説明

天井パネル制振構造

【課題】天井の内装下地材としての天井パネルが設けられている建物において、上階からの床衝撃音の伝達を抑制することができる天井パネル制振構造を提供する。
【解決手段】建物の上階からの床衝撃音に対する防音性能向上を図る天井制振構造1であって、天井の内装下地材としての天井パネル2が、下階天井部に少なくとも2つ以上設けられ、天井パネル2どうしが拘束型制振材3によって連結されており、天井パネル2間の相対変位を拘束型制振材3の剛性により拘束するとともに、拘束型制振材3の変形により、天井パネル2間の相対変位によるエネルギーを吸収する天井パネル制振構造1により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の上階から下階へ伝わる床衝撃音の性能向上を図る天井パネルの制振構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物、特に戸建て住宅や低層の集合住宅では、上階での床の衝撃による振動が下階に伝わり、衝撃音となって下階での居住性に影響を与える。そこで、床衝撃音性能の向上を図るために、天井の重量を重くしたり、天井部に吸音材を設けたり、天井仕上げ材の下地材となる天井パネルを防振吊構造とするなどさまざまな工法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−270286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に、天井の下地材として、軽量の鋼材からなる軽鉄天井パネルを用いる場合、それぞれの軽鉄天井パネルが梁に吊り材により支持されていても、それぞれの軽鉄天井パネル間の拘束は弱く、上階の床に衝撃が加わった場合、その衝撃は床や梁、吊り材を介して軽鉄天井パネルに伝わり、それぞれの軽鉄天井パネルがばらばらに振動することにより、下階へ音を放射してしまう。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑み、天井の内装下地材としての天井パネルが設けられている建物において、上階からの床衝撃音の伝達を抑制することができる天井パネル制振構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、建物の上階からの床衝撃音に対する防音性能向上を図る天井制振構造であって、天井の内装下地材としての天井パネルが、下階天井部に少なくとも2つ以上設けられ、該天井パネルどうしが拘束型制振材によって連結されており、天井パネル間の相対変位を拘束型制振材の剛性により拘束するとともに、拘束型制振材の変形により、天井パネル間の相対変位によるエネルギーを吸収することを特徴とする天井パネル制振構造により解決される。
【0007】
本天井パネル制振構造では、下階天井部に少なくとも2つ以上設けられた天井の内装下地材としての天井パネルどうしが、拘束型制振材によって連結されているので、天井パネル間の相対変位を拘束型制振材の剛性により拘束することができ、それぞれの天井パネルどうしがばらばらに振動することを抑制でき、上階での衝撃による振動が下階へ伝わることを抑制することができる。また、それぞれの天井パネルを拘束型制振材により拘束することで、天井パネル単体では軽い部材であっても、隣り合う天井パネルどうしを連結することによって、天井パネル全体として大型の重量物とすることができ、上階で発生した床への衝撃による振動が天井パネルへと伝達することをさらに、抑制することができる。
【0008】
また、天井パネル間で発生する相対変位による運動エネルギーを、拘束型制振材の変形により熱エネルギーに変換することで、天井パネルの相対変位を抑制することができ、上階で発生した床への衝撃による振動が天井パネルへと伝達することをさらに、抑制することができる。
【0009】
つまり、本発明は、天井下地材としての天井パネルどうしを拘束型制振材により連結することにより、拘束型制振材の剛性により天井パネル間の相対変位を拘束するとともに、天井パネル間が相対変位した場合でも、拘束型制振材の制振機能により、その変位量を抑制することができる。
【0010】
上記の天井パネル制振構造において、天井パネルが鋼製であるとよい。
【0011】
天井パネルが鋼製である場合、特に天井パネルが軽量の鋼材からなる軽鉄天井パネルである場合、隣り合う天井パネルを釘やビス等で連結できる木製の天井パネルと異なり、隣り合う天井パネルどうしを一体的に連結することが困難であるにもかかわらず、拘束型制振材を用いて天井パネルどうしを連結することで天井パネルどうしを一体とすることができる。
【0012】
さらに、拘束型制振材が、拘束層を形成する鋼板と制振材の2層構造からなっているとよい。
【0013】
鋼板と制振材からの2層構造という簡易な構造である拘束型制振材を用いてこの天井パネル制振構造が実現できるため、コスト的に有利に実現することができる。また、拘束型制振材の天井パネルへの取付けを制振材の粘着性によって実現する場合には、さらに拘束型制振材の天井パネルへの取り付けのために他の材料を用いる必要がなく、よりコスト的に有利に実現することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は以上のとおりであるから、天井の内装下地材としての天井パネルが設けられている建物において、上階からの床衝撃音の伝達を抑制することができる天井パネル制振構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図(イ)は、本発明の実施形態である天井パネルの制振構造を示す側面図、図(ロ)、(ハ)は、それぞれ、図(イ)のA−A線断面正面図、B−B線断面正面図である。
【図2】図(イ)は、天井パネルの構成を示す平面図、図(ロ)は、図(イ)のC−C線断面正面図である。
【図3】図(イ)は、天井パネルを拘束型制振材で一体化した状態を示す平面図、図(ロ)は、拘束型制振材を示す断面図である。
【図4】図(イ)、(ロ)は、上階から振動が伝わったときの、本制振構造の稼動状況を示す断面正面図である。
【図5】図(イ−1)、(イ−2)は、それぞれ、本発明の第2の実施形態である天井パネルの制振構造の断面正面図、拘束型制振材の断面図であり、図(ロ−1)、(ロ−2)は、それぞれ、本発明の第3の実施形態である天井パネルの制振構造の断面正面図、拘束型制振材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1に示す本発明の実施形態である天井パネルの制振構造1において、2は天井パネル、3は拘束型制振材、4は建物の2階床を支持する梁、5はALC材からなる床材、6は床仕上げ材である。
【0018】
天井パネル2は、図2に示すように、四周を断面コの字型の溝型薄鋼材を、溝部を内向きにして組み合わされ、内部には薄鋼材からなる縦材と横材が井桁状に組み込まれている。
【0019】
天井パネル2は、梁4‥に取り付けられた天井パネル吊治具7に、隣り合う天井パネル2,2どうしを半固定状態に連結して梁4‥に吊り下げて固定される。なお、天井パネル吊治具7は、図1(ロ)、(ハ)に示すように、天井パネル2の外周枠体に沿って、間隔を空けて設けられる。
【0020】
天井パネル2‥の裏面には、図1(ロ)、図3(イ)に示すように、天井パネルの外周枠体どうしを連結するように拘束型制振材3が貼付されている。拘束型制振材3は、図3(ロ)に示すように、薄型鋼板3aと制振材3bの2層からなる。制振材3bとして、例えばブチルゴム系の自己接着性のある材料が用いられ、制振材3の自己接着性機能により、薄型鋼板3aと制振材3bが一体化されるとともに、天井パネル2と外周枠体に拘束型制振材3を固定することができる。
【0021】
天井パネル2‥の表面には、天井材としての石膏ボード8が、隣り合う天井パネル2,2を連結するように、順次天井パネル2‥と石膏ボード8‥の取り付け位置をずらしながら貼られ、さらに天井仕上げ材としてクロス9が貼られている。また、天井パネル2,2は、天井パネル吊治具7によって、隣り合う天井パネル2どうしが半固定状態に連結されて梁4に吊り下げて固定されるとともに、表面には、石膏ボード8により連結されているが、天井パネル2,2どうしを拘束型制振材3により連結することにより、より一層天井パネル2どうしを拘束し一体化させることができる。
【0022】
図4に示すように、上階の床に衝撃が加わり、その振動が天井パネル2に伝わっても、天井パネル2どうしが、拘束型制振材3で連結されているため、上階からの衝撃に対して、隣り合う天井パネル2がそれぞればらばらに振動することが抑制でき、上階での衝撃による振動が下階へ伝わることを抑制することができる。また、それぞれの天井パネルを拘束型制振材により拘束することで、天井パネル全体として大型の重量物とすることができ、上階で発生した床への衝撃による振動が天井パネルへと伝達することをさらに、抑制することができる。
【0023】
また、上階の床に衝撃が加わり、その振動が天井パネル2に伝わることで、隣り合う天井パネル2,2に相対的に変位する場合でも、天井パネル間で発生する相対変位による運動エネルギーを、拘束型制振材の変形により熱エネルギーに変換することで、天井パネルの相対変位を抑制することができ、上階で発生した床への衝撃による振動が天井パネルへと伝達することをさらに抑制することができる。
【0024】
図5(イ−1)、(イ−2)に示す本発明の第2の実施形態である天井パネルの制振構造21では、拘束型制振材23が、薄型鋼板23aの両面に制振材23b,23bが貼付されて構成されており、天井パネル2,2の外周枠体の側面にそれぞれ制振材23b,23bの自己接着性により取り付けられ、天井パネル2どうしが拘束型制振材23により、一体化されている。
【0025】
また、図5(ロ−1)、(ロ−2)に示す本発明の第3の実施形態である天井パネルの制振構造31では、拘束型制振材33が、ベース部とベース部から突出する挿設部からなる断面視T字型の薄型鋼材33aのベース部と挿設部により構成されるコーナー部にそれぞれ制振材33b,33bがL字状に貼付されて構成されており、天井パネル2,2の外周枠体の側面に挿設部を挿入させ、外周枠体の角部を覆うように、それぞれ制振材33b,33bの自己接着性により取り付けられ、天井パネル2どうしが拘束型制振材33により、一体化されている。
【0026】
天井パネルの制振構造21,31ともに、天井パネル2,2どうしを拘束型制振材3により連結することにより、天井パネル2どうしを拘束し一体化させることができ、上階からの衝撃に対して、隣り合う天井パネル2がそれぞればらばらに振動することが抑制でき、さらに、隣り合う天井パネル2,2に相対的に変位する場合でも、天井パネル間で発生する相対変位による運動エネルギーを、拘束型制振材の変形により熱エネルギーに変換することで、天井パネルの相対変位を抑制することができ、上階で発生した床への衝撃による振動が天井パネルへと伝達することをさらに、抑制することができる。
【0027】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、鋼製の天井パネルに適用した場合について示したが、相互にビスや釘等により連結される木製の天井パネルに適用し、より強固に天井パネルを一体化するとともに、天井パネルどうしの相対変位による運動エネルギーを熱エネルギーに変換し、天井パネルの相対変位を抑制するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1,21,31・・・天井パネルの制振構造
2・・・天井パネル
3,23,33・・・拘束型制振材
3a,23a,33a・・・薄型鋼板(薄型鋼材)
3b,23b,33b・・・制振材
4・・・梁
5・・・床材
6・・・床仕上げ材
7・・・天井パネル吊治具
8・・・石膏ボード
9・・・クロス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の上階からの床衝撃音に対する防音性能向上を図る天井制振構造であって、
天井の内装下地材としての天井パネルが、下階天井部に少なくとも2つ以上設けられ、
該天井パネルどうしが拘束型制振材によって連結されており、
天井パネル間の相対変位を拘束型制振材の剛性により拘束するとともに、
拘束型制振材の変形により、天井パネル間の相対変位によるエネルギーを吸収することを特徴とする天井パネル制振構造。
【請求項2】
前記天井パネルが鋼製である請求項1に記載の天井パネル制振構造。
【請求項3】
前記拘束型制振材が、拘束層を形成する鋼板と制振材の2層構造からなる請求項1乃至2に記載の天井パネル制振構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−256617(P2011−256617A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132555(P2010−132555)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)