説明

天井基材及びこれを用いた構造物

【課題】結露水などの液滴が表面に付着するような環境下で用いられる天井基材において、付着した液滴が落下しにくく、液滴の落下によって、該基材の下に存在する保管物等を傷めることを防止可能な基材を提供する。
【解決手段】水平面に対して傾斜させて使用され、基材の少なくとも一方の面に液滴落下防止面を有する天井基材であって、該液滴落下防止面は、付着した液滴を基材の傾斜下部側へと流れさせ、かつ該液滴の流れを分断させる機能を有する天井基材およびこれを用いた構造物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結露等の液滴が付着する環境下で用いられる天井基材及びこれを用いた構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農業分野において、寒冷地や中間山地地域でのハウス栽培では、日没を過ぎると室内温度が低下し始め、夜間から日の出前に結露が発生し、この液滴が落下することによって栽培作物に悪影響が出るという問題を抱えていた。
また、倉庫やコンテナなど膜体設備や保管設備等においても、寒冷地や中間山地地域等、立地条件によって、外気温度低下や降雨時等による湿度上昇、設備内に保管した保管物から発生する水蒸気による湿度上昇によって、設備内側に結露を生じ、この液滴が落下するという問題があった。さらに、そのような寒冷地では、冬場に放射冷却によって、設備内側に霜が付着することがある。その霜が気温の上昇によって溶解すると、短時間で多量の液滴が発生し、落下するという問題があった。
【0003】
これらの問題に対して、例えば特許文献1では、吸湿性微粒子を付着させた構造体を結露防止材として使用している。しかしながら、このような結露防止材は、吸湿量に限界があるため、限界に達すると、結露水の落下が生じ、設備内の保管物を傷めたり、吸湿時に結露防止材が変形する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−89975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、結露水などの液滴が表面に付着するような環境下で用いられる天井基材において、付着した液滴が落下しにくく、液滴の落下によって、該基材の下に存在する保管物や栽培作物等を傷めることを防止可能な天井基材や、その天井基材を用いた構造物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが鋭意検討した結果、天井基材に、付着した液滴がその場所で落下することのないような面を設けることにより、上記課題を解決できることが分かり、本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は、水平面に対して傾斜させて使用され、基材の少なくとも一方の面に液滴落下防止面を有する天井基材であって、該液滴落下防止面は、付着した液滴を基材の傾斜下部側へと流れさせ、かつ該液滴の流れを分断させる機能を有することを特徴とする、天井基材に存する。
【0008】
該液滴落下防止面は、撥水部と親水部とを有する面であることが好ましく、該親水部の面積が、該撥水部の面積以上の大きさであることが好ましい。
また該撥水部と該親水部とが、ストライプ状に形成されていてもよく、該撥水部と該親水部とが、網目状に形成されていてもよい。
また、該撥水部または該親水部が、凸状に形成されていることが好ましい。
【0009】
上記天井基材において、該液滴落下防止面は、凹凸を有する面であることも好ましい。
この際、該凹凸の凸部の幅が、凹部の幅以上の大きさであることが好ましい。
【0010】
また、上記天井基材においては、基材が樹脂基材であることが好ましい。
【0011】
本発明の別の要旨は、上記の天井基材を用いたことを特徴とする、構造物に存する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の天井基材や構造物によれば、液滴落下防止面が設けられていることから、付着した液滴がその場所で落下することなく、傾斜下部側へと流れるものとすることができる。したがって、基材の下に存在する保管物や栽培作物等を傷めることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】液滴落下防止面のパターン(ストライプ状)を示す図である。
【図2】液滴落下防止面のパターン(網目状)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に例示する物や方法等は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を逸脱しない限り、これらの内容に特定はされない。
【0015】
本発明における天井基材は、例えばテントや浴室天井のような、ある空間の上部において用いられる基材であり、水平面に対して傾斜させて使用される基材である。ここで、水平面に対して傾斜させるとは、重力方向に対して角度を有する状態をいう。すなわち、水平面を基準にして重力方向に角度を有する状態をいう。本発明の天井基材は、基材の少なくとも一部が、水平面に対して傾斜して使用されればよく、傾斜部分と傾斜していない部分とを有する状態で使用されてもよい。天井基材が傾斜部分と傾斜していない部分とを有する状態で使用される場合、傾斜部分に、以下に説明するような、本発明の特徴である液滴落下防止面が適用されることが好ましい。本発明においては、傾斜部分に液滴落下防止面を適用することにより、液滴を基材の傾斜下部の方向へ流すことができる。なお、基材の傾斜下部とは、傾斜した基材の下側(すなわち、重力方向)のことをいう。
【0016】
液滴落下防止面が適用される傾斜に係る傾斜角(水平面に対する角度)は特に限定されるものではなく、通常0°より大きく、好ましくは1°より大きい。また通常90°より小さく、好ましくは70°より小さい。この傾斜角は、以下本発明の天井基材を用いた構造物において説明する通り、構造物の形状によって、種々選択される。また、傾斜が直線形状、湾曲形状に形成されるものでもよい。
【0017】
本発明の天井基材は、通常、結露が生じうる環境下、または、何らかの現象や操作により、基材に水が付着しうる環境下で用いられることにより、高い効果を発揮するが、特に使用環境を限定するものではない。
【0018】
[基材]
本発明の天井基材のベースとなる基材としては、通常、平面を有するフィルム状、シート状または板状のものが用いられ、その基材の素材は本発明の効果を損なわない限り、特に制限はない。例えば繊維、紙、樹脂、木材、セラミックス、コンクリート、金属、皮革等が好ましく用いられる。基材としてより好ましくは繊維基材や樹脂を主成分とする樹脂基材が用いられ、特に樹脂を主成分とする樹脂基材が好ましく用いられる。なお、本発明では繊維状のものを繊維基材とし、シート状やフィルム状のものを樹脂基材とする。上記基材の素材は、何れかを一種単独で用いてもよく、また二種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0019】
基材の素材として繊維を用いる場合、紡績して糸として用いたり、織って布として用いてよく、また圧縮成形して繊維板として用いてもよい。例えば織布、編布、不織布等、任意の状態のものを基材として用いることができ、具体的には、織物、モケット、タオル地、トリコット、ダブルラッセル、丸編、ニードルパンチ等からなる基材が例として挙げられる。またこれらは、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及 び比率で併用してもよい。
【0020】
繊維としては、天然繊維、合成繊維、カーボン繊維、ガラス繊維、またはこれらを組み合わせた繊維が挙げられる。具体例として、木綿、麻、絹、羊毛等の天然繊維、或いはレーヨン;アセテート;蛋白質繊維;塩化ゴム;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン−12等のポリアミド;ポリビニルアルコ−ル;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリアクリロニトリル;ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル;ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリウレタン;ポリシアン化ビニリデン;ポリフルオロエチレン等、更にそれらの共重合体、ブレンド体からなる繊維、カーボン繊維、ガラス繊維等が挙げられる。中でも本発明においては、基材の素材として、汎用性、高強度といった観点から、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ガラス繊維を用いることが好ましい。
また、これらの繊維は、例えばポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、界面活性剤、防カビ剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、フィラー、顔料等の添加物を含有していてもよい。
【0021】
また、基材に用いられる樹脂の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオレフィン、セルロースアセテート、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂等の合成樹脂等が挙げられ、これらを一種、または二種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。また、これらは他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、界面活性剤、防カビ剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、フィラー、顔料などの添加物を含有していてもよい。
【0022】
また本発明においては、基材自体が、例えば、調湿機能、結露防止機能、防汚機能、抗菌機能、防カビ機能、難燃機能等の機能を有するものであってもよい。このような機能を有する基材としては、従来用いられている、これらの機能を有する基材や加工された基材等を用いることができる。
【0023】
なお、基材の厚みについては、天井基材の種類や用途等により適宜選択され、限定されるものではないが、通常10μm以上であり、好ましくは50μm以上である。また通常1cm以下、好ましくは5mm以下である。
【0024】
[液滴落下防止面]
本発明の天井基材は、基材の少なくとも一方の面に液滴落下防止面を有する。液滴落下防止面は、付着した液滴を基材の傾斜下部側へと流れさせ、該液滴の流れを分断させる機能を有することを特徴とする。ここで、付着した液滴を基材の傾斜下部側へと流れさせ、かつ液滴の流れを分断させる機能を有するとは、液滴落下防止面に付着した液滴が、ある特定の流路に従い、傾斜して使用されている基材の下部側へ流れ落ちるように設計されており、さらに傾斜下部側へ流れる液滴同士が合一しにくく加工されていることをいう。液滴の流れを分断させるように加工されていることによって、液滴落下防止面に付着した液滴が、傾斜下部側へと流れる際に、複数の液滴が特定の流路のみに集合することなく、複数の流路で傾斜下部側へと流れるものとすることができる。これにより、複数の液滴が合一して液滴落下防止面から液滴が落下することを防止することができる。
【0025】
ここで、本発明の天井基材においては、少なくとも基材の一方の面に液滴落下防止面を有していればよいが、基材の両面に液滴落下防止面を有していてもよい。また例えば基材の一方もしくは両方の面の全面に液滴落下防止面を有していてもよく、また一方もしくは両方の面の一部のみに液滴落下防止面を有していてもよい。
【0026】
液滴落下防止面に用いられる基材に制限はなく、適宜、液滴落下防止面の形状や面積、種類等に応じて適宜選択される。例えば、液滴落下防止面以外の部分の基材(以下、「ベース基材」ともいう。)と同一の基材上に所定の加工を施して、液滴落下防止面を設けてもよく、またベース基材とは異なる基材上に液滴落下防止面を設け、ベース基材上に該基材を貼り合わせたり、ベース基材と該基材とを繋ぎ合わせること等により液滴落下防止面を設けてもよい。
以下、具体的に液滴落下防止面の例を挙げて説明する。液滴落下防止面としては、例えば、撥水部と親水部とを有する面、凹凸を有する面などが挙げられ、これらについて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0027】
(撥水部と親水部とを有する面)
撥水部と親水部とを有する面について説明する。基材上に、撥水部と親水部とを有することにより、付着した液滴が、親水部の形状に従い、基材の傾斜下部側へと流れ落ちることが容易となる。これにより、液滴が、付着したその場所もしくは他の液滴と合一し、傾斜下部には至らない箇所で落下することを防止できる。また、例えば親水部中に撥水部を有することで、液滴の流れを分断、すなわち液滴が複数の流路によって傾斜下部側へと流れ落ちるものとすることができる。そのため、例えば液滴の合一や液滴の成長を抑制することができ、液滴の落下をさらに抑制することができる。
【0028】
撥水部と親水部とを有する状態とは、親水性の度合いが異なる部分を有することを意味する。このような液滴落下防止面は、基材に対して撥水性処理または親水性処理を施すことにより、相対的に撥水性または親水性を示す撥水部と親水部とを設けて形成してもよく、また撥水性処理および親水性処理の両方を施すことにより、撥水部と親水部とを形成してもよい。この際、基材自体が撥水性または親水性を有するものを使用してもよい。
【0029】
ここで、撥水部としては、液滴と基材表面との接触角が90°以上であることが好ましく、95°以上がより好ましい。また、親水部としては、液滴と基材表面との接触角が90°未満が好ましく、85°以下がより好ましい。ここで接触角は、通常、JIS R 3257の測定方法に準じて測定されたものをいう。
【0030】
基材に撥水部を形成する方法としては、一般的な化学的または物理的な撥水処理を行なう方法が挙げられる。例えば、撥水性コーティング液を塗布したり、撥水性コーティング材料を用いて成膜する方法が挙げられる。撥水性コーティング液としては、一般的に、基材等に撥水性を付与する際に用いられるコーティング液を使用すればよく、例えば、炭素数8〜20のアルキル、アルキルフェニル、フルオロカーボン等の疎水基を有する界面活性剤;ポリオレフィン、パラフィン等のワックス類;フッ素系官能基を有するポリマー、ジメチルシロキサンなどのシリコン系ポリマー;アルキル鎖、フルオロアルキル鎖などの疎水的な有機鎖や、Cl基、イソシアネート基、メトキシ基等の官能基を有する有機シランなどのカップリング剤;疎水化処理の施されたSiやTiなどの疎水性を発現する無機粒子を含有するコーティング液;等を用いることができる。
【0031】
コーティング液の塗布方法としては、例えばディップコーティング法、バーコーティング法、グラビアコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコーティング法、フローコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、刷毛塗り、スポンジ塗り等の方法が好適に利用できる。コーティング液を塗布、成膜したい箇所以外を、マスキングテープ等でマスキングして塗布してもよい。
【0032】
また、撥水部を形成する別の方法としては、例えば、基材上に撥水性材料を密着させてもよい。撥水性材料として、例えば、平面状の不織布、織布、紙、樹脂、セラミックスなど、基材に対して撥水性となる材料を選択し、これを所望のパターンに合わせてカッティングし、接着剤や加熱プレスなどで密着させてもよい。
【0033】
また、基材に対して親水部を形成する方法としては、例えば、親水性コーティング液を塗布したり、親水性コーティング液を成膜する方法が挙げられる。親水性コーティング液としては、一般的に、基材等に親水性を付与する際に用いられるコーティング液を使用すればよく、例えば、−NH、−COO−Na、−SO−Na、−COOH、−OH、−O−PO、−(O−CH−CH−などの親水基を有する界面活性剤;非晶質シリカや酸化チタン光触媒などの表面OH基を多数有する物質を含有する親水性コーティング液;−NH、−COO−、−COOH、−OH、−O−、−POなどの親水基を多く有するポリマー;ポリビニルアルコール樹脂系;アクリル樹脂系;ウレタン樹脂系;などのコーティング液などを用いることができる。これらコーティング液の塗布方法としては、上記撥水部を形成する場合と同様である。
【0034】
また、親水性の基材に対して、微細な凹凸処理を施すことによっても、より親水性を示す親水部を形成することができる。基材の表面に微細な凹凸を形成することにより、液滴と基材との接触面積が増えることによって、さらに液滴との接触角が小さくなり、より親水化することができる。このような親水性の差を施すことによって、相対的に撥水部と親水部とが形成されることで、撥水部・親水部を形成する場合と同様に、液滴の流れを分断させる効果が得られる。
【0035】
微細な凹凸を形成する方法としては、例えば、基材に対してヤスリを用いて切削、研磨を行う方法、表面に微細な凹凸を有する金型を用いて基材自体を加工する方法、エッチング処理、サンドブラスト処理などが挙げられる。
【0036】
また、上記撥水部と同様に、基材上に親水性材料を密着させてもよい。親水性材料として、例えば、平面状の不織布、織布、紙、樹脂、セラミックスなど、基材に対して親水性となる材料を選択し、これを所望のパターンに合わせてカッティングし、接着剤や加熱プレスなどで密着させてもよい。
【0037】
液滴落下防止面が親水部と撥水部とを有する場合、親水部の面積が、撥水部の面積以上の大きさであることが好ましい。親水部の面積が大きいほど、親水部中や親水部表面に保水することができるため、より液滴の落下を抑制することができる。親水部の面積は、撥水部の面積の1.2倍以上の大きさであることがより好ましい。
【0038】
また、液滴落下防止面において、撥水部または親水部のいずれか一方が、他方に対して凸部となっていることが好ましい。これにより、液滴落下防止面の表面に凹凸が形成されることとなり、下記詳述するような、さらに、凹凸面による液滴落下防止効果も併せて得ることができる。例えば撥水部や親水部の形成の際に、膜厚差を有するように形成すること等により、一方を凸部とすることができる。
【0039】
液滴落下防止面の撥水部と親水部とが形成するパターンは、垂直方向(重力方向)への液滴の落下や水平方向での液滴の合一が起こりにくいように、傾斜に沿ってパターンが形成されていることが好ましい。また、液滴が傾斜に沿って最下部まで流れるように、親水部のパターンが連続的に形成されていることが好ましい。
【0040】
該パターンとしては、例えば、図1に示すように、撥水部と親水部とがストライプ状に形成されているパターンや、図2に示すように、撥水部と親水部とが網目状に形成されているパターンなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。なお、図1および図2においては、撥水部と親水部とを特定しているが、本図は本発明における一例に過ぎず
、撥水部と親水部とが本図と逆の構成となっていてもよい。ただし、液滴を傾斜下部側まで導くため、通常、上述したように、親水部が連続したパターンとすることが好ましい。
【0041】
また、例えば、図1または図2に示すように、ストライプ状や網目状などのパターンが形成される場合、ストライプ状や網目状の横幅(例えば、図1に示す幅d)は、液滴の落下限界の大きさよりも大きいことが好ましい。液滴の落下限界の大きさとは、基材から落下する直前における液滴と基材の接触部分の径の大きさを意味する。液滴と基材の接触部分の径の大きさは、撥水性・親水性を支配する基材上の液の接触角の影響が大きく、基材の形状・種類・傾斜角などによって異なるものである。
【0042】
撥水部の幅が液滴の落下限界の大きさより小さいとき、液滴が撥水部を越えて流れ、親水部で合一して落下しやすくなる場合がある。また親水部の幅が液滴の落下限界の大きさより小さいとき、液滴と親水部の接触部分が小さいため、液滴が落下しやすくなる場合がある。
【0043】
親水部の幅は撥水部の幅以上の大きさであることが好ましい。親水部が撥水部の幅より大きいほど、親水部の表面でより多く保水することができ好ましい。
撥水部の幅として具体的には、3mm以上が好ましく、5mm以上がより好ましい。また2cm以下が好ましく、1.5cm以下がより好ましい。また親水部の幅として具体的には、5mm以上が好ましく、7mm以上がより好ましい。また20cm以下が好ましく、15cm以下がより好ましい。親水部の幅を適切な大きさとすることで、液滴と基材との接触面積を大きくし、液滴の落下が生じにくいものとすることができる。親水部の幅が大きすぎると、液滴の流れの分断が少なく、複数の液滴が合一する場合がある。また親水部の幅が小さすぎると、液滴と基材との接触面積が小さく、液滴が落下しやすくなる傾向がある。
また撥水部の幅が適切な大きさであるとき、液滴が成長しても落下限界の大きさになる前に親水部に吸収され、液滴の落下が生じにくいものとすることができる。撥水部の大きさが小さすぎると、撥水部を挟んで隣接する液滴が撥水部を越えて合一してしまう場合がある。また、撥水部の大きさが大きすぎると、液滴と基材との接触面積が小さい液滴を形成しやすくなり、液滴の落下が生じやすくなる傾向がある。
【0044】
(凹凸を有する面)
液滴落下防止面としては、また例えば凹凸を有する面が挙げられる。通常、凹部を有することで、液滴の流れを分断させることができる。そのため、液滴の合一または液滴の成長を抑制することができ、より液滴の落下を抑制することができるため好ましい。
【0045】
凹凸の形成方法としては、ヤスリ、カンナ、サンダーなどを用いて切削、研磨を行う方法、表面に凹凸を有する金型を用いて基材自体を加工する方法、エッチング処理、サンドブラスト処理などが挙げられる。
【0046】
また、凹凸を形成する別の方法としては、例えば、基材上に平面状の不織布、織布、紙、樹脂、セラミックスなどの材料を密着させることで、凹凸を形成してもよい。前記材料をパターンに合わせてカッティングし、接着剤や加熱プレスなどで密着させてもよい。
【0047】
凹部の面積は凸部の面積以下の大きさであることが好ましい。凸部の面積が大きいほど凸部表面に保水することができるため、より液滴の落下を抑制することができる。凸部の面積は、凹部の面積の1.2倍以上の大きさであることがより好ましい。
また、凹凸の高さは、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、1.5cm以下が好ましく1.0cm以下がより好ましい。
【0048】
また、折り目をつけて凹凸を形成する方法も挙げられる。折り目により凹凸を形成する方法としては、例えば山折りのラインと谷折りのラインとを交互に略平行に形成し、凹凸を形成する方法や、山折りのラインを略平行に複数形成し、該山折りのラインの間の領域をたるませることにより凸部とし、凹凸を形成する方法等が挙げられるがこれらに限定されない。
折り目により凹凸を形成する場合には、折り目の間隔は1cm以上であることが好ましく、また30cm以下が好ましい。より好ましくは20cm以下である。
【0049】
液滴落下防止面の凹凸のパターンは、上記垂直方向(重力方向)への液滴の落下や水平方向での液滴の合一が起こりにくいように、傾斜に沿ってパターンが形成されていることが好ましい。また、液滴が傾斜に沿って最下部まで流れるように、凸部のパターンが連続的に形成されていることが好ましい。
【0050】
該パターンとしては、例えば、上記撥水部と親水部とを有する面の例として挙げた図1及び図2のように、凹部と凸部とがストライプ状に形成されているパターンや、凹部と凸部とが網目状に形成されているパターンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
また、例えば、記撥水部と親水部とを有する面の例と同様に、上記の通り、ストライプ状や網目状などのパターンが形成される場合、ストライプ状や網目状の凸部の横幅(例えば、図1に示す幅d)は、液滴の落下限界の大きさよりも大きいことが好ましい。液滴の落下限界の大きさとは、基材から落下する直前における液滴と基材の接触部分の径の大きさを意味する。液滴と基材の接触部分の径の大きさは、基材上の液の接触角の影響が大きく、基材の形状・種類・傾斜角などによって異なるものである。
【0052】
凹部の幅が液滴の落下限界の大きさより小さいとき、液滴が凹部を越えて流れ、凸部で合一して落下しやすくなる場合がある。凸部の幅が液滴の落下限界の大きさより小さいとき、液滴と親水部の接触部分が小さいため、液滴が落下しやすくなる場合がある。
【0053】
凹部の幅として具体的には、3mm以上が好ましく、5mm以上がより好ましい。また2cm以下が好ましく、1.5cm以下がより好ましい。また凸部の幅として具体的には、5mm以上が好ましく、7mm以上がより好ましい。また20cm以下が好ましく、15cm以下が好ましい。凸部の幅を適切な大きさとすることで、液滴と基材との接触面積を大きくし、液滴の落下が生じにくいものとすることができる。凸部の幅が大きすぎると、液滴の流れの分断が少なく、複数の液滴が合一する場合がある。また凸部の幅が小さすぎると、液滴と基材との接触面積が小さく、液滴が落下しやすくなる。
また凹部の幅が適切な大きさであるとき、液滴が成長しても落下限界の大きさになる前に重量方向に最下点となる凸部に吸収され、液滴の落下が生じにくいものとすることができる。また凹部の大きさが小さすぎると、凹部を挟んで隣接する凸部上の液滴が凹部を越えて合一してしまう。また、凹部の大きさが大きすぎると、液滴と基材との接触面積が小さい液滴を形成しやすくなり、液滴の落下が生じやすい。
【0054】
(その他)
上述したように本発明の天井基材は、一方の面に液滴落下防止面を有していればよく、通常、本発明の天井基材の液滴落下防止面は、液滴が落下する面、すなわち、通常、外気に対して内側の面に使用されるものであるが、この限りではない。
また、一方の面にのみ、液滴落下防止面を有する場合、他方の面は、例えば調湿機能、結露防止機能、防汚機能、抗菌機能、防カビ機能、難燃機能などの機能を有するものであってもよい。
【0055】
(用途)
本発明の天井基材は、例えば、ビニルハウスなどに用いられる農業用シート、テントシート、幌、オーニング、浴室の天井材、スポーツ施設の天井材などの構造物として用いられることが好ましい。構造物の形状としては、切妻型、片流れ型、円弧型、サスペンション型など傾斜部を有するものであれば、いずれにも用いることができる。
【実施例】
【0056】
本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り
、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
(実施例1)
1.親水性コーティング液の製造
シリカ粉体(シリカゲル:平均粒径5μm、比表面積497m/g、細孔容積1.06ml/g、細孔最頻直径(Dmax)8.3nm、最頻粒径4.9μm、シラノール量3.9個/nm)、セルロースフィラー、セピオライト、バインダ樹脂としてアクリルラテックス水分散液(固形分濃度50重量%)、溶媒としてメタノール及びメチルエチルケトンを用い、親水性コーティング液を調製した。
親水性コーティング液中の、シリカ、セルロースフィラー、セピオライト、アクリルラテックス水分散液、メタノール及びメチルエチルケトンの重量比は、順に9.0:3.5:0.6:12.5:66.9:7.5の割合とした。
親水性コーティング液の調製は、具体的には以下の手順で行なった。
ビーカーに、66.9gのメタノール、7.5gのメチルエチルケトンを溶媒として入れ、マグネチックスターラーを用いて400〜800rpmで攪拌、混合した。更に、12.5gのアクリルラテックス水分散液を加え、溶媒中に分散・攪拌混合した。この際に、バインダ樹脂の塊がなく、均一に分散されていることを目視確認した。そこで、更に均一に分散できていることを目視確認しながら、9.0gのシリカを少量ずつ加え、十分に分散させた。このようにして、100gのスラリー状の親水性コーティング液を得た。
【0057】
2.親水部の形成
基材として塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)に7mm幅のマスキングテープを1cm間隔でストライプ状に密着させ、その上から、上記で得られた親水性コーティング液をバーコーターで塗工し、室温で乾燥した。その後、マスキングテープを外し、本発明の天井基材を得た。
【0058】
3.評価
(1)浸水時の流路分断
上記で得られた天井基材を水の入ったバットに10秒間浸水させて、ストライプ状の縦方向(図1に示す縦方向)に垂直に引き上げた。
このとき、基材表面の液滴の流れは分断されていた。表1に結果を示す。○は基材表面の液滴の流れが分断されていたことを表し、×は基材表面の液滴の流れが分断されていなかったことを表す。
【0059】
(2)スプレー時の流路分断
上記で得られた天井基材の20cm×20cmの大きさのものを傾斜8°で設置した。傾斜に対し、傾斜上部から傾斜下部方向に対し、ストライプ状のパターンが縦方向(平行、図1に示す縦方向)となるように設置した。この天井基材に対して、20cmの距離から、スプレーで5ccの水を噴霧した。
このとき、基材表面の液滴の流れは分断されていた。表1に結果を示す。表1中、○は基材表面の液滴の流れが分断されていたことを表し、×は基材表面の液滴の流れが分断されていなかったことを表す。
また、液滴の落下の有無の確認も行なった。本実施例において液滴は落下せず、傾斜下部まで基材上を流れた。表1に結果を示す。表1中、○は液滴が落下せず、傾斜下部まで基材上を流れたことを表し、×は付着した場所あるいはその周辺等で液滴のほとんどが落下したことを表す。
【0060】
(3)流れ垂直方向の液滴の合一
上記で得られた天井基材の20cm×20cmの大きさのものを傾斜8°で設置した。傾斜に対し、傾斜上部から傾斜下部方向に対し、ストライプ状のパターンが横方向(図1に示す横方向)となるように設置した。この天井基材に対して、20cmの距離から、スプレーで5ccの水を噴霧した。
このとき、基材表面に付着した液滴は、ストライプ状のパターンの横方向に対して垂直方向で合一しにくかった。表1に結果を示す。表1において○は液滴が合一しにくいことを表し、×は液滴が合一して落下したことを表す。
【0061】
(実施例2)
実施例1において基材として使用したものと同様の塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)の全面に、実施例1で製造した親水性コーティング液をバーコーターで塗工し、室温で乾燥させた。このシートに対して、1cm幅のマスキングテープを7mm間隔でストライプ状に密着させ、その上から、防水スプレー(フッ素系材料、ダイキン社製)をスプレーコーティングし乾燥することにより、撥水部を形成した。その後、マスキングテープを外し、本発明の天井基材を得た。
実施例1と同様にして、この天井基材の評価を行った。結果を表1に示す。基材表面の液滴の流れは分断されており、液滴は落下せず、傾斜下部まで基材上を流れた。また、基材表面に付着した液滴は、ストライプ状のパターンの横方向に対して垂直方向で合一しにくかった。
【0062】
(実施例3)
実施例1において基材として使用したものと同様の塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)に3cm毎に山折りの折り目を形成し、本発明の天井基材を得た。
実施例1と同様にして、この天井基材の評価を行った。結果を表1に示す。基材表面の液滴の流れは分断されており、液滴は落下せず、傾斜下部まで基材上を流れた。また、基材表面に付着した液滴は、ストライプ状のパターンの横方向に対して垂直方向で合一しにくかった。
【0063】
(実施例4)
実施例1において基材として使用したものと同様の塩化ビニル製シート(厚さ3mm)に熱プレス機を用いて、7mm間隔でストライプ状に凹凸を形成し、本発明の天井基材を得た。
実施例1と同様にして、この天井基材の評価を行った。結果を表1に示す。基材表面の液滴の流れは分断されており、液滴は落下せず、傾斜下部まで基材上を流れた。また、基材表面に付着した液滴は、ストライプ状のパターンの横方向に対して垂直方向で合一しにくかった。
【0064】
(比較例1)
実施例1において基材として使用した塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)を親水部を設けず、天井基材とした。
実施例1と同様にして、この天井基材の評価を行った。結果を表1に示す。基材表面の液滴の流れは分断されておらず、液滴のほとんどが、傾斜下部まで流れることなく落下した。また、基材表面に付着した液滴は、傾斜下部側へ流れる際に、複数の液滴が合一して、すぐに液滴が落下した。
【0065】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平面に対して傾斜させて使用され、
基材の少なくとも一方の面に液滴落下防止面を有する天井基材であって、
該液滴落下防止面は、付着した液滴を基材の傾斜下部側へと流れさせ、かつ該液滴の流れを分断させる機能を有する
ことを特徴とする、天井基材。
【請求項2】
該液滴落下防止面は、撥水部と親水部とを有する面である
ことを特徴とする、請求項1に記載の天井基材。
【請求項3】
該親水部の面積が、該撥水部の面積以上の大きさである
ことを特徴とする、請求項2に記載の天井基材。
【請求項4】
該撥水部と該親水部とが、ストライプ状に形成されている
ことを特徴とする、請求項2または3に記載の天井基材。
【請求項5】
該撥水部と該親水部とが、網目状に形成されている
ことを特徴とする、請求項2または3に記載の天井基材。
【請求項6】
該撥水部または該親水部が、凸状に形成されている
ことを特徴とする、請求項2〜5のいずれか一項に記載の天井基材。
【請求項7】
該液滴落下防止面は、凹凸を有する面である
ことを特徴とする、請求項1に記載の天井基材。
【請求項8】
該凹凸の凸部の幅が、凹部の幅以上の大きさである
ことを特徴とする、請求項7に記載の天井基材。
【請求項9】
基材が樹脂基材である
ことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の天井基材。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の天井基材を用いた
ことを特徴とする、構造物。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−31636(P2010−31636A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151772(P2009−151772)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000230652)日本化成株式会社 (85)