説明

太陽電池の検査装置、太陽電池の検査方法、プログラム、太陽電池の検査システム

【課題】欠陥として検出すべき暗領域の判別が可能な太陽電池の検査装置を提供する。
【解決手段】本発明の太陽電池の検査装置10は、通電された状態の太陽電池セルを表すセル画像を取得する画像取得部13と、周囲よりも明度が低い線状の画素群をセル画像内で特定し、ひびの位置情報を生成するひび位置情報生成部14と、所定以下の明度の画素が集合した、所定以上の面積の画素群をセル画像内で特定し、暗領域の位置情報を生成する暗領域位置情報生成部15と、暗領域とひびとの位置関係に基づいて、暗領域がひびに起因する暗領域であるか否かの判定を行う暗領域判定部16と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池の検査装置、太陽電池の検査方法、プログラム、太陽電池の検査システムに関し、特に、太陽電池セルの欠陥の特定に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光のエネルギーを電力に変換する太陽電池は、一般に、シリコン等の半導体で構成される。こうした太陽電池は、通電によって発光することが知られており、特許文献1には、通電時の太陽電池セルの全体的な光量に基づいて、当該太陽電池セルの良否判定を行う技術が開示されている。
【特許文献1】WO/2006/059615
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、太陽電池セルには、通電時の発光が比較的弱い暗領域(ダークエリア)が欠陥として存在することがある。こうした暗領域は、明らかに明度が低いものから、周囲と比較してやや明度が低いものまで、様々な明度で存在する。
【0004】
しかしながら、こうした暗領域を通常の2値化処理で検出しようとした場合、太陽電池セルの結晶の粒界なども検出されてしまい、欠陥として検出すべき暗領域の判別が困難である。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて為されたものであり、欠陥として検出すべき暗領域の判別が可能な太陽電池の検査装置、太陽電池の検査方法、プログラム、太陽電池の検査システムを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の太陽電池の検査装置は、通電された状態の1または複数の太陽電池セルを表すセル画像を取得する画像取得手段と、周囲よりも明度が低い線状の画素群を前記セル画像内で特定し、前記太陽電池セルのひびの位置情報を生成するひび位置情報生成手段と、所定以下の明度の画素が集合した、所定以上の面積の画素群を前記セル画像内で特定し、前記太陽電池セルの暗領域の位置情報を生成する暗領域位置情報生成手段と、前記暗領域と前記ひびとの位置関係に基づいて、前記暗領域が前記ひびに起因する暗領域であるか否かの判定を行う暗領域判定手段と、を備える。
【0007】
また、本発明の太陽電池の検査方法は、通電された状態の1または複数の太陽電池セルを表すセル画像を取得し、周囲よりも明度が低い線状の画素群を前記セル画像内で特定し、前記太陽電池セルのひびの位置情報を生成し、所定以下の明度の画素が集合した、所定以上の面積の画素群を前記セル画像内で特定し、前記太陽電池セルの暗領域の位置情報を生成し、前記暗領域と前記ひびとの位置関係に基づいて、前記暗領域が前記ひびに起因する暗領域であるか否かの判定を行う。
【0008】
また、本発明のプログラムは、通電された状態の1または複数の太陽電池セルを表すセル画像を取得する画像取得手段、周囲よりも明度が低い線状の画素群を前記セル画像内で特定し、前記太陽電池セルのひびの位置情報を生成するひび位置情報生成手段、所定以下の明度の画素が集合した、所定以上の面積の画素群を前記セル画像内で特定し、前記太陽電池セルの暗領域の位置情報を生成する暗領域位置情報生成手段、及び、前記暗領域と前記ひびとの位置関係に基づいて、前記暗領域が前記ひびに起因する暗領域であるか否かの判定を行う暗領域判定手段、としてコンピュータを機能させることを特徴とする。コンピュータは、例えばパーソナルコンピュータ等である。また、プログラムは、CD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体に格納されてよい。
【0009】
更に、本発明の太陽電池の検査システムは、通電された状態の1または複数の太陽電池セルを撮像し、前記太陽電池セルを表すセル画像を生成する撮像部と、前記セル画像を取得する画像取得手段と、周囲よりも明度が低い線状の画素群を前記セル画像内で特定し、前記太陽電池セルのひびの位置情報を生成するひび位置情報生成手段と、所定以下の明度の画素が集合した、所定以上の面積の画素群を前記セル画像内で特定し、前記太陽電池セルの暗領域の位置情報を生成する暗領域位置情報生成手段と、前記暗領域と前記ひびとの位置関係に基づいて、前記暗領域が前記ひびに起因する暗領域であるか否かの判定を行う暗領域判定手段と、を備える。
【0010】
本発明者等は、欠陥として検出すべき暗領域がひびに起因することを見出した。そこで、暗領域とひびとの位置関係に基づいた判定を行うことで、ひびに起因する暗領域の検出精度を向上させることができる。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記ひび位置情報生成手段は、前記セル画像内で明度の変化の境界部分を特定し、前記太陽電池セルのひびの位置情報を生成する。また、こうした境界部分の特定には、1次微分フィルタ又は2次微分フィルタを用いることができる。これによれば、暗領域の外縁付近のひびが特定しやすくなる。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記暗領域判定手段は、前記暗領域の外縁に沿った前記ひびの長さに基づいて、前記判定を行う。これによれば、ひびに起因する暗領域の検出精度をより向上させることができる。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記暗領域判定手段は、前記暗領域内に存在する前記ひびの長さに基づいて、前記判定を行う。これによれば、ひびに起因する暗領域の検出精度をより向上させることができる。
【0014】
これらの態様では、前記暗領域判定手段は、前記暗領域の外縁の長さと前記ひびの長さとの比に基づいて、前記判定を行ってもよい。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記ひびに起因する暗領域の数に基づいて、前記太陽電池セルの品質を判定する品質判定手段を更に備える。これによれば、太陽電池セルの品質を判定できる。
【0016】
また、本発明の一態様では、前記ひびに起因する暗領域を識別表示する表示制御手段を更に備える。これによれば、ひびに起因する暗領域をユーザが把握できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る太陽電池の検査システム1の構成例を表すブロック図である。この太陽電池の検査システム1では、システム全体の制御を司る制御部10(太陽電池の検査装置)に、通電部3、位置決め部4、撮像部5、操作部8及び表示部9が接続されている。
【0019】
通電部3は、制御部10からの指令に応じて、検査対象としての太陽電池パネルに通電する。この通電部3は、不図示のプローブにより太陽電池パネルの端子に電圧を印加し、太陽電池パネルに含まれる各太陽電池セルに順方向電流を供給する。
【0020】
撮像部5は、CCDカメラ等で構成され、制御部10からの指令に応じて、通電された状態の太陽電池パネルを撮像する。位置決め部4は、制御部10からの指令に応じて、この撮像部5を所定の撮像位置に移動させ、位置決めする。
【0021】
具体的には、撮像部5は、位置決め部4により移動され、太陽電池パネルに含まれる各太陽電池セルを順次撮像していく。また、これにより得られる、太陽電池セルを表すセル画像のデータは、制御部10に順次入力される。
【0022】
なお、こうした太陽電池パネルの撮像は、暗室内で行われる。また、太陽電池セルのEL(エレクトロルミネッセンス)光は微弱であるので、撮像部5としては比較的感度の高いカメラが好適である。
【0023】
ここで、検査対象としての太陽電池パネルについて説明する。図2Aは、太陽電池パネル2を表す模式図である。また、図2Bは、太陽電池パネル2に含まれる太陽電池セル21を表す模式図である。
【0024】
図2Aに示されるように、太陽電池パネル2では、シリコン等の半導体で構成される矩形薄板状の太陽電池セル21が2次元的に配列しており、これら太陽電池セル21がリード線23によって直列的に接続されている。これら太陽電池セル21は、受光面側がガラス板とされた積層体25の内部に配置される。この積層体25は、ガラス板上に、充填材、太陽電池セル21、充填材および裏面部材をこの順に積層した積層構造を有する。なお、太陽電池セル21の配列および枚数は、同図の態様に限られない。また、太陽電池パネル2は、薄膜式の太陽電池パネルであってもよい。
【0025】
図2Bに示されるように、太陽電池セル21の受光面27には、電力を外部に取り出すための電極として、一対のバスバー28と、これらに電力を集める多数のフィンガー29と、が形成されている。太陽電池セル21の長辺に沿った方向を長手方向、短辺に沿った方向を短手方向としたとき、バスバー28は、短手方向に延びる帯状に構成され、長手方向に離れて位置する。これらバスバー28には、上記リード線23が接続される。また、フィンガー29は、長手方向に延びる細線状に構成され、短手方向に並列する。なお、バスバー28及びフィンガー29の配置は、同図の態様に限られない。
【0026】
図1の説明に戻り、制御部10は、CPU(中央演算装置)及びその作業領域であるRAM等を含んだコンピュータとして構成されている。また、制御部10は、CPUの動作に必要なプログラム及びデータを記憶する記憶部を含んでいる。また、操作部8は、キーボードやマウス等で構成され、ユーザの操作に基づく操作入力を制御部10に送る。表示部9は、液晶ディスプレイ等で構成され、制御部10からの表示指令に応じた画像を表示する。
【0027】
図3は、制御部10の機能構成例を表すブロック図である。図4は、この制御部10において実現される太陽電池の検査方法を表すフローチャートである。制御部10は、CPUが記憶部に格納されたプログラムを実行することにより、通電制御部11、位置制御部12、画像取得部13、ひび位置情報生成部14、暗領域位置情報生成部15、暗領域判定部16、品質判定部17及び表示制御部19を機能的に有する。
【0028】
通電制御部11は、通電部3を制御して、太陽電池パネル2に含まれる太陽電池セル21への通電を実行する。これにより、各太陽電池セル21はEL光を発する。ここで、電圧値、電流値及び通電時間などの通電条件のデータは、制御部10の記憶部に格納されている。
【0029】
位置制御部12は、位置決め部4を制御して、撮像部5の位置制御を実行する。具体的には、位置制御部12は、各太陽電池セル21を撮像可能な各撮像位置に、撮像部5を順次移動させていく。こうした撮像位置は、太陽電池セル21の寸法や数、配列間隔などにより定められ、制御部10の記憶部にデータとして格納されている。
【0030】
画像取得部13は、通電された状態の太陽電池セル21を表すセル画像のデータを、撮像部5から取得する(S1)。また、画像取得部13は、取得したセル画像の下処理を行う(S2)。
【0031】
セル画像の下処理としては、例えば、太陽電池セル21のEL光の明度を規格化するスケーリング処理、太陽電池セル21の領域を抽出するセル領域抽出処理、太陽電池セル21のバスバー28部分を除くバスバー除外処理、及び撮像部5のレンズに起因する明度差を補正するシェーディング処理などがある。
【0032】
そして、画像取得部13は、下処理が施されたセル画像のデータを、ひび位置情報生成部14及び暗領域位置情報生成部15に出力する。
【0033】
図5は、セル画像30の例を表す図である。セル画像30内には、太陽電池セル21の欠陥部分が比較的明度の低い暗部となって現れる。こうした欠陥部分としては、ひび32a〜32c及び暗領域34a,34bなどがある。
【0034】
ひび32a〜32cは、セル画像30内に明度の低い線状の画素群として現れる。こうしたひび32a〜32cは、発光が良好な部分との明度差が大きい。こうしたひび32a〜32cは、バスバー28にリード線23を半田付けする際の熱や、加工時や輸送時の荷重や衝撃により生じる。
【0035】
暗領域34a,34bは、セル画像30内に、一定以上の面積を持った明度の低い画素群として現れる。こうした暗領域34a,34bは、ひび32a,32bによって電流の供給が阻害されることで生じる。すなわち、暗領域34a,34bは、ひび32a,32bに起因する。従って、暗領域34a,34bの外縁の少なくとも一部には、ひび32a,32bが重なっていることが多い。
【0036】
また、暗領域34a,34bの明度は一律ではなく、周囲と比較してやや明度が低い暗領域34aと、明らかに明度が低い暗領域34bとがある。なお、明らかに明度が低い暗領域34bでは、その外縁にひび32bが生じていても、明度が同程度のため両者の判別が困難な場合がある。
【0037】
この他、セル画像30内には、太陽電池セル21の結晶の粒界36が現れることがある。こうした結晶の粒界36は、太陽電池セル21の欠陥ではないが、セル画像30内に、周囲よりもやや明度の低い画素群として現れてしまう。なお、こうした結晶の粒界36は、比較的小さな形状であることが多い。
【0038】
図3及び図4の説明に戻り、ひび位置情報生成部14は、セル画像30内でひび32a〜32cの位置を特定し、これらひび32a〜32cの位置を表すひび位置情報を生成する(S3)。こうして生成されたひび位置情報は、暗領域判定部16、品質判定部17及び表示制御部19に出力される。
【0039】
具体的には、ひび位置情報生成部14は、セル画像30内で明度の変化の境界部分を抽出することで、ひび32a〜32cの位置を特定する。こうした境界部分の抽出は、ラプラシアンフィルタ(2次微分フィルタ)を用いることで実現できる。なお、これに限られず、1次微分フィルタを用いるようにしてもよい。
【0040】
図6は、ひび位置情報の生成の説明図である。上記図5に示したセル画像30に対してラプラシアンフィルタを適用すると、図6に示されるように、明度の変化の境界部分42a〜42c,46が抽出される。このうち、境界部分42a〜42cはひび32a〜32cに各々対応し、境界部分46は結晶の粒界36に対応する。
【0041】
ひび位置情報生成部14は、このように抽出される境界部分42a〜42c,46の中から、線状に延びる境界部分42a〜42cを選別することで、ひび32a〜32cの位置を特定する。こうした選別は、例えば、各境界部分42a〜42c,46を構成する画素群を囲む最小矩形のアスペクト比(長手方向の長さと幅方向の長さとの比)を求めることで、行うことが可能である。こうした選別を行うことで、結晶の粒界36に対応する、比較的小さな略円形状の境界部分46が、ひびとして特定されることを防止できる。
【0042】
また、本実施形態では、ラプラシアンフィルタにより明度の変化の境界部分を抽出しているので、上記図5に示されるように、明らかに明度が低い暗領域34bと、その外縁を為すひび32bとが同程度の明度であっても、ひび32bの位置を特定できる。
【0043】
このように特定されるひび32a〜32cの位置を表すひび位置情報は、例えば、各ひび32a〜32cの座標情報を含む。具体的には、各ひび32a〜32cは、直線の組み合わせとして定義され、各直線の始点および終点の座標情報が、ひび位置情報に含まれる。
【0044】
図3及び図4の説明に戻り、暗領域位置情報生成部15は、セル画像30に対して2値化処理を行い、所定以上の面積の暗画素群を特定することで、暗領域34a,34b等の位置を表す暗領域位置情報を生成する(S4)。こうして生成された暗領域位置情報は、暗領域判定部16に出力される。
【0045】
ここで、2値化処理の明度の閾値は、周囲と比較してやや明度が低い暗領域34a(図5を参照)の各画素が暗画素と判断される程度に設定される。
【0046】
図7は、暗領域位置情報の生成の説明図である。上記図5に示したセル画像30に対し、こうした閾値による2値化処理を行うと、図7に示されるように、ひび32a〜32cに起因する暗領域34a,34bの他に、結晶の粒界36に対応する暗領域56も抽出されてしまうことがある。
【0047】
また、この他にも、太陽電池セル21の外周部分の明度が中央部分の明度よりもやや落ちることや、個々の太陽電池セル21の明度にばらつきがあること等の要因によっても、2値化処理において意図しない暗領域が抽出されてしまうことがある。
【0048】
従って、暗領域位置情報は、このようにひび32a〜32cに起因する暗領域34a,34bの位置を表す情報の他に、結晶の粒界36に対応する暗領域56等の意図しない暗領域の位置を表す情報を含むことがある。
【0049】
なお、この暗領域位置情報は、暗領域34a,34b等の座標情報を含む。また、暗領域位置情報は、暗領域34a,34b等の外縁の座標情報も含む。具体的には、各暗領域34a,34b等の外縁は、直線の組み合わせとして定義され、各直線の始点および終点の座標情報が、暗領域位置情報に含まれる。また、暗領域位置情報は、暗領域34a,34bの面積の情報を含んでいてもよい。
【0050】
図3及び図4の説明に戻り、暗領域判定部16は、入力されるひび位置情報および暗領域位置情報に基づいて、上記S4で抽出された暗領域34a,34b,56の中から、ひび32a〜32cに起因する暗領域34a,34bを判定する(S5)。そして、暗領域判定部16は、判定結果に応じて暗領域位置情報を修正し、品質判定部17及び表示制御部19に出力する。
【0051】
図8は、暗領域の判定の説明図である。同図では、ひび位置情報で表されるひび32aの位置と、暗領域位置情報で表される暗領域34aの位置との関係を拡大して示している。同図に示されるように、ひび32aの一部は、暗領域34a内で外縁部分に沿って位置している。このため、暗領域判定部16は、暗領域34a内に存在するひび32aの長さに基づいて判定を行う。具体的には、暗領域34a内に存在するひび32aの長さが、この暗領域34aの外縁の長さに対して所定の割合以上(例えば3割以上)あれば、この暗領域34aがひび32aに起因するものとして判定される。
【0052】
なお、上記暗領域位置情報生成部15の2値化処理の閾値によっては、暗領域34aの外側にひび32aが位置する場合もあり得るので、その場合には、暗領域34aの外縁から所定の範囲内に、これに沿ったひび32aが存在するか否かで、判定を行うようにしてもよい。
【0053】
品質判定部17は、セル画像30内で特定されたひび32a〜32cの数や、ひび32a,32bに起因する暗領域34a,34bの数に基づいて、セル画像30に表された太陽電池セル21の品質を判定し、階級分けを行う(S6)。この品質の階級に関する情報は、表示制御部19に出力される。ここで、品質の判定には、ひび32a〜32c及び暗領域34a,34bの数の単純な合計を用いてもよいし、これらの種類に応じた重み付け和を用いてもよいし、これらの大きさに応じた重み付け和を用いてもよい。なお、セル画像30が複数の太陽電池セル21を表す場合には、各太陽電池セル21について品質を判定する。
【0054】
表示制御部19は、セル画像30内で特定されたひび32a〜32cや、ひび32a,32bに起因する暗領域34a,34bを識別表示する表示用画像を生成し(S7)、この表示用画像を表示部9に表示させる表示制御を行う(S8)。図9は、表示用画像60の例を表す図である。表示制御部19は、セル画像30のひび32a〜32c及び暗領域34a,34bの位置に、これらに各々対応するひび識別画像62a〜62c及び暗領域識別画像64a,64bを合成して、表示用画像60を生成する。
【0055】
このように、ひび32a,32bに起因する暗領域34a,34bの位置に暗領域識別画像64a,64bを合成することで、ひび32a,32bに起因する暗領域34a,34bが、結晶の粒界36等と識別表示される。
【0056】
また、表示制御部19は、品質判定部17からの情報に基づいて、各太陽電池セル21の品質の階級を識別表示するようにしてもよい。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が当業者にとって可能であるのはもちろんである。
【0058】
例えば、ひび位置情報生成部14は、ラプラシアンフィルタによりひび32a〜32cの位置の特定を行っていたが、この態様に限られず、例えば、セル画像30内で周囲よりも明度が低い線状の画素群を抽出し、これをひび32a〜32cとして特定するようにしてもよい。
【0059】
この場合、上記図5に示されるように、明らかに明度が低い暗領域34bと、その外縁を為すひび32bとが同程度の明度であると、ひび32bの特定が困難であるが、例えば、暗領域位置情報生成部15で、明らかに明度が低い暗領域34bを別途抽出すれば、ひび32bを特定せずともよい。すなわち、暗領域位置情報生成部15は、上述の2値化処理とは別に、明らかに明度が低い暗領域34bが抽出され、結晶の粒界36が抽出されない程度の明度の閾値で2値化処理を行い、これにより抽出される暗領域34bを、ひび32bの有無に関わらず、欠陥として検出すべき暗領域として扱うようにすればよい。
【0060】
また、例えば、暗領域判定部16による判定は、上述の態様に限られず、例えば図10に示されるような位置関係でひび32z及び暗領域34zが検出される場合に、ひび32zが暗領域34zの外縁の一部の延長線上にあれば、この暗領域34zがひび32zに起因すると判定するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態に係る太陽電池の検査システムの構成例を表すブロック図である。
【図2A】太陽電池パネルを表す模式図である。
【図2B】太陽電池セルを表す模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る太陽電池の検査装置の機能構成例を表すブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る太陽電池の検査方法を表すフローチャートである。
【図5】セル画像の例を表す図である。
【図6】ひび位置情報の生成の説明図である。
【図7】暗領域位置情報の生成の説明図である。
【図8】暗領域の判定の説明図である。
【図9】表示用画像の例を表す図である。
【図10】暗領域の判定の変形例の説明図である。
【符号の説明】
【0062】
1 太陽電池の検査システム、2 太陽電池パネル、3 通電部、4 位置決め部、5 撮像部、8 操作部、9 表示部、10 太陽電池の検査装置(制御部)、11 通電制御部、12 位置制御部、13 画像取得部、14 ひび位置情報生成部、15 暗領域位置情報生成部、16 暗領域判定部、17 品質判定部、19 表示制御部、21 太陽電池セル、23 リード線、25 積層体、27 受光面、28 バスバー、29 フィンガー、30 セル画像、32a〜32c ひび、34a,34b 暗領域、36 結晶の粒界、42a〜42c,46 境界部分、56 暗領域、60 表示用画像、62a〜62c ひび識別画像、64a,64b 暗領域識別画像。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電された状態の1または複数の太陽電池セルを表すセル画像を取得する画像取得手段と、
周囲よりも明度が低い線状の画素群を前記セル画像内で特定し、前記太陽電池セルのひびの位置情報を生成するひび位置情報生成手段と、
所定以下の明度の画素が集合した、所定以上の面積の画素群を前記セル画像内で特定し、前記太陽電池セルの暗領域の位置情報を生成する暗領域位置情報生成手段と、
前記暗領域と前記ひびとの位置関係に基づいて、前記暗領域が前記ひびに起因する暗領域であるか否かの判定を行う暗領域判定手段と、
を備える太陽電池の検査装置。
【請求項2】
前記ひび位置情報生成手段は、前記セル画像内で明度の変化の境界部分を特定し、前記太陽電池セルのひびの位置情報を生成する、
請求項1に記載の太陽電池の検査装置。
【請求項3】
前記ひび位置情報生成手段は、1次微分フィルタにより前記境界部分を特定する、
請求項2に記載の太陽電池の検査装置。
【請求項4】
前記ひび位置情報生成手段は、2次微分フィルタにより前記境界部分を特定する、
請求項2に記載の太陽電池の検査装置。
【請求項5】
前記暗領域判定手段は、前記暗領域の外縁に沿った前記ひびの長さに基づいて、前記判定を行う、
請求項1に記載の太陽電池の検査装置。
【請求項6】
前記暗領域判定手段は、前記暗領域内に存在する前記ひびの長さに基づいて、前記判定を行う、
請求項1に記載の太陽電池の検査装置。
【請求項7】
前記暗領域判定手段は、前記暗領域の外縁の長さと前記ひびの長さとの比に基づいて、前記判定を行う、
請求項5または6に記載の太陽電池の検査装置。
【請求項8】
前記ひびに起因する暗領域の数に基づいて、前記太陽電池セルの品質を判定する品質判定手段を更に備える、
請求項1に記載の太陽電池の検査装置。
【請求項9】
前記ひびに起因する暗領域を識別表示する表示制御手段を更に備える、
請求項1に記載の太陽電池の検査装置。
【請求項10】
通電された状態の1または複数の太陽電池セルを表すセル画像を取得し、
周囲よりも明度が低い線状の画素群を前記セル画像内で特定し、前記太陽電池セルのひびの位置情報を生成し、
所定以下の明度の画素が集合した、所定以上の面積の画素群を前記セル画像内で特定し、前記太陽電池セルの暗領域の位置情報を生成し、
前記暗領域と前記ひびとの位置関係に基づいて、前記暗領域が前記ひびに起因する暗領域であるか否かの判定を行う、
太陽電池の検査方法。
【請求項11】
通電された状態の1または複数の太陽電池セルを表すセル画像を取得する画像取得手段、
周囲よりも明度が低い線状の画素群を前記セル画像内で特定し、前記太陽電池セルのひびの位置情報を生成するひび位置情報生成手段、
所定以下の明度の画素が集合した、所定以上の面積の画素群を前記セル画像内で特定し、前記太陽電池セルの暗領域の位置情報を生成する暗領域位置情報生成手段、及び、
前記暗領域と前記ひびとの位置関係に基づいて、前記暗領域が前記ひびに起因する暗領域であるか否かの判定を行う暗領域判定手段、
としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項12】
通電された状態の1または複数の太陽電池セルを撮像し、前記太陽電池セルを表すセル画像を生成する撮像部と、
前記セル画像を取得する画像取得手段と、
周囲よりも明度が低い線状の画素群を前記セル画像内で特定し、前記太陽電池セルのひびの位置情報を生成するひび位置情報生成手段と、
所定以下の明度の画素が集合した、所定以上の面積の画素群を前記セル画像内で特定し、前記太陽電池セルの暗領域の位置情報を生成する暗領域位置情報生成手段と、
前記暗領域と前記ひびとの位置関係に基づいて、前記暗領域が前記ひびに起因する暗領域であるか否かの判定を行う暗領域判定手段と、
を備える太陽電池の検査システム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−93010(P2010−93010A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260405(P2008−260405)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(000004374)日清紡ホールディングス株式会社 (370)
【Fターム(参考)】