説明

太陽熱温水装置の異常判定方法

【課題】 集熱ポンプの駆動電源として太陽電池パネルからの電力を利用する場合に、集熱不良発生を確実に判定して、集熱不良が集熱側施設の不良発生に起因するものか、発電側施設の不良発生に起因するものかを自動判別し得る太陽熱温水装置の異常判定方法を提供する。
【解決手段】 太陽電池パネルの出力電圧を監視し、出力電圧が集熱ポンプ駆動に充足する状態であれば(S1でYES)、集熱ポンプを商用電源により強制駆動した際に熱媒温度又は温水温度の一定以上昇温が非検知の状態が継続すれば(S2でYES)、集熱側施設の異常と判定する(S3)。出力電圧が一定出力以下の状態を継続するときに(S4でYES)、前記熱媒温度又は温水温度が一定以上昇温すれば(S5でYES)、発電側施設の異常と判定する(S6)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱媒を集熱パネルと貯湯タンクとの間で強制循環させる集熱ポンプの駆動電源として、太陽電池パネル(PVパネル;Photovoltaic Panel)により発電された電力を利用する太陽熱温水装置の異常判定方法に関し、特に集熱不良(集熱不能)が発生したときに、その原因が集熱のための施設側に不良が発生したためか、発電のための施設側に不良が発生したためかを、判定・検知し得るようにするための技術に係る。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池を太陽熱温水装置に組み合わせたものとして、日射量検出のための手段として太陽電池を用いた例が特許文献1にて提案されている。このものでは、太陽電池を集熱パネルの近傍位置に設置し、集熱パネルへの日射量を太陽電池により検出し、検出された日射量を用いて集熱効率を演算して求め、この集熱効率に基づいて太陽熱温水装置の作動制御を行うようにしている。
【0003】
又、特許文献2では、太陽光から発電する太陽光発電装置や、太陽熱から集熱する太陽熱温水器などのエネルギー変換機器の異常を監視する装置が提案されている。このものでは、これらのエネルギー変換機器の各出力量をこれらエネルギー変換機器が臨む方角毎に分類し、同じ方角毎の出力量同士を比較して類似性を求め、この類似性に基づいて各エネルギー変換機器が異常であるか否かを判定することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−139818号公報
【特許文献2】特許第3896063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本発明者において、集熱パネルの他に太陽電池パネルを設置し、この太陽電池パネルにより発電された電力を、集熱用の熱媒を強制循環させるための集熱ポンプの駆動電源として用いることが検討されている。しかしながら、集熱パネルによる集熱も、太陽電池パネルによる発電も、いずれも太陽の光又は熱という自然エネルギーを利用するものであって天候に左右されるため、集熱と発電のいずれか一方が不調に陥るということはなく、好天であれば共に活性化し、悪天であれば共に不活性化するという特性を有する。従って、何らかの原因で集熱ができない集熱不良状況に陥ってしまったとしても、不良状態発生の検知すら困難である上に、それが集熱側施設の異常に原因があるのか、発電側施設の異常に原因があるのか、いずれの側の不良に起因するものであるかの自動判別はさらに困難なものとなる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、集熱ポンプの駆動電源として太陽電池パネルにより発電された電力を利用するようにした太陽熱温水装置において、集熱不良状況の発生を確実に検知し得ると共に、その集熱不良が集熱側施設の不良発生に起因するものか、発電側施設の不良発生に起因するものかを自動判別し得る太陽熱温水装置の異常判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明では、太陽熱を集熱して熱媒を加熱する集熱パネルと、貯湯タンクと、この貯湯タンク内の湯水を熱交換加熱するための熱交換器と、集熱ポンプの作動により前記集熱パネルと前記熱交換器との間で熱媒を循環させることで前記貯湯タンク内の湯水を熱交換加熱して貯湯として蓄熱させる集熱循環回路と、前記集熱パネルと共に設置され、太陽光を受けて発電された電力を前記集熱ポンプの駆動電源として供給する太陽電池パネルとを備えた太陽熱温水装置の異常判定方法を対象にして次の特定事項を備えることとした。すなわち、前記太陽電池パネルからの出力が予め定めた設定出力以下を継続するとき、その継続している間に前記集熱ポンプを商用電源により強制作動させ、強制作動に基づく前記熱媒の循環により集熱される集熱量の状況を監視し、その集熱量の状況が予め定めた集熱量状況以上であれば、前記太陽電池パネルの発電又は送電に係る設備に異常が発生していると判定することとした(請求項1)。
【0008】
本発明の場合、太陽電池パネルを組み合わせて省エネルギー化を図った太陽熱温水装置において、万一、集熱不良が発生しても、その集熱不良が太陽電池パネル側の設備の不良発生に起因するものであることを、確実にかつ自動的に判別することが可能となる。自動判別が可能であることにより、集熱不良発生の原因が発電側施設の異常にあることの情報をユーザに報知することが可能となり、これにより、復旧のための対策処理を的確に行うことが可能となる。
【0009】
本発明の太陽熱温水装置の異常判定方法において、前記太陽電池パネルからの出力が前記集熱ポンプを駆動し得る出力以上である状態において、前記集熱ポンプを強制作動させ、強制作動に基づく前記熱媒の循環により集熱される集熱量の状況を監視し、その集熱量の状況が予め定めた集熱量状況に満たないものであれば、前記集熱パネル又は集熱循環回路の側に異常が発生していると判定するようにすることができる(請求項2)。このようにすることにより、集熱不良が発生した場合に、その集熱不良が集熱パネル等の側の設備の異常に起因するものであることを、確実にかつ自動的に判別することが可能となる。これにより、集熱不良が生じた場合に、その集熱不良が集熱側施設の不良発生に起因するものか、発電側施設の不良発生に起因するものかを自動判別し得ることになる。そして、この情報をユーザに報知することにより、復旧のための対策処理をより一層的確に行うことが可能となる。なお、前記の集熱ポンプの強制駆動は商用電源により行っても、あるいは、太陽電池パネルからの出力により行っても、いずれでもよい。
【発明の効果】
【0010】
以上、説明したように、本発明の太陽熱温水装置の異常判定方法によれば、太陽電池パネルを組み合わせて省エネルギー化を図った太陽熱温水装置において、万一、集熱不良が発生しても、その集熱不良が太陽電池パネル側の設備の不良発生に起因するものであることを、確実にかつ自動的に判別することができる。そして、集熱不良発生の原因が発電側施設の異常にあることの情報をユーザに報知することにより、復旧のための対策処理を的確に行うことができるようになる。
【0011】
特に請求項2によれば、太陽電池パネルからの出力が前記集熱ポンプを駆動し得る出力以上である状態において、集熱ポンプを強制作動させ、強制作動に基づく前記熱媒の循環により集熱される集熱量の状況を監視し、その集熱量の状況が予め定めた集熱量状況に満たないものであれば、集熱パネル又は集熱循環回路の側に異常が発生していると判定するようにすることで、集熱不良が生じた場合に、その集熱不良が集熱側施設の不良発生に起因するものか、発電側施設の不良発生に起因するものかを自動判別することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の太陽熱温水装置の異常判定方法に係る実施形態を適用する太陽熱温水装置を示す模式図である。
【図2】太陽熱温水装置の異常判定方法の制御ブロック図である。
【図3】集熱不良発生時における異常箇所判定処理に係る制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る異常判定方法を実施する対象の太陽熱温水装置を示す。同図中の符号1は内部を通る熱媒(例えば不凍液)に太陽熱を集熱させるための集熱パネル、2は太陽光を受けて発電する太陽電池パネル、3は貯湯タンク、4は集熱パネル1と貯湯タンク3内の熱交換器43との間に熱媒を循環させることにより熱媒の熱を貯湯タンク3内に貯湯として蓄熱する集熱循環回路、5は外部から水道水等を貯湯タンク3内に給水する給水路、6は貯湯タンク3内の貯湯を用いて給湯栓(図示省略)等に給湯するために出湯する出湯路、7はこの太陽熱温水装置の作動制御を行うコントローラである。
【0015】
集熱パネル1は、例えば家屋の屋根や集合住宅のベランダ等に設置され、その頂部位置近傍には前記の循環熱媒の温度Tsを検出する集熱パネル温度センサ11が設置されている。この集熱パネル温度センサ11についてより詳しく説明すると、この集熱パネル温度センサ11は集熱パネル1を構成するフィンの温度を検出することにより循環熱媒の温度を検出するものであり、この集熱パネル温度センサ11により検出される前記のフィン温度は、集熱により最も昇温した状態の熱媒の熱媒温度Tsと同等であり、フィン温度の検出により熱媒温度Tsを検出するようになっている。
【0016】
太陽電池パネル2は、集熱パネル1と同様の場所であって集熱パネル1の近傍位置に設置され、太陽光を受けて発電した電力を制御器21を介して集熱ポンプ41に対し駆動電源として供給するように集熱ポンプと接続されている。制御器21には太陽電池パネル2からの電力供給ラインに加えて、商用電源8からの電源供給ラインも接続されている。そして、制御器21は、太陽電池パネル2からの出力電圧を監視してコントローラ7に出力する電圧計の機能と、集熱ポンプ41に対する駆動電源供給を通常時には太陽電池パネル2からとする一方、所定時(例えば後述のエアパージ運転時)には商用電源8に切換える電源供給の切換機能とを備えて構成されている。
【0017】
貯湯タンク3は、例えばステンレス鋼により密閉式に構成された密閉容器である。この貯湯タンク3には、貯湯タンク3内の底部付近の湯又は水(以下「湯水」という)の温度Ttを検出する貯湯タンク温度センサ31が設置されている。給水路5は、その上流端が外部の水道管等に接続され、下流端が図示省略の逆止弁等を介して貯湯タンク3の底部に接続されている。この給水路5には給水温度を検出する給水温度センサ51や給水流量を検出する給水流量センサ52が介装されている。又、出湯路6は、その上流端が貯湯タンク3の頂部に接続され、貯湯タンク3の頂部近傍には貯湯タンク3から出湯した湯の温度を検出する出湯温度センサ61が介装されている。
【0018】
集熱循環回路4は、集熱ポンプ41の作動により熱媒を循環経路42を通して集熱パネル1と貯湯タンク3内の蓄熱用熱交換器(例えばコイル型熱交換器)43との間で循環させるように構成されたものである。集熱ポンプ41は、例えばDCポンプ等の可変流量ポンプにより構成されて、その吐出能力が増減調整可能となっている。
【0019】
循環経路42は、集熱パネル1の内部に通されて昇温した高温の熱媒をその頂部近傍から導出させて貯湯タンク3内の蓄熱用熱交換器43の入側に導く往き路42aと、蓄熱用熱交換器43で熱交換されて低温になった熱媒を蓄熱用熱交換器43の出側から導出させて集熱パネル1の底部まで戻す戻り路42bとから構成されている。戻り路42bには半密閉式のタンク44が介装され、このタンク44の頂部は連通管451を介してリザーブタンク45の底部と連通されている。この連通管451を通してタンク44内からあふれた熱媒をリザーブタンク45内に逃がすようになっている。これらタンク44とリザーブタンク45との組み合わせにより膨張タンクが構成されている。
【0020】
以上の太陽熱温水装置はリモコン71からの入力設定信号・操作信号の出力や、温度センサ11,31及び制御器21等からの検出信号の出力を受けて、コントローラ7により作動制御されるようになっている。コントローラ7は、MPUやメモリ等を備え、予め搭載されたプログラムの実行や制御回路により各種制御が行われるようになっている。そして、コントローラ7は、作動制御のために、図2に示すように集熱運転を行う集熱運転制御手段72と、集熱循環回路4内に発生したり侵入したりした気泡を排除するために集熱ポンプ41を所定時間経過毎に定期的に作動させるエアパージ制御手段73と、集熱不良を検知して集熱側施設又は発電側施設のいずれに不良発生(異常発生)であるかを判定・検知する異常箇所判定処理手段74とを備える他、図示省略の給湯制御手段等を備えている。
【0021】
まず、集熱運転制御手段72による集熱運転制御について簡単に説明すると、貯湯タンク3の蓄熱量は不足していることを例えば貯湯タンク温度センサ31により検出される湯水温度Ttに基づいて確認し、かつ、集熱パネル温度センサ11により検出される熱媒温度Tsが前記の湯水温度Ttよりも所定の温度差α℃(例えば6℃)以上の高温であることを確認し、これらの開始条件の成立を確認した上で集熱ポンプ41を作動させて集熱運転が開始される。この集熱運転制御手段72による集熱運転制御が行われるときは、集熱ポンプ41に対して太陽電池パネル2からの電力が制御器21を介して駆動電源として供給されることになる。
【0022】
これにより、集熱パネル1から高温の熱媒が往き路42aを通して蓄熱用熱交換器43に供給され、蓄熱用熱交換器43において貯湯タンク3内の湯水を熱交換加熱することにより低温になった熱媒が戻り路42bを通して集熱パネル1に戻される。集熱パネル1に戻された熱媒は集熱パネル1内を頂部に進行する間に再加熱され、再び高温になった熱媒が往き路42aを通して蓄熱用熱交換器43に供給されるというように循環される。そして、貯湯タンク3内の湯水が熱交換加熱されることにより、熱媒に担持された集熱熱量が貯湯タンク3内の湯水に移動し、貯湯として貯湯タンク3内に蓄熱されることになる。
【0023】
エアパージ制御手段73によるエアパージ運転制御は次のようにして行われる。すなわち、エアパージ運転は、前記の集熱運転の開始条件が非成立のままに例えば24時間が経過したとき、つまり、集熱運転が実行されないまま例えば24時間したときに、開始される。エアパージ運転制御そのものは、集熱ポンプ41を所定の短時間(例えば5分間)作動させて終了する。この集熱ポンプ41の作動により、熱媒を循環経路42内に循環させて、集熱運転が実行されずに経過した時間内に内部に発生又は侵入したかもしれない気泡が強制的にパージ(排除)されることになる。一方、エアパージ運転が開始されるということ、すなわち、集熱運転が実行されないまま例えば24時間経過したということは、天候の影響で集熱運転のための開始条件が成立しなかった場合もあるが、何らかの異常発生により集熱運転が不能となっている、つまり集熱不良状態に陥っているおそれも考えられる。そこで、エアパージ運転の開始をもって、異常箇所判定処理手段74による異常箇所判定処理を開始させるようにしてもよいが、本実施形態では以下の如く、正常な集熱運転が停止すれば、異常箇所判定処理手段74による異常箇所判定処理による監視を開始させるようにしている。なお、前記の異常箇所判定処理による監視を常に継続して実行させるようにしてもよい。
【0024】
すなわち、図3に示すように、制御器21により監視されている太陽電池パネル2の出力電圧が充足しているか否か、つまり現在の出力電圧が集熱ポンプ41を駆動させるに足る所定の第1閾値(例えば0.7V)以上であるか否かを判定する(ステップS1)。出力電圧が充足していれば(ステップS1でYES)、次に、集熱量が有るか否かをみて集熱量がない状態が継続しているか否か、つまり“集熱量有り”を非検知の状態が第1設定時間(例えば10日間〜30日間)継続しているか否かを判定する(ステップS2)。この集熱量状況に関する判定は、前記で説明したエアパージ運転を利用して行う。すなわち、エアパージ運転制御により商用電源8からの電源供給を受けて集熱ポンプ41が作動され、これにより、熱媒が循環経路42を循環される。この際に、戻り路42bを通して貯湯タンク3から集熱パネル1に供給される熱媒温度と、集熱パネル1を通過した後に往き路42aを通して貯湯タンク3に供給される熱媒温度との差温βが所定の設定値(例えば5℃)以上あれば“集熱量有り”を検知したと判定する一方、その差温βが前記設定値未満であれば“集熱量有り”を検知できない、つまり非検知だと判定する。前記の集熱パネル1に供給される熱媒温度は貯湯タンク温度センサ31により検出される湯水温度Ttで置き換えることができ、又、前記の貯湯タンク3に供給される熱媒温度は集熱パネル温度センサ11により検出される熱媒温度Tsで置き換えることができるため、前記の差温βとは、結局は熱媒温度Tsと湯水温度Ttとの差温を用いることができ、温度センサを別途設ける必要性を省略することができる。なお、前記の差温βが所定の設定値(例えば5℃)以上あることが、予め定めた集熱量状況にあることを意味している。なお、この場合の集熱ポンプの駆動は、太陽電池パネル2から出力電圧が充足しているため、その出力により行うようにしてもよい。
【0025】
そして、前記の第1設定時間が経過する間に“集熱量有り”との検知があれば(ステップS2でNO)、太陽電池パネル2の側の出力電圧は充足した状態にあるし(ステップS1でYES)、集熱パネル1の側の集熱量も有るため、何の異常もなく不良箇所はない状態であるため、最初にリターンして、次の異常箇所判定処理の開始を待つ。
【0026】
逆に、ステップS2で、前記の第1設定時間が経過する間中、継続して“集熱量有り”が非検知であれば(ステップS2でYES)、太陽電池パネル2の側の出力電圧は充足した状態にある、つまり太陽熱からの集熱が可能な状況にあるにも拘わらず、循環熱媒の温度変化としては検知できないことから、集熱側設備に異常が発生していると判定し、異常処理を実行して終了する(ステップS3)。ここで、集熱側設備の異常としては、集熱パネル1や循環経路42等の配管詰まりや、器具外に設置されているバルブが誤って閉められた状態にある等の発生が想定される。このため、異常処理としては、リモコン71を通して、集熱側設備に異常が発生して集熱不能に陥っていると判断される旨、メンテナンスを担当するサービスマンに連絡が必要である旨等をユーザに報知する。報知としては、液晶表示部に文字情報等で表示したり、音声回路を用いた人工音声によりアナウンスしたりすればよい。
【0027】
一方、ステップS1で、太陽電池パネル2の出力電圧が充足していないと判定された場合には(ステップS1でNO)、さらに、ステップS4で太陽電池パネル2の出力電圧の状況を分析する。すなわち、出力電圧が所定の第2閾値(例えば0.5V)以下という出力電圧の非充足状態が連続して所定の第2設定時間(例えば10日間)が経過するまで継続するか否かを判定する(ステップS4)。出力電圧の非充足状態が継続せずに第2設定時間の経過前に出力電圧が前記第2閾値よりも高くなるのであれば(ステップS4でNO)、一時的なものであったと判定し、再度、ステップS1に戻って各処理を繰り返す。
【0028】
逆に、出力電圧の非充足状態が第2設定時間の経過する間継続しているのであれば(ステップS4でYES)、次に、“集熱量有り”を検知するか否かを判定する(ステップS5)。この場合の“集熱量有り”を検知するか否かの判定は、前記のステップS2の判定処理の場合と同様にエアパージ運転を利用して行う。そして、例えば5分間のエアパージ運転の間に、前記の差温βが設定値(例えば5℃)以上の状態を連続して所定の第3設定時間(例えば1分間)継続することを検知し、かつ、この検知を、今回までの過去連続した設定日数(例えば10日間)の間に生じたエアパージ運転において2回得たこと、という条件が成立すれば、“集熱量有り”を検知したと判定する(ステップS5でYES)。 “集熱量有り”を検知したと判定した場合には(ステップS5でYES)、発電側施設に異常が発生していると判定し、異常処理を実行して終了する(ステップS6)。ここで、発電側設備の異常としては、特に誤配線、接触不良等の配線に係る不良に基づくものが想定される。そして、異常処理としては、リモコン71を通して、発電側設備に異常が発生して集熱不能に陥っていると判断される旨、メンテナンスを担当するサービスマンに連絡が必要である旨等をユーザに報知する。報知としては、前記と同様に、文字情報等による表示や、人工音声によるアナウンスを行えばよい。
【0029】
なお、ステップS5の判定において、“集熱量有り”の検知が得られなかった場合には(ステップS5でNO)、発電側設備及び集熱側設備のいずれもが異常状態に陥っているためなのか、天候状態において太陽が出ない悪天が極めて長期に亘り継続しているためなのか、の判別が不能であるため、再度、ステップS1に戻って各処理を繰り返すようにしている。
【0030】
以上の実施形態の場合、集熱ポンプ41の駆動電源として太陽電池パネル2により発電された電力を利用することで省エネルギー化を図ることができる。そして、太陽電池パネル2を組み合わせて省エネルギー化を図った太陽熱温水装置において、万一、集熱不良が発生しても、その集熱不良状況の発生を確実に検知することができる上に、その集熱不良が集熱側施設の不良発生に起因するものか、発電側施設の不良発生に起因するものかを、確実にかつ自動的に判別することができる。そして、自動判別に基づき、集熱不良発生に加えて、集熱側設備か発電側設備かのいずれに異常が生じているかの情報をユーザに報知することができ、これにより、復旧のための対策処理を的確に行わすことができるようになる。
【0031】
<他の実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、前記実施形態では、集熱量についての検知を、差温βが設定温度以上あるか否かに基づいて行っているが、これに限らず、例えばエアパージ運転により熱媒を強制循環させることで、貯湯タンク3内の湯水の温度、つまり貯湯タンク温度センサ31により検出される湯水温度Ttが所定の設定温度以上に上昇したか否かに基づいて、集熱量についての検知を行うようにしてもよい。
【0032】
又、前記実施形態では熱交換器43が貯湯タンク3内に設置された例を示したが、これに限らず、熱交換器が貯湯タンク3の外部に設置され、この熱交換器に対し集熱循環回路の熱媒を熱源側に循環供給する一方、貯湯タンク3内の湯水を他の集熱ポンプにより被加熱側に循環供給することで、貯湯タンク内の湯水が熱媒により熱交換加熱される太陽熱温水装置に本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0033】
1 集熱パネル
2 太陽電池パネル
3 貯湯タンク
4 集熱循環回路
11 集熱パネル温度センサ(熱媒温度検出手段)
21 制御器(電圧計)
41 集熱ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽熱を集熱して熱媒を加熱する集熱パネルと、貯湯タンクと、この貯湯タンク内の湯水を熱交換加熱するための熱交換器と、集熱ポンプの作動により前記集熱パネルと前記熱交換器との間で熱媒を循環させることで前記貯湯タンク内の湯水を熱交換加熱して貯湯として蓄熱させる集熱循環回路と、前記集熱パネルと共に設置され、太陽光を受けて発電された電力を前記集熱ポンプの駆動電源として供給する太陽電池パネルとを備えた太陽熱温水装置の異常判定方法であって、
前記太陽電池パネルからの出力が予め定めた設定出力以下を継続するとき、その継続している間に前記集熱ポンプを商用電源により強制作動させ、強制作動に基づく前記熱媒の循環により集熱される集熱量の状況を監視し、その集熱量の状況が予め定めた集熱量状況以上であれば、前記太陽電池パネルの発電又は送電に係る設備に異常が発生していると判定する、
ことを特徴とする太陽熱温水装置の異常判定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の太陽熱温水装置の異常判定方法であって、
前記太陽電池パネルからの出力が前記集熱ポンプを駆動し得る出力以上である状態において、前記集熱ポンプを強制作動させ、強制作動に基づく前記熱媒の循環により集熱される集熱量の状況を監視し、その集熱量の状況が予め定めた集熱量状況に満たないものであれば、前記集熱パネル又は集熱循環回路の側に異常が発生していると判定する、太陽熱温水装置の異常判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−29247(P2013−29247A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165449(P2011−165449)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)