説明

太陽光発電システムの気象計保守支援装置、気象計保守支援方法及び気象計保守支援プログラム

【課題】太陽光発電システム用の気象計の校正時期を、自動的に判定することにより、労力の省力化及び校正コストの削減を実現する。
【解決手段】太陽光発電システムのための複数の気象データを記憶する気象データ記憶部310と、気象データ記憶部310に記憶された気象データから、気象条件が近似する測定時期若しくは気象条件が近似する測定場所の気象データを抽出する気象データ抽出部221と、気象データ抽出部221により抽出された気象データを比較する気象データ比較部231と、気象データ比較部231による比較に基づいて、気象データを出力した気象計の異常を判定する異常判定部240と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、たとえば、太陽光発電システムの制御のために設置される気象計の保守を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光パネルを用いた太陽光発電システムを適切に制御するためには、太陽光パネルの発電量の予測や動作状態の検証が不可欠である。しかし、太陽光パネルの発電量、動作状態は、日射量や気温により大きく変動する。そこで、太陽光パネルが設置された場所において、日射量や気温等の気象情報のデータやモジュール表面の温度データ(以下、気象データとする)を計測する機器が必要となる。
【0003】
気象データを計測する機器としては、日射計、気温計等(以下、気象計とする)が用いられる。この気象計は、上記のように、発電量や動作状態の把握に不可欠であるため、太陽光発電システムにおいて、極めて重要な機器といえる。そして、気象計により計測される気象データの信頼性は、太陽光発電システム全体の信頼性に関わってくる。
【0004】
一般的に、太陽光発電システムにおいては、太陽光パネルの性能を監視する手段が設けられている。これにより、太陽光パネルの性能が劣化したり、寿命が来た場合には、使用者に警告することにより、効率の良い運営を行なうことができる。一方、気象計については、作業員が点検して、メーカーが指定している誤差範囲を超えている等、校正時期を検出するための値の評価作業を行い、異常がある場合には校正を行なっているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−289578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、通常は、所定の単位の太陽光パネルが設置された地域当たり、1台の気象計が設置されている。この気象計は、気象データを太陽光発電システムの制御部に、常時送信している。このため、気象計の信頼性確保のために点検を行い、気象データの送信を停止させて校正を行う場合、太陽光パネルの運転に影響を与える。したがって、どのタイミングで気象計を点検するかが課題となる。
【0007】
定期的に点検を行う場合には、気象計が正常に動作している時にも点検することになり、余分な費用がかかる。また、不定期に校正する場合にも、校正時期を検出すための値の評価作業、校正のためのスケジュール立案に、労力がかかる。
【0008】
本発明の実施形態は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、太陽光発電システム用の気象計の校正時期を、自動的に判定することにより、校正のための労力の省力化及び校正コストの削減を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような目的を達成するため、本発明の実施形態は、以下のような技術的特徴を有する。
(1)太陽光発電システムのための複数の気象データを記憶する気象データ記憶部を有する。
(2)前記複数の気象データは、気象計による測定時期及び測定場所の少なくとも一方が相違する気象データを含む。
(3)前記気象データ記憶部に記憶された気象データから、気象条件が近似する測定時期若しくは気象条件が近似する測定場所の気象データを抽出する気象データ抽出部を有する。
(4)前記気象データ抽出部により抽出された気象データを比較する気象データ比較部を有する。
(5)前記気象データ比較部による比較に基づいて、気象データを出力した気象計の異常を判定する異常判定部を有する。
【0010】
なお、他の態様として、上記の各部の機能をコンピュータ又は電子回路により実現する方法及びコンピュータに実行させるプログラムとして捉えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態が適用される気象計保守支援システムの概略構成図
【図2】第1の実施形態の気象計保守支援装置を示す機能ブロック図
【図3】第1の実施形態の処理手順を示すフローチャート
【図4】第2の実施形態の気象計保守支援装置を示す機能ブロック図
【図5】第2の実施形態の処理手順を示すフローチャート
【図6】第3の実施形態の気象計保守支援装置を示す機能ブロック図
【図7】第3の実施形態の処理手順を示すフローチャート
【図8】第4の実施形態の気象計保守支援装置を示す機能ブロック図
【図9】第4の実施形態の処理手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
[A.第1の実施形態]
[1.構成]
[概略]
まず、本実施形態が適用される気象計保守支援システムの一例を、図1を参照して説明する。まず、気象計保守支援システムSは、気象計保守支援装置100に、複数の気象計ME1、気象計ME2、…気象計MEnが、気象データ送信用の信号線W1、W2、…Wnを介して接続されている。これらの気象計ME1〜MEnは、太陽光発電システムの制御のための気象データを測定する装置である。気象計ME1〜MEnとしては、日射計、気温計等、気象データを測定する装置を広く含む。
【0013】
上記のように、一般的には、所定の単位の太陽光パネルが設置された領域当たり、1台の気象計が設置されている。しかし、本実施形態においては、下記に説明する診断処理のために、当該領域に複数の気象計ME1〜MEnが設置されている。複数の気象計ME1〜MEnの設置位置は、距離が離れていても、近接していてもよい。
【0014】
また、気象計保守支援装置100には、通信ネットワークNを介して、発電量計測システムDA1、気象情報提供システムDA2に接続されている。発電量計測システムDA1は、太陽光発電システムの一部を構成し、太陽光パネルの発電量を計測するシステムである。発電量計測システムDA1は、気象計ME1〜MEnによって管理される領域のみならず、複数の地域に設置された太陽光パネルの発電量を計測する。気象情報提供システムDA2は、全国各地の気象データを提供するシステムである。
【0015】
[気象計保守支援装置]
気象計保守支援装置100は、図2に示すように、診断処理部200、記憶部300、入力部400、出力部500を有している。
【0016】
[診断処理部」
診断処理部200は、気象計の異常を診断する処理部である。この診断処理部200は、データ受付部210、抽出部220、比較部230、異常判定部240、表示制御部250を有している。
【0017】
データ受付部210は、診断処理部200の外部からのデータを受け付ける処理部である。このデータ受付部210は、気象データを受け付ける気象データ受付部211、発電量データを受け付ける発電量データ受付部212を有している。
【0018】
気象データ受付部211が受け付ける気象データは、気象計ME1〜MEn、気象情報提供システムDA2から入力される。発電量データ受付部212が受け付ける発電量データは、発電量計測システムDA1から入力される。データ受付部210が受け付けた気象データ、発電量データは、後述する記憶部300における気象データ記憶部310、発電量データ記憶部320が記憶する。
【0019】
抽出部220は、診断処理に必要なデータを、記憶部300から抽出する処理部である。本実施形態の抽出部220は、気象データ記憶部310に記憶された気象データを抽出する気象データ抽出部221を有している。気象データ抽出部221による抽出は、後述する抽出条件記憶部330に記憶された抽出条件に従う。
【0020】
比較部230は、抽出部220が抽出した複数のデータを比較する処理部である。この比較部230は、気象データ抽出部221が抽出した複数の気象データを比較して、差分を求める気象データ比較部231を有している。
【0021】
異常判定部240は、比較部230による比較結果に基づいて、異常な気象計を判定する処理部である。異常判定部240は、多数決判定部241、気象計判定部242を有している。多数決判定部241は、多数決原理に基づいて、複数の気象データの中で、他と著しく相違する気象データを判定する処理部である。
【0022】
なお、正常な気象計からの気象データ同士にも、ある程度の差異がある。そこで、本実施形態の多数決判定部241は、たとえば、気象データ同士の差分に上限と下限のしきい値を設定し、この幅から外れる気象データを異常と判定する。
【0023】
気象計判定部242は、多数決判定部241により判定された気象データに基づいて、当該気象データを測定した気象計を判定する処理部である。
【0024】
表示制御部250は、上記の各部の処理結果を、後述する出力部500に表示させる処理部である。たとえば、気象データ、発電量データ、複数の気象データの比較結果、異常と判定された気象計等を表示させる。
【0025】
記憶部300は、診断処理部200による処理に必要な情報を記憶する処理部である。この記憶部300は、気象データ記憶部310、発電量データ記憶部320、抽出条件記憶部330、設定記憶部340を有している。
【0026】
気象データ記憶部310は、気象データ受付部211が受け付けた気象データを記憶する。気象データには、測定日時を示すタイムスタンプ、測定した気象計を識別する識別情報が付加されている。発電量データ記憶部320は、発電量データ受付部212が受け付けた発電量データを記憶する。発電量データには、測定日時を示すタイムスタンプ、太陽光パネル(若しくはその設置地域)を識別する識別情報が付加されている。
【0027】
抽出条件記憶部330は、抽出部220によるデータの抽出条件を記憶する。本実施形態における抽出条件としては、気象計保守支援装置100が管理する気象計ME1〜MEnからの同時期の気象データとする。比較対象となりうる気象データとしては、気象条件が近似していればよいため、同時期とは、同一日における同一時刻、同一時間帯を含む。なお、「近似」とは、値が近い場合も、値が一致している場合も含まれる。また、多数決判定のためには、抽出される気象データは、少なくとも3つあればよい。
【0028】
設定記憶部340は、演算式、パラメータ、しきい値、診断処理のタイミング等、診断処理部200の処理に必要な各種の設定に関する情報を記憶した記憶部である。これらの情報は、入力部400を用いて、ユーザが入力する。
【0029】
入力部400は、診断処理部200の処理に必要な情報の入力、処理の選択や指示を入力する構成部である。出力部500は、診断処理部200による各種の処理結果等を、作業員が認識可能となるように出力する構成部である。
【0030】
[2.作用]
以上のような本実施形態の作用を、図3のフローチャートを参照して説明する。まず、データ受付部210の気象データ受付部211、発電量データ受付部212は、外部からの気象データ、発電量データを常時受け付ける(ステップ10)。受け付けられた気象データ、発電量データは、気象データ記憶部310、発電量データ記憶部320が記憶する。
【0031】
そして、あらかじめ設定された診断タイミングに、抽出部220における気象データ抽出部221が、気象データ記憶部310から、抽出条件に従って、気象データを抽出する(ステップ11)。本実施形態においては、気象データ抽出部221は、同一領域に設置された気象計ME1〜MEnからの同時期の気象データを抽出する。なお、診断タイミングは、作業員が入力部400を介して診断指示を入力したタイミングであってもよい。
【0032】
比較部230における気象データ比較部231は、抽出された複数の気象データを比較する(ステップ12)。異常判定部240における多数決判定部241は、多数決原理に基づいて、比較された複数の気象データの中で、他と著しく相違する気象データを判定する(ステップ13)。
【0033】
他と著しく相違する気象データが存在する場合(ステップ14のYES)、気象計判定部242は、当該気象データに付加された識別情報に基づいて、当該気象データを測定した気象計を異常(校正が必要)と判定する(ステップ15)。表示制御部250は、診断結果を出力部500に出力する(ステップ16)。たとえば、異常と判定された気象計について、他と区別できる表示を出力部500に表示させる。他と著しく相違する気象データが存在しない場合(ステップ14のNO)、校正が不要として診断処理を終了する。
【0034】
[3.効果]
以上のような本実施形態によれば、太陽光発電システム用に設置した気象計について、作業員が自ら移動して点検する手間がかからず、所望のタイミングで自動的に異常を判定できる。このため、気象計の校正時期の評価等の労力の省力化及び校正コストの削減ができ、効率的な気象計の保守が実現できる。さらに、気象データの測定値によって異常を判定できるので、電源を持たず、自己校正ができない気象計にも適用できる。
【0035】
[B.第2の実施形態]
[1.構成]
本実施形態の構成を、図4のブロック図を参照して説明する。本実施形態は、基本的には、第1の実施形態と同様の構成を有している。ただし、本実施形態における診断は、1つの気象計及びその気象計からの測定時期の異なる気象データを対象とする。本実施形態の特徴的な構成は、以下の通りである。
【0036】
まず、抽出部220は、発電量データ記憶部320に記憶された発電量データを抽出する発電量データ抽出部222を有している。発電量データ抽出部222による抽出は、抽出条件記憶部330に記憶された抽出条件に従う。この抽出条件としては、たとえば、診断日時における発電量データ、過去の各年において、診断日時に相当する日の前後の数日間における発電量データ(以下、過去の発電量データ)とする。なお、比較される発電量データは、同じ単位時間で測定された発電量を用いるものとする。
【0037】
また、診断処理部200は、近似データ判定部260を有している。この近似データ判定部260は、診断日時の気象条件に近似した気象条件の過去の日時を判定する処理部である。この近似データ判定部260による判定は、発電量データ抽出部222により抽出された診断日時の発電量データと、過去の発電量データとを比較して、近似する過去の日時を判定する。近似するか否かは、発電量データの差分が、所定のしきい値内にあるか否かで求める。「近似」とは、値が近い場合も、一致する場合も含まれる。
【0038】
また、気象データ抽出部221の抽出条件は、診断時の気象データと、近似データ判定部260により判定された過去の日時の気象データである。抽出された気象データは、気象データ比較部231による比較対象となる。異常判定部240は、データ判定部243を有している。データ判定部243は、気象データ比較部231により比較して求めた差分が、所定のしきい値よりも小さいか否かを判定する処理部である。
【0039】
さらに、診断処理部200は、太陽光発電システム及び気象計保守支援システムSにおける気象計以外の設備の故障を診断する故障診断部270を有している。この故障診断部270は、モジュール診断部271、集電システム診断部272、変換システム診断部273、補正部274を有している。
【0040】
モジュール診断部271は、太陽光パネルにおける太陽電池モジュールの故障を診断する処理部である。集電システム診断部272は、電力の需給用の集電システムの故障を診断する処理部である。変換システム診断部273は、装置間でのデータの送受信等によるデータ変換の故障を診断する処理部である。補正部274は、上記の診断部271、272、273による診断結果に基づいて、気象データについて、故障分の補正を行う処理部である。これらの診断方法等は、周知の技術を用いることができるため、説明を省略する。
【0041】
[2.作用]
以上のような本実施形態の作用を、図5のフローチャートを参照して説明する。すなわち、気象データ及び発電量データの受付・記憶については、上記と同様である(ステップ20)。
【0042】
次に、発電量データ抽出部222は、診断日時の発電量データ、過去の発電量データを抽出する(ステップ21)。近似データ判定部260は、抽出された発電量データに基づいて、診断日時の気象条件に近似した気象条件の過去の日時を判定する(ステップ22)。気象データ抽出部221は、診断日時の気象データ、近似データ判定部260により判定された過去の日時の気象データを抽出する(ステップ23)。
【0043】
気象データ比較部231は、抽出された気象データを比較して、差分を求める(ステップ24)。データ判定部243は、当該差分が、所定のしきい値よりも小さいか否かを判定する(ステップ25)。
【0044】
たとえば、気象データ比較部231及びデータ判定部243は、次のような演算式による判定を行う。
|Ra−Rb|<α
Ra:診断日時における気象データ
Rb:過去の気象データ
α:しきい値
【0045】
また、近似データ判定部260が過去の日時を2つ以上判定し、これに対応して、気象データ抽出部221が過去の気象データを2つ以上抽出することにより、上記の演算式を複数立てることができる。これにより、データ判定部243は、複数の式による判定結果に基づいて、正確に評価することが可能となる。
【0046】
複数の式の場合、たとえば、以下のような場合に異常判定とすることが考えられる。
(1) いずれか一つの式がしきい値以上の場合
(2) 全ての式がしきい値以上の場合
(3) 所定数以上の式がしきい値以上の場合
(4) 多数決によりしきい値以上が多数である場合
【0047】
データ判定部243が、所定のしきい値よりも小さいと判定した場合(ステップ26のNO)、気象計に異常はない(校正は不要)として、診断を終了する。
【0048】
データ判定部243が、所定のしきい値以上と判定した場合(ステップ26のYES)、故障診断部270による故障診断済みでなければ(ステップ27のNO)、故障診断を行う。すなわち、モジュール診断部271が、モジュール故障の有無を診断する(ステップ28)。集電システム診断部272が集電システム故障の有無を診断する(ステップ29)。変換システム診断部273が、データ変換システム故障の有無を診断する(ステップ30)。
【0049】
診断の結果、故障があった場合(ステップ31のYES)、補正部254が、気象データについて、故障システム分の補正を行う(ステップ32)。その後、気象データ比較部231が、再度気象データを比較してステップ24以降の処理を行う。
【0050】
故障が無かった場合(ステップ31のNO)、若しくは故障診断済みの場合(ステップ27のYES)、気象計判定部242は、当該気象データを測定した気象計を異常(校正が必要)であると判定する(ステップ33)。表示制御部250は、診断結果を出力部500に出力する(ステップ34)。たとえば、異常と判定された気象計について、他と区別できる表示を出力部500に表示させる。
【0051】
[3.効果]
以上のような本実施形態によれば、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、診断時における気象データと、気象条件が近似している過去の気象データとの比較により、一つの気象計からの気象データによって、異常を判定することができる。このため、多数の気象計を設置する必要がなくなり、設置コストを節約できる。また、故障システム分の補正を行うので、より正確な判定を行うことができる。
【0052】
[C.第3の実施形態]
[1.構成]
本実施形態の構成を、図6のブロック図を参照して説明する。本実施形態は、基本的には、第2の実施形態と同様の構成を有している。ただし、本実施形態の診断処理部200は、気象データ推定部280を有している。この気象データ推定部280は、発電量データ抽出部222が抽出した診断日時の発電量データに基づいて、気象データを推定する処理部である。推定された気象データは、気象データ記憶部310が記憶する。
【0053】
この「推定」には、一般的な演算式、メーカー固有の演算式等、現在又は将来において利用可能なあらゆる演算式により、発電量データから気象データを算出する処理が含まれる。また、「推定」には、あらかじめ作成された発電量データと気象データとの対照表に基づいて、対応する気象データを選択する処理も含まれる。
【0054】
本実施形態の発電量データ抽出部222の抽出条件は、診断日時の発電量データである。また、気象データ抽出部221の抽出条件は、診断日時の気象データ及び気象データ推定部280により推定された気象データである。
【0055】
[2.作用]
以上のような本実施形態の作用を、図7のフローチャートを参照して説明する。すなわち、気象データ及び発電量データの受付・記憶については、上記と同様である(ステップ40)。
【0056】
次に、発電量データ抽出部222は、診断日時の発電量データを抽出する(ステップ41)。気象データ推定部280は、抽出された発電量データに基づいて、気象データを推定する(ステップ42)。推定された気象データは、気象データ記憶部310が記憶する。気象データ抽出部221は、診断日時の気象データ、気象データ推定部280により推定された気象データを抽出する(ステップ43)。
【0057】
気象データ比較部231は、抽出された気象データを比較して、差分を求める(ステップ44)。データ判定部243は、当該差分が、所定のしきい値よりも小さいか否かを判定する(ステップ45)。
【0058】
たとえば、気象データ比較部231及びデータ判定部243は、次のような演算式による判定を行う。
|Ra−Rb|<β
Ra:診断日時における気象データ
Rt:推定された気象データ
β:しきい値
【0059】
以降の処理は、上記の第2の実施形態と同様である(ステップ46〜54)。
【0060】
[3.効果]
以上のような本実施形態によれば、上記の第2の実施形態と同様の効果が得られる。また、診断日時の気象データと比較するデータとして、診断日時の発電量データを用いて推定された気象データを用いるので、気象条件が一致することになり、正確な判定が可能となる。さらに、診断日時における発電量データに基づいて気象データを推定するので、処理が簡略となる。
【0061】
[D.第4の実施形態]
[1.構成]
本実施形態の構成を、図8のブロック図を参照して説明する。本実施形態は、基本的には、第2の実施形態と同様の構成を有している。ただし、本実施形態においては、発電量データ受付部212は、他地域に設置された太陽光パネルの発電量データも受け付けて、これを発電量データ記憶部320が記憶する。他地域の発電量データは、発電量計測システムDA1から得ることができる。この他地域は、診断処理部200が診断対象とする気象計の設置地域と、気象条件が近似する地域(たとえば、隣接する地域)とする。
【0062】
気象データ受付部211は、上記の他地域の気象データも受け付けて、これを気象データ記憶部310が記憶する。他地域の気象データは、気象情報提供システムDA2から得ることができる。
【0063】
気象データ抽出部221の抽出条件、発電量データ抽出部222の抽出条件は、診断日時の気象データ、診断日時の発電量データの他、上記の他地域の気象データ、他地域の発電量データも含まれるように設定されている。
【0064】
また、本実施形態は、データ補正部290を有している。データ補正部290は、気象データ補正部291、発電量データ補正部292を有している。気象データ補正部291は、他地域の気象計と診断対象とする気象計との設置角度、方角等の違いに基づいて、他地域の気象データを補正する処理部である。
【0065】
発電量データ補正部292は、他地域の太陽光パネルと診断対象とする気象計の設置地域の太陽光パネルとの設置角度、方角等の違いに基づいて、他地域の発電量データを補正する処理部である。気象データ補正部291、発電量データ補正部292による補正は、一般的な演算式、メーカー固有の演算式等、現在又は将来において利用可能なあらゆる演算式による補正処理が含まれる。
【0066】
さらに、本実施形態の比較部230は、発電量抽出部221により抽出された発電量データを比較する発電量データ比較部232を有している。
【0067】
[2.作用]
以上のような本実施形態の作用を、図9のフローチャートを参照して説明する。すなわち、気象データ及び発電量データの受付・記憶については、上記と同様である(ステップ60)。
【0068】
次に、発電量データ抽出部222は、診断日時の発電量データを抽出する(ステップ61)。また、発電量データ受付部212は、発電量計測システムDA1からの複数の他地域の発電量データを受け付ける(ステップ62)。受け付けられた発電量データは、発電量データ記憶部320が記憶する。なお、他地域の発電量データは、診断日時の発電量データと、同日時、同単位(たとえば、太陽光パネルの単位面積が同じ、発電量が同じ単位面積等)とする。
【0069】
発電量データ抽出部222は、記憶されたいずれかの他地域の発電量データを抽出する(ステップ63)。発電量データ補正部292は、他地域の発電量データを補正する(ステップ64)。発電量データ比較部232は、診断日時の発電量データと、補正した他地域の発電量データとを比較して、差分を求める(ステップ65)。
【0070】
データ判定部243は、当該差分が、所定のしきい値よりも小さいか否かを判定する(ステップ66)。
【0071】
たとえば、発電量データ比較部232及びデータ判定部243は、次のような演算式による判定を行う。
|Pa−Pb|<γ
Pa:診断日時における発電量データ
Pb:他地域の発電量データ
γ:しきい値
【0072】
データ判定部243が、所定のしきい値以上と判定した場合(ステップ67のYES)、選択された他地域は、気象条件が異なる地域であるため、当該他地域の気象データは、気象計の異常判断には適さない。このため、発電量データ抽出部222は、別の他地域の発電量データを、発電量データ記憶部320から抽出する(ステップ63)。そして、上記のステップ64〜67の処理を行う。
【0073】
データ判定部243が、所定のしきい値より小さいと判定した場合(ステップ67のNO)、選択された他地域は、気象条件が同等であるため、当該他地域の気象データは、気象計の異常判断に適するものといえる。そこで、気象データ受付部211は、気象情報提供システムDA2から、当該他地域の気象データを受け付ける(ステップ68)。受け付けられた気象データは、気象データ記憶部310が記憶する。なお、他地域の気象データは、診断日時の気象データと、同日時とする。
【0074】
気象データ抽出部221は、診断日時の気象データ、他地域の気象データを抽出する(ステップ69)。気象データ補正部291は、他地域の気象データを補正する(ステップ70)。気象データ比較部231は、診断日時の気象データと、補正した他地域の気象データとを比較して、差分を求める(ステップ71)。
【0075】
データ判定部243は、当該差分が、所定のしきい値よりも小さいか否かを判定する(ステップ72)。
【0076】
たとえば、気象データ比較部231及びデータ判定部243は、次のような演算式による判定を行う。
|Ra−Rc|<ε
Ra:診断日時における気象データ
Rc:他地域の気象データ
ε:しきい値
【0077】
データ判定部243が、所定のしきい値よりも小さいと判定した場合(ステップ73のNO)、気象計に異常はない(校正は不要)として、診断を終了する。
【0078】
データ判定部243は、データ判定部243が、所定のしきい値以上と判定した場合(ステップ73のYES)、故障診断部270による故障診断済みでなければ(ステップ74のNO)、故障診断を行う。
【0079】
すなわち、モジュール診断部271が、モジュール故障の有無を診断する(ステップ75)。集電システム診断部272が集電システム故障の有無を診断する(ステップ76)。変換システム診断部273が、データ変換システム故障の有無を診断する(ステップ77)。
【0080】
診断の結果、故障があった場合(ステップ78のYES)、補正部254が、気象データについて、故障システム分の補正を行う(ステップ79)。その後、気象データ比較部231が、再度気象データを比較してステップ24以降の処理を行う。
【0081】
故障が無かった場合(ステップ78のNO)、若しくは故障診断済みの場合(ステップ74のYES)、気象計判定部242は、当該気象データを測定した気象計を異常である(校正が必要)と判定する(ステップ80)。表示制御部250は、診断結果を出力部500に出力する(ステップ81)。たとえば、異常と判定された気象計について、他と区別できる表示を出力部500に表示させる。
【0082】
[3.効果]
以上のような本実施形態によれば、上記の第2の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、診断日時の発電量データ及び気象データと、通信ネットワークNを介して入手する他地域の発電量データ及び気象データとの比較に基づいて、異常を判定するので、処理が簡略となる。特に、単に他地域の気象データを用いるのではなく、あらかじめ気象条件が同等と判定された他地域を選択するので、判定が正確となる。なお、診断対象とする気象計の設置地域との距離が非常に近い等の理由により、気象条件が一致する蓋然性が高い他地域を設定記憶部340に設定しておき、当該他地域の気象データを用いることも可能である。これにより、他地域を判定する処理(ステップ61〜67)を省略して、さらに処理を簡略化することができる。
【0083】
[E.他の実施形態]
本実施形態は、上記のような態様には限定されない。
(1)気象計保守支援装置100の全部若しくは一部は、コンピュータを所定のプログラムで制御することによって実現できる。この場合のプログラムは、コンピュータのハードウェアを物理的に活用することで、上記のような各部の処理を実現するものである。
【0084】
上記の各部の処理を実行する方法、プログラム及びプログラムを記録した記録媒体も、実施形態の一態様である。
【0085】
また、ハードウェアで処理する範囲、プログラムを含むソフトウェアで処理する範囲をどのように設定するかは、特定の態様には限定されない。たとえば、上記の各部のいずれかを、それぞれの処理を実現する回路として構成することも可能である。
【0086】
さらに、気象計保守支援装置100を構成する各部は、共通のコンピュータにおいて実現してもよいし、通信ネットワークで接続された複数のコンピュータによって実現してもよい。
【0087】
(2)記憶部300としては、メモリ、ハードディスク、光ディスク等、現在もしくは将来において利用可能なあらゆる記憶媒体を使用できる。すでに情報が記憶された記憶媒体を、読み取り装置に装着することにより、記憶内容を各種の処理に利用可能となる態様でもよい。
【0088】
さらに、記憶部300には、一時的な記憶領域として使用されるレジスタ、メモリ等も含まれる。したがって、上記の各部の処理のために一時的に記憶される記憶領域であっても、記憶部300として捉えることができる。キュー、スタック等も、記憶部300を利用して実現可能である。
【0089】
(3)入力部400としては、キーボード、マウス、タッチパネル(表示装置に構成されたものを含む)、スイッチ等、現在又は将来において利用可能なあらゆる入力装置を含む。また、入力部400は、操作用の端末として構成されたもの、操作盤に構成されたものも含まれる。
【0090】
(4)出力部500としては、表示装置、プリンタ、メータ、ランプ、スピーカ、ブザー等、現在又は将来において利用可能なあらゆる入力装置を含む。表示装置に、対比される気象データ、発電量データが、グラフや表の形式で対比表示されるようにしてもよい。表示装置に、異常と判定された気象計を、色、字体、大きさ等により区別表示するようにしてもよい。また、出力部500は、表示用の端末として構成されたもの、操作盤に構成されたものも含まれる。操作盤に気象計に対応するランプが配設され、異常と判定された気象計のランプが点灯、消灯、点滅する構成でもよい。スピーカ、ブザーにより気象計の異常の発生を報知する構成でもよい。
【0091】
(5)実施形態に用いられる情報の具体的な内容、値は自由であり、特定の内容、数値には限定されない。実施形態において、しきい値に対する大小判断、一致不一致の判断等において、以上、以下として値を含めるように判断するか、より大きい、上回る、より小さい、下回るとして値を含めないように判断するかも自由である。
【0092】
(6)本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0093】
100…気象計保守支援装置
200…診断処理部
210…データ受付部
211…気象データ受付部
220…抽出部
221…気象データ抽出部
230…比較部
231…気象データ比較部
232…発電量データ比較部
240…異常判定部
241…多数決判定部
242…気象計判定部
243…データ判定部
260…近似データ判定部
270…故障診断部
271…モジュール診断部
272…集電システム診断部
273…変換システム診断部
274…補正部
290…データ補正部
291…気象データ補正部
292…発電量データ補正部
300…記憶部
310…気象データ記憶部
320…発電量データ記憶部
330…抽出条件記憶部
400…入力部
500…出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電システムのための複数の気象データを記憶する気象データ記憶部と、
前記気象データ記憶部に記憶された気象データから、気象条件が近似する測定時期若しくは気象条件が近似する測定場所の気象データを抽出する気象データ抽出部と、
前記気象データ抽出部により抽出された気象データを比較する気象データ比較部と、
前記気象データ比較部による比較に基づいて、気象データを出力した気象計の異常を判定する異常判定部と、
を有することを特徴とする太陽光発電システムの気象計保守支援装置。
【請求項2】
前記気象データ抽出部により抽出される気象データは3以上であり、
前記異常判定部は、多数決により、異常な気象計を判定する多数決判定部を有することを特徴とする請求項1記載の太陽光発電システムの気象計保守支援装置。
【請求項3】
前記複数の気象データに対応する太陽光発電システムの発電量データを記憶する発電量データ記憶部と、
診断日時の発電量データと過去の日時の発電量データとに基づいて、診断日時と気象条件が近似する日時を判定する近似データ判定部と、
を有し、
前記気象データ抽出部により抽出される気象データは、前記診断日時の気象データと、前記近似データ判定部により近似すると判定された過去の日時の気象データであることを特徴とする請求項1記載の太陽光発電システムの気象計保守支援装置。
【請求項4】
前記複数の気象データに対応する太陽光発電システムの発電量データを記憶する発電量データ記憶部と、
診断日時の発電量データに基づいて、気象データを推定する気象データ推定部と、
を有し、
前記気象データ記憶部に記憶される気象データには、前記気象データ推定部により推定された気象データを含み、
前記気象データ抽出部により抽出される気象データは、前記所定日の気象データと、前記気象データ推定部により推定された気象データであることを特徴とする請求項1記載の太陽光発電システムの気象計保守支援装置。
【請求項5】
前記気象データ抽出部により抽出される気象データは、異なる地域に設置された気象計からの気象データであり、
前記気象データを、気象計の設置状態に応じて補正する補正部を有することを特徴とする請求項1記載の太陽光発電システムの気象計保守支援装置。
【請求項6】
前記異常判定部による異常判定のために、太陽光発電システム若しくは気象計保守支援装置における気象計以外の設備の故障を診断する故障診断部を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の太陽光発電システムの気象計保守支援装置。
【請求項7】
コンピュータ又は電子回路が、
太陽光発電システムのための複数の気象データを記憶する気象データ記憶処理と、
前記気象データ記憶処理により記憶された気象データから、気象条件が近似する測定時期若しくは気象条件が近似する測定場所の気象データを抽出する気象データ抽出処理と、
前記気象データ抽出処理により抽出された気象データを比較する気象データ比較処理と、
前記気象データ比較処理による比較に基づいて、気象データを出力した気象計の異常を判定する異常判定処理と、
を実行することを特徴とする太陽光発電システムの気象計保守支援方法。
【請求項8】
コンピュータに、
太陽光発電システムのための複数の気象データを記憶する気象データ記憶処理と、
前記気象データ記憶処理により記憶された気象データから、気象条件が近似する測定時期若しくは気象条件が近似する測定場所の気象データを抽出する気象データ抽出処理と、
前記気象データ抽出処理により抽出された気象データを比較する気象データ比較処理と、
前記気象データ比較処理による比較に基づいて、気象データを出力した気象計の異常を判定する異常判定処理と、
を実行させることを特徴とする太陽光発電システムの気象計保守支援プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−109533(P2013−109533A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253315(P2011−253315)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】