説明

太陽電池モジュールおよびその製造方法

【課題】側面が確実に封止され、薄膜系太陽電池素子の耐久性に優れる薄膜系太陽電池モジュールおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】所定の間隔で対向し、それぞれが対向面の周縁に枠状の周縁封止領域を有する表面材10および裏面材12と;裏面材12の周縁封止領域に形成されたガラスからなる段部14と;段部14と表面材10の周縁封止領域とを封着する枠状の封着部32と;封着部32と間隔を開けて封着部32よりも外側の周縁封止領域に形成された枠状の樹脂シール部36と;封着部32と間隔を開けて封着部32よりも内側に形成された樹脂層20と;表面材10の周縁封止領域よりも内側の表面に形成された薄膜系太陽電池素子30とを有し;樹脂層20と封着部32との間の空間および封着部32と樹脂シール部36との間の空間が40000Pa以下の減圧雰囲気である太陽電池モジュール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜系太陽電池モジュールおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールとしては、たとえば、下記のものが知られている。
・表面材と裏面材との間に、樹脂等の封止材によって、シリコンウエハから形成された結晶系太陽電池素子が封止された結晶系太陽電池モジュール。
・表面材と裏面材との間に、樹脂等の封止材によって、表面材および裏面材のうちの少なくとも一方の表面に形成された薄膜系太陽電池素子が封止された薄膜系太陽電池モジュール。
・増感色素を含む半導体電極が表面に形成された表面材と、触媒電極が表面に形成された裏面材との間に、電解液が充填された色素増感型太陽電池モジュール。
【0003】
太陽電池モジュールのうち、薄膜系太陽電池モジュールは、ガラス基板を表面材(または裏面材)として用いることによって、大面積のガラス基板の表面に薄膜系太陽電池素子を簡易に形成できるため、大面積の太陽電池モジュールを簡易に、かつ経済的に製造できるという利点を有する。
【0004】
表面に薄膜系太陽電池素子が形成されたガラス基板を表面材(または裏面材)として用いる薄膜系太陽電池モジュールの製造方法としては、下記の方法が知られている。
(1)ガラス基板の薄膜系太陽電池素子が形成されている側の表面に、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAと記す。)の封止材フィルムおよび裏面材(または表面材)を重ね、減圧雰囲気下に加熱、加圧して積層する方法(特許文献1)。
【0005】
しかし、(1)の方法には、下記の問題がある。
・製造された薄膜系太陽電池モジュールの側面にEVA層が露出しているため、該側面におけるEVA層と表面材または裏面材との界面から水分、腐食性ガスが浸入するおそれがある。
・ガラス基板の薄膜系太陽電池素子が形成されている側の表面にEVAの封止材フィルムおよび裏面材(または表面材)を積層する際に、薄膜系太陽電池素子に過大な圧力や熱が加わり、薄膜系太陽電池素子が破損するおそれがある。
・一方、薄膜系太陽電池素子が破損しないように圧力や熱を低く抑えると、製造された太陽電池モジュールのEVA層と薄膜系太陽電池素子との界面接着力、またはEVA層と裏面材(または表面材)との界面接着力が不充分となって、EVA層の表面にて剥離が発生するおそれがある。また、薄膜系太陽電池モジュールの側面における界面接着力が不充分な部分から水分、腐食性ガスが浸入するおそれが高まる。また、EVA層と裏面材(または表面材)との間に気泡等の空隙が残存してしまうおそれもある。
【0006】
なお、側面が確実に封止された太陽電池モジュールの製造方法としては、下記の方法が提案されている。
(2)裏面材の周縁に壁部を形成し、裏面材の壁部と表面材との間にガラスフリットを含む封着材料を介在させた状態で、封着材料にレーザを照射し、裏面材の壁部と表面材とを未封着部を除いて封着した後、未封着部から電解液を充填する、色素増感型太陽電池モジュールの製造方法(特許文献2)。
【0007】
ところで、(2)の方法をそのまま薄膜系太陽電池モジュールの製造方法に適用する場合、裏面材の壁部と表面材とを封着した後、未封着部から電解液の代わりに液状の硬化性樹脂組成物を充填し、硬化させることになる。
しかし、該方法においては、下記の理由から、製造された薄膜系太陽電池モジュールの内部に気泡が発生しやすい。
・液状の硬化性樹脂組成物の粘度が比較的高いため、表面材と裏面材との間隙に硬化性樹脂組成物を充填することが困難であり、該間隙内に硬化性樹脂組成物が充填されていない空間(気泡)が発生しやすい。
・また、液状の硬化性樹脂組成物中にも気泡が残存しやすい。
【0008】
そして、太陽電池モジュールの内部に気泡が発生すると、下記の問題が生じる。
・硬化性樹脂組成物を硬化させた樹脂層と薄膜系太陽電池素子との界面接着力、または硬化物と裏面材(または表面材)との界面接着力が低下する。
・裏面材の表面に薄膜系太陽電池素子を形成した場合、薄膜系太陽電池素子の透明電極層側に樹脂層が形成されるため、樹脂層には高い透明性が要求される。しかし、樹脂層に気泡が存在すると、太陽光が気泡により乱反射され、薄膜系太陽電池素子に達する太陽光の量が低下して発電効率が低下する。
・薄膜系太陽電池素子の2つの電極をともに透明電極としたシースルー型薄膜系太陽電池モジュールにおいては、樹脂層に残存する気泡は容易に視認されるため、製品の品位を大きく損なうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−87743号公報
【特許文献2】特開2007−42460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、側面が確実に封止され、薄膜系太陽電池素子の耐久性に優れる薄膜系太陽電池モジュール;および、製造中に薄膜系太陽電池素子が破損しにくく、樹脂層と薄膜系太陽電池素子との界面接着力および樹脂層とガラス基板との界面接着力を高くでき、液状の硬化性樹脂組成物による気泡の発生を充分に抑えることができ、かつ側面を確実に封止できる薄膜系太陽電池モジュールの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の太陽電池モジュールは、
所定の間隔で対向し、それぞれが対向面の周縁に枠状の周縁封止領域を有する第1のガラス基板および第2のガラス基板と、
第1のガラス基板の周縁封止領域と第2のガラス基板の周縁封止領域とを封着する枠状の封着部と、
第1のガラス基板および第2のガラス基板に挟まれ、かつ封着部と間隔を開けて封着部よりも外側の周縁封止領域に形成された枠状の樹脂シール部と、
第1のガラス基板および第2のガラス基板に挟まれ、かつ封着部と間隔を開けて封着部よりも内側に形成された、ガラス基板の表面に沿って広がる樹脂層と、
第1のガラス基板および第2のガラス基板のうちの少なくとも一方のガラス基板の周縁封止領域よりも内側の表面に形成された薄膜系太陽電池素子とを有し、
樹脂層と封着部との間の空間、および封着部と樹脂シール部との間の空間が、40000Pa以下の減圧雰囲気であることを特徴とする。
【0012】
第1のガラス基板および第2のガラス基板のうちの少なくとも一方は、周縁封止領域に形成された、ガラスからなる段部を有することが好ましい。
段部は、ガラス基板の表面に凹部を形成することによって形成されたものであることが好ましい。
樹脂層は、ガラス基板の表面に沿って広がる層状部および層状部の周縁を囲む堰状部からなることが好ましい。
【0013】
本発明の太陽電池モジュールの製造方法は、下記の工程(a)〜(h)を有することを特徴とする。
(a)第1のガラス基板および第2のガラス基板のうちの少なくとも一方のガラス基板の周縁封止領域に封着材料からなる封着材料部を形成する工程。
(b)第1のガラス基板および第2のガラス基板のうちの少なくとも一方のガラス基板の周縁封止領域よりも内側の表面に薄膜系太陽電池素子を形成する工程。
(c)第1のガラス基板の、周縁封止領域の内周縁またはその近傍の表面に、堰状部を形成する工程。
(d)第1のガラス基板の周縁封止領域に、樹脂シール部を形成する工程。
(e)堰状部で囲まれた領域に、液状の層状部形成用硬化性樹脂組成物を供給する工程。
(f)100Pa以下の減圧雰囲気下にて、層状部形成用硬化性樹脂組成物の上に、対向面が層状部形成用硬化性樹脂組成物に接するように第2のガラス基板を重ねて、第1のガラス基板、第2のガラス基板および堰状部によって層状部形成用硬化性樹脂組成物が密封された積層物を得る工程。
(g)50kPa以上の圧力雰囲気下に積層物を置いた状態にて、層状部形成用硬化性樹脂組成物からなる未硬化の層状部を硬化させて、層状部および堰状部からなる樹脂層を形成する工程。
(h)封着材料部を溶融し、固化させて、封着部を形成する工程。
【0014】
本発明の太陽電池モジュールの製造方法においては、封着材料部を、ガラスフリットおよびレーザ吸収材を含む封着材料ペーストをガラス基板の周縁封止領域に塗布し、焼成して形成することが好ましい。
本発明の太陽電池モジュールの製造方法においては、封着部を、封着材料部にレーザを照射して形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の薄膜系太陽電池モジュールは、側面が確実に封止され、薄膜系太陽電池素子の耐久性に優れる。
本発明の太陽電池モジュールの製造方法によれば、製造中に薄膜系太陽電池素子が破損しにくく、樹脂層と薄膜系太陽電池素子との界面接着力および樹脂層とガラス基板との界面接着力を高くでき、液状の硬化性樹脂組成物による気泡の発生を充分に抑えることができ、かつ側面を確実に封止できる。また、得られる薄膜系太陽電池モジュールは、薄膜系太陽電池素子の耐久性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の太陽電池モジュールの第1の実施形態の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の太陽電池モジュールの第1の実施形態の他の例を示す断面図である。
【図3】本発明の太陽電池モジュールの第1の実施形態の他の例を示す断面図である。
【図4】本発明の太陽電池モジュールの第2の実施形態の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の太陽電池モジュールの第3の実施形態の一例を示す断面図である。
【図6】本発明の太陽電池モジュールの第4の実施形態の一例を示す断面図である。
【図7】本発明の太陽電池モジュールの第5の実施形態の一例を示す断面図である。
【図8】本発明の太陽電池モジュールの第6の実施形態の一例を示す断面図である。
【図9】工程(c)および工程(d)の様子を示す平面図である。
【図10】工程(c)および工程(d)の様子を示す断面図である。
【図11】工程(e)の様子を示す平面図である。
【図12】工程(e)の様子を示す断面図である。
【図13】工程(f)の様子を示す断面図である。
【図14】工程(h)の様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明においては、下記のように定義する。
太陽光入射側のガラス基板を「表面材」といい、表面材に対向配置されたガラス基板を「裏面材」という。
表面材および裏面材を総称して「ガラス基板」という。
該ガラス基板のうち、本発明の製造方法において、表面に堰状部が形成され、かつ堰状部で囲まれた領域に液状の硬化性樹脂組成物が供給されるガラス基板を「第1のガラス基板」といい、該硬化性樹脂組成物の上に重ねられる面材を「第2のガラス基板」という。
【0018】
<太陽電池モジュール>
本発明の太陽電池モジュールとしては、下記の3つのものが挙げられる。
(α)表面材の表面に薄膜系太陽電池素子が形成された、1層の薄膜系太陽電池素子を有する太陽電池モジュール(第1の実施形態)。
(β)裏面材の表面に薄膜系太陽電池素子が形成された、1層の薄膜系太陽電池素子を有する太陽電池モジュール(第2の実施形態)。
(γ)表面材および裏面材の表面に薄膜系太陽電池素子が形成された、2層の薄膜系太陽電池素子を有する太陽電池モジュール(第3の実施形態)。
【0019】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明における太陽電池モジュールの第1の実施形態の一例を示す断面図である。
太陽電池モジュール1は、所定の間隔で対向し、それぞれが対向面の周縁に枠状の周縁封止領域を有するガラス基板からなる、一対の表面材10および裏面材12と;裏面材12の周縁封止領域に一体に形成された枠状の段部14と;裏面材12の周縁封止領域の段部14と表面材10の周縁封止領域とを封着する枠状の封着部32と;表面材10および裏面材12に挟まれ、かつ封着部32と間隔を開けて封着部32よりも外側の周縁封止領域に形成された枠状の樹脂シール部36と;表面材10および裏面材12に挟まれ、封着部32と間隔を開けて封着部32よりも内側に、かつ周縁封止領域よりも内側に形成された、表面材10および裏面材12の表面に沿って広がる層状部22および層状部22の周縁を囲む堰状部24からなる、段部14によって周囲を囲まれた樹脂層20と;表面材10の周縁封止領域よりも内側の表面に、かつ樹脂層20の周縁よりも内側に形成された薄膜系太陽電池素子30と;薄膜系太陽電池素子30に接続し、表面材10と樹脂層20との界面、封着部32および樹脂シール部36を通って外部に延びる配線(図示略)とを有する。
【0020】
(表面材)
表面材10は、太陽光を透過するガラス基板である。ガラス基板の材料としては、ソーダライムガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。
表面材10の表面には、樹脂層20(堰状部24)との界面接着力を向上させるために、表面処理を施してもよい。表面処理の方法としては、表面材10の表面をシランカップリング剤で処理する方法等が挙げられる。なお、封着部32を形成する部分は、シランカップリング剤で処理しないことが好ましい。
表面材10の厚さは、通常0.5〜6mmである。
【0021】
(裏面材)
裏面材12は、光硬化性樹脂組成物の硬化のための光を透過するガラス基板である。ガラス基板の材料としては、ソーダライムガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。
裏面材12の表面には、樹脂層20との界面接着力を向上させるために、表面処理を施してもよい。表面処理の方法としては、裏面材12の表面をシランカップリング剤で処理する方法等が挙げられる。なお、封着部32を形成する部分は、シランカップリング剤で処理しないことが好ましい。
裏面材12の厚さは、段部14(周縁封止領域)よりも内側の表面(凹部)において通常0.5〜6mmである。
【0022】
(周縁封止領域)
周縁封止領域は、封着部32および樹脂シール部36が形成され、かつ薄膜系太陽電池素子30が形成されない、表面材10および裏面材12のそれぞれの対向面の周縁に枠状に設けられる領域である。図示例では、段部14およびこれに対向するガラス基板の表面が周縁封止領域とされているが、段部14以外に樹脂シール部36が形成される場合は、樹脂シール部36が形成される部分も周縁封止領域に含める。
【0023】
樹脂層20と封着部32との間の空間、および封着部32と樹脂シール部36との間の空間は、後述する工程(h)にて封着材料部を溶融し、固化させて、封着部32を形成する時点では40000Pa以下の減圧雰囲気である。減圧雰囲気の圧力が40000Pa以下であれば、後述する作用効果によって薄膜系太陽電池素子30の耐久性が向上する。後述する工程(f)にて第1のガラス基板、第2のガラス基板および堰状部によって層状部形成用硬化性樹脂組成物が密封された積層物を得る時点では、減圧雰囲気の圧力は、40Pa以下が好ましい。減圧雰囲気の圧力は、減圧雰囲気を提供するために時間がかかることがあるため、8Pa以上が好ましく、10Pa以上がより好ましい。
【0024】
(段部)
段部14は、所定の間隔(樹脂層20の厚さ)で離間して対向する表面材10と裏面材12とを、封着部32を構成する封着材料の溶融、固化によって確実に封着するために、表面材10と裏面材12との間隔をそれぞれの周縁封止領域にて狭めるためのものである。よって、段部14は、図1のように裏面材12の周縁封止領域に形成されるものに限定されず、図2に示すように、表面材10の周縁封止領域に形成されてもよく、図3に示すように、表面材10および裏面材12の周縁封止領域に形成されてもよい。
【0025】
段部14は、ガラス基板の周縁封止領域よりも内側の表面に凹部を形成することによって形成されるものであってもよく、ガラス基板の周縁封止領域にガラスリボンを溶着したものであってもよい。ガラス基板の四隅において継ぎ目のない、連続した段部14を形成できる点から、ガラス基板の周縁封止領域よりも内側の表面に凹部を形成することによって形成される段部が好ましい。
段部14の高さ(凹部の深さ)は、樹脂層20および封着部32の厚さに応じて、適宜決定される。
【0026】
(封着部)
封着部32は、後述する封着材料を溶融し、固化させたものである。
封着部32の厚さは、用いる封着材料に応じて、封着不良が発生しない程度の厚さとなるように適宜決定すればよく、特に限定はされない。
【0027】
(樹脂シール部)
樹脂シール部36は、後述のシール部材(樹脂シール部形成用硬化性樹脂組成物等)からなるものである。
樹脂シール部36を設けることによって、樹脂層20と封着部32との間の空間、および封着部32と樹脂シール部36との間の空間を、後述する工程(h)にて封着材料部を溶融し、固化させて、封着部を形成する時点において40000Pa以下の減圧雰囲気に維持できる。
第1のガラス基板と第2のガラス基板を重ねる前の樹脂シール部36の厚さは、封着部32よりわずかに厚くすることが望ましい。
【0028】
(樹脂層)
樹脂層20の層状部22は、後述の層状部形成用硬化性樹脂組成物を硬化してなる層である。
樹脂層20の堰状部24は、後述のシール部材(堰状部形成用硬化性樹脂組成物、両面接着テープ等)からなるものである。
【0029】
樹脂層20は、図示例のように層状部22および堰状部24からなるものであってもよく、層状部22のみからなるものであってもよい。後述する製造方法による製造のしやすさ、堰状部24による層状部22の形状保持、堰状部24による封止効果の向上等の点から、樹脂層20は、層状部22および堰状部24からなるものが好ましい。
【0030】
樹脂層20の厚さは、目的に応じて必要な厚さとすることができ、0.01〜2mmが好ましく、0.3〜0.8mmがより好ましい。一方、従来の太陽電池モジュールの製造方法においては、封止材フィルム(PVB、EVA等)が用いられているが、液状の硬化性樹脂組成物を用いて封止を行う本発明の製造方法と比較して面内での空隙残りの問題を発生しやすい。また、樹脂層を薄くし軽量化することも困難である。
【0031】
樹脂層20の厚さを調整する方法としては、堰状部24の厚さを調整する方法、または堰状部24とは別に厚さ調整用の部材を表面材10と裏面材12との間に設ける方法が挙げられる。たとえば、堰状部24として両面接着テープを用いる場合、目的に適合する厚さの両面接着テープを用いて樹脂層の厚さを決めることができる。厚さが圧縮力で変化しやすい材料(弾性体、未硬化の硬化性樹脂組成物等)を用いる場合、堰状部24に所定の粒子径のスペーサ粒子を配置しておいてもよい。
【0032】
(薄膜系太陽電池素子)
薄膜系太陽電池素子30および薄膜系太陽電池素子30から電力を取り出す配線の端子盤は、表面材10の周縁の周縁封止領域よりも内側の表面に形成される。
薄膜系太陽電池素子30の周囲には、樹脂層20の堰状部24が位置し、配線の表面の一部または端子盤の表面の一部と重なる。
【0033】
薄膜系太陽電池素子30は、表面材10の表面側から順に、透明電極層、光電変換層、裏面電極層を有する。
透明電極層の材料としては、酸化インジウム錫、酸化錫等が挙げられる。
光電変換層は、薄膜半導体からなる層である。薄膜半導体としては、アモルファスシリコン系半導体、微結晶シリコン系半導体、化合物半導体(カルコパイライト系半導体、CdTe系半導体等)、有機系半導体等が挙げられる。
裏面電極層の材料としては、光透過性を有さない材料(銀、アルミニウム等)、光透過性を有する材料(酸化インジウム錫、酸化錫、酸化亜鉛等)が挙げられる。
薄膜系太陽電池素子としては、光電変換層を透明電極層の上に形成して表面材からの入射光で発電させる場合は、薄膜半導体がアモルファスシリコン系半導体である薄膜シリコン太陽電池素子が好ましい。
【0034】
(形状)
太陽電池モジュール1の形状は、通常矩形である。
太陽電池モジュール1の大きさは、0.1m×0.1mでも製造可能であるが、生産性や設置時の発電効率を考慮すると、0.5m×0.5m以上が好ましい。太陽電池モジュール1の大きさの上限は、減圧装置等の製造装置の大きさの制約で決まることが多い。また、あまりに大きい太陽電池モジュールは、設置等における取り扱いが困難となりやすい。太陽電池モジュール1の大きさの上限は、これらの制約から、通常3m×3m程度である。
表面材10および裏面材12の形状や大きさは、太陽電池モジュール1の形状や大きさにほぼ等しく、表面材10および裏面材12の形状や大きさは、多少異なっていてもよい。
【0035】
〔第2の実施形態〕
図4は、本発明における太陽電池モジュールの第2の実施形態の一例を示す断面図である。
太陽電池モジュール2は、所定の間隔で対向し、それぞれが対向面の周縁に枠状の周縁封止領域を有するガラス基板からなる、一対の表面材10および裏面材12と;裏面材12の周縁封止領域に一体に形成された枠状の段部14と;裏面材12の周縁封止領域の段部14と表面材10の周縁封止領域とを封着する枠状の封着部32と;表面材10および裏面材12に挟まれ、かつ封着部32と間隔を開けて封着部32よりも外側の周縁封止領域に形成された枠状の樹脂シール部36と;表面材10および裏面材12に挟まれ、封着部32と間隔を開けて封着部32よりも内側に、かつ周縁封止領域よりも内側に形成された、表面材10および裏面材12の表面に沿って広がる層状部22および層状部22の周縁を囲む堰状部24からなる、段部14によって周囲を囲まれた樹脂層20と;裏面材12の周縁封止領域よりも内側の表面に、かつ樹脂層20の周縁よりも内側に形成された薄膜系太陽電池素子30と;薄膜系太陽電池素子30に接続し、裏面材12と樹脂層20との界面、封着部32および樹脂シール部36を通って外部に延びる配線(図示略)とを有する。
第2の実施形態において、第1の実施形態と同じ構成については説明を省略する。
【0036】
(薄膜系太陽電池素子)
薄膜系太陽電池素子30および薄膜系太陽電池素子30から電力を取り出す配線の端子盤は、裏面材12の周縁の周縁封止領域よりも内側の表面に形成される。
薄膜系太陽電池素子30の周囲には、樹脂層20の堰状部24が形成され、配線の表面の一部または端子盤の表面の一部と重なる。
【0037】
薄膜系太陽電池素子30は、裏面材12の表面側から順に、裏面電極層、光電変換層、透明電極層を有する。必要に応じて光電変換層と透明電極層との間にバッファ層を設けてもよい。透明電極層からの入射光を利用する点から、光電変換層としては、カルコパイライト系半導体、CdTe系半導体等の化合物半導体が好ましい。カルコパイライト系半導体が、CuInGaSeの場合には、バッファ層として硫化カドミウムや酸化亜鉛を用いることができる。
【0038】
〔第3の実施形態〕
図5は、本発明における太陽電池モジュールの第3の実施形態の一例を示す断面図である。
太陽電池モジュール3は、所定の間隔で対向し、それぞれが対向面の周縁に枠状の周縁封止領域を有するガラス基板からなる、一対の表面材10および裏面材12と;裏面材12の周縁封止領域に一体に形成された枠状の段部14と;裏面材12の周縁封止領域の段部14と表面材10の周縁封止領域とを封着する枠状の封着部32と;表面材10および裏面材12に挟まれ、かつ封着部32と間隔を開けて封着部32よりも外側の周縁封止領域に形成された枠状の樹脂シール部36と;表面材10および裏面材12に挟まれ、封着部32と間隔を開けて封着部32よりも内側に、かつ周縁封止領域よりも内側に形成された、表面材10および裏面材12の表面に沿って広がる層状部22および層状部22の周縁を囲む堰状部24からなる、段部14によって周囲を囲まれた樹脂層20と;表面材10および裏面材12の周縁封止領域よりも内側の表面に、かつ樹脂層20の周縁よりも内側にそれぞれ形成された2つの薄膜系太陽電池素子30と;薄膜系太陽電池素子30に接続し、表面材10または裏面材12と樹脂層20との界面、封着部32および樹脂シール部36を通って外部に延びる配線(図示略)とを有する。
第3の実施形態において、第1の実施形態および第2の実施形態と同じ構成については説明を省略する。
【0039】
(薄膜系太陽電池素子)
表面材10側の薄膜系太陽電池素子30は、表面材10の表面側から順に、透明電極層、光電変換層、裏面電極層を有する。
裏面電極層の材料としては、裏面材12側の薄膜系太陽電池素子30まで少なくとも一部の太陽光を透過させるために、光透過性を有する材料(酸化インジウム錫、酸化錫等)を用いる必要がある。この場合、光電変換層としては、アモルファスシリコン系半導体が好ましい。
【0040】
裏面材12側の薄膜系太陽電池素子30は、裏面材12の表面側から順に、裏面電極層、光電変換層、透明電極層を有する。透明電極層からの入射光を利用する点から、光電変換層としては、カルコパイライト系半導体、CdTe系半導体等の化合物半導体が好ましい。
裏面電極層の材料としては、裏面材12側から光硬化性樹脂組成物の硬化のための光を透過させる場合は、光透過性を有する材料(酸化インジウム錫、酸化錫等)を用いる必要がある。
【0041】
なお、表面材10および裏面材12からの入射光を発電に利用する場合は、表面材10側の薄膜系太陽電池素子30と裏面材12側の薄膜系太陽電池素子30とを同じものとしてもよい。この場合、表面材10側の裏面電極層の材料は必ずしも光透過性を有する材料を用いる必要はない。
【0042】
〔第4の実施形態〕
第1〜3の実施形態は、樹脂層20が周縁封止領域よりも内側に形成された例であるが、本発明の太陽電池モジュールは、樹脂層20が周縁封止領域よりも内側に形成されたものに限定はされない。たとえば、図6に示すように、樹脂層20の堰状部24が周縁封止領域(段部14)に形成され、層状部22が堰状部24の内側に形成されたものであってもよい。
【0043】
図6は、本発明における太陽電池モジュールの第4の実施形態の一例を示す断面図である。
太陽電池モジュール4は、所定の間隔で対向し、それぞれが対向面の周縁に枠状の周縁封止領域を有するガラス基板からなる、一対の表面材10および裏面材12と;裏面材12の周縁封止領域に一体に形成された枠状の段部14と;裏面材12の周縁封止領域の段部14と表面材10の周縁封止領域とを封着する枠状の封着部32と;表面材10および裏面材12に挟まれ、かつ封着部32と間隔を開けて封着部32よりも外側の周縁封止領域に形成された枠状の樹脂シール部36と;表面材10および裏面材12に挟まれ、かつ周縁封止領域よりも内側に形成された、表面材10および裏面材12の表面に沿って広がる層状部22、および表面材10および裏面材12に挟まれ、かつ封着部32と間隔を開けて封着部32よりも内側の周縁封止領域に形成された、層状部22の周縁を囲む堰状部24からなる、樹脂層20と;表面材10の周縁封止領域よりも内側の表面に、かつ樹脂層20の周縁よりも内側に形成された薄膜系太陽電池素子30と;薄膜系太陽電池素子30に接続し、表面材10と樹脂層20との界面、封着部32および樹脂シール部36を通って外部に延びる配線(図示略)とを有する。
【0044】
〔第5の実施形態〕
第1〜4の実施形態においては、薄膜系太陽電池素子30から外部に延びる配線(図示略)は、表面材10と樹脂層20との界面、封着部32および樹脂シール部36を通っていたが、たとえば、図7に示すように、薄膜系太陽電池素子30から外部に延びる配線31は、裏面材12に穿設された貫通孔13を通すようにしてもよい。
【0045】
図7は、本発明における太陽電池モジュールの第5の実施形態の一例を示す断面図である。
太陽電池モジュール5は、所定の間隔で対向し、それぞれが対向面の周縁に枠状の周縁封止領域を有するガラス基板からなる、一対の表面材10および裏面材12と;裏面材12の周縁封止領域に一体に形成された枠状の段部14と;裏面材12の周縁封止領域の段部14と表面材10の周縁封止領域とを封着する枠状の封着部32と;表面材10および裏面材12に挟まれ、かつ封着部32と間隔を開けて封着部32よりも外側の周縁封止領域に形成された枠状の樹脂シール部36と;表面材10および裏面材12に挟まれ、封着部32と間隔を開けて封着部32よりも内側に、かつ周縁封止領域よりも内側に形成された、表面材10および裏面材12の表面に沿って広がる層状部22、ならびに層状部22の周縁および裏面材12の貫通孔13の周囲を囲む堰状部24からなる、段部14によって周囲を囲まれた樹脂層20と;表面材10の周縁封止領域よりも内側の表面に、かつ樹脂層20の周縁よりも内側に形成された薄膜系太陽電池素子30と;薄膜系太陽電池素子30に接続し、堰状部24で囲まれた空間および裏面材12の貫通孔13を通って外部に延びる配線31とを有する。
【0046】
〔第6の実施形態〕
第1〜5の実施形態においては、表面材10および裏面材12のうちの少なくとも一方が、周縁封止領域に形成された、ガラスからなる段部を有していたが、たとえば、図8に示すように、表面材10および裏面材12の両方が、段部を有さなくてもよい。
【0047】
図8は、本発明における太陽電池モジュールの第6の実施形態の一例を示す断面図である。
太陽電池モジュール6は、所定の間隔で対向し、それぞれが対向面の周縁に枠状の周縁封止領域を有するガラス基板からなる、一対の表面材10および裏面材12と;裏面材12の周縁封止領域と表面材10の周縁封止領域とを封着する枠状の封着部32と;表面材10および裏面材12に挟まれ、かつ封着部32と間隔を開けて封着部32よりも外側の周縁封止領域に形成された枠状の樹脂シール部36と;表面材10および裏面材12に挟まれ、封着部32と間隔を開けて封着部32よりも内側に、かつ周縁封止領域よりも内側に形成された、表面材10および裏面材12の表面に沿って広がる層状部22および層状部22の周縁を囲む堰状部24からなる、封着部32によって周囲を囲まれた樹脂層20と;表面材10の周縁封止領域よりも内側の表面に、かつ樹脂層20の周縁よりも内側に形成された薄膜系太陽電池素子30と;薄膜系太陽電池素子30に接続し、表面材10と樹脂層20との界面、封着部32および樹脂シール部36を通って外部に延びる配線(図示略)とを有する。
【0048】
〔作用効果〕
以上説明した太陽電池モジュール1〜6にあっては、周縁封止領域よりも内側にて樹脂層20によって薄膜系太陽電池素子30が直接封止されることに加え、周縁封止領域(段部14)にて封着部32および樹脂シール部36によって2重に封止されることによって側面が確実に封止されているため、合計3重の封止によって信頼性の高い封止を実現できる。
また、樹脂層20と封着部32との間の空間、および封着部32と樹脂シール部36との間の空間が40000Pa以下の減圧雰囲気とされているため、該空間に残存する水分、腐食性ガスがほとんどなくなり、表面材10または裏面材12と樹脂層20との界面から水分、腐食性ガスが侵入するおそれがほとんどなくなり、薄膜系太陽電池素子30の耐久性が向上する。
【0049】
<太陽電池モジュールの製造方法>
本発明の太陽電池モジュールの製造方法は、下記の工程(a)〜(h)を有する方法である。
(a)第1のガラス基板および第2のガラス基板のうちの少なくとも一方のガラス基板の周縁封止領域に封着材料からなる封着材料部を形成する工程。
(b)第1のガラス基板および第2のガラス基板のうちの少なくとも一方のガラス基板の周縁封止領域よりも内側の表面に薄膜系太陽電池素子を形成する工程。
(c)第1のガラス基板の、周縁封止領域の内周縁またはその近傍の表面に、堰状部を形成する工程。
(d)第1のガラス基板の周縁封止領域に、樹脂シール部を形成する工程。
(e)堰状部で囲まれた領域に、液状の層状部形成用硬化性樹脂組成物を供給する工程。
(f)100Pa以下の減圧雰囲気下にて、層状部形成用硬化性樹脂組成物の上に、対向面が層状部形成用硬化性樹脂組成物に接するように第2のガラス基板を重ねて、第1のガラス基板、第2のガラス基板および堰状部によって層状部形成用硬化性樹脂組成物が密封された積層物を得る工程。
(g)50kPa以上の圧力雰囲気下に積層物を置いた状態にて、層状部層状部形成用硬化性樹脂組成物からなる未硬化の層状部を硬化させて、層状部および堰状部からなる樹脂層を形成する工程。
(h)封着材料部を溶融し、固化させて、封着部を形成する工程。
【0050】
本発明の製造方法は、減圧雰囲気下で第1のガラス基板と第2のガラス基板との間に液状の硬化性樹脂組成物を封じ込め、大気圧雰囲気下等の高い圧力雰囲気下で封じ込められている硬化性樹脂組成物を硬化させて樹脂層を形成する方法である。減圧下における硬化性樹脂組成物の封じ込めは、第1のガラス基板と第2のガラス基板との間隙の狭く広い空間に硬化性樹脂を注入する方法ではなく、第1のガラス基板のほぼ全面に硬化性樹脂組成物を供給し、その後、第2のガラス基板を重ねて第1のガラス基板と第2のガラス基板との間に硬化性樹脂組成物を封じ込める方法である。
【0051】
減圧下における液状の硬化性樹脂組成物の封じ込め、および大気圧雰囲気下における硬化性樹脂組成物の硬化による透明積層体の製造方法の一例は公知である。たとえば、国際公開第2008/81838号パンフレット、国際公開第2009/16943号パンフレットに透明積層体の製造方法および該製造方法に用いられる硬化性樹脂組成物が記載されており、本明細書中に組み入れられる。
【0052】
(工程(a))
第1のガラス基板および第2のガラス基板のうちの少なくとも一方のガラス基板の周縁封止領域に封着材料からなる封着材料部を形成する。封着材料部は、封着材料部同士の位置合わせが不要である点から、第1のガラス基板および第2のガラス基板のいずれか一方に形成することが好ましい。また、封着材料部を形成する側のガラス基板の周縁封止領域に段部がある場合は、段部の表面に封着材料部を形成する。
【0053】
封着材料としては、レーザを照射することによって封着する封着材料、誘電加熱によって封着する封着材料等が挙げられる。ガラス基板同士を封着するための封着材料は、公知である。たとえば、国際公開第2010/55888号パンフレットにガラスフリット(粉末ガラス)およびレーザ吸収材を含む封着材料が記載されており、本明細書中に組み入れられる。
【0054】
レーザを照射することによって封着する封着材料としては、具体的には、ガラスフリットおよびレーザ吸収材、必要に応じて低膨張充填材を含むものが挙げられる。
ガラスフリットとしては、錫−リン酸系ガラス、ビスマス系ガラス、バナジウム系ガラス、鉛系ガラス等の低融点ガラスが挙げられ、封着性、信頼性、環境性等の点から、錫−リン酸系ガラスまたはビスマス系ガラスが好ましい。
レーザ吸収材としては、金属(鉄、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅等)、該金属の酸化物等を含むものが挙げられる。
低膨張充填材としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、コージェライト、リン酸ジルコニウム系化合物、ソーダライムガラス、硼珪酸ガラス等が挙げられる。
【0055】
封着材料部は、封着材料およびビヒクル、必要に応じて添加剤を含む封着材料ペーストをガラス基板の周縁封止領域に塗布し、乾燥し、焼成することによって形成される。
ビヒクルとしては、セルロース系バインダ(メチルセルロース、エチルセルロース等)を溶媒(ターピネオール、ブチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート等)に溶解したもの、アクリレート系バインダ(メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等)を溶媒(メチルエチルケトン、ターピネオール、ブチルカルビトールアセテート等)に溶解したものが挙げられる。
塗布方法としては、公知の塗布方法(スクリーン印刷、グラビア印刷、ディスペンス等)が挙げられる。
【0056】
乾燥は、溶媒を除去するために行う。乾燥温度は、たとえば、120℃以上であり、乾燥時間は、たとえば、5分以上である。
焼成は、バインダを除去し、かつ封着材料をガラス基板に焼き付けるために行う。焼成温度は、錫−リン酸系ガラスの場合、400〜500℃が好ましく、ビスマス系ガラスの場合、420〜520℃が好ましい。焼成時間は、5〜60分が好ましい。
【0057】
(工程(b))
第1のガラス基板および第2のガラス基板のうちの少なくとも一方のガラス基板の周縁封止領域よりも内側の表面に薄膜系太陽電池素子を形成する。工程(b)は、工程(a)の前に行ってもよく、工程(a)の後に行ってもよい。ただし、工程(a)の焼成の際に薄膜系太陽電池素子が存在すると薄膜系太陽電池素子が熱でダメージを受けてしまうため、封着材料部および薄膜系太陽電池素子を同じガラス基板の表面に形成する場合、工程(b)は、工程(a)の後に行う。なおかつ、封着材料部に太陽電池素子が形成されないようにマスクする必要がある。
【0058】
表面材側に薄膜系太陽電池素子を形成する場合、表面側から順に、透明電極層、光電変換層、裏面電極層を、公知の方法によって成膜するたびに公知の方法で所望の形状にパターニングすることによって薄膜系太陽電池素子を形成する。
裏面材側に薄膜系太陽電池素子を形成する場合、裏面側から順に、透明電極層、光電変換層、裏面電極層を、公知の方法によって成膜するたびに公知の方法で所望の形状にパターニングすることによって薄膜系太陽電池素子を形成する。
【0059】
(工程(c))
第1のガラス基板の、周縁封止領域の内周縁またはその近傍の表面に、堰状部を形成する。工程(c)において、第1のガラス基板として裏面材を用いるか表面材を用いるかは任意である。工程(c)は、工程(a)または工程(b)の前に行ってもよく、工程(a)または工程(b)の後に行ってもよい。ただし、工程(a)の焼成の際に堰状部が存在すると堰状部が熱でダメージを受けてしまうため、封着材料部および堰状部を同じガラス基板の表面に形成する場合、工程(c)は、工程(a)よりも後に行う。
【0060】
堰状部には、後述の工程(f)において、堰状部と第1のガラス基板との界面、および堰状部と第2のガラス基板との界面から液状の層状部形成用硬化性樹脂組成物が漏れ出さない程度以上の界面接着力、および形状を維持できる程度の固さが必要とされる。よって、堰状部としては、表面に接着性または粘着性を有するシール部材が好ましい。該シール部材としては、下記のものが挙げられる。
・第1のガラス基板の周縁封止領域よりも内側の表面の周縁に堰状部形成用硬化性樹脂組成物を印刷、ディスペンス等で塗布して形成されたもの。
・粘着剤層または接着剤層を表面に有するテープ状または棒状の長尺体(両面接着テープ等)。
【0061】
堰状部形成用硬化性樹脂組成物から形成される堰状部は、未硬化の状態であってもよく、部分的に硬化させた半硬化の状態であってもよい。堰状部の部分硬化は、堰状部形成用硬化性樹脂組成物が光硬化性組成物である場合、光の照射によって行う。たとえば、光源(紫外線ランプ、高圧水銀灯、UV−LED等)から紫外線または短波長の可視光を照射して、光硬化性樹脂組成物を部分硬化させる。
【0062】
堰状部形成用硬化性樹脂組成物の粘度は、1000〜3000Pa・sが好ましく、1200〜2000Pa・sがさらに好ましい。粘度が1000Pa・s以上であれば、未硬化の堰状部の形状を比較的長時間維持でき、未硬化の堰状部の高さを充分に維持できる。粘度が3000Pa・s以下であれば、未硬化の堰状部を塗布によって形成できる。
堰状部形成用硬化性樹脂組成物の粘度は、25℃においてE型粘度計を用いて測定する。
【0063】
堰状部形成用硬化性樹脂組成物は、光硬化性樹脂組成物であってもよく、熱硬化性樹脂組成物であってもよい。堰状部形成用硬化性樹脂組成物としては、低温で硬化でき、かつ硬化速度が速い点から、硬化性化合物および光重合開始剤(C)を含む光硬化性樹脂組成物が好ましい。
【0064】
堰状部形成用光硬化性樹脂組成物としては、粘度を前記範囲に調整しやすい点から、前記硬化性化合物として、硬化性基を有し、かつ数平均分子量が30000〜100000であるオリゴマー(A)の1種以上と、硬化性基を有し、かつ分子量が125〜600であるモノマー(B)の1種以上とを含み、モノマー(B)の割合が、オリゴマー(A)とモノマー(B)との合計(100質量%)のうち、15〜50質量%であるものが好ましい。
【0065】
オリゴマー(A)の数平均分子量は、30000〜100000であり、40000〜80000が好ましく、50000〜65000がより好ましい。オリゴマー(A)の数平均分子量が該範囲であれば、堰状部形成用光硬化性樹脂組成物の粘度を前記範囲に調整しやすい。
オリゴマー(A)の数平均分子量は、GPC測定によって得られた、ポリスチレン換算の数平均分子量である。なお、GPC測定において、未反応の低分子量成分(モノマー等)のピークが現れる場合は、該ピークを除外して数平均分子量を求める。
【0066】
オリゴマー(A)の硬化性基としては、付加重合性の不飽和基(アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等)、不飽和基とチオール基との組み合わせ等が挙げられ、硬化速度が速い点および透明性の高い堰状部が得られる点から、アクリロイルオキシ基およびメタクリロイルオキシ基から選ばれる基が好ましい。また、比較的高分子量のオリゴマー(A)における硬化性基は、比較的低分子量のモノマー(B)における硬化性基よりも反応性が低くなりやすいため、モノマー(B)の硬化が先に進んで急激に組成物全体の粘性が高まり硬化反応が不均質となるおそれがある。両者の硬化性基の反応性の差を小さくし、均質な堰状部を得るために、オリゴマー(A)の硬化性基を比較的反応性の高いアクリロイルオキシ基とし、モノマー(B)の硬化性基を比較的反応性の低いメタクリロイルオキシ基とすることがより好ましい。
【0067】
オリゴマー(A)としては、堰状部形成用光硬化性樹脂組成物の硬化性、堰状部の機械的特性の点から、硬化性基を1分子あたり平均1.8〜4個有するものが好ましい。
オリゴマー(A)としては、ウレタン結合を有するウレタンオリゴマー、ポリオキシアルキレンポリオールのポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリオールのポリ(メタ)アクリレート等が挙げられ、ウレタン鎖の分子設計等によって硬化後の樹脂の機械的特性、ガラス基板との密着性等を幅広く調整できる点から、ウレタンオリゴマー(A1)が好ましい。
【0068】
数平均分子量が30000〜100000のウレタンオリゴマー(A1)は、高粘度となるため、通常の方法では合成が難しく、合成できたとしてもモノマー(B)との混合が難しい。よって、本発明においては、ウレタンオリゴマー(A1)を下記の合成方法で合成した後、得られた生成物をそのまま堰状部形成用光硬化性樹脂組成物として用いる、または得られた生成物をさらに後述するモノマー(B)(モノマー(B1)、モノマー(B3)等)で希釈して堰状部形成用光硬化性樹脂組成物として用いることが好ましい。
【0069】
ウレタンオリゴマー(A1)の合成方法:
希釈剤として、後述するモノマー(B)の1種であるイソシアネート基と反応する基を有さないモノマー(B1)の存在下、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させてイソシアネート基を有するプレポリマーを得た後、該プレポリマーのイソシアネート基に、イソシアネート基と反応する基および硬化性基を有するモノマー(B2)を反応させる方法。
【0070】
ポリオール、ポリイソシアネートとしては、公知の化合物、たとえば、国際公開第2009/016943号パンフレットに記載のウレタン系オリゴマー(a)の原料として記載された、ポリオール(i)、ジイソシアネート(ii)等が挙げられ、本明細書に組み入れられる。
【0071】
イソシアネート基と反応する基を有さないモノマー(B1)としては、炭素数8〜22のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−オクタデシル(メタ)アクリレート、n−ベヘニル(メタ)アクリレート等)、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート(イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等)が挙げられる。
【0072】
イソシアネート基と反応する基および硬化性基を有するモノマー(B2)としては、活性水素(水酸基基、アミノ基等)および硬化性基を有するモノマーが挙げられ、具体的には、炭素数2〜6のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等)等が挙げられ、炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキルアクリレートが好ましい。
【0073】
モノマー(B)の分子量は、125〜600であり、140〜400が好ましく、150〜350がより好ましい。モノマー(B)の分子量が125以上であれば、後述する減圧雰囲気下におけるモノマー(B)の揮発が抑えられる。モノマー(B)の分子量が600以下であれば、高分子量のオリゴマー(A)に対するモノマー(B)の溶解性を高めることができ、堰状部形成用光硬化性樹脂組成物としての粘度調整を好適に行うことができる。
【0074】
モノマー(B)の硬化性基としては、付加重合性の不飽和基(アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等)、不飽和基とチオール基との組み合わせ等が挙げられ、硬化速度が速い点および透明性の高い堰状部が得られる点から、アクリロイルオキシ基およびメタクリロイルオキシ基から選ばれる基が好ましい。また、比較的低分子量のモノマー(B)における硬化性基は、比較的高分子量のオリゴマー(A)における硬化性基よりも反応性が高くなりやすいため、モノマー(B)の硬化が先に進んで急激に組成物全体の粘性が高まり硬化反応が不均質となるおそれがある。均質な堰状部を得るために、モノマー(B)の硬化性基を比較的反応性の低いメタクリロイルオキシ基とし、オリゴマー(A)の硬化性基を比較的反応性の高いアクリロイルオキシ基とすることがより好ましい。
モノマー(B)としては、堰状部形成用光硬化性樹脂組成物の硬化性、堰状部の機械的特性の点から、硬化性基を1分子あたり1〜3個有するものが好ましい。
【0075】
堰状部形成用光硬化性樹脂組成物は、モノマー(B)として、上述したウレタンオリゴマー(A1)の合成方法において希釈剤として用いたモノマー(B1)を含んでいてもよい。また、モノマー(B)として、上述したウレタンオリゴマー(A1)の合成方法に用いた未反応のモノマー(B2)を含んでいてもよい。
【0076】
モノマー(B)は、ガラス基板と堰状部との密着性や後述する各種添加剤の溶解性の点から、水酸基を有するモノマー(B3)を含むことが好ましい。
水酸基を有するモノマー(B3)としては、水酸基数1〜2、炭素数3〜8のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシメタアクリレート(2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート等)が好ましく、2−ヒドロキシブチルメタクリレートが特に好ましい。
【0077】
モノマー(B)の割合は、オリゴマー(A)とモノマー(B)との合計(100質量%)のうち、15〜50質量%であり、20〜45質量%が好ましく、25〜40質量%がより好ましい。モノマー(B)の割合が15質量%以上であれば、堰状部形成用光硬化性樹脂組成物の硬化性、ガラス基板と堰状部との密着性が良好となる。モノマー(B)の割合が50質量%以下であれば、堰状部形成用光硬化性樹脂組成物の粘度を1000Pa・s以上に調整しやすい。
【0078】
光重合開始剤(C)としては、アセトフェノン系、ケタール系、ベンゾインまたはベンゾインエーテル系、フォスフィンオキサイド系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、キノン系等の光重合開始剤が挙げられる。吸収波長域の異なる2種以上の光重合開始剤(C)を併用することによって、硬化時間をさらに速めたり、堰状部における表面硬化性を高めたりすることができる。
光重合開始剤(C)の量は、オリゴマー(A)とモノマー(B)との合計100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜2.5質量部がより好ましい。
【0079】
堰状部形成用光硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、重合禁止剤、光硬化促進剤、連鎖移動剤、光安定剤(紫外線吸収剤、ラジカル捕獲剤等)、酸化防止剤、難燃化剤、接着性向上剤(シランカップリング剤等)、顔料、染料等の他の添加剤を含んでいてもよく、重合禁止剤、光安定剤を含むことが好ましい。重合禁止剤を重合開始剤より少ない量含むことによって、堰状部形成用光硬化性樹脂組成物の安定性を改善でき、硬化後の層状部の分子量も調整できる。
【0080】
重合禁止剤としては、ハイドロキノン系(2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン等)、カテコール系(p−t−ブチルカテコール等)、アンスラキノン系、フェノチアジン系、ヒドロキシトルエン系等の重合禁止剤が挙げられる。
光安定剤としては、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチレート系等)、ラジカル捕獲剤(ヒンダードアミン系)等が挙げられる。
酸化防止剤としては、リン系、イオウ系の化合物が挙げられる。
他の添加剤の合計量は、オリゴマー(A)とモノマー(B)との合計100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
第1のガラス基板と第2のガラス基板との間隔を保持するために、所定の粒子径のスペーサ粒子を堰状部形成用硬化性樹脂組成物に配合してもよい。
【0081】
(工程(d))
第1のガラス基板の周縁封止領域に、樹脂シール部を形成する。工程(d)は、工程(a)、工程(b)、工程(c)または工程(e)の前に行ってもよく、工程(a)、工程(b)、工程(c)または工程(e)の後に行ってもよい。ただし、工程(a)の焼成の際に樹脂シール部が存在すると樹脂シール部が熱でダメージを受けてしまうため、封着材料部および樹脂シール部を同じガラス基板の表面に形成する場合、工程(d)は、工程(a)よりも後に行う。
【0082】
樹脂シール部には、後述の工程(f)において、樹脂シール部と第1のガラス基板との界面、および樹脂シール部と第2のガラス基板との界面を気密に保持するための界面接着力および固さが必要とされる。よって、樹脂シール部としては、表面に接着性または粘着性を有するシール部材が好ましい。該シール部材としては、第1のガラス基板の周縁封止領域に樹脂シール部形成用硬化性樹脂組成物を印刷、ディスペンス等で塗布して形成されたもの等が挙げられる。
【0083】
樹脂シール部形成用硬化性樹脂組成物から形成される樹脂シール部は、未硬化の状態であってもよく、部分的に硬化させた半硬化の状態であってもよい。樹脂シール部の部分硬化は、樹脂シール部形成用硬化性樹脂組成物が光硬化性組成物である場合、光の照射によって行う。たとえば、光源(紫外線ランプ、高圧水銀灯、UV−LED等)から紫外線または短波長の可視光を照射して、光硬化性樹脂組成物を部分硬化させる。
【0084】
樹脂シール部形成用硬化性樹脂組成物としては、上述した堰状部形成用硬化性樹脂組成物と同様のものを用いればよい。
【0085】
(工程(e))
工程(c)の後、堰状部で囲まれた領域に液状の層状部形成用硬化性樹脂組成物を供給する。
層状部形成用硬化性樹脂組成物の供給量は、堰状部、第1のガラス基板および第2のガラス基板によって形成される空間が層状部形成用硬化性樹脂組成物によって充填され、かつ第1のガラス基板と第2のガラス基板との間を所定の間隔とする(すなわち層状部を所定の厚さとする)だけの分量にあらかじめ設定する。この際、層状部形成用硬化性樹脂組成物の硬化収縮による体積減少をあらかじめ考慮することが好ましい。
供給方法としては、第1のガラス基板を平置きにし、ディスペンサ、ダイコータ等の供給手段によって、点状、線状または面状に供給する方法が挙げられる。
【0086】
層状部形成用硬化性樹脂組成物の粘度は、0.05〜50Pa・sが好ましく、1〜20Pa・sがより好ましい。粘度が0.05Pa・s以上であれば、後述するモノマー(B')の割合を抑えることができ、層状部の物性の低下が抑えられる。また、低沸点の成分が少なくなるため、後述する減圧雰囲気下における揮発が抑えられ好適となる。粘度が50Pa・s以下であれば、層状部に空隙が残留しにくい。
層状部形成用硬化性樹脂組成物の粘度は、25℃においてE型粘度計を用いて測定する。
【0087】
層状部形成用硬化性樹脂組成物は、光硬化性樹脂組成物であってもよく、熱硬化性樹脂組成物であってもよい。層状部形成用硬化性樹脂組成物としては、低温で硬化でき、かつ硬化速度が速い点から、硬化性化合物および光重合開始剤(C')を含む光硬化性樹脂組成物が好ましい。
【0088】
層状部形成用光硬化性樹脂組成物としては、粘度を前記範囲に調整しやすい点から、前記硬化性化合物として、硬化性基を有し、かつ数平均分子量が1000〜100000であるオリゴマー(A')の1種以上と、硬化性基を有し、かつ分子量が125〜600であるモノマー(B')の1種以上とを含み、モノマー(B')の割合が、オリゴマー(A')とモノマー(B')との合計(100質量%)のうち、40〜80質量%であるものが好ましい。
【0089】
オリゴマー(A')の数平均分子量は、1000〜100000であり、10000〜70000が好ましい。オリゴマー(A')の数平均分子量が該範囲であれば、層状部形成用光硬化性樹脂組成物の粘度を前記範囲に調整しやすい。
オリゴマー(A')の数平均分子量は、GPC測定によって得られた、ポリスチレン換算の数平均分子量である。なお、GPC測定において、未反応の低分子量成分(モノマー等)のピークが現れる場合は、該ピークを除外して数平均分子量を求める。
【0090】
オリゴマー(A')の硬化性基としては、付加重合性の不飽和基(アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等)、不飽和基とチオール基との組み合わせ等が挙げられ、硬化速度が速い点および透明性の高い層状部が得られる点から、アクリロイルオキシ基およびメタクリロイルオキシ基から選ばれる基が好ましい。また、比較的高分子量のオリゴマー(A')における硬化性基は、比較的低分子量のモノマー(B')における硬化性基よりも反応性が低くなりやすいため、モノマー(B')の硬化が先に進んで急激に組成物全体の粘性が高まり硬化反応が不均質となるおそれがある。均質な層状部を得るために、オリゴマー(A')の硬化性基を比較的反応性の高いアクリロイルオキシ基とし、モノマー(B')の硬化性基を比較的反応性の低いメタクリロイルオキシ基とすることがより好ましい。
【0091】
オリゴマー(A')としては、層状部形成用光硬化性樹脂組成物の硬化性、層状部の機械的特性の点から、硬化性基を1分子あたり平均1.8〜4個有するものが好ましい。
オリゴマー(A')としては、ウレタン結合を有するウレタンオリゴマー、ポリオキシアルキレンポリオールのポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリオールのポリ(メタ)アクリレート等が挙げられ、ウレタン鎖の分子設計等によって硬化後の樹脂の機械的特性、ガラス基板または薄膜系太陽電池素子との密着性等を幅広く調整できる点から、ウレタンオリゴマーが好ましい。
【0092】
オリゴマー(A')の割合は、オリゴマー(A')とモノマー(B')との合計(100質量%)のうち、20〜60質量%が好ましく、30〜50質量%がより好ましい。オリゴマー(A')の割合が20質量%以上であれば、層状部の耐熱性が良好となる。オリゴマー(A')の割合が60質量%以下であれば、層状部形成用光硬化性樹脂組成物の硬化性、ガラス基板または薄膜系太陽電池素子と層状部との密着性が良好となる。
【0093】
モノマー(B')の分子量は、125〜600であり、140〜400が好ましい。モノマー(B')の分子量が125以上であれば、後述する減圧雰囲気下におけるモノマーの揮発が抑えられる。モノマー(B')の分子量が600以下であれば、ガラス基板または薄膜系太陽電池素子と層状部との密着性が良好となる。
【0094】
モノマー(B')の硬化性基としては、付加重合性の不飽和基(アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等)、不飽和基とチオール基との組み合わせ等が挙げられ、硬化速度が速い点および透明性の高い層状部が得られる点から、アクリロイルオキシ基およびメタクリロイルオキシ基から選ばれる基が好ましい。また、比較的低分子量のモノマー(B')における硬化性基は、比較的高分子量のオリゴマー(A')における硬化性基よりも反応性が高くなりやすいため、モノマー(B')の硬化が先に進んで急激に組成物全体の粘性が高まり硬化反応が不均質となるおそれがある。均質な層状部を得るために、モノマー(B')の硬化性基を比較的反応性の低いメタクリロイルオキシ基とし、オリゴマー(A')の硬化性基を比較的反応性の高いアクリロイルオキシ基とすることがより好ましい。
モノマー(B')としては、層状部形成用光硬化性樹脂組成物の硬化性、層状部の機械的特性の点から、硬化性基を1分子あたり1〜3個有するものが好ましい。
【0095】
モノマー(B')は、ガラス基板または薄膜系太陽電池素子と層状部との密着性の点から、水酸基を有するモノマー(B3)を含むことが好ましい。
水酸基を有するモノマー(B3)としては、堰状部形成用光硬化性樹脂組成物におけるモノマー(B3)と同様のものが挙げられ、2−ヒドロキシブチルメタクリレートが特に好ましい。
【0096】
モノマー(B3)の割合は、オリゴマー(A')とモノマー(B')との合計(100質量%)のうち、15〜70質量%が好ましく、20〜50質量%がより好ましい。モノマー(B3)の割合が15質量%以上であれば、層状部形成用光硬化性樹脂組成物の硬化性、ガラス基板または薄膜系太陽電池素子と層状部との密着性が良好となる。
【0097】
モノマー(B')は、層状部の機械的特性の点から、下記のモノマー(B4)を含むことが好ましい。
モノマー(B4):炭素数8〜22のアルキル基を有するアルキルメタクリレート。
モノマー(B4)としては、n−ドデシルメタクリレート、n−オクタデシルメタクリレート、n−ベヘニルメタクリレート等が挙げられ、n−ドデシルメタクリレート、n−オクタデシルメタクリレートが好ましい。
【0098】
モノマー(B4)の割合は、オリゴマー(A')とモノマー(B')との合計(100質量%)のうち、5〜50質量%が好ましく、15〜40質量%がより好ましい。モノマー(B4)の割合が5質量%以上であれば、層状部の柔軟性が良好となる。
【0099】
光重合開始剤(C')としては、アセトフェノン系、ケタール系、ベンゾインまたはベンゾインエーテル系、フォスフィンオキサイド系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、キノン系等の光重合開始剤が挙げられる。吸収波長域の異なる2種以上の光重合開始剤(C')を併用することによって、硬化時間をさらに速めることができる。
光重合開始剤(C')の量は、オリゴマー(A')とモノマー(B')との合計100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜2.5質量部がより好ましい。
【0100】
層状部形成用光硬化性樹脂組成物は、連鎖移動剤を含むことが好ましい。連鎖移動剤を含むことによって、ガラス基板または薄膜系太陽電池素子と層状部との密着性を高めることができる。
連鎖移動剤としては、チオール基を有する化合物(n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)等が挙げられる。
連鎖移動剤の量は、オリゴマー(A')とモノマー(B')との合計100質量部に対して、0.1〜4質量部が好ましく、0.3〜2質量部がより好ましい。
【0101】
層状部形成用光硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、熱線吸収剤、重合禁止剤、光硬化促進剤、光安定剤(紫外線吸収剤、ラジカル捕獲剤等)、酸化防止剤、難燃化剤、接着性向上剤(シランカップリング剤等)、顔料、染料等の他の添加剤を含んでいてもよく、重合禁止剤、光安定剤を含むことが好ましい。特に、重合禁止剤を重合開始剤より少ない量含むことによって、層状部形成用光硬化性樹脂組成物の安定性を改善でき、硬化後の層状部の分子量も調整できる。
他の添加剤の合計量は、オリゴマー(A')とモノマー(B')との合計100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0102】
(工程(f))
工程(a)〜(e)をすべて行った後、層状部形成用硬化性樹脂組成物が供給された第1のガラス基板を減圧装置に入れ、減圧装置内の固定支持盤の上に層状部形成用硬化性樹脂組成物の面が上になるように第1のガラス基板を平置きする。
減圧装置内の上部には、上下方向に移動可能な移動支持機構が設けられ、移動支持機構に対向面を下に向けて第2のガラス基板が取り付けられる。
第2のガラス基板は、第1のガラス基板の上方かつ層状部形成用硬化性樹脂組成物と接しない位置に置く。すなわち、第1のガラス基板の上の層状部形成用硬化性樹脂組成物と第2のガラス基板とを接触させることなく対向させる。
【0103】
なお、上下方向に移動可能な移動支持機構を減圧装置内の下部に設け、移動支持機構の上に第1のガラス基板を置いてもよい。この場合、第2のガラス基板は、減圧装置内の上部に設けられた固定支持盤に取り付けて、第1のガラス基板と第2のガラス基板とを対向させる。
また、第1のガラス基板および第2のガラス基板の両方を、減圧装置内の上下に設けた移動支持機構で支持してもよい。
【0104】
第1のガラス基板および第2のガラス基板を所定の位置に配置した後、減圧装置の内部を減圧して所定の減圧雰囲気とする。可能であれば、減圧操作中または所定の減圧雰囲気とした後に、減圧装置内で第1のガラス基板および第2のガラス基板を所定の位置に配置させてもよい。
減圧装置の内部が所定の減圧雰囲気となった後、移動支持機構で支持された第2のガラス基板を下方に移動し、第1のガラス基板の上の層状部形成用硬化性樹脂組成物の上に第2のガラス基板を重ね合わせる。
【0105】
重ね合わせにより、第1のガラス基板の表面(薄膜系太陽電池素子が形成されている場合は、薄膜系太陽電池素子の表面)、第2のガラス基板の表面(薄膜系太陽電池素子が形成されている場合は、薄膜系太陽電池素子の表面)、および堰状部で囲まれた空間内に、層状部形成用硬化性樹脂組成物が密封される。
重ね合わせの際、第2のガラス基板の自重、移動支持機構からの押圧等によって、層状部形成用硬化性樹脂組成物が押し広げられ、前記空間内に硬化性樹脂組成物が充満し、その後、工程(g)において高い圧力雰囲気に曝した際に、気泡の少ないまたは気泡のない未硬化の層状部が形成される。
【0106】
重ね合わせの際の減圧雰囲気の圧力は、100Pa以下であり、40Pa以下が好ましい。なお、減圧雰囲気があまりに低圧であると、層状部形成用硬化性樹脂組成物に含まれる各成分(硬化性化合物、光重合開始剤、重合禁止剤、光安定剤等)に悪影響を与えるおそれがある。たとえば、減圧雰囲気があまりに低圧であると、各成分が気化するおそれがあり、また、減圧雰囲気を提供するために時間がかかることがある。よって、減圧雰囲気の圧力は、8Pa以上が好ましく、10Pa以上がより好ましい。
【0107】
第1のガラス基板と第2のガラス基板とを重ね合わせた時点から減圧雰囲気を解除するまでの時間は、特に限定されず、層状部形成用硬化性樹脂組成物の密封後、直ちに減圧雰囲気を解除してもよく、層状部形成用硬化性樹脂組成物の密封後、減圧状態を所定時間維持してもよい。減圧状態を所定時間維持することによって、層状部形成用硬化性樹脂組成物が密閉空間内を流れて第1のガラス基板と第2のガラス基板との間の間隔が均一となり、雰囲気圧力を上げても密封状態を維持しやすくなる。減圧状態を維持する時間は、数時間以上の長時間であってもよいが、生産効率の点から、1時間以内が好ましく、10分以内がより好ましい。
【0108】
(硬化性樹脂組成物中に発生する気泡の抑制)
後段の工程(g)において、密閉空間全体を層状部形成用硬化性樹脂組成物で均一に充填する際に層状部形成用硬化性樹脂組成物中に発生する気泡を抑制するために、工程(e)における層状部形成用硬化性樹脂組成物の供給条件や、工程(f)における層状部形成用硬化性樹脂組成物の上に第2のガラス基板を重ね合わせる時期を、下記条件(I)のように制御することが好ましく、また、下記条件(II)または条件(III)を満たすように、工程(e)において堰状部で囲まれた領域に層状部形成用硬化性樹脂組成物を供給することがより好ましい。
【0109】
条件(I):
工程(f)において層状部形成用硬化性樹脂組成物の上に第2のガラス基板を重ね合わせる際に、堰状部で囲まれた領域に存在する層状部形成用硬化性樹脂組成物の層が下記(1)〜(3)を満たすように、工程(e)における層状部形成用硬化性樹脂組成物の供給条件、および工程(f)における層状部形成用硬化性樹脂組成物の上に第2のガラス基板を重ね合わせる時期を制御することが好ましい。
(1)層状部形成用硬化性樹脂組成物の層中に存在する空隙の投影形状における円相当径Dporeが10mm以下。
(2)層状部形成用硬化性樹脂組成物の層中の空隙が存在しない部分の投影形状における円相当径Dnon−poreが40mm以下。
(3)堰状部に対して、層状部形成用硬化性樹脂組成物の層と、層状部形成用硬化性樹脂組成物の層中に存在する空隙とが交互に接触している。
【0110】
(1)〜(3)を満たすために、工程(e)においては、堰状部で囲まれた領域に層状部形成用硬化性樹脂組成物を分散滴下することが好ましい。また、層状部形成用硬化性樹脂組成物を分散滴下する際には、第1のガラス基板と、分散滴下に用いるノズルとを相対的に揺動させ、滴下された層状部形成用硬化性樹脂組成物の円相当径を強制的に広げることによって、堰状部で囲まれた領域に存在する層状部形成用硬化性樹脂組成物の円相当径を均一にすることが好ましい。
【0111】
条件(II):
また、工程(e)においては、堰状部で囲まれた領域に層状部形成用硬化性樹脂組成物を供給した時点で、層状部形成用硬化性樹脂組成物が下記(4)〜(9)を満たす振動曲線をなすように、層状部形成用硬化性樹脂組成物を供給することが好ましい。
(4)振動曲線の進行方向に対して垂直方向に一定の周期(e)および振幅(Y)で繰り返し変位する。
(5)隣接する振動曲線の変位が互いに逆位相である。
(6)供給開始時の振動曲線の太さをm(mm)とするとき、周期(e)(mm)および振幅(Y)(mm)が下記式を満たす。
2.1×m ≦ X ≦ 10×m
(2.1×m)/2 ≦ Y ≦ (10×m)/2
(7)供給開始時の振動曲線の太さをm(mm)とするとき、振動曲線と堰状部との最短距離d(s−r)(mm)が、下記式を満たす。
(s−r) ≦ 2.5×m
(8)供給開始時の振動曲線の太さをm(mm)とするとき、隣接する振動曲線間の最短距離d(r−r)(mm)が下記式を満たす。
(r−r) ≦ 5×m
(9)E=2Y−2mとするとき、該E(mm)が下記式を満たす。
(Y+d(r−r))/10 ≦ E ≦ Y+d(r−r)
【0112】
条件(III):
また、工程(e)においては、堰状部で囲まれた領域に層状部形成用硬化性樹脂組成物を供給した時点で、層状部形成用硬化性樹脂組成物が下記(10)〜(14)を満たす振動曲線と該振動曲線と同一方向に進行する直線とが隣接するように、層状部形成用硬化性樹脂組成物を供給してもよい。
(10)振動曲線の進行方向に対して垂直方向に一定の周期(e)および振幅(Y)で繰り返し変位する。
(11)供給開始時の振動曲線の太さをm(mm)とするとき、周期(e)(mm)および振幅(Y)(mm)が下記式を満たす。
2.1×m ≦ X ≦ 10×m
(2.1×m)/2 ≦ Y ≦ (10×m)/2
(12)堰状部の直近には振動曲線が位置し、供給開始時の振動曲線の太さをm(mm)とするとき、該振動曲線とシール部との最短距離d(s−r)(mm)が、下記式を満たす。
(s−r) ≦ 2.5×m
(13)供給開始時の振動曲線の太さをm(mm)とするとき、隣接する振動曲線と直線との間の最短距離d(r−r)(mm)が下記式を満たす。
(r−r) ≦ 2.5×m
(14)E=2Y−2mとするとき、該Eが下記式を満たす。
(Y+d(r−r))/20 ≦ E ≦ (Y+d(r−r) )/2
【0113】
(工程(g))
工程(f)において減圧雰囲気を解除した後、積層物を雰囲気圧力が50kPa以上の圧力雰囲気下に置く。
積層物を50kPa以上の圧力雰囲気下に置くと、上昇した圧力によって第1のガラス基板と第2のガラス基板とが密着する方向に押圧されるため、積層物内の密閉空間に気泡が存在すると、気泡に層状部形成用硬化性樹脂組成物が流動していき、密閉空間全体が層状部形成用硬化性樹脂組成物によって均一に充填され、未硬化の層状部が形成される。
また、積層物を50kPa以上の圧力雰囲気下に置くと、上昇した圧力によって第1のガラス基板と第2のガラス基板とが密着する方向に押圧されるため、別途加圧手段を用いることなく、封着材料部および樹脂シール部と、ガラス基板とが充分に密着する。
【0114】
圧力雰囲気は、通常80k〜120kPaである。圧力雰囲気は、大気圧雰囲気であってもよく、それよりも高い圧力であってもよい。未硬化の層状部の硬化等の操作を、特別な設備を要することなく行うことができる点から、大気圧雰囲気が最も好ましい。
【0115】
積層物を50kPa以上の圧力雰囲気下に置いた時点から未硬化の層状部の硬化を開始するまでの時間(以下、高圧保持時間と記す。)は、特に限定されない。積層物を減圧装置から取り出して硬化装置に移動し、硬化を開始するまでのプロセスを大気圧雰囲気下で行う場合には、そのプロセスに要する時間が高圧保持時間となる。よって、大気圧雰囲気下に置いた時点ですでに積層物の密閉空間内に気泡が存在しない場合、またはそのプロセスの間に気泡が消失した場合は、直ちに未硬化の層状部を硬化させることができる。気泡が消失するまでに時間を要する場合は、積層物を気泡が消失するまで50kPa以上の圧力の雰囲気下で保持する。また、高圧保持時間が長くなっても通常支障は生じないことから、プロセス上の他の必要性から高圧保持時間を長くしてもよい。高圧保持時間は、1日以上の長時間であってもよいが、生産効率の点から、6時間以内が好ましく、1時間以内がより好ましく、さらに生産効率が高まる点から、10分以内が特に好ましい。
【0116】
ついで、未硬化の層状部および未硬化または半硬化の堰状部を硬化させることによって、層状部および堰状部を有する樹脂層が形成される。この際、未硬化または半硬化の堰状部は、未硬化の層状部の硬化と同時に硬化させてもよく、未硬化の層状部の硬化の前にあらかじめ硬化させてもよい。また、未硬化または半硬化の樹脂シール部を硬化させることによって、樹脂シール部が形成される。
未硬化の層状部、未硬化または半硬化の堰状部、および未硬化または半硬化の樹脂シール部は、光硬化性組成物からなる場合、光を照射して硬化させる。たとえば、光源(紫外線ランプ、高圧水銀灯、UV−LED等)から紫外線または短波長の可視光を照射して、光硬化性樹脂組成物を硬化させる。
【0117】
光は、第1のガラス基板(薄膜系太陽電池素子が形成されている場合は、薄膜系太陽電池素子も含める。)および第2のガラス基板(薄膜系太陽電池素子が形成されている場合は、薄膜系太陽電池素子も含める。)のうち、光透過性を有する側から照射する。両方が光透過性を有する場合、両側から照射してもよい。
光としては、紫外線または450nm以下の可視光が好ましい。
【0118】
(工程(h))
工程(a)にて形成された封着材料部を局所加熱することによって溶融し、ついで固化させて、第1のガラス基板の周縁封止領域と第2のガラス基板の周縁封止領域とを封着する封着部を形成する。第1のガラス基板および第2のガラス基板のうちの一方の周縁封止領域に段部が形成されている場合は、一方のガラス基板の周縁封止領域の段部と他方のガラス基板の周縁封止領域とを封着する封着部を形成する。第1のガラス基板および第2のガラス基板の両方の周縁封止領域に段部が形成されている場合は、第1のガラス基板の周縁封止領域の段部と第2のガラス基板の周縁封止領域の段部とを封着する封着部を形成する。工程(h)は、工程(g)にて未硬化の層状部を硬化させる前に行ってもよく、工程(g)にて未硬化の層状部を硬化させた後に行ってもよく、積層物の取扱性の点から、工程(g)にて未硬化の層状部を硬化させた後に行うことが好ましい。
【0119】
工程(g)にて積層物を50kPa以上の圧力雰囲気下に置くと、上昇した圧力によって第1のガラス基板と第2のガラス基板とが密着する方向に押圧されるため、封着材料部とガラス基板とが充分に密着する。よって、別途加圧手段を用いることなく、封着材料部を局所加熱することによって、一方のガラス基板の周縁封止領域の段部と他方のガラス基板の周縁封止領域とを封着できる。
【0120】
加熱手段は、封着材料の種類に応じて適宜選択すればよい。加熱手段としては、レーザ照射、誘電加熱等が挙げられ、局所加熱しやすい点から、レーザ照射が好ましい。
レーザは、第1のガラス基板側から照射してもよく、第2のガラス基板側から照射してもよく、両側から照射してもよい。
【0121】
レーザとしては、半導体レーザ、炭酸ガスレーザ、エキシマレーザ、YAGレーザ、HeNeレーザ等が挙げられる。
レーザの出力は、2〜150Wが好ましい。レーザの出力が2W以上であれば、封着材料部を充分に溶融できる。レーザの出力が150W以下であれば、ガラス基板にクラック、割れ等が発生しにくい。
【0122】
〔具体例〕
本発明の製造方法において、第1のガラス基板として裏面材を用いるか表面材を用いるかは任意である。よって、第1〜3の実施形態の太陽電池モジュール(図示例)は、第1のガラス基板の選択に応じて、それぞれ以下の2種類の方法により製造できる。
【0123】
第1の実施形態について:
(α−1)第1のガラス基板として裏面材12を用い、第2のガラス基板として表面材10を用いる方法。
(α−2)第1のガラス基板として表面材10を用い、第2のガラス基板として裏面材12を用いる方法。
【0124】
第2の実施形態について:
(β−1)第1のガラス基板として裏面材12を用い、第2のガラス基板として表面材10を用いる方法。
(β−2)第1のガラス基板として表面材10を用い、第2のガラス基板として裏面材12を用いる方法。
【0125】
第3の実施形態について:
(γ−1)第1のガラス基板として裏面材12を用い、第2のガラス基板として表面材10を用いる方法。
(γ−2)第1のガラス基板として表面材10を用い、第2のガラス基板として裏面材12を用いる方法。
【0126】
以下、方法(α−1)の場合を例にして、第1の実施形態の太陽電池モジュールの製造方法を、図面を用いて具体的に説明する。
【0127】
(工程(a))
裏面材の周縁封止領域(段部)に、封着材料(ガラスフリット、レーザ吸収材、必要に応じて低膨張充填材を含む。)およびビヒクル(セルロース系バインダ、溶媒を含む。)を含む封着材料ペーストをスクリーン印刷等によって塗布し、乾燥し、焼成することによって、表面材の四辺に平行な枠状の封着材料部を形成する。
【0128】
(工程(b))
表面材の周縁封止領域よりも内側の表面に、表面側から順に、透明電極層、光電変換層、裏面電極層を、公知の方法によって成膜するたびに公知の方法で所望の形状にパターニングすることによって薄膜系太陽電池素子を形成する。
【0129】
(工程(c))
図9、図10に示すように、封着材料部34が形成された裏面材12(第1のガラス基板)の段部14(周縁封止領域)よりも内側(凹部)の表面の周縁に沿ってディスペンサ(図示略)等によって堰状部形成用光硬化性樹脂組成物を塗布して未硬化の堰状部28を形成する。
【0130】
(工程(d))
また同時に、図9、図10に示すように、封着材料部34よりも外側の段部14(周縁封止領域)の表面にディスペンサ(図示略)等によって樹脂シール部形成用光硬化性樹脂組成物を塗布して未硬化の樹脂シール部38を形成する。
【0131】
(工程(e))
ついで、図11、図12に示すように、裏面材12の未硬化の堰状部28に囲まれた矩形状の領域16に層状部形成用光硬化性樹脂組成物26を供給する。層状部形成用光硬化性樹脂組成物26の供給量は、未硬化の堰状部28と裏面材12と表面材10(図13参照)とによって密閉される空間が層状部形成用光硬化性樹脂組成物26によって充填されるだけの量にあらかじめ設定されている。
【0132】
層状部形成用光硬化性樹脂組成物26の供給は、図11、図12に示すように、裏面材12を下定盤40に平置きにし、水平方向に移動するディスペンサ42によって層状部形成用光硬化性樹脂組成物26を線状、帯状または点状に供給することにより実施される。
ディスペンサ42は、一対の送りねじ44と、送りねじ44に直交する送りねじ46とからなる公知の水平移動機構によって、領域16の全範囲において水平移動可能となっている。なお、ディスペンサ42の代わりに、多点ノズルやダイコータを用いてもよいが、硬化性樹脂組成物中に発生する気泡を抑制するためには、上述した条件(I)〜(III)の供給条件を満たすことが望ましい。
【0133】
(工程(f))
ついで、図13に示すように、裏面材12と表面材10(第2のガラス基板)とを減圧装置50内に搬入する。減圧装置50内の上部には、複数の吸着パッド52を有する上定盤54が配置され、下部には、下定盤56が設けられている。上定盤54は、エアシリンダ58によって上下方向に移動可能とされている。
表面材10は、薄膜系太陽電池素子30が形成された面を下にして吸着パッド52に取り付けられる。裏面材12は、層状部形成用光硬化性樹脂組成物26が供給された面(封着材料部34が形成された面)を上にして下定盤56の上に固定される。
【0134】
ついで、減圧装置50内の空気を真空ポンプ60によって吸引する。減圧装置50内の雰囲気圧力が、たとえば10〜40Paの減圧雰囲気に達した後、表面材10を上定盤54の吸着パッド52によって吸着保持した状態で、下に待機している裏面材12に向けて、エアシリンダ58を動作させて下降させる。そして、裏面材12と表面材10とを未硬化の堰状部28を介して重ね合わせて、裏面材12、表面材10および未硬化の堰状部28によって層状部形成用光硬化性樹脂組成物26が密封された積層物を構成し、減圧雰囲気下で所定時間積層物を保持する。
【0135】
なお、下定盤56に対する裏面材12の取り付け位置、吸着パッド52の個数、上定盤54に対する表面材10の取り付け位置等は、裏面材12および表面材10のサイズ、形状等に応じて適宜調整する。この際、吸着パッドとして静電チャックを用い、国際公開第2010/016588号パンフレット(本明細書に組み入れられる。)に記載の静電チャック保持方法を採用することで、表面材10を安定して減圧雰囲気下で保持できる。
【0136】
(工程(g))
ついで、減圧装置50の内部をたとえば大気圧にした後、積層物を減圧装置50から取り出す。積層物を大気圧雰囲気下に置くと、積層物の裏面材12側の表面と表面材10側の表面とが大気圧によって押圧され、密閉空間内の層状部形成用光硬化性樹脂組成物26が裏面材12と表面材10とで加圧される。この圧力によって、密閉空間内の層状部形成用光硬化性樹脂組成物26が流動して、密閉空間全体が層状部形成用光硬化性樹脂組成物26によって均一に充填され、未硬化の層状部が形成される。
また、積層物を大気圧雰囲気下に置くと、積層物の裏面材12側の表面と表面材10側の表面とが大気圧によって押圧され、封着材料部34および未硬化の樹脂シール部38が裏面材12と表面材10とで加圧される。この圧力によって、封着材料部34および未硬化の樹脂シール部38と、表面材10とが充分に密着する。
【0137】
この後、積層物の裏面材12側から紫外線を照射し、積層物内部の未硬化の層状部および未硬化の堰状部28を硬化させることによって、層状部22および堰状部24を有する樹脂層20が形成される。また同時に、積層物内部の未硬化の樹脂シール部38を硬化させることによって、樹脂シール部36が形成される。
【0138】
(工程(h))
図14に示すように、工程(a)にて形成された封着材料部34に表面材10側からレーザ62を照射し、封着材料部34を局所加熱することによって溶融し、ついで固化させて、裏面材12の周縁の段部14と表面材10の周縁の周縁封止領域とを封着する封着部32を形成し、図1に示す太陽電池モジュール1を得る。この際、工程(g)にて封着材料部34とガラス基板とが充分に密着しているため、別途加圧手段を用いることなく、封着材料部34を局所加熱することによって封着できる。
【0139】
以上、方法(α−1)の場合を例にして本発明の太陽電池モジュールの製造方法を具体的に説明したが、他の方法(α−2、β−1、β−2、γ−1、γ−2)の場合も、第1のガラス基板を表面材に変更したり、封着材料部や薄膜系太陽電池素子を形成するガラス基板を変更したりすることによって、上述の具体例と同様に太陽電池モジュールを製造できる。
【0140】
(第4〜6の実施形態の太陽電池モジュールの製造方法)
第4の実施形態の太陽電池モジュールについても、工程(c)において、裏面材12(第1のガラス基板)の段部14(周縁封止領域)の表面に、段部14の内周縁に沿ってディスペンサ(図示略)等によって堰状部形成用光硬化性樹脂組成物を塗布して未硬化の堰状部28を形成する以外は、上述の具体例と同様にして製造できる。
【0141】
第5の実施形態の太陽電池モジュールについても、工程(c)において、裏面材12(第1のガラス基板)の貫通孔13の周囲に、ディスペンサ(図示略)等によって堰状部形成用光硬化性樹脂組成物を塗布して未硬化の堰状部28を形成する以外は、上述の具体例と同様にして製造できる。
【0142】
第6の実施形態の太陽電池モジュールについても、段部14を有さないガラス基板を用いる以外は、上述の具体例と同様にして製造できる。
【0143】
〔作用効果〕
以上説明した本発明の製造方法によれば、比較的大面積の太陽電池モジュールを樹脂層中に気泡を発生させることなく製造できる。仮に、減圧下で密封した層状部形成用硬化性樹脂組成物中に気泡が残存しても、硬化前の高い圧力雰囲気下では密封した層状部形成用硬化性樹脂組成物にもその圧力がかかり、その気泡の体積は減少し、気泡は容易に消失する。たとえば、100Pa下で密封した層状部形成用硬化性樹脂組成物中の気泡中の気体の体積は100kPa下では1/1000になると考えられる。気体は層状部形成用硬化性樹脂組成物に溶解することもあるので、微小体積の気泡中の気体は層状部形成用硬化性樹脂組成物に速やかに溶解して消失する。
【0144】
また、密封後の層状部形成用硬化性樹脂組成物に大気圧等の圧力がかかっても、液状の層状部形成用硬化性樹脂組成物は流動性の組成物であることから、薄膜系太陽電池素子の表面にその圧力は均一に分布し、層状部形成用硬化性樹脂組成物に接した薄膜系太陽電池素子の表面の一部にそれ以上の応力がかかることはなく、薄膜系太陽電池素子の損傷のおそれは少ない。また、層状部形成用硬化性樹脂組成物が光硬化性組成物の場合、硬化には高い温度を必要としないことから、高温による薄膜系太陽電池素子の損傷のおそれも少ない。
【0145】
また、初期状態が液体である層状部形成用硬化性樹脂組成物の硬化による樹脂層は、薄膜系太陽電池素子やガラス基板の表面に対し均一に接着するため、樹脂層と薄膜系太陽電池素子やガラス基板との界面接着力は、初期状態が固体である熱融着性樹脂と比較し部分的に界面接着力が低くなることが少ない。したがって、樹脂層の表面にて剥離が発生するおそれが低く、また界面接着力が不充分な部分から水分や腐食性ガスが浸入するおそれも少ない。
【0146】
また、2枚のガラス基板間の狭くかつ広い面積の空間に流動性の硬化性樹脂組成物を注入する方法(注入法)と比較すると、気泡の発生が少なくかつ短時間に層状部形成用硬化性樹脂組成物を充填できる。しかも、層状部形成用硬化性樹脂組成物の粘度の制約が少なく、高粘度の層状部形成用硬化性樹脂組成物を容易に充填できる。したがって、樹脂層の強度を高められる比較的高分子量の硬化性化合物を含む高粘度の層状部形成用硬化性樹脂組成物を用いることができる。
【0147】
また、少なくとも一方のガラス基板の表面の周縁の周縁封止領域に、樹脂層の周縁を囲むガラスからなる段部を形成した状態で、2枚のガラス基板の周縁封止領域同士を、封着材料を溶融、固化させた封着部にて封着し、さらにその外側を樹脂シール部にて封止しているため、太陽電池モジュールの側面が確実に封止され、水分や腐食性ガスがさらに浸入しにくくなる。
【0148】
さらに、工程(f)においては、100Pa以下の減圧雰囲気下にて、層状部形成用硬化性樹脂組成物、封着材料部および樹脂シール部の上に、第2のガラス基板を重ねているため、樹脂層と封着部との間の空間、および封着部と樹脂シール部との間の空間が工程(h)経過後も40000Pa以下の減圧雰囲気となる。そのため、該空間に残存する水分、腐食性ガスがほとんどなくなり、表面材または裏面材と樹脂層との界面から水分、腐食性ガスが侵入するおそれがほとんどなくなり、薄膜系太陽電池素子の耐久性が向上する。
【実施例】
【0149】
以下に、本発明の有効性を確認するために実施した例について示す。例1、2が実施例であり、例3が比較例である。
【0150】
〔例1〕
(工程(a))
ガラスフリットとして、質量割合でBiの83%、Bの5%、ZnOの11%、Alの1%の組成を有するビスマス系ガラスフリット(軟化点:410℃)を用意した。
低膨張充填材として、平均粒径(D50)が4.3μm、比表面積が1.6m/gのコージェライト粉末を用意した。
レーザ吸収材として、質量割合でFeの16.0%、MnOの43.0%、CuOの27.3%、Alの8.5%、SiOの5.2%の組成を有し、平均粒径(D50)が1.2μm、比表面積が6.1m/gのレーザ吸収材を用意した。
バインダとして、エチルセルロースを用意した。
溶媒として、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートを用意した。
【0151】
ビスマス系ガラスフリットの66.8体積%、コージェライト粉末の32.2体積%、レーザ吸収材の1.0体積%を混合して封着材料(熱膨張係数(50〜350℃):66×10−7/℃)を調製した。
エチルセルロースの5質量%を、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートの95質量%に溶解してビヒクルを調製した。
封着材料の83質量%、ビヒクルの17質量%を混合して封着材料ペーストを調製した。
【0152】
裏面材として、ガラス基板(旭硝子株式会社製、AS、ソーダライムガラス、熱膨張係数:85×10−7/℃、寸法:400mm×400mm×厚さ2.8mm)を用意した。
裏面材の周縁封止領域の内側に、370mm×370mm×深さ380μmの凹部を形成することによって、周縁封止領域を、幅15mm、高さ380μmの枠状の段部とした。
【0153】
段部の表面の、裏面材の外周縁から10mmの位置に、封着材料ペーストをスクリーン印刷で塗布した。スクリーン印刷には、メッシュサイズが325、乳剤厚が20μmのスクリーン版を用いた。スクリーン版のパターンは、線幅が0.5mmで380mm×380mmの枠状パターンとし、コーナ部の曲率半径Rは2mmとした。
塗布された枠状の封着材料ペーストを、120℃で10分間乾燥させた後、480℃で10分間焼成することによって、厚さが15μm、線幅が0.5mmで380mm×380mmの枠状の封着材料部を形成した。
【0154】
(工程(b))
表面材として、ガラス基板(旭硝子株式会社製、AS、ソーダライムガラス、熱膨張係数:85×10−7/℃、寸法:400mm×400mm×厚さ0.7mm)を用意した。
表面材の周縁封止領域よりも内側の表面に、CVD法によって、フッ素を添加した酸化錫からなる厚さが約0.7μmの透明電極層を形成した。透明電極層を、YAGレーザの基本波(1064nm)を用い、9mmピッチで帯状に、分割ラインの幅:約50μmで分断した。
透明電極層の上に、プラズマCVD法によって、モロシランガスを原料としてアモルファスシリコンン膜をp膜、i膜、n膜の順で3層形成し、総厚が約0.5μmの光電変換層を形成した。光電変換層を、YAGレーザの第2高調波(532nm)を用い、9mmピッチで帯状に、分割ラインの幅:約50μmで分断した。
光電変換層の上に、スパッタリング法によって、厚さが約0.2μmの酸化亜鉛を成膜し、さらに厚さが約0.2μmの銀を成膜して裏面電極層を形成した。YAGレーザの第2高調波(532nm)を用い、9mmピッチの短冊状に裏面電極層と光電変換層を一括で、分割ラインの幅:約50μmで分断した。裏面電極層および透明電極層を端子加工することによって、アモルファスシリコンを半導体に用いた薄膜系太陽電池素子を有する表面材を作製した。
【0155】
(工程(c))
分子末端をエチレンオキシドで変性した2官能のポリプロピレングリコール(水酸基価より算出した数平均分子量:4000)と、ヘキサメチレンジイソシアネートとを、6対7となるモル比で混合し、ついでイソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業社製、IBXA)で希釈した後、錫化合物の触媒存在下で70℃で反応させて得られたプレポリマーに、2−ヒドロキシエチルアクリレートをほぼ1対2となるモル比で加えて70℃で反応させることによって、30質量%のイソボルニルアクリレートで希釈されたウレタンアクリレートオリゴマー(以下、UC−1と記す。)溶液を得た。UC−1の硬化性基数は2であり、数平均分子量は約55000であった。UC−1溶液の60℃における粘度は約580Pa・sであった。
【0156】
UC−1溶液の90質量部および2−ヒドロキシブチルメタクリレート(共栄社化学社製、ライトエステル HOB)の10質量部を均一に混合して混合物を得た。該混合物の100質量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(光重合開始剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE 184)の0.9質量部、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(光重合開始剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE 819)の0.1質量部、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン(重合禁止剤、東京化成社製)の0.04質量部を均一に混合し、堰状部形成用光硬化性樹脂組成物(樹脂シール部形成用光硬化性樹脂組成物)を得た。
【0157】
堰状部形成用光硬化性樹脂組成物を容器に入れたまま開放状態で減圧装置内に設置して、減圧装置内を約20Paに減圧して10分保持することで脱泡処理を行った。堰状部形成用光硬化性樹脂組成物の25℃における粘度を測定したところ、約1400Pa・sであった。
裏面材の凹部の、段部の内周縁から5mmの位置の全周にわたって、幅が約1mm、塗布厚さが約0.6mmとなるように堰状部形成用光硬化性樹脂組成物をディスペンサにて塗布し、線幅が約1mmで360mm×360mmの枠状の未硬化の堰状部を形成した。
【0158】
(工程(d))
工程(c)に引き続き、段部の表面の、裏面材の外周縁から5mmの位置に、幅が約1.0mm、塗布厚さが約0.6mmとなるように堰状部形成用光硬化性樹脂組成物をディスペンサにて塗布し、線幅が約1.0mmで390mm×390mmの枠状の未硬化の樹脂シール部を形成した。
【0159】
(工程(e))
分子末端をエチレンオキシドで変性した2官能のポリプロピレングリコール(水酸基価より算出した数平均分子量:4000)と、イソホロンジイソシアネートとを、4対5となるモル比で混合し、錫化合物の触媒存在下で70℃で反応させて得られたプレポリマーに、2−ヒドロキシエチルアクリレートをほぼ1対2となるモル比で加えて70℃で反応させることによって、ウレタンアクリレートオリゴマー(以下、UA−1と記す。)を得た。UA−1の硬化性基数は2であり、数平均分子量は約24000であり、25℃における粘度は約830Pa・sであった。
【0160】
UA−1の40質量部、2−ヒドロキシブチルメタクリレート(共栄社化学社製、ライトエステル HOB)の20質量部、n−ドデシルメタクリレートの40質量部を均一に混合し、該混合物の100質量部に、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(光重合開始剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE 819)の0.3質量部、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン(重合禁止剤、東京化成社製)の0.04質量部、n−ドデシルメルカプタン(連鎖移動剤、花王社製、チオカルコール20)の0.5質量部、紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、TINUVIN 109)の0.3質量部を均一に溶解させて、層状部形成用光硬化性樹脂組成物を得た。
【0161】
層状部形成用光硬化性樹脂組成物を容器に入れたまま開放状態で減圧装置内に設置して、減圧装置内を約20Paに減圧して10分保持することで脱泡処理を行った。層状部形成用光硬化性樹脂組成物の25℃における粘度を測定したところ、1.7Pa・sであった。
裏面材に塗布された未硬化の堰状部の内側の領域に、50.8gの層状部形成用光硬化性樹脂組成物を、縦横8本ずつ15mmピッチで正方形に64本のノズルを配置した多点ノズルを用い、縦・横各3ショット、合計9ショット行い、576点に均等分割して分散滴下することにより供給した。
層状部形成用光硬化性樹脂組成物を供給する間、未硬化の堰状部の形状は維持されていた。
【0162】
(工程(f))
裏面材を、一対の定盤の昇降装置が設置されている減圧装置内の下定盤の上に、層状部形成用光硬化性樹脂組成物の面(封着材料部の面)が上になるように平置した。
表面材を、減圧装置内の昇降装置の上定盤の下面に静電チャックを用いて、薄膜系太陽電池素子の面が下になるように、かつ垂直方向では裏面材との距離が30mmとなるように保持させた。
【0163】
減圧装置を密封状態として減圧装置内の圧力が約10Paとなるまで排気した。減圧装置内の昇降装置にて上下の定盤を接近させ、裏面材と表面材とを、層状部形成用光硬化性樹脂組成物を介して2kPaの圧力で圧着し、1分間保持させた。
【0164】
(工程(g))
静電チャックを除電して上定盤から表面材を離間させ、約15秒で減圧装置内を大気圧雰囲気に戻し、裏面材、表面材および未硬化の堰状部で層状部形成用光硬化性樹脂組成物からなる未硬化の層状部が密封された積層物を得た。
積層物において未硬化の堰状部の形状は、ほぼ初期の状態のまま維持されていた。
【0165】
積層物の未硬化の堰状部および未硬化の層状部に、裏面材の側から、ケミカルランプからの紫外線および450nm以下の可視光を均一に照射し、未硬化の堰状部および未硬化の層状部を硬化させることによって、樹脂層を形成した。また同時に、未硬化の樹脂シール部を硬化させることによって、樹脂シール部を形成した。従来の注入法による製造時に要する空隙除去の工程が不要であるにもかかわらず、樹脂層中に残留する空隙等の欠陥は確認されなかった。また、堰状部からの層状部形成用光硬化性樹脂組成物の漏れ出し等の欠陥も確認されなかった。また、薄膜系太陽電池素子の破損は確認されなかった。
【0166】
(工程(h))
裏面材の側から封着材料部に対して、波長940nm、スポット径1.6mm、出力30.0W(出力密度:1492W/cm)のレーザ(半導体レーザ)を7mm/秒の走査速度で照射し、封着材料部を溶融し、急冷固化することによって、裏面材の周縁封止領域(段部)と表面材の周縁封止領域とを封着する封着部を形成し、図1に示す太陽電池モジュールを得た。レーザの強度分布は一定に整形せず、突形状の強度分布を有するレーザを用いた。
太陽電池モジュールを日中、太陽光に曝して端子間で電力を測定したところ7Wの出力があった。また、樹脂層と封着部との間の空間、および封着部と樹脂シール部との間の空間の圧力を確認するため、太陽電池モジュールのコーナ部をシリコンオイルに浸漬させた状態で浸漬部にある、樹脂層と封着部との間の空間、および封着部と樹脂シール部との間の空間の一部に外側からガラスドリルで貫通穴を開けたところ、空隙部の領域の半部以上にシリコンオイルが引き上げられ、40000Pa以下の減圧雰囲気を維持していることが確認できた。
【0167】
〔例2〕
(工程(a))
例1と同様にして、裏面材の段部の表面に枠状の封着材料部を形成した。
【0168】
(工程(b))
例1と同様にして、薄膜系太陽電池素子を有する表面材を作製した。
【0169】
(工程(c))
裏面材の段部の内周縁の表面の全周にわたって、幅が約1.0mm、塗布厚さが約0.6mmとなるように例1の堰状部形成用光硬化性樹脂組成物をディスペンサにて塗布し、線幅が約1.0mmで360mm×360mmの枠状の未硬化の堰状部を形成した。
【0170】
(工程(d))
工程(c)に引き続き、段部の表面の、裏面材の外周縁から5mmの位置に、幅が約1.0mm、塗布厚さが約0.6mmとなるように堰状部形成用光硬化性樹脂組成物をディスペンサにて塗布し、線幅が約1.0mmで390mm×390mmの枠状の未硬化の樹脂シール部を形成した。
【0171】
(工程(e))
裏面材に塗布された未硬化の堰状部の内側の領域に、50.8gの層状部形成用光硬化性樹脂組成物を、縦横8本ずつ15mmピッチで正方形に64本のノズルを配置した多点ノズルを用い、縦・横各3ショット、合計9ショット行い、576点に均等分割して分散滴下することにより供給した。
層状部形成用光硬化性樹脂組成物を供給する間、未硬化の堰状部の形状は維持されていた。
【0172】
(工程(f)〜(g))
例1と同様にして、裏面材、表面材および未硬化の堰状部で層状部形成用光硬化性樹脂組成物からなる未硬化の層状部が密封された積層物を得た。
【0173】
例1と同様にして、未硬化の堰状部および未硬化の層状部を硬化させることによって、樹脂層を形成した。また同時に、未硬化の樹脂シール部を硬化させることによって、樹脂シール部を形成した。従来の注入法による製造時に要する空隙除去の工程が不要であるにもかかわらず、樹脂層中に残留する空隙等の欠陥は確認されなかった。また、堰状部からの層状部形成用光硬化性樹脂組成物の漏れ出し等の欠陥も確認されなかった。また、薄膜系太陽電池素子の破損は確認されなかった。
【0174】
(工程(h))
例1と同様にして、裏面材の周縁封止領域(段部)と表面材の周縁封止領域とを封着する封着部を形成し、図6に示す太陽電池モジュールを得た。
太陽電池モジュールを日中、太陽光に曝して端子間で電力を測定したところ7Wの出力があった。また、例1と同様にして、樹脂層と封着部との間の空間、および封着部と樹脂シール部との間の空間の圧力を確認したところ、約40000Pa以下の減圧雰囲気を維持していた。
【0175】
〔例3〕
ガラス基板Aの周縁部に、厚さ1mm、幅10mmの両面接着テープを貼着し、1辺の両面接着テープの離型フィルムのみを残して、表面の離型フィルムを剥がした。ガラス基板Aの上にガラス基板Bを重ね、3辺の両面接着テープで貼り合わせた。
離型フィルムを残した1辺の両面接着テープとガラス基板Bとの間を、ドライバによって2mm程度抉じ開け、その部分から、層状部形成用光硬化性樹脂組成物を40g注ぎ入れようとしたが、ガラス基板Aとガラス基板Bと間の空間の下部に気泡が残り、層状部形成用光硬化性樹脂組成物を該空間中に密実に注入できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0176】
本発明の製造方法によれば、薄膜系太陽電池素子の破損が抑えられ、樹脂層と薄膜系太陽電池素子との界面接着力および樹脂層とガラス基板との界面接着力を高くでき、液状の硬化性樹脂組成物による気泡の発生が充分に抑えられ、かつ側面が確実に封止された薄膜系太陽電池を得ることができる。
【符号の説明】
【0177】
1 太陽電池モジュール
2 太陽電池モジュール
3 太陽電池モジュール
4 太陽電池モジュール
5 太陽電池モジュール
6 太陽電池モジュール
10 表面材(第2のガラス基板)
12 裏面材(第1のガラス基板)
14 段部
16 領域
20 樹脂層
22 層状部
24 堰状部
26 層状部形成用光硬化性樹脂組成物
28 未硬化の堰状部
30 薄膜系太陽電池素子
32 封着部
34 封着材料部
36 樹脂シール部
38 未硬化の樹脂シール部
62 レーザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔で対向し、それぞれが対向面の周縁に枠状の周縁封止領域を有する第1のガラス基板および第2のガラス基板と、
第1のガラス基板の周縁封止領域と第2のガラス基板の周縁封止領域とを封着する枠状の封着部と、
第1のガラス基板および第2のガラス基板に挟まれ、かつ封着部と間隔を開けて封着部よりも外側の周縁封止領域に形成された枠状の樹脂シール部と、
第1のガラス基板および第2のガラス基板に挟まれ、かつ封着部と間隔を開けて封着部よりも内側に形成された、ガラス基板の表面に沿って広がる樹脂層と、
第1のガラス基板および第2のガラス基板のうちの少なくとも一方のガラス基板の周縁封止領域よりも内側の表面に形成された薄膜系太陽電池素子とを有し、
樹脂層と封着部との間の空間、および封着部と樹脂シール部との間の空間が、40000Pa以下の減圧雰囲気である、太陽電池モジュール。
【請求項2】
第1のガラス基板および第2のガラス基板のうちの少なくとも一方が、周縁封止領域に形成された、ガラスからなる段部を有する、請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
段部が、ガラス基板の表面に凹部を形成することによって形成されたものである、請求項2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
樹脂層が、ガラス基板の表面に沿って広がる層状部および層状部の周縁を囲む堰状部からなる、請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
請求項4に記載の太陽電池モジュールを製造する方法であって、
下記の工程(a)〜(h)を有する、太陽電池モジュールの製造方法。
(a)第1のガラス基板および第2のガラス基板のうちの少なくとも一方のガラス基板の周縁封止領域に封着材料からなる封着材料部を形成する工程。
(b)第1のガラス基板および第2のガラス基板のうちの少なくとも一方のガラス基板の周縁封止領域よりも内側の表面に薄膜系太陽電池素子を形成する工程。
(c)第1のガラス基板の、周縁封止領域の内周縁またはその近傍の表面に、堰状部を形成する工程。
(d)第1のガラス基板の周縁封止領域に、樹脂シール部を形成する工程。
(e)堰状部で囲まれた領域に、液状の層状部形成用硬化性樹脂組成物を供給する工程。
(f)100Pa以下の減圧雰囲気下にて、層状部形成用硬化性樹脂組成物の上に、対向面が層状部形成用硬化性樹脂組成物に接するように第2のガラス基板を重ねて、第1のガラス基板、第2のガラス基板および堰状部によって層状部形成用硬化性樹脂組成物が密封された積層物を得る工程。
(g)50kPa以上の圧力雰囲気下に積層物を置いた状態にて、層状部形成用硬化性樹脂組成物からなる未硬化の層状部を硬化させて、層状部および堰状部からなる樹脂層を形成する工程。
(h)封着材料部を溶融し、固化させて、封着部を形成する工程。
【請求項6】
封着材料部を、ガラスフリットおよびレーザ吸収材を含む封着材料ペーストをガラス基板の周縁封止領域に塗布し、焼成して形成する、請求項5に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項7】
封着部を、封着材料部にレーザを照射して形成する、請求項6に記載の太陽電池モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−244118(P2012−244118A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116044(P2011−116044)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】