説明

太陽光発電用パワーコンディショナ

【課題】太陽光発電用パワーコンディショナにおいて、接続される複数の太陽電池ストリングのいずれの動作点も最大電力点に高精度に追従させる。
【解決手段】太陽電池ストリング21A〜21Cがそれぞれ接続された昇圧チョッパ回路30A〜30Cは、その電圧変換率がそれぞれ最大電力点追従制御回路34A〜34Cにより制御され、太陽電池ストリング21A〜21Cの動作点は夫々の最大電力点に追従する。最大電力点追従制御回路34A〜34Cはそれぞれ、いずれの最大電力点追従制御回路も動作点追従処理を行っていないとき、太陽電池ストリング21A〜21Cの動作点を求めるのに必要なそれらの出力電圧及び出力電流を計測する。それにより、各計測値に、計測中ではない他の最大電力点追従制御回路の動作点追従処理に起因する誤差が含まれなくなる。従って、その計測値を基に太陽電池ストリング21A〜21Cのいずれの動作点も正確に求められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池から電力系統又は負荷に供給される電力を調整するための太陽光発電用パワーコンディショナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の太陽光発電用パワーコンディショナ(以下、単にパワーコンディショナという)の構成を図5に示す。そのパワーコンディショナ50には、一群の太陽電池パネルの直列接続体(以下、「太陽電池ストリング」と称する)51A、51B、51C…(以下、太陽電池ストリング51A等という)が並列に接続される。パワーコンディショナ50は、太陽電池ストリング51A等から出力される直流電力について、それぞれ、所定値に昇圧する昇圧チョッパ回路52A、52B、52C…(以下、昇圧チョッパ回路52A等という)を備える。さらに、パワーコンディショナ50は、それら昇圧された直流電力を交流電力に変換するインバータ回路53を備える。
【0003】
昇圧チョッパ回路52A等は、出力端が互いに並列に接続され、同電位とされている。インバータ回路53は、連系運転時用の出力端子53a及び自立運転時用の出力端子53bを有する。出力端子53aは、分電盤54に接続され、分電盤54は、連系運転時に負荷56が接続されるコンセントと、電力系統55に繋がっている。出力端子53bは、自立運転時に負荷56が接続されるコンセントに繋がっている。ユーザは必要に応じて負荷56を接続する対象のコンセントを変更することができる。インバータ回路53は、電力系統55が正常なとき、電力系統55と連系し、出力端子53aから、売電用メータ(図示せず)を介して交流電力を電力系統55に逆潮流すると共に、交流電力を負荷56に供給する。また、インバータ回路53は、電力系統55が停電等により異常な状態にあるとき、電力系統55から独立して自立運転し、出力端子53bから交流電力を負荷56にのみ供給する(破線で示す)。
【0004】
図6に示すように、個々の太陽電池パネルでは、出力電圧の増減に応じて出力電力が変化する。出力電力には供給可能な最大限度があり、出力電力は、その最大限度の電力が得られる電圧(最適動作電圧)よりも低ければ、出力電圧の増加に伴って増加する。一方、出力電圧が最適動作電圧以上であれば、出力電力は、出力電圧の増加に伴って減少する。このような出力特性は日照量等に依存して変化する。例えば、供給可能な最大電力が日照量が多いときにはPmaxであっても、日照量が少ないときにはPmax’(Pmax>Pmax’)に減少する。しかも、最適動作電圧も、VmaxからVmax’(Vmax>Vmax’)へと低下することがある。従って、太陽電池ストリング51A等の各々の日照条件が異なる場合、太陽電池ストリング51A等の各々から、供給可能な最大電力を逐次引き出すためには、それらの出力電圧を個別調整して、それらの動作点を、最大電力を供給可能な点に追従させる必要がある。特許文献1では、そのような最大電力点追従制御を各昇圧チョッパ回路が各太陽電池ストリングに対して個別に行っている。最大電力点追従制御を行うことにより、たとえ日照条件が変化したとしても、各太陽電池ストリングに、常に最適な動作をさせて、それらから高効率に電力を引き出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−39634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記図5に示す太陽光発電システムにおいて、太陽電池ストリング51Aの出力電圧Vが最大電力点追従制御により変化し、その出力電力が増加したとする。その場合、その出力電力の増加に伴って、昇圧チョッパ回路52Aの出力電圧、すなわち、インバータ回路53の入力端の電圧Vinが高くなろうとする。
【0007】
電圧Vinは一定になるように制御されているが、その制御が追い付かず、僅かな期間だけ、電圧Vinが上昇した場合、電圧Vinを基に決まる昇圧チョッパ回路51B、51Cの入力端の電圧は高くなる。それら入力端の電圧は、それぞれ、太陽電池ストリング51B、51Cの出力電圧V、Vと等しいことから、電圧Vinの上昇により出力電圧V、Vが変化し、それに伴って、太陽電池ストリング51B、51Cの出力電流が変動する。
【0008】
ここで、その変動の際、太陽電池ストリング51B、51Cについて、最大電力点追従制御がなされており、現在の動作点を求めるために、出力電圧V、Vを計りながら、それらを変化させて出力電流を計測し、出力電力を測定していたとする。その場合、それら出力電圧V、V及び出力電流の各計測値には、太陽電池ストリング51Aの出力変動に起因する変化分が誤差として含まれることになり、太陽電池ストリング51B、51Cの各々の出力電力を正確に測定することができなくなってしまう。そのため、太陽電池ストリング51B、51Cの現在の動作点を正確に求めることが困難になる。その結果、それらの動作点を最大電力点に高精度に近づけることが難しくなり、最大電力点追従精度が低くなり、太陽電池ストリング51B、51Cから引き出される電力がそれらの供給可能な最大電力を下回ってしまう、という問題が生じ得る。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためのものであり、複数の太陽電池パネルが接続される太陽光発電用パワーコンディショナにおいて、いずれの太陽電池パネルについても動作点を最大電力点に高精度に追従させることができるものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の太陽光発電用パワーコンディショナは、複数の太陽電池パネルにそれぞれ接続され、該太陽電池パネルからの出力電圧を所定の電圧に変換する複数の電圧変換回路と、前記複数の電圧変換回路から出力される直流電力を交流電力に変換する直流交流変換回路を備えた太陽光発電用パワーコンディショナにおいて、前記複数の電圧変換回路にそれぞれ接続され、該電圧変換回路の電圧変換率を制御することにより、該電圧変換回路に接続された前記太陽電池パネルの動作点を最大電力点に追従させる複数の最大電力点追従制御回路を備え、前記複数の最大電力点追従制御回路は、それぞれ、いずれの最大電力点追従制御回路も動作点追従処理を行っていないときに、前記太陽電池パネルの現在の動作点を求めるのに必要な該太陽電池パネルの出力電圧又は出力電流を計測することを特徴とする。
【0011】
この発明において、前記複数の最大電力点追従制御回路は、動作点追従処理の実行を指示する追従指示信号と、前記太陽電池パネルの出力電圧又は出力電流の計測を指示する計測指示信号を送信する信号送信回路をさらに備え、前記複数の最大電力点追従制御回路は、それぞれ、前記信号送信回路から送信された追従指示信号に基づいて動作点追従処理を実行し、その動作点追従処理が完了した後、その完了を通知するための完了通知信号を前記信号送信回路に送信し、前信号送信回路は、前記複数の最大電力点追従制御回路の全てから前記完了通知信号を受信した後、それらの最大電力点追従制御回路に、次の動作点追従処理の基になる前記出力電圧又は出力電流の計測を指示する前記計測指示信号を送信することが好ましい。
【0012】
この発明において、前記信号送信回路は、前記複数の最大電力点追従制御回路の中から、前記追従指示信号を送信する対象の最大電力点追従制御回路を選択できる構成であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、太陽電池パネルのいずれかに対して動作点追従処理が実行されているときには、各太陽電池パネルの現在の動作点を求めるのに必要な出力電圧又は出力電流の計測を行わないので、その動作点追従処理に起因する誤差が計測値に含まれなくなる。従って、各太陽電池パネルの計測値の正確さを向上することができ、それらの計測値を基に、各太陽電池パネルのいずれについても、現在の動作点をより正確に求めることができる。その結果、それらの動作点を最大電力点に高精度に近づけることができ、最大電力点追従制御を高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る太陽光発電用パワーコンディショナを備えた太陽光発電システムの電気的ブロック図。
【図2】上記太陽光発電用パワーコンディショナに接続される3つ太陽電池ストリングの出力電圧制御例を示すタイムチャート。
【図3】上記実施形態の一変形例における太陽電池ストリングの動作点追従処理のシーケンス図。
【図4】上記とは別の変形例における太陽電池ストリングの動作点追従処理のシーケンス図。
【図5】従来の太陽光発電システムの電気的ブロック図。
【図6】一般的な太陽電池パネルの出力特性図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係る太陽光発電用パワーコンディショナ(以下、単にパワーコンディショナという)を備えた太陽光発電システムについて図1乃至図4を参照して説明する。図1は、その太陽光発電システムの構成を示す。太陽光発電システム1は、複数の太陽電池パネル2の直列接続体によりそれぞれ構成された複数の太陽電池ストリング21A、21B、21Cと、太陽電池ストリング21A〜21Cが接続されるパワーコンディショナ3を備える。また、太陽光発電システム1は、パワーコンディショナ3を電力系統4及び負荷5に電気的に繋ぐための分電盤6を備える。
【0016】
パワーコンディショナ3は、太陽電池ストリング21A〜21Cから出力される電力を、分電盤6を介して、電力系統4及び負荷5に供給し、その供給に際して、電力を電力系統4及び負荷5への供給に適するように調整するものである。電力系統4は、交流で実効電圧が例えば200Vの電力を供給する商用の電力系統である。負荷5は、家電機器等の電気機器である。
【0017】
パワーコンディショナ3は、太陽電池ストリング21A〜21Cにそれぞれ入力端が接続され、出力端が互いに並列接続され同電位とされた昇圧チョッパ回路30A〜30C(電圧変換回路)を有する。また、パワーコンディショナ3は、昇圧チョッパ回路30A〜30Cから出力される直流電力を交流電力に変換するインバータ回路31(直流交流変換回路)を有する。
【0018】
昇圧チョッパ回路30A〜30Cは、太陽電池ストリング21A〜21Cからの出力電圧V〜Vを所定の電圧に変換してインバータ回路31に入力する。
【0019】
インバータ回路31は、連系運転時に電力を出力する出力端子31aと、自立運転時に電力を出力する出力端子31bを有する。出力端子31aは、分電盤6を介して、連系運転時に負荷5が接続されるコンセント(不図示)と繋がっており、そのコンセントは、電力系統4に並列接続されている。出力端子31bは、自立運転時に負荷5が接続されるコンセント(不図示)と繋がっている。ユーザは必要に応じて負荷5を接続する対象のコンセントを変更することができる。
【0020】
電力系統4が正常であるとき、パワーコンディショナ3は、電力系統4と連系した連系運転状態になる。そのとき、インバータ回路31は、交流電力を出力端子53aから電力系統4と負荷5に出力する。電力系統4と負荷5とは互いに電気的に並列であることから、太陽電池ストリング21A〜21Cの発電量が増え、インバータ回路31からの出力電力が負荷5の消費電力よりも多くなると、余剰分が電力系統4に自動的に供給される。一方、太陽電池ストリング21A〜21Cの発電量が減って、インバータ回路31からの出力電力が負荷5の消費電力よりも少なくなれば、不足分が電力系統4から負荷5に自動的に供給される。
【0021】
電力系統4が障害等により停電したとき、パワーコンディショナ3は、電力系統4との連系を解除し、電力系統4から独立した自立運転状態になる。そのとき、インバータ回路31は、交流電力を出力端子31bから負荷5に出力し、負荷5は、出力端子31bから電力供給を受ける(破線で示す)。
【0022】
インバータ回路31の入力端の電圧は、電力系統4の定格電圧(実効値)以上である特定の値に設定され、略一定に維持されている。その電圧の一定化は、連係運転時には、インバータ回路31から電力系統4又は負荷5に流れる電流を調整することにより実現される。自立運転時に上記電圧の一定化を図る構成については後述する。インバータ回路31の入力端の電圧は、昇圧チョッパ回路30A〜30Cの出力端の電圧に等しいことから、その電圧も略一定にされている。
【0023】
また、パワーコンディショナ3は、太陽電池ストリング21A〜21Cの出力をそれぞれ検出する出力検出回路32A〜32Cと、出力検出回路32A〜32Cによる検出結果を基に昇圧チョッパ回路30A〜30Cをそれぞれ制御する制御回路33を備える。
【0024】
出力検出回路32A〜32Cは、太陽電池ストリング21A〜21Cと昇圧チョッパ回路30A〜30Cとの間に配置されている。出力検出回路32A〜32Cは、それぞれ、電圧計測回路を有し、その電圧計測回路により太陽電池ストリング21A〜21Cの出力電圧V〜Vを計測する。また、出力検出回路32A〜32Cは、それぞれ、電流計測回路を有し、その電流計測回路により太陽電池ストリング21A〜21Cの出力電流を計測する。
【0025】
制御回路33は、昇圧チョッパ回路30A〜30Cにそれぞれ接続された最大電力点追従制御回路(以下、単に追従制御回路という)34A、34B、34Cを有する。また、制御回路33は、追従制御回路34A〜34Cの動作を同期させるための同期制御回路35(信号送信回路)を有する。制御回路33は、マイクロプロセッサ等により構成できる。
【0026】
追従制御回路34Aは、出力検出回路32Aによる検出結果を基に、昇圧チョッパ回路30Aの電圧変換率を制御し、それにより、昇圧チョッパ回路32Aに接続された太陽電池パネル21Aの動作点を最大電力点に追従させる。それと同様に、追従制御回路34B、34Cは、それぞれ、出力検出回路32B、32Cによる検出結果を基に、昇圧チョッパ回路30B、30Cの電圧変換率を制御する。それらの制御により、追従制御回路34B、34Cは、それぞれ、昇圧チョッパ回路32B、32Cに接続された太陽電池パネル21B、21Cの動作点を最大電力点に追従させる。
【0027】
上記電圧変換率の制御により、太陽電池パネル21A〜21Cの動作点が制御される仕組みについて説明する。上記電圧変換率は、各昇圧チョッパ回路30A〜30Cにおいて、出力電圧を入力電圧で除した値である。各昇圧チョッパ回路30A〜30Cのチョッパ動作のデューティ比(通流率)をαとしたとき、上記電圧変換率は1/(1−α)で表され、従って、デューティ比αを調整することにより電圧変換率を制御できる。デューティ比αを高くすれば、電圧変換率は高くなり、デューティ比αを低くすれば、電圧変換効率は低くなる。上述したように、各昇圧チョッパ回路30A〜30Cにおいては、出力電圧が略一定であることから、電圧変換率を高くすれば、入力端の電圧は低くなり、電圧変換率を低くすれば、入力端の電圧は高くなる。このように、電圧変換率の制御により、各昇圧チョッパ回路30A〜30Cの入力端の電圧、すなわち、各太陽電池ストリング21A〜21Cの出力電圧V〜Vが制御される。そして、出力電圧V〜Vを、それぞれ、太陽電池ストリング21A〜21Cで供給可能な最大電力が得られる最適動作電圧と一致させることにより、太陽電池ストリング21A〜21Cの出力電力がそれぞれ供給可能な最大電力になる。その結果、太陽電池ストリング21A〜21Cの動作点が、それぞれの最大電力点と一致する。
【0028】
追従制御回路34A〜34Cは、それぞれ、いずれの追従制御回路も動作点追従処理を行っていないときに、太陽電池ストリング21A〜21Cの現在の動作点を求めるのに必要な太陽電池パネル21A〜21Cの出力電圧及び出力電流を計測する。その計測は、出力検出回路32A〜32Cを用いて行われる。
【0029】
同期制御回路35は、追従制御回路34A〜34Cに、動作点追従処理の実行を指示する追従指示信号を送信する。
【0030】
次に、太陽電池ストリング21A〜21Cの動作点追従処理について、図1に加え、図2を参照して説明する。図2は、同期制御回路35から送信される追従指示信号と太陽電池ストリング21A〜21Cの出力電圧V〜Vのタイムチャート例を示す。同期制御回路35は、追従制御回路34A〜34Cに、追従指示信号S1を、予め設定された周期で送信する。
【0031】
追従制御回路34A〜34Cは、それぞれ、同期制御回路35からの追従指示信号S1を受信し、その受信時から所定の動作点変更期間T1内に、太陽電池ストリング21A〜21Cの出力電圧V〜Vを徐々に所定の微小電圧だけ個別に変化させる。このとき、微小電圧を高くしてもよいし、又は低くしてもよい。
【0032】
動作点変更期間T1の経過後の所定の動作点停止期間T2に、追従制御回路34A〜34Cは、太陽電池ストリング21A〜21Cの出力電圧V〜Vを変化させないようにして、動作点変更処理を停止する。また、追従制御回路34A〜34Cは、出力検出回路32A〜32Cを用いて、太陽電池ストリング21A〜21Cの現在の出力電圧V〜V及び出力電流を計測する。そして、追従制御回路34A〜34Cは、それら計測した出力電圧V〜V及び出力電流のそれぞれの積である現在の出力電力を、太陽電池ストリング21A〜21Cの各々について算出する。さらに、追従制御回路34A〜34Cは、太陽電池ストリング21A〜21Cの各々について、それら算出された現在の出力電力と、記憶していた直近の過去の出力電力とを比較する。その比較の結果、出力電力が増加していれば、追従制御回路34A〜34Cは、次の動作点変更期間T1に出力電圧V〜Vを微小電圧だけ上げ、出力電力が減少していれば、次の動作点変更期間T1に出力電圧V〜Vを微小電圧だけ下げる。
【0033】
そのような出力電圧V〜Vの増減が繰り返されることにより、太陽電池ストリング21A〜21Cは、それぞれ、出力電力が最適動作電圧と略等しくされ、出力電力が供給可能な最大値に略同じになり、動作点が最大電力点に略一致する。しかも、太陽電池ストリング21A〜21Cの最大電力点が変動したとしても、それに追従する。動作点変更期間T1及び動作点停止期間T2の合計期間は、追従指示信号S1の送信周期と略一致するように予め設定されている。また、追従制御回路34A〜34Cは、不図示のタイマを用いて、動作点変更期間T1及び動作点停止期間T2をカウントする。
【0034】
本実施形態においては、各太陽電池ストリング21A〜21Cの現在の動作点を求めるのに必要な出力電圧及び出力電流の計測は、太陽電池ストリング21A〜21Cのいずれかに動作点追従処理が実行されているときには行われない。従って、その動作点追従処理に起因する誤差が計測値に含まれなくなる。そのため、各太陽電池ストリング21A〜21Cの計測値の正確さを向上することができ、それらの計測値を基に、各太陽電池ストリング21A〜21Cのいずれについても、現在の動作点をより正確に求めることができる。その結果、それらの動作点を最大電力点に高精度に近づけることができ、最大電力点追従制御を高精度に行うことができ、太陽電池ストリング21A〜21Cのそれぞれから、供給可能な最大電力に可能な限り近い電力を引き出すことができる。
【0035】
次に、上記実施形態の2つの変形例に係るパワーコンディショナについて図面を参照して説明する。いずれの変形例のパワーコンディショナも構成部材が上記実施形態と同じであるので、構成部材については、図1を流用して説明する。
【0036】
(第1の変形例)
第1の変形例においては、同期制御回路35が、追従制御回路34A〜34Cに、上述した追従指示信号に加え、太陽電池ストリング21A〜21Cの出力電圧及び出力電流の計測を指示する計測指示信号を一斉送信する構成を有する。
【0037】
図3は、第1の変形例の動作点追従処理の手順を示す。同期制御回路35は、追従制御回路34A〜34Cに、追従指示信号S1を一斉送信する。追従制御回路34A〜34Cは、それぞれ、同期制御回路35から送信された追従指示信号S1に基づき、太陽電池ストリング21A〜21Cについて、動作点変更処理を実行する。その動作点変更処理が完了した後、追従制御回路34A〜34Cは、その完了を通知するための完了通知信号S2を同期制御回路35に送信する。
【0038】
そして、同期制御回路35は、追従制御回路34A〜34Cの全てから完了通知信号S2を受信した後、追従制御回路34A〜34Cに、次の動作点変更処理の基になる出力電圧及び出力電流の計測を指示する計測指示信号S3を一斉送信する。追従制御回路34A〜34Cは、同期制御回路35から送信された計測指示信号S3に基づき、太陽電池ストリング21A〜21Cの出力電圧及び出力電流を太陽電池ストリング毎に計測する。そして、追従制御回路34A〜34Cは、それらの計測結果を基に、太陽電池ストリング21A〜21Cの各々の現在の出力電力を算出する。ここで、同期制御回路35による追従指示信号S1の送信処理から追従制御回路34A〜34Cによる太陽電池ストリング21A〜21Cの出力電力の算出処理までの1工程を動作点変更工程P1という。
【0039】
計測指示信号S3の送信後、同期制御回路35は、その送信後の経過時間をタイマを用いて計時し、所定期間が経過したと判断したとき、再度、追従指示信号S1を追従制御回路34A〜34Cに一斉送信する。追従制御回路34A〜34Cは、同期制御回路35からの追従指示信号S1をトリガとして、動作点変更処理を実行する。この動作追従処理は、直近に算出した出力電力に基づいてなされる。このようにして、動作点変更工程P1が繰り返される。
【0040】
本変形例においては、各動作点変更工程P1で、追従制御回路34A〜34Cの動作点変更処理が済み次第、次の動作点変更工程P1に用いられる太陽電池ストリング21A〜21Cの出力電圧及び出力電流が計測される。従って、上記実施形態と比べ、動作点変更処理後から出力電圧及び出力電流の計測までの待機時間を短縮することができ、最大電力点追従制御の高速化を図ることができる。
【0041】
(第2の変形例)
第2の変形例は、上述した第1の変形例において、同期制御回路35が、追従制御回路34A〜34Cの中から、上述した追従指示信号を送信する対象の追従制御回路を選択できる構成としたものである。
【0042】
図4は、第2の変形例の動作点追従処理の手順を示す。同期制御回路35は、予め設定された選択条件下で、動作点変更工程P1毎に、追従制御回路34A〜34Cの中から、追従指示信号S1を送信する対象の追従制御回路を選択する。例えば、同期制御回路35は、追従制御回路34A〜34Cのうち、追従指示信号S1の送信対象から外す追従制御回路を、動作点変更工程P1毎に、例えば1つずつ所定順に選択し、その残りの追従制御回路を送信対象に選択する。選択後、同期制御回路35は、その選択した追従制御回路に追従指示信号S1を送り、その追従指示信号S1を受信した追従制御回路が、動作点変更処理を実行する。
【0043】
第2の変形例においては、追従制御回路34A〜34Cのうち、選択された一部の追従制御回路だけによって動作点変更処理が実行されるので、太陽電池ストリング21A〜21Cのうち、その処理の対象になる一部の太陽電池ストリングだけが動作点を変更する。従って、太陽電池ストリング21A〜21Cの全てが動作点を変更する場合と比べ、太陽電池ストリング21A〜21Cの動作点の変更に伴う出力電力の総変動量を抑えることができる。そのため、その総変動量に応じて定まる昇圧チョッパ回路30A〜30Cの出力電力の総変化量を減らすことができる。
【0044】
ところで、パワーコンディショナ3は、昇圧チョッパ回路30A〜30Cの出力電力に係らず、それらの出力端の電圧を電流調整により略一定に保とうとする機能を有する。そのため、昇圧チョッパ回路30A〜30Cの出力電力の総変化量の減少により、その総変化量がパワーコンディショナ3の対応可能な範囲を超える可能性を低くすることができる。その結果、パワーコンディショナ3の故障発生を抑制することができ、信頼性の向上を図ることができる。また、昇圧チョッパ回路30A〜30Cの出力電圧の変化を滑らかなものにすることができる。
【0045】
パワーコンディショナ3の故障抑制効果は、太陽電池ストリング21A〜21Cの出力電圧変動に対する出力電力変化量が多いとき、例えば起動時等に特に有効である。
【0046】
なお、本発明は、上記の実施形態及び各種変形例の構成に限定されるものでなく、使用目的に応じ、様々な変形が可能である。例えば、上記第2の変形例において、同期制御回路35は、昇圧チョッパ回路30A〜30Cの総出力電力を計測できる構成を有し、追従制御回路34A〜34Cの動作点追従処理に伴う上記総出力電力の過去の変化量情報をメモリに記憶していてもよい。その場合、その変化量情報は、動作点追従処理を実行させる一部の追従制御回路の複数の選択パターンの各々に対応付けられて記憶されていることが望ましい。同期制御回路35は、追従制御回路34A〜34Cに動作点変更処理を行わせるとき、メモリを参照し、動作点変更により予測される次の上記変化量が所定の変化量を超えない選択パターンを選ぶ。そして、同期制御回路35は、追従制御回路34A〜34Cうち、上記選択パターンに従って選択した追従制御回路にのみ、追従指示信号S1を送信する。そのような構成により、第2の変形例と同様に、パワーコンディショナ3の故障抑制効果を得ることができる。また、上述した所定の変化量の範囲内で最大限に総出力電力が変化する選択パターンを選ぶことにより、パワーコンディショナ3の故障抑制効果が得られる範囲内で、動作点変更処理を同時に実行できる追従制御回路の数を最高にすることができる。そのため、最大電力点追従制御の高速化を図ることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 太陽光発電システム
2 太陽電池パネル
21A、21B、21C 太陽電池ストリング
3 太陽光発電用パワーコンディショナ
30A、30B、30C 昇圧チョッパ回路(電圧変換回路)
31 インバータ回路
34A、34B、34C 最大電力点追従制御回路
35 同期制御回路(信号送信回路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の太陽電池パネルにそれぞれ接続され、該太陽電池パネルからの出力電圧を所定の電圧に変換する複数の電圧変換回路と、
前記複数の電圧変換回路から出力される直流電力を交流電力に変換する直流交流変換回路を備えた太陽光発電用パワーコンディショナにおいて、
前記複数の電圧変換回路にそれぞれ接続され、該電圧変換回路の電圧変換率を制御することにより、該電圧変換回路に接続された前記太陽電池パネルの動作点を最大電力点に追従させる複数の最大電力点追従制御回路を備え、
前記複数の最大電力点追従制御回路は、それぞれ、いずれの最大電力点追従制御回路も動作点追従処理を行っていないときに、前記太陽電池パネルの現在の動作点を求めるのに必要な該太陽電池パネルの出力電圧又は出力電流を計測することを特徴とする太陽光発電用パワーコンディショナ。
【請求項2】
前記複数の最大電力点追従制御回路は、動作点追従処理の実行を指示する追従指示信号と、前記太陽電池パネルの出力電圧又は出力電流の計測を指示する計測指示信号を送信する信号送信回路をさらに備え、
前記複数の最大電力点追従制御回路は、それぞれ、前記信号送信回路から送信された追従指示信号に基づいて動作点追従処理を実行し、その動作点追従処理が完了した後、その完了を通知するための完了通知信号を前記信号送信回路に送信し、
前信号送信回路は、前記複数の最大電力点追従制御回路の全てから前記完了通知信号を受信した後、それらの最大電力点追従制御回路に、次の動作点追従処理の基になる前記出力電圧又は出力電流の計測を指示する前記計測指示信号を送信することを特徴とする請求項1に記載の太陽発電用パワーコンディショナ。
【請求項3】
前記信号送信回路は、前記複数の最大電力点追従制御回路の中から、前記追従指示信号を送信する対象の最大電力点追従制御回路を選択できる構成であることを特徴とする請求項2に記載の太陽発電用パワーコンディショナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−101498(P2013−101498A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244873(P2011−244873)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】