説明

天体望遠鏡の鏡筒制御機構

【課題】 操作機構全体を小型化し、素早いアクションを行うことができる。
【解決手段】 一基のジョイスティック19によって操作を行う。ジョイスティック19は、押しボタンスイッチを兼ねたスティック20と、架台の回転方向の変更モード、インジケータの明るさの調整モード、マウント及びモータギアのバックラッシュ調整モードの夫々に対応するインジケータ21、22、23と設定確認インジケータ24とをもって構成する。又、該ジョイスティック19は、各モードに設定した後、夫々のモードを実行し得る構成を具備している。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は天体望遠鏡の鏡筒制御機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
天体望遠鏡で天体や地上物体を観測するときには、直視、天頂プリズム、正立プリズムを使い分けている。そして直視のときは、上下左右が逆(倒立像)に見える。また、天頂プリズム併用のときは、上下は正立であるが、左右が逆に見える。更にまた正立プリズム併用のときは、正立に見える。
【0003】
そこで、例えば正立プリズム併用のときは、ジョイスティックのスティックを右側に倒せば架台が右方向を向いて望遠鏡が右を向き、またジョイスティックのスティックを上側に倒せば望遠鏡が上を向くようになっているとすれば非常に使い易い。ところが、天頂プリズム併用(左右逆像)の場合は、このままでは、視野の右にある物体を中央に導入しようとしてスティックを右側に倒すと、益々視野中央から離れることになってしまう。
【0004】
そこで、正立プリズム併用のときは、スティックを右側に倒せば架台が右方向を向き、また左側に倒せば左方向を向き、更に上側に倒せば上方向を向き、下側に倒せば下方向を向くようにし、また天頂プリズム併用のときは、スティックを右側に倒せば左方向を向き、左側に倒せば右方向を向き、また上側に倒せば上方向を向くと共に下側に倒せば下方向を向くようにし、更にまた直視(倒立像)のときは、スティックを右側に倒せば左方向を向き、また左側に倒せば右方向を向き、更に上側に倒せば下方向を向き、下側に倒せば上方向を向くようにすれば、観測対象を捉え易く、これらを視野中央に導入することが容易となり、追尾も容易となる。
【0005】
また、鏡筒制御機構には各種のインジケータが用いられるが、これらのインジケータの明るさを調整することができれば便利である。即ち、夜間における観望時には眩しくて邪魔にならないように暗くしたり消灯することができ、また反対に昼間は明るさを増すようにできれば便利である。
【0006】
また、鏡筒制御機構においてマウント及びモータギア等にはバックラッシュがつきものである。バックラッシュがあるとコントロールの利きが少し遅くなり、即座の対応ができにくい。そのようなときにおいて速度を少し速めてギアへの噛み付き時間を速め、その後通常の速度にすることができるようにすれば、バックラッシュを補正することが可能となり、便利である。
【0007】
【考案が解決しようとする課題】
ところで、従来の鏡筒制御機構にあっては、モータ等の操作は全て押ボタンスイッチによって行なっていた。しかし、押ボタンスイッチの場合には、例えばモータの正転、逆転、停止等の操作毎の押ボタンスイッチが必要であり、必然的に機構全体が大型化する。そしてまた、一々手元を見なければならず、素早いアクションを行なうこともできないという問題点もある。
【0008】
本考案は上記の点に鑑みなされたものであって、スティックを所定の方向に倒すだけの操作によって従来の複数の押ボタンスイッチによる操作と同様の操作が可能となるジョイスティックの特性を利用し、上記の如く直視、天頂プリズム併用、正立プリズム併用の夫々の場合に対応して観測対象を捉え易いように架台の回転方向を変えるための操作や、各種のインジケータの明るさを調整する操作や、マウント及びモータギアのバックラッシュを調整する操作をジョイスティックによって行なうことによって、上記の要望を満足させると共に問題点を解消することができるようになしたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
而して、本考案の要旨は、以下の構成にある。
(1)一基のジョイスティックによって架台の回転方向の操作を行い、直視、天頂プリズム併用、正立プリズム併用の夫々の場合に対応して観測対象を捉え易いように架台の回転方向を変えるようになしたことを特徴とする天体望遠鏡の鏡筒制御機構。
(2)ジョイスティックにより、スティックを右側に倒せば右方向に、左側に倒せば左方向に、上側に倒せば上方向に、下側に倒せば下方向に夫々架台が向くようになした正立プリズムモードと、スティックを右側に倒せば左方向に、左側に倒せば右方向に、上側に倒せば上方向に、下側に倒せば下方向に夫々架台が向くようになした天頂プリズムモードと、スティックを右側に倒せば左方向に、左側に倒せば右方向に、上側に倒せば下方向に、下側に倒せば上方向に夫々架台が向くようになした倒立モードとを設定し得るようになし、各モードを適宜に選択し得るようになした上記構成に係る天体望遠鏡の鏡筒制御機構。
(3)ジョイスティックが、そのスティックが押ボタンスイッチを兼ねるものであり、且つ複数のモード表示用インジケータとモード設定確認インジケータを備えたジョイスティックである上記構成に係る天体望遠鏡の鏡筒制御機構。
(4)一基のジョイスティックによってジョイスティックにおけるモード表示用インジケータ、モード設定確認インジケータその他の鏡筒制御機構におけるインジケータの明るさを調整するようになしたことを特徴とする天体望遠鏡の鏡筒制御機構。
(5)スティックを所定の方向に倒していくと、インジケータが徐々に暗くなり、最後は消灯するようになした上記構成に係る天体望遠鏡の鏡筒制御機構。
(6)一基のジョイスティックによってマウント及びモータギアのバックラッシュを調整するようになしたことを特徴とする天体望遠鏡の鏡筒制御機構。
(7)スティックを所定の方向に倒していくと、複数のインジケータが順に点灯し、最後に点灯するインジケータが点灯したときバックラッシュ補正量が最大となるように設定してなる上記構成に係る天体望遠鏡の鏡筒制御機構。
(8)一基のジョイスティックにより、直視、天頂プリズム併用、正立プリズム併用の夫々の場合に対応して観測対象を捉え易いように架台の回転方向を変え、また各種インジケータの明るさを調整し、更にマウント及びモータギアのバックラッシュを調整するようになしたことを特徴とする天体望遠鏡の鏡筒制御機構。
【0010】
【考案の実施の形態】
以下、本考案の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は架台の回転方向を変える場合の実施形態の説明図である。
【0011】
図中、1はジョイスティックである。また該ジョイスティック1は、押ボタンスイッチを兼ねたスティック2と、正立プリズムモード、天頂プリズムモード、倒立モードの夫々に対応するインジケータ3、4、5と、設定確認インジケータ6とからなるものである。
【0012】
而して、モードを設定するときには、スティック2を真中で押すことによって行なう。そして、この場合には設定確認インジケータ6が点灯し、モード設定に入ったことを示す。それからスティック2を右側に倒していくと、3つのインジケータ3、4、5が順に点灯する。尚、本実施形態ではインジケータ3は正立プリズムモード、インジケータ4は天頂プリズムモード、インジケータ5は倒立モードに夫々対応している。そして所望の設定モードのインジケータが点灯したときにスティック2を押してモードを設定するものである。そしてまたモードが確定すると設定確認インジケータ6が消灯し、設定したモードのインジケータが点灯を継続するものである。斯かる操作により架台の回転方向は各プリズムの状況に応じて観測対象を捉え易くなるように調整されるものである。
【0013】
即ち、成立プリズムモードのときには、スティックを右側に倒せば右方向に、左側に倒せば左方向に、上側に倒せば上方向に、下側に倒せば下方向に夫々架台が向くようになり、天頂プリズムモードのときには、スティックを右側に倒せば左方向に、左側に倒せば右方向に、上側に倒せば上方向に、下側に倒せば下方向に夫々架台がむくようになり、また倒立モードのときには、スティックを右側に倒せば左方向に、左側に倒せば右方向に、上側に倒せば下方向に、下側に倒せば上方向に夫々架台が向くようになるものである。
【0014】
次に、図2に示した各種インジケータの明るさを調整する場合の実施形態について説明する。
図中、7はジョイスティックである。また、該ジョイスティック7は、押ボタンスイッチを兼ねたスティック8と、各種の機能に対応した複数のインジケータ9、10、11と、設定確認インジケータ12とからなるものである。
【0015】
而して、インジケータの明るさを調整するときには、先ずスティック8を真中で押す。これによって設定確認インジケータ12が点灯し、モード設定に入ったことを示す。それからスティック8を下側に倒していくと、インジケータ9、10、11が徐々に暗くなっていき、最後には消灯するものである。そしてスティック8を所望の明るさのときに押すとモードが確定し、設定確認インジケータ12が消灯し、インジケータは設定した明るさに維持されるものである。
【0016】
次に、図3に示したマウント及びモータギアのバックラッシュを調整する場合の実施形態について説明する。
図中、13はジョイスティックである。また該ジョイスティック13は、押ボタンスイッチを兼ねたスティック14と、バックラッシュ補正量の度合を示すインジケータ15、16、17と、設定確認インジケータ18とからなるものである。
【0017】
而して、マウント及びモータギアのバックラッシュを調整するときには、先ずスティック14を真中で押す。これによって設定確認インジケータ18が点灯し、モード設定に入ったことを示す。それからスティック14を上側に倒していくと、3つのインジケータ15、16、17が順に点灯していく。尚、本実施形態では右側に位置するインジケータが点灯するときほどバックラッシュ補正量の度合が大きくなるようになしている。そしてスティック14を所望の設定量のインジケータが点灯したときに押すとモードが確定し、設定確認インジケータ18が消灯し、バックラッシュが適宜に調整されるものである。
【0018】
次に、図4に示した架台の回転方向の変更、インジケータの明るさの調整並びにマウント及びモータギアのバックラッシュの調整を一基のジョイスティックによって行う場合の実施形態について説明する。
図中、19はジョイスティックである。また該ジョイスティック19は、押しボタンスイッチを兼ねたスティック20と、架台の回転方向の変更モード、インジケータの明るさの調整モード、マウント及びモータギアのバックラッシュ調整モードの夫々に対応するインジケータ21、22、23と、設定確認インジケータ24とからなるものである。そしてまた、該ジョイスティック19は、前記図1乃至図3で示したと同様の構成をも具備しているものである。
【0019】
而して、上記各モードに設定するときには、先ずスティック20を真中で押す。これによって設定確認インジケータ24が点灯し、モード設定に入ったことを示す。それからスティック20を右側に倒していくと、3つのインジケータ21、22、23が順に点灯する。そして所望の設定モードのインジケータが点灯したときにスティック20を押してモードを設定するものである。このときには設定確認インジケータ24が消灯し、設定されたモードの通りに使用可能となる。
そして、これ以降は前記図1乃至図3で示した通りの操作によって夫々架台の回転方向の変更、インジケータの明るさの調整、マウント及びモータギアのバックラッシュの調整を行うものである。
【0020】
【考案の効果】
本考案は上記の如き構成であり、スティックを所定の方向に倒すだけの操作によって従来の複数の押ボタンスイッチによる操作と同様の操作が可能となるジョイスティックの特性を利用し、直視、天頂プリズム併用、正立プリズム併用の夫々の場合に対応して観測対象を捉え易いように架台の回転方向を変えるための操作や、各種のインジケータの明るさを調整する操作や、マウント及びモータギアのバックラッシュを調整する操作をジョイスティックによって行うものである。
したがって、従来の押ボタンスイッチによる場合に比して操作機構全体を小型化することができ、且つまた素早いアクションを行うことも可能となるものである。
【0021】
そしてまた、観測に適するように架台の回転方向を変える構成の場合においては、正立プリズム併用のときは、スティックを右側に倒せば架台が右方向を向き、また左側に倒せば左方向を向き、更に上側に倒せば上方向を向き、下側に倒せば下方向を向くようになり、また天頂プリズム併用のときは、スティックを右側に倒せば左方向を向き、左側に倒せば右方向を向き、また上側に倒せば上方向を向くと共に、下側に倒せば下方向を向くようになり、更にまた直視(倒立像)のときは、スティックを右側に倒せば左方向を向き、また左側に倒せば右方向を向き、更に上側に倒せば下方向を向き、下側に倒せば上方向を向くようになるものである。したがって、観測対象を捉え易く、これらを視野中央に導入することが容易となり、追尾も容易となる。
【0022】
また、インジケータの明るさを調整する構成の場合においては、夜間における観望時には眩しくて邪魔にならないように暗くしたり消灯することができ、また反対に昼間は明るさを増すようにできて便利である。
【0023】
また、マウント及びモータギアのバックラッシュを調整する構成の場合においては、速度を少し速めてギアへの噛み付き時間を早め、その後通常の速度にすることができるようにしてバックラッシュを補正することが可能となる。したがって、コントロールの利きが従来よりも早まり、即座の対応が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案に係る架台の回転方向を変える構成において用いるジョイスティックの一実施形態の正面図である。
【図2】本考案に係るインジケータの明るさを調整する構成において用いるジョイスティックの正面図である。
【図3】本考案に係るマウント及びモータギアのバックラッシュを調整する構成において用いるジョイスティックの正面図である。
【図4】本考案に係る架台の回転方向の変更、インジケータの明るさの調整並びにマウント及びモータギアのバックラッシュの調整を一基のジョイスティックによって行う構成において用いるジョイスティックの正面図である。
【符号の説明】
1 ジョイスティック
2 スティック
3、4、5 インジケータ
6 設定確認インジケータ
7 ジョイスティック
8 スティック
9、10、11 インジケータ
12 設定確認インジケータ
13 ジョイスティック
14 スティック
15、16、17 インジケータ
18 設定確認インジケータ
19 ジョイスティック
20 スティック
21、22、23 インジケータ
24 設定確認インジケータ

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 一基のジョイスティックによって架台の回転方向の操作を行い、直視、天頂プリズム併用、正立プリズム併用の夫々の場合に対応して観測対象を捉え易いように架台の回転方向を変えるようになしたことを特徴とする天体望遠鏡の鏡筒制御機構。
【請求項2】 ジョイスティックにより、スティックを右側に倒せば右方向に、左側に倒せば左方向に、上側に倒せば上方向に、下側に倒せば下方向に夫々架台が向くようになした正立プリズムモードと、スティックを右側に倒せば左方向に、左側に倒せば右方向に、上側に倒せば上方向に、下側に倒せば下方向に夫々架台が向くようになした天頂プリズムモードと、スティックを右側に倒せば左方向に、左側に倒せば右方向に、上側に倒せば下方向に、下側に倒せば上方向に夫々架台が向くようになした倒立モードとを設定し得るようになし、各モードを適宜に選択し得るようになした請求項1記載の天体望遠鏡の鏡筒制御機構。
【請求項3】 ジョイスティックが、そのスティックが押ボタンスイッチを兼ねるものであり、且つ複数のモード表示用インジケータとモード設定確認インジケータを備えたジョイスティックである請求項1又は2記載の天体望遠鏡の鏡筒制御機構。
【請求項4】 一基のジョイスティックによってジョイスティックにおけるモード表示用インジケータ、モード設定確認インジケータその他の鏡筒制御機構におけるインジケータの明るさを調整するようになしたことを特徴とする天体望遠鏡の鏡筒制御機構。
【請求項5】 スティックを所定の方向に倒していくと、インジケータが徐々に暗くなり、最後は消灯するようになした請求項4記載の天体望遠鏡の鏡筒制御機構。
【請求項6】 一基のジョイスティックによってマウント及びモータギアのバックラッシュを調整するようになしたことを特徴とする天体望遠鏡の鏡筒制御機構。
【請求項7】 スティックを所定の方向に倒していくと、複数のインジケータが順に点灯し、最後に点灯するインジケータが点灯したときバックラッシュ補正量が最大となるように設定してなる請求項6記載の天体望遠鏡の鏡筒制御機構。
【請求項8】 一基のジョイスティックにより、直視、天頂プリズム併用、正立プリズム併用の夫々の場合に対応して観測対象を捉え易いように架台の回転方向を変え、また各種インジケータの明るさを調整し、更にマウント及びモータギアのバックラッシュを調整するようになしたことを特徴とする天体望遠鏡の鏡筒制御機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【登録番号】実用新案登録第3082608号(U3082608)
【登録日】平成13年9月26日(2001.9.26)
【発行日】平成13年12月21日(2001.12.21)
【考案の名称】天体望遠鏡の鏡筒制御機構
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願2001−4673(U2001−4673)
【出願日】平成13年6月12日(2001.6.12)
【出願人】(393027235)株式会社ビクセン (3)