説明

太陽電池の検査装置及び太陽電池の欠陥判定方法

【課題】 太陽電池に通電することでEL発光させ、発光状態から欠陥の有無などを調べ、太陽電池の良否を判定することができる太陽電池の検査装置及び太陽電池の欠陥判定方法を提供する。
【解決手段】 太陽電池セルに一定電流を供給してEL発光させ(S7)、太陽電池セル毎に太陽電池セルからの発光光を撮影し(S10)、撮影したセル画像を、閾値を用いて明部と暗部とに分け、2値化して強調表示する。太陽電池セルの欠陥をタイプごとに分け、暗部の形状を各タイプと比較して解析し(S50)欠陥の有無を判定し、太陽電池セルの良否判断を行う。また問題があると判定した欠陥のある部分を視認可能に表示(S16)する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は少なくとも1つの太陽電池セルを備えた太陽電池を検査する太陽電池の検査装置及び太陽電池の欠陥判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽エネルギーの利用方法として、シリコン型の太陽電池が知られている。太陽電池の製造においては、太陽電池が目的の発電能力を有しているかどうかの性能評価が重要である。一般的な性能評価方法として、出力特性の測定を行っていた。
【0003】
出力特性の測定は、光照射下において、太陽電池の電流電圧特性を測定する光電変換特性として行われる。光源としては、太陽光が望ましいのであるが、天候により強度が変化することから、ソーラーシミュレーターが使用されている。ソーラーシミュレーターでは、太陽光に代えてキセノンランプやメタルハライドランプ等を使用している。そして、これらの光源を長時間点灯していると、温度上昇などにより光量が変化する。そこで、これらのランプのフラッシュ光を用い、横軸を電圧、縦軸を電流として、収集したデータをプロットすることにより太陽電池の出力特性曲線を得て、出力特性が一定値以上であったときに良品としていた(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記したソーラーシミュレーターと異なる方法として、特許文献2の方法があった。この方法では、シリコンの多結晶型の太陽電池セルに対して順方向に電圧を印加することで、順方向に電流を流しエレクトロルミネッセンス(EL)作用を生じさせ、発光状態から太陽電池セルの良否を判定する方法を提案している。太陽電池セルから発光されるEL光を観察することによって、電流密度分布が分かり、電流密度分布の不均一から太陽電池セルの発光していない部分を欠陥のある部分と判断する。そして、1つの太陽電池セルからの発光光量を測定し、所定の光量があれば良品、この光量に達しない場合は、不良品と判断していた。
【0005】
しかしながら、特許文献2の方法では、太陽電池セルからの発光光の明るさのみで良否の判断をしているので、たとえば、大きなクラックがあっても、明るさが所定の値以上であれば良品と判断される。しかし、大きなクラックがある場合は、急激に太陽電池としての能力が低下してしまう可能性が大きいので、不良品と判断すべきである。
【0006】
また、特許文献3では、太陽電池の欠陥を基板クラック、電極破断、接触不良等の外的要因による欠陥と、基板材料の物性に起因する結晶欠陥、転移、結晶粒界等の内的要因による欠陥とに分けている。そして、内的欠陥は温度変化の影響を受けることに注目し、発光光の観測時に、太陽電池素子を加熱し、内的欠陥を縮小させ、外的欠陥の判断を容易にできる技術を提案している。
【0007】
【特許文献1】特開2007−88419
【特許文献2】WO/2006/059615
【特許文献3】WO/2007/129585
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
太陽電池の欠陥検査は、太陽電池の製造ライン内で行うことが望ましい。しかし、特許文献3の方法では、太陽電池に温度変化を与えるには、かなりの時間を要するので、製造ライン内で使用することができない。
【0009】
本発明は、斯かる実情に鑑みてなされたもので、太陽電池に一定電流を流してEL発光させ、発光状態から太陽電池の良否を検査判定する場合、正確な良否判断が可能な太陽電池の検査装置と、太陽電池の欠陥判定方法で、しかも、製造ラインで検査可能な程度に短時間でできるものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために本発明に係る太陽電池の検査装置は、以下の構成を特徴としている。
1. 太陽電池内の太陽電池セルの良否を判定する太陽電池の検査装置であって、検査対象となる太陽電池セルに電流を通電する電源手段と、前記電源手段により通電された前記太陽電池セルからの発光光を撮影する撮影手段と、前記撮影手段で撮影した太陽電池セルの撮影画像を解析する解析手段と、を有し、前記解析手段は、前記撮影手段で撮影した太陽電池セルの撮影画像について、撮影画像中の明暗が混在する部分における平均の明るさから閾値を求め、該閾値によって撮影画像を明部と暗部とに分け、明部と暗部とを2値化表示することによって強調し、太陽電池セルごとの欠陥の有無を判定することを特徴とする。
【0011】
2.前記解析手段が、前記欠陥を予め欠陥のタイプごとに分け、前記暗部の形状を、予め登録されている欠陥のタイプと比較することによって欠陥の有無及びタイプ別の判断をし、欠陥と判断された部分とそれ以外の部分とを2値化表示することによって強調する構成とすることもできる。
【0012】
3.前記解析手段は、特定のタイプの欠陥の存在については、太陽電池セルの所定の領域についてのみ判断し、他の領域では前記特定の欠陥の存否を判断しない構成とすることもできる。
4.前記欠陥部分とそれ以外の部分とを2値化表示した画像を可視表示する表示手段を有する構成とすることもできる。
5.前記欠陥と判断された部分を、前記撮影画像と重ねて前記表示手段で可視表示する構成としてもよい。
6.前記欠陥の表示が、欠陥のタイプによって異なる色彩を付けた表示としてもよい。
7.前記撮影手段は、複数の太陽電池セルを連続して撮影し、前記解析手段は、太陽電池セル撮影画像により隣接するセルの配設状況の良否判定も行う構成とすることができる。
【0013】
また、上記の目的を達成するために本発明の太陽電池の欠陥判定方法は、以下の構成を特徴としている。
8.電源手段によって検査対象となる太陽電池内の太陽電池セルに電流を通電する工程と、前記通電によって前記太陽電池セルを発光させ、太陽電池セル毎の発光光を撮影手段によって撮影する工程と、前記撮影手段で撮影した太陽電池セルの撮影画像について、撮影画像中の明暗が混在する部分における平均の明るさから閾値を得る工程と、該閾値によって前記撮影画像を明部と暗部とに分け、明部と暗部とを2値化表示することによって強調し、太陽電池セルごとの欠陥の有無を判定する工程と、を有することを特徴としている。
【0014】
9.前記解析手段が、前記欠陥を予め欠陥のタイプごとに分け、前記暗部の形状を、予め登録されている欠陥のタイプと比較することによって欠陥の有無及びタイプ別の判断をし、欠陥と判断された部分とそれ以外の部分とを2値化表示することによって強調することができる。
【0015】
10.特定のタイプの欠陥の存在については、太陽電池セルの所定の領域についてのみ判断し、他の領域では前記特定の欠陥の存否を判断しない構成としてもよい。
【0016】
11.前記太陽電池セルの撮影は、複数の太陽電池セルを連続して撮影し、太陽電池セルの撮影画像により隣接するセルの配設状況の良否判定も行うこととしてもよい。
【0017】
12.前記欠陥部分と欠陥ではない部分とを2値化表示した画像を可視表示することとしてもよい。
【0018】
13.前記欠陥部分と欠陥ではない部分とを2値化表示した画像とともに、太陽電池セルの撮影画像も表示することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の太陽電池の検査装置および太陽電池欠陥判定方法によれば、撮影したセル画像において明部と暗部を2値化して強調して表示することで、明部と暗部の識別が簡単にできるので、欠陥であるか否かの判定を正確に、かつ、確実に行うことができる。
【0020】
また、太陽電池の欠陥を幾つかのタイプに分け、欠陥と考えられる部分を記憶されているタイプ別の欠陥と比較することで、正確な欠陥の判断が可能となる。また、欠陥のタイプに応じて形状や大きさの閾値を変えることができ、実状に合った欠陥判定ができる。また、欠陥によっては、将来欠陥が大きくなるかどうかの判断も可能な場合もあり、現在の不良箇所のみならず、将来不良箇所になるおそれのある箇所も判定することが可能になる。これにより太陽電池を長期使用する場合の品質や耐久性が更に向上することになる。
【0021】
また、小さなクラックのような特定のタイプの欠陥は、主に太陽電池セルのバスバー近傍に発生し易く、他の領域ではあまり問題とならないものがある。このような欠陥についても適切な判断が可能になる。たとえば、バスバーの近傍では小さなクラックも問題となるが、バスバーから離れたところでは、小さなクラックを検出すると、結晶の境界にできる暗部で問題とならないものまでクラックと判断する可能性が高い。そのような場合には、バスバーから離れたところでは、小さなクラックは検出しない方がよい。
【0022】
欠陥部分と欠陥ではない部分とを2値化表示により強調した画像を可視表示することによって、欠陥の判定を目視でも行うことができる。欠陥部分と撮影画像とを重ねて表示するようにすれば、欠陥の判断の適格性を目視により確認・訂正することができる。また、欠陥のタイプにより異なる色彩を付けて表示することで、欠陥のタイプを確認しながら、適切な判定ができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係る一発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る一発明の実施例の太陽電池の検査装置の概略構成を説明するためのブロック図、図2は本実施例の装置におけるカメラとカメラ駆動装置の構成を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。図3は本実施例の太陽電池検査方法を説明するためのフローチャート、図4は本実施例の撮影画像処理及び良否判定の工程を詳細説明するためのフロチャート、図5は本実施例における太陽電池セルの撮影画像である。図6は、検査対象である太陽電池の内部の太陽電池セル・ストリング・マトリックスが分かるように記載した平面図、図7は太陽電池の構造を示す断面図である。図8は、本実施例の検査装置にて測定する太陽電池セルの構成の説明図である。図9・図10・図11は、検査対象である太陽電池内のセルの欠陥を欠陥のタイプごとに強調表示した図である。図12は、多結晶シリコンセルのEL撮影画像の例である。図13は、セル撮影画像から暗部をクラックと判断する方法の説明図である。
【0024】
<1>検査対象(太陽電池セル、太陽電池パネル)
まず本実施例の検査装置が扱う検査対象としての太陽電池100について説明する。
図6の平面図に示す様に、角型の太陽電池セル28がリード線29により複数個直列に接続されてストリング25を形成している。そして、ストリング25を複数列リード線により接続したものが、検査対象100としての太陽電池パネルである。
【0025】
本発明において、検査対象100となる太陽電池としては、太陽電池セル28が1枚だけのもの、太陽電池セル28を複数枚直線的につないだストリング25の状態のもの、及び、ストリング25を平行に複数列並べ、太陽電池セル28がマトリックス状に配置された太陽電池パネルのいずれでもよい。
【0026】
検査対象100の太陽電池パネルの断面構造は、図7に示す様に、上側に配置された裏面材22と下側に配置された透明カバーガラス21の間に、充填材23、24を介して複数列のストリング25をサンドイッチした構成を有する。
【0027】
裏面材22は例えばポリエチレン樹脂などの材料が使用される。充填材23,24には例えばEVA樹脂(エチレンビニルアセテート樹脂)などが使用される。ストリング25は、上記のように電極26,27の間に、太陽電池セル28をリード線29を介して接続した構成である。
【0028】
このような太陽電池パネルは、上記のように構成部材を積層しラミネート装置などにより、真空の加熱状態下で圧力を加え、EVAを架橋反応させてラミネート加工して得られる。
【0029】
さらに、角型の太陽電池セル28の例について説明する。図8は、太陽電池セル28を受光面から見た平面図である。セルは薄板状のシリコン半導体の表面に電気を取り出すための電極であるバスバーが印刷されている。加えてシリコン半導体の表面には効率よく電流をバスバーに集めるためにバスバーと垂直方向にフィンガーと呼ばれる細い導体が印刷されている。
【0030】
また検査対象100としては、一般に薄膜式と呼ばれる太陽電池を対象とすることができる。この薄膜式の代表的な構造例では、図7において下側に配置された透明なカバーガラス21には、予め透明電極、半導体、裏面電極からなる発電素子が蒸着してある。
【0031】
このような薄膜型太陽電池パネルは、ガラスを下向きに配置し、ガラス上の太陽電池セルの上に充填材を被せ、更に、充填材の上に裏面材を被せた構造で、同じようにラミネート加工することにより得られる。
【0032】
このように検査対象100としての薄膜式の太陽電池パネルは、結晶系セルが蒸着された発電素子に変わるだけで、基本的な封止構造は前記した結晶系セルの場合と同じである。
【0033】
<2>太陽電池セルの欠陥
太陽電池セルの欠陥は、その発生原因によって幾つかのタイプに分けることができ、各タイプは、その形状に特徴を有している。本発明では、欠陥を「フィンガー断線」、「クラック」及び「欠け」に分けている。これらは一例であり、別の分け方をしてもよい。
【0034】
図9は、フィンガー断線の例で、フィンガーが断線した場合の暗部の特徴を示している。図9で横方向に多数引かれた細い線がフィンガーである。フィンガー断線の場合はこのようにフィンガーの方向に沿って長方形の暗部が現れる。
【0035】
図10は、クラックの例で、クラックはひび割れによる折れ線状の欠陥である。バスバーの近辺の領域Mおよび領域Nには、バスバーにリード線をハンダ付けする際に生じる熱変形によって発生するクラックが存在する。この熱変形によるクラックは比較的寸法が小さいという特徴がある。
【0036】
このクラックに対してラミネート加工による圧縮や輸送中、およびモジュール製作工程中のハンドリングによる荷重や衝撃力に起因するクラックはバスバーの近辺の領域MやNには限らず領域Lにも発生する。このクラックは前述のハンダ付けによるクラックより寸法が大きくなる傾向がある。またこれらのクラックは半導体が硬くもろい物性を有しているため、折れ曲がった部分を持っているが、比較的単純な形状になる傾向がある。
【0037】
図11は欠けの例である。欠けとは、面積を持った欠陥で、一方にクラックのある暗部というのが特徴である。クラックによる半導体自身の乖離具合によって暗部の出方が変わってくる。同図のC1部のようにクラックによって半導体が一定長さに分離されてしまうと、クラックのバスバーと反対側に面積を持った暗部が現れる。また、同図のC2部のように半導体の一部が完全に脱落してしまうと、脱落した部分は発光しないので、その部分が面積を持った暗部となる。また同図のC3部のように完全に脱落しなくても半導体自身が分離していると、そのクラックから半導体の端までの部分が面積を持った暗部となる。これらの面積を持った暗部は暗部の領域の暗さの程度が比較的安定した傾向があり、明るい部分と暗い部分が複雑に混在することは少ない。
【0038】
撮影画像には欠陥以外でも暗部が写ることがある。図12は多結晶シリコンセルの撮影画像の例である。この画像でセルの全面に分布している複雑な形状をした模様状の暗部は、欠陥ではなく結晶の境界にできる暗部である。セルの良否判定を行う場合、これらの実際には欠陥ではない暗部と欠陥による暗部を判別する必要がある。そのためには後述する各種の画像処理や良否判定基準の工夫が必要になる。
【0039】
<3>本発明の太陽電池の検査装置の構成
図1の本発明に係る発明の実施例の太陽電池の検査装置の概略構成を示すブロック図において、制御部10は本実施例の全体制御を司ると共に、本実施例の太陽電池良否判定処理を実行する部分で、パーソナルコンピュータシステムなどで構成されている。制御部10で実行するプログラムや各種処理データは、メモリ20で記憶される。基準データファイル30には検査対象の太陽電池パネルの良否判定の基準データが登録されている。
【0040】
基準データファイル30には、検査対象の種類(セル/ストリング/マトリックス:図6参照)毎の設定値が登録されている。登録される設定値には、たとえば、以下のものがある。
(1)太陽電池セルに対する発光条件、
(2)太陽電池セルの間隔(カメラの移動ピッチ)、
(3)ストリング/マトリックスの場合の太陽電池セルの数(縦、横)、
(4)太陽電池セルの寸法情報(バスバー位置、角の面取り、フィンガーの配置、ディップ位置など)の設定情報
太陽電池セルの寸法情報設定は、基本タイプの設定画面穴埋め方式と図形情報から設定する方式の両方法が設定可能であり、図形情報から設定する場合には図形情報としてDXF形式、BMP形式ファイルと対応しており、穴埋め方式の場合には例えばバスバーの本数が1本の場合、2本の場合、3本の場合など、複数のタイプを選択可能である。
(5)画像処理条件
(6)撮影条件
(7)欠陥のタイプごとのデータ(形状の特徴、長さや面積の閾値等)
本発明では、欠陥をタイプ別に「フィンガー断線」、「クラック」及び「欠け」に分け、上記に説明した特徴から、フィンガー断線の場合は、暗部の形状が、フィンガーの方向に沿った長方形の形状であるか否かで判定する。クラックの場合は、直線又は折線状に暗部ができるので、形状が線状であることと、長さの閾値を用いて判定する。欠けの場合は、暗部の面積がある閾値以上であれば、欠けと判定する。
【0041】
入出力制御部40は各種の指示入力や良否判定結果を入力するキーボード400などの入出力装置を制御する。カメラ制御部50は、検査対象100である太陽電池パネルの画像を撮影する太陽電池撮影カメラ500を制御するものである。表示制御部60は、撮影した画像を表示する表示部600を制御する。測定電流制御部70は、検査対象100である太陽電池パネルにプローブ75を介して一定電流(所定の順方向電流)を印加する電源手段である。プローブ75は太陽電池パネルに電流を供給する。位置決め機構制御部80はカメラ500を撮影位置に搬送し、位置決めするもので、カメラ位置決め機構800を制御する位置決め機構制御部である。カメラ位置決め機構800を含むカメラ撮影部の詳細を図2に示す。900は、セルの判定結果を保存する外部記憶装置である。以上の構成において、制御部10、メモリ20、基準データファイル30、入出力制御部40、表示制御部60及び外部記憶装置900で、解析手段200を構成している。
【0042】
本実施例の検査装置では、測定電流制御部70から、プローブ75を介して検査対象100としての太陽電池パネルに順方向に所定電流を供給することにより、検査対象100をEL(エレクトロルミネッセンス)光源として作用させ、カメラ500でこの発光状態を撮影する。撮影は、太陽電池パネルの各太陽電池セル毎に順次撮影していくことになるため、カメラ位置決め機構800でカメラ位置を太陽電池セル毎に移動させる。
【0043】
カメラ500で撮影するEL発光による発光光量は、1,000nmから1,300nmの波長の微弱な光であり、暗室内で発光させて微弱な光を撮影している。このため、カメラ500としては微量感度の良いカメラを用いる必要がある。本実施例では、浜松ホトニクス製の型式C9299―02(Si−CCDカメラ)を用いている。
【0044】
次に図2を参照して本実施例のカメラ撮影部500とカメラ位置決め機構800の構成・制御を説明する。図2は、カメラ位置決め機構800を含むカメラ撮影部500(図面では太陽電池撮影カメラ)の詳細を示す。
【0045】
カメラ位置決め機構800は、四角の箱形の暗室810の平らな上面811に、アクリル樹脂などの合成樹脂製又はガラス製の透明板812が取り付けられている。透明板812以外は、暗室810に光を入れないような遮光性の素材からなる構成にしている。透明板812と検査対象100との隙間は適宜遮光材で覆う必要がある。もっとも、上面811に検査対象100として太陽電池を載せた後、検査対象100を含む上面811の全体を、遮光手段で覆うことにすれば、上面811全体を透明板にしてもよい。上面以外の4つの側面と底面は全て遮光性の部材としている。上面811には、検査対象100の搬送をガイドする一対のガイド部材814が設けられている。
【0046】
暗室810内には、カメラ500と、このカメラ500をy軸方向に移動するy軸ガイド部830がある。y軸ガイド部830の一端には、モータ832があり、これが回転することで、カメラ500をy軸方向に進退させることができる。
【0047】
y軸ガイド部830の両端は、x軸ガイド部840、840に支持されている。そして、モータ842と両側のタイミングベルト844、844とによって、y軸ガイド部830は、x軸ガイド部840、840上を、x軸方向に沿って進退可能となっている。
【0048】
以上の構成において、x軸ガイド部840、840、y軸ガイド部830、モータ832、842、タイミングベルト844、844とで、カメラ500の駆動機構を構成している。本実施例では、x軸ガイド部840、840及びy軸ガイド部830をモータ832、842およびボールネジにて駆動している。駆動方式は、上記の実施例に限定されることなく、各種のリニアアクチュエータを使用することができる。
【0049】
駆動機構のモータ832,842を回転制御することで、カメラ500を、x−y平面内の任意の位置に移動し、検査対象100の隅から隅までの全面を撮影することが可能となっている。
【0050】
検査対象100の太陽電池としては、太陽電池セル1枚でもよく、図6の様に太陽電池セル28を複数枚直線的につないだストリング25の状態でもよく、ストリング25を平行に複数本並べ、太陽電池セル28がマトリックス状に配置された太陽電池パネルでもよい。カメラ500による撮影も、太陽電池セル1枚ごとでもよいし、数枚ずつでもよく、太陽電池パネル全体としてもよい。
【0051】
検査対象100である太陽電池パネルは、太陽電池セル28を一列に配置して電気的に接続したストリング25を複数本平行に並べ、太陽電池セル28が縦横にマトリックス状に配置したものである。そして図7に示す様に、一番下側に透明なカバーガラス21が配置され、次に充填材としてのEVA(エチレンビニルアセテート)23、次に太陽電池セル28、さらにEVA24が積層され、上側に樹脂製のバックシート22が配置されている。これらをラミネート装置において、真空の加熱状態下で圧力を加え、EVAを架橋反応させて積層してラミネート構造としている。ラミネート装置から搬出された太陽電池パネルは、次に、コンベアなどで本発明の太陽電池の検査装置に搬送される。搬送されてきた太陽電池パネルは、ガイド部材814、814の間にガイドされて暗室810の上に達する。
【0052】
図2に示すように暗室810の上に達した検査対象100は、透明なカバーガラス21を下に向けて暗室810の透明板812の上で停止し、プローブ75を接続し測定電流制御部70と接続する。検査対象100の方が透明板812より小さいので、周囲から暗室内に光が入るから、検査対象100の上から暗室810の上面全体を図示しない遮光手段で覆う。または透明板812と検査対象100との隙間は適宜遮光材で覆う必要がある。
【0053】
遮光手段であるが、上記では、暗室810の上面全部を覆うものとして説明したが、太陽電池パネルの場合、裏側の樹脂製のバックシート22は、不透明であり、遮光性が十分である。また、暗室810の上面811も、透明板812以外を遮光性の部材で構成されている。したがって、検査対象100が透明板812より大きくて、透明板812の全体が検査対象100で覆われる場合には、遮光シートは不要である。
【0054】
しかし、検査対象100の方が透明板812より小さければ、隙間から光が暗室810内に入るので、遮光手段で覆う必要がある。覆う範囲は、最低で、透明板812と検査対象100との間に額縁状にできる隙間だけである。したがって、遮光手段は、最低で、この隙間を覆う大きさがあればよいことになる。
【0055】
本実施例では、太陽電池を特別の暗室内で検査するのではなく、図2のように簡単な機構の装置に載置すればよい。また本実施例では、図2に示すカメラ位置決め機構とコンピュータシステムを備えるのみで足りるため、次のような長所がある。
【0056】
太陽電池パネルのラミネート加工など、通常の加工工程では、太陽電池パネルのガラス面を下にして搬送している。この検査装置は、暗室の上面811に太陽電池の受光面を下側にして載置することができるので反転する動作が不要となる。したがって太陽電池パネルなどの製造工程中に容易に配置することができる。
【0057】
<4>太陽電池パネルの検査フロー
解析手段200では、図3のフローチャートにしたがって、太陽電池パネルを写真撮影し、その欠陥を検査する。
【0058】
先ずステップS1において、図2に示す暗室810の上面811に検査対象100として太陽電池パネルを位置決め載置する。続くステップS3において、載置した検査対象の太陽電池パネルの端子部にプローブ75を接続して測定電流制御部70より電流を印加できるようにする。
【0059】
つぎのステップS5において、制御部10は位置決め機構制御部80を制御してカメラ500を最初の太陽電池パネル撮影位置に位置決めする。ステップS7において、測定電流制御部70を制御して検査対象である検査対象100に所定の順方向電流を流してEL発光させる。発光条件(通電電流値、通電時間など)は検査対象ごとに予め設定し、基準データファイル30に登録しておく。また、この発光条件は、本実施例では、一つの撮影条件に3セット設定可能に構成されている。これは、セルの特性によっては、単一の条件ではEL発光過多や発光不足が発生する可能性があるからである。
【0060】
この様に複数の発光条件を設定しておくことにより、撮影画像処理実行時に、撮影結果が不十分と判断した場合にはその状況により発光条件を変更して再度ステップS7の処理から再実行することができるようにしている。以下の説明では、再試行についての説明を省略している。
【0061】
そしてステップS10において、制御部10はカメラ制御部50を制御してカメラ500でEL発光している太陽電池セル28を撮影し、撮影画像を取り込み、例えばメモリ20と外部記憶装置900の所定領域に書き込む。
【0062】
続くステップS12で表示制御部60を制御して先に撮影したオリジナル画像をメモリ20から読み出して表示部600に表示する。解析手段200では、ステップS50に示す撮影画像に対する画像処理を行い、撮影画像情報の解析処理を行う。そしてステップS16において、ステップS50の画像処理結果に従って欠陥と判断された部分を強調した画像を表示制御部60を介して表示部600に表示する。
【0063】
なおステップS18は、強調表示した画像を使用した検査者による手動判定の工程であり詳細は<7>にて後述する。
【0064】
解析手段200の制御部10はステップS20でセルの判定結果を例えば外部記憶装置900に保存する。
【0065】
次にステップS22において、検査対象100の太陽電池パネルの太陽電池セル28毎に割り当てたシーケンス番号を一つカウントアップ(歩進)する。そして続くステップS24において、カウントアップしたシーケンス番号を調べ、検査対象100の太陽電池パネル28のすべての太陽電池セルに対する撮影及び判定処理が修了したか否かを調べる。すべての太陽電池セルに対する処理を終了していない場合にはステップS30に進み、位置決め機構制御部80に指示を出してカメラ位置決め機構800を制御してカメラ500を次の太陽電池セルの撮影位置に移動して位置決めする。そしてステップS7に進み、次のセルに対する撮影処理及び判定処理を行う。
【0066】
一方、ステップS24ですべての太陽電池セル28に対する判定処理が終了している場合にはステップS26に進み<6>の様に総合判定を行う。その後各太陽電池セル同士の間隔などを確認して太陽電池パネル全体として良品とできるか否かを総合的に判定し判定結果をたとえば外部記憶装置900の所定領域に書き込む。そして1枚の太陽電池パネルに対する総合判定処理を終了する。
【0067】
<5>S50撮影画像処理の詳細説明
次に図4を参照して図3のステップS50に示す撮影画像処理の詳細を説明する。画像処理は、まず撮影した太陽電池セル28の画像をメモリ20から読み出し、太陽電池セル28の画像の光量が少ない領域(暗部)を抽出する。次に、抽出した暗部の領域又は形状を図9・図10・図11の太陽電池セルの欠陥のタイプに基づき画像処理する。画像処理条件は基準データファイル30に登録されており、以下の処理を順次行うことになる。
【0068】
解析手段200では、メモリ20から受け取った1枚の太陽電池セル28の画像データについて、先ずステップS52において、スケーリング処理を実行する。太陽電池セルの特性によって全体的な発光量には違いがある。スケーリング処理は、もっとも明るい部分をある明度に正規化して、より一定の条件で比較検討できるように画像全体の明るさを調整する処理である。
【0069】
次にステップS54で太陽電池セルの領域抽出処理を実行する。この処理は、太陽電池セルの外周形状を、予め基準データファイル30に設定し登録していたセルの寸法情報と照合して自動計算する処理である。太陽電池セル28の位置や角度がずれている場合、この処理によって、正確に太陽電池セル28の外周形状を求め、角度を修正することができる。このとき、隣接する太陽電池セル28を連続して撮影することで、隣接するセルの配設状況を知ることができ、間隔が適当であるか否かの判定をする。
【0070】
次のステップS56において、バスバー除外処理を行って撮影画像からバスバー領域を除外してセルの良否判定を行えるような画像処理を行う。太陽電池セルにはバスバーが設けられており、基準データファイル30に予め設定しておいた太陽電池セルの寸法情報と照合して自動計算してバスバー領域を求め、太陽電池セルの良否判定のための領域から除外する。この処理によって、太陽電池セルの位置や角度がずれていても正確にバスバー領域を求めることができる。
【0071】
続いてステップS58において、シェーディング処理を行う。カメラ500に装着するレンズの特性により、どうしても中心が明るく端に行くほど暗くなる。このため、この処理でカメラのレンズ特性による明度の変化を補正する。
【0072】
次に、欠陥を判定するのだが、その前に、画像内を暗部と明部とに分ける。暗部であるか否かは周辺との明度の低下割合を閾値にして判定を行う。明部と暗部の区別の仕方の一例を以下に説明する。
【0073】
撮影画像を予め決められた大きさの小区域に分割し、各小区域ついて明度の平均を求める。そして、1つの小区域内に明るい部分と暗い部分とが混在するものを探し、その小区域内での明度の平均値を求める。このとき似たような明るさの複数の小区域を取り出して平均値を求めてもよい。この平均化によって、明るい部分と暗い部分が複雑に混在する部分では、明るい部分と暗い部分の差が縮まり明と暗の境界がなくなる。このとき得た平均値を基準として明暗の閾値を決定する。閾値としては、平均値そのもの、又はこの平均値より若干低い値(暗い値)を「明」の閾値とするなど適宜設定することができる。そして、この明るさに達しない小区域は「暗部」と判断する。
【0074】
すなわち、安定的に暗い部分(すなわち、「欠け」と疑われる部分)については、小区域について平均化すると、平均値が一段と暗く(低く)なることから、その小区域は暗部であると判定することができる。
【0075】
また、安定的に暗い部分とその周囲の明るい部分の双方に上記の小区域がまたがるところでは、たとえば、小区域の一部が明るく、残りが暗くなることになる。このように、小区域の一部が明るく、残りが暗くなるときは、平均値が上記の閾値を越えれば明部と判断し、平均値が上記の閾値に達しない場合は、その小区域は暗部と判断することになる。以上から、複雑に明るい部分と暗い部分が混在する小区域の平均値を閾値として用いれば、撮影画像を「明部」と「暗部」に分けることができる。
【0076】
なお、上記の撮影画像を小区域に分けて明部と暗部に区分けする方法は一例に過ぎず、他の方法で明部と暗部とを区分けしてもよい。たとえば、デジタルの撮影画像の場合は、一定数の画素を直線的に並べたものを小区域としたり、複数の画素で小面積を形成し、これを小区域とすることで同様の処理をすることが可能である。また、目視により明部と暗部とが複雑に混在する区域を選定し、この区域の平均値を求めて閾値を設定してもよい。さらには、閾値を求める際の小区域の大きさと、画像内を明部と暗部に分ける際の小区域の大きさとを分けて、明部と暗部に分ける際の小区域の大きさの方を小さくしてもよい。
【0077】
また、スケーリング処理やシェーディング処理が適切に行われ、複数の太陽電池セルについて、各々の明るさが均等に調整されていれば、複数の太陽電池セルを検査するのに同じ閾値を使用することができる。
【0078】
そして、「明部」を0とし、「暗部」を1とするなどによって2値化することで、画像の明、暗を強調して表示することができる。
【0079】
以上によって、カメラで撮影された画像は、小区域単位で明と暗とに分けられるが、この段階では、単に明、暗に区分けされただけで、まだ、欠陥であるか否かの判定はされていない。欠陥か否かの判定は次のようにして行われる。
【0080】
まず、欠陥をタイプ分けする。ここでは、欠陥のタイプを「欠け」と「フィンガー断線」と「クラック」の3通りと考える。ただし、この3つのタイプは一例であり、これら以外の欠陥のタイプを含めてもよい。そして、これらの各タイプの形状や長さや面積の閾値は、前述したように、予め基準データファイル30に記憶されている。
【0081】
ステップS60において、欠陥の1つである「欠け」の検出処理を行う。欠け検出処理は、セル周辺部で暗く見える面積をもった暗部のうち閾値を越える面積以上のものを欠けとして抽出する処理である。欠陥が原因の欠けによる暗部は、図11のように周辺の明るい部分に比べて比較的安定して暗くなる傾向がある。それに対して図12のように欠陥以外が原因の暗部は、暗い部分と明るい部分が複雑に混在している。この部分は、上述した閾値の求め方から分かるように、殆どが明部と判断される。しかし、設定した小区域の大きさによっては、暗部と判断される部分も出てくるが、暗部の面積が閾値を越えることがないので、「欠け」と判定されることはない。
【0082】
こうして「欠け」の判定がされ、欠けに対応する「暗部」を1とし、その周囲の「明部」を0とするなどによって2値化して表示することで、ステップS16に示す欠陥部分を強調した判定画像を表示することができる。図11は、「欠け」を強調した表示の例である。「欠け」と判定した暗部には、欠陥のタイプに対応した色を付けて表示してもよい。
【0083】
なお、欠陥を解析手段200で自動的に判定する場合は、画像データ内で明部と暗部とが2値化されていればよく、画像をディスプレイ等に表示しなければならないものではない。しかし、ディスプレイ上に表示することで、判定の進行状況を目視により確認することができる。
【0084】
続いてステップS62でフィンガー断線検出処理を行う。この処理は、セル内部で暗く見える面積をもった影状に見える部分のうちある面積以上あるものをフィンガー断線として検出する処理である。この処理でも欠け検出で行ったのと同様の明度の平均化処理を行い、安定した暗部を抽出することで検出することができる。さらにフィンガー断線の暗部はフィンガーの方向に沿って長方形の形状を示す特徴がある。そこで予め基準データファイル30に設定されているフィンガーの方向と合致し、且つ形状が長方形に近似した暗部をフィンガー断線と判定するようにする。
【0085】
そして、「明部」を0とし、「暗部」を1とするなどによって2値化して表示することで、画像の明、暗を強調して表示することができる。このようにすることによって、ステップS16に示す欠陥部分を強調した判定画像を表示することができる。図9は、フィンガー断線を強調表示した図である。このとき、フィンガー断線と判定した暗部には、欠陥のタイプに対応した色(欠けとは別の色)を付けて表示してもよい。フィンガー断線を効果的に見つけるには、前述した小区域を正方形として、一辺の大きさを、隣接するフィンガー間の距離より小さくすることが望ましい。
【0086】
次にステップS64において、クラック検出処理を行う。上述した明部と暗部の区別方法によって、暗部を識別する。そして、フィンガー断線以外で暗く見える線状の暗部のうちある長さ以上のものをクラックとして検出する。クラックの暗部は、通常折れ曲がった線状に表れるが、比較的単純な形状をしている。以下に図13によりクラックを判断する方法について説明する。
【0087】
クラックの暗部は以下のように比較的単純な線分の集合になっている。クラック検出の処理では、クラックによる折線状の暗部(イ)(ロ)(ハ)を1つのクラックとして認識し、それぞれの長さを合算してそのクラックの長さとしている。また、折曲部の角度θは90゜以上の鈍角になることも特徴の1つである。クラックによる暗部だけの場合は、単に各暗部のつなぎ目(接合点)でつながって(接合して)いるかを見るだけで各暗部が一つの暗部の一部であるか否かの判定をすることができる。
【0088】
「<2>太陽電池セルの欠陥」で述べた通り撮影画像にはクラックによる暗部以外の暗部が存在する可能性がある。代表的なものとして、結晶粒界などの内的要因によるものが挙げられる。このような暗部がクラックによる暗部の結合点と重なった場合、線の接合を見ただけでは正確にクラック全体を把握することができない。ところで、このような暗部は温度を上げることで縮小させることができる。しかし、温度を上げるには時間が掛かるので、ここでは、このような方法は採用せず、以下のようにして判断する。
【0089】
クラックによる暗部は図13のように比較的単純な形状(接合点が鈍角に折れ曲がっている)をしているので、各線分同士の方向は近いと考えられる。それに対してクラック以外の暗部はランダムな方向になっているので、クラックの方向と一致する確率が低い。
【0090】
そこで、暗部の接合点でつながっている次の暗部を判定する場合、上述のようにそれまでの暗部の方向と近いものを優先して次の暗部であると判定すれば、容易にクラックの全体を把握できることになる。また、長さの閾値を採用してもよい。
【0091】
判定結果を強調して表示するための強調画像を生成する場合には、クラックと判定した暗部と周辺の明部とを2値化して表示する。欠陥のタイプに対応した色を付けて表示してもよい。このようにすることで、上述したステップS16に示す表示がされる。
【0092】
「<2>太陽電池セルの欠陥」で述べた通り撮影画像にはクラックによる暗部以外の暗部が存在する可能性がある。このような暗部は、複雑に明るい部分と暗い部分とが混在しているので、原則的には、前述したように明度の分布を平均化することで処理できる。しかし、明暗の閾値より暗いものもあるので、この部分を暗部と判断することも起こる。また、クラックは所定の長さ以上あるか無いかで判定されるが、この長さの閾値を下げると、クラック以外の暗部もクラックと誤認してしまう可能性がある。一方、小さいクラックが問題になる場合もあり、いちがいに閾値を上げることも適当ではない。そこで以下のような判定基準によりクラックの判定をする。
【0093】
クラックの判定基準としては、太陽電池セルの領域特性に応じた2種の基準を用意している。図10のように太陽電池セルをバスバー近辺の領域(領域M、領域N)とそれ以外の領域Lに分ける。第1の判定基準は、主としてラミネート加工による圧縮や輸送中、およびモジュール製作工程中のハンドリングによる荷重や衝撃力に起因するクラックを対象とするものである。このクラックは、領域M、領域N及び領域Lの全体に発生する。このクラックの長さの閾値を短くすると、クラック以外の暗部もクラックと判断してしまう。特に、領域Lでは、このようなノイズとしてのクラックが検出されやすい。そこで、この大きいクラックを正確に抽出するために長さの閾値を大きくして、寸法の大きなクラックに限定して抽出することが望ましいことになる。
【0094】
第2の判定基準は、領域Mと領域Nに適用される。この領域にできるクラックはバスバーにリード線をハンダ付けする際に生じる寸法の小さいクラックが多い。そこで、この領域MとNでは、クラックの長さの閾値を短くして、小さいクラックを検出できるようにする。
【0095】
第1の判定基準によって長さの長い線状の暗部をクラックとすることで、クラック以外の暗部を排除し、より正確にクラックを抽出することができる。第2の判定基準で短い線状の暗部をクラックとすることで、小さな寸法のクラックまで抽出可能となる。
【0096】
なお、領域Mと領域Nの大きさは、原則として同じであるが、相違させてもよい。また、領域Mと領域Nにおけるクラックの長さの閾値を相違させてもよい。
【0097】
太陽電池セルの良否の自動判定処理では、上記のようにして、「欠け」「フィンガー断線」「クラック」の有無を判定する。このとき、暗部ではあるが、面積が小さいとか、長さが短いといった理由から欠陥と判断されなかった部分は、明部として扱うことでノイズを少なくすることができる。
【0098】
そして、ステップS66の自動判定処理において各検出処理で抽出した「欠け」「フィンガー断線」「クラック」のそれぞれの大きさ(面積、長さ)、個数を予め定めた閾値と比較し、太陽電池セルの良否を判定する。そして続くステップS68で判定結果を出力する。
【0099】
そして、これらの欠陥がない場合には良品とする。検出された場合には、検出された「欠け」「フィンガー断線」「クラック」の情報をもとにセルの良否をランク分けすることになる。
【0100】
ランク分けは以下の項目を基に判定する。(1)検出された「欠け」の面積の合計、(2)検出された「フィンガー断線」の面積の合計、(3)検出された「クラック」の長さの合計の3つについて予め設定した閾値と比較して項目毎のランクを決定している。ランクは、例えば、A、B、C、D、Eの5ランクとし、Aがもっともよく、Eが最も低いランクとする。欠陥ありと判断したセルのランクは、自動判定の最低ランクであるEランクに分類する。セルのランクが所定ランク以下の場合に不良(NG)と判定する。この所定ランクは任意に設定変更可能である。この判定基準は、自由に設定可能であり、所定の面積以上の「欠け」や、所定の長さ以上の「クラック」があれば、近い将来の劣化が激しいとして、いずれか一方だけでその太陽電池セルは不良と判断することも可能となる。
【0101】
<6>総合判定S26
そして、検査対象がセル単体である場合にはセルの判定結果がそのまま製品としての総合判定結果となる。一方、検査対象がストリング、マトリックスの場合、製品としての良否の総合判定を以下の手順で行うこととしている。
【0102】
各太陽電池セルの判定基準を基に判断することになるが、ランク付けされた各太陽電池セルのランク別のセルの枚数によって総合判断する。例えば、設定したランク以下の太陽電池セルの枚数が設定以上の場合、不良と判断することになる。例えば、Cランク以下が5枚以上、Dランク以下が3枚以上、Eランク以下が1枚以上のいずれかの場合に製品の良否を不良と判定するなどの判断基準を設定する。
【0103】
<7>S18検査者による手動判定
本実施例の太陽電池欠陥検査装置においては、撮影から欠陥の判定まで自動的に行うことができるが、撮影画像を解析して問題があると判定した場合などに、撮影画像や暗部を、ディスプレイ等の表示部に強調した状態で表示する機能も有している。したがって、本太陽電池欠陥検査装置による自動判定を止めて、図3のS18においてこの機能を使用して検査者が表示部を見て手動判定することもできる。検査者による手動判定の場合は、以下のとおりとなる。
【0104】
検査者は、図3のステップS18において、強調表示した画像を見て良否判定結果キーボード400から指示入力する。なお、表示部600がタッチパネルである場合には、表示部600の表示画面にタッチすることで指示入力としても良い。
【0105】
本実施例の検査装置には、検査者が表示部の撮影画像を確認して良否判断するために、判定機能の「有効/無効」、自動判定機能の「有効/無効」、手動判定機能の「有効/無効」を設定可能としている。検査者がストリング又はマトリクスの製品を検査し、検査者がすべての太陽電池セルを判定し終わったと判断したときに「製品判定完了」ボタンを入力し、次の太陽電池パネルの検査を行う様にしている。
【0106】
<8>S16強調画像処理
本実施例のステップS16における欠陥のある部分を強調した判定画像の例は、図9がフィンガー断線の例、図10がクラックの例、図11が欠けの例である。これらの図では、欠陥とそれ以外の部分とを2値化して表示している。このとき、欠陥以外の部分は「明」と表示することとする。
【0107】
このような表示方法とは別に図5の例を示す。図5(a)は、撮影されたオリジナルの画像である。図5(b)は、欠陥が強調された画面に、図5(a)の撮影画像を重ねて表示した画面である。このようにすることで、検査者が手動判定を行う場合には、両方の画像を見比べて判断することができるようになり、より容易にまた確実にセル撮影画像の良否が判別できる。また、自動判定における閾値を変更し、より正確な自動判定ができるようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明に係る一発明の実施例の概略構成を説明するためのブロック図である。
【図2】本実施例のカメラ位置決め機構の詳細構造を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【図3】本実施例の太陽電池検査方法を説明するためのフローチャートである。
【図4】図3の撮影画像処理S50の詳細を説明するためのフローチャートである。
【図5】本実施例の太陽電池セルの画像の例を示す図で(a)は撮影画像の図、(b)欠陥を強調表示したものと撮影画像とを重ねて表示した図である。
【図6】検査対象の太陽電池のセル・ストリング・マトリックスの説明図である。
【図7】検査対象の太陽電池パネルの構造を示す断面図である。
【図8】本実施例の検査装置にて測定する太陽電池セルの説明図である。
【図9】検査対象の太陽電池パネル内のセルのフィンガー断線を強調表示した図である。
【図10】検査対象の太陽電池パネル内のセルのクラックを強調表示した図である。
【図11】検査対象の太陽電池パネル内のセルの欠けを強調表示した図である。
【図12】多結晶シリコンセルの撮影画像の例である。
【図13】セル撮影画像から暗部をクラックと判断する方法の説明図である。
【符号の説明】
【0109】
10 制御部
20 メモリ
28 太陽電池セル
30 基準データファイル
40 入出力制御部
50 カメラ制御部
70 測定電流制御部(電源手段)
75 プローブ
80 位置決め機構制御部
100 検査対象(太陽電池パネル)
200 解析手段
500 カメラ(撮影手段)
600 表示部(表示手段)
900 外部記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池内の太陽電池セルの良否を判定する太陽電池の検査装置であって、
検査対象となる太陽電池セルに電流を通電する電源手段と、
前記電源手段により通電された前記太陽電池セルからの発光光を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段で撮影した太陽電池セルの撮影画像を解析する解析手段と、を有し、
前記解析手段は、前記撮影手段で撮影した太陽電池セルの撮影画像について、撮影画像中の明暗が混在する部分における平均の明るさから閾値を求め、該閾値によって撮影画像を明部と暗部とに分け、明部と暗部とを2値化表示することによって強調し、太陽電池セルごとの欠陥の有無を判定することを特徴とする太陽電池の検査装置。
【請求項2】
前記解析手段が、前記欠陥を予め欠陥のタイプごとに分け、前記暗部の形状を、予め登録されている欠陥のタイプと比較することによって欠陥の有無及びタイプ別の判断をし、欠陥と判断された部分とそれ以外の部分とを2値化表示することによって強調することを特徴とする請求項1記載の太陽電池の検査装置。
【請求項3】
前記解析手段は、特定のタイプの欠陥の存在については、太陽電池セルの所定の領域についてのみ判断し、他の領域では前記特定の欠陥の存否を判断しないことを特徴とする請求項2に記載の太陽電池の検査装置。
【請求項4】
前記欠陥部分とそれ以外の部分とを2値化表示した画像を可視表示する表示手段を有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の太陽電池の検査装置。
【請求項5】
前記欠陥と判断された部分を、前記撮影画像と重ねて前記表示手段で可視表示することを特徴とする請求項4に記載の太陽電池の検査装置。
【請求項6】
前記欠陥の表示が、欠陥のタイプによって異なる色彩を付けた表示であることを特徴とする請求項4又は5に記載の太陽電池の検査装置。
【請求項7】
前記撮影手段は、複数の太陽電池セルを連続して撮影し、前記解析手段は、太陽電池セル撮影画像により隣接するセルの配設状況の良否判定も行うことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の太陽電池の検査装置。
【請求項8】
電源手段によって検査対象となる太陽電池内の太陽電池セルに電流を通電する工程と、
前記通電によって前記太陽電池セルを発光させ、太陽電池セル毎の発光光を撮影手段によって撮影する工程と、
前記撮影手段で撮影した太陽電池セルの撮影画像について、撮影画像中の明暗が混在する部分における平均の明るさから閾値を得る工程と、
該閾値によって前記撮影画像を明部と暗部とに分け、明部と暗部とを2値化表示することによって強調し、太陽電池セルごとの欠陥の有無を判定する工程と、を有することを特徴とする太陽電池の欠陥判定方法。
【請求項9】
前記解析手段が、前記欠陥を予め欠陥のタイプごとに分け、前記暗部の形状を、予め登録されている欠陥のタイプと比較することによって欠陥の有無及びタイプ別の判断をし、欠陥と判断された部分とそれ以外の部分とを2値化表示することによって強調することを特徴とする請求項8記載の前記太陽電池の欠陥判定方法。
【請求項10】
特定のタイプの欠陥の存在については、太陽電池セルの所定の領域についてのみ判断し、他の領域では前記特定の欠陥の存否を判断しないことを特徴とする請求項8又は9に記載の太陽電池の欠陥判定方法。
【請求項11】
前記太陽電池セルの撮影は、複数の太陽電池セルを連続して撮影し、太陽電池セルの撮影画像により隣接するセルの配設状況の良否判定も行うことを特徴とする請求項8から10のいずれかに記載の太陽電池の欠陥判定方法。
【請求項12】
前記欠陥部分と欠陥ではない部分とを2値化表示した画像を可視表示することを特徴とする請求項8から11のいずれかに記載の太陽電池の欠陥判定方法。
【請求項13】
前記欠陥部分と欠陥ではない部分とを2値化表示した画像とともに、太陽電池セルの撮影画像も表示することを特徴とする請求項8から12のいずれかに記載の太陽電池の欠陥判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−16019(P2010−16019A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171925(P2008−171925)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【特許番号】特許第4235685号(P4235685)
【特許公報発行日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000004374)日清紡ホールディングス株式会社 (370)
【Fターム(参考)】