説明

太陽電池モジュールおよびプライマー組成物

【課題】薄膜太陽電池の裏面保護シートにおいて、耐候劣化がなく高い密着強度を有する太陽電池モジュールを提供すること。
【解決手段】基板上に順に積層された太陽電池素子と、太陽電池素子全面を覆う封止樹脂と、裏面保護シートとを含む太陽電池モジュールであって、上記裏面保護シートは、フッ素系共重合体、アクリル系共重合体またはポリウレタン系重合体と、エチレン性不飽和基を1個以上有する重合性モノマーおよび/またはオリゴマー、および/または分子内に1個以上のエチレン性不飽和基と2個以上のイソシアネート基を含有する化合物とからなるプライマー層を有し、上記封止樹脂と裏面保護シートとの接着強度が、15N/cmより大きく、耐候性試験後においても10N/cmよりも大きいことを特徴とする太陽電池モジュール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外に設置される薄膜太陽電池モジュール、および該モジュールの構成に使用するプライマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化防止が叫ばれている昨今、太陽電池の開発が活発である。その低コスト化および高効率化を両立するために、原材料が少なくてすむ薄膜太陽電池が注目され、精力的に開発が行われている。通常、このような薄膜太陽電池素子を含む薄膜太陽電池モジュールは、一般に、電気的に直列または並列に接続されてなる複数の薄膜太陽電池セルからなる集積型薄膜太陽電池素子を含み、その電極層や半導体層を保護することや、外部と電気的に絶縁することなどを目的として、この集積型薄膜太陽電池全体を、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAと称す)などを主成分とする充填材料である封止樹脂と裏面保護シートにより封止した構造になっている。
【0003】
裏面保護シートに使用されるものは、耐候性に優れているフッ素フィルム/シート(以下「シート」という)やポリエステルシートである。ポリエステルシートは耐候性を上げるために結晶性が高く、また、接着性を上げるための表面処理を施さない未処理シートが用いられているのが現状である。
【0004】
すでに特許文献1において「裏面保護シートとしては、PETフィルムからなる前記封止樹脂側基材層が、ウレタン樹脂系接着剤により前記防湿層に接着されているものが、前記接着強度を高くできる点、および温水浸漬試験後の強度維持の点から好ましい」としている。しかし、耐候性試験においてはウレタン樹脂では劣化が激しく密着強度の低下が著しい。特に封止材料であるEVA樹脂との耐候密着性を保持することが難しく、長時間の屋外暴露後に劣化が進み裏面保護シートが剥離するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−310680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題に鑑みなされたものであり、裏面保護シートであるフッ素シートや、未処理ポリエステルシートに密着性が高いプライマーを施すことにより、封止樹脂中の充填材料であるEVA樹脂とも安定した密着強度を保持し、さらには長時間の屋外暴露によってもその密着強度の低下を防止することにより太陽電池モジュールの信頼性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、基板(1)上に順に積層された太陽電池素子(2)と、太陽電池素子全面を覆う封止樹脂(3)と、裏面保護シート(5)とを含む太陽電池モジュールであって、上記裏面保護シート(5)は、フッ素系共重合体、アクリル系共重合体またはポリウレタン系重合体(重合体a)と、エチレン性不飽和基を1個以上有する重合性モノマーおよび/またはオリゴマー(モノマーb)、および/または分子内に1個以上のエチレン性不飽和基と2個以上のイソシアネート基を含有する化合物(ポリイソシアネートc)とからなるプライマー層(4)を有し、上記封止樹脂(3)と裏面保護シート(5)との接着強度が、15N/cmより大きく、耐候性試験後においても10N/cmよりも大きいことを特徴とする太陽電池モジュールを提供する。
【0008】
上記本発明においては、前記耐候性試験が、アイスーパーUV試験(水噴霧/光照射)において200hrs以上の照射であることが好ましい。
【0009】
また、上記本発明においては、前記プライマー層が、紫外線吸収剤を含有すること、および前記プライマー層が、耐候性を有する無機系または有機系顔料を分散してなる着色プライマー層であることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、フッ素系共重合体、アクリル系共重合体またはポリウレタン系重合体(重合体a)と、エチレン性不飽和基を1個以上有する重合性モノマーおよび/またはオリゴマー(モノマーb)、および/または分子内に1個以上のエチレン性不飽和基と2個以上のイソシアネート基を含有する化合物(ポリイソシアネートc)とからなり、上記モノマーおよび/またはオリゴマー(モノマーb)の数平均分子量(Mn)が1,000〜5,000の範囲であり、前記モノマーbの含有量が、前記重合体aの1〜30質量%、好ましくは2〜10質量%の範囲であり、上記ポリイソシアネートcの含有量が、前記重合体aの5〜50質量%、好ましくは10〜30質量%であることを特徴とする前記本発明の太陽電池モジュールに使用するプライマー組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
太陽電池モジュールの裏面保護シートとしては、耐候性の高いフッ素樹脂シートや結晶性の高いポリエステルシートが一般的に用いられている。これらのシートに対して、フッ素系共重合体、アクリル系共重合体またはポリウレタン系共重合体は、一般的に良好な初期密着強度を有している。
【0012】
しかし、長時間の屋外暴露試験やアイスーパーUVテスターによる耐候性促進試験後の密着強度の低下は著しい。そこで、安定した耐候密着強度を保持するために、エチレン性不飽和基を有するモノマーおよび/またはオリゴマー(および/またはポリイソシアネート化合物)を含有する前記共重合体のプライマー層を有することにより、長期間の屋外暴露される環境下において太陽光に含まれる紫外線により、封止樹脂であるEVA樹脂との反応が進むことにより、裏面保護シートと封止樹脂との密着強度が、15N/cmより大きく、耐候性試験後においても10N/cmよりも大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る太陽電池モジュールの封止構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の薄膜太陽電池モジュールは、図1に示すように、透明絶縁基板1上に、順に薄膜太陽電池素子2、前記薄膜太陽電池素子2全面を覆う封止樹脂3、および裏面保護シート5を含む薄膜太陽電池モジュールであって、前記裏面保護シート5に前記プライマー処理4を施したものは、アイスーパーUVテスターによる耐候性促進試験において200時間以上の水噴霧・UV照射繰り返し試験後にEVA樹脂との密着強度が10N/cmより大きいことを特徴とする薄膜太陽電池モジュールであり、信頼性の高い薄膜太陽電池モジュールである。
【0015】
本発明の薄膜太陽電池モジュールにおいては、透明絶縁基板1、薄膜太陽電池素子2、前記薄膜太陽電池素子2全面を覆う封止樹脂3、および裏面保護シート5などの構成は、従来公知の薄膜太陽電池モジュールと同様であって、本発明に特有の構成ではない。
【0016】
すなわち、薄膜太陽電池素子2としては、基板上に透明電極層、光半導体層および裏面電極層を積層し、複数の光電変換セルを形成するように分離溝によって分離され、かつそれらの光電変換セルが電気的に直列接続されてなる集積型薄膜太陽電池素子とすることが一般的であり、また、光半導体層中の光電変換層としては、薄膜シリコンや薄膜多結晶シリコンなどを用いることができる。さらに、図示しないが、薄膜太陽電池素子2からはモジュール外部に電気出力が取り出せるようになっている。
【0017】
上記封止樹脂3として用いられる樹脂としては、主としてEVA(エチレン・ビニルアセテート共重合体)を用いるが、PVB(ポリビニルブチラール)、PIB(ポリイソブチレン)、およびシリコン樹脂などを用いることもできる。
【0018】
裏面保護シート5は、ポリフッ化ビニルフィルム(例えば、テドラーフィルム(登録商標名))のようなフッ素樹脂系フィルム或いはPETフィルムのような耐湿性や耐水性に優れた絶縁フィルムが用いられ、さらに裏面保護シート5は、アルミニウムなどからなる金属箔や無機防湿膜をコートしたフィルムからなる防湿層(不図示)が、これらのフッ素樹脂系フィルムやPETフィルムなどで挟持、積層された構造が好ましい。アルミニウム箔のような金属箔は耐湿性や耐水性を向上させる機能を有するので、裏面保護シート5をこのような構造とすることにより、薄膜太陽電池素子2を効果的に水分から保護することができる。
【0019】
これら封止樹脂3、および裏面保護シート5は、ガラス基板1上の薄膜太陽電池素子2の全面を覆うように真空ラミネート法により同時に貼着することができる。本発明の特徴は、上記従来の薄膜太陽電池モジュールにおいて、封止樹脂3と裏面保護シート5との間にプライマー層4を設けて、封止樹脂3と裏面保護シート5との間の接着強度を向上させたものである。
【0020】
本発明を特徴づけるプライマー組成物が、重合体aとモノマーおよび/またはオリゴマー(モノマーb)のみからなる光硬化性組成物である場合は、封止樹脂3と裏面保護シート5との密着性がやや悪くなり、封止樹脂3と裏面保護シート5との接着強度が、15N/cmより小さく、耐候性試験後においても10N/cmよりも小さくなり、ポリイソシアネートcを併用したときよりも上記の強度が劣る。また、本発明のプライマー組成物が、重合体aとポリイソシアネートcのみを使用した熱硬化性組成物である場合においても、封止樹脂3と裏面保護シート5との密着性は優れるものの、封止樹脂3と裏面保護シート5との接着強度が、15N/cmより小さく、耐候性試験後においても10N/cmよりも小さくなり、ポリイソシアネートcとモノマーおよび/またはオリゴマー(モノマーb)とを併用したときよりも上記の強度が劣る。
【0021】
本発明のプライマー組成物が、ポリイソシアネートcとモノマーbとが共存している光熱硬化組成物である場合は、上記封止樹脂3と表面保護シート5との密着性や、耐候性試験後の接着強度は十分なものとなる。重合体aとモノマーbとポリイソシアネートcとからなる本発明のプライマー組成物は、無溶剤であっても溶剤を含む溶剤溶液であってもよい。本発明で使用する重合体aは、フッ素系共重合体、アクリル系共重合体またはポリウレタン系重合体であり、例えば、フッ素系共重合体としては、商品名としては、例えば「ルミフロン」(旭硝子(株)製)、「ゼッフル」(ダイキン工業(株)製)、「セフラルコート」(セントラル硝子(株)製)、「フルオネート」(DIC(株)製)などが挙げられる。
【0022】
アクリル系共重合体としては、例えば「アクリナール」(東栄化成(株)製)、「アクリット」(大成ファインケミカル(株)製)、「ヒタロイド」(日立化成工業(株)製)、「アクリディック」(DIC(株)製)、「ユーダブル」((株)日本触媒製)、「ダイヤナール」(三菱レイヨン(株))などが挙げられる。ポリウレタン系樹脂としては、例えば、「サンプレン」(三洋化成工業(株)製)、「タケラック」(三井化学(株)製)、「TA」(日立化成ポリマー(株)製)、「セイカボンド」(大日精化工業(株)製)などが挙げられる。これらの樹脂は、同一樹脂系においては、2種類以上の樹脂の混合で使用するのが望ましい。
【0023】
光硬化性の本発明のプライマー組成物は、分子中にエチレン性不飽和基を1個以上有する物質、すなわち、架橋剤としてモノマーまたはオリゴマーを含む。具体的なモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸などの単量体、フタル酸無水物やジカルボン酸無水物類とヒドロキシル基含有アクリレートまたはヒドロキシル基含有メタクリレートとの反応で生成するハーフエステル化した化合物などが挙げられる。
【0024】
オリゴマーとしては、例えば、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエステルウレタンアクリレート、ポリエーテルウレタンアクリレート、ブタジエンウレタンアクリレート、特殊ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、アミノ樹脂アクリレート、アクリル樹脂アクリレート、ジアリルフタレート、不飽和ポリエステルなどが挙げられる。
【0025】
これらのモノマーまたはオリゴマーの配合量は、前記重合体aの1〜30質量%であり、好ましくは2〜10質量%である。これらのモノマーまたはオリゴマーの配合量が少な過ぎると、封止剤であるEVAと、裏面保護シートであるフッ素シートや未処理ポリエステルシートとの密着強度が不十分であり、一方、多過ぎると、封止剤であるEVAと裏面保護シートであるフッ素シートや未処理ポリエステルシートとの密着性が低下する場合がある。
【0026】
さらに本発明のプライマー組成物が、紫外線硬化性である場合には、光重合開始剤を含む。光重合開始剤としては、光によりラジカルを発生し、そのラジカルが重合性不飽和化合物と効率的に反応するものであればよい。分子が開裂してラジカルを発生するタイプや芳香族ケトンと水素供与体の組合せのように複合して用いられるものがある。前者に属する例としては、例えば、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンおよび2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパノン−1などが挙げられる。
【0027】
後者の例の芳香族ケトンとしては、例えば、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタロフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフイド、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンおよび2−クロロチオキサントンなどが挙げられ、これと組合せる水素供与体としては、例えば、メルカプト化合物およびアミン化合物などが挙げられるが、一般にアミン系化合物が好ましい。アミン系化合物としては、例えば、トリエチルアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルベンジルアミンおよび4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0028】
これらの光重合開始剤は、単独で用いてもよいし、二種類以上組合せて用いてもよい。光重合開始剤の使用量は、前記重合体aと架橋剤(モノマーまたはオリゴマー)との合計量の1〜10質量%である。この使用量は従来公知の使用量であり特別のものではない。また、その他の添加剤として、重合を促進する過酸化物、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、希釈剤としての有機溶剤、およびシランカップリング剤などを各種特性を改良する目的で配合することもできる。
【0029】
本発明のプライマー組成物が、熱硬化性である場合は、該組成物は前記重合体aとポリイソシアネートcとを含む。当該熱硬化性プライマー組成物は、イソシアネート基と反応しない有機溶剤、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸n−プロピル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、ミネラルスピリットなどを含み、塗工性を有することが好ましい。有機溶剤の使用量は、固形分が30〜70質量%になる範囲が好ましい。
【0030】
本発明で使用するポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、シクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどのポリイソシアネート類が挙げられる。
【0031】
本発明のプライマー組成物が、光熱硬化性である場合は、該組成物は前記重合体aと、架橋剤としてのポリイソシアネートとエチレン性不飽和結合を含む化合物を含む。場合によっては前記の如き光重合開始剤も含む。当該光熱硬化性プライマー組成物は、イソシアネート基と反応しない有機溶剤を含み、塗工性を有することが好ましい。有機溶剤の使用量は、固形分が30〜70質量%になる範囲が好ましい。
【0032】
分子内に2個以上のイソシアネート基と1個以上のエチレン性不飽和基をともに含有する架橋剤としては、例えば、アリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートなどが挙げられる。特に分子内にイソシアネート基とエチレン性不飽和基をともに含有する化合物の使用は、封止剤であるEVAとの接着強度が向上するなどの点で本発明において好ましい。
【0033】
上記ポリイソシアネートの配合量は、前記重合体aの5〜50質量%であり、好ましくは10〜30質量%である。ポリイソシアネートの配合量が少な過ぎると、表面保護シートであるフッ素シートや未処理ポリエステルシートと封止樹脂との密着性が不十分であり、一方、ポリイソシアネートの配合量が多過ぎると、プライマーの乾燥性が悪くなり、ブロッキングを起こす恐れがある。
【0034】
上記ポリイソシアネートは、単独で用いてもよいし、二種類以上組合せて用いてもよい。また、その他の添加剤として、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤およびシランカップリング剤などを各種特性を改良する目的で配合することもできる。
【0035】
本発明者らは、裏面保護シートを貼着した薄膜太陽電池モジュールにおいて、実使用時に耐候密着性が低下する場合があることに着目し、未処理PETと充填剤であるEVAとの密着性について検討した。その結果、前記本発明のプライマー組成物からなるプライマー層4を設けることにより、耐候性促進試験であるアイスーパーUVテスターによる200時間以上の水噴霧・光照射試験後も10N/cm以上の安定した密着強度が得られることを見出した。
【0036】
本発明においてプライマー層の形成は、まず、プライマー組成物を調製し、該組成物を保護フィルム面または封止樹脂面に固形分で3〜40g/m2の範囲で塗工し、必要に応じて溶剤を除去し、封止樹脂面に保護フィルムを貼り合わせ、プライマー組成物が熱硬化性である場合には、加熱硬化させ、プライマー組成物が光硬化性である場合には紫外線や電子線を照射して硬化させ、また、プライマー組成物が光熱硬化性である場合には、加熱および/または光を照射してプライマー層を硬化させ保護フィルムを接着させることで本発明の太陽電子モジュールが得られる。ここでプライマー層の固形分厚みが3g/m2未満であると耐候性やEVAとの密着性が不十分であり、一方、プライマー層の固形分厚みが40g/m2を超えると、プライマー組成物の乾燥性が悪くなり、ブロッキングを起こす場合がある。
【0037】
本発明によれば、前記イソシアネート基を有するプライマー組成物を用いることで、イソシアネート基と封止樹脂中のEVAの水酸基とが反応し、封止樹脂と裏面保護シートとの密着性が向上する。また、架橋剤としてモノマーまたはオリゴマーを使用し、架橋させることで封止樹脂と裏面保護フィルムとの密着性が向上する。さらに架橋剤として2個以上のイソシアネート基と1個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物を使用することで封止樹脂と裏面保護フィルムとの密着性がさらに向上する。
【実施例】
【0038】
以下、実施例および比較例により本発明を詳細に説明する。なお、実施例中の「部」および「%」はすべて質量部および質量%を表している。
比較例1〜6、実施例1、2
下記表1の配合を、ペイントシェーカー(直径2mmガラスビーズ使用)を用いて分散し、カーボンブラック分散液および酸化チタン分散液とした。

【0039】
上記分散液を用いて下記表2、3に記載の比較例および実施例のプライマー組成物(配合液)を得た。比較例は、エチレン性不飽和基を含むポリイソシアネートcとモノマーbとの両方を使用しない場合であり、実施例は、エチレン性不飽和基を含むポリイソシアネートcとモノマーbとの両方を使用した場合である。
【0040】

【0041】

*1:HDI系イソシアネート
*2:ジアリルイソシアヌレート
・チヌビン400:紫外線吸収剤、チバ・ジャパン(株)製
・イルガキュアー184:光重合開始剤、チバ・ジャパン(株)製
【0042】
上記配合液を、コロナ処理および易接着層処理を施していない裏面保護シート(188μm未処理PETフィルム<東レ(株)製>)に、バーコーター#16にて8〜10μm程度の膜厚になるように塗布してプライマー層を形成し、130℃にて20秒乾燥後、プライマーがモノマーおよびオリゴマーを含む場合は、さらに高圧水銀灯(80W/cm、コンベア速度10m/min、積算光量150mJ/cm2、パス回数2回)で光硬化を行った。
【0043】
その後に、50℃にて2日間エージングを行った。エージング後、EVAと真空ラミネート法にて圧着させた。圧着温度・時間は150℃、15分行い、試験片を得た。比較として、試験片をアイスーパーUVテスター<岩崎電気株式会社製>(照射強度:100mW/cm2、照射距離:240mm)にて、20時間照射→10秒シャワー→4時間結露のサイクルを10サイクル(240時間)行い、耐候性試験後の接着強度測定の試験片を得た。接着強度測定には、引張試験機<(株)オリエンテック製>を用い、引っ張り速度は100mm/minとした。また、未処理PETフィルムとの密着性の確認には、24mm幅セロテープ(登録商標、ニチバン(株)製)を用い、同一箇所を5回剥離し、表面状態を観察した。結果を表4に示す。
【0044】

【0045】
上記のように、プライマー組成物が、フッ素系共重合体にエチレン性不飽和基を含むポリイソシアネートと、モノマーまたはオリゴマーとが共存した光熱硬化性組成物である場合、光硬化組成物のみの場合(比較例3、6)および熱硬化性組成物のみの場合(比較例1、2、4、5)に比べて、未処理PETフィルムとの密着性が良好で、かつ耐候性試験前は15N以上、また、耐候性試験後も10N/cm以上と高い接着強度を保つことができ、信頼性の高いモジュールが得られることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、裏面保護シートに密着性が高いプライマー層を施すことにより、裏面保護シートが封止樹脂であるEVA樹脂とも安定した密着強度を保持し、さらには長時間の屋外暴露によってもその密着強度の低下を防止することができる太陽電池モジュール、および該モジュールの構成に使用するプライマー組成物が提供される。
【符号の説明】
【0047】
1:ガラス
2:太陽電池素子
3:封止樹脂
4:プライマー層
5:裏面保護シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(1)上に順に積層された太陽電池素子(2)と、太陽電池素子全面を覆う封止樹脂(3)と、裏面保護シート(5)とを含む太陽電池モジュールであって、上記裏面保護シート(5)は、フッ素系共重合体、アクリル系共重合体またはポリウレタン系重合体(重合体a)と、エチレン性不飽和基を1個以上有する重合性モノマーおよび/またはオリゴマー(モノマーb)、および/または分子内に1個以上のエチレン性不飽和基と2個以上のイソシアネート基を含有する化合物(ポリイソシアネートc)とからなるプライマー層(4)を有し、上記封止樹脂(3)と裏面保護シート(5)との接着強度が、15N/cmより大きく、耐候性試験後においても10N/cmよりも大きいことを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記耐候性試験が、アイスーパーUV試験(水噴霧/光照射)において200hrs以上の照射である請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記プライマー層が、紫外線吸収剤を含有する請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記プライマー層が、耐候性を有する無機系または有機系顔料を分散してなる着色プライマー層である請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
フッ素系共重合体、アクリル系共重合体またはポリウレタン系重合体(重合体a)と、エチレン性不飽和基を1個以上有する重合性モノマーおよび/またはオリゴマー(モノマーb)、および/または分子内に1個以上のエチレン性不飽和基と2個以上のイソシアネート基を含有する化合物(ポリイソシアネートc)とからなり、上記モノマーおよび/またはオリゴマー(モノマーb)の数平均分子量(Mn)が1,000〜5,000の範囲であり、前記モノマーbの含有量が、前記重合体aの1〜30質量%、好ましくは2〜10質量%の範囲であり、上記ポリイソシアネートcの含有量が、前記重合体aの5〜50質量%、好ましくは10〜30質量%であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュールに使用するプライマー組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2011−18872(P2011−18872A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248366(P2009−248366)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】