説明

太陽熱エネルギ−を利用した人工降雨方法

【課題】赤道付近の見捨てられた砂漠地帯に雨を降らせて緑化,農地化し食糧不足と経済事情を改善する。
【解決手段】砂漠地帯の地表に降り注ぐ太陽光のエネルギ−をかき集めて周囲の空気を加熱し上昇気流をつくり,これに同じく太陽光のエネルギ−をかき集めて海水中の水分を蒸発させてつくった水蒸気をのせて上空の低温大気まで運び結露させて雲粒をつくり雨滴に成長させて降雨させることで,自然界で日常行われている水の循環現象を人工的に作り出す。
砂漠化した乾燥地帯に淡水を供給することで緑化,農地化を促進し,砂漠化を食い止めながら食糧不足と経済事情を改善し,太陽光エネルギ−を蒸発熱として吸収させて上空の低温大気に移動し凝結熱として放出させることで地表面の不必要な熱を上空の低温大気に移動させることで地球の温暖化防止に貢献する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工降雨方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
淡水が極度に不足している砂漠化した地域では,人間も継続的な活動ができないので,当然食糧事情も悪く経済的に見捨てられた地域である。これらの砂漠化した地域や国は赤道付近に集中し,特に低開発国が集中するアフリカでは人口爆発による食糧難が大きな問題となっている地域であり,今後益々深刻化すると予想されている。
毎年九州と同じ程度の面積が砂漠化していると言われる乾燥地域では,淡水が極端に少ないため人間を含めた生物が殆ど住めず年々砂漠化が進行しているが,降雨により大量に淡水を供給ができれば緑地化や農地化が可能になり,広範囲に砂漠化を食い止める効果が期待できる。
【0003】
大規模な海水淡水化プラントは既に実用化されているが,金銭的に所有国が限られ,経済的に豊かな産油国でしか見られない。近年の研究によると,砂漠は十分な水さえあれば豊かな農地になることが分かってきたが,大量の水を安価に入手することが難しく,広大な面積というこもあり遅々として改善されていない。
【非特許文献1】飯田睦治郎著 「新しい気象学入門」(株)講談社 2001年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点は、砂漠化した地域に淡水を底コストで連続的に大量に調達することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
自然界で日常行われている水の循環による降雨現象を,地上に降り注ぐ太陽光のエネルギ−をかき集めて海水を蒸発させ上空の低温大気で結露させる人工的な海水蒸留方法により雨(淡水)を連続的に大量に作り出す。
【発明の効果】
【0006】
降雨により大量に淡水を供給ができれば緑地化や農地化が可能になり,広範囲に砂漠化を食い止める効果が期待できる。砂漠地帯を安価な淡水で農地化することが可能になれば,化学肥料や農薬等の使用による大規模な農業展開ができ,食糧事情と経済事情が同時に改善されることが期待できる。
また地表面の熱エネルギ−を強制的に移動,排除させる有効な手段が見あたらない現状では,温暖化を助長する太陽からの不必要な熱エネルギ−を移動する有効な手段として地球の温暖化防止対策にも役立つのではと期待する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
自然界のエネルギ−を利用した人工的な降雨方法により大量に淡水を供給するという目的を、簡単な原理,構造で実現した。
【実施例1】
【0008】
実施するための降水プラントの主な設備としては,集光器(3),蒸発塔(9),大気加熱塔(4),発電装置(13),配電・制御装置(12),通信システム,残留物搬出システムから構成され,設備の配置は蒸発塔及び大気加熱塔の周囲に多数の集光器を配置し,発電装置のボイラ−(16)の周囲にも集光器を配置して太陽光を集める。発電装置で発生して電源は配電・制御装置から設備全体に供給され集中的に制御される。設備は太陽光が降り注ぐ昼間に稼働し,夜間は蒸発塔から発生する塩分を主体とする残留物(18)を処理したり設備のメンテナンスを行う。
【0009】
集光器(3)は太陽光を反射し一点に集中させる巨大な凹面鏡で,太陽光を効率よく集めるために駆動装置(17)により太陽を自動追尾し最適な反射角度に制御され,蒸発塔の上の蒸発皿(8)や大気加熱塔の大きなダクトの放熱板(5),発電装置の密閉回路の中のボイラ−の加熱板に,地表に広範囲に分散した太陽光を巨大な凹面鏡でかき集め集中することで降水プラントの動力源である高い熱エネルギ−に変化させる。この高い熱エネルギ−を利用して海水中の水分を加熱して水蒸気(7)にしたり,大気加熱塔のダクトの放熱板を加熱して周囲の空気を加熱して上昇気流(6)を発生させる。また発電装置の密閉回路の中のボイラ−(16)の加熱板を加熱して蒸気でタ−ビン(14)を回してタ−ビン軸に連結した発電機(13)により熱エネルギ−を電気エネルギ−に変換する。
【0010】
蒸発塔(9)は塔の上に蒸発皿(8)を取り付け,連続的に海水を注水しながら集光器(3)でかき集めた太陽光により海水中の水分を蒸発させ,大量の水蒸気(7)を発生させる。また蒸発皿(8)には水分が蒸発した後に残る残留物(18)を取り除くための残留物除去装置(20)を取り付ける。
大気加熱塔(4)は塔の上にダクトの形をした放熱板(5)を取り付け,集光器(3)で集められた太陽光でダクトの放熱板(5)を高温に加熱し,放熱板裏の温度調節用配管(19)に蒸発塔(9)の蒸発皿(8)に送られる前の海水を通して高温で設備が損傷しないように適度に温度制御する。大気加熱塔(4)はダクトの放熱板(5)を加熱して周囲の空気を加熱、蒸発塔(9)で作られた水蒸気(7)を低温の大気上空部へ運ぶための上昇気流(6)を作り出す。
【0011】
発電装置は集光器(3)で太陽光を集め密閉回路の中のボイラ−(16)の加熱板を加熱し,発生した蒸気でタ−ビン(14)を回してタ−ビン軸に連結した発電機(13)を回転させ発電する。タ−ビンを回した蒸気は,蒸発塔(9)に送られる前の海水により熱交換器(15)で冷却して再度液化し,ボイラ−(16)に戻して循環使用する。発生した電気は配電・制御装置(12)を通して海水を汲み上げたり送水するためのポンプ(2)や巨大な集光器を動かす駆動装置(17)の電源として,また制御用の電源として利用する。
【0012】
降水プラントは周辺気温と太陽光の熱量が十分になるのを待って稼働させる。蒸発塔や大気加熱塔,発電装置のボイラ−周囲に配置された集光器を太陽に向け,集光器の反射光をそれぞれの蒸発皿やダクトの放熱板,ボイラ−の加熱板に集中し十分に加熱する。発電機が始動後,海水を汲み上げ送水し,大気加熱塔のダクトの放熱板温度を放熱板裏の冷却配管に海水を通しながら調節し,蒸発塔の蒸発皿に海水を注水し沸騰させて水蒸気を発生させる。発生した水蒸気は大気加熱塔のダクトの放熱板で加熱され発生した上昇気流により低温の大気上空部へ運ばれて結露し雲(10)となり落下しながら併合と分裂を繰り返し雨滴となり降雨(10)となる。
【0013】
この方法では海水を蒸発させるために太陽からの熱エネルギ−をかき集めて使用するが,熱エネルギ−の量を表す太陽常数を0.9kw/m2とすると,昼間9時間(午前8時〜午後5時)に集められる太陽エネルギ−は1m2あたり約7000kcalになる。平均水温30℃の海水中の水分1gを蒸発させる為の必要な熱量は約700calであるからこの7000kcalの熱量で約10kgの水分を蒸発させることができる。計算上は1km四方の面積で太陽エネルギ−を集め,80%を熱に変換できたとすると1日で約8000tの水分を蒸発させることができることになる。
【0014】
通常地表面で発生した水蒸気は対流圏を上昇気流と共に上空に運ばれながら冷やされ雲となり,最高で地表から約11kmの−60℃〜−80℃に冷えた成層圏との境界面まで上昇し停止するが,対流圏内の気温は100m上昇するごとに約0.65℃低下するので,高度4000m以上の大気温度は普通常に0℃以下になっており境界面の極寒大気層まで上昇させる必要は無いと思われる。
【0015】
上昇気流により上空の低温の大気層に運ばれた水蒸気は,通常雨粒の核となる海塩核に結露して数十ミクロン程度の小さな水滴の雲粒になり雲を形成し,雲の中でまわりの雲粒を付着しながら成長し,落下しながら途中で分裂と併合を繰り返し半径1mm程度の水滴となり雲底から雨滴として地上に降雨するという目論見である。
この方法は簡単に言うと太陽熱と上空の低温を利用して海水を蒸留する方法で,地球上で日常行われている水の循環という現象を人工的に起こすことを降雨の可能性の根拠としている。
【産業上の利用可能性】
【0016】
この方法を実施する場合の条件として,強い太陽光が降り注ぐことと大量の海水が容易に手に入る必要があり,場所としては海岸に近い過度の太陽熱のために砂漠化している赤道付近の国や地域が適していると思われるが,十分な日射量の他に風向きや気温などの気象環境や地形条件が揃う必要がある。
緑地化する順序としては,最初に海岸付近に設置し,降雨場所を内陸に延ばしながら緑地化していき,内陸に雨水の貯水湖を造り,その貯水湖に雨を供給しながら貯水湖の雨水を蒸留して更に内陸の奥に雨水の貯水湖を造っていくということを繰り返すことで,緑地化した地域を維持しながら乾燥した内陸に緑地や農地を広げていく。
【0017】
40度より低い緯度では地球からの放射によって失う熱より,日射を受けて暖まる熱の方が大きいといわれている。地表面の砂漠化を促進する過度の太陽熱を水分の蒸発熱という形で水蒸気に吸収させて上空低温の大気に運び,水蒸気が結露して雨滴に変化する時に地表面で吸収した太陽熱を上空の低温大気に放出させることは,地表面の熱エネルギ−を強制的に移動させる有効な手段が見当たらない現状では地球の温暖化を助長する太陽からの不必要な熱エネルギ−を移動させる有効な手段として地球の温暖化防止対策にも役立つのではと期待する。
また低層雲を増加させることは太陽からくる熱を反射して地表の温度が上昇することを防ぐ効果も期待でき,現在地球表面の約30%を覆っている低層雲の平均量が1%増加すると地表の平均気温は0.8℃程度下がるという説もあり相乗効果が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】概要図
【図2】主要設備説明図
【符号の説明】
【0019】
1 海水(or淡水)
2 揚水ポンプ
3 集光器
4 大気加熱塔
5 ダクト(放熱板)
6 上昇気流
7 水蒸気
8 蒸発皿
9 蒸発塔
10 雲
11 雨
12 配電・制御装置
13 発電機
14 蒸気タ−ビン
15 熱交換器
16 ボイラ−の加熱板
17 駆動装置
18 残留物
19 温度調節用配管
20 残留物除去装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を反射して一点に集中することができる凹面鏡で海水を入れた容器に太陽光を集中させて海水を加熱し,水分を蒸発させ大量の水蒸気を連続的に造り,同様に光を反射して一点に集中することができる凹面鏡でダクトの放熱板に太陽光を集中させて加熱し,ダクト周囲の空気を加熱して上昇気流を造り,この上昇気流と共に海水を加熱して発生させた大量の水蒸気を低温の上空大気に連続的に運び,結露させて雨滴を造り降雨させることを特徴とする人工降雨方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−82408(P2007−82408A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−271529(P2005−271529)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(301032126)有限会社ワンダー企画 (9)