説明

太陽熱利用ヒートポンプ給湯システム

【課題】高効率な太陽熱利用ヒートポンプ給湯システムを提供すること。
【解決手段】本発明の太陽熱利用ヒートポンプ給湯システムは、太陽熱を集熱して温水を生成する太陽熱温水器5と、太陽熱温水器5により生成された太陽熱温水を貯留するタンク1と、圧縮機21、放熱器22、膨張弁23、蒸発器24の順で冷媒が循環するヒートポンプ2と、タンク1の中部から取り出された太陽熱温水を放熱器22に送り、放熱器22で太陽熱温水が加熱されて生成した高温水をタンク1の上部に流入させる水加熱回路と、タンク1の中部から取り出された太陽熱温水を蒸発器24に送り、蒸発器24で太陽熱温水が冷却されて生成した冷水をタンク1の下部に流入させる水冷却回路と、タンク1の上部から取り出された高温水を需要端側に導く給湯配管305と、タンク1の中部から取り出された太陽熱温水を給湯配管305の高温水に混合可能な太陽熱温水混合配管308とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽熱利用ヒートポンプ給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽熱温水器によって太陽熱を集熱して市水を加熱し、生成された温水をタンクに貯留し、このタンクに貯留された温水の温度が目標とする給湯温度に不足している場合には、ヒートポンプによって追加の加熱を行い、必要な温度まで昇温させて需要側に供給することのできる太陽熱利用ヒートポンプ給湯システムが知られている。
【0003】
従来、太陽熱利用ヒートポンプ給湯システムとして、特許文献1には、熱交換部を設けた貯湯槽と、該熱交換部と太陽熱集熱器との間を循環液が循環する集熱循環路と、熱交換部内の下部循環液から熱を吸収する循環液熱源蒸発器および上部循環液に放熱する凝縮器を有するヒートポンプとを備えた給湯装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、太陽光発電および太陽熱集熱を行なうハイブリッド式太陽集熱器と、高温蓄熱槽および低温蓄熱槽と、低温蓄熱槽を低温側熱源として高温蓄熱槽内を昇温させるヒートポンプとを備えてなるハイブリッド式ソーラーシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−133262号公報
【特許文献2】特開平7−234020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のシステムでは、ヒートポンプの凝縮器により加熱された熱交換部内の上部循環液と、貯湯槽内の上半分の温水とが熱交換することにより、貯湯槽内の上半分の温水が均一に加熱される。特許文献2のシステムでは、高温蓄熱槽内にヒートポンプの凝縮器が設置されており、高温蓄熱槽内の温水が均一に加熱される。このように、特許文献1および2のシステムは、何れも、所定の加熱領域(特許文献1では貯湯槽内の上半分、特許文献2では高温蓄熱槽)の温水を均一に加熱する構成であるので、必要な温度の湯を得るためには、上記加熱領域の全体をその必要な温度まで加熱する必要がある。このため、必要な温度の湯を最小限の量だけ沸き上げるような動作ができず、給湯需要が小さい場合には湯が残って無駄になり、システム効率が低いという問題がある。
【0007】
また、特許文献1のシステムでは、ヒートポンプを稼動させた場合、貯湯槽内の上半分は太陽熱温水より高温となり、貯湯槽内の下半分は太陽熱温水より低温となるので、元の温度の太陽熱温水は消滅する。同様に、特許文献2のシステムでは、ヒートポンプを稼動させた場合、高温蓄熱槽は太陽熱温水より高温となり、低温蓄熱槽は太陽熱温水より低温となるので、元の温度の太陽熱温水は消滅する。このため、特許文献1および2のシステムでは、ヒートポンプを稼動させた場合、比較的低温の給湯需要に対しても、太陽熱温水を利用不能であり、ヒートポンプにより加熱された高温水だけで給湯熱量をまかなう必要がある。このため、必要な高温水の量が多くなるので、ヒートポンプの消費電力が大きくなり、システム効率が低下するという問題がある。
【0008】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、高効率な太陽熱利用ヒートポンプ給湯システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る太陽熱利用ヒートポンプ給湯システムは、太陽熱を集熱して温水を生成する太陽熱温水器と、太陽熱温水器により生成された太陽熱温水を貯留するタンクと、圧縮機、放熱器、膨張弁、蒸発器の順で冷媒が循環するヒートポンプと、タンクの中部から取り出された太陽熱温水を放熱器に送り、放熱器で太陽熱温水が加熱されて生成した高温水をタンクの上部に流入させる水加熱回路と、タンクの中部から取り出された太陽熱温水を蒸発器に送り、蒸発器で太陽熱温水が冷却されて生成した冷水をタンクの下部に流入させる水冷却回路と、タンクの上部から取り出された高温水を需要端側に導く給湯配管と、タンクの中部から取り出された太陽熱温水を給湯配管の高温水に混合可能な混合配管と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、太陽熱温水を、ヒートポンプの放熱器で加熱されて高温水となる被加熱水、およびヒートポンプの蒸発器で熱源となる熱源用水として利用するだけでなく、高温水と混合して需要側への給湯温度を調節する温調用水としても太陽熱温水を活用することができる。このため、高温水の沸き上げ量を抑制することができ、システム効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1の太陽熱利用ヒートポンプ給湯システムを示す構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1の太陽熱利用ヒートポンプ給湯システムにおける信号の流れを表すブロック図である。
【図3】本実施の形態1の太陽熱利用ヒートポンプ給湯システムの動作を説明するための模式図である。
【図4】本実施の形態1の太陽熱利用ヒートポンプ給湯システムの動作を説明するための模式図である。
【図5】本発明の実施の形態2の太陽熱利用ヒートポンプ給湯システムを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1の太陽熱利用ヒートポンプ給湯システムを示す構成図である。図1に示すように、本実施の形態1における太陽熱利用ヒートポンプ給湯システムは、湯水を貯留するタンク1と、ヒートポンプ2と、太陽熱温水器用ポンプ31と、ヒートポンプ用ポンプ32と、太陽熱温水混合弁41と、市水混合弁42と、ヒートポンプ用分配弁43と、太陽熱温水器5と、循環配管301と、市水配管302と、市水混合配管304と、給湯配管305と、水加熱配管306と、水冷却配管307と、太陽熱温水混合配管308と、制御手段100とを備えている。図示を省略するが、タンク1は、断熱材により覆われており、貯留した湯水を保温する機能を有している。
【0014】
太陽熱温水器5は、循環配管301を介して、タンク1と接続されている。すなわち、循環配管301は、タンク1の下部(タンク1の底部付近の部位)と、太陽熱温水器5の入水口とを接続している。また、循環配管301は、太陽熱温水器5の出水口と、タンク1の中部に設けられた太陽熱温水流入口11とを接続している。ここで、「タンク1の中部」とは、タンク1の底部と頂部との間の所定の高さ位置を意味し、必ずしもタンク1の全高の2分の1の高さ位置でなくてよい。循環配管301の途中には、太陽熱温水器用ポンプ31が設けられている。太陽熱温水器用ポンプ31を駆動すると、タンク1の下部から取り出された水が循環配管301を通って太陽熱温水器5に送られる。太陽熱温水器5は、太陽の輻射エネルギーを集熱し、水を加熱して温水を生成する。この温水(以下、「太陽熱温水」と称する)は、循環配管301を通ってタンク1に戻り、太陽熱温水流入口11からタンク1内に流入し、貯留される。
【0015】
ここで、冬期の凍結防止として、太陽熱温水器5の内部を流れる熱媒体をブラインで構成するようにしてもよい。この場合は、タンク1にブラインを流入させられないので、太陽熱温水器5で加熱されたブラインと、タンク1の下部から導かれる水とを例えばプレート式熱交換器などで熱交換する構成としてもよい。
【0016】
太陽熱温水器5は、太陽光発電パネル(図示せず)と一体的に形成されていてもよい。太陽光発電パネルは発電時に高温となるので、太陽光発電パネルと一体的に太陽熱温水器5を形成した場合には、太陽熱温水器5は、太陽の輻射エネルギーに加えて太陽光発電パネルの生成熱を集熱して水を加熱する。この場合、太陽光発電パネルの温度は、水に熱を奪われた分だけ低下する。太陽光発電パネルは、パネル温度が低いほど発電効率が上昇するという特性を持つ。このため、太陽光発電パネルの温度を低下させることにより、太陽光発電パネルでの発電量を増加させることができ、システム全体としてのエネルギー効率を更に高めることができる。
【0017】
ヒートポンプ2は、圧縮機21と、冷媒と水との熱交換を行う放熱器(凝縮器)22と、膨張弁23と、冷媒と水との熱交換を行う蒸発器24とを有し、この順で冷媒が循環するように構成されている。タンク1の中部に設けられた太陽熱温水取出口12と、ヒートポンプ用分配弁43とは、太陽熱温水配管303により接続されている。太陽熱温水取出口12の位置は、タンク1の高さ方向に関して、太陽熱温水流入口11と同じ高さでもよいし異なる高さでもよい。太陽熱温水配管303の途中には、ヒートポンプ用ポンプ32が設けられている。水加熱配管306は、ヒートポンプ用分配弁43と放熱器22との間、および、放熱器22とタンク1の上部との間を接続している。水冷却配管307は、ヒートポンプ用分配弁43と蒸発器24との間、および、蒸発器24とタンク1の下部との間を接続している。
【0018】
ヒートポンプ2およびヒートポンプ用ポンプ32を駆動すると、タンク1内に貯留された太陽熱温水が太陽熱温水取出口12から取り出され、この太陽熱温水はヒートポンプ用分配弁43にて水加熱配管306と水冷却配管307とに分配される。ヒートポンプ用分配弁43は、この分配比を制御可能に構成されている。水冷却配管307に流入した太陽熱温水は、蒸発器24に導かれて冷媒により冷却され、温度低下した水(以下、「冷水」と称する)となって、タンク1の下部に流入する。水加熱配管306に流入した太陽熱温水は、放熱器22に導かれて冷媒により加熱され、高温水となってタンク1の上部に流入する。
【0019】
市水配管302は、タンク1の下部に接続されている。この市水配管302により市水(水源からの水)がタンク1内に供給される。タンク1は、給湯配管305,309,310を介して、例えば蛇口、シャワー、浴槽等の給湯需要端と接続されている。給湯配管305と給湯配管309との接続部には、太陽熱温水混合弁41が設けられている。太陽熱温水混合配管308は、太陽熱温水配管303から分岐して延び、太陽熱温水混合弁41に接続されている。市水混合配管304は、市水配管302から分岐して延び、市水混合弁42に接続されている。
【0020】
タンク1の上部から取り出された高温水は、給湯配管305を通って太陽熱温水混合弁41に導かれる。また、太陽熱温水混合弁41には、太陽熱温水混合配管308により太陽熱温水が導かれる。太陽熱温水混合弁41は、その高温水と太陽熱温水とを混合し、その混合された湯を給湯配管309に流入させる。太陽熱温水混合弁41は、高温水と太陽熱温水との混合比を任意に制御可能になっている。市水混合弁42は、給湯配管309から供給される湯と、市水混合配管304から供給される市水とを混合し、給湯配管310に流入させる。市水混合弁42は、湯と市水との混合比を任意に制御可能になっている。
【0021】
制御手段100は、圧縮機21、膨張弁23、太陽熱温水器用ポンプ31、ヒートポンプ用ポンプ32、太陽熱温水混合弁41、市水混合弁42、ヒートポンプ用分配弁43の動作を制御する。
【0022】
タンク1には、高さ方向に間隔をおいて、タンク1内の水温を検出する貯湯温度センサ501a〜501fが設けられている。これらの貯湯温度センサ501a〜501fにより、タンク1内の鉛直方向の温度分布を検出することができる。図示の構成では、貯湯温度センサの個数は6個であるが、この個数はこれに限定されるものではない。
【0023】
水加熱配管306には、放熱器22の下流側にて高温水の温度を検出するための沸上温度センサ502が設けられている。水冷却配管307には、蒸発器24の下流側にて冷水の温度を検出するための冷水温度センサ507が設けられている。市水配管302には、市水温度を検出するための市水温度センサ504が設けられている。タンク1の最上部には、タンク1から導出される湯温を検出する導出温度センサ503が設けられている。給湯配管310には、需要端で使用される湯温を検出するための給湯温度センサ505が設けられている。循環配管301には、太陽熱温水器5の下流側にてタンク1に流入する太陽熱温水の温度を検出するための太陽熱温水温度センサ506が設けられている。給湯配管310には、需要端で使用される湯量を検出する給湯流量センサ601が設けられている。
【0024】
図2は、本発明の実施の形態1の太陽熱利用ヒートポンプ給湯システムにおける信号の流れを表すブロック図である。図2に示すように、制御手段100は、蓄熱量算出手段101、必要熱量予測手段104、加熱制御手段105、給湯目標温度設定手段107、ポンプ制御手段108、弁制御手段109、圧縮機制御手段110、膨張弁制御手段111等を有している。
【0025】
制御手段100には、時刻検出手段であるタイマー、貯湯温度センサ501a〜501f、沸上温度センサ502、導出温度センサ503、市水温度センサ504、給湯温度センサ505、太陽熱温水温度センサ506、冷水温度センサ507、給湯流量センサ601からの情報が入力される。制御手段100は、入力されたこれらの情報に基づいて、圧縮機21、膨張弁23、太陽熱温水器用ポンプ31、ヒートポンプ用ポンプ32、太陽熱温水混合弁41、市水混合弁42、ヒートポンプ用分配弁43を制御する。詳細は後述する。
【0026】
給湯目標温度設定手段107は、ユーザーインターフェース装置(例えば、台所、浴室等に設置されるリモコン装置)に入力されるユーザーの指示等に基づいて、給湯温度の目標値を設定する。蓄熱量算出手段101は、タンク1内の蓄熱量を算出する。蓄熱量は、貯湯温度センサ501a〜501fの情報と、市水温度センサ504の情報とに基づいて算出される。一般には、市水温度をエネルギーの基準温度としてタンク1内の温度分布を積分することによって算出される。ここで、一般的な給湯温度(例えば40℃)あるいは給湯目標温度より低い温度領域は積分しないようにして蓄熱量を算出してもよい。
【0027】
必要熱量予測手段104は、給湯に必要な熱量を予測し、算出する。給湯必要熱量は、ユーザーの過去の給湯使用実績や、最低限保証する既定の設計基準値などの情報に基づいて予測される。加熱制御手段105は、算出された必要熱量、蓄熱量、高温水領域の平均温度、太陽熱温水領域の平均温度等に基づいて、ヒートポンプ2の起動の要否を判定する。
【0028】
ポンプ制御手段108は、太陽熱温水器用ポンプ31、ヒートポンプ用ポンプ32の回転数を制御し、ポンプ循環量を調節する。弁制御手段109は、太陽熱温水混合弁41、市水混合弁42、ヒートポンプ用分配弁43の開度を制御し、流量比を調節する。圧縮機制御手段110は、圧縮機21の周波数を制御し、冷媒の循環量を調節する。膨張弁制御手段111は、膨張弁23の開度を調節する。
【0029】
以上、本実施の形態1の太陽熱利用ヒートポンプ給湯システムの構成について説明した。次に、本実施の形態1の太陽熱利用ヒートポンプ給湯システムの動作について、図3を用いて説明する。図3は、本実施の形態1の太陽熱利用ヒートポンプ給湯システムの動作を説明するための模式図である。なお、以下の説明において、具体的な数値を示して動作を説明した場合、その数値は一例であり、本発明がその数値に限定されるものではない。
【0030】
まず、本実施の形態1における太陽熱利用ヒートポンプ給湯システムの基本的な動作を説明する。市水配管302から供給される市水は、タンク1の下部から流入し、タンク1内に貯留される。タンク1内に貯留された市水は、太陽熱温水器用ポンプ31によって循環配管301を循環し、太陽熱温水器5に導かれて加熱されて太陽熱温水となり、太陽熱温水流入口11からタンク1内に流入し、貯留される。ここで、太陽熱温水流入口11より上部のタンク1内の水温が太陽熱温水の温度以下の場合、水の浮力(比重差)の作用により太陽熱温水がタンク1内で上方に移動するので、太陽熱温水流入口11がタンク1の中部に設けられていても、タンク1内の全体を太陽熱温水の温度(例えば35℃)まで上昇させることが可能である(図3参照)。
【0031】
ここで、制御手段100は、一般には太陽熱温水温度センサ506の出力が所定の温度範囲に収まるように太陽熱温水器用ポンプ31の回転数をフィードバック制御するが、予め定めた回転数で回転させるなどしてもよい。
【0032】
雨天時や外気温が低い場合など、太陽熱温水の温度が給湯目標温度より低い場合、太陽熱温水ではユーザーの給湯需要を満たせないので、ヒートポンプ2で追加の加熱を行う。この場合、タンク1内の太陽熱温水を太陽熱温水取出口12から導出し、ヒートポンプ用分配弁43にて分岐し、一方を放熱器22、他方を蒸発器24に導く。放熱器22に導いた太陽熱温水は加熱されて高温水(例えば65℃)となり、タンク1の上部に戻される。蒸発器24に導いた太陽熱温水は、ヒートポンプの冷媒に蒸発熱を供給し、冷却されて冷水(例えば20℃あるいは10℃)となり、タンク1の下部に戻される。
【0033】
このようにして太陽熱温水をヒートポンプの蒸発熱源とすることにより、ヒートポンプの蒸発熱源を室外空気(例えば冬期7℃)とする場合に比べて、ヒートポンプの蒸発温度を高くでき、ヒートポンプのサイクル効率を向上することができる。
【0034】
ここで、例えば太陽熱温水が不足する場合に備えて、室外空気と熱交換可能な空気熱交換器を、蒸発器24と並列または直列の回路で併設し、太陽熱温水が不足する場合には当該空気熱交換器にてヒートポンプの冷媒を蒸発させるように構成してもよい。
【0035】
タンク1の上部に流入した高温水は、タンク1内の太陽熱温水より比重が軽いため、タンク1内の太陽熱温水と混合することはなく、タンク1の上部から順に積層して貯まっていく。タンク1の下部に流入した冷水は、タンク1内の太陽熱温水より比重が重いため、タンク1内の太陽熱温水と混合することはなく、タンク1の下部から順に積層して貯まっていく。このようにして、タンク1内には、図3に示すように、上側から、高温水(例えば65℃)、太陽熱温水(例えば35℃)、冷水(例えば20℃あるいは10℃)の順で温度成層が形成される。
【0036】
タンク内の加熱領域を均一に加熱するシステムとは異なり、本実施形態のシステムでは、タンク1内に高温水と太陽熱温水とで温度成層を形成するようにして高温水を貯えることができるので、必要な温度の湯量を最小限だけ沸き上げる動作が可能である。このため、予測された給湯必要熱量が小さい場合には、ヒートポンプ2による沸き上げ動作を最小限に抑制することができ、システム効率を向上することができる。
【0037】
ヒートポンプ2による沸き上げ動作の制御として、制御手段100は、一般には目標とする加熱能力に応じて圧縮機21の周波数を制御し、蒸発器24の出口の過熱度が所定の範囲に収まるように膨張弁23の開度を制御し、沸上温度センサ502で検出される沸上温度(高温水の温度)と冷水温度センサ507で検出される冷水温度との両方が所定の温度範囲に収まるように、ヒートポンプ用ポンプ32の回転数とヒートポンプ用分配弁43の開度を調節するが、予め定めた制御定数で制御するなどしてもよい。
【0038】
タンク1内に貯えられた高温水は、湯が使用される需要端の要求に応じて、給湯配管305,309,310を通じて、需要端に供給することができる。また、本実施形態のシステムでは、需要端へ給湯する際に、タンク1内の太陽熱温水を太陽熱温水取出口12から取り出し、太陽熱温水混合配管308を介して太陽熱温水混合弁41に導き、タンク1からの高温水と混合させて需要端へ供給することができる。これにより、給湯需要に対して太陽熱温水の熱量を活用することができるので、高温水の使用量を低く抑えることができる。この点について、図3を参照して、数値例を挙げて説明する。
【0039】
冬期の曇りの日など、太陽熱温水器5による加熱のみでは、タンク1内の温度が35℃程度の場合、そのままでは給湯に使用できない温度なので、例えば65℃の高温水を必要な量だけ沸き上げる必要がある。ここでは、給湯需要を45℃・430リットルとし、市水温度を10℃とする。比較例では、この給湯需要に対し、太陽熱温水を活用せず、高温水の熱量だけで対応する。この比較例の場合には、65℃の高温水274リットルと、10℃の市水156リットルとを市水混合弁42にて混合して生成された45℃・430リットルの湯を需要端に供給することになる。これに対し、本実施形態では、高温水と混合して温度調節するための温調用水として太陽熱温水を活用することができる。このため、本実施形態の場合には、65℃の高温水143リットルと、35℃の太陽熱温水287リットルとを太陽熱温水混合弁41にて混合して生成された45℃・430リットルの湯を需要端に供給する。このように、比較例では高温水の必要量が274リットルであるのに対し、本実施形態では高温水の必要量が143リットルとなり、必要な高温水の量を顕著に削減することができる。このため、ヒートポンプ2による沸き上げ量を大幅に低減することができるので、消費電力を節減し、システム効率を向上することができる。
【0040】
温調用水として太陽熱温水を活用する場合、太陽熱温水の温度が高いほど、必要な高温水の量(熱量)は少なくなる。このため、ヒートポンプ2による沸き上げを行う際、貯湯温度センサ501a〜501fで検出される太陽熱温水の温度が高い場合には、太陽熱温水の温度が低い場合に比べて、タンク1内の上部に生成する高温水の熱量(高温水の量および温度の何れか一方または両方)が低くなるように沸き上げ動作を制御手段100により制御することが好ましい。これにより、太陽熱温水の温度が高い場合には、それに応じてヒートポンプ2による沸き上げ量を更に抑制することができるので、システム効率を更に向上することができる。
【0041】
また、本実施形態では、タンク1の太陽熱温水取出口12より下側の領域(以下、「冷却領域」と称する)に、太陽熱温水と冷水とで温度成層が形成されるように、ヒートポンプ2による沸き上げ動作(ヒートポンプ用ポンプ32の循環量等)を制御することが好ましい。この点について、図4を参照して説明する。図4中の上側の図は、タンク1内の冷却領域のほぼ全体が均一な温度(図示の例では20℃)に冷却されるように沸き上げ動作を行った場合を示す。これに対し、図4中の下側の図は、タンク1内の冷却領域に太陽熱温水と冷水(図示の例では10℃)とで温度成層が形成される、すなわち太陽熱温水と冷水との温度境界層の位置が太陽熱温水取出口12より下側になるように、沸き上げ動作を行った場合を示す。
【0042】
図4中の下側の図のように、タンク1内の冷却領域に太陽熱温水と冷水とで温度成層を形成した場合には、給湯の際に太陽熱温水取出口12から導出される太陽熱温水の温度が低下することなく高いまま維持することができるので、高温水の使用量を更に低く抑えることができる。また、冷却領域を均一に冷却した場合と比べ、タンク1の下部に生成する冷水の温度が低くなるので、太陽熱温水器5に送られる水の温度が低下する。このため、太陽熱温水器5の集熱効率を向上させることができる。また、太陽熱温水器5に太陽光発電パネルが一体的に形成されている場合には、太陽光発電パネルの温度をより低下させることができるので、太陽光発電パネルの発電効率を更に向上させることができる。
【0043】
本実施形態では、太陽熱温水取出口12、太陽熱温水配管303、ヒートポンプ用ポンプ32および水加熱配管306により水加熱回路が構成されている。また、太陽熱温水取出口12、太陽熱温水配管303、ヒートポンプ用ポンプ32および水冷却配管307により水冷却回路が構成されている。このように、本実施形態では、水加熱回路と水冷却回路とは、それらの流路の一部(太陽熱温水取出口12、太陽熱温水配管303およびヒートポンプ用ポンプ32)が共通化されている。これにより、装置構成を簡素化でき、コスト低減が図れる。
【0044】
また、本実施形態では、太陽熱温水取出口12が、水加熱回路と、水冷却回路と、太陽熱温水混合配管308とで共通化されている。これにより、装置構成を簡素化でき、コスト低減が図れる。ただし、本発明では、このような構成に限らず、タンク1に複数の太陽熱温水取出口を設け、水加熱回路と、水冷却回路と、太陽熱温水混合配管308とで太陽熱温水取出口を別々にしてもよい。
【0045】
また、本実施形態では、放熱器22とタンク1の上部との間の水加熱配管306から給湯配管305を分岐させている。すなわち、この分岐部とタンク1の上部との間の流路は、水加熱回路の流路の一部と、給湯配管の一部とを共通化した流路に相当している。本実施形態では、このような共通化により、装置構成を簡素化でき、コスト低減が図れる。ただし、本発明では、このような構成に限らず、水加熱配管306と給湯配管305とを別々にタンク1の上部に接続する構成としてもよい。
【0046】
実施の形態2.
次に、図5を参照して、本発明の実施の形態2について説明するが、上述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、同一部分または相当部分は同一符号を付し説明を省略する。図5は、本発明の実施の形態2の太陽熱利用ヒートポンプ給湯システムを示す構成図である。
【0047】
図5に示すように、本実施の形態2では、水加熱配管306aは、ヒートポンプ用分配弁43から放熱器22を経由して太陽熱温水混合弁41に接続されている。水加熱配管306bは、太陽熱温水混合弁41とタンク1の上部との間を接続する。給湯時には、タンク1の上部から取り出された高温水が水加熱配管306bを通って太陽熱温水混合弁41に導かれるとともに、太陽熱温水取出口12から取り出された太陽熱温水が太陽熱温水配管303、ヒートポンプ用分配弁43および水加熱配管306aを通って太陽熱温水混合弁41に導かれ、太陽熱温水混合弁41にて高温水と太陽熱温水とが混合されて給湯配管309に流入する。このように、本実施の形態2では、水加熱配管306bを給湯配管の一部として機能させることができ、また、水加熱配管306aを太陽熱温水混合配管として機能させることができる。
【0048】
上述したように、本実施の形態2では、水加熱回路の一部(水加熱配管306b)と、給湯配管の一部とを共通化したことにより、実施の形態1における給湯配管305を省略することができる。また、水加熱回路の一部(水加熱配管306a)と、太陽熱温水混合配管とを共通化したことにより、実施の形態1における太陽熱温水混合配管308を省略することができる。これらのことにより、装置構成をより簡素化でき、更なるコスト低減が図れる。
【0049】
また、本実施の形態2では、タンク1を覆う断熱材として、上部断熱材61および下部断熱材62が設けられている。上部断熱材61は、概ね太陽熱温水取出口12より上側の範囲においてタンク1の側面を覆っている。下部断熱材62は、概ね太陽熱温水取出口12より下側の範囲においてタンク1の側面を覆っている。下部断熱材62は、上部断熱材61と比べ、断熱性能が低い(熱抵抗値が低い)ものとして構成されている。例えば、上部断熱材61および下部断熱材62を同じ材料で構成する場合には、下部断熱材62の厚さを上部断熱材61より薄くすることにより、下部断熱材62の断熱性能を上部断熱材61より低くする。または、上部断熱材61と比べて熱伝導率の高い材料で下部断熱材62を構成してもよい。例えば、上部断熱材61に真空断熱材を用い、下部断熱材62に発泡ポリスチレン等の発泡性成形断熱材を用いることができる。この場合、上部断熱材61は真空断熱材と発泡性成形断熱材とを組み合わせて構成されていてもよい。
【0050】
下部断熱材62に覆われた領域におけるタンク1内の貯湯温度は、上部断熱材61に覆われた領域におけるタンク1内の貯湯温度より低い。このため、下部断熱材62に覆われた領域におけるタンク1からの放熱量は少ないため、下部断熱材62の断熱性能を上部断熱材61より低くしても、放熱ロスはそれほど増加しない。一方、下部断熱材62の断熱性能を上部断熱材61より低くすることにより、下部断熱材62の製造コストを大幅に低減することができる。したがって、下部断熱材62の断熱性能を上部断熱材61より低くすることにより、システム効率をほとんど低下させずに、より安価なシステムを構築することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 タンク
2 ヒートポンプ
5 太陽熱温水器
11 太陽熱温水流入口
12 太陽熱温水取出口
21 圧縮機
22 放熱器
23 膨張弁
24 蒸発器
31 太陽熱温水器用ポンプ
32 ヒートポンプ用ポンプ
41 太陽熱温水混合弁
42 市水混合弁
43 ヒートポンプ用分配弁
61 上部断熱材
62 下部断熱材
100 制御手段
301 循環配管
302 市水配管
303 太陽熱温水配管
304 市水混合配管
305,309,310 給湯配管
306,306a,306b水加熱配管
307 水冷却配管
308 太陽熱温水混合配管
501a〜501f 貯湯温度センサ
502 沸上温度センサ
503 導出温度センサ
504 市水温度センサ
505 給湯温度センサ
506 太陽熱温水温度センサ
507 冷水温度センサ
601 給湯流量センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽熱を集熱して温水を生成する太陽熱温水器と、
前記太陽熱温水器により生成された太陽熱温水を貯留するタンクと、
圧縮機、放熱器、膨張弁、蒸発器の順で冷媒が循環するヒートポンプと、
前記タンクの中部から取り出された前記太陽熱温水を前記放熱器に送り、前記放熱器で前記太陽熱温水が加熱されて生成した高温水を前記タンクの上部に流入させる水加熱回路と、
前記タンクの中部から取り出された前記太陽熱温水を前記蒸発器に送り、前記蒸発器で前記太陽熱温水が冷却されて生成した冷水を前記タンクの下部に流入させる水冷却回路と、
前記タンクの上部から取り出された前記高温水を需要端側に導く給湯配管と、
前記タンクの中部から取り出された前記太陽熱温水を前記給湯配管の前記高温水に混合可能な混合配管と、
を備える太陽熱利用ヒートポンプ給湯システム。
【請求項2】
前記タンク内に前記太陽熱温水と前記冷水とで温度成層を形成する請求項1記載の太陽熱利用ヒートポンプ給湯システム。
【請求項3】
前記タンク内に前記高温水と前記太陽熱温水とで温度成層を形成する請求項1または2記載の太陽熱利用ヒートポンプ給湯システム。
【請求項4】
前記太陽熱温水の温度が高い場合には前記太陽熱温水の温度が低い場合に比して前記ヒートポンプの作動により前記タンク内の上部側に生成する前記高温水の熱量が低くなるように制御する制御手段を備える請求項1乃至3の何れか1項記載の太陽熱利用ヒートポンプ給湯システム。
【請求項5】
前記太陽熱温水器は、太陽光発電パネルと一体的に形成され、前記太陽光発電パネルの生成熱を集熱可能に構成される請求項1乃至4の何れか1項記載の太陽熱利用ヒートポンプ給湯システム。
【請求項6】
前記タンクの中部から前記太陽熱温水を取り出す太陽熱温水取出口が、前記水加熱回路と、前記水冷却回路と、前記混合配管とで共通化されている請求項1乃至5の何れか1項記載の太陽熱利用ヒートポンプ給湯システム。
【請求項7】
前記水加熱回路の流路の一部と、前記給湯配管の一部とが共通化されている請求項1乃至6の何れか1項記載の太陽熱利用ヒートポンプ給湯システム。
【請求項8】
前記水加熱回路の流路の一部と、前記水冷却回路の流路の一部とが共通化されている請求項1乃至7の何れか1項記載の太陽熱利用ヒートポンプ給湯システム。
【請求項9】
前記水加熱回路の流路の一部と、前記混合配管とが共通化されている請求項1乃至8の何れか1項記載の太陽熱利用ヒートポンプ給湯システム。
【請求項10】
前記タンクを覆う上部断熱材と、
前記上部断熱材の下方において前記タンクを覆う下部断熱材とを備え、
前記下部断熱材は、前記上部断熱材と比べて断熱性能が低くされている請求項1乃至9の何れか1項記載の太陽熱利用ヒートポンプ給湯システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−92337(P2013−92337A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236175(P2011−236175)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】