説明

天体案内装置、天体案内方法及びプログラム

【課題】日時及び位置に応じた天体の案内を簡単にする。
【解決手段】天体案内装置は、日時情報及び位置情報を取得し(S1、S2)、当該情報が示す日時及び位置において視認され得る天体(又は天体群。以下同じ。)の候補を抽出する(S3)。天体案内装置は、抽出した候補を一覧表示し(S4)、使用者の選択に応じた天体を選択する(S5、S6)。その後、天体案内装置は、選択された天体を表す画像データを生成し、当該天体を案内する案内画像を表示する(S7、S8)。これにより、案内画像の表示を簡単に行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天体を案内する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
天体観測を支援するための技術には、例えば、特許文献1に記載されているように、現在日時や観測者の位置を示す情報を取得し、その日時にその位置において見える星座の画像を表示するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−162897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、夜空に実際に見え得る天体は、日時や位置を限定しても、非常に多い。これらの実際に見え得る天体をすべて表示させる場合には、観測者が見ようとしている天体の特定に困難を来したり、あるいは表示装置に相応のハードウェア資源を要したりする。
そこで、本発明は、日時及び位置に応じた天体の案内を簡単にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る天体案内装置は、日時を示す日時情報を取得する第1の取得手段と、位置を示す位置情報を取得する第2の取得手段と、前記第1の取得手段及び前記第2の取得手段により取得された前記日時情報及び前記位置情報に基づいて、当該情報が示す日時及び位置において視認され得る天体又は天体群の候補を抽出する抽出手段と、前記抽出手段により抽出された候補から少なくとも1の天体又は天体群を選択する選択手段と、前記選択手段により選択された天体又は天体群を案内する案内手段とを備える構成を有する。この構成によれば、案内手段による案内の対象である天体又は天体群を、抽出手段により抽出された候補の一部とすることが可能である。
【0006】
本発明に係る天体案内装置は、表示手段を備え、前記抽出手段が、前記天体又は天体群について設定された優先度に基づいて、抽出する前記候補の数又は順位を決定し、前記選択手段が、前記抽出手段により抽出された候補を前記決定された数又は順位に応じて前記表示手段に一覧表示させることにより、使用者による選択を促し、前記案内手段が、前記選択手段により選択された天体又は天体群を案内する案内画像を前記表示手段に表示させる構成を採用することができる。この構成によれば、選択手段により選択された天体又は天体群以外の天体又は天体群の画像をも表示させる場合に比べ、表示に係る処理を簡単にすることが可能である。
【0007】
本発明に係る天体案内装置は、天球上の天体の位置を3次元座標により記述した天球データを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された天球データを用いて、前記選択手段により選択された天体又は天体群の位置の座標を3次元座標から2次元座標に変換する座標変換手段と、前記座標変換手段により変換された2次元座標を用いて、前記案内画像を表す画像データを生成する生成手段とを備え、前記表示手段が、前記生成手段により生成された画像データが表す案内画像を表示する構成を採用することができる。この構成によれば、選択手段により選択された天体又は天体群以外の天体又は天体群の画像をも表示させる場合に比べ、座標変換手段による変換を少なくすることが可能である。
【0008】
本発明に係る天体案内方法は、日時を示す日時情報と位置を示す位置情報とを取得し、取得した前記日時情報及び前記位置情報に基づいて、当該情報が示す日時及び位置において視認され得る天体又は天体群の候補を抽出し、抽出した候補から少なくとも1の天体又は天体群を選択し、前記選択手段により選択された天体又は天体群を案内するものである。
【0009】
本発明に係るプログラムは、コンピュータに、日時を示す日時情報を取得するステップと、位置を示す位置情報を取得するステップと、取得された前記日時情報及び前記位置情報に基づいて、当該情報が示す日時及び位置において視認され得る天体又は天体群の候補を抽出するステップと、前記抽出された候補から少なくとも1の天体又は天体群を選択するステップと、前記選択された天体又は天体群を案内するためのデータを出力するステップとを実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、日時及び位置に応じた天体の案内を簡単にすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】天体案内装置の構成を示すブロック図
【図2】天球データを示す模式図
【図3】優先度テーブルを示す模式図
【図4】天体案内装置が実現する機能構成を示す機能ブロック図
【図5】天体案内装置が実行する案内処理を示すフローチャート
【図6】案内画像の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態]
図1は、本発明の一実施形態である天体案内装置の構成を示すブロック図である。同図に示す天体案内装置10は、天体又は天体群を視覚的に案内するものである。本実施形態の天体案内装置10は、屋外の天体観測での使用に適するように、持ち運び可能な構造を有する。本実施形態の天体案内装置10は、典型的には、携帯電話機(すなわち無線通信端末)である。
【0013】
ここにおいて、天体は、恒星、惑星、衛星、彗星などを含むが、これらの一部が本発明における案内の対象とされてもよい。また、天体群は、所定のまとまりを有する天体の組み合わせであり、星座、星群、星団、銀河などを含む。なお、以下においては、説明の便宜上、天体群のことを単に「天体」ともいう。
【0014】
天体案内装置10は、制御部110と、記憶部120と、受信部130と、操作部140と、表示部150とを備える。制御部110は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置やメモリを備え、プログラムを実行することによって天体案内装置10の各部の動作を制御する。記憶部120は、フラッシュメモリ等の記憶媒体を備え、制御部110が処理を実行するために必要なデータを記憶する。記憶部120が記憶するデータには、後述する天球データ及び優先度テーブルが含まれる。
【0015】
受信部130は、位置を示す位置情報を取得するための情報を受信し、制御部110に供給する。本実施形態の位置情報は、位置を緯度及び経度により示す情報である。本実施形態の受信部130は、いわゆるGPS(Global Positioning System)衛星からの電波を受信するものであってもよいし、天体案内装置10と通信する通信装置(移動体通信網の基地局、無線LANのアクセスポイントなど)から識別情報を受信するものであってもよい。また、受信部130は、位置情報そのものを外部から受信する構成であってもよい。
【0016】
操作部140は、ボタン等の操作子を備え、使用者の操作を受け付ける。操作部140は、受け付けた操作に応じた操作情報を制御部110に供給する。表示部150は、液晶表示素子や有機EL(Electro Luminescence)表示素子等による表示手段を備え、制御部110から供給される画像データに応じた画像を表示する。本実施形態において、表示部150の表示領域は、所定の画素数を有する長方形であるとする。なお、操作部140は、この表示部150に重ねて設けられたタッチスクリーン(タッチパネル)を含む態様とすることも可能である。
【0017】
天球データは、所定の日時及び観測位置を基準として、天体の位置を天球上の座標により記述したデータである。ここでいう天球は、所定の半径を有する仮想的な球面である。天球の半径は、表示部150の解像度(すなわち表示画素数)に基づいて決められ、以下においては「r」と表記される。また、天球データにおいて基準となる日時及び観測位置は、適当に定めてよいが、本実施形態においては、日時については秋分の日(太陽が秋分点を通過する日)の午前0時0分0秒、観測位置については北極点とする。
【0018】
天球データは、天体の位置を3次元座標により記述し、それぞれの天体を識別情報(番号など)により区別するデータである。本実施形態の天球データは、3次元の直交座標系により記述される。以下においては、天球データが表す座標をx(x軸方向の座標)、y(y軸方向の座標)及びz(z軸方向の座標)により表記する。天球データは、周知の星表に基づいて、あらかじめ用意される。ここでいう星表は、例えば、SAO星表(スミソニアン天体物理観測所星表)であるが、その他の星表を用いることを妨げない。
【0019】
図2は、本実施形態の天球データを示す模式図である。なお、nの値は、天球データに記述された天体又は天体群の総数である。同図において、A1、A2、…、Anは、天体又は天体群のそれぞれに割り当てられた識別情報を示す。また、Nnは、それぞれの天体又は天体群の名称であり、使用者が天体又は天体群を容易に認識できる一般的な名称(オリオン座)を示し、(xn,yn,zn)は、それぞれの天体の座標を示す。このように、本実施形態の天球データは、天体の名称とその座標を対応付けたデータである。
【0020】
なお、ここでいう名称は、同じ天体に対して複数割り当てられる場合がある。例えば、SAO星表における番号が「113271」であるオリオン座α星は、「ベテルギウス」であるとともに、星座としての名称は「オリオン座」であり、星群としての名称は「冬の大三角」である。また、名称は、それが星座や星群のものであれば、共通のものが複数の天体に割り当てられる。例えば、オリオン座α星とオリオン座β星(リゲル)は、星座としては、ともに「オリオン座」である。
【0021】
優先度テーブルは、天球データに記述された天体について設定された優先度を記述したデータである。本実施形態において、優先度は、天体の見かけ上の明るさ(天体群にあっては、各天体の明るさの平均値又は最大値)や知名度に基づいて設定されている。例えば、本実施形態の優先度は、明るい(等級が小さい)天体や、有名な天体ほど高くなるように、あらかじめ設定されている。
【0022】
図3は、本実施形態の優先度テーブルを示す模式図である。同図において、A1、A2、…、Anは、天体のそれぞれに割り当てられた識別情報を示す。また、Pn1は、天体の明るさに基づいて設定された第1の優先度を示し、Pn2は、天体の知名度に基づいて設定された第2の優先度を示す。優先度は、上述したn以下の適当な数(例えば、5段階程度)で区切られた値であり、ここでは小さい値ほど優先度が高いものとする。
【0023】
図4は、本実施形態において制御部110が実現する機能構成を示す機能ブロック図である。制御部110は、プログラムを実行することにより、同図に示す日時情報取得部211、位置情報取得部212、天球データ取得部213、抽出部221、対象決定部222、候補出力部223、選択情報取得部231、選択部232、座標変換部241、案内画像生成部242及び画像出力部243に相当する機能を実現する。
【0024】
日時情報取得部211、位置情報取得部212及び天球データ取得部213は、情報を取得する手段として機能する。日時情報取得部211は、いわゆる時計の機能を有し、日時を示す日時情報を取得する。位置情報取得部212は、受信部130により受信された情報に基づき、位置情報を取得する。天球データ取得部213は、記憶部120に記憶された天球データを取得する。天球データ取得部213は、あらかじめ天球データの全体を取得し、メモリに記憶させてもよいし、抽出部221や座標変換部241が実行する処理に応じて、天球データのうちの必要な部分を取得するようにしてもよい。
【0025】
抽出部221、対象決定部222及び候補出力部223は、使用者に案内する天体又は天体群の候補を抽出する手段として機能する。抽出部221は、日時情報取得部211により取得された日時情報と位置情報取得部212により取得された位置情報とに基づいて、天球データ取得部213により取得された天球データに記述された天体又は天体群から、日時情報及び位置情報が示す日時(以下、「観測時」という。)及び位置(以下、「観測位置」という。)において使用者に視認され得る天体又は天体群の候補を抽出する。ここにおいて、「視認され得る天体又は天体群」とは、上述した観測時及び観測位置において使用者が観測する場合に、天球のうちの天頂側の半分の球面に位置する天体又は天体群をいうものである。すなわち、「視認され得る天体又は天体群」は、天球データに記述された天体又は天体群のうち、観測時及び観測位置において地平線の下に隠れて見えなくなる天体又は天体群を除いたものである。なお、ここにおいて候補となる天体又は天体群は、使用者により実際に視認されるとは限らない。なぜならば、天体の見え方は、空の明るさ、天候、使用者の視力などに依存するからである。
【0026】
抽出部221は、天球上の天の北極と天の南極とを結ぶ直線を軸とし、天球データが示す座標をこの軸に対して回転させることにより日時の調整と時差の調整とを行い、さらに、この軸の傾きを変えることによって緯度の調整を行う。具体的には、抽出部221は、基準の日時(本実施形態では、秋分の日の午前0時)と日時情報が示す日時との差を求め、この差に相当する回転(1時間当たり15°)を行うことで日時を調整し、さらに、位置情報が示す経度に基づいて標準時との時差を求め、この時差に相当する回転を行うことで時差を調整する。また、抽出部221は、基準の位置(本実施形態では、北極点、すなわち北緯90°)と位置情報が示す緯度との角度差を求め、この角度差に相当する分だけ軸の傾きを変化させることで緯度を調整する。これらの調整を行うことにより、観測時及び観測位置において視認され得る天体又は天体群を特定することが可能である。
【0027】
対象決定部222は、抽出部221により抽出された候補である天体又は天体群について、使用者への報知の対象とするものを決定する。対象決定部222は、抽出部221により抽出された候補である天体又は天体群のそれぞれについて、記憶部120に記憶された優先度テーブルを取得し、その第1の優先度と第2の優先度とを用いてそれぞれの候補に順位付けを行う。対象決定部222は、このようにして順位付けされた候補のうち、上位から順に数えて所定数の候補を報知対象に決定する。なお、対象決定部222による順位付けにおいては、第1の優先度と第2の優先度を平均し、その平均値が小さい候補ほど上位になるようにしてもよいし、第1の優先度と第2の優先度のいずれかに重み付けを行ってもよい。候補出力部223は、このようにして報知対象とされた候補の天体又は天体群を使用者に報知するために、当該天体又は天体群の名称を出力する。
【0028】
選択情報取得部231及び選択部232は、上述した報知対象である案内の候補から、実際に案内を行う天体又は天体群を選択する手段として機能する。本実施形態における選択は、使用者の操作に基づいて行われる。選択情報取得部231は、操作情報のうちの天体又は天体群の選択に係るもの(以下、「選択情報」という。)を取得する。選択部232は、選択情報取得部231により取得された選択情報に応じて、抽出部221により抽出された天体又は天体群から使用者の選択に係る天体又は天体群を選択する。
【0029】
座標変換部241、案内画像生成部242及び画像出力部243は、使用者に天体又は天体群を案内するための情報を出力する手段として機能する。座標変換部241は、選択部232により選択された天体又は天体群の座標を、天球データに記述されている3次元座標から表示部150での表示に適した2次元座標に変換する。案内画像生成部242は、座標変換部241により変換された座標を用いて、選択部232により選択された天体又は天体群を案内するための画像(以下、「案内画像」という。)を表す画像データを生成する。なお、案内画像には、星座等の天体群が含まれる場合には、天体の位置を示す点状の画像に加え、天体と天体とを結ぶ線状の画像が含まれてもよい。このようにすれば、いずれの天体の組み合わせが天体群を構成しているのかを使用者により容易に理解せしめることが可能となる。画像出力部243は、案内画像生成部242により生成された画像データを出力する。
【0030】
座標変換部241による変換は、天球上(すなわち球面上)の座標を表示部150の表示領域で定義される平面の座標に変換するものである。この変換において、座標変換部241は、投影面の原点の座標を(x0,y0,z0)とし、表示させる天体の座標を(x,y,z)とした場合における極座標(r,θ,φ)の値を、以下の(1)式及び(2)式より求める。なお、rの値は、上述したとおり、あらかじめ定められている。
【数1】

【数2】

【0031】
このとき、表示部150の表示領域(長方形)の左上の頂点を原点とし、右方向及び下方向に増加する直交座標系を定義すると、その座標(X,Y)は、以下の(3)式及び(4)式より求められる。よって、座標変換部241は、表示部150の表示領域の画素数に応じた値を乗じ、このときの原点が表示領域の中央になるようなオフセット量を加算することにより、以下の(5)式及び(6)式により、表示させる天体の座標を求める。なお、ここにおいて、Pxは表示領域のX方向の画素数であり、Pyは表示領域のY方向の画素数である。また、Cは、表示倍率に応じて定まる係数である。係数Cは、その値が大きいほど表示倍率が大きくなる係数であり、これがPx及びPy以下であると、上述した候補の全部が表示部150に表示されるようになる。
【数3】

【数4】

【数5】

【数6】

【0032】
本実施形態の天体案内装置10の構成は、以上のとおりである。使用者は、天体観測を行うとき、この天体案内装置10を持ちながら屋外の適当な位置に移動し、案内を開始するための所定の操作を行う。天体案内装置10は、かかる操作に応じて、以下の処理(以下、「案内処理」という。)を実行し、使用者の選択に従って天体を案内する。
【0033】
図5は、天体案内装置10の制御部110が実行する案内処理を示すフローチャートである。同図に示すように、制御部110は、所定の操作を受け付けると、日時情報を取得し(ステップS1)、位置情報を取得する(ステップS2)。制御部110は、日時情報及び位置情報を取得すると、記憶部120に記憶された天球データを用いて、この観測時及び観測位置において視認され得る天体又は天体群の候補を抽出し(ステップS3)、その所定数の名称を順位付けされた順位に従って一覧表示させ、使用者による選択を促す(ステップS4)。つまり、ステップS4においては、天体又は天体群そのものの画像が表示されるのではなく、その名称が表示される。これらの候補の名称は、使用者が操作により選択できるようになっている。なお、使用者による操作は、候補を1つだけ選択するものであってもよいし、複数選択するものであってもよい。
【0034】
続いて、制御部110は、使用者による選択操作を示す操作情報、すなわち選択情報が取得されたか否かを判断する(ステップS5)。制御部110は、選択情報が取得されるまで、処理を進めずに待機する。制御部110は、選択情報が取得されると、選択情報が表す天体又は天体群を選択し(ステップS6)、選択された天体又は天体群を案内するための画像データを生成し(ステップS7)、表示部150に案内画像を表示させる(ステップS8)。
【0035】
図6は、本実施形態の案内画像の一例を示す図である。本実施形態の案内画像は、天体又は天体群の画像を含み、さらに、その天体又は天体群の名称と説明とを含む。本実施形態において、天体群の画像は、その観測時及び観測位置を反映した態様で表示される。すなわち、天体群の画像は、観測時又は観測位置が変化すれば、その傾きなども変化する。このようにすれば、使用者がその天体群をより容易に見つけることが可能である。また、天体又は天体群の説明は、その観測時及び観測位置において見える位置や方向を教示するものであると好ましいが、天体又は天体群の等級や関連する神話などを教示するものであってもよい。
なお、案内画像は、この例に限らず、例えば、天体又は天体群の画像のみであってもよいし、天体又は天体群の見える位置や方向を教示する説明のみであってもよい。天体又は天体群の画像を表示しない場合にあっては、上述した座標変換が不要である。
【0036】
以上のとおり、本実施形態の天体案内装置10によれば、使用者により指定された日時及び位置の条件を満たす天体又は天体群が候補として抽出されて一覧表示される。よって、一覧表示される候補には、使用者に視認され得ない天体又は天体群が含まれない。また、本実施形態の天体案内装置10によれば、天体又は天体群の画像を表示する前に候補の名称を一覧表示し、使用者に選択された天体又は天体群について案内表示(天体又は天体群の画像の表示、名称や説明の表示など)を行うことが可能である。このようにすることで、使用者に視認され得る天体又は天体群をすべて表示する場合など、使用者に選択されない天体又は天体群について案内表示を行う場合に比べ、使用者が実際に見ようとしている天体又は天体群をより容易に特定したり、必要な処理を少なくすることが可能となる。例えば、本実施形態においては、天球データに記述された3次元座標を2次元座標に変換する処理を少なくすることが可能である。
【0037】
[変形例]
本発明は、上述した実施形態と異なる態様での実施が可能である。本発明は、例えば、以下の態様での実施が可能である。なお、本発明は、以下の変形例を組み合わせて適用したものであってもよい。
【0038】
(変形例1)
本発明の日時情報及び位置情報は、実際の観測時又は観測位置と異なる日時又は位置を示すものであってもよい。本発明は、例えば、過去又は未来の天体の位置や、使用者が訪れたい場所(外国など)の天体の位置を知るために用いられてもよい。かかる場合においては、使用者は、ボタン等の操作子を用いて日時情報及び位置情報を入力すればよい。
また、本発明に係る天体案内装置は、実際の観測時又は観測位置と異なる日時又は位置における天体の位置を案内する場合であれば、持ち運び可能な構成である必要はなく、例えば、いわゆるデスクトップ型のパーソナルコンピュータなどであってもよい。
【0039】
(変形例2)
本発明の優先度は、上述した実施形態の例に限らず、例えば、観測時及び観測位置における天球上の位置(天頂に近いか、あるいは地平線に近いか、など)に基づいて設定されてもよい。また、本発明に係る天体案内装置が複数あり、サーバ装置などによって各使用者の選択結果を集計可能な場合であれば、この選択結果に基づいて優先度が設定されてもよい。この場合、より多くの使用者に選択された天体又は天体群の優先度が、他の天体又は天体群の優先度よりも高くなる。同様に、例えば、星座等を検索するためのサーチエンジンが外部に設けられている場合には、そのサーチエンジンにおける検索結果に基づいて優先度が設定されてもよい。
【0040】
なお、優先度は、上述した実施形態のように複数用いずに、いずれか1種類のみが用いられるようにしてもよい。また、優先度は、複数用いる場合にあっては、その重み付けを位置や外部データに応じて異ならせてもよい。これは、例えば、観測位置が都市部(比較的明るい場所)である場合には、地方部(比較的暗い場所)に比べ、知名度に関する優先度よりも天体の明るさに関する優先度を重視する重み付けを行う、といった具合である。このようにすれば、天体の視認を妨げる光が多く存在する都市部においては視認されにくい天体の優先度が相対的に下がるようにすることができる。
なお、ここでいう外部データは、上述した都市部又は地方部を識別するためのデータや、観測位置における天候を示すデータなどである。また、本発明に係る天体案内装置に明るさを感知するセンサを設け、このセンサが感知した明るさを示すデータを外部データとして用いてもよい。
【0041】
(変形例3)
本発明において、報知対象とする候補の数は、一定でなくてもよい。例えば、上述した観測位置の天候や明るさなどの外部データに基づいて、天体の視認が難しい場合にあっては、天体の視認が容易な場合よりも候補の数を少なくしてもよい。
【0042】
(変形例4)
本発明における案内は、視覚によらない態様を含む。本発明における案内には、音声による案内が含まれる。例えば、本発明における案内は、図6の案内画像の表示に代えて、又は当該表示と同時に、「南東の空にオリオン座が見えます」という音声を発するものであってもよい。なお、本発明における案内は、音声を用い、画像を用いない場合にあっては、上述した座標変換が不要である。
【0043】
(変形例5)
本発明において、候補の報知と、使用者による候補の選択とは、天体又は天体群そのものではなく、「東の空」や「南の空」といった具合に、空全体のうちの所定の領域を報知ないし選択する態様であってもよい。このような場合であっても、空全体の画像を表示する場合などに比べ、表示に係る処理を簡単にする効果を奏することができる。
【0044】
また、候補の選択には、使用者の操作によらずに、天体案内装置が適当に選択する態様を含む。例えば、本発明に係る天体案内装置は、順位付けによって最上位となった天体又は天体群を、その観測時及び観測位置における「お勧め」の天体として使用者に報知したり、あるいは、かかる天体の画像を待ち受け画像やスクリーンセーバーのように表示したりすることも可能である。
【0045】
(変形例6)
本発明は、携帯電話機等のコンピュータに上述した案内処理を実現させるためのプログラムとしても特定され得る。かかるプログラムは、光ディスクやフラッシュメモリ等の記録媒体に記録された形態や、インターネット等のネットワークを介してコンピュータにダウンロードされる形態での提供も可能である。
また、本発明に係る天体案内装置は、当該装置自体に表示手段を備えず、プロジェクタ等の外部の表示手段に画像データを供給する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0046】
10…天体案内装置、110…制御部、120…記憶部、130…受信部、140…操作部、150…表示部、211…日時情報取得部、212…位置情報取得部、213…天球データ取得部、221…抽出部、222…対象決定部、223…候補出力部、231…選択情報取得部、232…選択部、241…座標変換部、242…案内画像生成部、243…画像出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
日時を示す日時情報を取得する第1の取得手段と、
位置を示す位置情報を取得する第2の取得手段と、
前記第1の取得手段及び前記第2の取得手段により取得された前記日時情報及び前記位置情報に基づいて、当該情報が示す日時及び位置において視認され得る天体又は天体群の候補を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された候補から少なくとも1の天体又は天体群を選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された天体又は天体群を案内する案内手段と
を備えることを特徴とする天体案内装置。
【請求項2】
表示手段を備え、
前記抽出手段が、
前記天体又は天体群について設定された優先度に基づいて、抽出する前記候補の数又は順位を決定し、
前記選択手段が、
前記抽出手段により抽出された候補を前記決定された数又は順位に応じて前記表示手段に一覧表示させることにより、使用者による選択を促し、
前記案内手段が、
前記選択手段により選択された天体又は天体群を案内する案内画像を前記表示手段に表示させる
ことを特徴とする請求項1に記載の天体案内装置。
【請求項3】
天球上の天体の位置を3次元座標により記述した天球データを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された天球データを用いて、前記選択手段により選択された天体又は天体群の位置の座標を3次元座標から2次元座標に変換する座標変換手段と、
前記座標変換手段により変換された2次元座標を用いて、前記案内画像を表す画像データを生成する生成手段とを備え、
前記表示手段が、前記生成手段により生成された画像データが表す案内画像を表示する
ことを特徴とする請求項2に記載の天体案内装置。
【請求項4】
日時を示す日時情報と位置を示す位置情報とを取得し、
取得した前記日時情報及び前記位置情報に基づいて、当該情報が示す日時及び位置において視認され得る天体又は天体群の候補を抽出し、
抽出した候補から少なくとも1の天体又は天体群を選択し、
前記選択手段により選択された天体又は天体群を案内する
ことを特徴とする天体案内方法。
【請求項5】
コンピュータに、
日時を示す日時情報を取得するステップと、
位置を示す位置情報を取得するステップと、
取得された前記日時情報及び前記位置情報に基づいて、当該情報が示す日時及び位置において視認され得る天体又は天体群の候補を抽出するステップと、
前記抽出された候補から少なくとも1の天体又は天体群を選択するステップと、
前記選択された天体又は天体群を案内するためのデータを出力するステップと
を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−266817(P2010−266817A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120073(P2009−120073)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【出願人】(500438172)テックファーム株式会社 (14)
【Fターム(参考)】