間隔(スパン)を設けて構造物内に配設される走行レールと、ガーダに沿って横行するト
ロリとを備え、トロリに配備されているホイストが巻回するワイヤロープの先端に配設さ
れる吊具によって、吊荷を吊り下げて搬送するようにしている(例えば、特許文献1〜2
参照。)。
【0003】
ところで、この天井クレーンによって、所定位置から吊り下げて搬送先に移動させて吊
荷を着床する際に、吊荷の向きを変更させる必要が生じたとき、通常、作業者が手作業に
よって吊り下げた状態の吊荷を旋回(回動)させてその向きを調節し着床させるようにし
ている。
【0004】
このとき、吊荷が重量物で、複数のホイストを用い、吊荷の複数箇所に吊具を取り付け
て吊荷を吊り下げるときは、作業者が手作業によって吊り下げた状態の吊荷を旋回させる
ことができる範囲は僅かであるとともに、吊具を先端に配設するワイヤロープが捻れるこ
ととなり、また、作業に危険を伴うという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−109284号公報
【特許文献2】特開2008−030895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の天井クレーンの有する問題点に鑑み、複数のホイスト及び吊具を
用いて吊荷を吊り下げる天井クレーンであっても、簡単に吊荷を旋回させることができる
天井クレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の天井クレーンは、ガーダと、該ガーダがガーダ走行
部を介して走行する走行レールと、ガーダに沿って横行するトロリとを備えてなる天井ク
レーンにおいて、トロリに旋回ベアリングを介して回転体を配設するとともに、該回転体
に前記旋回ベアリングの回転中心軸が対称の中心となるようにして複数台のホイストを配
設し、前記回転体を旋回ベアリングの周面に形成した歯車と噛合する回転体の旋回駆動機
構のピニオンを回転駆動することによって旋回させるようにしたことを特徴とする。
【0008】
この場合において、前記複数台のホイストに共通の吊具置き台を吊設することができる

【発明の効果】
【0009】
本発明の天井クレーンによれば、トロリに旋回ベアリングを介して回転体を配設すると
ともに、該回転体に前記旋回ベアリングの回転中心軸が対称の中心となるようにして複数
台のホイストを配設し、前記回転体を旋回ベアリングの周面に形成した歯車と噛合する回
転体の旋回駆動機構のピニオンを回転駆動することによって旋回させるようにしたから、
旋回駆動機構によって、複数台のホイストを配設した回転体を旋回させることで、吊り下
げた吊荷を、搬送先に移動させて着床する際に、吊荷の向きを作業者の手作業によらず、
任意の向きに容易に変更させることができる。
また、ホイストを配設する回転体が旋回するから、吊荷を吊り下げるワイヤが捻れるこ
とはなく、安全に吊荷を旋回させることができる。
【0010】
また、前記複数台のホイストに共通の吊具置き台を吊設することにより、ホイストで吊
具置き台のバランスをとって昇降させることで、複数の吊具の水平位置は一定の高さを保
つことができ、吊荷をバランスよく吊り下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の天井クレーンの第1実施例を示す一部切り欠きの正面図である。
【図2】同天井クレーンのトロリを示し、(a)は一部切り欠きの正面図、(b)は一部切り欠きの平面図である。
【図3】同天井クレーンの回転体の配設位置を変更した変形例を示し、(a)は一部切り欠きの正面図、(b)は一部切り欠きの平面図である。
【図4】本発明の天井クレーンの第2実施例を示し、(a)は一部切り欠きの正面図、(b)は一部切り欠きの平面図である。
【図5】同天井クレーンのトロリを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の天井クレーンの実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1〜図3に、本発明の天井クレーンの第1実施例を示す。
この天井クレーン1Aは、ガーダ3と、ガーダ3がガーダ走行部30を介して走行する
走行レール2、2と、ガーダ3に沿って横行するトロリ4とを備え、トロリ4に旋回ベア
リング41を介して回転体5を配設するとともに、回転体5に旋回ベアリング41の回転
中心軸41aが対称の中心となるようにして複数台のホイスト6を配設し、回転体5を旋
回ベアリング41の周面に形成した歯車42と噛合する回転体5の旋回駆動機構50のピ
ニオン51を回転駆動することによって旋回させるようにしている。
【0014】
ガーダ3は、所定間隔(スパン)を設けて構造物内に平行に配設される対となる走行レ
ール2、2(本実施例においては、天井部の近傍に敷設するようにしている。)に両端部
に配備した駆動機構によって回動し、走行レール2、2を走行する駆動部を備えたガーダ
走行部30を備えるとともに、ガーダ3に沿って横行(走行レール2、2と直交する方向
)するトロリ4の横行レール31とからなる。
通常、ガーダ3は、トロリ4がスムーズに横行することができるように、I型鋼又はH
型鋼(本実施例においては、I型鋼)からなる横行レール31を平行に2本備え、横行レ
ール31間の距離を一定に保つように端部をガーダ走行部30に固定するように構成され
ている。
【0015】
トロリ4は、図2に示すように、駆動機構によって回動し、I型鋼からなる横行レール
31、31の下側フランジの上面をレール面として走行(横行)する駆動輪43を配備し
たトロリ本体40と、このトロリ本体40の中央部に旋回ベアリング41を取り付けるた
めの台座を形成するようにしている。
なお、駆動輪43は、1本の横行レール31に対して、対となる駆動輪43が複数走行
するように構成されているが、駆動機構によって駆動する駆動輪43は、本実施例におい
ては、1組の駆動輪43のみである。
【0016】
回転体5は、一部を屈曲させた複数本のH型鋼からなる主部材52(本実施例において
は、5本。)を、間隔をおいて、H型鋼からなる連結部材53によって連結し、外側の主
部材52の端部(本実施例においては、合計4箇所。)にホイスト取付部材を介して、ホ
イスト6を配設するとともに、中央部に旋回ベアリング41を取り付けるための台座を、
主部材52及び連結部材53の上面から上側に向かって形成するようにしている。
この台座はトロリ本体40の下面から下側に向かって形成される台座と対となるもので
、回転体5を、横行レール31よりも下側に位置するように構成している。
【0017】
旋回ベアリング41は、トロリ本体40に対して、回転体5を相対的に旋回させるため
の部材であって、本実施例においては、内輪部をトロリ本体40に、外輪部を回転体5に
取り付けるようにしている。
また、旋回ベアリング41の外輪部の外周面には、トロリ本体40に配設する回転体5
の旋回駆動機構50の駆動軸に取り付けられたピニオン51と噛合する歯車42を形成し
、旋回駆動機構50の回動を、旋回ベアリング41を介して回転体5に伝え、回転体5を
旋回させるようにしている。
旋回駆動機構50は、低速回転(例えば、1rpm程度。)が可能な、例えば、インバ
ータ制御することができる減速機等を使用する。
【0018】
回転体5に配設されるホイスト6は、先端にフック等の吊具61を取り付けたワイヤロ
ープを巻回し、吊具61に係止させた吊荷を昇降させるもので、本実施例においては、1
〜20m/minの速度でワイヤロープを巻き上げることのできるインバータモータを使
用するようにしている。
【0019】
また、図3に示す天井クレーン1Bは、回転体5の配設位置を変更した変形例で、トロ
リ本体40の上面に旋回ベアリング41の取り付け用の台座を配設し、この台座に旋回ベ
アリング41の外輪部を取り付けるとともに、旋回ベアリング41の内輪部に円盤状の回
転体5を取り付けるようにしている。
この場合、本実施例においては、ホイスト6を、旋回ベアリング41の回転中心軸41
aが対称の中心となるようにして2台配備するようにしている。
この天井クレーン1Bは、ガーダ3と天井面との間に空間があり、ガーダ3の上を作業
者が歩行し、ガーダ3、トロリ4及びホイスト6等の点検を行ことができるような、大型
の天井クレーンの場合に好適に用いることができる。
【0020】
次に、この天井クレーン1A、1Bを用いて、吊荷を、所定位置から吊り下げて、搬送
先に移動させ、着床する際に吊荷の向きを変更させる要領を説明する。
【0021】
まず、ガーダ3を走行レール2、2に、トロリ4をガーダ3の横行レール31、31に
沿って移動させて、トロリ4を吊荷の真上に位置させる。
次いで、複数台のホイスト6(本実施例においては、4台又は2台。)を操作し、吊具
61を下降させ、吊荷の角部の4箇所又は2箇所に取り付けた環状フックに係止させた後
、所定の高さまで吊荷を上昇させる。
【0022】
所定の高さに吊り下げられた吊荷を、ガーダ3を走行レール2、2に、トロリ4をガー
ダ3の横行レール31、31に沿って搬送先まで移動させる。
【0023】
そして、搬送先の載置場所において、吊荷を下降させつつ、旋回駆動機構50を操作し
、回転体5を回動させることで吊荷の向きを所望の向きまで変更させ、吊荷を搬送先に着
床させる。
これによって、工場内に進入できるトラックの向きに制限がある場合において、大型で
重量物の吊荷(特に、平面視長方形形状の吊荷)であっても、トラックの荷台にスムーズ
に載置させることができる。
【実施例2】
【0024】
図4〜図5に、本発明の天井クレーンの第2実施例を示す。
この天井クレーン1Cは、第1実施例と同様に、ガーダ3と、ガーダ3がガーダ走行部
30を介して走行する走行レール2、2と、ガーダ3に沿って横行するトロリ4とを備え
、トロリ4に旋回ベアリング41を介して回転体5を配設するとともに、回転体5に旋回
ベアリング41の回転中心軸41aが対称の中心となるようにして複数台のホイスト6を
配設し、回転体5を旋回ベアリング41の周面に形成した歯車42と噛合する回転体5の
旋回駆動機構50のピニオン51を回転駆動することによって旋回させるようにするとと
もに、複数台のホイスト6に共通の吊具置き台7を吊設するようにしている。
【0025】
このとき、ホイスト6に吊設した吊具置き台7に、耐荷重が複数台のホイスト6の合計
定格荷重以上の第1吊具61Aを旋回ベアリング41の回転中心軸41aの位置に配設す
るとともに、合計した耐荷重がホイスト6の合計定格荷重以上の複数個の同一の耐荷重の
第2吊具61Bを旋回ベアリング41の回転中心軸41aが対称の中心となる位置に配設
することができる。
【0026】
これにより、1本のワイヤで吊荷を吊り下げるときは第1吊具61Aを、複数本のワイ
ヤで吊荷を吊り下げるときは第2吊具61Bを使用することができ、吊荷に応じた吊具6
1の使い分けを容易に行うことができる。
【0027】
また、ホイスト6の定格荷重と、第1吊具61A及び第2吊具61Bの耐荷重との関係
は、例えば、2台のホイスト6の定格荷重がそれぞれ4tで合計8tの定格荷重の場合、
第1吊具61Aを耐荷重8tの吊具を使用し、第2吊具61Bを耐荷重4tの吊具を使用
する。
これによって、ホイスト6の合計の定格荷重に対して、無駄のない吊具を使用すること
ができ、吊具の選択において、オーバースペックとなることを防止することができる。
【0028】
吊具置き台7は、複数台のホイスト6、本実施例においては、2台のホイスト6に吊設
され、旋回ベアリング41の回転中心軸41aが、吊具置き台7を通過する(実質的には
吊具置き台7の重心を通過するようにする。)ように配備され、その回転中心軸41aの
位置に第1吊具61Aを、回転中心軸41aが対称の中心となる位置に第2吊具61Bを
配設するものであれば、その形状や大きさ等は、特に限定されるものではないが、本実施
例においては、上面にホイスト6が巻き上げるワイヤが係止される対となる滑車70、7
0が配設されるとともに、下面に第1吊具61A及び第2吊具61Bが配設されるI型鋼
又はH型鋼等の鋼材を組み合わせて構成するようにしている。
【0029】
また、本実施例における、横行レール31、31は、ガーダ3の上面に敷設される角材
から構成している。
そして、トロリ4に配備される駆動輪43が、横行レール31、31上を転動するよう
にして移動するように構成しているが、横行レール及び駆動輪の構成は、第1実施例と同
様に、I型鋼からなる横行レール31、31の下側フランジの上面をレール面として、駆
動輪43がその上を走行するように構成することもできる。
【0030】
なお、本実施例のその他の構成及び作用並びに天井クレーンの操作要領は、上記第1実
施例と同様である。
【0031】
以上、本発明の天井クレーンについて、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は
上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲におい
て適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の天井クレーンは、簡単に吊荷を旋回させることができるという特性を有してい
ることから、複数のホイスト及び吊具を用いて吊荷を吊り下げる必要があり、搬送先で着
床する際に、吊荷の向きを変更する必要がある工場内等で使用する天井クレーンの用途に
好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 天井クレーン
2 走行レール
3 ガーダ
30 ガーダ走行部
31 横行レール
4 トロリ
41 旋回ベアリング
41a 回転中心軸
42 歯車
5 回転体
50 旋回駆動機構
51 ピニオン
6 ホイスト
7 吊具置き台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガーダと、該ガーダがガーダ走行部を介して走行する走行レールと、ガーダに沿って横
行するトロリとを備えてなる天井クレーンにおいて、トロリに旋回ベアリングを介して回
転体を配設するとともに、該回転体に前記旋回ベアリングの回転中心軸が対称の中心とな
るようにして複数台のホイストを配設し、前記回転体を旋回ベアリングの周面に形成した
歯車と噛合する回転体の旋回駆動機構のピニオンを回転駆動することによって旋回させる
ようにしたことを特徴とする天井クレーン。
【請求項2】
前記複数台のホイストに共通の吊具置き台を吊設したこと特徴とする請求項1記載の天
井クレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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