説明

天井材の防振吊木金具及び天井材の防振吊構造

【課題】天井材を少ない部材点数で確実に固定するとともに、振動が天井材に伝わり難いように、天井材を吊ること。
【解決手段】吊部材10と、受部材20とを有する天井材6の防振吊木金具1において、吊部材10及び受部材20は、L字状で、垂直方向に伸びる胴部11、21及び水平方向に伸びる連結部12、22を有し、吊部材10の胴部11の背面側に掛部13を有し、吊部材10の連結部12の下端、及び受部材20の連結部22の下端にはそれぞれ緩衝材31、32を設け、これらを上下で挟持された状態で当接して配設するとともに、吊部材10の連結部12、受部材20の連結部22及び緩衝材31、32は、これらを貫通する固定軸41により回動自在に軸支されたことを特徴とする天井材の防振吊木金具1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井材を吊り下げる際に中継される部材を留める、天井材の防振吊木金具、及びこれを用いた天井材の防振吊構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上部床部から天井材を吊り下げる構造として、ボルトやナット等を使用した連結部材にて連結し、天井材を保持していた(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
【特許文献1】実開平6−20652
【特許文献2】実公平5−23693
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ボルトとナット等の連結部材を連結した構造は、部材点数が多くなり、構造が複雑で、組立作業が困難となる。また、この構造では上部床部からの振動が天井材に伝わるのを十分抑えることは難しい。
【0005】
そこで、本発明の目的は、天井材を少ない部材点数で確実に固定するとともに、振動が天井材に伝わり難いように、天井材を吊ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための手段は、下記の天井材の防振吊木金具及び天井材の防振吊構造である。
【0007】
(1)吊部材と、受部材とを有する天井材の吊木金具において、前記吊部材及び前記受部材は、L字状で、垂直方向に伸びる胴部及び水平方向に伸びる連結部を有し、前記吊部材の前記胴部の背面側に掛部を有し、前記吊部材の連結部の下端、及び前記受部材の連結部の下端にはそれぞれ緩衝材を設け、これらを上下で挟持された状態で当接して配設するとともに、前記吊部材の連結部、前記受部材の連結部及び前記緩衝材は、これらを貫通する固定軸により回動自在に軸支されたことを特徴とする天井材の防振吊木金具。
【0008】
(2)前記吊部の前記胴部には貫通穴が形成されたことを特徴とする(1)に記載の天井材の防振吊木金具。
【0009】
(3)吊木金具を用いて天井材を吊り下げて固定する天井材の防振吊構造であって、上部床部に据え付けられた下部に掛穴が形成された天井インサートに前記天井インサートの前記掛穴に対して、(1)の防振吊木金具の前記掛部を掛けて防振吊木金具が固定され、前記防振吊木金具の下部には吊木が取付けられ、且つ前記吊木の下部が天井材に設けた野縁に取付けられてなることを特徴とする天井材の防振吊構造。
【発明の効果】
【0010】
(1)の防振吊木金具のように、L字状に構成された吊部材及び受部材と、緩衝材のみから構成されると、部材点数が少なくて済む。また、吊部材及び受部材とを固定軸により確実に固定する。更に、2つの緩衝材が受部材を挟持した状態であるため、上部床部が振動して吊部材が振動しても、緩衝材が振動を吸収する。このため、受部材に伝わる振動が干渉され、受部材に繋がる天井材への振動を和らげることができる。
【0011】
(2)の防振吊木金具のように、前記受部材の前記胴部に前記貫通穴があると、前記掛部がない側の前記胴部をも使用することができる。このため、前記防振吊木金具の上部を前記吊木に取付けることができる。
【0012】
(3)の吊構造のように、前記防振吊木金具は、(1)のように胴部の裏面の前記掛部を用いれば天井インサートに掛けることができる。この結果、前記上部床部と前記天井材とを少ない部材点数で確実に固定するとともに、振動が前記天井材に伝わり難いように、前記天井材を前記上部床部に吊ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
〔実施例1〕
図を用いて本発明の実施例1を説明する。図1(a)は防振吊木金具1の詳細構成を説明するための正面方向から見た斜視図であり、図1(b)は防振吊木金具1の詳細構成を説明するための背面方向から見た斜視図である。図2は防振吊木金具1の連結構造を説明するための断面図である。図3は防振吊木金具1の動的構造を説明するための斜視図である。図4(a)は防振吊木金具1の実施例1の吊構造を示す斜視図であり、図4(b)は天井インサート3の正面及び側面図である。まず、防振吊木金具1の構造を説明した後、防振吊木金具1の吊構造を説明する。
【0014】
(防振吊木金具1の構造)
図1乃至図4を用いて防振吊木金具1の構造を説明する。
【0015】
図1に示すように、防振吊木金具1は、上部床部に取付けられる天井インサート3(図4(a)参照)に掛けるための吊部材10と、下方の天井材6(図4(a)参照)を受けるための受部材20とを有する。吊部材10及び受部材20は、金属の板状体をL字状に曲げて形成される。また、吊部材10及び受部材20は、鉛直方向に伸びる胴部11、21及び水平方向に伸びる連結部12、22が形成される。
【0016】
吊部材10の胴部11には、背面側に突出し天井インサート3の掛穴3a(図4(b)参照)に掛けるための掛部13が形成される。掛部13は他の形状であってもよい。また、掛部13の上部には、背面側に突出するようにディンプル加工された凸部14が形成される。凸部14があることで、掛部13を掛穴3aに掛けた時に掛穴3aの上部に当接して確実に位置決めと抜け防止がなされる。
【0017】
また、吊部材10の胴部11には、掛部13や凸部14と異なる位置に貫通穴15が形成される。尚、図1には2つの貫通穴を、互いに高さを変えて構成しているが、高さや数はこれに限るものではない。即ち、釘等の固定部材を挿通して吊木等に固定することができればよい。
【0018】
吊部材10の胴部11から連結部12にかけては、表面側に突出するようにリブ16が形成されている。これにより、吊部材10の強度が高くなっている。
【0019】
受部材20の胴部21の背面側には、図1(b)に示すように、ガイド爪23が形成されている。ガイド爪23があることで、受部材20の下部に吊木4(図4(a)参照)を固定する際に、ガイド爪23を位置決めの基準とすることができる。
【0020】
また、受部材20の胴部21には、ガイド爪23と異なる位置に貫通穴24が形成される。貫通穴24の高さや数は、これに限るものではない。
【0021】
受部材20の胴部21から連結部22にかけては、表面側に突出するようにリブ25が形成されている。これにより、受部材20の強度が高くなっている。
【0022】
図1及び図2に示すように、吊部材10の連結部12の下端には、受部材20の連結部22が2つの緩衝材30(上部緩衝材31、下部緩衝材32)で上下を挟持された状態で当接して配設されている。尚、本実施形態における緩衝材30としては、ゴム等を使用している。
【0023】
図2に示すように、吊部材10の連結部12、受部材20の連結部22、及び2つの緩衝材30は、これらを貫通するリベット等の固定軸41により軸支される。ここで、下部緩衝材32の下端にはワッシャ42が配設され、固定軸41が、連結部12の上部からワッシャ42の下部まで貫通することで、吊部材10と受部材20とを連結している。
【0024】
このように、吊部材10と受部材20とは、固定軸41とワッシャ42とで構成される連結部材40によって回動自在に構成される。このため、図3に示すように、吊部材10に対して受部材20の角度を変えた状態で固定することが可能であり、吊木4や天井材6やその野縁5の角度に合わせて、吊部材10と受部材20の角度を自由に変えることができる。
【0025】
(防振吊木金具1の防振吊構造)
図4を用いて実施例1の防振吊木金具1の防振吊構造を説明する。
【0026】
図4に示すように、本実施例の天井材の防振吊構造は、床・屋根パネルからなる上部床部2の下部に垂れ下がる天井インサート3と、天井インサート3の下に取付く防振吊木金具1と、防振吊木金具1の下に取付く吊木4と、吊木4の下に取付く野縁5と、野縁5と一体的な天井材6とを有する。
【0027】
床・屋根パネルからなる上部床部2は、軽量気泡コンクリート(ALC)パネル等により構成され、天井インサート3を吊り下げるためのスリットが形成される取付溝2aが構成される。
【0028】
天井インサート3は、図4(b)に示すように、上部を取付溝2aのスリットに取付けるための取付部3bと、垂れ下がる部分の下部に形成される掛穴3aと、を有する。材質は金属や樹脂によって構成される。掛穴3aの高さは、防振吊木金具1の掛部13を掛穴3aに掛けたとき、防振吊木金具1の凸部14がちょうど掛穴3aの上部に当接するような大きさである。この構成により、防振吊木金具1の掛部13を天井インサート3の掛穴3aに掛けると、掛穴3aが、凸部14の上部と掛部13の下部とに当接し、確実に位置決めがなされ、且つ抜け防止もなされる。
【0029】
吊木4は、上部床部2と天井材6との間に配設される木製の棒状体であり、防振吊木金具1と、天井材6の野縁5とを連結する。
【0030】
尚、防振吊木金具1と吊木4との固定は、防振吊木金具1の受部材20の貫通穴24に釘等の固定部材を挿通させて行う。また、吊木4と野縁5との固定も同様に、釘等の固定部材によって行う。
【0031】
ここで、防振吊木金具1と吊木4とを固定する際には、防振吊木金具1のガイド爪23が吊木4の上部に当接することで、確実に吊木4の位置決めを行うことができる。
【0032】
以上のような防振吊木金具1を使用することにより、また防振吊木金具1を用いた天井材の防振吊構造とすることにより、次のような作用効果がある。
【0033】
防振吊木金具1は、吊部材10と受部材20との間に緩衝材30が配設され、受部材20は、上部緩衝材31と下部緩衝材32とで挟持されている。これにより、上部床部2に振動が生じたときでも、上部床部2から天井インサート3を介して防振吊木金具1の吊部材10に伝播した振動は、緩衝材30により吸収される。このため、天井材6を受けている防振吊木金具1の受部材20には振動が伝わらない。これにより、天井材6が振動することを抑制することができる。
【0034】
防振吊木金具1は、吊部材10、受部材20、緩衝材30、連結部材40のみから構成され、部品点数が少ない。また、吊部材10、受部材20は、金属の板状体をL字状に曲げて形成される簡単な構成である。このように、従来のような複雑な構成部材を必要としないため、部材点数を削減することができる。また、吊部材10と受部材20にリブ16、25を形成することにより、簡単な構成でありながら、天井材6を保持するのに十分な強度を保つことができる。
【0035】
また、受部材20は、吊部材10に対して連結部材40を中心に回動する。このため、天井材6の野縁5の形成される方向に合わせて、受部材20の姿勢を吊部材10に対して任意の角度に変更することができる。従って、防振吊木金具1は、より多くの種類の天井材6に適用することができる。
【0036】
また、防振吊木金具1は、掛部13が形成されており、容易に天井インサート3の掛穴3aに掛けることができる。このため、取付けが容易となり、作業効率がよくなる。
【0037】
(防振吊木金具1の他の防振吊構造)
図を用いて本発明の防振吊木金具1の他の防振吊構造を説明する。図5は防振吊木金具1の他の防振吊構造を示す斜視図である。防振吊木金具1の構造は同様であるため、同符号を付すことで説明を省略する。
【0038】
図5に示すように、他の防振吊構造は、上部床部2の下部に垂れ下がる天井インサート3と、天井インサート3の下に固定する吊木4と、吊木4の下部に取付ける防振吊木金具1と、防振吊木金具1の下に取付く野縁5と、野縁5と一体的な天井材6とを有する。
【0039】
尚、天井インサート3と吊木4との固定は、天井インサート3に設けた不図示の貫通穴若しくは天井インサート3に引っ掛けるなどして取付けた延長金具に設けた貫通穴に釘等の固定部材を挿通させて行う。また、吊木4と防振吊木金具1との固定は、防振吊木金具1の吊部材10に形成された貫通穴15から吊木4に対して釘等の固定部材を挿通させて行う。また、防振吊木金具1と野縁5との固定は、防振吊木金具1の受部材20に形成された貫通穴24から野縁5に対して釘等の固定部材を挿通させて行う。
【0040】
ここで、防振吊木金具1と野縁5とを固定する際には、防振吊木金具1のガイド爪23が野縁5の上部に当接する。これにより、確実に野縁5との間で防振吊木金具1の位置決めを行うことができる。
【0041】
本防振吊構造のように、吊木4の下に防振吊木金具1を取付ける場合には、吊木4に対して防振吊木金具1の胴部11の表面側を当接する。このように、防振吊木金具1は、胴部11の裏面側のみならず、表面側を部材に当接させて使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、天井材を吊り下げる際に中継される部材を留める、天井材の防振吊木金具、及びこれを用いた天井材の防振吊構造に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】防振吊木金具1の詳細構成を説明するための斜視図。
【図2】防振吊木金具1の連結構造を説明するための断面図。
【図3】防振吊木金具1の動的構造を説明するための斜視図。
【図4】防振吊木金具1の実施例1の防振吊構造を示す斜視図及び天井インサート3の説明図。
【図5】防振吊木金具1の他の防振吊構造を示す斜視図。
【符号の説明】
【0044】
1…防振吊木金具、2…上部床部、2a …取付溝、3…天井インサート、3a …掛穴、3b …取付部、4…吊木、5…野縁、6…天井材、10…吊部材、11…胴部、12…連結部、13…掛部、14…凸部、15…貫通穴、16…リブ、20…受部材、21…胴部、22…連結部、23…ガイド爪、24…貫通穴、25…リブ、30…緩衝材、31…上部緩衝材、32…下部緩衝材、40…連結部材、41…固定軸、42…ワッシャ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊部材と、受部材とを有する天井材の吊木金具において、
前記吊部材及び前記受部材は、L字状で、垂直方向に伸びる胴部及び水平方向に伸びる連結部を有し、
前記吊部材の前記胴部の背面側に掛部を有し、
前記吊部材の連結部の下端、及び前記受部材の連結部の下端にはそれぞれ緩衝材を設け、これらを上下で挟持された状態で当接して配設するとともに、
前記吊部材の連結部、前記受部材の連結部及び前記緩衝材は、これらを貫通する固定軸により回動自在に軸支されたことを特徴とする天井材の防振吊木金具。
【請求項2】
前記吊部の前記胴部には貫通穴が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の天井材の防振吊木金具。
【請求項3】
吊木金具を用いて天井材を吊り下げて固定する天井材の防振吊構造であって、
上部床部に据え付けられた下部に掛穴が形成された天井インサートに
前記天井インサートの前記掛穴に対して、請求項1の防振吊木金具の前記掛部を掛けて防振吊木金具が固定され、
前記防振吊木金具の下部には吊木が取付けられ、且つ
前記吊木の下部が天井材に設けた野縁に取付けられてなることを特徴とする天井材の防振吊構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−170009(P2007−170009A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−367931(P2005−367931)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【出願人】(000108638)タカヤマ金属工業株式会社 (24)