説明

天井用断熱材とそれを用いた天井断熱構造

【課題】2種類の寸法の柱を用いて造られる軸組木造住宅の天井構造に対して、1種類の天井用断熱材を用意するのみで、隣接する野縁同士の間および際野縁とそこに隣接する野縁との間の双方に、適切にかつ容易に断熱材を挿入することのできる天井用断熱材を提供する。
【解決手段】柱の横幅が2種類であり、野縁および際野縁の横幅がDである、異なる2つの態様の天井構造で用いることができる合成樹脂発泡体製の天井用断熱材10であって、矩形形状をなす中央部分10aと、中央部分の側辺側からV字状をなす第1および第2の割溝を介して接続した第1の側方部分10bと第2の側方部分10cとを有する。第1の割溝と第2の割溝の上端の開口幅の和は、双方の側方部分の側方端面の下方縁間の距離と上方縁間の距離の差に等しいかより広い距離とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井部分を断熱するための天井用断熱材とそれを用いた天井断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
軸組木造住宅の天井工事は、柱と梁が組まれたのち、梁に吊木が取り付けられ、その吊木の下端に野縁受けを介して野縁が組まれる。そして、当該天井構造に断熱性を持たせるために、配置した野縁と野縁の間に合成樹脂発泡体である断熱材を挿入する断熱工法も行われる。特許文献1には天井断熱に用いる天井断熱パネルが記載されており、特許文献1に記載の天井断熱パネルでは、プラスターボードの面上に野縁を固定して、その野縁に吊り具を設けるとともに、野縁の間に断熱材を設けるようにしている。この天井断熱パネルでは、前記吊り具が吊木の役を果たしており、吊り具の先端が梁に固定される。
【0003】
建築用の断熱材として、特許文献2には、長方形である合成樹脂発泡体製の断熱材を、側縁に沿って形成した2本の割溝によって中央部分と2つの側方部分とに区分けするとともに、該側方部分の側面を5°〜20°の範囲で斜め下方に傾斜させるようにした断熱材が記載されている。この断熱材を隣接する構造材間に挿入し、その後、上から押し付けることで、断熱材は構造材間にしっかりと挿入された状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−80751号公報
【特許文献2】特開平10−110483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、軸組木造住宅の木造住宅では、105mm角もしくは120mm角の柱が用いられ、野縁には、通常、縦幅50mm、横幅40mmの角材が用いられる。また、標準的なモジュールでの野縁間隔は455mmであり、野縁寸法が決定すれば天井一般部(野縁と野縁間)での断熱材幅は決定できる。しかし、壁と柱の取り合い部分の野縁間距離(際野縁とそれに隣接する野縁間の距離)は、柱寸法によって異なる。したがって、天井断熱を行うに当たっては、野縁一般部用の天用断熱材と、それとは横幅の異なる1種類または2種類の際野縁部用の天井用断熱材を準備する必要がある。
【0006】
そのために、施工業者あるいは断熱材メーカーは、需要に適切に対応するために、横幅の異なる多種類の天井用断熱材を常時用意しておく必要があり、在庫管理、製品管理など観点から改善が求められている。特許文献1に記載される形態の天井断熱パネルでも事情はほぼ同じであり、やはり横幅の異なる多種類の天井断熱パネルを用意する必要がある。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、軸組木造住宅に標準として用いられ2種類の寸法の柱を用いて造られる2つの態様の天井構造のいずれに対しても、1種類の天井用断熱材を用意するのみで、すべての野縁一般部(隣接する野縁同士の間)および際野縁部(際野縁と該際野縁に隣接する野縁との間)に適切にかつ容易に挿入することのできる天井用断熱材を提供することを課題とする。また、その天井用断熱材を用いた天井面の断熱構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による天井用断熱材は、柱と柱の中心間の距離Sを等間隔Xに区分する位置に適数の野縁が取り付けられ、各柱に接する位置には前記野縁と同寸法の際野縁が取り付けられている構造を備えた、軸組木造住宅での天井構造を断熱するために前記際野縁と該際野縁に隣接する野縁の間および隣接する野縁同士の間に挿入するのに用いられる合成樹脂発泡体製の天井用断熱材であって、前記天井用断熱材は、柱の横幅YがY1およびY2(>Y1)、野縁および際野縁の横幅D(<Y)である異なる2つの態様の前記天井構造で用いることが予定されているものであり、前記天井用断熱材は、平板状で矩形形状をなす中央部分と、該中央部分の一方および他方の側辺側からほぼV字状をなす第1および第2の割溝を介して斜めに傾斜した該中央部分と実質的に同じ厚みを持ちかつほぼ矩形形状をなす第1および第2の側方部分とを有し、前記各側方部分の側方端面は、その下方縁がその上方縁よりも外方に位置する傾斜面とされかつ前記双方の側方端面の上方縁間の距離は前記隣接する野縁間の距離よりやや狭く、下方縁間の距離は前記隣接する野縁間の距離よりも広くされており、前記第1の割溝の前記中央部分側の位置は、天井用断熱材を平板状の姿勢とした状態で前記第1の側方部分の側方端面から前記柱の横幅Y1と野縁の横幅Dの和のほぼ半分の距離Z1だけ内側に入った位置とされており、前記第2の割溝の前記中央部分側の位置は、天井用断熱材を平板状の姿勢とした状態で前記第2の側方部分の側方端面から前記柱の横幅Y2と野縁の横幅Dとの和のほぼ半分の距離Z2だけ内側に入った位置とされており、前記第1の割溝と第2の割溝の上端の開口幅は、少なくとも前記双方の側方部分の側方端面の下方縁間の距離と上方縁間の距離の差に等しいかより広い距離とされていることを特徴とする。
【0009】
後の発明を実施するための形態の欄で図面を参照してより詳しく説明するように、本発明による天井用断熱材は、基本構成として、中央部分10aと、その両側にほぼV字状をなす割溝S1、S2を介して斜めに傾斜したほぼ矩形形状をなす第1および第2の側方部分10b、10cとを備える。そして、前記各側方部分10b、10cの側方端面11、12は、その下方縁がその上方縁よりも外方に位置する傾斜面とされ、さらに、前記双方の側方端面11、12の上方縁間の距離P1は前記隣接する野縁間の距離Taよりやや狭く、下方縁間の距離P2は前記隣接する野縁間の距離Taよりも広くされている。なお、本発明において、「上方」とは、天井断熱施工時に天井用断熱材が野縁間等で屋内側から天井側に向けて押し上げながら挿入されるときの挿入方向前方側をいい、「下方」とは挿入方向後方側をいう。
【0010】
したがって、野縁一般部すなわち隣接する野縁と野縁の間では、割溝S1、S2の開放側を下面側としたそのままの姿勢で屋内側から天井側に向けて押し上げることで、上記天井用断熱材を容易に野縁間に挿入することができる。挿入後にさらに押し上げることで、天井用断熱材は、双方の側方部分10b、10cが前記V字状をなす割溝S1、S2の幅を次第に狭くする方向に回動しながら上方に向けて移動していき、最後には、全体が平板状の姿勢となって野縁と野縁との間に隙間のない状態で嵌め込まれる。それにより、野縁一般部には、合成樹脂発泡体製の天井用断熱材10による断熱層が形成される。
【0011】
際野縁と該際野縁に隣接する野縁との間では、本発明による天井用断熱材は次のようにして挿入される。軸組木造家屋における天井構造において、野縁一般部での野縁間の距離Taは前記距離X−距離Dであり、柱に接して配置された際野縁と該際野縁に隣接する野縁の壁間の距離Tbは前記Ta−(距離Y+距離D)/2となる。そして、本発明による天井用断熱材においては、前記した位置に第1の割溝S1と第2の割溝S2とを形成しているので、横幅Y1の柱を用いた天井構造に対しては、第1の割溝S1を利用して前記第1の側方部分10aを除去した天井用断熱材、すなわち前記中央部分10aと第2の側方部分10cとからなる天井用断熱材を用いることで、際野縁とそこに隣接する野縁との間に容易に天井用断熱材を挿入することができる。また、横幅Y2の柱を用いた天井構造に対しては、割溝S2を利用して前記第2の側方部分を除去した天井用断熱材、すなわち第1の側方部分10bと中央部分10aとからなる天井用断熱材を用いることで、際野縁とそこに隣接する野縁との間に容易に天井用断熱材を挿入することができる。
【0012】
上記のように、本発明による天井用断熱材を用いることにより、軸組木造住宅の天井部に標準として採用されている2種類の寸法(横幅YがY1とY2)の柱のいずれを用いて造られた2つの態様の天井構造に対して、野縁一般部(隣接する野縁同士の間)および際野縁部(際野縁と該際野縁ら隣接する野縁との間)の双方に適切にかつ容易に断熱材を挿入することができるようになる。そのために、施工が容易となるとともに、天井用断熱材の在庫管理や製品管理も容易となる。
【0013】
また、本発明による天井用断熱材において、第1と第2の割溝S1、S2は、基本的に、野縁間あるいは際野縁と野縁間に天井用断熱材を挿入するときに、側方部分が前記下方縁間の距離P2と上方縁間の距離P1の差分だけ回動することができるように設けられる。割溝S1、S2の上端側の距離Wは狭いものでよく、断熱性が破壊される可能性を極力小さくすることができる利点がある。もちろん、前記下方縁間の距離P2と上方縁間の距離P1の差分よりも少し(2〜3mm程度)広くしておくことで、際野縁を含む野縁設置の施工後差にも対応可能となる。
【0014】
なお、本発明において、前記柱と柱の中心間の間隔Sの値、野縁の横幅Dの値、柱の横幅Yの値に特に制限はないが、現在の軸組工法を参照すれば、前記したように、前記隣接する野縁の中心間距離Xは455mm前後であり、Dが40mm前後、Y1が105mm前後、Y2が120mm前後である。より具体的には、本発明による天井用断熱材において、前記Yが105mm前後または120mm前後、Dが40mm前後ある軸組木造建築物の天井部に装着される場合には、前記Z1、Z2は、80mm前後、73mm前後の距離とされる。そして、この場合、前記第1の割溝S1と第2の割溝の上端の開口幅Wはほぼ6mm程度であってよい。
【0015】
本発明はさらに、上記の天井用断熱材を用いる天井断熱構造であって、天井構造は、柱と柱の中心間の距離を等間隔に区分する位置に適数の野縁が取り付けられ、各柱に接する位置には前記野縁と同寸法の際野縁が取り付けられている天井構造であり、その天井構造における前記際野縁と該際野縁に隣接する野縁の間には、前記天井用断熱材から第1の側方部分または第2の側方部分のいずれか一方を前記割溝の部分から除去した後の天井用断熱材が挿入されており、隣接する野縁同士の間には、前記天井用断熱材がそのまま挿入されている構造を少なくとも備えることを特徴とする天井断熱構造をも開示する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、軸組木造建築物による天井構造において、柱の横幅寸法が異なる態様の天井構造であっても、1種類の天井用断熱材を用意するのみで、隣接する野縁同士の間および際野縁とそこに隣接する野縁との間の双方に、適切にかつ容易に断熱材を挿入することが可能となる。それにより、断熱施工の容易性が得られるとともに、天井用断熱材の在庫管理あるいは製品管理も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】軸組木造建築物の天井部とその断熱構造を説明する図。
【図2】本発明による天井用断熱材の一例を説明するための断面図。
【図3】本発明による天井断熱構造の一例を示す断面図。
【図4】図3に示した天井断熱構造で用いる天井用断熱材を説明するための図。
【図5】他の形態の天井用断熱材を用いた場合での図2に相当する図。
【図6】V字状の割溝の詳細を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施の形態に基づき説明する。
図1に示すように、軸組工法における木造建築物の天井部は、一般に、横幅Yの角材からなる柱1、1間に架け渡した梁2から吊木3が垂下され、該吊木3の下端に梁2と平行に野縁受け4が取り付けられる。そして、該野縁受け4に対して野縁受け4に直交する方向に一定間隔で横幅Dの角材からなる野縁5が取り付けられ、該野縁5を利用して屋内側から天井下地板(不図示)が取り付けられる。天井断熱を行うに当たっては、野縁5、5間に適宜厚さの合成樹脂発泡体製の天井用断熱材10が屋内側から天井側に向けて押し上げるようにして挿入される。
【0019】
軸組工法での標準では、図1に示すように、対向する柱1、1の中心間の距離Sが等距離Xに区分され、野縁受け4における各区分点の位置に幅方向の中心が位置するようにして前記野縁5が取り付けられる。また、柱2に接しても野縁5が取り付けられており、本発明では、この柱に接して取り付けられている野縁を際野縁6と呼ぶこととする。もちろん、際野縁6と一般の野縁5は同じ寸法のものである。
【0020】
天井部の断熱を行うには、野縁5と野縁5の間、すなわち野縁一般部には、対向する野縁5、5の側面間の距離Ta(=X−D)にほぼ等しい横幅である合成樹脂発泡体製の天井用断熱材10が挿入される。一方、前記際野縁6とそこに隣接する野縁5の対向する側面間の距離Tbは、野縁間一般部における野縁5、5の側面間の距離Taより狭く、その距離Tbは、Ta−(Y+D)/2となる。したがって、前記際野縁6とそこに隣接する野縁5との間には、横幅がほぼTbに等しい合成樹脂発泡体製の部分断熱材10sが挿入される。
【0021】
軸組工法において、一般に、前記距離Xは455mmであり、野縁5(際野縁6)には横幅Dが40mmのもの、柱2には、横幅Yが105mm(Y1)と120mm(Y2)のものが用いられている。下記の表1および図3に示すように、柱1の横幅YがY1=105mm場合の天井構造(選択1)では、距離Taは(455−40)mm=415mm、距離Tbは(415−(105+40)/2)mm=342.5mmとなる(図3(a)参照)。同様に、柱1の横幅YがY2=120mm場合の天井構造(選択2)では、距離Taは(455−40)mm=415mm、距離Tbは(415−(120+40)/2)mm=335mmとなる(図3(b)参照)。なお、表1で、Z(Z1、Z2)は、Ta−Tbの値である。
【0022】
【表1】

【0023】
本発明は、上記した2つの態様の天井構造における、野縁5、5の間および際野縁6と該際野縁6に隣接する野縁5の間に、容易に挿入することのできる合成樹脂発泡体製の天井用断熱材10を提供するものである。
【0024】
図2は、本発明による合成樹脂発泡体製の天井用断熱材10の一例を短手方向の断面で示している。天井用断熱材10は、基本的形態として、平板状で矩形形状をなす中央部分10aと、該中央部分の長手方向の一方および他方の側辺側からほぼV字状をなす第1および第2の割溝S1、S2を介して斜めに傾斜した該中央部分と実質的に同じ厚みを持ちかつほぼ矩形形状をなす第1および第2の側方部分10b、10cとを備える。そして、前記各側方部分10b、10cの長手方向に沿った側方端面11、12は、その下方縁11a、12aがその上方縁11b、12bよりも外方に位置する傾斜面とされており、さらに前記双方の側方端面11、12の上方縁11b、12b間の距離P1は前記隣接する野縁間の距離Taよりやや狭く、また、下方縁11a、12a間の距離P2は前記隣接する野縁間の距離Taよりも広くされている。天井用断熱材10の厚みは必要とされる断熱性能に応じて適宜設定すればよい。
【0025】
天井用断熱材10の素材としての合成樹脂発泡体は、柔軟性を有し圧縮可能であり、反発弾性を有していて野縁間に圧挿した場合に野縁に断熱材の端部が密着する性質を有するものであるのが好ましい。具体的には、ポリオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂を、押出発泡成形あるいはビーズ発泡成形によって成形したものが好ましい。
【0026】
図4(a)は、天井用断熱材10の一つの具体例における短手方向の断面を、実際の数値も入れて示している。この例において、中央部分10aの上面幅および下面幅はともに262.5mm、第1の側方部分10bの上面幅70.7mm、下面幅70.5mm、第2の側方部分10cの上面幅78.2mm、下面幅78.0mmであり、すべての厚みは150mmである。第1の側方部分10bと中央部分10aとの間にはV字状の割溝S1が、また、中央部分10aと第2の側方部分10cとの間にはV字状の割溝S2が形成され、割溝S1および割溝S2の上端開口幅W1、W2はともに6.0mmとされている。具体的には、第1の割溝S1は、中央部分10aの一方の側面と第1の側方部分10bの対向する側面によって形成され、また、第2の割溝S2は、中央部分10aの他方の側面と第2の側方部分10cの対向する側面によって形成されている。
【0027】
図4(a)に示す姿勢にあるときの前記側方端面11、12の上方縁11b、12b間の距離P1は、略70.7+262.5+略78.2=略411.4mmであって、前記選択1、2でのTa値415mmよりも狭い。側方端面11、12の下方縁11a、12a間の距離P2は、略70.5+6+262.5+6+略78.0=423.0mmであって、前記選択1、2でのTa値415mmよりも広い。割溝S1および割溝S2の上端開口幅W1、W2はともに6.0mmであり、その和は12.0mmであって、P2とP1の差=11.6mmの値よりも広い。したがって、選択1、2のいずれの天井構造であっても、天井用断熱材10は、図4(a)に示されるそのままの姿勢で隣接する野縁5、5の間に容易に入り込むことができ、その後、さらに押し上げて下面が野縁5の下面と同じ位置となり、ほぼ平板状の姿勢とされたときに、図4(b)に示すように、側方端面11、12のほぼ全面を左右の野縁5、5に密接させ、かつV字状の割溝Sの上端幅をほぼ2.0mmにまで狭めた状態で野縁間に挿入される。それにより、野縁5、5間の断熱性はしっかりと確保される。
【0028】
すなわち、図示される天井用断熱材10において、前記第1の割溝S1の前記中央部分10a側の位置は、天井用断熱材10を平板状の姿勢とした状態で第1の側方部分10bの側方端面11から柱1の横幅Y1=105と野縁5の横幅D=40の和145mmのほぼ半分の距離Z1=72.5mmだけ内側に入った位置とされており、前記第2の割溝S2の中央部分10a側の位置は、天井用断熱材を平板状の姿勢とした状態で第2の側方部分10cの側方端面12から柱1の横幅Y2=120mmと野縁5の横幅D=40との和160mmの半分の距離Z2=80.0内側に入った位置とされている。
【0029】
次に、際野縁6と該際野縁6に隣接する野縁5間に、天井用断熱材10を挿入する場合を説明する。最初に、柱2として横幅Y1=105mmを用いる場合(選択1)は、図4(a)に示した断熱材10から第1の側方部分10bを第1の割溝S1を利用して分離除去した後の第1部分断熱材10s1を用いる。図4(c)は第1部分断熱材10s1を示しており、その上方側の横幅は略340.7mmであって、Tb値342.5mmより狭い。また、上方側の横幅は略346.4mmであって、Tb値342.5mmより広い。したがって、第1部分断熱材10s1は、選択1において、そのままの姿勢で際野縁6と該際野縁6に隣接する野縁5の間に容易に入り込むことができる。その後、さらに押し上げて下面が野縁5の下面と同じ位置となり、ほぼ平板状の姿勢とされたときに、図4(c)に示すように、第2の側方部分10cの側方端面12を際野縁6の側面に、また中央部分10aの左方側面を野縁5の側面にほぼ密接させた姿勢で、際野縁6と野縁5の間に挿入される。そのときに、図4(c)に示すように、V字状の第2の割溝S2の上端幅をほぼ2mmにまで狭められた状態となる。
【0030】
次に、柱2として横幅Y2=120mmを用いる場合を説明する(選択2)。この場合は、図4(a)に示した断熱材10から第2の側方部分10cを第2の割溝S2を利用して分離除去した後の第2部分断熱材10s2を用いる。図4(d)は第2部分断熱材10s2を示しており、その上方側の横幅は略333.2mmであって、Tb値335.0mmより狭い。また、下方側の横幅は339.0mmであって、Tb値335.0mmより広い。したがって、第2部分断熱材10s2は、選択2においてそのままの姿勢で際野縁6と該際野縁6に隣接する野縁5の間に容易に入り込むことができる。その後、さらに押し上げて下面が野縁5の下面と同じ位置となり、ほぼ平板状の姿勢とされたときに、図4(d)に示すように、第1の側方部分10bの側方端面11を際野縁6の側面に、また中央部分10aの右方側面を野縁5の側面にほぼ密接させた姿勢で、際野縁6と野縁5の間に挿入される。そのときに、図4(d)に示すように、V字状の第1の割溝S1の上端幅をほぼ2mmにまで狭められた状態となる。
【0031】
図3に示した態様では、野縁5および際野縁6の下面は露出した状態にある。野縁5および際野縁6の下面は天井下地板(不図示)の留め付けに用いられるので、そのまま露出していても差し支えない。しかし、より高い断熱性能を望む場合に、野縁5や際野縁6の下面にも断熱材を配置することが求められる。このような場合には、図5に示すように、野縁5や際野縁6の下面側を覆う形状の張り出し部13を備えた天井用断熱材10を用いることで、課題を解決することができる。
【0032】
図6は、前記第2のV字状の割溝S2の溝底部形状のいくつかの例を示している。なお、図示の都合から、第2の割溝S2について説明するが、第1割溝S1についても同様である。いずれの場合も、第2の割溝S2の中央部分10a側の側面Sa、すなわち、図で中央部分10aの左側側面Saは垂直面とされ、他方の側面Sb、すなわち第2の側方部分10cの図で左側側面Sbは傾斜面とされている。また、第2の割溝S2の底部Scは、分離作業が容易に行えるように、天井用断熱材10の上方面近傍まで達している。底部Scは、図6(a)に示す例では右上がりの傾斜面であり、図6(b)に示す例では水平面であり、図6(c)に示す例ではほぼ円弧状となっている。発泡樹脂の種類や全体の形状と寸法に応じて、分離面ができるだけ平坦な面となるように底部Scの形状を選定することが望ましい。
【符号の説明】
【0033】
1…柱、
2…梁、
3…吊木、
4…野縁受け
5…野縁、
6…際野縁(柱に接している野縁)、
10…合成樹脂発泡体製の天井用断熱材、
10a…天井用断熱材の中央部分、
10b…天井用断熱材の第1の側方部分、
10c…天井用断熱材の第2の側方部分、
10s(10s1、10s2)…部分断熱材、
11…第1の側方部分側の側方端面、
12…第2の側方部分側の側方端面、
P1…天井用断熱材における2つの側方部分の上方縁間の距離、
P2…天井用断熱材における2つの側方部分の下方縁間の距離、
S1…V字状をなす第1の割溝、
S2…V字状をなす第2の割溝、
W…割溝の開口幅、
Y(Y1、Y2)…柱の横幅、
D…野縁(際野縁)の横幅、
Ta…野縁間の距離、
Tb…際野縁と野縁との間の距離、
Z1…柱の横幅Y1と野縁の横幅D1の和のほぼ半分の距離、
Z2…柱の横幅Y2と野縁の横幅D2の和のほぼ半分の距離。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱と柱の中心間の距離Sを等間隔Xに区分する位置に適数の野縁が取り付けられ、各柱に接する位置には前記野縁と同寸法の際野縁が取り付けられている構造を備えた、軸組木造住宅での天井構造を断熱するために前記際野縁と該際野縁に隣接する野縁の間および隣接する野縁同士の間に挿入するのに用いられ合成樹脂発泡体製の天井用断熱材であって、
前記天井用断熱材は、柱の横幅YがY1およびY2(>Y1)、野縁および際野縁の横幅D(<Y)である異なる2つの態様の前記天井構造で用いることが予定されているものであり、
前記天井用断熱材は、平板状で矩形形状をなす中央部分と、該中央部分の一方および他方の側辺側からほぼV字状をなす第1および第2の割溝を介して斜めに傾斜した該中央部分と実質的に同じ厚みのほぼ矩形形状をなす第1および第2の側方部分とを有し、
前記各側方部分の側方端面は、その下方縁がその上方縁よりも外方に位置する傾斜面とされかつ前記双方の側方端面の上方縁間の距離は前記隣接する野縁間の距離よりやや狭く、下方縁間の距離は前記隣接する野縁間の距離よりも広くされており、
前記第1の割溝の前記中央部分側の位置は、天井用断熱材を平板状の姿勢とした状態で前記第1の側方部分の側方端面から前記柱の横幅Y1と野縁の横幅Dの和のほぼ半分の距離Z1だけ内側に入った位置とされており、
前記第2の割溝の前記中央部分側の位置は、天井用断熱材を平板状の姿勢とした状態で前記第2の側方部分の側方端面から前記柱の横幅Y2と野縁の横幅Dとの和のほぼ半分の距離Z2だけ内側に入った位置とされており、
前記第1の割溝と第2の割溝の上端の開口幅は、少なくとも前記双方の側方部分の側方端面の下方縁間の距離と上方縁間の距離の差に等しいかより広い距離とされていることを特徴とする天井用断熱材。
【請求項2】
請求項1に記載の天井用断熱材を用いた天井断熱構造であって、天井構造は、柱と柱の中心間の距離を等間隔に区分する位置に適数の野縁が取り付けられ、各柱に接する位置には前記野縁と同寸法の際野縁が取り付けられている天井構造であり、その天井構造における前記際野縁と該際野縁に隣接する野縁の間には、前記天井用断熱材から第1の側方部分または第2の側方部分のいずれか一方を前記割溝の部分から除去した後の天井用断熱材が挿入されており、隣接する野縁同士の間には、前記天井用断熱材がそのまま挿入されている構造を少なくとも備えることを特徴とする天井断熱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−76208(P2013−76208A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214955(P2011−214955)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)