説明

天然貝ルアー

【課題】天然貝の貝ブランクを用いた天然貝ルアーにおいて、貝ブランクを直接容易に着色することができる天然貝ルアーを提供する。
【解決手段】天然貝の貝ブランク1を用いた天然貝ルアーにおいて、貝ブランク1の表面に部分的に凹部2を設け、この凹部2に塗料3を充填し固化させる。

【発明の詳細な説明】
【発明が属する技術分野】
【0001】
本発明は、天然貝の貝ブランクを用いた天然貝ルアーに関し、特に、貝ブランクの表面(裏面を含む)を容易に着色することができる天然貝ルアーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
アワビや夜光貝、白蝶貝等の真珠光沢を有する貝は、不透明の外皮部分を削り落とし、真珠光沢層を露出させて天然貝の貝ブランクを形成し、該貝ブランクをそのままスプーンタイプのルアーにしたり、複数の貝ブランクを貼り合わせて円柱状のトローリングヘッドにしたりして利用されている。
【0003】
これら無垢の天然貝ルアーは、その貝光のプリズム的な作用により、例えば、レイクトローリングでのトラウト類に威力を発揮することが知られており、湖のイワナやサクラマス等をターゲットとする釣人の間では、特にスレている魚に効果的なルアーとして絶大な人気がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような天然貝の貝ブランクにおいて、アワビのような貝ブランクにはトラ目や波目の模様があり、ルアーの動きに伴ってこれらの模様が細かく貝光をリフレクトし、魚の目を非常に効果的に幻惑することができる。
【0005】
これに対し、例えば夜光貝や白蝶貝などの白色無地系の貝ブランクは、パールホワイトの貝光で非常に強いアピール力があるが、貝ブランクに模様がない分だけ貝光のフラッシュが単調になりがちになる。
【0006】
そこで、着色して模様をつけようとしても、貝の材質上、貝ブランクの表面に塗料は直接のりにくく、極めて容易にはく離する。
【0007】
このような問題に対処する方法として、透明な合成樹脂で貝ブランクをコーティングし、このコーティング層を塗料で着色することも可能であるが、非常に手間がかかる上に、ルアーを長く水中で使用するとコーティング被膜が貝ブランクから遊離するという問題が発生する。
【0008】
本発明は、上記従来の天然貝ルアーが有する問題点に鑑み、貝ブランクを容易に着色することができる天然貝ルアーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の天然貝ルアーは、所定厚みの天然貝の貝ブランクを用いた天然貝ルアーにおいて、上記貝ブランクの表面に部分的に凹部を設け、該凹部に直接塗料を充填し固化せしめたことを特徴とする。
【0010】
この場合において、前記貝ブランクの凹部を研削により形成されたものとすることができる。
【0011】
また、固化した塗料層を凹部の縁で高く、凹部の中央で低い断面円弧状に形成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の天然貝ルアーによれば、貝ブランクの表面に部分的に凹部を設け、該凹部に直接塗料を充填し固化せしめることから、塗料を貝ブランクの凹部内で保持し保護することができ、これにより、塗料がはく離することなく貝ブランクを直接容易に着色することができる。
また、貝ブランクの凹部に充填した塗料は、塗布時に凹部からはみ出したとしても、固化後に貝ブランクの表面をサンドペーパー等で研磨することにより、はみ出した部分を容易に除去することができ、これにより、凹部の形のきれいな色模様を容易に設けることができる。
【0013】
この場合、前記貝ブランクの凹部を研削にて形成することにより、該凹部に細かい研削傷を作って荒れた状態とすることができ、これにより、塗料の接着性を良くすることができる。
【0014】
また、固化した塗料層を凹部の縁で高く、凹部の中央で低い断面円弧状に形成することにより、塗料層の中央が窪むことで該塗料層を傷つきにくくはく離しにくいものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の天然貝ルアーの実施の形態を、図面に基づいて説明する。
図1〜図2に、本発明の一実施例を天然貝スプーンとして示す。
【0016】
この天然貝スプーンは、炭酸カルシウムを主成分とする真珠光沢層を有する天然貝、例えば、夜光貝や白蝶貝等の貝殻を短冊状に切り出すとともに、細長い略卵形の所定のスプーン形状に外形を整え、外側の茶色の外皮部分を削り落として内部の独特の真珠光沢を有する層を露出させている。
【0017】
そして、この天然貝スプーンは、このような湾曲した板状の天然貝の貝ブランク1を用いた天然貝スプーンにおいて、上記貝ブランク1の外側の表面に部分的に凹部2を設け、該凹部2に直接塗料3を充填し固化させている。
【0018】
貝ブランク1の凹部2は、例えば、先端が球状になったルーターのダイヤモンドビットを貝ブランク1に押し当てることにより、容易に研削し彫り込むことができる。
彫り込んだ凹部2の形状は、円形の椀状のくぼみとなるが、ビットの先端形状を変えることにより、例えば溝状にすることもできる。
このように研削にて形成された凹部2は、内部に細かい研削傷があり、荒れた状態になっているので、塗料3の接着性が良くなっている。
【0019】
貝ブランク1の厚みは、貝ブランク1の強度を確保する点、及び凹部2を彫り込む点などから、1mm以上あることが望ましい。
貝ブランク1の凹部2に充填され固化した塗料3は、図2に示すように、凹部2の縁で高く、凹部2の中央で低い断面円弧状に塗料層が形成される。
これは、表面張力を利用するもので、凹部2に塗料を充填すると自然にこのような断面円弧状に塗料層が形成される。
この断面円弧状の塗料層は、中央が窪むことから、傷つきにくくはく離しにくくなっている。
【0020】
また、前記天然貝の貝ブランク1として、夜光貝や白蝶貝等の白色系の貝種を用いることにより、白い下塗りをする必要がなく、そのまま着色塗料3を充填して、色の映える着色をすることができる。
これは、透明な着色塗料を充填する場合に有利である。
すなわち、夜光貝などの貝ブランク1は光が透けるが、透明な着色塗料は貝ブランク1ごと光が透けるため、より幻惑的な着色とすることができる。
【0021】
塗料3の充填は、エアブラシ等の工具を使うことなく、細い筆などで貝ブランク1の凹部2に塗料を落とし込むように簡単に塗布することができる。
塗料3の下地として透明なプライマー(塗料)を塗布することもでき、さらに、固化した塗料3の上にこのプライマーを保護層としてさらに塗布することもできる。
この場合、塗料3やプライマーが凹部2からはみ出したとしても、固化後に貝ブランク1の表面をサンドペーパー等で研磨することにより、はみ出した部分を容易に除去することができる。
これにより、凹部2の形に応じたきれいな色模様、本実施例では真円形の色模様を容易に設けることができる。
また、上記サンドペーパーによる研磨は、天然貝スプーンの製造工程において、最終研磨のバフ掛けの前に行う必須のものであり、特に工程が増えるものではない。
【0022】
なお、ユーザーの好みにより、着色後の貝ブランク1の表面を透明な保護層で被覆することもできる。
これは、例えばウレタン樹脂等でコーティングすることにより、貝ブランク1表面全体の湖水による酸化・白濁を防止するためである。
このコーティング被膜は、ルアーを長く水中で使用すると貝ブランク1から遊離することがあるが、その場合は、使用後のメンテナンスでサンドペーパーで研磨して除去する。
この場合、貝ブランク1の凹部2にある塗料3は、凹部2内に埋設されているため、サンドペーパーが届かず何ら変化することはない。
【0023】
また、貝ブランク1をコーティングせずにそのままルアーを使用することが多いが、この場合、前記したように、湖水の酸性成分で貝ブランク1の表面が酸化して白濁することがある。
この場合のメンテナンスとして、貝ブランク1の表面全体をバフ掛けするが、貝ブランク1の凹部2にある塗料3は、凹部2内に埋設されているため、バフが届かず、やはり何ら変化することはない。
【0024】
かくして、本実施例の天然貝スプーンは、貝ブランク1の表面に部分的に凹部2を設け、該凹部2に直接塗料3を充填し固化せしめることから、塗料3を貝ブランク1の凹部2内で保持し保護することができ、これにより、塗料3がはく離することなく貝ブランク1を直接容易に着色することができる。
【0025】
また、貝ブランク1の凹部2に充填した塗料3は、塗布時に凹部2からはみ出したとしても、固化後に貝ブランク1の表面をサンドペーパー等で研磨することにより、はみ出した部分を容易に除去することができ、これにより、凹部2の形のきれいな色模様を容易に設けることができる。
【0026】
この場合、貝ブランク1の凹部2を研削にて形成することにより、該凹部2に細かい研削傷を作って荒れた状態とすることができ、これにより、塗料3の接着性を良くすることができる。
【0027】
純白無地系の夜光貝や白蝶貝などは、パールホワイトの貝光で非常に強いアピール力があるが、貝ブランク1に模様がない分だけ貝光のフラッシュが単調になりがちである。
そこで、本実施例のように、このような純白無地系の貝ブランク1に塗料3で色模様を施すことにより、貝ブランク1の色調をバックに、より映える色模様を演出するとともに、ルアーの動きに伴い変幻するカラーリングを天然貝ルアーに付与することができる。
【0028】
以上、本発明の実施例をスプーンを例に説明したが、本発明の天然貝ルアーはこの実施例の記載に限定されるものではなく、例えば、貝ブランクを貼り付けたトローリングヘッドなどの他の形態のルアーに適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上、本発明の天然貝ルアーは、塗料を貝ブランクの凹部内で保持し保護することから、塗料がはく離することなく貝ブランクを直接容易に着色することができるという特性を有しており、貝ブランクを用いた天然貝ルアーの着色の用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の天然貝ルアーの一実施例を示す斜視図である。
【図2】同天然貝ルアーの拡大断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 貝ブランク
2 凹部
3 塗料(塗料層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定厚みの天然貝の貝ブランクを用いた天然貝ルアーにおいて、上記貝ブランクの表面に部分的に凹部を設け、該凹部に直接塗料を充填し固化せしめたことを特徴とする天然貝ルアー。
【請求項2】
前記貝ブランクの凹部が研削により形成されたものであることを特徴とする請求項1記載の天然貝ルアー。
【請求項3】
固化した塗料層が凹部の縁で高く、凹部の中央で低い断面円弧状に形成されたことを特徴とする請求項1又は2記載の天然貝ルアー。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−117(P2013−117A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144881(P2011−144881)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(501252777)
【Fターム(参考)】