説明

太陽光発電装置

【課題】特性の異なる複数の太陽電池セルを備えておき、気象条件に応じて特性の異なる複数の太陽電池セルを使い分けることのできる太陽光発電装置の提供。
【解決手段】太陽光発電装置10は、水平方向(東西)に伸びる三角柱状の基体13の1つの面に単結晶シリコン系の太陽電池セル11を、もう1つの面に多結晶シリコン系の太陽電池セル12を、それぞれ設けてなる太陽電池モジュール15を、屋根の斜面に沿って複数備えている。なお、基体13の更にもう1つの面13Aは、太陽電池セルを有さない保護面13Aとなっている。別途設けられた気象センサを介して検出した気象条件に応じて基体13をその軸16を中心にモータ19で回転させ、最適な太陽電池セルを露出させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池セルを用いて発電を行う太陽光発電装置に関し、詳しくは、特性の異なる複数の太陽電池セルを有する太陽光発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の太陽光発電装置は、太陽電池セルを家屋の屋根や発電プラントに固定的に設けたフレームに固定して使用されていたが、近年、太陽電池セルを太陽光の照射方向に追従させる追従装置を備えた太陽光発電装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、このようないわゆる追尾型の太陽光発電装置では、太陽電池セルを固定した可動のパネルを反転し、そのパネルの裏面を外側面に露出させることも、若干の設計変更によって容易に実現できる。そこで、前述の特許文献1では、太陽電池セルを固定したパネルの裏面に、蓄光塗料等を用いて構成した表示面を設け、宣伝広告等に利用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】2010−147440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、従来は、太陽電池セルを固定したパネルの裏面は広告宣伝に使う程度のことしか考えられていなかった。一方、太陽電池セルには、多結晶シリコン系,単結晶シリコン系,アモルファスシリコン系,化合物系といった多数の種類があり、それぞれ特性が異なる。例えば、単結晶シリコン系の太陽電池セルは効率がよいため曇りでも発電が可能であるが、多結晶シリコン系の太陽電池セルは効率が悪いため曇りでは発電が困難となる。従来、どの特性の太陽電池セルを使用するかは、太陽光発電装置の設計時に1種類に絞られ、太陽光発電装置の使用中に特性の異なる複数の太陽電池セルを使い分けるといった試みはなされていなかった。
【0005】
そこで、本発明は、特性の異なる複数の太陽電池セルを備えておき、気象条件に応じて特性の異なる複数の太陽電池セルを使い分けることのできる太陽光発電装置を提供することを目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達するためになされた本発明は、特性の異なる複数の太陽電池セルを有し、駆動されることによって前記複数の太陽電池セルのうち任意のものを特定方向に露出可能に構成された太陽電池モジュールと、該太陽電池モジュールを駆動するアクチュエータと、少なくとも前記特定方向に係る気象条件を検出する気象条件検出手段と、前記気象条件検出手段が検出した気象条件に応じて前記アクチュエータを駆動制御することにより、当該気象条件に応じた太陽電池セルを前記特定方向に露出させるモジュール制御手段と、を備えたことを特徴とする太陽光発電装置を要旨としている。
【0007】
このように構成された本発明の太陽光発電装置では、太陽電池モジュールは、特性の異なる複数の太陽電池セルを有し、アクチュエータに駆動されることによって、前記複数の太陽電池セルのうち任意のものを特定方向(例えば、南中方向,天頂方向等)に露出可能である。そこで、制御手段は、気象条件検出手段が検出した少なくとも前記特定方向に係る気象条件に応じて、前記アクチュエータを駆動制御することにより、当該気象条件に応じた太陽電池セルを前記特定方向に露出させる。従って、本発明の太陽光発電装置では、気象条件に応じて特性の異なる複数の太陽電池セルを使い分け、そのときの気象条件に最も適した太陽電池セルを用いて発電を行うことができる。
【0008】
なお、前記太陽電池モジュールは、前記太陽電池セルを保持する面を複数有し、各面に各々異なる特性の前記太陽電池セルを保持し、前記アクチュエータに回動されることによって前記特定方向に前記複数の面のうち任意の面を露出させる基体を、備え、前記制御手段は、前記アクチュエータを駆動制御して前記基体を回動させることにより、前記気象条件に応じた太陽電池セルを保持した前記基体の面を前記特定方向に露出させてもよい。この場合、アクチュエータに回動される基体の複数の面に各々異なる特性の太陽電池セルが保持されているので、基体を回転させるといった簡単な動作により使用する太陽電池セルを切り換えることができる。従って、前記特定方向に露出される太陽電池セルを切り換える際の消費エネルギも少なくて済む。
【0009】
そして、この場合更に、前記基体は3つ以上の面を有し、少なくとも1つの面が太陽電池セルを保持せず、前記アクチュエータに回動されることによって、当該1つの面も前記特定方向に露出可能であってもよい。その場合、太陽電池セルを保持していない前記1つの面を前記特定方向に露出させることにより、当該特定方向から小石など太陽電池セルに危害を及ぼすようなものが飛来してくるときでも各太陽電池セルを良好に保護することができる。
【0010】
また、前記太陽電池モジュールは、領域毎に特性の異なる前記太陽電池セルを保持したベルトと、該ベルトを保持する基体と、該基体に設けられ、前記アクチュエータに駆動されることによって、前記ベルトを前記基体の前記特定方向側の面を通って移動させるローラと、を備え、前記制御手段は、前記アクチュエータを駆動制御して前記ベルトを移動させることにより、前記気象条件に応じた太陽電池セルを保持した前記ベルトの領域を前記基体の前記特定方向側の面に露出させてもよい。この場合、制御手段がアクチュエータを駆動制御してベルトを移動させることにより、基体の前記特定方向側の面を通って前記ベルトを移動させることができる。そして、気象条件に応じた太陽電池セルを保持した前記ベルトの領域が前記基体の前記特定方向側の面に露出した時点でベルトの移動を止めれば、当該面に保持された太陽電池セルが前記特定方向側の面に露出する。
【0011】
更に、前記各太陽光発電装置において、前記気象条件に応じた太陽電池セルを前記特定方向に露出させた場合の発電利益の増加量を、予め設定された演算式に基づいて、当該太陽電池セルを前記特定方向に露出させる際に前記アクチュエータが消費するエネルギと対比可能に算出する算出手段を、更に備え、前記制御手段は、前記発電利益の増加量が前記エネルギより大きい場合にのみ、前記アクチュエータを駆動制御してもよい。この場合、アクチュエータを駆動制御して前記特定方向に露出した太陽電池セルを変更する際のエネルギを考慮しても、そのように駆動制御した方が発電利益の増加量が大きい場合にのみ、前記駆動制御がなされるので、太陽光発電装置の効率を一層向上させることができる。
【0012】
そして、その場合、前記算出手段は、前記気象条件に応じた前記各太陽電池セルの単位時間当たりの発電量に対応した値から、前記気象条件に応じた前記各太陽電池セルの単位時間当たりの損失に対応した値を引いて前記各太陽電池セルの単位時間当たりの発電利益を算出する処理を少なくとも実行してもよい。すなわち、前記発電利益は、単純に発電量であってもよいが、このように損失を差し引いて計算した場合、各太陽電池セルの維持経費等も考慮して、太陽光発電装置の効率(特に経済的な効率)を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明が適用された家の構成を概略的に表す斜視図である。
【図2】その家の屋根に設けられた太陽光発電装置の構成を表す概略図である。
【図3】その家の塀に設けられた太陽光発電装置の構成を表す概略図である。
【図4】各太陽光発電装置の制御系の構成を表すブロック図である。
【図5】前記屋根に設けられた太陽光発電装置の制御を表すフローチャートである。
【図6】その制御で使用されるテーブルの構成を表す説明図である。
【図7】前記塀に設けられた太陽光発電装置の制御を表すフローチャートである。
【図8】太陽光発電装置の変形例の構成を表す概略図である。
【図9】太陽光発電装置の更なる変形例の構成を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(システムの全体構成)
次に、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。図1は、本発明が適用された家Hの構成を概略的に表す斜視図である。図1に示すように、家Hは、南北に斜面を有する切り妻型の屋根Rを備えており、周囲を塀Fによって囲まれている。そして、屋根Rには太陽光発電装置10が設けられており、塀Fには、太陽光発電装置30が設けられている。
【0015】
図2は、太陽光発電装置10の構成を表す概略図である。図2に示すように、太陽光発電装置10は、水平方向(東西)に伸びる三角柱状の基体13の1つの面に太陽電池セル11を、もう1つの面に太陽電池セル12を、それぞれ設けてなる太陽電池モジュール15を、屋根R(図1参照)の斜面に沿って複数備えている。なお、基体13の更にもう1つの面13Aは、太陽電池セルを有さない保護面13Aとなっている。
【0016】
各太陽電池モジュール15は、基体13の中心を貫通する軸16を中心に回動可能に設けられており、その軸16には、図2に模式的に示したように、その軸16を中心にして太陽電池モジュール15を回動させるモータ19(アクチュエータの一例)がそれぞれ取り付けられている。なお、太陽電池セル11は、単結晶シリコン系で、効率がよいため曇りなどでも発電が可能であるが、価格が高い。一方、太陽電池セル12は、多結晶シリコン系で、効率が悪いため曇天では発電が困難となるが、価格は安い。
【0017】
図3は、太陽光発電装置30の構成を表す概略図である。図3に示すように、太陽光発電装置30は、平板状の基体33の表裏面に、一方の面には単結晶シリコン系の太陽電池セル31を、もう一方の面には多結晶シリコン系の太陽電池セル32を、それぞれ設けてなる太陽電池モジュール35を備えている。各太陽電池モジュール35は、地面に立てられて基体33の中心を貫通する軸36を中心に回動可能に設けられており、その軸36の内部には、その軸36を中心にして太陽電池モジュール35を回動させるモータ39(アクチュエータの一例)がそれぞれ取り付けられている。
【0018】
更に、軸36の上端には、気温,日射量,風向,風速,雨量等の気象条件を検出する気象センサ60(気象条件検出手段の一例)が設けられており、図1に示すように、屋根Rの頂点にも、同様の気象センサ50が設けられている。なお、気象センサ50,60は、必ずしも自身が備えたセンサにより前記気象条件を検出するものでなくてもよく、近隣の地域気象観測システム(いわゆるアメダス)等からインターネット経由で気象条件を取得するものであってもよい。
【0019】
(太陽光発電装置10における制御)
次に、図4(A)は、太陽光発電装置10の制御系の構成を表すブロック図である。図4(A)に示すように、前述の気象センサ50は、モータ19と共に制御部55に接続されている。制御部55は、CPU,ROM,RAMを備えたマイクロコンピュータによって構成されており、ROMに記憶されたプログラムに基づいて次のような処理を実行する。図5は、制御部55が実行する処理を表すフローチャートである。
【0020】
図5に示すように、この処理では、先ず、気象センサ50を介して現在の気象条件が検出され、続くS2にて、各太陽電池セル11,12または保護面13Aを屋根Rの表面(特定方向の一例)に露出させたときの発電利益がそれぞれ算出される。ここで、発電利益とは、当該太陽電池セルを露出させたときの金銭とか発電量の利益(メリット)を指す。本実施の形態では、前記気象条件のうちの日射量に基づいて各太陽電池セル11,12の単位時間当たりの発電量を算出するばかりでなく、当該日射量や風速,雨量に応じて各太陽電池セル11,12に加わる単位時間当たりの損傷(劣化)に対応する係数α(以下、「損傷係数」という)を、図6に例示するような所定のテーブルにより算出している。
【0021】
すなわち、図6のテーブルでは、太陽光発電装置10が設置された屋根Rの設置面側(本例では南側)からの風速(m/s)と、1時間当たりの日照時間(h)と、降水量(mm/h)とに対応して損傷係数αが設定されている。
【0022】
そして、下記の式(1)に示すように、当該太陽電池セル11または12を露出させた場合の単位時間当たりの発電量から、その太陽電池セル11または12の価格に損傷係数αを掛けることによって各太陽電池セル11,12の単位時間当たりの損失を発電量に換算した値を引いたものが、当該太陽電池セル11または12を使用した場合の単位時間当たりの発電利益となる。
【0023】
発電利益=発電量−(太陽電池セルの購入価格)×α……(1)
なお、前記式からも明らかなように、ここでは、発電利益は、W・h等の仕事量の単位で定義され、太陽電池セル11,12の発電量から、当該太陽電池セル11,12の損失を発電量に換算した値を引いたものである。ここで、損失とは、会計上の減価償却等に類似した概念であるが、必ずしも減価償却と一致する必要はなく、前述のようにその算出方法が予め設定されていればよい。
【0024】
そして、その損失を計算するための損傷係数αの設定方法としては種々考えられるが、例えば、次のような設定方法が考えられる。例えば、一般的な太陽電池セル11,12が5年程度の使用で発電効率が半減する場合、その5年間平均的な気象条件が続いたと仮定して考えると、0.5/(5×365×24)が1時間(単位時間の一例)当たりの発電効率の低下率(単位なし)となる。その値を、1W・h当たりの買電価格で割ると、単位が(W・h/円)の損傷係数αが算出される。この損傷係数αは、平均的な気象条件(風速,日照時間,降水量の平均値)に対する損傷係数αとなる。そして、そうして算出された損傷係数α値を太陽電池セルの価格にかけた損失が、単位時間当たりの発電量(W・h)と対比可能となる。例えば、前記例で、更に、買電価格をβ(円/W・h),発電量をγ(W・h),太陽電池セルの購入価格をδ(円)とすると、発電利益(W・h)は次の式(2)で表される。
【0025】
発電利益=γー0.5δ/43800β ……(2)
続くS3では、現在露出している太陽電池セル(太陽電池セル11または太陽電池セル12または保護面13A)が、発電利益が最も大きい最適の太陽電池セルであるか否かが判断される。例えば南風で風速15m/s以上の強風時や30mm/h以上の豪雨などでいずれの太陽電池セル11または12を露出させた場合も発電利益がマイナスになるのであれば、最適の太陽電池セルは保護面13Aとなる。また、例えば、略無風状態(例えば風速の絶対値が5m/s以下)で日照時間が0.8以上の晴天なら、太陽電池セル12が最適の太陽電池セルとなる場合が多く、略無風状態で日照時間が0.6以下の曇天なら、太陽電池セル11が最適の太陽電池セルとなる場合が多い。
【0026】
そして、現在露出している太陽電池セルが最適の太陽電池セルである場合は(S3:Y)、処理はそのまま前述のS1へ移行し、現在露出している太陽電池セルが最適の太陽電池セルでない場合は(S3:N)、処理はS5へ移行する。S5では、太陽電池セルを最適のものに変更した場合の前記発電利益の増加量と、そのためにモータ19を駆動するのに要する消費電力とが比較される。なお、この場合、モータ19を駆動するのに要する消費電力は、予め設定された値を使用してもよいし、予め設定されたテーブルによりそのときの風速及び雨量に応じて定まる値を使用してもよい。
【0027】
続くS7では、S5による比較結果が判断され、露出する太陽電池セルを変更した場合の発電利益増加量の方が前記消費電力よりも大きい場合は(S7:Y)、S9にてモータ19が駆動されて露出する太陽電池セルが最適なものに変更され、処理は前述のS1へ移行する。一方、露出する太陽電池セルを変更した場合の発電利益増加量が前記消費電力以下の場合は(S7:N)、処理はそのまま前述のS1へ移行する。
【0028】
従って、太陽光発電装置10では、気象条件に応じて特性の異なる複数の太陽電池セル11,12を使い分け、そのときの気象条件に最も適した太陽電池セルを用いて発電を行うことができる。しかも、太陽光発電装置10では、保護面13Aを露出させることもでき、強風時などのように、小石など太陽電池セル11,12に危害を及ぼすようなものが飛来してくるときでも太陽電池セル11,12を良好に保護することができる。更に、太陽光発電装置10では、モータ19を駆動して前記露出した太陽電池セルを変更する際のエネルギ(消費電力)を考慮しても、そのように駆動制御した方が発電利益の増加量が大きい場合にのみ(S7:Y)、モータ19の駆動がなされるので(S9)、太陽光発電装置10の効率を一層向上させることができる。
【0029】
(太陽光発電装置30における制御)
次に、図4(B)は、太陽光発電装置30の制御系の構成を表すブロック図である。図4(B)に示すように、太陽光発電装置30も、太陽光発電装置10と同様に、気象センサ60とモータ39とが接続されたマイクロコンピュータからなる制御部65を備えている。図7は、制御部65のCPUが、ROMに記憶されたプログラムに基づいて実行する処理を表すフローチャートである。なお、図7の処理は、先に説明した図5の処理と共通箇所も多いので、同様の処理については図5で使用した符号を付している。
【0030】
図7に示すように、S1では図5の処理と同様に気象センサ60を介して現在の気象条件が検出され、続くS12では、太陽電池セル31,32に対し、日向側(南北の塀Fでは南側、東西の塀Fでは午前中は東側,午後は西側)または日陰側に向けられた場合のそれぞれの発電利益が、S2と同様に算出される。なお、太陽電池セル31,32の特性が太陽電池セル11,12と異なる場合は、損傷係数αを求めるための図6のようなテーブルに規定される数値も異なる。
【0031】
続くS13では、現在の太陽電池セル31,32の向きが、全体として最も発電利益が得られる最適の向きであるか否かが判断され、前記向きが最適の場合は(S13:Y)、処理はそのままS1へ移行する。一方、前記向きが最適でない場合(S13:N)、すなわち、180°裏返した方が発電利益が向上する場合は、S5にて、その発電利益の増加量と、そのためにモータ39を駆動するのに要する消費電力とが比較される。なお、この場合も、モータ39を駆動するのに要する消費電力は、予め設定された値を使用してもよいし、予め設定されたテーブルによりそのときの風速及び雨量に応じて定まる値を使用してもよい。
【0032】
続くS17では、S5による比較結果が判断され、太陽電池セル31,32の向きを変更した場合の発電利益増加量の方が前記消費電力よりも大きい場合は(S17:Y)、S19にてモータ39が駆動されて太陽電池セル31,32の向きが180°変更され、処理は前述のS1へ移行する。一方、前記向きを変更した場合の発電利益増加量が前記消費電力以下の場合は(S17:N)、処理はそのまま前述のS1へ移行する。
【0033】
従って、太陽光発電装置30でも、気象条件に応じて特性の異なる複数の太陽電池セル31,32を使い分け、そのときの気象条件に最も適した太陽電池セルを用いて発電を行うことができる。しかも、太陽光発電装置30でも、モータ39を駆動して太陽電池セル31,32の向きを変更する際のエネルギ(消費電力)を考慮しても、そのように駆動制御した方が発電利益の増加量が大きい場合にのみ(S17:Y)、モータ39の駆動がなされるので(S19)、太陽光発電装置30の効率を一層向上させることができる。
【0034】
(本発明の他の実施の形態)
なお、本発明は前記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。例えば、太陽電池セルとしては、前述の多結晶シリコン系,単結晶シリコン系の他にも、アモルファスシリコン系,化合物系といった種々の太陽電池セルを使用することができ、保護面13Aにも他の種類の太陽電池セルを設けてもよい。
【0035】
また、特性の異なる太陽電池セルとは、構成する半導体が異なる太陽電池セルに限定されるものではない。例えば、同じ多結晶シリコン系であっても、表面が黒い太陽電池セルは、表面が青い太陽電池セルに比べて効率がよいといわれている。しかしながら、夏季などに屋根Rに黒い太陽電池セルが並んでいると、屋根Rの低い家Hでは室内温度が上昇してしまう可能性がある。従って、その場合は、室温に与える影響も前記発電利益のマイナス要因として予め演算式を設定しておくことが望ましい。逆に、冬季には、前記室温に与える影響が前記発電利益のプラス要因となる場合もある。それらの場合、気温に応じて露出させるべき最適の太陽電池セルが変わる場合がある。
【0036】
更に、前記各実施の形態では、基体13,33を回転させることによって特定方向に露出する太陽電池セルを変更しているが、露出する太陽電池セルを変更する方法は他にも種々考えられる。例えば、図8に示すように、塀Fを構成可能な太陽光発電装置130は、地面に固定された直方体状の基体133の上面角部,表裏面下部,及び内部の各所にローラ137を備えており、そのローラ137に無端ベルト131を架設してなる太陽電池モジュール135を備えている。なお、無端ベルト131には、その表面を周回方向に3等分することで、単結晶シリコン系の太陽電池セル(図示省略)を表面に保持した領域と、多結晶シリコン系の太陽電池セル(図示省略)を表面に保持した領域と、いずれの太陽電池セルも保持していない領域とが形成されている。
【0037】
また、ローラ137は、無端ベルト131の3分の2を基体133の内部で回転させ、残りの3分の1を基体133の表面に沿って回転させるように配置されている。このため、ローラ137を図示省略したモータ(アクチュエータの一例)で駆動することにより、基体133の表面に露出する無端ベルト131の領域を、単結晶シリコン系の太陽電池セルを保持した領域,多結晶シリコン系の太陽電池セルを保持した領域,いずれの太陽電池セルも保持していない領域の何れかに変更することができる。このような太陽電池モジュール135を太陽電池モジュール11等と同様に制御した場合、太陽光発電装置10と同様の効果が得られる。
【0038】
また、図9に示す太陽光発電装置140は、無端ベルト131の代わりに有端のベルト141を使用して、そのベルト141をリール状に巻き取るローラ147を基体143の内部に設けてなる太陽電池モジュール145を備えたものである。このような太陽光発電装置140でも、ローラ147を駆動して基体143の表面に露出するベルト141の領域を変更することによって、太陽光発電装置130と同様の効果が得られる。
【0039】
また更に、前記各実施の形態では、損傷係数や太陽電池セルの色を参照しているが、あまり明るすぎると却って効率が下がるなど、単純に発電効率を比較しただけでも気象条件によって太陽電池セル同士で優劣関係が変化する場合は、単純に発電効率のみを比較してその気象条件で効率がよい方の太陽電池セルを露出させるように制御すればよい。すなわち、前記発電利益は、単純に発電量または発電効率であってもよい。また、本発明は、家Hに付随して設けられる太陽光発電装置に限定されるものではなく、太陽光発電所のような大型のプラントや、船舶,航空機,自動車等に搭載される太陽光発電装置にも適用できることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0040】
10,30,130,140…太陽光発電装置
11,12,31,32…太陽電池セル
13,33,133,143…基体
13A…保護面
15,35,135,145…太陽電池モジュール
19,39…モータ
50,60…気象センサ
55,65…制御部
131…無端ベルト
141…ベルト
137,147…ローラ
F…塀
H…家
R…屋根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特性の異なる複数の太陽電池セルを有し、駆動されることによって前記複数の太陽電池セルのうち任意のものを特定方向に露出可能に構成された太陽電池モジュールと、
該太陽電池モジュールを駆動するアクチュエータと、
少なくとも前記特定方向に係る気象条件を検出する気象条件検出手段と、
前記気象条件検出手段が検出した気象条件に応じて前記アクチュエータを駆動制御することにより、当該気象条件に応じた太陽電池セルを前記特定方向に露出させるモジュール制御手段と、
を備えたことを特徴とする太陽光発電装置。
【請求項2】
前記太陽電池モジュールは、
前記太陽電池セルを保持する面を複数有し、各面に各々異なる特性の前記太陽電池セルを保持し、前記アクチュエータに回動されることによって前記特定方向に前記複数の面のうち任意の面を露出させる基体を、
備え、
前記制御手段は、前記アクチュエータを駆動制御して前記基体を回動させることにより、前記気象条件に応じた太陽電池セルを保持した前記基体の面を前記特定方向に露出させることを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電装置。
【請求項3】
前記基体は3つ以上の面を有し、
少なくとも1つの面が太陽電池セルを保持せず、
前記アクチュエータに回動されることによって、当該1つの面も前記特定方向に露出可能なことを特徴とする請求項2に記載の太陽光発電装置。
【請求項4】
前記太陽電池モジュールは、
領域毎に特性の異なる前記太陽電池セルを保持したベルトと、
該ベルトを保持する基体と、
該基体に設けられ、前記アクチュエータに駆動されることによって、前記ベルトを前記基体の前記特定方向側の面を通って移動させるローラと、
を備え、
前記制御手段は、前記アクチュエータを駆動制御して前記ベルトを移動させることにより、前記気象条件に応じた太陽電池セルを保持した前記ベルトの領域を前記基体の前記特定方向側の面に露出させることを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電装置。
【請求項5】
前記気象条件に応じた太陽電池セルを前記特定方向に露出させた場合の発電利益の増加量を、予め設定された演算式に基づいて、当該太陽電池セルを前記特定方向に露出させる際に前記アクチュエータが消費するエネルギと対比可能に算出する算出手段を、
更に備え、
前記制御手段は、前記発電利益の増加量が前記エネルギより大きい場合にのみ、前記アクチュエータを駆動制御することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の太陽光発電装置。
【請求項6】
前記算出手段は、前記気象条件に応じた前記各太陽電池セルの単位時間当たりの発電量に対応した値から、前記気象条件に応じた前記各太陽電池セルの単位時間当たりの損失に対応した値を引いて前記各太陽電池セルの単位時間当たりの発電利益を算出する処理を少なくとも実行することを特徴とする請求項5に記載の太陽光発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−89808(P2013−89808A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229832(P2011−229832)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(399031827)エイディシーテクノロジー株式会社 (163)
【Fターム(参考)】