説明

天板ユニットおよび机

【課題】 天板を変位させる際の前方への突出量を小さくすることができる天板ユニットおよび当該天板ユニットを備える机を提供する。
【解決手段】 天板保持部15は、上側天板11に固定される第1リンクベース21およびスライドレール23と、下側天板13に固定される第2リンクベース25と、ロッドリンク27と、スライドリンク29と、を備える。第1リンクベース21には第1軸部材31が取り付けられている。第2リンクベース25は、第2軸部材41および第3軸部材43が取り付けられている。ロッドリンク27は、その一端が第1軸部材31に対して回動可能に連結されており、他端が第2軸部材41に対して回動可能に連結されている。スライドリンク29は、第3軸部材43を中心として回動可能となるように第2リンクベース25に連結され、スライドレール23と摺動可能に係合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天板が基部の上方で略水平となる使用位置と、基部の水平方向の一方側において傾斜した状態となる開放位置と、の間で変位可能に支持する天板ユニット、および当該天板ユニットを備える机に関する。
【背景技術】
【0002】
小型コンピュータの普及に伴い、学校でもこれを使用した講義が採り入れられ、ノート
パソコンなど小型コンピュータを常設した机が使用されている。ここで、小型コンピュータを使用しないときには通常の机として使用できるように、机上の小型コンピュータを覆う可動型の天板を設け、小型コンピュータを使用する講義のときは、天板を上方へ跳ね上げて開放する机が使用されている。
【0003】
上述した机は、開放した天板が上方の高い位置にあると、受講者の前方の視界が遮られ、講師とのコミュニケーションが阻害されてしまう。そこで、天板の開放時は天板を机の前面に垂直に収納するように構成した机が提案されている(特許文献1参照)。この机は、天板(蓋16)を上方へ跳ね上げた後、机の前方に配置された蓋収容部17に天板を収容することで、跳ね上げた天板が視界を遮ることが無くなる。
【0004】
しかしながら、特許文献1の机は天板を落としこむように収容するものであるため、落下時に速度を減衰させるための機構や、がたつきを防止するための機構を必要とするため、構造が複雑で製造コストが増大するとともに、天板の開閉も従前のものに比べ扱いづらく、頻繁に開閉を行うような場面には不向きであった。
【0005】
そこで、従来、上側に位置する動作可能な天板(可動天板)を開放したとき、机の前面において、垂直かつ天板の幅寸法の半分程度が下側の天板(固定天板)の高さより下方に位置するように、固定天板上の前部左右に設けた支持ブロックに可動天板をそれぞれ2本のリンクで4点リンクにして連結したことを特徴とする教室用机が提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
上述した特許文献2の机は、構造が簡素であり、また、特許文献1の机と比較すると開閉操作を容易に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2655027号公報
【特許文献2】特許第3713502号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献2の机は、可動天板が略水平となる位置から開放位置に移動させる過程にて一度可動天板が前方に突出し、その後、略鉛直となって固定天板の前方に収まる。よって、机の前方にその可動天板が突出するための空間を確保する必要がある。その結果、その空間には椅子などを配置することができず、前後方向の机の配置間隔が広くなってしまったり、着座のための空間が狭くなってしまったりするという問題があった。
【0009】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、天板を変位させる際の前方への突出量を小さくすることができる天板ユニットおよび当該天板ユニットを備える机を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した問題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、天板を備え、当該天板を、基部の上方で略水平となる使用位置と、前記基部の水平方向の一方側において傾斜した状態となる開放位置と、との間で変位可能に支持する天板ユニットであって、前記天板に設けられる天板回転軸と、前記使用位置のときに前記天板回転軸よりも前記一方側となる位置において前記基部に設けられる基部回転軸と、前記天板回転軸および前記基部回転軸それぞれに対して回動可能に連結するロッドと、からなるリンク機構と、前記天板において前記天板回転軸よりも前記一方側にて前記天板を摺動可能に支持する摺動機構と、を備えることを特徴とする。
【0011】
なお、天板を摺動可能に支持する、とは、天板の上述した変位に伴って、天板における摺動機構に荷重を掛ける位置が移動するように、天板を支持することである。
また、開放位置における天板の傾斜とは、水平方向に対して角度を有することである。
【0012】
また、天板回転軸とはロッドの回転の中心となる軸である。基部回転軸も同様にロッドの回転の中心となる軸である。具体的な構成としては、例えばロッドを支持する軸状の部材が天板や基部に対して固定または回転可能に連結される構成が考えられる。
【0013】
このように構成された天板ユニットでは、使用位置から開放位置に天板を変位させると、天板回転軸が一方側かつ基部回転軸の上方に移動する。その状態において、摺動機構が天板と接触する接触領域は、天板回転軸の位置に比べて下方に位置するため、天板は天板回転軸と接触領域とを結ぶ直線に沿うように傾斜した状態となる(即ち天板の他方側が一方側より上になるように傾斜する。なお、ここでいう傾斜とは、略鉛直の状態を含む。)。また、このとき天板における一方側は一部が上記接触領域よりも下に位置することとなる。
【0014】
そして、上記構成の天板ユニットでは、天板が使用位置と開放位置との間で移動する過程において、天板が一方側に突出する突出量を小さくすることができる。
また、本発明の天板ユニットでは、天板を変位させるときに天板を支持するリンク機構におけるロッドや各回転軸のこじれ(もつれ)が生じにくいため、スムーズな変位を実現できる。従来の4点リンクで天板を支持する構成では、4点のリンクがいずれもバランスよく回転しないとリンクアームや回転軸がこじれて(もつれて)引っ掛かり、スムーズに変位できなくなってしまう。
【0015】
従来の4点リンクによる天板ユニットの一例を図13に示す。図13の例では、上側の天板121が4つのリンクアーム125,127,129,131によって下側の天板123と重なるように支持される。リンクアームを固定する部材は図示を省略する。天板121は天板121aの位置に変位可能である。
【0016】
この従来の天板ユニットにおいて、使用者が天板121を変位させるために天板121の左端のみを持ち上げると(図中矢印A方向に荷重を加えると)、天板121の左端が相対的に上になり(矢印B,C方向に移動)、右端が下となる(矢印D,Eの方向に移動)ように天板121が傾いた状態となる。このように天板121が傾いた状態で変位させると、右端に回転時の荷重が強く掛かったり、天板121の傾きに伴って一部のリンクアームが傾斜してずれたりすることによって、リンクアームや回転軸がこじれやすくなる。このことは、天板121の右端を持ち上げた場合も同様に発生する。よって、天板121の変位操作は、傾きが生じないように左右の中央を持ち上げて行うことが好ましかった。
【0017】
一方、本発明では1点がリンクではなく摺動機構が摺動する構成であるため、こじれる前に摺動機構が摺動しロッドのズレを吸収することとなり、4点リンクの構成と比較してこじれが生じにくい。よって、例えば天板の左右いずれか一端を持ち上げて、天板が少々傾こうとする状態であっても、スムーズに天板の変位を実現できる。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の天板ユニットにおいて、前記摺動機構が、前記天板において、長手方向が摺動方向となるように設けられる長尺部材と、前記基部に設けられ、前記長尺部材と前記長手方向にのみ摺動可能に係合し、前記摺動に応じて前記基部に対する角度が変化する係合部材と、を備えることを特徴とする。
【0019】
このように構成された天板ユニットでは、天板の一方側が摺動機構と連結することとなるため、天板の一方側が摺動機構から離れてしまうことを防止できる。よって、天板が変位するときの天板の位置が安定するため、変位時に天板が揺動することが抑制でき、容易かつ安全に変位を実現することができる。
【0020】
また、摺動機構によって天板の移動方向を案内できるため、こじれの発生をさらに低減できる。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の天板ユニットにおいて、前記摺動機構が、前記天板に設けられ、摺動方向に沿って延びる凹部または凸部を有するガイド部と、前記基部に設けられ、前記凹部または凸部と接触可能に形成される接触部と、を備えており、前記ガイド部は、前記接触部と係合した状態において、前記摺動方向への摺動が案内され、前記摺動方向と交差する方向の摺動が抑制されることを特徴とする。
【0021】
このように構成された天板ユニットでは、接触部とガイド部とが接触した状態において、接触部とガイド部との摺動方向が案内され、摺動方向と交差する方向に摺動しにくくなる。その結果、天板を変位させたときに天板の位置が案内されることとなり、天板がずれてこじれてしまうことを抑制できる。
【0022】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の天板ユニットにおいて、前記摺動機構が前記基部に設けられるローラーを備えており、前記ローラーの円周面が前記天板と接触することで摺動することを特徴とする。
【0023】
このように構成された天板ユニットでは、ローラーによって摩擦を小さくした状態で天板の摺動を行うことができるため、スムーズに天板の変位を実現できる。
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の天板ユニットにおいて、前記リンク機構が前記天板回転軸の軸線方向に並べて複数設けられていることを特徴とする。
【0024】
また請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の天板ユニットにおいて、前記摺動機構が前記天板回転軸の軸線方向に並べて複数設けられていることを特徴とする。
【0025】
請求項5および請求項6のように構成された天板ユニットでは、複数のリンク機構または複数の摺動機構により天板を安定して支持することができる。
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の天板ユニットにおいて、前記天板が前記開放位置にあるとき、前記天板の少なくとも一部が前記基部よりも下方に位置することを特徴とする。
【0026】
このように構成された天板ユニットでは、天板が開放位置にあるときに基部の下方に天板が収まり、全体を小さくまとめることができる。これにより、開放状態において天板が基部より上方にあることによる制限(例えば、天板によって視界が遮られること)を低減することができる。
【0027】
請求項8に記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の天板ユニットを備える机である。
このように構成された机では、天板ユニットによって、天板を使用位置と開放位置との間で変位させることができるとともに、さらに天板が使用位置と開放位置との間で移動する過程において、天板が一方側に突出する突出量を小さくすることができる。
【0028】
そのため、天板が移動するために必要な基部の一方側の空間を小さくすることができる結果、講義室のように複数の机を密集して並べて用いる場合においては、その天板ユニットを備える机の配置間隔を小さくすることや、着座のための空間を広くとることが可能になる。
【0029】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の机において、前記使用位置にある前記天板の下側に第2天板を備えることを特徴とする。
このように構成された机では、天板を使用位置とすることで天板を使用でき、天板を開放位置とすることで第2天板を使用することができる。よって、例えば第2天板にはノートパソコンなどの小型コンピュータを設置しておくことで、小型コンピュータを使用しない場合には天板を使用位置とすることで小型コンピュータが邪魔にならずに机上で作業を行うことができ、天板を開放位置に移動するだけですぐに小型コンピュータを使用した作業を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施例の机を示す平面図(A)および正面図(B)
【図2】本実施例の机を示す側面図
【図3】天板保持部周辺の拡大図であって、側面図(A)、正面図(B)、背面図(C)、平面図(D)
【図4】天板保持部周辺の拡大図であって、側面図(A)、正面図(B)、背面図(C)
【図5】リンクベース周辺の断面図
【図6】スライドリンク周辺の断面図(A),(B)
【図7】本実施例の上側天板の変位の軌跡を示す側面図(A)および従来の机における上側天板の変位の軌跡を示す側面図(B)
【図8】天板保持部の変形例を示す側面図(A),背面図(B),平面図(C)
【図9】天板保持部の変形例を示す側面図(A),背面図(B),平面図(C)
【図10】天板保持部の変形例を示す側面図(A),背面図(B),平面図(C)
【図11】天板保持部の変形例を示す側面図(A),(B)
【図12】天板保持部の変形例を示す断面図(A),(B),(C)
【図13】従来の天板ユニットにおけるこじれの発生を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示にすぎず、本発明が、下記の事例以外にも様々な形態で実施できるのはもちろんである。
[実施例]
(1)机の全体構成
本実施例の机1を図1(A),(B)に示す。図1(A)は平面図であり、図1(B)は正面図である。また、机1の側面図を図2に示す。
【0032】
机1は、会議室や講義室などの多人数が密集して着席する場面で用いられる机であって、上側天板11と下側天板13とを備えている二重天板式の机である。図1(A),(B)において、左側が通常使用時、右側がパソコン使用時である。
【0033】
上側天板11は使用者ごとに個別に設けられて、通常使用時とパソコン使用時で位置が変位する。下側天板13は3人が共通して使用できるように椅子3の並ぶ方向(左右方向)に長く形成されていて、主たる面が水平に配置され、変位不能に構成されている。なお、上側天板11が本発明における天板に相当し、下側天板13が本発明における第2天板および基部に相当する。
【0034】
通常使用時には、上側天板11が下側天板13の上方で略水平となっており、使用者は上側天板11を一般的な机の天板のように使用することができる。パソコン使用時には、上側天板11は前方(本発明における一方側)に移動しながら傾斜して主たる面が略鉛直となり、また一部が下側天板13よりも下方に移動する。その結果、使用者はパソコン5を使用できるようになるとともに、前方を広く視認できるようになる。このような上側天板11の動作は、上側天板11の左右両端付近に配置される天板保持部15によって実現される。天板保持部15の詳細は後述する。
【0035】
上側天板11の後方には、通常使用時において下側天板13と接触し、上側天板11の高さを水平に保つとともに上側天板11を安定させるストッパ17が設けられている。
なお、以下の説明において、上側天板11における前後方向とは、通常使用時において前後方向となる方向を指すものとする。前後左右の方向は、使用者が椅子3に着座したときの方向を規準としている。
【0036】
なお、上記通常使用時の上側天板11の位置が本発明における使用位置に相当し、パソコン使用時の位置が開放位置に相当する。
(2)天板保持部の構成
机1における天板保持部15周辺の拡大図を図3(A)〜(D)および図4(A)〜(C)に示す。図3(A)〜(D)はパソコン使用時の状態であり、(A)が側面図、(B)が正面図、(C)が背面図、(D)が平面図である。図4(A)〜(C)は通常使用時の状態であり、(A)が側面図、(B)が正面図、(C)が背面図である。
【0037】
天板保持部15は、上側天板11に固定される第1リンクベース21およびスライドレール23と、下側天板13に固定される第2リンクベース25と、第1リンクベース21と第2リンクベース25とを連結するロッドリンク27と、スライドレール23と第2リンクベース25とを連結するスライドリンク29と、を備える。
【0038】
第1リンクベース21には第1軸部材31が取り付けられている。また、第2リンクベース25は、第2軸部材41および第3軸部材43が取り付けられている。これら第1軸部材31、第2軸部材41および第3軸部材43は、その軸方向が左右方向となるように取り付けられている。なお、第1軸部材31が本発明における天板回転軸を構成するものであり、第2軸部材41が本発明における基部回転軸を構成するものである。
【0039】
図4(A)に示す通常使用時においては、前方から順に第3軸部材43、第2軸部材41、第1軸部材31の順となるように配置される。なお、第3軸部材43は下側天板13の前方端部近傍に配置される。
【0040】
ロッドリンク27は、その一端が第1軸部材31に対して回動可能に連結されており、他端が第2軸部材41に対して回動可能に連結されている。
図3(C)におけるA−A断面図を図5に示す。
【0041】
スライドレール23は、断面略C字型を有する長尺部材であって、その開口とは反対側が上側天板11に固定される。また、このスライドレール23は、その長手方向が上側天板11の前後方向と一致するように配置される。
【0042】
第1軸部材31は、両端に雌ネジ33aが形成された円筒形状の主部33に対して、両端からネジ35を締められることで第1リンクベース21に固定される。ロッドリンク27は、その一端に形成された貫通穴を第1軸部材31が通過するように取り付けられている。
【0043】
また、第1軸部材31の周囲を囲うようにサポートバネ37(コイルバネ)が配置されており、天板を通常使用時に変位させるときの緩衝を行うとともに、通常使用時の位置から天板を持ち上げる動作を補助する。なお、同様のバネは第1軸部材31以外の回転軸において設けられていてもよい。
【0044】
なお、第1リンクベース21はスライドレール23上に配置されるが、ネジによって上側天板11に固定されているため、スライドレール23上を移動することはない。
第2軸部材41は、第2リンクベース25の左右両側から挿入されるピン形状の部材である。ロッドリンク27は、その他端に形成された貫通穴を第2軸部材41が通過するように取り付けられている。
【0045】
図4(A)におけるB−B断面図を図6(A)に示す。またC−C断面を図6(B)に示す。
第3軸部材43は棒状の部材である。スライドリンク29は、スライドリンク29に形成された貫通穴にこの第3軸部材43を通過させることで、第3軸部材43を中心として回動可能となるように第2リンクベース25に連結される。また、スライドリンク29はスライドレール23と摺動可能に係合している。このスライドリンク29は、上側天板11(スライドレール23)に対して常に同じ向きとなるように、上側天板11の変位に応じて回動して下側天板13に対する角度が変化する。
【0046】
スライドリンク29はボルト51によって第3軸部材43に固定されている。第3軸部材43にはダンパー53が取り付けられているため、スライドリンク29が急激に回動することが防止される。なお、ダンパー53は第3軸部材43以外の回転軸に設けられていてもよい。
【0047】
またスライドリンク29には、スライドレール23と係合する断面略T字型のスライド樹脂55が形成されている。図6(A),(B)のようにスライドレール23にスライド樹脂55が係合した状態ではスライド樹脂55はスライドレール23の長手方向にのみ摺動可能となる。
【0048】
なお、第1リンクベース21、第2リンクベース25、ロッドリンク27が本発明におけるリンク機構を構成している。また、スライドレール23、スライドリンク29、第2リンクベース25が本発明における摺動機構を構成しており、上側天板11を摺動可能に支持している。
(3)本実施例の上側天板の動作と従来品との比較
図7(A)に、本実施例の天板保持部15を用いた上側天板11の変位の軌跡を示す。また、図7(B)に従来の4点リンク機構を用いた場合の軌跡を示す。
【0049】
従来の図7(B)の机は、上側天板11に設けられた回転軸61a,61bと、下側天板13に設けられた回転軸61c,61dとをリンク部材63、65で連結してリンク機構を構成している。
【0050】
またこの図7(B)の机は、通常使用時とパソコン使用時において、上側天板11の位置が図7(A)の場合と等しくなるように各回転軸の位置やリンク部材の長さが設定されている。即ち、上側天板11の大きさ、下側天板13の表面を基準としたときのパソコン使用時における上側天板11後方端までの高さ(H1およびH3)、通常使用時における上側天板11の上面までの高さ(H2およびH4)、リンク部材63とロッドリンク27の位置および長さが等しい。
【0051】
しかしながら、本実施例において、通常使用時における上側天板11の後端から、上側天板11が変位する際に上側天板11の前端が通過する軌跡の前端までの距離D1は、従来の4点リンク機構における距離D2と比較して、D3分小さくなる。
【0052】
前方への突出量が小さくなる理由を説明する。突出量は、上側天板11の変位時の傾きによって変化する。突出量が最大のとき、水平方向を基準とした傾きが小さければ突出量が大きくなり、水平方向を基準とした傾きが大きければ突出量が小さくなる。
【0053】
図7(B)において、突出量最大のときの上側天板11の傾きは、回転軸61a´と61b´とを結ぶ角度によって定まる。61b´は、半径r(リンク部材65の長さ)によって定まる円弧上の点である。即ち、最大突出量は半径rによって左右される。半径rを小さくすれば傾きが大きくなる(突出量が小さくなる)が、パソコン使用時における上側天板11の下方への移動量が低下し、H3が大きくなってしまう。
【0054】
一方、図7(A)では、上側天板11はスライドリンク29を介して摺動するように連結しているため、第3軸部材43を前方に寄せることで、H1を変化させることなく半径rに相当する距離を小さくすることができる。よって、最大突出量のときの天板の傾きを大きくし、最大突出量を小さくすることができる。図7(A),(B)においては、本実施例に相当する場合が58°、従来の4点リンクが53°となった。
【0055】
このように前方への突出量が小さくなることで、上側天板11を変位させるために前方に必要なスペースを小さくすることができる。
(4)発明の効果
本実施例の机1では、上側天板11の位置を通常使用時とパソコン使用時とで変化させることができ、またパソコン使用時には上側天板11の一部が下側天板13よりも下側となるため、上側天板11が視界を遮ることなく前方を視認することができる。
【0056】
また、上側天板11の位置が通常使用時とパソコン使用時とで移動する過程において、上側天板11が前方に突出する突出量を小さくすることができる。そのため、講義室のように複数の机1を密集して並べて用いる場合であっても、机1の前後方向の配置間隔を小さくすることや、着座のための空間を広くとることが可能になる。
【0057】
また、上記机1では、上側天板11を変位させるときに上側天板11のこじれ(もつれ)が生じにくいため、例えば上側天板11の左右いずれかの端部のみを持って変位を行う場合のように、上側天板11が少々傾いた状態であっても、上側天板11をスムーズに変位させることができる。
【0058】
また、上記机1では、上側天板11にスライドレール23が固定され、そのスライドレール23はスライドリンク29から離脱不能に連結している。よって上側天板11の前方がスライドリンク29などから離れてしまうことを防止できる。よって、上側天板11が変位するときの上側天板11の位置が安定するため、変位時に上側天板11が揺動することが抑制でき、容易かつ安全に変位を実現することができる。
(5)変形例
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0059】
例えば、上記実施例においては、机1が複数人で使用するものである構成を例示したが、1人で使用する机でであってもよい。また、下側天板13にはパソコン5を設置して利用する構成を例示したが、それ以外の用途であってもよいし、下側天板13を設けず、上側天板11のみを用いる構成であってもよい。その場合には、天板保持部15は下側天板13以外の例えば机の脚部などに設けるとよい。
【0060】
また、上記実施例においては、天板保持部15は左右方向(第1軸部材31などの軸線方向)に並べて2つ配置される構成を例示したが、1つのみ配置される構成であってもよいし、3つ以上並べて配置される構成であってもよい。
【0061】
また、上記天板保持部15は、第2リンクベース25を中心とし、全体として1つのユニットとなっている構成を例示した。しかしながら、ロッドリンク27,第1リンクベース21,第2軸部材41などからなる機構と、スライドリンク29,スライドレール23,第3軸部材43などからなる機構と、が別々に設けられる構成であってもよい。
【0062】
上記の場合には、各機構は前後方向に並べて設けられる必要は無く、またその設置される数も異なっていてよい。例えば、上側天板11の左右両端付近にロッドリンク27を中心とする機構が配置され、上側天板11の左右方向の中央にスライドリンク29を中心とする機構を配置することが考えられる。またそれらの配置を逆にしてもよい。
【0063】
なお、実施例のように天板保持部15を1つのユニットとして構成しておくことで、取り付け作業時の工数を削減できるとともに、取り付け作業時に位置ずれが生じにくく、2つの機構の位置精度を向上させることができる。
【0064】
また、上記実施例においては、断面T字型のスライド樹脂55がスライドレール23に係合する構成を例示したが、スライド樹脂55以外のものが係合する構成であってもよい。
【0065】
一例を図8(A)〜(C)に示す。図8(A)が第3軸部材43付近の側面図、図8(B)が背面図、図8(C)が平面図のそれぞれ部分断面図である。この例は、スライドリンク71に上側天板11と直交する方向に回転軸を有するローラー73を設け、このローラー73をスライドレール23内に配置する構成を示すものである。この構成では、ローラー73の回転によって、摩擦力を小さくして上側天板11を摺動させることができる。
【0066】
また、別の例を図9(A)〜(C)に示す。図9(A)が第3軸部材43付近の側面図、図9(B)が背面図、図9(C)が平面図のそれぞれ部分断面図である。この例は、スライドレール23の内側にラック81を設け、スライドリンク83に上側天板11の主たる面と直交する方向に回転軸を有するピニオンギア85を設け、このピニオンギア85をスライドレール23内に配置する構成を示すものである。この構成において、さらに、ピニオンギア85の回転軸にダンパー機能を持たせることで、上側天板11の急激な移動を抑制することができるようになる。
【0067】
また、別の例を図10(A)〜(C)に示す。図10(A)が第3軸部材43付近の側面図、図10(B)が背面図、図10(C)が平面図のそれぞれ部分断面図である。この例は、スライドレール23に変えて、上側天板11の前後方向に沿って延びるスライドシャフト91を、上側天板11との間隔を開けて上側天板11に取り付け、そのスライドシャフト91の側面をスライドリンク93にて摺動可能に覆う構成を示すものである。なおこの場合には、スライドリンク93とスライドシャフト91との接触面にブッシュ95を配置してもよい。スライドシャフト91には金属棒などの安価な部材を用いることができるため、製造コストの低減が可能となる。
【0068】
また、上記実施例においては、スライドレール23を介してスライドリンク29と上側天板11とが連結する構成を例示したが、上側天板11は第1軸部材31のみで連結している構成であってもよい。
【0069】
具体的には、図11(A)に示すように、スライドリンク29に変えて下側天板13上にローラー101を設け、そのローラー101の円周面が上側天板11と接触することで摺動するように構成してもよい。さらに、ローラー101などを設けることなく、図11(B)に示すように、摩擦の小さい摺動材質部品103にて上側天板11と接触し、摺動する構成であってもよい。
【0070】
また、上記のように構成した場合には、パソコン使用時においてローラー101や摺動材質部品103に上側から接触するストッパ105を第1リンクベース107上に設けてもよい。もちろん、第1リンクベース107以外の位置にストッパ105を設けても良い。さらに、パソコン使用時の位置から上側天板11が移動しないようにするロック機構を設けてもよい。
【0071】
また、上記のように構成した場合には、上側天板11におけるローラー101や摺動材質部材103と摺動する部分に、摺動方向に沿って延びる凹部または凸部を有するガイド部を設けるとよい。このときの断面図(上側天板11の前後方向と交差する方向の断面を示す図)を図12(A)〜(C)に示す。図12(A),(B)のように、ローラー101や摺動材質部材103と、ガイド部111,113とが係合するように構成することで、ローラー101や摺動材質部材103は前後方向への摺動が案内され、左右方向の摺動が抑制される結果、上側天板11の変位が案内されることとなり、上側天板11がずれてこじれてしまうことを抑制できる。
【0072】
また、図12(C)に示すように、ガイド部として、上側天板11の前後方向に延びる突出部115a,115bを上側天板11の左右方向に距離を開けて配置し、それに沿うようにローラー101や摺動材質部材103を設けてもよい。図12(C)においては突出部115a,115bがローラー101などの外側に配置される構成を示しているが、内側に配置される構成であってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1…机、3…椅子、5…パソコン、11…上側天板、13…下側天板、15…天板保持部、17…ストッパ、21…第1リンクベース、23…スライドレール、25…第2リンクベース、27…ロッドリンク、29…スライドリンク、31…第1軸部材、33…主部、33a…雌ネジ、35…ネジ、37…サポートバネ、41…第2軸部材、43…第3軸部材、51…ボルト、53…ダンパー、55…スライド樹脂、61a〜61d…回転軸、63,65…リンク部材、71…スライドリンク、73…ローラー、81…ラック、83…スライドリンク、85…ピニオンギア、91…スライドシャフト、93…スライドリンク、95…ブッシュ、101…ローラー、103…摺動材質部品、105…ストッパ、107…第1リンクベース、111,113…ガイド部、115a,115b…突出部、121…天板、123…天板、125,127,129,131…リンクアーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板を備え、当該天板を、基部の上方で略水平となる使用位置と、前記基部の水平方向の一方側において傾斜した状態となる開放位置と、との間で変位可能に支持する天板ユニットであって、
前記天板に設けられる天板回転軸と、前記使用位置のときに前記天板回転軸よりも前記一方側となる位置において前記基部に設けられる基部回転軸と、前記天板回転軸および前記基部回転軸それぞれに対して回動可能に連結するロッドと、からなるリンク機構と、
前記天板において前記天板回転軸よりも前記一方側にて前記天板を摺動可能に支持する摺動機構と、を備える
ことを特徴とする天板ユニット。
【請求項2】
前記摺動機構は、
前記天板において、長手方向が摺動方向となるように設けられる長尺部材と、
前記基部に設けられ、前記長尺部材と前記長手方向にのみ摺動可能に係合し、前記摺動に応じて前記基部に対する角度が変化する係合部材と、を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の天板ユニット。
【請求項3】
前記摺動機構は、
前記天板に設けられ、摺動方向に沿って延びる凹部または凸部を有するガイド部と、
前記基部に設けられ、前記凹部または凸部と接触可能に形成される接触部と、を備え、
前記ガイド部は、前記接触部と接触した状態において、前記摺動方向への摺動が案内され、前記摺動方向と交差する方向の摺動が抑制される
ことを特徴とする請求項1に記載の天板ユニット。
【請求項4】
前記摺動機構は、前記基部に設けられるローラーを備えており、前記ローラーの円周面が前記天板と接触することで摺動する
ことを特徴とする請求項1に記載の天板ユニット。
【請求項5】
前記リンク機構は、前記天板回転軸の軸線方向に並べて複数設けられている
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の天板ユニット。
【請求項6】
前記摺動機構は、前記天板回転軸の軸線方向に並べて複数設けられている
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の天板ユニット。
【請求項7】
前記天板は、前記開放位置において、前記天板の少なくとも一部が前記基部よりも下方に位置する
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の天板ユニット。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の天板ユニットを備える机。
【請求項9】
前記机は、前記使用位置にある前記天板の下側に第2天板を備える
ことを特徴とする請求項8に記載の机。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−11128(P2012−11128A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153095(P2010−153095)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000116596)愛知株式会社 (37)
【Fターム(参考)】