説明

天然ガスハイドレート生成プラントにおける閉塞解消方法及び閉塞解消装置

【課題】 天然ガスハイドレート(NGH)生成プラントの製造ラインが団塊となったNGHで閉塞された場合、閉塞部を解体して解消する場合には、製造ラインの操業中断が長時間となってしまうおそれがあるので、解体することなく極力迅速で、確実に解消できる閉塞解消方法と閉塞解消装置を提供する。
【解決手段】 閉塞部12を他の箇所から断絶する遮蔽弁V1、V2を製造ライン11に配し、閉塞部12の減圧を行う圧抜き弁V3と溶剤槽15から溶剤を流入させ排出させる入口弁V4と出口弁V5を設ける。閉塞時には、遮断弁V1、V2を閉成して閉塞部12を他の箇所から断絶し、圧抜き弁V3を開放して減圧する。その後、必要に応じて、圧抜き弁V3を閉成し、入口弁V4と出口弁V5を開放して溶剤を閉塞部12に流入させてNGHを溶融させた後、洗浄水で洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、天然ガスハイドレート生成プラントで生成された天然ガスハイドレートのスラリー等が生成ラインを閉塞した場合に、当該ラインに含まれる機器装置や配管等を解体することなく、閉塞を解消する天然ガスハイドレート生成プラントにおける閉塞解消方法及び閉塞解消装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シベリアやカナダ、アラスカ等の凍土地帯や大陸周辺部における水深500m以下の海底下には、主成分がメタンである天然ガスハイドレート(NGH)が存在している。この天然ガスハイドレートは、メタン等のガス分子と水分子とから構成される低温高圧下で安定した水状固体物質あるいは包接水和物であり、二酸化炭素や大気汚染物質の排出量が少ないクリーンエネルギとして着目されている。
【0003】
天然ガスからは一般に液化天然ガスが製造され、輸送・貯蔵されてエネルギとして利用されているが、その製造や輸送・貯蔵は−162℃の極低温において行われている。これに対して天然ガスハイドレートは、常圧下において−20℃でほとんど分解せずに安定した性質を示し、固体として扱うことができる等の利点を備えている。このような性質から、世界中に存在している採算面等の理由から未開発の中小ガス田におけるガス資源を有効に利用することができる手段として、あるいは大ガス田からの近距離、小口輸送の場合等に天然ガスハイドレート方式を活用できる。
【0004】
天然ガスハイドレート方式では、中小ガス田等のNGH出荷基地(地上又は海上)において、輸送や貯蔵に適したNGHペレットを生成し、輸送船や車両等によって所望のNGH受入基地まで輸送され、NGH受入基地では輸送されたNGHを貯蔵し、必要に応じてNGH再ガス化装置によってエネルギ源として利用することになる。図4は、前記NGH出荷基地におけるNGH生成プラントの構成を説明する概略図である。天然ガス及び水を高圧反応容器からなる第1生成器3に給送して、低濃度のNGHスラリーを生成する。この低濃度スラリーを脱水器4に供給し、脱水する。脱水器4により脱水されたNGHは第2生成器5に供給され、再度天然ガスによりNGH中における天然ガス成分を高めて高濃度のNGHスラリーあるいはパウダーを生成する。この第2生成器5を通過した高濃度スラリーあるいはパウダーは、ペレタイザー6に給送されて造粒され、適宜な大きさのNGHペレットに形成される。そして、常圧下でも分解しない温度まで冷却器7によって冷却され、ロータリポンプ8等によって給送されて貯蔵槽9に貯蔵される。なお、NGHの生成から冷却までは30〜70atmの高圧下で処理が行われ、その後−20℃近くに冷却して常圧まで減圧することになる。
【0005】
例えば、特許文献1には、天然ガスと水とを氷点よりも高温、かつ大気圧よりも高圧下で反応させ、水を凍らせることなく天然ガスハイドレートを生成し、生成された天然ガスハイドレートを物理的に脱水し、さらにこの物理脱水の過程もしくは脱水後において天然ガスハイドレートに含まれる残存水分を天然ガスと反応させて天然ガスハイドレートを生成することによって天然ガスハイドレートの含水率を低下させ、これを氷点よりも低温にまで冷却し、残存する水(氷)の中に凍りづけしたのち減圧する、天延ガスハイドレートの生成方法及び生成システムが開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−105362
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1に開示された天然ガスハイドレート生成方法にあるように、一般的に天然ガスと水とが反応して生成されたNGHは、水と混在してスラリー状となる。前記第1生成器3で生成されたNGHスラリーは非常に高い含水率を呈しており、この水分を後続の脱水器4で脱水して含水率を低下させる。脱水器4で脱水されたNGHも水に混在しているもので濃度が高められたスラリー状を呈している。さらに、前記第2生成器5で天然ガスと再度反応させて、高濃度のスラリー状あるいはパウダー状に生成される。これらのNGHスラリーやNGHパウダーは前記の各処理工程やこれら工程間を給送するための接続ラインにおいて、滞留して成長することにより団塊となって各処理のための装置機器や接続ラインの配管を閉塞させてしまうおそれがある。
【0008】
NGHスラリー等によって装置機器や配管が閉塞されてしまうと、更に団塊が成長してしまい、NGH生成プラント自体の操業を行えなくなってしまうおそれがある。このため、閉塞の原因となっている団塊等を除去する必要がある。しかしながら、従来のNGH生成プラントでは、このような場合に閉塞を解消するための装置等が備えられていないため、場合によっては閉塞が生じている部分を解体して団塊等を除去することになる。
【0009】
そこで、この発明は、NGH生成プラントにNGHスラリーやパウダーによる閉塞が発生した場合に、極力迅速に閉塞を解消することができるようにして、NGH生成プラントの操業の中断時間を極力短くすることができるようにした天然ガスハイドレート生成プラントにおける閉塞解消方法及び閉塞解消装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するための技術的手段として、この発明に係る天然ガスハイドレート生成プラントにおける閉塞解消方法は、天然ガスハイドレートの製造ラインに高圧下で生成されたガスハイドレートが滞留して当該箇所を閉塞した場合に、閉塞原因となった滞留したガスハイドレートを除去する天然ガスハイドレート生成プラントにおける閉塞解消方法において、ガスハイドレートが滞留した滞留箇所を含む製造ラインの閉塞部を他の箇所から断絶し、前記閉塞部内の圧力を減じて、前記滞留したガスハイドレートを分解させることを特徴としている。
【0011】
天然ガスハイドレート(NGH)の生成は高圧の処理圧力下で行われるが、これは氷点以上の温度となった場合であっても分解されないためである。したがって、閉塞が発生した場合には当該閉塞部の圧力を低下させることにより、NGHが分解される。このとき、当該閉塞部を他の箇所から断絶することにより、他の箇所に存しているNGHが分解されない。NGHが分解されて閉塞が解消されたならば、閉塞部と他の箇所との断絶状態を連通状態に復帰させ、NGH生成プラントの操業を再開する。
【0012】
また、請求項2の発明に係る天然ガスハイドレート生成プラントにおける閉塞解消方法は、天然ガスハイドレートの製造ラインに高圧下で生成されたガスハイドレートが滞留して当該箇所を閉塞した場合に、閉塞原因となった滞留したガスハイドレートを除去する天然ガスハイドレート生成プラントにおける閉塞解消方法において、ガスハイドレートが滞留した滞留箇所を含む製造ラインの閉塞部を他の箇所から断絶し、前記閉塞部内に溶剤を流入させて、滞留したガスハイドレートを溶融させることを特徴としている。
【0013】
NGHはある種のアルコール類に溶融する性質を有していることから、閉塞が生じた場合には、閉塞の原因となって滞留しているNGHにアルコール類を主とした溶剤を流入させる。このとき、閉塞部を他の箇所から断絶して、閉塞部のみに溶剤を流入させるようにする。滞留していたNGHが溶融したならば、溶剤の流入を停止し、例えば、閉塞部をフラッシングして適宜に洗浄した後、断絶状態にあった他の箇所と連通状態としてNGH生成の操業を再開する。
【0014】
また、請求項3の発明に係る天然ガスハイドレート生成プラントにおける閉塞解消方法は、前記閉塞部内を減圧させた後に、前記溶剤を流入させることを特徴としている。
【0015】
NGHによる閉塞が発生した場合には、前記閉塞部を減圧することによりNGHが分解されるが、閉塞原因となっているNGHの団塊が大きい場合には分解が終了するまでの時間が長くなるおそれがある。このため減圧によっても容易に分解されない場合には、溶剤を流入させて溶融させるようにしたものである。
【0016】
また、請求項4の発明係る天然ガスハイドレート生成プラントにおける閉塞解消方法は、前記溶剤がメチルアルコールであることを特徴としている。
【0017】
HGNはある種のアルコール類に溶融することが知られており、特にメチルアルコールによく溶ける。このため、前記溶剤としてメチルアルコールを用いるようにしたものである。
【0018】
また、この発明に係る天然ガスハイドレート生成プラントにおける閉塞解消装置は、天然ガスハイドレートの製造ラインに高圧下で生成されたガスハイドレートが滞留して当該箇所を閉塞した場合に、閉塞原因となった滞留したガスハイドレートを除去する天然ガスハイドレート生成プラントにおける閉塞解消装置において、ガスハイドレートが滞留する滞留箇所を含む製造ラインの閉塞部を他の箇所から断絶する遮断手段を設け、前記閉塞部の内圧を減じる脱圧手段を設け、閉塞発生時に、前記遮断手段で閉塞部を断絶し、前記脱圧手段でこの閉塞部を減圧することを特徴としている。
【0019】
NGH生成プラントでは、各処理工程の装置機器が配管により接続されており、配管には必要に応じて各種の弁が設けられる。この弁を予め閉塞部となる部分に配設することにより、当該弁を遮断手段として、閉塞が生じた場合に当該弁を閉成することによりこれらの弁で挟まれた部分を他の箇所から断絶することができる。また、この閉塞部を開放することができる弁を脱圧手段として設けて、閉塞時にこの弁を開放する。これにより、閉塞部が減圧されるから、閉塞の原因となっているNGHが分解される。減圧のために閉塞部から排出されるガスは回収する。NGHが分解されて閉塞が解消されたならば、脱圧手段となる弁を閉成し、他の箇所から断絶させていた弁を開放して他の箇所と連通させた後、操業を再開してNGHの生成を行う。
【0020】
また、請求項6の発明に係る天然ガスハイドレート生成プラントにおける閉塞解消装置は、天然ガスハイドレートの製造ラインに高圧下で生成されたガスハイドレートが滞留して当該箇所を閉塞した場合に、閉塞原因となった滞留したガスハイドレートを除去する天然ガスハイドレート生成プラントにおける閉塞解消装置において、ガスハイドレートが滞留する滞留箇所を含む製造ラインの閉塞部を他の箇所から断絶する遮断手段と、前記閉塞部にガスハイドレートを溶かす溶剤を流入させる溶剤流入手段とを有し、閉塞発生時に閉塞部を前記遮断手段によって断絶し、前記溶剤流入手段によりこの閉塞部に溶剤を流入させることを特徴としている。
【0021】
前述した弁により他の箇所から断絶された部分にNGHを溶融させる溶剤を流入させるようにしたものである。閉塞部には溶剤を流入させる入口弁と流出させる出口弁とを設けて、出口弁から回収する。溶剤によりNGHが溶融されたならば、溶剤に変えて洗浄水を流入させて閉塞部をフラッシングする。その後、入口弁と出口弁を閉成し、閉塞部を他の箇所と連通させて操業を再開する。溶剤と洗浄水とは、回収後に分離させ、溶剤は再利用する。
【0022】
また、請求項7の発明に係る天然ガスハイドレート生成プラントにおける閉塞解消装置は、前記閉塞部の内圧を減圧する脱圧手段と、前記閉塞部にガスハイドレートを溶かす溶剤を流入させる溶剤流入手段とを設け、前記閉塞部内を減圧させた後に、前記溶剤流入手段から溶剤を流入させることを特徴としている。
【0023】
すなわち、閉塞部を減圧しても閉塞しているNGHが分解されるまで長時間を要する場合に、NGHを溶融させる溶剤を流入するようにしたものである。閉塞が解消されたならば、閉塞部を洗浄水でフラッシングした後、操業を再開する。
【0024】
また、請求項8に記載の天然ガスハイドレート生成プラントにおける閉塞解消装置は、前記溶剤がメチルアルコールであることを特徴としている。
【0025】
溶剤としてメチルアルコールを使用するようにしたものである。
【発明の効果】
【0026】
この発明に係る天然ガスハイドレート生成プラントにおける閉塞解消方法または閉塞解消装置によれば、NGHプラントの各工程の処理装置や接続ラインの配管を取り外すことなくNGHの閉塞を解消することができるから、操業の中断時間を極力短縮でき、NGH生成プラントの製造効率を低下させることがない。しかも、閉塞部の圧力を減じることによるから、複雑な装置等を必要とせず、NGH生成プラントの設備コストの増加を極力抑制することができる。
【0027】
また、請求項2の発明に係る閉塞解消方法、または請求項6の発明に係る閉塞解消装置によれば、閉塞原因となったNGHを溶剤によって溶融するため、滞留しているNGHを迅速に除去することができる。したがって、操業の中断時間をより短くすることができる。
【0028】
また、請求項3の発明に係る閉塞解消方法、または請求項7の発明に係る閉塞解消装置によれば、閉塞部におけるNGHが成長して堅牢なものとなった場合でも、確実に除去することができて閉塞状態を解消することができる。
【0029】
また、請求項4の発明に係る閉塞解消方法、または請求項8の発明に係る閉塞解消装置によれば、薬品として一般的なメチルアルコールを溶剤として用いることにより、入手が容易で安価であるから、設備コストを抑制することができる。しかも、メチルアルコールが付着した部分を水により洗浄が可能で、水との分離も容易であるから、再生可能な溶剤とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図1に示した好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係る天然ガスハイドレート生成プラントにおける閉塞解消方法及び閉塞解消装置を具体的に説明する。
【0031】
図1はこの閉塞解消装置10の概略の構成を示す図で、NGH生成プラントにおけるNGH製造ライン11の中に閉塞部12が存する場合を示している。なお、閉塞部12としては前記第1生成器3から貯蔵槽9に至る各種の処理工程における装置機器やこれら装置機器を接続する配管等があり、NGHスラリー等が滞留しやすく、団塊となって閉塞が生じやすい部分を閉塞部12として、この閉塞解消装置10を設置することが好ましい。なお、図中左側をNGH製造ライン11の上流側としてあり、前記NGHスラリーは図において左から右へ給送される。閉塞部12を挟んで遮断手段として上流側遮断弁V1と下流側遮断弁V2が設けられている。閉塞部12には脱圧手段としての圧抜き弁V3が排出管13を介して取り付けられており、この排出管13は天然ガスやメタンガス等のゲストガスを貯蔵する図示しない原料ガスタンクに給送されあるいはフレアースタックへ排出される。
【0032】
また、閉塞部12には溶剤供給管14によって溶剤槽15からNGHを溶融させる溶剤を流入させられるようにしてあり、この溶剤供給管14には、開放することにより溶剤が閉塞部12に流入する溶剤流入手段として入口弁V4が設けられている。また、この入口弁V4と閉塞部12との間の接続管14aに洗浄水を供給する洗浄水供給管16が洗浄水弁V6を介して接続されている。そして、閉塞部12には供給された溶剤と洗浄水を排出するための溶剤排出管17が接続させてあり、この溶剤排出管17は出口弁V5を介して溶剤・洗浄水受槽18に接続されている。この溶剤・洗浄水受槽18に受け入れられた溶剤と洗浄水の混合液は溶剤回収装置19に給送されるようにしてある。この溶剤回収装置19では前記混合液が溶剤と洗浄水とに分離され、溶剤は前記溶剤槽15に給送され、洗浄水は原料水として原料水タンクへあるいは廃水処理設備へ給送される。また、溶剤と洗浄水との分離の際にはゲストガスの発生が伴われ、発生したゲストガスはガス排出管20を通って前記排出管13に給送される。
【0033】
そして、閉塞部12における閉塞の有無を検出する閉塞検出器21が設けられている。
【0034】
以上により構成されたこの発明の実施形態に係る閉塞解消装置10について、その作用を、図2及び図3に示すフローチャートを参照して説明する。
【0035】
NGHの製造ラインの操業は、例えば中央制御センター等で集中的に管理され、製造ラインでの閉塞の発生の有無は、前記閉塞検出器21の出力信号を監視している(ステップ201/NO)。閉塞が発生したならば(ステップ201/YES)、前記遮断弁V1、V2を閉成させ、前記入口弁V4と出口弁V5、洗浄水弁V6が閉成されていることを確認する(ステップ202)。これにより、閉塞が発生している閉塞部12が製造ラインの他の箇所と断絶された状態となる。次いで、圧抜き弁V3を開放させ(ステップ203)、タイマをスタートさせる(ステップ204)。このタイマのタイムアップを判断し(ステップ205)、タイムアップしていない場合には(ステップ205/NO)、閉塞部12にて依然として閉塞状態にあるか否かを判断する(ステップ206)。すなわち、前記圧抜き弁V3が開放されたことにより閉塞部12が減圧されるから、閉塞の原因となっているNGHスラリー等が安定性を損なう環境に置かれることとなり、生成されたNGHが分解され、この分解が促進されると閉塞が解消されることになる。閉塞が解消されていない場合(ステップ206/NO)には、ステップ205に戻ってタイムアウトか否かの判断が行われる。閉塞が解消された場合(ステップ206/YES)には製造ラインの操業を再開すべく、先に開放させた圧抜き弁V3を閉成させ(ステップ207)、先に閉成させた遮断弁V1、V2を開放して(ステップ208)、閉塞時の処理を終了する。前記遮断弁V1、V2が開放されることにより閉塞部12が他の箇所と連通状態となるので、この製造ラインによる操業を再開できるようになる。
【0036】
閉塞部12の脱圧を行って常圧下におかれて相当時間が経過しても閉塞が解消されない場合には(ステップ205/YES)、ステップ209にて再度閉塞の有無を確認し、閉塞が解消されているならば(ステップ209/NO)、前記ステップ207に進んで、前記ステップ208の処理を行った後、閉塞解消処理を終了する。閉塞が解消されていない場合には、閉塞部12のNGHを溶融するために溶剤を流入させることとなる。すなわち、閉塞が解消されていない場合には(ステップ209/YES)、図3に示す手順が実行される。開放している前記圧抜き弁V3を閉成させ(ステップ301)、溶剤を供給するための前記入口弁V4と出口弁V5を開放する(ステップ302)。これにより、前記溶剤槽15から閉塞部12に溶剤が流入することになり、閉塞の原因となっているNGHが溶融されて除去される。
【0037】
前記ステップ302の処理が実行されると、タイマをスタートさせ(ステップ303)、そのタイムアウトを判断する(ステップ304)。タイムアウトしていない場合には(ステップ304/NO)、閉塞が継続しているか否かを判断し(ステップ305)、閉塞状態にある場合にはステップ304へ戻ってタイムアウトを判断する。閉塞が解消されている場合(ステップ305/NO)には、前記入口弁V4を閉成して溶剤の流入を停止する(ステップ306)。次いで、前記洗浄水弁V6を開放して(ステップ307)閉塞部12に洗浄水を流入させて閉塞部12の洗浄処理を行う(ステップ308)。これは、溶剤が残留していては、製造ラインの操業を再開した場合に、生成されたNGHがこの残留溶剤によって溶融されてしまうおそれがあるからである。洗浄処理が完了したならば、洗浄水弁V6を閉成し、開放した前記出口弁V5を閉成する(ステップ309)。そして、遮断弁V1、V2を開放して(ステップ310)、閉塞部12を他の箇所と連通状態にして閉塞解消処理を終了する。
【0038】
前記ステップ304でタイムアウトが判断された場合には、閉塞部12への溶剤の流入が相当時間経過しても閉塞が解消されない場合であるので、閉塞の原因がNGHによるもの以外であると考えられ、この閉塞部12を分解する必要が生じる。このため、タイムアウトとなった場合(ステップ304/YES)には、警報を発したり警告灯を点灯あるいは点滅させる等の警告処理を行い(ステップ311)、入口弁V4と出口弁V5を閉成させて(ステップ312)、溶剤の流入を停止して終了する。
【0039】
前記圧抜き弁V3が開放されている状態で、閉塞部12から排出されるガスは排出管13を通って図示しない前記原料ガスタンクに給送され、あるいはフレアースタックとして排出される。また、入口弁V4と出口弁V5とが開放されている状態では溶剤が前記溶剤排出管17と通って前記溶剤・洗浄水受槽18に給送される。また、入口弁V4が閉成され、洗浄水弁V6と出口弁V5が開放されている状態では洗浄水が前記溶剤排出管17と通って前記溶剤・洗浄水受槽18に給送される。すなわち、溶剤・洗浄水受槽18内では溶剤と洗浄水とが混合した状態にある。溶剤と洗浄水とのこの混合液は前記溶剤回収装置19に給送されて溶剤と洗浄水とに分離されることとなる。分離された溶剤は前記溶剤槽15に給送されて再利用され、洗浄水は原料水として原料タンクあるいは図示しない廃水処理設備へ給送される。また、混合液の分離の際に発生するゲストガスは前記ガス排出管20から前記排出管13に送られて閉塞部12から排出されたガスと共に原料ガスタンクあるいはフレアースタックへ給送される。
【0040】
以上説明した実施形態では、閉塞部12の脱圧処理を行った場合であって閉塞原因となっているNGHが十分に分解されない場合に、溶剤を流入させるものとして説明したが、閉塞部の製造ラインにおける位置によっては、脱圧処理のみでも、あるいは溶剤の流入を必要とする場合もある。このため、閉塞部によっては、脱圧処理のみ、あるいは溶剤の流入のみで処理を行うようにすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
この発明に係る天然ガスハイドレート生成プラントにおける閉塞解消方法及び閉塞解消装置によれば、製造ラインでNGHにより閉塞が発生した場合に、閉塞部を解体することなく閉塞を解除できるから、製造ラインの操業の中断を極力短時間にすることができ、NGH生成プラントでの操業の安定化に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この発明に係る閉塞解消装置の構成を説明する図である。
【図2】発生した閉塞を解消する手順を説明するフローチャートで、主として閉塞部の脱圧を行う場合を示している。
【図3】発生した閉塞を解消する手順を説明するフローチャートで、主として閉塞部に溶剤を流入させる場合を示している。
【図4】天然ガスハイドレート生成プラントの構成の一例を説明するブロック図である。
【符号の説明】
【0043】
3 第1生成器
4 脱水器
5 第2生成器
6 ペレタイザー
7 冷却器
8 ロータリポンプ
9 貯蔵槽
10 閉塞解消装置
11 NGH製造ライン
12 閉塞部
13 排出管
14 溶剤供給管
15 溶剤槽
16 洗浄水供給管
17 溶剤排出管
18 溶剤・洗浄水受槽
19 溶剤回収装置
20 ガス排出管
21 閉塞検出器
1 上流側遮断弁
2 下流側遮断弁
3 圧抜き弁
4 入口弁
5 出口弁
6 洗浄水弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ガスハイドレートの製造ラインに高圧下で生成されたガスハイドレートが滞留して当該箇所を閉塞した場合に、閉塞原因となった滞留したガスハイドレートを除去する天然ガスハイドレート生成プラントにおける閉塞解消方法において、
ガスハイドレートが滞留した滞留箇所を含む製造ラインの閉塞部を他の箇所から断絶し、
前記閉塞部内の圧力を減じて、前記滞留したガスハイドレートを分解させることを特徴とする天然ガスハイドレート生成プラントにおける閉塞解消方法。
【請求項2】
天然ガスハイドレートの製造ラインに高圧下で生成されたガスハイドレートが滞留して当該箇所を閉塞した場合に、閉塞原因となった滞留したガスハイドレートを除去する天然ガスハイドレート生成プラントにおける閉塞解消方法において、
ガスハイドレートが滞留した滞留箇所を含む製造ラインの閉塞部を他の箇所から断絶し、
前記閉塞部内に溶剤を流入させて、滞留したガスハイドレートを溶融させることを特徴とする天然ガスハイドレート生成プラントにおける閉塞解消方法。
【請求項3】
前記閉塞部内を減圧させた後に、前記溶剤を流入させることを特徴とする請求項1に記載の天然ガスハイドレート生成プラントにおける閉塞解消方法。
【請求項4】
前記溶剤がメチルアルコールであることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の天然ガスハイドレート生成プラントにおける閉塞解消方法。
【請求項5】
天然ガスハイドレートの製造ラインに高圧下で生成されたガスハイドレートが滞留して当該箇所を閉塞した場合に、閉塞原因となった滞留したガスハイドレートを除去する天然ガスハイドレート生成プラントにおける閉塞解消装置において、
ガスハイドレートが滞留する滞留箇所を含む製造ラインの閉塞部を他の箇所から断絶する遮断手段を設け、
前記閉塞部の内圧を減じる脱圧手段を設け、
閉塞発生時に、前記遮断手段で閉塞部を断絶し、前記脱圧手段でこの閉塞部を減圧することを特徴とする天然ガスハイドレート生成プラントにおける閉塞解消装置。
【請求項6】
天然ガスハイドレートの製造ラインに高圧下で生成されたガスハイドレートが滞留して当該箇所を閉塞した場合に、閉塞原因となった滞留したガスハイドレートを除去する天然ガスハイドレート生成プラントにおける閉塞解消装置において、
ガスハイドレートが滞留する滞留箇所を含む製造ラインの閉塞部を他の箇所から断絶する遮断手段と、
前記閉塞部にガスハイドレートを溶かす溶剤を流入させる溶剤流入手段とを有し、
閉塞発生時に閉塞部を前記遮断手段によって断絶し、前記溶剤流入手段によりこの閉塞部に溶剤を流入させることを特徴とする天然ガスハイドレート生成プラントにおける閉塞解消装置。
【請求項7】
前記閉塞部の内圧を減圧する脱圧手段と、前記閉塞部にガスハイドレートを溶かす溶剤を流入させる溶剤流入手段とを設け、
前記閉塞部内を減圧させた後に、前記溶剤流入手段から溶剤を流入させることを特徴とする請求項5に記載の天然ガスハイドレート生成プラントにおける閉塞解消装置。
【請求項8】
前記溶剤がメチルアルコールであることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の天然ガスハイドレート生成プラントにおける閉塞解消装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−284524(P2007−284524A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−112041(P2006−112041)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】