説明

太陽電池バックシート用フィルム及びその製造方法

【課題】生産効率に優れると共に、白色顔料が層中に均一に存在し、各層間の密着性に優れた太陽電池バックシート用フィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基材フィルムの少なくとも片面に、白色顔料、水系バインダー、及び無機酸化物フィラーを含有する白色層用水系組成物と、水系バインダーを含有する接着保護層用水系組成物と、を塗布して、白色層及び接着保護層を形成する太陽電池バックシート用フィルムの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池バックシート用フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶シリコンまたはアモルファスシリコン等を太陽電池素子とする太陽電池モジュールは、一般に、表面保護シート層、充填剤層、光起電力素子としての太陽電池素子、充填剤層、および、裏面保護シート層等の順に積層し、真空吸引して加熱圧着するラミネーション法等を利用して製造されている。太陽電池は、屋根の上等、太陽光が照りつけ、雨ざらしになる環境に置かれることから、前記太陽電池モジュールを構成する各層は、防湿性、耐熱性、耐紫外線性等の耐候性を代表とする機能性が求められている。
【0003】
裏面保護シート層としては、例えば、強度に優れ、かつ、耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性、耐風圧性、耐降雹性、耐薬品性、光反射性、光拡散性、意匠性等の諸堅牢性に優れ、特に、水分、酸素等の侵入を防止する防湿性に優れ、更に、表面硬度が高く、かつ、表面の汚れ、ゴミ等の蓄積を防止する防汚性に優れ、極めて耐久性に富み、その保護能力性が高いこと等の条件を充足することが必要とされている。
【0004】
例えば、防湿性、長期的な耐性能劣化性、耐久性、保護能力性等の諸特性に優れ、かつ、より低コストで安全な太陽電池モジュールを構成することを目的として、無機酸化物の蒸着膜を設けた基材フィルムの両面に、白色化剤と紫外線吸収剤とを含む耐熱性のポリプロピレン系樹脂フィルムをラミネート積層した太陽電池モジュール用裏面保護シートが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、裏面保護シート層自体の機能性もさることながら、裏面保護シートの生産性に着目し、より生産効率の高い太陽電池用裏面保護シートの製造方法も求められている。一般に、太陽電池用裏面保護シートは、樹脂フィルムを主成分とする、基材と太陽光の反射機能を有する白色層と諸般の機能性層との積層構造をしており、各樹脂フィルムの貼り合わせにより製造されている。
【0006】
それに対し、バックシートの製造加工効率を良好なものとするために、第1の樹脂フィルム層11と白色着色層12と、ガスバリア性蒸着樹脂フィルム層13と、第2の樹脂フィルム層14とを加熱アニール処理して低収縮性を付与して製造される太陽電池用バックシートが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
また、優れた耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性、耐風圧性、耐降雹性、耐薬品性、防湿性、防汚性、意匠性、光反射性、耐電圧性、その他の要求される諸特性を具備し、入射光の反射能にも優れ、汎用の方法で成形、加工ができ、低コストで安全、且つ、耐久性に優れ、電力変換効率が高くなることを目的として、基材フィルムと白色インキ層と無機蒸着フィルムからなることを特徴とした太陽電池用裏面保護シートが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−306006号公報
【特許文献2】特許2006−073793号公報
【特許文献3】特許2006−210557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記特許文献1〜3に記載されている太陽電池用裏面保護シートは、積層シートたる太陽電池用裏面保護シートの完成には、層と層との貼り合わせが欠かせなかった。そのため、生産効率に欠け、各層間の密着性も不十分であった。
【0010】
本発明では、生産効率に優れると共に、白色顔料が層中に均一に存在し、各層間の密着性に優れた太陽電池バックシート用フィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 基材フィルムの少なくとも片面に、白色顔料、水系バインダー、及び無機酸化物フィラーを含有する白色層用水系組成物と、水系バインダーを含有する接着保護層用水系組成物と、を塗布して、白色層及び接着保護層を形成する太陽電池バックシート用フィルムの製造方法である。
【0012】
<2> 前記白色層用水系組成物は、前記水系バインダーに対する白色顔料の体積分率が50%〜200%である白色層用水系組成物であり、該白色層用水系組成物を、前記基材フィルム上に、塗布厚が4μm以上20μm以下、かつ、白色顔料の塗工量が3g/m以上10g/m以下となるように塗布する前記<1>に記載の太陽電池バックシート用フィルムの製造方法である。
【0013】
<3> 前記白色層用水系組成物は、無機酸化物フィラーの含有量が前記白色層用水系組成物中の水系バインダーの全質量に対して、5質量%〜400質量%である前記<1>または前記<2>に記載の太陽電池バックシート用フィルムの製造方法である。
【0014】
<4> 前記基材フィルムの、前記白色層および前記接着保護層が形成されている面とは反対側の面に、さらに、フッ素系樹脂及びシリコーン−アクリル複合樹脂の少なくとも一方を含有する耐候性層用水系組成物を塗布する前記<1>〜前記<3>のいずれか1つに記載の太陽電池バックシート用フィルムの製造方法である。
【0015】
<5> 前記基材フィルムの、前記白色層および前記接着保護層が形成されている面は、波長550nmにおける光線反射率が70%以上ある前記<1>〜前記<4>のいずれか1つに記載の太陽電池バックシート用フィルムの製造方法である。
【0016】
<6> 前記白色層用水系組成物は、さらに界面活性剤の少なくとも一方を含有する前記<1>〜前記<5>のいずれか1つに記載の太陽電池バックシート用フィルムの製造方法である。
【0017】
<7> 前記水系バインダーが、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル、及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である前記<1>〜前記<6>のいずれか1つに記載の太陽電池バックシート用フィルムの製造方法である。
【0018】
<8> 前記接着保護層用水系組成物は、さらに無機酸化物フィラーを含有する前記<1>〜前記<7>のいずれか1つに記載の太陽電池バックシート用フィルムの製造方法である。
【0019】
<9> 基材フィルムの少なくとも片面に、白色顔料、水系バインダー、及び無機酸化物フィラーを含有する白色層用水系組成物の塗布膜からなる白色層と、水系バインダーを含有する接着保護層用水系組成物の塗布膜からなる接着保護層と、を有する太陽電池バックシート用フィルムである。
【0020】
<10> 前記白色層は、前記水系バインダーに対する白色顔料の体積分率が50%〜200%であり、該白色層の層厚が4μm以上20μm以下、かつ、白色顔料の含有量が3g/m以上10g/m以下である前記<9>に記載の太陽電池バックシート用フィルムである。
【0021】
<11> 前記白色層は、無機酸化物フィラーの含有量が、前記白色層中の水系バインダーの全質量に対して、5質量%〜400質量%である前記<9>または前記<10>に記載の太陽電池バックシート用フィルムである。
【0022】
<12> 前記基材フィルムの、前記白色層および前記接着保護層が形成されている面とは反対側の面に、さらに、フッ素系樹脂及びシリコーン−アクリル複合樹脂の少なくとも一方を含有する耐候性層用水系組成物の塗布膜からなる耐候性層を有する前記<9>〜前記<11>のいずれか1つに記載の太陽電池バックシート用フィルムである。
【0023】
<13> 前記基材フィルムの、前記白色層および前記接着保護層が形成されている面は、波長550nmにおける光線反射率が70%以上ある前記<9>〜前記<12>のいずれか1つに記載の太陽電池バックシート用フィルムである。
【0024】
<14> 前記水系バインダーが、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル、及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である前記<9>〜前記<13>のいずれか1つに記載の太陽電池バックシート用フィルムである。
【0025】
<15> 前記接着保護層は、さらに、無機酸化物フィラーを含有する前記<9>〜前記<14>のいずれか1つに記載の太陽電池バックシート用フィルムである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、生産効率に優れると共に、白色顔料が層中に均一に存在し、各層間の密着性に優れた太陽電池バックシート用フィルム及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<太陽電池バックシート用フィルムの製造方法>
本発明の太陽電池バックシート用フィルムの製造方法は、基材フィルムの少なくとも片面に、白色顔料、水系バインダー、及び無機酸化物フィラーを含有する白色層用水系組成物と、水系バインダーを含有する接着保護層用水系組成物と、を塗布して、白色層及び接着保護層を形成する。
本発明の太陽電池バックシート用フィルムの製造方法は、さらに、白色層及び接着保護層を形成されている面とは反対側の面に、フッ素系樹脂及びシリコーン−アクリル複合樹脂の少なくとも一方を含有する耐候性層用水系組成物を塗布する工程を有していてもよい。また、基材フィルムに白色層用水系組成物を塗布して白色層を形成する前に、基材フィルムと白色層との間に下塗層用水系組成物を塗布して下塗層を形成する工程を有していてもよい。
【0028】
太陽電池バックシート用フィルムの製造方法を上記構成とすることで、太陽電池バックシート用フィルムを構成する各層を貼り合わせることなく、塗布のみで太陽電池バックシート用フィルムを製造することができる。したがって、太陽電池バックシート用フィルムの生産効率を上げることができる。
また、本発明の太陽電池バックシート用フィルムの製造方法では、白色層および接着保護層が、水系バインダーを含有する水系組成物を塗布することにより形成される。従って、各水系組成物は膜厚の薄い塗膜を形成することができ、基材フィルムと白色層、白色層と接着保護層との密着性を向上することができる。特に、白色層と接着保護層との層間は、水系バインダー同士の相互作用により、密着性を強くすることができると考えられる。また、白色層中に無機酸化物フィラーが含まれることにより、密着性が向上し、特に湿熱環境下(例えば、85℃、85%RH)においても密着性が低下し難い。
【0029】
さらに、本発明における白色層は、上記のごとく水系組成物の塗布により形成されるため、樹脂中に白色顔料を練り込んで形成されたフィルムやシートの貼り合せによる白色層に比べ、白色顔料が層中で偏在しにくく、層中に均一に存在し易い。したがって、かかる白色層を有する本発明の太陽電池バックシート用フィルムは、太陽光の反射効率にも優れると考えられる。
このように、本発明の太陽電池バックシート用フィルムは、太陽電池用途に好適な光反射性又は装飾性を有しており、さらに電池本体との接着(特に太陽電池素子を封止するEVA系封止剤との接着)に優れており、湿熱環境下での経時で剥離等を起こすことなく安定的に保つことができ、長期に亘って発電性能を安定して保つことが可能である。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0030】
〔基材フィルム〕
本発明の太陽電池バックシート用フィルムは、基材フィルムを有する。
基材フィルムの材質は、特に制限されず、例えば、ポリエステル、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン、またはポリフッ化ビニルなどのフッ素系ポリマー等が用いられる。
中でも、コストや機械強度などの点から、ポリエステルが好ましい。
【0031】
前記ポリエステルは、芳香族二塩基酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体と、から合成される線状飽和ポリエステルであることが好ましい。
かかる線状飽和ポリエステルの具体例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−ナフタレートを挙げることができる。
このうち、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートが、力学的物性およびコストのバランスの点で特に好ましい。
【0032】
前記ポリエステルは、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。更に、前記ポリエステルに他の種類の樹脂、例えばポリイミド等を少量ブレンドしたものであってもよい。
【0033】
ポリエステル中のカルボキシル基含量は50当量/t以下が好ましく、より好ましくは35当量/t以下である。カルボキシル基含量が50当量/t以下であると、耐加水分解性を保持し、湿熱経時したときの強度低下を小さく抑制することができる。カルボキシル基含量の下限は、ポリエステルに形成される層(例えば白色層)との間の接着性を保持する点で、2当量/tが望ましい。
ポリエステル中のカルボキシル基含量は、重合触媒種、製膜条件(製膜温度や時間)により調整することが可能である。
【0034】
ポリエステルを重合する際の重合触媒としては、カルボキシル基含量を所定の範囲以下に抑える観点から、Sb系、Ge系、及びTi系の化合物を用いることが好ましいが、特にTi系化合物が好ましい。Ti系化合物を用いる場合、Ti系化合物を1ppm以上30ppm以下、より好ましくは3ppm以上15ppm以下の範囲で触媒として用いることにより重合する態様が好ましい。Ti系化合物の割合が前記範囲内であると、末端カルボキシル基を下記範囲に調整することが可能であり、ポリマー基材の耐加水分解性を低く保つことができる。
【0035】
Ti系化合物を用いたポリエステルの合成には、例えば、特公平8−301198号公報、特許第2543624、特許第3335683、特許第3717380、特許第3897756、特許第3962226、特許第3979866、特許第3996871、特許第4000867、特許第4053837、特許第4127119、特許第4134710、特許第4159154、特許第4269704、特許第4313538等に記載の方法を適用できる。
【0036】
本発明におけるポリエステルは、重合後に固相重合されていることが好ましい。これにより、好ましいカルボキシル基含量を達成することができる。固相重合は、連続法(タワーの中に樹脂を充満させ、これを加熱しながらゆっくり所定の時間滞流させた後、送り出す方法)でもよいし、バッチ法(容器の中に樹脂を投入し、所定の時間加熱する方法)でもよい。具体的には、固層重合には、特許第2621563、特許第3121876、特許第3136774、特許第3603585、特許第3616522、特許第3617340、特許第3680523、特許第3717392、特許第4167159等に記載の方法を適用することができる。
【0037】
固相重合の温度は、170℃以上240℃以下が好ましく、より好ましくは180℃以上230℃以下であり、さらに好ましくは190℃以上220℃以下である。また、固相重合時間は、5時間以上100時間以下が好ましく、より好ましくは10時間以上75時間以下であり、さらに好ましくは15時間以上50時間以下である。固相重合は、真空中あるいは窒素雰囲気下で行なうことが好ましい。
【0038】
ポリエステル基材フィルムは、例えば、上記のポリエステルをフィルム状に溶融押出し、キャスティングドラムで冷却固化させて未延伸フィルムとし、この未延伸フィルムをガラス転移温度Tg℃〜(Tg+60)℃で長手方向に1回もしくは2回以上合計の倍率が3倍〜6倍になるよう延伸し、その後、Tg℃〜(Tg+60)℃で幅方向に倍率が3〜5倍になるように延伸した2軸延伸フィルムであることが好ましい。
さらに、必要に応じて180℃〜230℃で1秒間〜60秒間の熱処理を行ったものでもよい。
【0039】
基材フィルムの厚みは、25μm〜300μmであることが好ましい。厚みが25μm以上であることで、十分な力学強度が得られ、300μm以下とすることで、コスト上、有利である。
特にポリエステル基材は、厚みが増すに伴なって耐加水分解性が悪化し、長期使用に耐えない傾向にあり、本発明においては、厚みが120μm以上300μm以下であって、かつポリエステル中のカルボキシル基含量が2〜50当量/tである場合に、より湿熱耐久性の向上効果が奏される。
【0040】
<白色層の形成>
本発明の太陽電池バックシート用フィルムの製造方法では、前記基材フィルムの少なくとも片面に、白色顔料、水系バインダー、及び無機酸化物フィラーを含有する白色層用水系組成物を塗布することにより白色層を形成する。すなわち、白色層用水系組成物は、基材フィルムの一方の面のみならず、両方の面に塗布してもよい。
【0041】
白色層の第一の機能は、入射光のうち太陽電池セルで発電に使われずにバックシートに到達した光を反射させて太陽電池セルに戻すことにより、太陽電池モジュールの発電効率を上げることである。第二の機能は太陽電池モジュールを表面側から見た場合の外観の装飾性を向上することである。一般に太陽電池モジュールを表面側から見ると、太陽電池セルの周囲にバックシートが見えており、バックシートに白色層を設けることにより装飾性を向上させて見栄えを改善することができる。
【0042】
〔白色層用水系組成物〕
白色層用水系組成物は、後述する白色顔料、水系バインダー、及び無機酸化物フィラー、並びに必要に応じて添加し得る無機酸化物フィラー以外の微粒子、架橋剤及び添加剤を、塗布溶媒と混合することで調製することができる。
塗布溶媒としては水が用いられ、白色層用水系組成物に含まれる溶媒中の60質量%以上が水であることが好ましい。水系組成物は、環境に負荷かけにくい点で好ましく、また水の割合が60質量%以上であることにより、防爆性、および安全性の点で有利である。
白色層用水系組成物中の水の割合は、環境負荷の観点からは、さらに多い方が望ましく、水が全溶媒の70質量%以上含まれる場合がより好ましい。
【0043】
白色層用水系組成物の基材フィルム表面への塗布は、たとえばグラビアコーターやバーコーターなどの公知の方法を利用することができる。
白色層用水系組成物は、反射性能と膜強度の観点から、水系バインダーに対する白色顔料の体積分率が50%〜200%である白色層用水系組成物であり、該白色層用水系組成物を、前記基材フィルム上に、塗布厚が4μm以上20μm以下、かつ、白色顔料の塗工量が3g/m以上10g/m以下となるように塗布することが好ましい。
以下、白色層用水系組成物が含有する各成分について説明する。
【0044】
−白色顔料−
白色層用水系組成物は白色顔料を含有する。
白色顔料は、白色の顔料であれば特に制限されず、無機顔料でも有機顔料でもよい。
無機顔料としては、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、群青、紺青、カーボンブラック等が挙げられ、有機顔料としては、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等が挙げられる。
白色顔料の体積平均粒径としては0.03μm〜0.8μm、より好ましくは0.15μm〜0.5μmである。白色顔料の体積平均粒径をこの範囲とすることで、光の反射効率低下を抑制することができる。
白色層用水系組成物の全固形分中、白色顔料の含有量は、反射効率、装飾性、及び白色層の面状の点から、50質量%〜98質量%であることが好ましく、70質量%〜95 質量%であることがより好ましい。
白色顔料の体積平均粒径は、堀場製作所社製、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA950により測定される値である。
なお、白色層用水系組成物は、本発明の効果(特に反射性)を損なわない限度において、白色顔料以外の着色剤(顔料または染料)を含んでいてもよい。
【0045】
−水系バインダー−
白色層用水系組成物は、水系バインダーを含有する。
水系バインダーは、水溶性の樹脂であれば特に制限されず、例えば、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル(アクリル樹脂)、及びポリエステル等を用いることができる。
中でも、耐久性の観点から、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリル樹脂、ポリオレフィンが好ましい。アクリル樹脂としては、アクリルとシリコーンの複合樹脂も好ましい。
【0046】
水系バインダーの好ましい例として、以下の製品を挙げることができる。
ポリオレフィンの例としては、ケミパールS−120、S−75N〔共に、三井化学(株)製〕が挙げられる。
ポリアクリル(アクリル樹脂)の例としては、ジュリマーET−410、SEK−301〔共に日本純薬(株)製〕が挙げられる。
アクリルとシリコーンの複合樹脂の例としては、セラネートWSA1060、WSA1070〔共にDIC(株)製〕とH7620、H7630、H7650〔共に旭化成ケミカルズ(株)製〕が挙げられる。
ポリビニルアルコールの例としては、PVA105〔(株)クラレ製〕が挙げられる。
【0047】
水系バインダーは、1種を用いても複数種を用いてもよいが、白色層と隣接する基材フィルムや各層との密着性を高める観点から、ポリビニルアルコールと他の水系バインダーとの2種以上を用いることが好ましい。
【0048】
白色層用水系組成物中の水系バインダーの含有量は、白色顔料の全質量に対して15質量%〜200質量%の範囲であることが好ましく、17質量%〜100質量%であることがより好ましい。水系バインダーが15質量%以上であることで、強度のある白色層とすることができ、200質量%以下であることで、反射率や装飾性の低下を抑制することができる。
【0049】
−無機酸化物フィラー−
白色層用水系組成物は、さらに無機酸化物フィラーを含有する。
無機酸化物フィラーとしては、シリカ、酸化マグネシウム、酸化錫等が挙げられる。
中でも、湿熱雰囲気に晒された時の接着性の低下が小さいことから、酸化錫またはシリカが好ましい。
【0050】
無機酸化物フィラーの体積平均粒径は10nm〜700nmであることが好ましく、20nm〜300nmより好ましい。平均粒径がこの範囲の無機酸化物フィラーを用いることにより、基材フィルムや接着保護層などの白色層と隣接する層との良好な易接着性を得ると共に、特に湿熱環境下(例えば、85℃、85%RH)での隣接層との密着性を発現することができる。なお、無機酸化物フィラーの体積平均粒径は、
堀場製作所社製、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA950により測定された値である。
微粒子の形状は特に制限はなく、球形、不定形、針状形等のものを用いることができる。
微粒子の白色層用水系組成物中の含有量は、白色層の水系バインダーの全質量に対して、5質量%〜400質量%であることが好ましく、50質量%〜300質量%であることがより好ましい。微粒子の含有量が5質量%以上であることで、湿熱雰囲気に晒された時の接着性が良好であり、400質量%以下であることで白色層の面状悪化を防止することができる。
【0051】
−架橋剤−
白色層用水系組成物は、架橋剤を含有することが好ましい。
白色層用水系組成物が架橋剤を含有することで、白色層用水系組成物に含まれる水系バインダーを架橋し、接着性及び強度のある白色層を形成することができ、好ましい。
架橋剤としては、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。湿熱経時後の密着性を確保する観点から、このなかで特にオキサゾリン系架橋剤が好ましい。
【0052】
オキサゾリン系架橋剤の具体例としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン、2,2’−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−メチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−トリメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2、2’−ヘキサメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、ビス−(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス−(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド等がある。さらに、これらの化合物の(共)重合体も好ましく利用することができる。
また、オキサゾリン系架橋剤は、市販品を用いてもよく、例えば、エポクロスK2010E、K2020E、K2030E、WS500、WS700〔いずれも日本触媒化学工業(株)製〕等を用いることができる。
【0053】
白色層用水系組成物の全固形分質量に対する架橋剤の含有量は、水系バインダー全質量に対し5質量%〜50質量%であることが好ましく、20質量%〜40質量%であることがより好ましい。架橋剤含有量が5質量%以上であることで、充分な架橋効果が得られ、反射層の強度低下や接着不良を抑制することができる。一方、50質量%以下であることで、白色層用水系組成物のポットライフ低下を防止することができる。
【0054】
−添加剤−
白色層用水系組成物は、前記無機酸化物フィラー以外の微粒子、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤等の種々の添加剤を含有することができ、特に、白色顔料の分散安定性のため、界面活性剤を用いて調製することが好ましい。
界面活性剤としては、例えば、アニオン系、カチオン系、ノニオン系等の公知の界面活性剤を利用することができ、具体的には、デモールEP〔花王(株)製〕、ナロアクティーCL95〔三洋化成工業(株)製〕等を挙げることができる。界面活性剤は、単独種を用いても複数種を用いてもよい。
前記無機酸化物フィラー以外の微粒子としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
【0055】
(下塗層の形成)
本発明の太陽電池バックシート用フィルムの製造方法は、基材フィルムに白色層用水系組成物を塗布して白色層を形成する前に、基材フィルムと白色層との間に下塗層用水系組成物を塗布して下塗層を形成する工程を有していてもよい。
基材フィルムと白色層との間に下塗層を有することで、基材フィルムと白色層との間の密着性をより高めることができる。
【0056】
下塗層用水系組成物は、少なくとも水系バインダーを含有することが好ましい。
水系バインダーとしては、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリオレフィン等を用いることができる。さらに、水系バインダー以外にエポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤、アニオン系やノニオン系等の界面活性剤、シリカ等のフィラーなどを含有していてもよい。
下塗層用水系組成物の全固形分質量に対する水系バインダーの含有量は、50質量%〜100質量%であることが好ましく、70質量%〜100質量%であることがより好ましい。
【0057】
下塗層用水系組成物を塗布するための方法は、特に制限はない。
塗布方法としては、たとえばグラビアコーターやバーコーターを利用することができる。
下塗層用水系組成物の塗布量は、接着性および面状の観点から、乾燥後の層厚が0.05μm〜2μm、より好ましくは0.1μm〜1.5μmとなるように、基材フィルムに塗布することが好ましい。
【0058】
下塗層用水系組成物の塗布溶媒としては水が用いられ、下塗層用水系組成物に含まれる溶媒中の60質量%以上が水であることが好ましい。水系組成物は、環境に負荷かけにくい点で好ましく、また水の割合が60質量%以上であることにより、防爆性、および安全性の点で有利である。
下塗層用水系組成物中の水の割合は、環境負荷の観点からは、さらに多い方が望ましく、水が全溶媒の70質量%以上含まれる場合がより好ましい。
【0059】
<接着保護層の形成>
接着保護層は、基材フィルムの少なくとも片面上に、水系バインダーを含有する接着保護層用水系組成物を塗布することにより形成する。
接着保護層は、白色層上に接着保護層用水系組成物を塗布して形成してもよいし、基材フィルムに白色層用水系組成物を塗布して白色層を形成する前に、基材フィルムと白色層との間に接着保護層用水系組成物を塗布して形成してもよい。
【0060】
接着保護層は、通常、バックシートと封止材を強固に接着するための層である。具体的にはEVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)の封止材との接着力が10N/cm以上、好ましくは20N/cm以上あることが好ましい。
さらに、太陽電池モジュールの使用中にバックシートの剥離が起こらないことが好ましく、そのために接着保護層には高い耐湿熱性があることが好ましい。
以上の観点から、接着保護層は、白色層よりも外部側に形成されていることが好ましく、従って、接着保護層は、基材フィルムの少なくとも片面に、白色顔料および水系バインダーを含有する白色層用水系組成物と、水系バインダーを含有する接着保護層用水系組成物と、を前記基材フィルム側から順次重なるように塗布して、白色層上に形成することが好ましい。一方、基材フィルムとの強固な接着性を付与する目的で、白色層を形成する前に基材フィルム上に接着保護層を形成しても良く、この場合白色層は基材フィルムと強固に接着することができる。
【0061】
〔接着保護層用水系組成物〕
接着保護層用水系組成物は、少なくとも水系バインダーを含有する。
接着保護層用水系組成物用の水系バインダーとしては、白色層用水系組成物に含有する水系バインダーと同じ樹脂を挙げることができ、耐久性の観点からポリビニルアルコール(PVA)、アクリル樹脂、ポリオレフィンが好ましい。また、アクリル樹脂として、アクリルとシリコーンの複合樹脂も好ましい。
好ましい水系バインダーの例としては、白色層用水系組成物に含有する水系バインダーの好ましい例として挙げた既述の製品を挙げることができる。
【0062】
接着保護層用水系組成物の全固形分質量に対する水系バインダーの含有量は、接着保護層と隣接する層との密着性の観点から、30質量%〜100質量%とすることが好ましく、40質量%〜80質量%とすることがより好ましい。
接着保護層用水系組成物は、接着保護層用水系組成物中の水系バインダー量が0.05g/m〜5g/mとなるように白色層(白色層と接着保護層との間に他の層を形成するときは、当該他の層)に塗布することが好ましく、さらには、0.08g/m〜3g/mとなるように塗布することがより好ましい。
水系バインダー量が0.05g/m以上であることで充分な接着力が得られ、5g/m以下であることで良好な面状が得られる。
【0063】
接着保護層用水系組成物は、前記水系バインダーを架橋するための架橋剤、接着保護層用水系組成物の構成成分の分散を安定化するための界面活性剤、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等の公知のマット剤、前記無機酸化物フィラー及び前記無機酸化物フィラーの微粒子、その他、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を含有していてもよい。
【0064】
接着保護層用水系組成物を、白色層(白色層と接着保護層との間に他の層を形成するときは、当該他の層)に塗布する方法としては、たとえばグラビアコーターやバーコーターなどの公知の方法を利用することができる。
接着保護層用水系組成物の塗布溶媒としては水が用いられ、接着保護層用水系組成物に含まれる溶媒中の60質量%以上が水であることが好ましい。水系組成物は、環境に負荷かけにくい点で好ましく、また水の割合が60質量%以上であることにより、防爆性、および安全性の点で有利である。
接着保護層用水系組成物の水の割合は、環境負荷の観点からは、さらに多い方が望ましく、水が全溶媒の70質量%以上含まれる場合がより好ましい。
【0065】
(耐候性層の形成)
本発明の太陽電池バックシート用フィルムの製造方法は、前記基材フィルムの、前記白色層および前記接着保護層が形成されている面とは反対側の面に、さらに、フッ素系樹脂及びシリコーン−アクリル複合樹脂の少なくとも一方を含有する耐候性層用水系組成物を塗布して、耐候性層を形成することが好ましい。
【0066】
耐候性層用水系組成物が含有するフッ素系樹脂としては、例えば、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体 が挙げられる。中でも、溶解性、および耐候性の観点から、ビニル系化合物と共重合させたクロロトリフルオロエチレン・ビニルエーテル共重合体 が好ましい。
耐候性層用水系組成物の全固形分質量に対するフッ素系樹脂の含有量は、耐候性と膜強度の観点から、40質量%〜90質量%であることが好ましく、50 質量%〜80質量%であることがより好ましい。
【0067】
耐候性層用水系組成物が含有するシリコーン−アクリル複合樹脂としては、白色層用水系組成物中に含有する水系バインダーの例として挙げたアクリルとシリコーンの複合樹脂と同じものを用いることができ、好ましい例も同様である。
耐候性層用水系組成物全固形分質量に対するシリコーン−アクリル複合樹脂の含有量は、耐候性と膜強度の観点から、40質量%〜90質量%であることが好ましく、50質量%〜80質量%であることがより好ましい。
【0068】
耐候性層用水系組成物の塗布量は、耐候性および基材フィルムとの密着性の観点から、0.05g/m〜30g/mとすることが好ましく、1g/m〜20g/mとすることがより好ましい。
【0069】
耐候性層用水系組成物を塗布するための方法は、特に制限はない。
塗布方法としては、たとえばグラビアコーターやバーコーターを利用することができる。
耐候性層用水系組成物の塗布溶媒としては水が用いられ、耐候性層用水系組成物に含まれる溶媒中の60質量%以上が水であることが好ましい。水系組成物は、環境に負荷かけにくい点で好ましく、また水の割合が60質量%以上であることにより、防爆性、および安全性の点で有利である。
耐候性層用水系組成物中の水の割合は、環境負荷の観点からは、さらに多い方が望ましく、水が全溶媒の70質量%以上含まれる場合がより好ましい。
【0070】
<太陽電池バックシート用フィルム>
本発明の太陽電池バックシート用フィルムは、基材フィルムの少なくとも片面に、基材フィルム側から順に、白色顔料、水系バインダー、及び無機酸化物フィラーを含有する白色層用水系組成物の塗布膜からなる白色層と、水系バインダーを含有する接着保護層用水系組成物の塗布膜からなる接着保護層と、を有する。
本発明の太陽電池バックシート用フィルムは、必要に応じて、さらにフッ素系樹脂及びシリコーン−アクリル複合樹脂の少なくとも一方を含有する耐候性層用水系組成物の塗布膜からなる耐候性層や、下塗層用水系組成物の塗布膜からなる下塗層を有していてもよい。
上記構成の太陽電池バックシート用フィルムの製造方法は、特に制限されないが、既述の本発明の太陽電池バックシート用フィルムの製造方法により製造することが好ましい。
【0071】
〔白色層〕
白色層に含まれる、白色顔料、水系バインダー、及び無機酸化物フィラーは、白色層用水系組成物に含有する既述の、白色顔料、水系バインダー、及び無機酸化物フィラーを用いることができる。
白色層中の白色顔料の含有量は、用いる白色顔料の種類や平均粒径により変化するが、2.5g/m〜8.5g/mであることが好ましく、4.5g/m〜7.5g/mであることがより好ましい。白色顔料が2.5g/m以上であることで、必要な着色が得られ、反射性や装飾性を発現し易い。また、白色顔料が8.5g/m以下であることで、白色層の面状が良好となる。
白色層中の水系バインダーの含有量は、白色層用水系組成物中の水系バインダーの含有量と同じであり、すなわち、白色層中の白色顔料の全質量に対して15質量%〜200質量%の範囲であることが好ましく、17質量%〜100質量%であることがより好ましい。
白色層中の無機酸化物フィラー以外の形状及び白色層中の含有量は、白色層用水系組成物中の無機酸化物フィラーの含有量と同様であり、白色層の水系バインダーの全質量に対して、5質量%〜400質量%であることが好ましく、50質量%〜300質量%であることがより好ましい。
【0072】
白色層は、前記無機酸化物フィラー以外の微粒子、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤等の種々の添加剤を含有していてもよい。また、本発明の効果(特に反射性)を損なわない限度において、白色顔料以外の着色剤(顔料または染料)を含んでいてもよい。
【0073】
白色層の層厚は、1μm〜20μmであることが好ましく、1.5μm〜10μmであることがより好ましい。膜厚を1μm以上とすることで、装飾性や反射率を十分に発現することができ、20μm以下とすることで面状悪化を抑制することができる。
【0074】
既述のように、白色層は、モジュールのオモテ面から入射した太陽光のうち、セルを素通りした光を乱反射して、セルに戻すことで発電効率を上げる機能を有している。かかる機能をより最大限に発現するために、基材フィルムの、白色層および接着保護層が形成されている面(最外表面)は、波長550nmにおける光反射率が70%以上であることが好ましい。光反射率が70%以上であることで、太陽電池のセルを素通りした光を充分にセルに戻すことができ、発電効率を上げる上で好ましい。
基材フィルムの、白色層および接着保護層が形成されている面(最外表面)の波長550nmにおける光反射率は、白色層中の白色顔料の含有量や層厚を前記数値範囲で制御することにより75%以上に調整することができる。
【0075】
〔接着保護層〕
接着保護層に含まれる水系バインダーは、接着保護層に含有する既述の水系バインダーを用いることができる。
接着保護層中の水系バインダー量は0.05g/m〜5g/mであることが好ましく、さらには、0.08g/m〜3g/mであることがより好ましい。
水系バインダー量が0.05g/m以上であることで充分な接着力が得られ、5g/m以下であることで良好な面状が得られる。
【0076】
接着保護層は、前記無機酸化物フィラー及び無機酸化物フィラー以外の微粒子、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤等の種々の添加剤を含有していてもよい。
【0077】
接着保護層の厚みには特に制限はないが、通常0.05μm〜8μmであることが好ましく、0.1μm〜5μmであることがより好ましい。膜厚が0.05μm以上であることで、必要な易接着性が得られ、8μm以下であることで、接着保護層の面状悪化を抑制することができる。
また、接着保護層は、白色層の効果を低減させないために透明であることが好ましい。
【0078】
(下塗層、耐候性層)
本発明の太陽電池バックシート用フィルムは、基材フィルムと白色層との間に下塗層を有していてもよい。また、基材フィルムの、白色層および接着保護層が形成されている面とは反対側の面に、さらに、フッ素系樹脂及びシリコーン−アクリル複合樹脂の少なくとも一方を含有する耐候性層を有していてもよい。耐候性層に含まれるフッ素系樹脂及びシリコーン−アクリル複合樹脂ならびに耐候性層中の含有量は既述のとおりである。
【0079】
下塗層および耐候性層は、各々独立に、前記無機酸化物フィラー及び無機酸化物フィラー以外の微粒子、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤等の種々の添加剤を含有していてもよい。
【0080】
<太陽電池モジュール>
本発明の太陽電池バックシート用フィルムの製造方法で製造された太陽電池バックシート用フィルムおよび本発明の太陽電池バックシート用フィルムは、太陽電池モジュールの製造に好適である。
太陽電池モジュールは、例えば、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池素子を、太陽光が入射する透明性の基板と既述の本発明の太陽電池バックシート用フィルムとの間に配置し、該基板とバックシートとの間をエチレン−ビニルアセテート系封止材で封止して構成されている。
【0081】
太陽電池モジュール、太陽電池セル、バックシート以外の部材については、例えば、「太陽光発電システム構成材料」(杉本栄一監修、(株)工業調査会、2008年発行)に詳細に記載されている。
【0082】
透明性の基板は、太陽光が透過し得る光透過性を有していればよく、光を透過する基材から適宜選択することができる。発電効率の観点からは、光の透過率が高いものほど好ましく、このような基板として、例えば、ガラス基板、アクリル樹脂などの透明樹脂などを好適に用いることができる。
【0083】
太陽電池素子としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン系、銅−インジウム−ガリウム−セレン、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルル、ガリウム−砒素などのIII−V族やII−VI族化合物半導体系など、各種公知の太陽電池素子を適用することができる。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」及び「部」は質量基準である。
【0085】
<基材フィルム>
−ポリエステルの合成−
高純度テレフタル酸(三井化学(株)製)100kgとエチレングリコール(日本触媒(株)製)45kgのスラリーを、予めビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート約123kgが仕込まれ、温度250℃、圧力1.2×10Paに保持されたエステル化反応槽に、4時間かけて順次供給し、供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応を行なった。その後、得られたエステル化反応生成物123kgを重縮合反応槽に移送した。
【0086】
引き続いて、エステル化反応生成物が移送された重縮合反応槽に、エチレングリコールを、得られるポリマーに対して0.3質量%添加した。5分間撹拌した後、酢酸コバルト及び酢酸マンガンのエチレングリコール溶液を、得られるポリマーに対してそれぞれ30ppm、15ppmとなるように加えた。更に5分間撹拌した後、チタンアルコキシド化合物の2質量%エチレングリコール溶液を、得られるポリマーに対して5ppmとなるように添加した。その5分後、ジエチルホスホノ酢酸エチルの10質量%エチレングリコール溶液を、得られるポリマーに対して5ppmとなるように添加した。その後、低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応系を250℃から285℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージし、常圧に戻し、重縮合反応を停止した。そして、冷水にストランド状に吐出し、直ちにカッティングしてポリマーのペレット(直径約3mm、長さ約7mm)を作製した。なお、減圧開始から所定の撹拌トルク到達までの時間は3時間であった。
【0087】
但し、前記チタンアルコキシド化合物には、特開2005−340616号公報の段落番号[0083]の実施例1で合成しているチタンアルコキシド化合物(Ti含有量=4.44質量%)を用いた。
【0088】
−固相重合−
上記で得られたペレットを、40Paに保たれた真空容器中、220℃の温度で30時間保持して、固相重合を行なった。
【0089】
−ベース形成−
以上のように固相重合を経た後のペレットを、280℃で溶融して金属ドラムの上にキャストし、厚さ約3mmの未延伸ベースを作成した。その後、90℃で縦方向に3倍に延伸し、更に120℃で横方向に3.3倍に二軸延伸し、240℃で10分熱固定した後、両面ともコロナ放電処理を施した厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を用意した。
【0090】
<白色層用水系組成物>
−白色顔料分散液1の調製−
・二酸化チタン(白色顔料、体積平均粒径0.3μm)
〔タイペークR−780−2、石原産業(株)製、固形分100%〕 39.7%
・ポリビニルアルコール(水系バインダーB)
〔PVA−105、(株)クラレ製、固形分10%〕 49.7%
・界面活性剤
〔デモールEP、花王(株)製、固形分25%〕 0.5%
・蒸留水 10.1%
【0091】
上記組成の二酸化チタン、水系バインダーB、及び界面活性剤に、蒸留水を加えて、合計が100%となるように調整した後、ダイノミル型分散器により分散処理を施し、白色顔料分散液1を調製した。
【0092】
−白色層用水系組成物1の調製−
・白色顔料分散液1 71.0%
・ポリアクリル樹脂水分散液(水系バインダーA1)
〔ジュリマーET410、日本純薬(株)製、固形分30%〕 7.2%
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(界面活性剤)
〔ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分1%〕 3.0%
・オキサゾリン化合物(架橋剤)
〔エポクロスWS−700、日本触媒(株)製、固形分25%〕 2.0%
・シリカフィラー(無機酸化物フィラー、体積平均粒径40nm)
〔アエロジルOX−50、日本アエロジル(株)製、固形分10%〕 1.8%
・蒸留水 15.0%
【0093】
上記組成の白色顔料分散液1、水系バインダーA1、界面活性剤、架橋剤、及びシリカフィラーを用いて、合計が100%となるように蒸留水で調整して白色層用の塗布液(白色層用水系組成物1)を調製した。
【0094】
−白色層用水系組成物2の調製−
・白色顔料分散液1 71.0%
・ポリオレフィン樹脂水分散液(水系バインダーA2)
〔ケミパールS75N、三井化学(株)製、固形分24%〕 9.0%
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(界面活性剤)
〔ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分1%〕 3.0%
・オキサゾリン化合物(架橋剤)
〔エポクロスWS−700、日本触媒(株)製、固形分25%〕 2.0%
・シリカフィラー(無機酸化物フィラー、体積平均粒径40nm)
〔アエロジルOX−50、日本アエロジル(株)製、固形分10%〕 1.8%
・蒸留水 13.2%
【0095】
上記組成の白色顔料分散液1、水系バインダーA2、界面活性剤、架橋剤、及びシリカフィラーを用いて、合計が100%となるように蒸留水で調整して白色層用の塗布液(白色層用水系組成物2)を調製した。
【0096】
−白色層用水系組成物3の調製−
・白色顔料分散液1 80.0%
・ポリオレフィン樹脂水分散液(水系バインダーA2)
〔ケミパールS75N、三井化学(株)製、固形分24%〕 9.0%
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(界面活性剤)
〔ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分1%〕 3.0%
・オキサゾリン化合物(架橋剤)
〔エポクロスWS−700、日本触媒(株)製、固形分25%〕 2.0%
・シリカフィラー(無機酸化物フィラー、体積平均粒径40nm)
〔アエロジルOX−50、日本アエロジル(株)製、固形分10%〕 1.8%
・蒸留水 4.2%
【0097】
上記組成の白色顔料分散液1、水系バインダーA2、界面活性剤、及び架橋剤を用いて、合計が100%となるように蒸留水で調整して白色層用の塗布液(白色層用水系組成物3)を調製した。
【0098】
−白色層用水系組成物4の調製−
・白色顔料分散液1 73.8%
・ポリアクリル樹脂水分散液(水系バインダーA1)
〔ジュリマーET410、日本純薬(株)製、固形分30%〕 7.2%
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(界面活性剤)
〔ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分1%〕 3.0%
・オキサゾリン化合物(架橋剤)
〔エポクロスWS−700、日本触媒(株)製、固形分25%〕 2.8%
・蒸留水 13.2%
【0099】
上記組成の白色顔料分散液1、水系バインダーA1、界面活性剤、及び架橋剤を用いて、合計が100%となるように蒸留水で調整して白色層用の塗布液(白色層用水系組成物4)を調製した。
【0100】
−白色層用水系組成物5の調製−
・白色顔料分散液1 73.8%
・ポリオレフィン樹脂水分散液(水系バインダーA2)
〔ケミパールS75N、三井化学(株)製、固形分24%〕 9.0%
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(界面活性剤)
〔ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分1%〕 3.0%
・オキサゾリン化合物(架橋剤)
〔エポクロスWS−700、日本触媒(株)製、固形分25%〕 2.8%
・蒸留水 11.4%
【0101】
上記組成の白色顔料分散液1、水系バインダーA2、界面活性剤、及び架橋剤を用いて、合計が100%となるように蒸留水で調整して白色層用の塗布液(白色層用水系組成物5)を調製した。
【0102】
−白色層用水系組成物6の調製−
・白色顔料分散液1 34.8%
・ポリオレフィン樹脂水分散液(水系バインダーA2)
〔ケミパールS75N、三井化学(株)製、固形分24%〕 12.0%
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(界面活性剤)
〔ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分1%〕 3.0%
・蒸留水 50.2%
【0103】
上記組成の白色顔料分散液1、水系バインダーA2、界面活性剤を用いて、合計が100%となるように蒸留水で調整して白色層用の塗布液(白色層用水系組成物6)を調製した。
【0104】
<接着保護層用水系組成物>
−接着保護層用水系組成物1−
・ポリオレフィン樹脂水分散液(水系バインダー分散液)
〔ケミパールS75N、三井化学(株)製、固形分24%〕 5.2%
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(界面活性剤)
〔ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分1%〕 7.8%
・オキサゾリン化合物(架橋剤)
〔エポクロスWS−700、日本触媒(株)製、固形分25%〕 0.8%
・蒸留水 86.2%
【0105】
上記組成の水系バインダー分散液、界面活性剤、及び架橋剤に、蒸留水を加えて、合計が100%となるように調整して接着保護層用の塗布液(接着保護層用水系組成物1)を調製した。
【0106】
−接着保護層用水系組成物2−
・ポリエステル樹脂(水系バインダー)
〔バイロナールMD−1200、東洋紡(株)製、固形分17%〕 1.7%
・ポリエステル樹脂(水系バインダー)
〔ペスレジンA−520、高松油脂(株)製、固形分30%〕 3.8%
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(界面活性剤)
〔ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分1%〕 1.5%
・カルボジイミド化合物(架橋剤)
〔カルボジライトV−02−L2、日清紡(株)製、固形分10%〕 1.3%
・蒸留水 91.7%
【0107】
上記組成の水系バインダー、界面活性剤、及び架橋剤に、蒸留水を加えて、合計が100%となるように調整して接着保護層用の塗布液(接着保護層用水系組成物2)を調製した。
【0108】
〔実施例1〕
上記の基材フィルムに白色層用水系組成物1を塗布し、180℃で1分間乾燥して塗工量7g/mの白色層を形成した。得られた白色層に、さらに、接着保護層用水系組成物1を塗布し、180℃で1分間乾燥して塗工量0.1g/mの接着保護層1を形成し、実施例1の太陽電池バックシート用フィルムシート1を製造した。
【0109】
〔実施例2〜実施例4、及び、比較例1〜比較例5〕
下記表1に記載の各成分が、下記表1の量となるように、接着保護層用水系組成物2、白色層水系組成物2〜6、及び、接着保護層用水系組成物1を塗布した。接着保護層用水系組成物2、白色層水系組成物2〜6、及び、接着保護層用水系組成物1は、いずれも、塗布後、180℃で1分間乾燥した。このようにして実施例2〜4の太陽電池バックシート用フィルムシート2〜4及び比較例1〜5の太陽電池バックシート用フィルムシート7〜11を製造した。
各太陽電池バックシート用フィルムシートの各層の成分および塗工量の詳細を表1に示した。
【0110】
【表1】

【0111】
表1中、「接着保護層1」は、接着保護層用水系組成物1を塗布して形成した層であり、「接着保護層2」は、接着保護層用水系組成物2を塗布して形成した層である。また、「量」、「総量」は、いずれも塗工量〔g/m〕を表し、塗布厚の単位は〔μm〕である。また、「体積分率(対バインダー)」は、白色層中の水系バインダーに対する白色顔料の体積分率を表す。
【0112】
〔実施例5〕
実施例1の太陽電池バックシート用フィルム1の、白色層が形成されている面とは反対側の面に、下記組成の第一耐候性層用水系組成物1、および第二耐候性層用水系組成物を、この順に、それぞれ3.0g/m、および2.0g/m塗布(乾燥後)した。このようにして、第一耐候性層1および第二耐候性層が積層された実施例5の太陽電池バックシート用フィルムシート5を製造した。
【0113】
−第一耐候性層用水系組成物1−
・シリコーン−アクリル複合樹脂
〔セラネートWSA−1070、DIC(株)製、固形分40%〕 35.7%
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(界面活性剤)
〔ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分1%〕 2.0%
・オキサゾリン化合物(架橋剤)
〔エポクロスWS−700、日本触媒(株)製、固形分25%〕 5.7%
・蒸留水 56.6%
【0114】
−第二耐候性層用水系組成物−
・フッ素樹脂
〔オブリガートSW0011F、AGCコーテック(株)製、固形分39%〕
26.1%
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(界面活性剤)
〔ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分1%〕 2.0%
・カルボジイミド化合物(架橋剤)
〔カルボジライトV−02−L2、日清紡(株)製、固形分10%〕 10.2%
・蒸留水 61.7%
【0115】
〔実施例6〕
実施例1の太陽電池バックシート用フィルム1の、白色層が形成されている面とは反対側の面に、下記組成の第一耐候性層用水系組成物2、および上記組成の第二耐候性層用水系組成物を、この順に、それぞれ3.0g/m、および2.0g/m塗布(乾燥後)した。このようにして、第一耐候性層2および第二耐候性層が積層された実施例6の太陽電池バックシート用フィルムシート6を製造した。
【0116】
−第一耐候性層用水系組成物2−
・シリコーン−アクリル複合樹脂
〔セラネートWSA−1070、DIC(株)製、固形分40%〕 35.8%
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(界面活性剤)
〔ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分1%〕 2.0%
・オキサゾリン化合物(架橋剤)
〔エポクロスWS−700、日本触媒(株)製、固形分25%〕 5.7%
・蒸留水 56.5%
【0117】
〔比較例6〕
上記の基材フィルム上に、市販の白色PETフィルム〔E20−50μm、東レ(株)製〕(フィルム厚50μm)を、ドライラミネート用接着剤1を用いてドライラミネート法で接着し、比較例6の太陽電池バックシート用フィルムシート12を作成した。
ドライラミネート用接着剤1は、特開2008−211034号公報の実施例1に記載の接着剤〔三井化学ポリウレタン株式会社製の製品名タケラックA315(100部)と製品名タケネートA50(10部)とを混合したウレタン系接着剤〕を用い、固形分の塗工量が3g/m2となるように基材フィルム上に塗布した。
【0118】
〔比較例7〕
上記太陽電池バックシート用フィルムシート6の白色フィルムとは反対面に、前記ドライラミネート用接着剤1を塗布し、耐候性を示すPETフィルム〔東レ(株)社製、X10S〕(フィルム厚125μm)をドライラミネート法で接着し、比較例7の太陽電池バックシート用フィルムシート13を作成した。
【0119】
〔比較例8〕
市販の白色フィルム〔E20−50μm、東レ(株)製〕(フィルム厚50μm)に、下記組成の第一接着層用水系組成物、および第二接着層用水系組成物を、この順で、それぞれ0.5g/m、0.2g/m塗布(乾燥後)した。具体的には下記のとおりである。
【0120】
−第一接着層用水系組成物−
・ポリオレフィン樹脂水分散液(水系バインダー)
〔ケミパールS75N、三井化学(株)製、固形分24%〕 2.4%
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(界面活性剤)
〔ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分1%〕 6.3%
・オキサゾリン化合物(架橋剤)
〔エポクロスWS−700、日本触媒(株)製、固形分25%〕 0.7%
・コロイダルシリカ
〔スノーテックスCM、日産化学工業(株)製、固形分30%〕 3.1%
・シリカフィラー(無機酸化物フィラー、体積平均粒径40nm)
〔アエロジルOX−50、日本アエロジル(株)製、固形分10%〕 9.2%
・蒸留水 78.3%
【0121】
上記組成の第一接着層用水系組成物を、白色フィルム(E20−50μm、東レ(株)製)に塗布し、180℃で1分間乾燥して、塗工量0.5g/mの第一接着層を形成した。
【0122】
−第二接着層用水系組成物−
・ポリオレフィン樹脂水分散液(水系バインダー)
〔ケミパールS120、三井化学(株)製、固形分27%〕 2.3%
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(界面活性剤)
〔ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分1%〕 7.7%
・エポキシ化合物(架橋剤)
〔デナコールEX−614B、ナガセケムテックス製、固形分1%〕 22.2%
・コロイダルシリカ
〔スノーテックスC、日産化学工業(株)製、固形分20%〕 1.5%
・蒸留水 66.3%
【0123】
上記組成の第二接着層用水系組成物を、上記の第一接着層上に塗布し、180℃で1分間乾燥して、塗工量0.2g/mの第二接着層を形成した。
その後、接着層塗布面とは反対面に、前記ドライラミネート用接着剤1を塗布して、耐候性を示すPETフィルム〔東レ(株)社製、X10S〕(フィルム厚125μm)をドライラミネート法で接着し、比較例8の太陽電池バックシート用フィルムシート14を製造した。
【0124】
<評価>
得られた太陽電池バックシート用フィルム1〜14のフィルムシート層構成、用いたフィルム数、生産方法、及び生産工数を表2に示した。また、太陽電池バックシート用フィルム1〜14について、生産効率、光線反射率、密着評価、及び耐摩耗性の各評価を行い、評価結果を表3に示した。
【0125】
1.生産効率
生産効率については、本発明のフィルムシートを生産するのに必要なフィルムの枚数と、生産工数を加算した数値で評価した。生産工数については、塗布方式のみで生産した場合を1回、フィルム同士の積層であるラミネート方式も要する場合を2回とした。生産工数が少ない方が、生産効率が良いことは言うまでもない。
【0126】
2.光線反射率
分光光度計UV−2450〔(株)島津製作所製)に積分球付属装置ISR−2200を取り付けた装置〕を用い、太陽電池バックシート用フィルム1〜14に、波長550nmの光線を照射し、波長550nmにおける反射率を測定した。但し、リファレンスとして硫酸バリウム標準板の反射率を測定し、これを100%としてサンプルシートの反射率を算出した。
反射率は、70%以上が許容範囲であり、75%以上であることが好ましい。
【0127】
3.密着評価
−試料作成−
太陽電池バックシート用フィルム1〜14を、20mm幅×150mm長にカットしてサンプル片を2枚準備し、このサンプル片を互いに接着保護層1(接着保護層1を有しない場合は白色層)側を内側にして配置し、その間に、20mm幅×100mm長にカットしたEVAシート(三井化学ファブロ社製EVAシート:SC50B)をはさみ、真空ラミネータ(日清紡社製、真空ラミネート機)にて、ホットプレス接着させ、接着保護層1(接着保護層1を有しない場合は白色層)にEVAを接着させた。このときの接着条件は、以下の通りとした。
【0128】
真空ラミネータを用いて、128℃で3分間の真空引き後、2分間加圧して仮接着した。その後、ドライオーブンで、150℃で30分間、本接着処理を施した。このようにして、互いに接着した2枚のサンプル片の一端から20mmの部分はEVAと未接着で、残りの100mmの部分にEVAシートが接着された接着評価用試料を得た。
【0129】
−湿熱処理−
得られた密着評価用試料を85℃、85%RH環境下で1000時間放置した。なお、この湿熱条件は、通常の太陽電池バックシートの使用環境からすると、相当過酷な条件であり、バックシートとしての長期信頼性を評価するための加速条件である。
【0130】
−密着力評価−
密着力の評価は、テンシロン(ORIENTEC製、RTC−1210A)にて上下クリップにEVA未接着部分を挟み、剥離角度180°、引っ張り速度300mm/分で引っ張ることにより行った。なお、評価は、湿熱処理前(Fresh)と湿熱処理後の両サンプルで実施した。
◎:密着非常に良好 (60N以上/20mm)
○:密着良好 (20N以上60N未満/20mm)
△:密着やや不良 (10N以上20N未満/20mm)
×:密着不良 (10N未満/20mm)
【0131】
4.耐摩耗性
太陽電池バックシート用フィルム1〜14を、25℃65%RHの雰囲気で2時間保存した後、黒紙をフィルムの接着保護層(または白色層)上に設置し、その黒紙上に1kg/cm幅の荷重をかけて、速度25cm/分で擦り試験を実施し、擦り試験後のフィルムの傷と、各塗布層(白色層、接および着保護層)の粉落ちを評価した。
5:傷、粉落ち無し
4:傷、粉落ちが僅かに見られる
3:傷、粉落ちが少し見られる
2:傷、粉落ちが見られる
1:傷、粉落ちがかなり見られる
【0132】
【表2】

【0133】
【表3】

【0134】
表3からわかるように、比較例14の太陽電池バックシート用フィルムシート14は、市販品の機能性フィルムを用いることで、光線反射率、EVA密着性、及び耐摩耗性については、実施例の太陽電池バックシート用フィルムシートと同等の評価が得られたが、フィルム貼り合せにより製造されているため、実施例の太陽電池バックシート用フィルムシートの方が生産効率に優れている。また、白色層に無機酸化物フィラーを含む実施例の太陽電池バックシート用フィルムシートは、白色層に無機酸化物フィラーを含まない比較例の太陽電池バックシート用フィルムシート8〜13に比べ、EVA密着性に優れている。
【0135】
<耐候性評価>
太陽電池バックシート用フィルム5および太陽電池バックシート用フィルム6について、サンシャインウェザオメーター〔スガ試験機社製〕1000時間による色味変化試験をしてフィルムの耐候性を評価したところ、いずれも耐候性に優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも片面に、白色顔料、水系バインダー、及び無機酸化物フィラーを含有する白色層用水系組成物と、水系バインダーを含有する接着保護層用水系組成物と、を塗布して、白色層及び接着保護層を形成する太陽電池バックシート用フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記白色層用水系組成物は、前記水系バインダーに対する白色顔料の体積分率が50%〜200%である白色層用水系組成物であり、該白色層用水系組成物を、前記基材フィルム上に、塗布厚が4μm以上20μm以下、かつ、白色顔料の塗工量が3g/m以上10 g/m以下となるように塗布する請求項1に記載の太陽電池バックシート用フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記白色層用水系組成物は、無機酸化物フィラーの含有量が、前記白色層用水系組成物中の水系バインダーの全質量に対して、5質量%〜400質量%である請求項1または請求項2に記載の太陽電池バックシート用フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記基材フィルムの、前記白色層および前記接着保護層が形成されている面とは反対側の面に、さらに、フッ素系樹脂及びシリコーン−アクリル複合樹脂の少なくとも一方を含有する耐候性層用水系組成物を塗布する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の太陽電池バックシート用フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記基材フィルムの、前記白色層および前記接着保護層が形成されている面は、波長550nmにおける光線反射率が70%以上ある請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の太陽電池バックシート用フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記白色層用水系組成物は、さらに界面活性剤の少なくとも一方を含有する請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の太陽電池バックシート用フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記水系バインダーが、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル、及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の太陽電池バックシート用フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記接着保護層用水系組成物は、さらに無機酸化物フィラーを含有する請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の太陽電池バックシート用フィルムの製造方法。
【請求項9】
基材フィルムの少なくとも片面に、白色顔料、水系バインダー、及び無機酸化物フィラーを含有する白色層用水系組成物の塗布膜からなる白色層と、水系バインダーを含有する接着保護層用水系組成物の塗布膜からなる接着保護層と、を有する太陽電池バックシート用フィルム。
【請求項10】
前記白色層は、前記水系バインダーに対する白色顔料の体積分率が50%〜200%であり、該白色層の層厚が4μm以上20μm以下、かつ、白色顔料の含有量が3g/m以上10g/m以下である請求項9に記載の太陽電池バックシート用フィルム。
【請求項11】
前記白色層は、無機酸化物フィラーの含有量が、前記白色層中の水系バインダーの全質量に対して、5質量%〜400質量%である請求項9または請求項10に記載の太陽電池バックシート用フィルム。
【請求項12】
前記基材フィルムの、前記白色層および前記接着保護層が形成されている面とは反対側の面に、さらに、フッ素系樹脂及びシリコーン−アクリル複合樹脂の少なくとも一方を含有する耐候性層用水系組成物の塗布膜からなる耐候性層を有する請求項9〜請求項11のいずれか1項に記載の太陽電池バックシート用フィルム。
【請求項13】
前記基材フィルムの、前記白色層および前記接着保護層が形成されている面は、波長550nmにおける光線反射率が70%以上ある請求項9〜請求項12のいずれか1項に記載の太陽電池バックシート用フィルム。
【請求項14】
前記水系バインダーが、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル、及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である請求項9〜請求項13のいずれか1項に記載の太陽電池バックシート用フィルム。
【請求項15】
前記接着保護層は、さらに、無機酸化物フィラーを含有する請求項9〜請求項14のいずれか1項に記載の太陽電池バックシート用フィルム。

【公開番号】特開2011−146659(P2011−146659A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8597(P2010−8597)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】