説明

太陽電池モジュール、太陽電池モジュールの製造方法、及び薄膜太陽電池用タブ線

【課題】集電用タブ線と、端子ボックス用タブ線との長期に亘る接続信頼性を確保する。
【解決手段】一面に電極9が配置されている太陽電池1と、接続層20を介して太陽電池1の電極9上に接続される集電タブ部12と、絶縁層21を介して太陽電池1の一面上に設けられる端子ボックス用タブ部13とを有し、集電タブ部12と端子ボックス用タブ部13とは、折り返し部14を介して連続しているタブ線11とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の面に正極及び負極電極を有し、端子ボックス用タブ線が備えられている太陽電池モジュールに関し、特に正極及び負極電極と端子ボックスとを効率的に接続できる太陽電池モジュール、太陽電池モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷の低減が地球的な課題となる中、クリーンでかつ再生可能なエネルギーとして、太陽光発電に大きな期待が寄せられている。太陽電池の主流は、現在までのところ、単結晶シリコンや多結晶シリコンの結晶を製造し、これをスライス加工して板状の半導体として使用するバルクシリコン太陽電池である。しかし、バルクシリコン太陽電池は、シリコン結晶の成長に多くのエネルギーと時間を要し、また製造工程においても複雑な工程が必要となる。
【0003】
一方で、ガラスやステンレススチールなどの基板上に、光電変換層である半導体層を形成したいわゆる薄膜太陽電池は、薄型で軽量、製造コストの安さ、大面積化が容易であることなどから、今後の太陽電池の主流になると考えられている。薄膜太陽電池としては、アモルファスシリコンや微結晶シリコン膜、あるいはこれらのタンデム型等の薄膜シリコン太陽電池、Cu(銅)、In(インジウム)、Ga(ガリウム)、Se(セレン)に代表される元素を混ぜ合わせた化合物半導体を用いたCIGS系太陽電池等がある。
【0004】
これらの薄膜太陽電池は、大面積の安価な基板上に、プラズマCVD装置又はスパッタ装置のような形成装置を用いて半導体層又は金属電極膜を積層させ、その後、同一基板上に作製した光電変換層をレーザパターニング等により分離接続させることにより、太陽電池ストリングを形成する。
【0005】
図9に、従来の太陽電池ストリングを構成する薄膜太陽電池の一構成例を示す。この薄膜太陽電池100は、透光性絶縁基板101上に図示しない透明導電膜からなる透明電極膜、光電変換層、裏面電極膜が積層されてなる複数の太陽電池セル102からなる。各太陽電池セル102は、細長い短冊状で、透光性絶縁基板101のほぼ全幅にわたる長さを有している。また、薄膜太陽電池100は、隣接する太陽電池セル102,102同士において一方の透明電極膜と他方の裏面電極膜とが互いに接続されることで複数の太陽電池セル102が直列に接続されて構成されている。
【0006】
この薄膜太陽電池100における一端部の太陽電池セル102の透明電極膜の端部上に、太陽電池セル102とほぼ同一長さの線状のP型電極端子部103が形成され、他端部の太陽電池セル102の裏面電極膜の端部上に、太陽電池セル102とほぼ同一長さの線状のN型電極端子部104が形成されている。これらP型電極端子部103及びN型電極端子部104が電極取り出し部になる。
【0007】
P型電極端子部103には、銅箔からなるバスバーと呼ばれる正極集電用タブ線105が、P型電極端子部103の全面に対して電気的かつ機械的に接合されている。同様に、N型電極端子部104には、銅箔からなる負極集電用タブ線106が、N型電極端子部104の全面に対して電気的かつ機械的に接合されている。これらの接合手段としては、半田付けまたは導電性ペーストなどを用いることができる。
【0008】
また、図10(A)に示すように、薄膜太陽電池100の裏面には、P型電極端子部103及びN型電極端子部104と接続され外部に電気を出力する端子ボックス110と、この端子ボックス110とP型電極端子部103及びN型電極端子部104とを接続する端子ボックス用タブ線111とが接続されている。
【0009】
端子ボックス110は、例えば絶縁性接着剤を介して薄膜太陽電池100の裏面中央に固定されている。端子ボックス用タブ線111は、上記正極集電用タブ線105や負極集電用タブ線106と同様に長尺状の銅箔やAl箔からなり、薄膜太陽電池100の裏面と絶縁テープ112を介して配設されている。
【0010】
この端子ボックス用タブ線111は、一端が端子ボックス110とハンダ接続され、他端が絶縁テープ112を介してP型電極端子部103又はN型電極端子部104上に配設される。
【0011】
端子ボックス用タブ線111と正極集電用タブ線105との接続部は、図10(B)に示すように、絶縁テープ112及び端子ボックス用タブ線111を挟んだ両側に接続された第1、第2の正極集電用タブ線105a、105b間に亘って第3の正極集電用タブ線105cが、絶縁テープ112及び端子ボックス用タブ線111を跨いで接続されている。また、第3の正極集電用タブ線105cは端子ボックス用タブ線111と接続されている。これら、第1、第2の正極集電用タブ線105a、105bと第3の正極集電用タブ線105cとの接続(2箇所)、及び第3の正極集電用タブ線105cと端子ボックス用タブ線111との接続(1箇所)は、超音波ハンダ接合によって行われている。負極集電用タブ線106と端子ボックス用タブ線111との接続も同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−295744号公報
【特許文献2】特開2009−182066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、超音波ハンダ接続を用いた場合、薄膜太陽電池100は、P型電極端子部103やN型電極端子部104を製造手法や構成等に応じて、Al、Ag、ZnO等様々材料で形成するため、材料によってはハンダによって正極集電用タブ線105や負極集電用タブ線106との接続強度が保てないものもある。このため、レーザスクライブやAgペースト等の接合媒体が必要となる。レーザスクライブ処理を施した部分は発電に寄与できないため、発電効率を低下させてしまう。
【0014】
また、第1、第2の正極集電用タブ線105a、105bと第3の正極集電用タブ線105cとの接続や、第3の正極集電用タブ線105cと端子ボックス用タブ線111との接続時に、ハンダ接続に伴う高温域の熱履歴が局部的に加わることにより、ガラス等からなる透光性絶縁基板101に反りが生じたり、破損する場合もあった。
【0015】
さらに、図10に記載の薄膜太陽電池100においては、正極集電用タブ線105及び負極集電用タブ線106と、端子ボックス用タブ線111との接続部に電荷が集中し、抵抗値の増大による発電効率の低下が課題となる。
【0016】
そこで、本発明は、正極集電用タブ線及び負極集電用タブ線と、端子ボックス用タブ線との長期に亘る接続信頼性が確保された太陽電池、太陽電池の製造方法及び薄膜太陽電池用タブ線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した課題を解決するために、本発明に係る太陽電池は、一面に電極が配置される太陽電池と、接続層を介して上記太陽電池の電極上に接続される集電タブ部と、絶縁層を介して上記太陽電池の一面上に設けられる端子ボックス用タブ部とを有し、上記集電タブ部と上記端子ボックス用タブ部とが、折り返し部を介して連続しているタブ線とを備えるものである。
【0018】
また、本発明に係る太陽電池の製造方法は、太陽電池の電極上に接続される集電タブ部と、上記太陽電池の一面上に設けられる端子ボックス用タブ部とを有するタブ線を用い、上記集電タブ部を、上記太陽電池の一面に配置されている上記電極上に接続層を介して接続し、上記端子ボックス用タブ部を、上記集電タブ部より折り返し、絶縁層を介して上記太陽電池の一面上に設け、上記端子ボックス用タブ部の一端を端子ボックスに接続する。
【0019】
また、本発明に係る薄膜太陽電池用タブ線は、一面に電極が配置されている太陽電池の上記電極上に接続層を介して接続される集電タブ部と、絶縁層を介して上記太陽電池の一面上に設けられる端子ボックス用タブ部とを有し、上記集電タブ部と上記端子ボックス用タブ部とが、折り返し部を介して連続しているものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、タブ線は、集電タブ部と端子ボックス用タブ部とが折り返し部を介して連続され、接合部分を有しないため、接合箇所に電荷が集中することによる抵抗値の増大や、接合部分の接続信頼性の低下、接合部分に熱や応力が集中することによる基板の損傷等を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明が適用された太陽電池を示す平面図であり、(A)はタブ線の接続前、(B)はタブ線を接続し折り曲げる前の状態を示す。
【図2】太陽電池モジュールの分解斜視図である。
【図3】本発明が適用された太陽電池を示す平面図である。
【図4】本発明が適用されたタブ線を示す断面図である。
【図5】導電性接着フィルムの構成を示す断面図である。
【図6】導電性接着フィルムを示す図である。
【図7】表面に長手方向に亘って連続する山部及び谷部が幅方向に交互に形成された凹凸部を有するタブ線を電極に接続した状態を示す断面図である。
【図8】本発明の変形例を示す図であり、(A)はタブ線の折り曲げ前の状態を示し、(B)はタブ線を折り曲げた状態を示す。
【図9】従来の薄膜太陽電池の一例を示す分解斜視図である。
【図10】従来の薄膜太陽電池の一例を示す図であり(A)は平面図、(B)は電極端子部における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明が適用された太陽電池及び、太陽電池の製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。
【0023】
[太陽電池モジュール]
本発明が適用された薄膜太陽電池1は、図1(A)(B)に示すように、複数の太陽電池セル2がコンタクトラインによって接続された太陽電池ストリングを構成する。図2に示すように、このストリング構造を有する薄膜太陽電池1は、単体で、又は複数枚連結されたマトリクスを構成して、封止接着剤のシート3で挟まれ、受光面側に設けられた表面カバー5及び裏面側に設けられたバックシート4とともに一括してラミネートされることにより太陽電池モジュール6が形成される。なお、太陽電池モジュール6は、適宜、周囲にアルミニウムなどの金属フレーム7が取り付けられる。
【0024】
封止接着剤としては、例えばエチレンビニルアセテート樹脂(EVA)等の透光性封止材が用いられる。また、表面カバー5としては、例えば、ガラスや透光性プラスチック等の透光性の材料が用いられる。また、バックシート4としては、ガラスや、アルミニウム箔を樹脂フィルムで挟持した積層体等が用いられる。
【0025】
[太陽電池セル]
本発明が適用された薄膜太陽電池1は、透光性絶縁基板8上に、図示は省略しているが、透明導電膜からなる透明電極膜、光電変換層、裏面電極膜がこの順に積層されて形成され、透光性絶縁基板8側から光を入射させるスーパーストレート型の太陽電池である。なお、薄膜太陽電池には、基材、裏面電極、光電変換層、透明電極の順で形成されたサブストレート型太陽電池もある。以下では、スーパーストレート型の薄膜太陽電池1を例に説明するが、本技術は、サブストレート型の薄膜太陽電池に用いることもできる。
【0026】
透光性絶縁基板8としては、ガラスやポリイミドなどの耐熱性樹脂を用いることができる。
【0027】
透明電極膜としては、例えばSnO、ZnO、ITOなどを用いることができる。光電変換層としては、アモルファスシリコン、微結晶シリコンあるいは多結晶シリコンなどのシリコン系光電変換膜や、CdTe,CuInSe、Cu(In,Ga)Seなどの化合物系光電変換膜を用いることができる。
【0028】
裏面電極膜としては、例えば透明導電膜と金属膜の積層構造を有する。透明電極膜は、SnO、ZnO、ITOなどを用いることができる。金属膜は、銀、アルミニウム等を用いることができる。
【0029】
このように構成された薄膜太陽電池1は、図1(A)に示すように、透光性絶縁基板8のほぼ全幅にわたる長さを有する矩形状の太陽電池セル2が複数形成されている。各太陽電池セル2は、電極分割ラインによって分離されるとともに、コンタクトラインによって隣接する太陽電池セル2,2同士において一方の透明電極膜と他方の裏面電極膜とが互いに接続されることで、複数の太陽電池セル2が直列に接続された太陽電池ストリングが構成されている。
【0030】
そして、薄膜太陽電池1は、太陽電池ストリングにおける一端部の太陽電池セル2の透明電極膜の端部上に、太陽電池セル2とほぼ同一長さの線状のP型電極端子部9が形成され、他端部の太陽電池セル2の裏面電極膜の端部上に、太陽電池セル2とほぼ同一長さの線状のN型電極端子部10が形成されている。薄膜太陽電池1は、これらP型電極端子部9及びN型電極端子部10が電極取り出し部となり、正極用タブ線11及び負極用タブ線15を介して端子ボックス19へ電気を供給する。
【0031】
[タブ線]
図3に示すように、正極用タブ線11は、接続層20を介して薄膜太陽電池1のP型電極端子部9上に接続される正極集電タブ部12と、絶縁層21を介して薄膜太陽電池1の裏面電極膜上に設けられる端子ボックス用正極タブ部13とを有し、正極集電タブ部12と端子ボックス用正極タブ部13とは、折り返し部14を介して連続している。
【0032】
負極用タブ線15は、接続層20を介して薄膜太陽電池1のN型電極端子部10上に接続される負極集電タブ部16と、絶縁層21を介して薄膜太陽電池1の裏面電極膜上に設けられる端子ボックス用負極タブ部17とを有し、負極集電タブ部16と端子ボックス用負極タブ部17とは、折り返し部18を介して連続している。
【0033】
以下では、正極用タブ線11について詳細に説明するが、負極用タブ線15も正極用タブ線11と同様の構成を有するものである。
【0034】
正極用タブ線11は、例えば厚さ50〜300μmに圧延された銅箔やアルミ箔をスリットし、あるいは銅やアルミなどの細い金属ワイヤーを平板状に圧延することにより、P型電極端子部9とほぼ同じ幅の1〜3mm幅の平角線である。
【0035】
正極集電タブ部12は、正極用タブ線11の一方の面が接続層20を介してP型電極端子部9の全面に対して電気的かつ機械的に接合されている。また、端子ボックス用正極タブ部13は、正極用タブ線11の一部が折り返し部14で折り返された先の部分であり、正極用タブ線11の他方の面が絶縁層21を介して薄膜太陽電池1の裏面電極膜上に設けられている。端子ボックス用正極タブ部13は、絶縁層21によって薄膜太陽電池1の裏面電極膜と接した場合にもショートが防止されている。また、端子ボックス用正極タブ部13は先端が端子ボックス19の端子台に接続されている。
【0036】
折り返し部14は、正極用タブ線11の一部、例えば正極集電タブ部12の端部に設けられる。正極用タブ線11は、折り返し部14より先が端子ボックス用正極タブ部13となる。したがって、正極用タブ線11は、正極集電タブ部12と端子ボックス用正極タブ部13とが折り返し部14を介して連続され、接合部分を有しないため、接合箇所に電荷が集中することによる抵抗値の増大や、接合部分の接続信頼性の低下、接合部分に熱や応力が集中することによる透光性絶縁基板8の損傷等を防止することができる。
【0037】
[接続層]
図4に示すように、正極用タブ線11及び負極用タブ線15は、一面11a,15aにP型電極端子部9又はN型電極端子部10に接続させる接続層20が設けられている。接続層20は、少なくとも正極用タブ線11及び負極用タブ線15の正極集電タブ部12及び負極集電タブ部16の一面11a,15a上、好ましくは該一面11a,15aの全面に設けられ、例えばコーティングハンダや導電性接着フィルム22によって構成される。
【0038】
導電性接着フィルム22は、図5に示すように、熱硬化性のバインダー樹脂層23に導電性粒子24が高密度に含有されてなる。また、導電性接着フィルム22は、押し込み性の観点から、バインダー樹脂の最低溶融粘度が、100〜100000Pa・sであることが好ましい。導電性接着フィルム22は、最低溶融粘度が低すぎると低圧着から本硬化の過程で樹脂が流動してしまい接続不良やセル受光面へのはみ出しが生じやすく、受光率低下の原因ともなる。また、最低溶融粘度が高すぎてもフィルム貼着時に不良を発生しやすく、接続信頼性に悪影響が出る場合もある。なお、最低溶融粘度については、サンプルを所定量回転式粘度計に装填し、所定の昇温速度で上昇させながら測定することができる。
【0039】
導電性接着フィルム22に用いられる導電性粒子24としては、特に制限されず、例えば、ニッケル、金、銀、銅などの金属粒子、樹脂粒子に金めっきなどを施したもの、樹脂粒子に金めっきを施した粒子の最外層に絶縁被覆を施したものなどを挙げることができる。
【0040】
導電性粒子は、1個、1個が個別に存在する粉体であってもよいが、一次粒子が連なった鎖状のものであることが好ましい。前者の例としてはスパイク状の突起をもつ球状のニッケルパウダがあり、好ましく用いられる後者の例としては、フィラメント状ニッケルパウダがある。後者を用いることにより導電性粒子24が弾性を備え、互いに物性の異なる正極用タブ線11とP型電極端子部9との接続信頼性、及び負極用タブ線15とN型電極端子部10との接続信頼性を、それぞれ向上させることができる。
【0041】
なお、導電性接着フィルム22は、常温付近での粘度が10〜10000kPa・sであることが好ましく、さらに好ましくは、10〜5000kPa・sである。導電性接着フィルム22の粘度が10〜10000kPa・sの範囲であることにより、導電性接着フィルム22を正極用タブ線11や負極用タブ線15の一面11a,15aに設け、リール25に巻装した場合において、いわゆるはみ出しによるブロッキングを防止することができ、また、所定のタック力を維持することができる。
【0042】
導電性接着フィルム22のバインダー樹脂層23の組成は、上述のような特徴を害さない限り、特に制限されないが、より好ましくは、膜形成樹脂と、液状エポキシ樹脂と、潜在性硬化剤と、シランカップリング剤とを含有する。
【0043】
膜形成樹脂は、平均分子量が10000以上の高分子量樹脂に相当し、フィルム形成性の観点から、10000〜80000程度の平均分子量であることが好ましい。膜形成樹脂としては、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂等の種々の樹脂を使用することができ、その中でも膜形成状態、接続信頼性等の観点からフェノキシ樹脂が好適に用いられる。
【0044】
液状エポキシ樹脂としては、常温で流動性を有していれば、特に制限はなく、市販のエポキシ樹脂が全て使用可能である。このようなエポキシ樹脂としては、具体的には、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂などを用いることができる。これらは単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、アクリル樹脂など他の有機樹脂と適宜組み合わせて使用してもよい。
【0045】
潜在性硬化剤としては、加熱硬化型、UV硬化型などの各種硬化剤が使用できる。潜在性硬化剤は、通常では反応せず、何かしらのトリガーにより活性化し、反応を開始する。トリガーには、熱、光、加圧などがあり、用途により選択して用いることができる。なかでも、本実施の形態では、加熱硬化型の潜在性硬化剤が好適に用いられ、バスバー電極11や裏面電極13に加熱押圧されることにより本硬化される。液状エポキシ樹脂を使用する場合は、イミダゾール類、アミン類、スルホニウム塩、オニウム塩などからなる潜在性硬化剤を使用することができる。
【0046】
シランカップリング剤としては、エポキシ系、アミノ系、メルカプト・スルフィド系、ウレイド系などを用いることができる。これらの中でも、本実施の形態では、エポキシ系シランカップリング剤が好ましく用いられる。これにより、有機材料と無機材料の界面における接着性を向上させることができる。
【0047】
また、その他の添加組成物として、無機フィラーを含有することが好ましい。無機フィラーを含有することにより、圧着時における樹脂層の流動性を調整し、粒子捕捉率を向上させることができる。無機フィラーとしては、シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等を用いることができ、無機フィラーの種類は特に限定されるものではない。
【0048】
図6は、導電性接着フィルム22の製品形態の一例を模式的に示す図である。この導電性接着フィルム22は、剥離基材26上にバインダー樹脂層23が積層され、テープ状に成型されている。このテープ状の導電性接着フィルム22は、リール25に剥離基材26が外周側となるように巻回積層される。剥離基材26としては、特に制限はなく、PET(Poly Ethylene Terephthalate)、OPP(Oriented Polypropylene)、PMP(Poly-4-methlpentene−1)、PTFE(Polytetrafluoroethylene)などを用いることができる。
【0049】
導電性接着フィルム22は、バインダー樹脂層23上に、上述した正極用タブ線11や負極用タブ線15が、カバーフィルムとして貼付される。すなわち、導電性接着フィルム22は、バインダー樹脂層23が正極用タブ線11や負極用タブ線15の一面11a,15aに積層される。このように、予め正極用タブ線11や負極用タブ線15と導電性接着フィルム22とを積層一体化させておくことにより、実使用時においては、剥離基材26を剥離し、導電性接着フィルム22のバインダー樹脂層23をP型電極端子部9やN型電極端子部10上に貼着することにより正極用タブ線11や負極用タブ線15と各電極端子部11,12との仮貼りが図られる。
【0050】
上述した導電性接着フィルム22は、導電性粒子24と、膜形成樹脂と、液状エポキシ樹脂と、潜在性硬化剤と、シランカップリング剤とを溶剤に溶解させる。溶剤としては、トルエン、酢酸エチルなど、又はこれらの混合溶剤を用いることができる。溶解させて得られた樹脂生成用溶液を剥離基材26上に塗布し、溶剤を揮発させることにより、導電性接着フィルム22を得る。その後、導電性接着フィルム22は、正極用タブ線11や負極用タブ線15の一面11a,15aに貼付される。これにより導電性接着フィルム22は、正極用タブ線11や負極用タブ線15の一面11a,15aの全面に亘って形成される。
【0051】
このような導電性接着フィルム22は、正極用タブ線11や負極用タブ線15がP型電極端子部9上やN電極端子部12上に仮貼りされると、加熱押圧ヘッドや真空ラミネーターによって所定の温度、圧力で熱加圧される。これにより、導電性接着フィルム22は、バインダー樹脂がP型電極端子部9と正極集電タブ部12との間、及びN型電極端子部10と負極集電タブ部16との間より流出されるとともに導電性粒子24が各集電タブ部12,16と各電極端子部9,10との間で挟持され、この状態でバインダー樹脂が硬化する。これにより、導電性接着フィルム22は、各集電タブ部12,16を各電極端子部9,10上に接着させると共に、各集電タブ部12,16と各電極端子部9,10とを導通接続させることができる。
【0052】
なお、P型電極端子部9と正極用タブ線11との接続、及びN型電極端子部10と負極用タブ線15との接続は、上述した導電性接着フィルム22の他に、絶縁性接着フィルムや絶縁性接着ペースト等の絶縁性接着剤を用いることができる。絶縁性接着フィルムは、バインダー樹脂層に導電性粒子が含まれていない他は、導電性接着フィルムと同様の構成を有する。
【0053】
[凹凸部]
接続層として絶縁性接着剤を用いる場合、正極用タブ線11及び負極用タブ線15は、P型電極端子部9やN型電極端子部10と接続される一面11a,15aに凹凸部30が形成される。凹凸部30は、正極用タブ線11及び負極用タブ線15の一面11a,15aの全面に亘って規則的に又は不規則に形成された凹部及び凸部からなり、リボン状銅箔のプレス成形、あるいは一面11a,15aのエッチング等により形成される。
【0054】
例えば、正極用タブ線11及び負極用タブ線15は、図7に示すように、一面11a,15aにおいて長手方向に亘って連続する複数の凸部31及び凹部32が幅方向に交互に設けられていることにより凹凸部30が形成されている。これにより、正極用タブ線11及び負極用タブ線15は、接続層20として絶縁性接着剤を用いる場合であっても、凹凸部30の凸部31とP型電極端子部9やN電極端子部12とが直接接触されることにより導通が図られる。
【0055】
なお、正極用タブ線11及び負極用タブ線15は、絶縁性接着剤を用いる場合の他、導電性接着剤やハンダを用いる場合にも、一面11a,15aに凹凸部30を形成してもよい。
【0056】
[変形例]
また、接続層20は、正極用タブ線11や負極用タブ線15の一面11a,15aに予め積層されていなくともよい。この場合、接続層20は、フィルム状の導電性接着フィルムや絶縁性接着フィルムの他、ペースト状の導電性接着ペーストや絶縁性接着ペースト、あるいはハンダを用いてもよい。
【0057】
本実施の形態では、導電性粒子24を含有するフィルム状の導電性接着フィルム22やペースト状の導電性接着ペースト、あるいはハンダを「導電性接着剤」と定義し、導電性粒子を含有しないフィルム状の絶縁性接着フィルム又は絶縁性接着ペーストを「絶縁性接着剤」と定義する。
【0058】
このような接続層20は、導電性接着フィルム22や絶縁性接着フィルムが、正極用タブ線11等の接合時に、P型電極端子部9やN型電極端子部10に応じた所定の長さにカットされ、薄膜太陽電池1のP型電極端子部9上、及びN型電極端子部10上に仮貼りされる。あるいは、接続層20は、導電性接着ペーストや絶縁性接着ペースト、ハンダ等がP型電極端子部9上、及びN型電極端子部10上に塗布される。次いで、所定の長さにカットされた正極用タブ線11及び負極用タブ線15が接続層20上に重畳配置され、熱加圧されることにより導通接続される。
【0059】
[絶縁層]
図4に示すように、正極用タブ線11及び負極用タブ線15は、他面11b,15bに薄膜太陽電池1の裏面電極膜との絶縁を図る絶縁層21が設けられている。絶縁層21は、正極用タブ線11及び負極用タブ線15の少なくとも端子ボックス用正極タブ部13及び端子ボックス用負極タブ部17の他面11b,15b上、好ましくは該他面11b,15bの全面に設けられ、例えば接着剤付き絶縁フィルムによって構成される。
【0060】
接着剤付き絶縁フィルムは、PETやPI等の絶縁フィルムの一面に接着剤層が設けられたものである。接着剤層には、上述した絶縁性接着フィルムのようなエポキシ系の接着剤等を用いることができる。
【0061】
絶縁層21は、少なくとも端子ボックス用正極タブ部13及び端子ボックス用負極タブ部17上に設けられることにより、正極用タブ線11や負極用タブ線15が折り返されると薄膜太陽電池1の裏面と対峙される。したがって、絶縁層21は、端子ボックス用正極タブ部13及び端子ボックス用負極タブ部17が薄膜太陽電池1の裏面電極膜とショートすることを防止することができる。
【0062】
すなわち、薄膜太陽電池1は、正極用タブ線11及び負極用タブ線15と裏面電極膜との間に絶縁層21を介在させることにより、従来用いていた端子ボックス用タブ線と薄膜太陽電池の裏面電極膜上を絶縁する絶縁フィルムが不要となった。また、予め端子ボックス用正極タブ部13や端子ボックス用負極タブ部17に設けられていることから、必要最小限の面積で構成することができ、従来のように大面積の絶縁フィルムを用意する必要もない。
【0063】
また、絶縁層21は、好ましくは、接着剤層を介して正極用タブ線11や負極用タブ線15の他面11b,15bに積層されることにより、他面11b,15bの全面に亘って形成される。これにより、絶縁層21は、正極集電タブ部12上や負極集電タブ部16上では薄膜太陽電池1の裏面より外方に現れる。これにより、薄膜太陽電池1は、エチレンビニルアセテート樹脂(EVA)等の透光性封止樹脂によって封止されたときにも、正極用タブ線11や負極用タブ線15が絶縁層21によって覆われることで透光性封止樹脂と反応し腐食することを防止することができる。
【0064】
さらに、絶縁層21は、着色された絶縁フィルムを用いることで、意匠性を高めることができる。
【0065】
なお、絶縁層21として、接着剤付き絶縁フィルムの他に、耐熱性塗料を用いてもよい。この耐熱性塗料としては、例えばシリコン樹脂系の耐熱塗料があり、市販品として関西ペイント株式会社製の耐酸テルモを例示することができる。耐熱性塗料を用いて絶縁層を構成することにより、正極用タブ線11及び負極用タブ線15は、接着剤付き絶縁フィルムを用いた場合に比して薄型化を図ることができる。
【0066】
[余剰部]
このような正極用タブ線11は、図3に示すように、正極集電タブ部12がP型電極端子部9と略同じ長さを有し、折り返し部14より先のP型電極端子部9上よりはみ出した余剰部が端子ボックス用正極タブ部13とされている。そして、正極用タブ線11は、端子ボックス用正極タブ部13が薄膜太陽電池1の裏面電極膜上に折り返され、その先端が端子ボックス19と接続される。負極用タブ線15も同様である。
【0067】
正極用タブ線11は、P型電極端子部9の長さの略2倍程度の長さを有し、全長の略50%の位置で折り返されることが好ましい。これにより、正極用タブ線11は、薄膜太陽電池1の裏面電極膜上における端子ボックス19の位置にかかわらず、確実に端子ボックス用正極タブ部13を端子ボックス19に接続させることができる。負極用タブ線15も同様である。
【0068】
[変形例]
なお、図8(A)(B)に示すように、薄膜太陽電池1は、正極用タブ線11や負極用タブ線15の幅方向の略中間に、長手方向に亘るスリットSを形成し、スリットSで分割された一方に折り返し部14,18を形成するとともに、当該折り返し部14,18の先を端子ボックス用正極タブ部13又は端子ボックス用負極タブ部17としてもよい。この場合、スリットで分割された他方は、スリットSが形成されていない部分と共に正極集電タブ部12又は負極集電タブ部16を構成する。また、正極用タブ線11や負極用タブ線15は、必ずしもP型電極端子部9やN型電極端子部10より長くしなくともよい。スリットSの長さは、端子ボックス19までの距離に応じて適宜決められる。
【0069】
[端子ボックス]
また、薄膜太陽電池1の裏面電極膜上には、正極用タブ線11及び負極用タブ線15の端子ボックス用正極タブ部13及び端子ボックス用負極タブ部17と電気的に接続する端子ボックス19が設けられている。端子ボックス19は、外部出力線が電気的に接続され、正極用タブ線11及び負極用タブ線15が集電した電力を外部に供給する。
【0070】
この端子ボックス19は、詳細を省略する絶縁性接着フィルムを介して薄膜太陽電池1の裏面電極膜上に固定されている。絶縁性接着フィルムは、導電性粒子を含有しない点を除き、上述した導電性接着フィルム22とほぼ同一の成分を有し、バインダー樹脂層が熱硬化することにより端子ボックス19を薄膜太陽電池1の裏面電極膜上に固定する。なお、絶縁性接着フィルムは、化学的に安定なフッ素系の樹脂を混合することにより、薄膜太陽電池1の裏面電極膜上に仮貼りされたときにも、裏面電極膜と反応することなく腐食を防止することができる。
【0071】
なお、端子ボックス19は、薄膜太陽電池1の裏面電極膜上において、正極用タブ線11や負極用タブ線15の長手方向と直交する幅方向の略中間に沿った位置に設けられることにより、同一サイズのタブ線を正極用タブ線11及び負極用タブ線15として用いることができる。
【0072】
[製造方法]
次いで、薄膜太陽電池1に正極用タブ線11及び負極用タブ線15を接続する工程について説明する。先ず、薄膜太陽電池1のP型電極端子部9上及びN型電極端子部10上に接続層20を設け、接続層20を介して正極集電タブ部12又は負極集電タブ部16を配置する。
【0073】
この工程は、予め一面11a,15aに導電性接着フィルム22や絶縁性接着フィルムが設けられ、あるいはハンダコーティングされた正極用タブ線11や負極用タブ線15を、P型電極端子部9上及びN型電極端子部10上に配置することにより行う。あるいは、導電性接着剤や絶縁性接着剤をP型電極端子部9上及びN型電極端子部10上に配置若しくは塗布することにより接続層20を形成した後、接続層20上に、正極用タブ線11の正極集電タブ部12又は負極用タブ線15の負極集電タブ部16を配置することにより行う。
【0074】
その後、正極用タブ線11及び負極用タブ線15は、加熱押圧ヘッドによって所定の温度、圧力で所定時間、熱加圧される。これにより、接続層20は、導電性接着剤のバインダー樹脂がP型電極端子部9と正極集電タブ部12との間、及びN型電極端子部10と負極集電タブ部16との間より流出されるとともに導電性粒子24が各集電タブ部12,16と各電極端子部9,10との間で挟持され、この状態でバインダー樹脂が硬化する。これにより、接続層20は、各集電タブ部12,16を各電極端子部9,10上に接着させると共に、各集電タブ部12,16と各電極端子部9,10とを導通接続させることができる。接続層20として、絶縁接着剤やハンダを用いた場合も、同様に熱加圧されることにより、各集電タブ部12,16と各電極端子部9,10とが接続される。
【0075】
次いで、正極用タブ線11及び負極用タブ線15は、P型電極端子部9上及びN型電極端子部10上より先の余剰部を薄膜太陽電池1の裏面電極膜上に折り返し、折り返し部14,18を形成すると共に、端子ボックス用正極タブ部13、端子ボックス用負極タブ部17を絶縁層21を介して裏面電極膜上に配置する。
【0076】
端子ボックス用正極タブ部13、端子ボックス用負極タブ部17の先端は、接続層20を構成する導電性接着剤や絶縁性接着剤、及び絶縁層21を構成する接着剤付き絶縁フィルムや耐熱性塗料が、刃物及び熱を利用し絶縁フィルムを剥離すること等によって剥離され、導通可能とされる。その後、正極用タブ線11及び負極用タブ線15は、当該先端部が端子ボックス19の端子台に接続される。
【0077】
このような接続工程を経ることにより、従来の超音波接合で必要であったレーザスクライブ処理やAgペースト塗布が不要となり、発電面積が拡大し、発電効率を向上させることができる。また、導電性接着フィルムを用いて集電用タブ線と端子ボックス用タブ線とを接合させる構成に比して、長期に亘る接続信頼性に優れ、かつ集電用タブ線と端子ボックス用タブ線との接続がなくなったことで接続抵抗も下がり、発電効率を向上させることができる。さらに、正極用タブ線11及び負極用タブ線15は、絶縁層21が他面11b,15bに全面に亘って設けられることにより、銅箔表面の酸化も抑えることができる。
【0078】
なお、正極用タブ線11及び負極用タブ線15は、加熱押圧ヘッドによって圧着する他、上述した封止接着剤のシート3とともにラミネーターによって一括してラミネート圧着されることにより、各集電タブ部12,16と各電極端子部9,10とを接続するようにしてもよい。この場合、正極用タブ線11及び負極用タブ線15は、接続層20が熱硬化しない程度の温度で各集電タブ部12,16を各電極端子部9,10上に仮貼りされ、端子ボックス用タブ部13,17が折り返される。その後、EVA等の封止樹脂シートが載置され、真空ラミネーターによって一括ラミネートされることにより、正極用タブ線11及び負極用タブ線15は、接続層20が熱硬化し、各集電タブ部12,16と各電極端子部9,10とが接続される。
【実施例】
【0079】
次いで、正極用タブ線11及び負極用タブ線15を用いた薄膜太陽電池1の実施例について、従来の薄膜太陽電池及び絶縁層21を有しない正極用タブ線及び負極用タブ線を用いた薄膜太陽電池と比較して説明する。
【0080】
いずれのサンプルも、タブ線の基材として70μm厚の銅箔リボンを用い、薄膜太陽電池の電極端子部に接続される一面に接続層が形成されている。また実施例1〜6、及び比較例1〜2には他面に絶縁層も形成されている。
【0081】
そして、各サンプルとも、同一の薄膜太陽電池(アモルファスシリコンからなる光電変換層を有する)を用いて、P型電極端子部及びN型電極端子部に接続した。
実施例2〜実施例6、比較例1〜3、5、6に係るサンプルでは、P型電極端子部及びN型電極端子部上に導電性接着剤([製品名 DT100シリーズ]:ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社製)又は絶縁性接着剤([製品名 DT100シリーズ 導電性粒子無し]:ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社製)を介して載置された後、熱加圧されることにより接続した(加熱温度:180℃、圧力:2MPa、加熱加圧時間:15秒)。実施例1及び比較例3に係るサンプルは、Al(アルミ)接続用の超音波ハンダをコーティングすることにより形成された接続層を介してP型電極端子部及びN型電極端子部上に載置された後、熱加圧されることにより接続した。
【0082】
次いで、各サンプルを、薄膜太陽電池の裏面に設けられた端子ボックスに接続した。各実施例及び比較例4〜6では電極端子部よりはみ出した余剰部を折り返し、折り返された先端部を端子ボックスに接続した。
【0083】
その後、封止樹脂(EVA)及びアルミ箔入りバックシートを積層してラミネートすることによりモジュール化した。そして、各モジュールについて、薄型化が図られているか、及び高温高湿試験後(85℃85%RH1000hr)1A通電時の接続抵抗を測定した。
【0084】
実施例1に係るタブ線は、電極端子部に接続された集電タブ部より先の余剰部を折り返すことにより端子ボックス用タブ部とした。折り返し角度は135°である。また、実施例1に係るタブ線は、一面をハンダコーティングすることにより接続層が形成され、他面にエポキシ系接着剤層が形成されたPETが貼着されることにより絶縁層が形成されている。
【0085】
実施例2に係るタブ線は、電極端子部に接続された集電タブ部より先の余剰部を折り返すことにより端子ボックス用タブ部とした。折り返し角度は90°である。また、実施例2に係るタブ線は、一面に導電性接着フィルムが貼着されることにより接続層が形成され、他面にエポキシ系接着剤層が形成されたPETが貼着されることにより絶縁層が形成されている。
【0086】
実施例3に係るタブ線は、電極端子部に接続された集電タブ部より先の余剰部を折り返すことにより端子ボックス用タブ部とした。折り返し角度は135°である。また、実施例3に係るタブ線は、実施例2と同じ接続層及び絶縁層が形成されている。
【0087】
実施例4に係るタブ線は、電極端子部に接続された集電タブ部より先の余剰部を折り返すことにより端子ボックス用タブ部とした。折り返し角度は180°である。また、実施例4に係るタブ線は、実施例2と同じ接続層及び絶縁層が形成されている。なお、実施例4では、正極用タブ線及び負極用タブ線をそれぞれ180°折り返し、各端子ボックス用タブ部を正極用端子ボックスと負極用端子ボックスにそれぞれ接続させた。
【0088】
実施例5に係るタブ線は、電極端子部に接続された集電タブ部より先の余剰部を折り返すことにより端子ボックス用タブ部とした。折り返し角度は135°である。また、実施例5に係るタブ線は、一面に絶縁性接着フィルムが貼着されることにより接続層が形成され、他面にエポキシ系接着剤層が形成されたPETが貼着されることにより絶縁層が形成されている。
【0089】
実施例6に係るタブ線は、電極端子部に接続された集電タブ部より先の余剰部を折り返すことにより端子ボックス用タブ部とした。折り返し角度は135°である。また、実施例5に係るタブ線は、一面に導電性接着フィルムが貼着されることにより接続層が形成され、他面に耐熱性塗料(耐酸テルモ:関西ペイント株式会社製)が塗布されることにより絶縁層が形成されている。
【0090】
比較例1は、電極端子部上に端子ボックス用タブ線及び集電用タブ線を重畳させることにより接続した。また、比較例1に係る端子ボックス用タブ線は、集電用タブ線に接続する一面に導電性接着フィルムが貼着されることにより接続層が形成され、裏面電極膜に接する他面にエポキシ系接着剤層が形成されたPETが貼着されることにより絶縁層が形成されている。
【0091】
比較例2は、電極端子部上に端子ボックス用タブ線及び集電用タブ線を重畳させることにより接続した。また、比較例2に係る端子ボックス用タブ線は、集電用タブ線に接続する一面に導電性接着フィルムが貼着されることにより接続層が形成され、裏面電極膜に接する他面に耐熱性塗料(耐酸テルモ:関西ペイント株式会社製)が塗布されることにより絶縁層が形成されている。
【0092】
比較例3は、電極端子部上に端子ボックス用タブ線及び集電用タブ線を重畳させることにより接続した。また、比較例3に係る端子ボックス用タブ線は、集電用タブ線に接続する一面に導電性接着フィルムが貼着されることにより接続層が形成され、裏面電極膜に接する他面には絶縁層が形成されていない。
【0093】
比較例4に係るタブ線は、電極端子部に接続された集電タブ部より先の余剰部を折り返すことにより端子ボックス用タブ部とした。折り返し角度は135°である。また、比較例4に係る端子ボックス用タブ線は、集電用タブ線に接続する一面をハンダコーティングすることにより接続層が形成され、裏面電極膜に接する他面には絶縁層が形成されていない。
【0094】
比較例5に係るタブ線は、電極端子部に接続された集電タブ部より先の余剰部を折り返すことにより端子ボックス用タブ部とした。折り返し角度は135°である。また、比較例4に係る端子ボックス用タブ線は、集電用タブ線に接続する一面に導電性接着フィルムが貼着されることにより接続層が形成され、裏面電極膜に接する他面には絶縁層が形成されていない。
【0095】
比較例6に係るタブ線は、電極端子部に接続された集電タブ部より先の余剰部を折り返すことにより端子ボックス用タブ部とした。折り返し角度は135°である。また、比較例4に係る端子ボックス用タブ線は、集電用タブ線に接続する一面に絶縁性接着フィルムが貼着されることにより接続層が形成され、裏面電極膜に接する他面には絶縁層が形成されていない。
【0096】
以上の実施例及び比較例に係るモジュールについて、薄型化が図られているか、及び高温高湿試験後(85℃85%RH1000hr)2本のタブ線上より電流端子及び電圧端子をそれぞれ接続する4端子法により、1A通電時の接続抵抗を測定した結果を表1に示す。なお、モジュールの薄型化の評価指標は、
○:電極端子部の部分的な厚みが最大0.25mm以下
×:電極端子部の部分的な厚みが最大0.25mmより大きい
とした。
【0097】
また、接続抵抗の評価指標は、
○:12Ω未満
△:12Ω以上、18Ω未満
×:18Ω以上
とした。
【0098】
【表1】

【0099】
表1に示すように、モジュールの薄型化に関し、実施例1〜6では、電極端子部上に端子ボックス用タブ線及び集電用タブ線を重畳させることなく、1本のタブ線のみ接続しているため、薄型化が図られた。一方、比較例1〜3では、電極端子部上に端子ボックス用タブ線及び集電用タブ線を重畳させているため、モジュールの薄型化を図ることはできなかった。
【0100】
また、接続抵抗に関し、実施例1〜6では、集電用タブ線と端子ボックス用タブ線が連続しているため、集電用タブ線と端子ボックス用タブ線との接続部が存在しない。したがって、当該接続部への電荷の集中による抵抗値の増大や、接続箇所が高温高湿環境によって劣化し、あるいは経年劣化によって抵抗値が増大することもない。一方、比較例1〜2では、集電用タブ線と端子ボックス用タブ線との接続部の劣化に伴い、接続抵抗の増加がみられた。
【0101】
さらに、比較例3〜6では、端子ボックス用タブ線の他面に絶縁層が形成されていないため、薄膜太陽電池の裏面電極膜との間でショートが発生した。
【符号の説明】
【0102】
1 薄膜太陽電池、2 太陽電池セル、3 シート、4 バックシート、5 表面カバー、6 太陽電池モジュール、7 金属フレーム、8 透光性絶縁基板、9 P型電極端子部、10 N型電極端子部、11 正極用タブ線、11a 一面、12 正極集電タブ部、13 端子ボックス用正極タブ部、14 折り返し部、15 負極用タブ線、15a 一面、16 負極集電タブ部、17 端子ボックス用負極タブ部、18 折り返し部、19 端子ボックス、20 接続層、21 絶縁層、22 導電性接着フィルム、23 バインダー樹脂層、24 導電性粒子、30 凹凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に電極が配置される太陽電池と、
接続層を介して上記太陽電池の電極上に接続される集電タブ部と、絶縁層を介して上記太陽電池の一面上に設けられる端子ボックス用タブ部とを有し、上記集電タブ部と上記端子ボックス用タブ部とが、折り返し部を介して連続しているタブ線と、
を備える太陽電池モジュール。
【請求項2】
上記タブ線は、上記電極の長さより長く、上記電極からはみ出した余剰部が折り返される請求項1記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
上記タブ線は、上記電極の2倍程度の長さを有し、全長の50%の位置で折り返される請求項2記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
上記タブ線は、上記折り返し部の折り返し角度が90°以上180°以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
端子ボックスが上記一面の中央に固定され、上記端子ボックス用タブ部の一端が接続されている請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
上記折り返し角度が180°のときは、上記一面上に、正極用端子ボックスと負極用端子ボックスが設置される請求項4記載の太陽電池モジュール。
【請求項7】
上記接続層は、ハンダ、導電性接着剤及び絶縁性接着剤のいずれかである請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項8】
上記タブ線は、上記電極と接続する面が凹凸面とされ、絶縁性接続層を介して上記電極と接続されている請求項7記載の太陽電池モジュール。
【請求項9】
上記導電性接着剤又は絶縁性接着剤は、エポキシ系接着剤である請求項7記載の太陽電池モジュール。
【請求項10】
上記タブ線は、予め上記電極と接続される一方の面に全面に亘って上記導電層が設けられ、上記一方の面と反対側の面に全面に亘って上記絶縁層が設けられている請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項11】
上記絶縁層は、接着剤付き絶縁フィルム又は耐熱性塗料である請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項12】
太陽電池の電極上に接続される集電タブ部と、上記太陽電池の一面上に設けられる端子ボックス用タブ部とを有するタブ線を用い、
上記集電タブ部を、上記太陽電池の一面に配置されている上記電極上に接続層を介して接続し、
上記端子ボックス用タブ部を、上記集電タブ部より折り返し、絶縁層を介して上記太陽電池の一面上に設け、
上記端子ボックス用タブ部の一端を端子ボックスに接続する太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項13】
上記タブ線は、上記電極の長さより長く、上記電極からはみ出した余剰部が折り返される請求項12記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項14】
上記タブ線は、予め上記電極と接続される一方の面に全面に亘って上記接続層が設けられ、上記一方の面と反対側の面に全面に亘って上記絶縁層が設けられている請求項12又は請求項13に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項15】
一面に電極が配置されている太陽電池の上記電極上に接続層を介して接続される集電タブ部と、
絶縁層を介して上記太陽電池の一面上に設けられる端子ボックス用タブ部とを有し、
上記集電タブ部と上記端子ボックス用タブ部とが、折り返し部を介して連続している薄膜太陽電池モジュール用タブ線。
【請求項16】
上記電極の長さよりも長く、上記電極からはみ出した余剰部が折り返されて上記端子ボックス用タブ部とされる請求項15に記載の薄膜太陽電池モジュール用タブ線。
【請求項17】
予め上記電極と接続される一方の面に全面に亘って上記接続層が設けられ、上記一方の面と反対側の面に全面に亘って上記絶縁層が設けられている請求項15又は請求項16に記載の薄膜太陽電池モジュール用タブ線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−248706(P2012−248706A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119686(P2011−119686)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】