太陽電池モジュールの封止方法および太陽電池モジュールの封止装置
【課題】短時間で封止プロセスを行うことができると共に太陽電池モジュール内に残留する空気を軽減することができるようにする。
【解決手段】封止樹脂が溶融する温度よりも低い温度で積層体10,20を加熱加圧して、封止樹脂を軟化させる。次に、積層体10,20を加熱加圧し、積層体10,20の中央部から昇温させて封止樹脂を溶融させる。
【解決手段】封止樹脂が溶融する温度よりも低い温度で積層体10,20を加熱加圧して、封止樹脂を軟化させる。次に、積層体10,20を加熱加圧し、積層体10,20の中央部から昇温させて封止樹脂を溶融させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の板材の間に封止樹脂を介在させて太陽電池セルや太陽電池の薄膜層を封止する太陽電池モジュールの封止方法及び太陽電池モジュールの封止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、結晶系太陽電池は、多結晶シリコン基板や単結晶シリコン基板など硬質の基板に各種不純物を拡散ドーピングして太陽電池と成しているため、これを用いた太陽電池モジュールも硬質なモジュールとなる。
【0003】
表面側には、透明度の高い硝子板が用いられる。一方、裏面側は透湿性の低いアルミ箔やPETまたはフッ素樹脂フィルムを外装に接着剤で各種の樹脂フィルムを積層したバックシートもしくは硝子板を用いる。屋根の上や外壁の外側などに設置する場合は、背面からの見栄えや光の透過を期待しないので前者が好まれるが、太陽電池モジュールを窓に設置する場合や、太陽電池モジュール自体を屋根プレートとして用いる場合は背面からの外観を高めるために裏面も硝子板を用いたモジュールが利用されている。なおこれらの封止において封止樹脂としてはEVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)が広く用いられている。
【0004】
従来の薄膜太陽電池や化合物太陽電池においても前記の状況は変わらなかったが、近年、CdTe−CdS系太陽電池において裏面側材料をガラス板とすることによる合せガラスの強度向上を期待して、従来の太陽電池で必須であった周辺の補強アルミフレームを省略する方式が用いられている。
この構造は、裏面側のガラス板を強度部材とすることによりアルミ補強フレームを用いずに強度を保ち、ガラス特有の酸素遮断性能、蒸気遮断性能の高さを利用することで各種フィルムの積層によるバックシートを省略することで大幅なコスト低減を実現している。
【0005】
従来のEVAを用いた封止プロセスとしては、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。特許文献1に開示された方法では、まず、真空排気を行いながらEVAの軟化点以下(例えば80度以上)まで予熱してから、更に加熱してEVAが軟化する温度(例えば110度以上)まで昇温する。そして、さらに架橋が良好に進む温度(例えば約150度)まで加熱して真空中でプレスを行い、ある程度冷却してからプレスから取り出し、多数をオーブンでキュアしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−238898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、真空排気を伴う長時間の加熱プロセスが必要となり、処理時間が長くなっていた。また、真空排気を行わない方法では、太陽電池モジュール内に空気が残留するおそれがあった。そして、太陽電池モジュール内に残留した空気は、光の透過率の低下や、美観が損なわれる等の不具合の原因となる。
【0008】
本発明の目的は、短時間で封止プロセスを行うことができると共に太陽電池モジュール内に残留する空気を軽減することができる太陽電池モジュールの封止方法及び太陽電池モジュールの封止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の太陽電池モジュールの封止方法は、一対の板材の間に封止樹脂を介在させて太陽電池モジュールの封止を行う方法であって、以下の(1)から(3)に示す工程を有する。
(1)一対の板材及び封止樹脂を積層させて積層体を形成する積層工程。
(2)封止樹脂が溶融する温度よりも低い温度で積層体を加熱加圧する第1の加熱加圧工程。
(3)第1の加熱加圧工程によって加熱加圧された積層体を第1の加熱加圧工程よりも高い温度で加熱加圧し、積層体の中央部から昇温させて封止樹脂を溶融させる第2の加熱加圧工程。
【0010】
また、本発明の太陽電池モジュールの封止装置は、上述した太陽電池モジュールの封止方法に用いられるものであって、第1の加熱加圧ユニットと、第2の加熱加圧ユニットとを備えている。
第1の加熱加圧ユニットは、一対の板材及び封止樹脂が積層された積層体を封止樹脂が溶融する温度よりも低い温度で加熱加圧する。そして、第2の加熱加圧ユニットは、積層体を第1の加熱加圧ユニットよりも高い温度で加熱加圧し、積層体の中央部から昇温させて封止樹脂を溶融させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の太陽電池モジュールの封止方法及び封止装置によれば、必ずしも真空排気を行うことなく封止プロセルを行うことができるため、処理時間の短縮を図ることができる。さらに、2回目の加熱加圧工程において、太陽電池モジュールを中央部から昇温することで、太陽電池モジュール内に残留した空気を太陽電池モジュールの周辺部から外部に押し出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】封止処理が行われる前の太陽電池モジュールの一例を示す断面図である。
【図2】封止処理が行われる前の太陽電池モジュールの他の例を示す断面図である。
【図3】本発明の太陽電池モジュールの封止装置の第1の実施の形態例における概略構成図である。
【図4】図3に示す太陽電池モジュールの封止装置における第2の加熱加圧ユニットを示す概略構成図である。
【図5】本発明の太陽電池モジュールの封止方法にかかる封止処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】図3に示す太陽電池モジュールの封止装置における処理条件を示す条件図である。
【図7】図3に示す太陽電池モジュールの封止装置の各工程における封止樹脂の温度を示すグラフである。
【図8】本発明の太陽電池モジュールの封止装置における第2の実施の形態例にかかる第2の加熱加圧ユニットを示す概略構成図である。
【図9】図8に示す太陽電池モジュールの封止装置の各工程における封止樹脂の温度を示すグラフである。
【図10】本発明の太陽電池モジュールの封止装置における第3の実施の形態例にかかる第2の加熱加圧ユニットを示す概略構成図である。
【図11】図10に示す太陽電池モジュールの封止装置の各工程における封止樹脂の温度を示すグラフである。
【図12】本発明の太陽電池モジュールの封止装置における更に他の実施の形態例にかかる第2の加熱加圧ユニットのヒータを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の太陽電池モジュールの封止方法及び封止装置の実施の形態例について、図1〜図10を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。また、本発明は、以下の形態に限定されるものではない。
【0014】
[太陽電池モジュールの構成例]
まず、封止処理が行われる前の太陽電池モジュール(以下、「積層体」という。)の構成例について、図1を参照して説明する。
図1は、積層体の一例を示す断面図である。この図1に示す積層体は、薄膜系太陽電池モジュールの積層体である。
【0015】
図1に示すように、積層体10は、表面側となるガラス基板1と、裏面側となる板材3と、封止樹脂2とを有している。ガラス基板1は、透明度に優れたガラス板1aと、このガラス板1aの上に形成された太陽電池薄膜1bと、太陽電池薄膜1bに接合される配線1cとをから構成されている。また、太陽電池薄膜1bは、隣り合う太陽電池薄膜1bとの絶縁のために、レーザスクライブによりスクライブライン1dが形成されている。
【0016】
このガラス基板1における太陽電池薄膜1b及び配線1cが形成された面には、シート状の封止樹脂2が積層される。封止樹脂2としては、例えば、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)や、PVB(ポリビニルブラチノール)等が挙げられる。なお、封止樹脂2として、PVBを用いる場合、水分含有量を0.5%以下、望むらくは0.3%以下に保ったものが好ましい。
【0017】
この封止樹脂2の表面には、スタッキングによって封止樹脂2が互いに付着することを防止するために、封止樹脂2の表層には、微細な凹凸がシボ加工により設けられている。そして、この封止樹脂2の上に板材3が重ね合わさる。板材3としては、例えば、ガラス板や、透湿性の低いアルミ箔やPETまたはフッ素樹脂フィルムを外装に接着剤で各種の樹脂フィルムを積層したバックシート等が用いられる。
【0018】
次に、他の例にかかる積層体の構成について図2を参照して説明する。
図2は、積層体の他の例を示す断面図である。図2に示す積層体は、結晶系太陽電池モジュールの積層体である。
【0019】
図2に示すように、積層体20は、表面側となるガラス板21と、裏面側となる板材23と、ガラス板21と板材23の間に介在されるセルストリング24と、封止樹脂2とを有している。なお、ガラス板21は、薄膜系太陽電池モジュールの積層体10にかかるガラス板1aと同一の構成を有しており、板材23は、積層体10の板材3と同一の構成を有している。また、封止樹脂2も積層体10と同一の構成を有している。そのため、ここでは、それらの説明を省略する。
【0020】
セルストリング24は、複数のセル24aと、配線24bとから構成されている。セル24aは、表裏に電極パターンを有している。このセル24aの表裏には、配線24bが貼り付けられている。そして、セルストリング24とガラス板21の間と、セルストリング24と板材23の間には、シート状の封止樹脂2が介在される。
【0021】
1.第1の実施の形態例
[太陽電池モジュールの封止装置]
次に、本発明の第1の実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかる太陽電池モジュールの封止装置(以下、「封止装置」という。)の構成について図3及び図4を参照して説明する。
図3は、本例の封止装置を示す概略構成図、図4は、本例の封止装置にかかる第2の加熱加圧ユニットを示す概略構成図である。
【0022】
図3に示すように、封止装置100は、投入ステージ101と、搬送ユニット102と、予熱ユニット103と、第1の加熱加圧ユニット104と、第2の加熱加圧ユニット105と、取り出しステージ106とを有している。取り出しステージ106は、投入ステージ101、第1の加熱加圧ユニット104及び第2の加熱加圧ユニット105の下流側に配置される。
【0023】
投入ステージ101は、複数のローラ111からなるローラコンベアである。この投入ステージ101において、上述した積層体10,20が積層される。なお、積層工程を他のステージで行い、積層済みの積層体10,20を投入ステージ101のローラ111に載置してもよい。積層体10,20は、投入ステージ101のローラ111の回転に伴い、搬送ユニット102に送られる。
【0024】
搬送ユニット102は、ベルト121と、駆動ローラ122と、第1の従動ローラ123a,第2の従動ローラ123bとからなるベルトコンベアである。なお、搬送ユニット102としては、ベルトコンベア以外に、ローラ駆動式やその他各種の搬送機器を用いてもよい。
【0025】
ベルト121は、封止温度や封止加圧に繰り返し耐える必要がある。そのため、ベルト121としては、例えばガラス繊維補強されたシリコンゴムシート等が適用される。このベルト121は、無端ベルトになっている。そして、ベルト121は、駆動ローラ122、第1の従動ローラ123a及び第2の従動ローラ123bに掛け渡されている。
【0026】
第1の従動ローラ123aは、投入ステージ101側に配置されており、第2の従動ローラ123bは、投入ステージ101よりも搬送方向後方に設けられた取り出しステージ106側に配置されている。この第1の従動ローラ123aと第2の従動ローラ123bによって、ベルト121は、投入ステージ101と取り出しステージ106の間で平坦に保持される。
【0027】
駆動ローラ122は、ベルト121に巻き掛けられている。この駆動ローラ122が駆動することで、ベルト121が回転駆動する。この搬送ユニット102によって、積層体10,20は、予熱ユニット103、第1の加熱加圧ユニット104、第2の加熱加圧ユニット105の順に搬送される。
【0028】
予熱ユニット103は、例えば、赤外線ランプから構成される。この予熱ユニット103は、投入ステージ101からベルト121に送られた積層体10,20を加熱する。予熱ユニット103のワーク温度及び処理時間については、後述する。そして、予熱ユニット103によって温められた積層体10,20は、第1の加熱加圧ユニット104に搬送される。
【0029】
第1の加熱加圧ユニット104は、加熱ステージ141と、加熱加圧ヘッド142と、加熱加圧ヘッド142を昇降駆動する加圧機構143とを有している。加熱ステージ141及び加熱加圧ヘッド142内には、ヒータが内蔵されている。
【0030】
加熱ステージ141は、ベルト121の内側に配置されている。加熱加圧ヘッド142は、加圧機構143に昇降可能に支持された状態で、ベルト121を間に挟んで加熱ステージ141と対向して配置される。加圧機構143には、実時間での加圧監視を行うセンサが内蔵されており、加熱加圧ヘッド142による積層体10,20への加圧力を調整している。これにより、加熱加圧ヘッド142による積層体10,20への加圧力の変動を防止している。また、第1の加熱加圧ユニット104は、図示しない上位コントローラからのプロセス指令に基づき任意のタイミングで加圧力の調整が可能である。
【0031】
第1の加熱加圧ユニット104に搬送された積層体10,20は、加熱ステージ141と加熱加圧ヘッド142に挟持されて、予め設定された温度、圧力、時間で一回目の加熱加圧処理が施される。なお、第1の加熱加圧ユニット104の温度、圧力、時間と、このときの積層体10,20の状態については、後述する。
【0032】
第1の加熱加圧ユニット104によって一回目の加熱加圧処理が施された積層体10,20は、第2の加熱加圧ユニット105に搬送される。図4に示すように、第2の加熱加圧ユニット105は、加熱ステージ151と、加熱加圧ヘッド152と、加熱加圧ヘッド152を昇降駆動する加圧機構153とを有している。
【0033】
加熱ステージ151は、ベルト121の下側に配置されている。加熱加圧ヘッド152は、加圧機構153に昇降可能に支持された状態で、ベルト121を間に挟んで加熱ステージ151と対向して配置される。また、加熱加圧ヘッド152の表面には、硬質耐熱ゴムの厚板である不図示のクッションシートが取り付けられる。クッションシートの材質としては、例えば、EPDMゴム等が挙げられる。
【0034】
また、加熱加圧ヘッド152内には、中央部ヒータ152aと、周辺部ヒータ152bが内蔵されている。中央部ヒータ152aは、加熱加圧ヘッド152における積層体10,20に当接する面部の中央部に配置されており、積層体10,20の中央部を加熱する。周辺部ヒータ152bは、加熱加圧ヘッド152における積層体10,20に当接する面部の周辺部に配置されており、積層体10,20における一対の板材の面の周辺部を加熱する。
【0035】
さらに、加熱ステージ151内にも、加熱加圧ヘッド152と同様に、中央部ヒータ151aと、周辺部ヒータ151bが内蔵されている。中央部ヒータ151aは、加熱ステージ151の中央部に配置されており、周辺部ヒータ151bは、加熱ステージ151の周辺部に配置されている。そして、中央部ヒータ151aは、積層体10,20における一対の板材の面の中央部を加熱し、周辺部ヒータ151bは、積層体10,20における一対の板材の面の周辺部を加熱する。
【0036】
そして、中央部ヒータ151a,152aの温度は、周辺部ヒータ151b、152bの温度よりも高く設定されている。そのため、第2の加熱加圧ユニット105によって、積層体10,20は、積層体10,20における板材の面の中央部から昇温される。
【0037】
なお、本例では、加熱ステージ151及び加熱加圧ヘッド152の両方とも中央部ヒータ151a,152aの温度を周辺部ヒータ151b,152bよりも高く設定したが、これに限定されるものではない。加熱ステージ151または加熱加圧ヘッド152のどちらか一方の中央部ヒータ151a,152aの温度を周辺部ヒータ151b,152bよりも高く設定すればよい。
【0038】
加圧機構153には、実時間での加圧監視を行うセンサが内蔵されており、加熱加圧ヘッド152による積層体10,20への加圧力を調整している。これにより、加熱加圧ヘッド152による積層体10,20への加圧力の変動を防止している。また、第2の加熱加圧ユニット105は、第1の加熱加圧ユニット104と同様に、図示しない上位コントローラからのプロセス指令に基づき任意のタイミングで加圧力の調整が可能である。
【0039】
第2の加熱加圧ユニット105に搬送された積層体10,20は、加熱ステージ151と加熱加圧ヘッド152に挟持されて、予め設定された温度、圧力、時間で2回目の加熱加圧処理が施される。そして、積層体10,20に設けられた封止樹脂2(図1及び図2参照)が溶融する。また、封止樹脂2として熱硬化性樹脂を用いた場合は、重合を起こして硬化する。なお、第2の加熱加圧ユニット105の温度、圧力、時間と、このときの積層体10,20の状態については、後述する。
【0040】
第2の加熱加圧ユニット105のよって、2回目の加熱加圧が施された積層体10,20は、取り出しステージ106に搬送される。図3に示すように、取り出しステージ106は、投入ステージ101と同様に複数のローラ161からなるローラコンベアである。積層体10は、取り出しステージ106によって自然冷却により速やかに冷却されつつ、図示しない搬出機構により搬出される。
【0041】
[太陽電池モジュールの封止方法]
次に、図5〜図7を参照して太陽電池モジュールの封止方法について説明する。
図5は、本例の積層体10,20の封止処理の流れを示すフローチャート、図6は、本例の処理条件を示す条件図、図7は、各工程における積層体の封止樹脂の温度を示すグラフである。図6に示すワーク温度、加圧力、及び処理時間は、封止樹脂2の材質や積層体の種類によって適宜設定されるものである。なお、図6に示す条件は、薄膜系太陽電池モジュールに対応したものである。
【0042】
なお、予め太陽電池形成工程において、図1に示す積層体10では、ガラス板1aの上に太陽電池薄膜1bと配線1cが設けられてガラス基板1が形成されている。また、図2に示す積層体20では、複数のセル24aが配線24bによって連結されてセルストリング24が形成される。
【0043】
まず、一対の板材であるガラス基板1及び板材3と、封止樹脂2を重ね合わせる積層工程を行う(ステップS1)。なお、図2に示す積層体20では、一対の板材であるガラス板21及び板材23と、セルストリング24と、封止樹脂2を重ね合わせる。ステップS1の積層工程は、図3に示す投入ステージ101で行ってもよく、あるいは他のステージで積層工程を行い、投入ステージ101に搬送してもよい。この積層工程において、相互の位置決めはされているが、接着はされていない。
【0044】
次に、予熱ユニット103によって積層体10,20を温める予熱工程を行う(ステップS2)。ステップS2の予熱工程における、ワーク温度は、封止樹脂2が軟化しない温度に設定されている。例えば、図6に示すように、ワーク温度が90度に設定されており、処理時間は、120秒に設定されている。この予熱工程によって、封止樹脂2の昇温中の温度ムラを軽減することができる。
【0045】
ステップS2における予熱工程が終了すると、図3に示すように、積層体10,20は、第1の加熱加圧ユニット104に搬送される。次に、積層体10,20を第1の加熱加圧ユニット104によって1回目の加熱加圧である第1の加熱加圧工程を行う(ステップS3)。
【0046】
ステップS3におけるワーク温度は、封止樹脂2の軟化温度付近であって、わずかな流動性を示す温度に設定されている。また、加圧力は、封止樹脂2の表面に形成された微少な凹凸が変形しない程度、あるいは若干変形する程度の圧力に設定されている。例えば、図6に示すように、ワーク温度は、100度に設定され、加圧力は、0.05MPaに設定されている。また、処理時間は、120秒に設定されている。
【0047】
この第1の加熱加圧工程によって、積層体10,20の封止樹脂2は、加圧によって内部流動が生じ、一対の板材(積層体10では、ガラス基板1と板材3、積層体20では、ガラス板21と板材23)の間の隙間を埋めるように変形する。これにより、封止樹脂2が一対の板材の間に形成された空間に馴染む。なお、封止樹脂2が完全に溶融まで至らないため、積層体10,20内では、場所によって空気が残留する。
【0048】
次に、積層体10,20を第2の加熱加圧ユニット105(図4参照)に搬送する。そして、この第2の加熱加圧ユニット105によって積層体10,20に対して2回目の加熱加圧である第2の加熱加圧工程を行う(ステップS4)。なお、ステップS3において、封止樹脂2は、完全に固着していないが、軽く粘着している。そのため、第1の加熱加圧ユニット104から第2の加熱加圧ユニット105に搬送する際に、積層体10,20を構成する部材がずれることがなくなる。
【0049】
ステップS4である第2の加熱加圧工程によって、封止樹脂2は、完全に溶融する。なお、封止樹脂2として熱硬化性樹脂を用いた場合は、溶融し、さらに加熱されることで重合する。
【0050】
ステップS4におけるワーク温度、加圧力及び処理時間は、封止樹脂2が完全に溶融する温度、加圧力及び処理時間に設定されている。例えば、図6に示すように、周辺部ヒータ151b,152bのワーク温度は、160度に設定されており、中央部ヒータ151a,152aのワーク温度は、周辺部ヒータ151b,152bよりも高い165度に設定されている。また、加圧力は、0.05MPaに設定されており、処理時間は、120秒に設定されている。
【0051】
ここで、第2の加熱加圧ユニット105における中央部ヒータ151a,152aのワーク温度は、周辺部ヒータ151b,152bよりも高い温度に設定している。そのため、積層体10,20における封止樹脂2の中央部は、図7に示すように、周辺部よりも先に昇温する。そして、封止樹脂2は、積層体10,20の中央部から溶融する。よって、積層体10,20に残留する空気は、溶融した封止樹脂2によって積層体10,20の中央部から周辺部に滞りなく押し出される。その結果、積層体10,20内に残留する空気の量を軽減することができる。
【0052】
また、ステップS3の第1の加熱加圧工程において、封止樹脂2の表面に形成されたシボ加工された凹凸が完全に潰れておらず、封止樹脂2の粘りが微少である。そのため、ステップS4の第2の加熱加圧工程によって、シボ加工が施された封止樹脂2の表面の微少な凹凸の間から空気をスムーズに押し出すことができる。
【0053】
そして、このステップS4の第2の加熱加圧工程によって、積層体10,20は、封止樹脂2により封止される。
【0054】
次に、ステップ4における第2の加熱加圧工程が終了すると、積層体10,20は、取り出しステージ106に搬送され、自然冷却によって速やかに冷却される(ステップS5)。そして、冷却された積層体10,20は、次工程に搬出される(ステップS6)。一般には次工程は積層体10,20の太陽電池モジュールの周辺部のコーキング工程である。これにより、積層体10,20の封止処理が完了する。
【0055】
なお、本例の太陽電池モジュールの封止方法によれば、積層体10,20を加熱加圧する工程を2回に分けることで、1回の加熱加圧工程に要する処理時間を短縮することができ、他の工程とのタクトのバランスを整えることができる。その結果、ラインタクトが乱れることを防止でき、作業効率の向上を図り処理時間を短縮することができる。
【0056】
2.第2の実施の形態例
次に、本発明の太陽電池モジュールの封止装置の第2の実施の形態例について図8及び図9を参照して説明する。
図8は、第2の実施の形態例にかかる第2の加熱加圧ユニットを示す概略構成図、図9は、第2の実施の形態例にかかる第2の加熱加圧ユニットを用いた際の各工程における積層体の封止樹脂の温度を示すグラフである。
【0057】
この第2の実施の形態例にかかる封止装置200が、第1の実施の形態例にかかる封止装置100と異なる点は、第2の加熱加圧ユニットの構成である。そのため、ここでは、第2の加熱加圧ユニットについて説明し、第1の実施の形態例にかかる封止装置100と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0058】
図8に示すように、第2の実施の形態例にかかる封止装置200の第2の加熱加圧ユニット205は、加熱ステージ251と、加熱加圧ヘッド252と、加熱加圧ヘッド252を昇降駆動する加圧機構253とを有している。
【0059】
加熱ステージ251には、中央部ヒータ251aと周辺部ヒータ251bが内蔵されている。また、加熱加圧ヘッド252には、中央部ヒータ252aと周辺部ヒータ252bが内蔵されている。加熱ステージ251と加熱加圧ヘッド252に内蔵している中央部ヒータ251a、252aと周辺部ヒータ251b,252bは、それぞれ同じ温度に設定されている(図9参照)。
【0060】
また、加熱加圧ヘッド252における積層体10,20と当接する先端部は、その中央部が加熱ステージ251側、すなわち積層体10,20側に向けて膨出している。加熱加圧ヘッド252の加圧面は、円天井状に二軸方向に曲率があっても良く、あるいは円柱の側面のように一方向のみ曲率があってもよい。
【0061】
よって、加熱加圧ヘッド252は、積層体10,20の周辺部よりも先に積層体10,20の中央部に接触する。これにより、図9に示すように、積層体10,20の封止樹脂2の温度は、周辺部よりも先に中央部が昇温され、溶融する。
【0062】
その他の構成は、上述した第1の実施の形態例にかかる第2の加熱加圧ユニット105と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する第2の加熱加圧ユニット205によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる第2の加熱加圧ユニット105と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0063】
なお、加熱ステージ251におけるベルト121を介して積層体10,20が載置される一面、すなわち加熱加圧ヘッド252と対向する一面を、その中央部が加熱ステージ側に向けて膨出するように形成してもよい。加熱加圧ヘッド252と加熱ステージ251のどちらか一方の対向する面の中央部を積層体10,20側に向けて膨出するように形成すればよい。
【0064】
3.第3の実施の形態例
次に、本発明の太陽電池モジュールの封止装置300の実施の形態例について図10及び図11を参照して説明する。
図10は、第2の実施の形態例にかかる第2の加熱加圧ユニットを示す概略構成図である。図11は、第3の実施の形態例にかかる第2の加熱加圧ユニットを用いた際の各工程における積層体の封止樹脂の温度を示すグラフである。
【0065】
この第3の実施の形態例にかかる封止装置300が、第1の実施の形態例にかかる封止装置100と異なる点は、第2の加熱加圧ユニットの構成である。そのため、ここでは、第2の加熱加圧ユニットについて説明し、第1の実施の形態例にかかる封止装置100と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0066】
図10に示すように、第3の実施の形態例にかかる封止装置300の第2の加熱加圧ユニット305は、加熱ステージ351と、加熱加圧ヘッド352と、加熱加圧ヘッド352を昇降駆動する加圧機構353とを有している。
【0067】
加熱ステージ351には、中央部ヒータ351aと周辺部ヒータ351bが内蔵されている。また、加熱加圧ヘッド352には、中央部ヒータ352aと周辺部ヒータ352bが内蔵している。加熱ステージ351と加熱加圧ヘッド352に内蔵している中央部ヒータ351a、252aと周辺部ヒータ351b,352bは、それぞれ同じ温度に設定されている。
【0068】
また、加熱ステージ351における中央部ヒータ351aと周辺部ヒータ351bの伝熱特性が異なっている。同様に、加熱加圧ヘッド352における中央部ヒータ352aと周辺部ヒータ352bの伝熱特性が異なっている。具体的には、中央部ヒータ351a,352aの熱伝導率は、周辺部ヒータ351b,352bの熱伝導率よりも高く設定されている。熱伝導率を変化させるために、中央部ヒータ351a,352aの周りに熱伝導率の高い材質、例えば、銅を含ませ、周辺部ヒータ351b、352bの周りに熱伝導率の低い材質、例えばステンレスを含ませる。
【0069】
この第3の実施の形態例にかかる第2の加熱加圧ユニット305によれば、図11に示すように、中央部ヒータ351a,352aの熱伝導率が周辺部ヒータ351b,352bの熱伝導率よりも高いため、積層体10,20の中央部を周辺部よりも早く昇温させることができる。そして、第3の実施の形態例にかかる第2の加熱加圧ユニット305を用いた際における積層体10,20の封止樹脂2の温度変化は、積層体10,20の封止樹脂2の温度は、周辺部よりも早く中央部が昇温され、溶融する。
【0070】
その他の構成は、上述した第1の実施の形態例にかかる第2の加熱加圧ユニット105と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する第2の加熱加圧ユニット305によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる第2の加熱加圧ユニット105と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0071】
また、この第3の実施の形態例にかかる第2の加熱加圧ユニット305では、加熱ステージ351及び加熱加圧ヘッド352の両方とも中央部と周辺部の熱伝導率を変化させたが、これに限定されるものではない。加熱ステージ351または加熱加圧ヘッド352のうちどちらか一方の熱伝導率を変化させてもよい。
【0072】
なお、第2の実施の形態例及び第3の実施の形態例にかかる第2の加熱加圧ユニット205,305では、全てのヒータの温度を同じに設定したが、これに限定されるものではない。例えば、第1の実施の形態例にかかる第2の加熱加圧ユニット105と同様に、中央部ヒータ251a,252a,351a,352aの温度を周辺部ヒータ251b,252b,352b,352bよりも高く設定してもよい。さらに、中央部ヒータ251a,252a,351a,352aを加熱加圧の途中で温度を周辺部ヒータヒータ251b,252b,352b,352bよりも高くなるように変更してもよい。
【0073】
以上、本発明の太陽電池モジュールの封止方法及び封止装置の実施の形態について、その作用効果も含めて説明した。しかしながら、本発明の太陽電池モジュールの封止方法及び封止装置は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0074】
例えば、加熱加圧ヘッドの先端部の表面に取り付けられるクッションシートの中央部の厚みを周辺部よりも薄くすることで、積層体の中央部を周辺部よりも先に昇温させるようにしてもよい。また、クッションシートの中央部のゴムを周辺部に比べ熱伝導性に優れた配合とすることで、同様の効果を得ることもできる。
【0075】
さらに、第1の実施の形態例にかかる第2の加熱加圧ユニット105では、中央部と周辺部を別々の制御系に分けることで、中央部のヒータを周辺部のヒータよりも高温とする例を示したが、これを図12に示すように単一の制御系で実施することも可能である。
【0076】
図12は、さらに他の実施の形態例にかかる第2の加熱加圧ユニットのヒータを示す説明図である。
この図12に示すように、ヒータ線452cをヒータ452の加圧面における中央部に集中して配置し、周辺部は、疎となるように配置する。そして、中央部に配置した温度センサ456で、温度調節することで、中央部から周辺部に行くにしたがって、ヒータ452の加圧面の温度が低くなるように構成することも可能である。
【0077】
また、上述した実施の形態例では、真空排気は不要として記述したが、真空排気を併用することで、空気の押し出しを補助することも当然可能である。
【符号の説明】
【0078】
1…ガラス基板(板材)、 1a…ガラス板、 1b…太陽電池薄膜、 1c…配線、 2…封止樹脂、 3…板材、 10,20…積層体、 21…ガラス板(板材)、 23…板材、 24…セルストリング、 24a…セル、 24b…配線、 100,200,300…封止装置、 101…投入ステージ、 102…搬送ユニット、 103…予熱ユニット、 104…第1の加熱加圧ユニット、 105,205,305…第2の加熱加圧ユニット、 106…取り出しステージ、 151,251,351…加熱ステージ、 151a,152a,251a,252a,351a,352a…中央部ヒータ(中央部のヒータ)、 151b,152b,251b,252b,351b,352b…周辺部ヒータ(周辺部のヒータ)、 152,252,352…加熱加圧ヘッド、 153,253,353…加圧機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の板材の間に封止樹脂を介在させて太陽電池セルや太陽電池の薄膜層を封止する太陽電池モジュールの封止方法及び太陽電池モジュールの封止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、結晶系太陽電池は、多結晶シリコン基板や単結晶シリコン基板など硬質の基板に各種不純物を拡散ドーピングして太陽電池と成しているため、これを用いた太陽電池モジュールも硬質なモジュールとなる。
【0003】
表面側には、透明度の高い硝子板が用いられる。一方、裏面側は透湿性の低いアルミ箔やPETまたはフッ素樹脂フィルムを外装に接着剤で各種の樹脂フィルムを積層したバックシートもしくは硝子板を用いる。屋根の上や外壁の外側などに設置する場合は、背面からの見栄えや光の透過を期待しないので前者が好まれるが、太陽電池モジュールを窓に設置する場合や、太陽電池モジュール自体を屋根プレートとして用いる場合は背面からの外観を高めるために裏面も硝子板を用いたモジュールが利用されている。なおこれらの封止において封止樹脂としてはEVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)が広く用いられている。
【0004】
従来の薄膜太陽電池や化合物太陽電池においても前記の状況は変わらなかったが、近年、CdTe−CdS系太陽電池において裏面側材料をガラス板とすることによる合せガラスの強度向上を期待して、従来の太陽電池で必須であった周辺の補強アルミフレームを省略する方式が用いられている。
この構造は、裏面側のガラス板を強度部材とすることによりアルミ補強フレームを用いずに強度を保ち、ガラス特有の酸素遮断性能、蒸気遮断性能の高さを利用することで各種フィルムの積層によるバックシートを省略することで大幅なコスト低減を実現している。
【0005】
従来のEVAを用いた封止プロセスとしては、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。特許文献1に開示された方法では、まず、真空排気を行いながらEVAの軟化点以下(例えば80度以上)まで予熱してから、更に加熱してEVAが軟化する温度(例えば110度以上)まで昇温する。そして、さらに架橋が良好に進む温度(例えば約150度)まで加熱して真空中でプレスを行い、ある程度冷却してからプレスから取り出し、多数をオーブンでキュアしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−238898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、真空排気を伴う長時間の加熱プロセスが必要となり、処理時間が長くなっていた。また、真空排気を行わない方法では、太陽電池モジュール内に空気が残留するおそれがあった。そして、太陽電池モジュール内に残留した空気は、光の透過率の低下や、美観が損なわれる等の不具合の原因となる。
【0008】
本発明の目的は、短時間で封止プロセスを行うことができると共に太陽電池モジュール内に残留する空気を軽減することができる太陽電池モジュールの封止方法及び太陽電池モジュールの封止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の太陽電池モジュールの封止方法は、一対の板材の間に封止樹脂を介在させて太陽電池モジュールの封止を行う方法であって、以下の(1)から(3)に示す工程を有する。
(1)一対の板材及び封止樹脂を積層させて積層体を形成する積層工程。
(2)封止樹脂が溶融する温度よりも低い温度で積層体を加熱加圧する第1の加熱加圧工程。
(3)第1の加熱加圧工程によって加熱加圧された積層体を第1の加熱加圧工程よりも高い温度で加熱加圧し、積層体の中央部から昇温させて封止樹脂を溶融させる第2の加熱加圧工程。
【0010】
また、本発明の太陽電池モジュールの封止装置は、上述した太陽電池モジュールの封止方法に用いられるものであって、第1の加熱加圧ユニットと、第2の加熱加圧ユニットとを備えている。
第1の加熱加圧ユニットは、一対の板材及び封止樹脂が積層された積層体を封止樹脂が溶融する温度よりも低い温度で加熱加圧する。そして、第2の加熱加圧ユニットは、積層体を第1の加熱加圧ユニットよりも高い温度で加熱加圧し、積層体の中央部から昇温させて封止樹脂を溶融させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の太陽電池モジュールの封止方法及び封止装置によれば、必ずしも真空排気を行うことなく封止プロセルを行うことができるため、処理時間の短縮を図ることができる。さらに、2回目の加熱加圧工程において、太陽電池モジュールを中央部から昇温することで、太陽電池モジュール内に残留した空気を太陽電池モジュールの周辺部から外部に押し出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】封止処理が行われる前の太陽電池モジュールの一例を示す断面図である。
【図2】封止処理が行われる前の太陽電池モジュールの他の例を示す断面図である。
【図3】本発明の太陽電池モジュールの封止装置の第1の実施の形態例における概略構成図である。
【図4】図3に示す太陽電池モジュールの封止装置における第2の加熱加圧ユニットを示す概略構成図である。
【図5】本発明の太陽電池モジュールの封止方法にかかる封止処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】図3に示す太陽電池モジュールの封止装置における処理条件を示す条件図である。
【図7】図3に示す太陽電池モジュールの封止装置の各工程における封止樹脂の温度を示すグラフである。
【図8】本発明の太陽電池モジュールの封止装置における第2の実施の形態例にかかる第2の加熱加圧ユニットを示す概略構成図である。
【図9】図8に示す太陽電池モジュールの封止装置の各工程における封止樹脂の温度を示すグラフである。
【図10】本発明の太陽電池モジュールの封止装置における第3の実施の形態例にかかる第2の加熱加圧ユニットを示す概略構成図である。
【図11】図10に示す太陽電池モジュールの封止装置の各工程における封止樹脂の温度を示すグラフである。
【図12】本発明の太陽電池モジュールの封止装置における更に他の実施の形態例にかかる第2の加熱加圧ユニットのヒータを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の太陽電池モジュールの封止方法及び封止装置の実施の形態例について、図1〜図10を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。また、本発明は、以下の形態に限定されるものではない。
【0014】
[太陽電池モジュールの構成例]
まず、封止処理が行われる前の太陽電池モジュール(以下、「積層体」という。)の構成例について、図1を参照して説明する。
図1は、積層体の一例を示す断面図である。この図1に示す積層体は、薄膜系太陽電池モジュールの積層体である。
【0015】
図1に示すように、積層体10は、表面側となるガラス基板1と、裏面側となる板材3と、封止樹脂2とを有している。ガラス基板1は、透明度に優れたガラス板1aと、このガラス板1aの上に形成された太陽電池薄膜1bと、太陽電池薄膜1bに接合される配線1cとをから構成されている。また、太陽電池薄膜1bは、隣り合う太陽電池薄膜1bとの絶縁のために、レーザスクライブによりスクライブライン1dが形成されている。
【0016】
このガラス基板1における太陽電池薄膜1b及び配線1cが形成された面には、シート状の封止樹脂2が積層される。封止樹脂2としては、例えば、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)や、PVB(ポリビニルブラチノール)等が挙げられる。なお、封止樹脂2として、PVBを用いる場合、水分含有量を0.5%以下、望むらくは0.3%以下に保ったものが好ましい。
【0017】
この封止樹脂2の表面には、スタッキングによって封止樹脂2が互いに付着することを防止するために、封止樹脂2の表層には、微細な凹凸がシボ加工により設けられている。そして、この封止樹脂2の上に板材3が重ね合わさる。板材3としては、例えば、ガラス板や、透湿性の低いアルミ箔やPETまたはフッ素樹脂フィルムを外装に接着剤で各種の樹脂フィルムを積層したバックシート等が用いられる。
【0018】
次に、他の例にかかる積層体の構成について図2を参照して説明する。
図2は、積層体の他の例を示す断面図である。図2に示す積層体は、結晶系太陽電池モジュールの積層体である。
【0019】
図2に示すように、積層体20は、表面側となるガラス板21と、裏面側となる板材23と、ガラス板21と板材23の間に介在されるセルストリング24と、封止樹脂2とを有している。なお、ガラス板21は、薄膜系太陽電池モジュールの積層体10にかかるガラス板1aと同一の構成を有しており、板材23は、積層体10の板材3と同一の構成を有している。また、封止樹脂2も積層体10と同一の構成を有している。そのため、ここでは、それらの説明を省略する。
【0020】
セルストリング24は、複数のセル24aと、配線24bとから構成されている。セル24aは、表裏に電極パターンを有している。このセル24aの表裏には、配線24bが貼り付けられている。そして、セルストリング24とガラス板21の間と、セルストリング24と板材23の間には、シート状の封止樹脂2が介在される。
【0021】
1.第1の実施の形態例
[太陽電池モジュールの封止装置]
次に、本発明の第1の実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかる太陽電池モジュールの封止装置(以下、「封止装置」という。)の構成について図3及び図4を参照して説明する。
図3は、本例の封止装置を示す概略構成図、図4は、本例の封止装置にかかる第2の加熱加圧ユニットを示す概略構成図である。
【0022】
図3に示すように、封止装置100は、投入ステージ101と、搬送ユニット102と、予熱ユニット103と、第1の加熱加圧ユニット104と、第2の加熱加圧ユニット105と、取り出しステージ106とを有している。取り出しステージ106は、投入ステージ101、第1の加熱加圧ユニット104及び第2の加熱加圧ユニット105の下流側に配置される。
【0023】
投入ステージ101は、複数のローラ111からなるローラコンベアである。この投入ステージ101において、上述した積層体10,20が積層される。なお、積層工程を他のステージで行い、積層済みの積層体10,20を投入ステージ101のローラ111に載置してもよい。積層体10,20は、投入ステージ101のローラ111の回転に伴い、搬送ユニット102に送られる。
【0024】
搬送ユニット102は、ベルト121と、駆動ローラ122と、第1の従動ローラ123a,第2の従動ローラ123bとからなるベルトコンベアである。なお、搬送ユニット102としては、ベルトコンベア以外に、ローラ駆動式やその他各種の搬送機器を用いてもよい。
【0025】
ベルト121は、封止温度や封止加圧に繰り返し耐える必要がある。そのため、ベルト121としては、例えばガラス繊維補強されたシリコンゴムシート等が適用される。このベルト121は、無端ベルトになっている。そして、ベルト121は、駆動ローラ122、第1の従動ローラ123a及び第2の従動ローラ123bに掛け渡されている。
【0026】
第1の従動ローラ123aは、投入ステージ101側に配置されており、第2の従動ローラ123bは、投入ステージ101よりも搬送方向後方に設けられた取り出しステージ106側に配置されている。この第1の従動ローラ123aと第2の従動ローラ123bによって、ベルト121は、投入ステージ101と取り出しステージ106の間で平坦に保持される。
【0027】
駆動ローラ122は、ベルト121に巻き掛けられている。この駆動ローラ122が駆動することで、ベルト121が回転駆動する。この搬送ユニット102によって、積層体10,20は、予熱ユニット103、第1の加熱加圧ユニット104、第2の加熱加圧ユニット105の順に搬送される。
【0028】
予熱ユニット103は、例えば、赤外線ランプから構成される。この予熱ユニット103は、投入ステージ101からベルト121に送られた積層体10,20を加熱する。予熱ユニット103のワーク温度及び処理時間については、後述する。そして、予熱ユニット103によって温められた積層体10,20は、第1の加熱加圧ユニット104に搬送される。
【0029】
第1の加熱加圧ユニット104は、加熱ステージ141と、加熱加圧ヘッド142と、加熱加圧ヘッド142を昇降駆動する加圧機構143とを有している。加熱ステージ141及び加熱加圧ヘッド142内には、ヒータが内蔵されている。
【0030】
加熱ステージ141は、ベルト121の内側に配置されている。加熱加圧ヘッド142は、加圧機構143に昇降可能に支持された状態で、ベルト121を間に挟んで加熱ステージ141と対向して配置される。加圧機構143には、実時間での加圧監視を行うセンサが内蔵されており、加熱加圧ヘッド142による積層体10,20への加圧力を調整している。これにより、加熱加圧ヘッド142による積層体10,20への加圧力の変動を防止している。また、第1の加熱加圧ユニット104は、図示しない上位コントローラからのプロセス指令に基づき任意のタイミングで加圧力の調整が可能である。
【0031】
第1の加熱加圧ユニット104に搬送された積層体10,20は、加熱ステージ141と加熱加圧ヘッド142に挟持されて、予め設定された温度、圧力、時間で一回目の加熱加圧処理が施される。なお、第1の加熱加圧ユニット104の温度、圧力、時間と、このときの積層体10,20の状態については、後述する。
【0032】
第1の加熱加圧ユニット104によって一回目の加熱加圧処理が施された積層体10,20は、第2の加熱加圧ユニット105に搬送される。図4に示すように、第2の加熱加圧ユニット105は、加熱ステージ151と、加熱加圧ヘッド152と、加熱加圧ヘッド152を昇降駆動する加圧機構153とを有している。
【0033】
加熱ステージ151は、ベルト121の下側に配置されている。加熱加圧ヘッド152は、加圧機構153に昇降可能に支持された状態で、ベルト121を間に挟んで加熱ステージ151と対向して配置される。また、加熱加圧ヘッド152の表面には、硬質耐熱ゴムの厚板である不図示のクッションシートが取り付けられる。クッションシートの材質としては、例えば、EPDMゴム等が挙げられる。
【0034】
また、加熱加圧ヘッド152内には、中央部ヒータ152aと、周辺部ヒータ152bが内蔵されている。中央部ヒータ152aは、加熱加圧ヘッド152における積層体10,20に当接する面部の中央部に配置されており、積層体10,20の中央部を加熱する。周辺部ヒータ152bは、加熱加圧ヘッド152における積層体10,20に当接する面部の周辺部に配置されており、積層体10,20における一対の板材の面の周辺部を加熱する。
【0035】
さらに、加熱ステージ151内にも、加熱加圧ヘッド152と同様に、中央部ヒータ151aと、周辺部ヒータ151bが内蔵されている。中央部ヒータ151aは、加熱ステージ151の中央部に配置されており、周辺部ヒータ151bは、加熱ステージ151の周辺部に配置されている。そして、中央部ヒータ151aは、積層体10,20における一対の板材の面の中央部を加熱し、周辺部ヒータ151bは、積層体10,20における一対の板材の面の周辺部を加熱する。
【0036】
そして、中央部ヒータ151a,152aの温度は、周辺部ヒータ151b、152bの温度よりも高く設定されている。そのため、第2の加熱加圧ユニット105によって、積層体10,20は、積層体10,20における板材の面の中央部から昇温される。
【0037】
なお、本例では、加熱ステージ151及び加熱加圧ヘッド152の両方とも中央部ヒータ151a,152aの温度を周辺部ヒータ151b,152bよりも高く設定したが、これに限定されるものではない。加熱ステージ151または加熱加圧ヘッド152のどちらか一方の中央部ヒータ151a,152aの温度を周辺部ヒータ151b,152bよりも高く設定すればよい。
【0038】
加圧機構153には、実時間での加圧監視を行うセンサが内蔵されており、加熱加圧ヘッド152による積層体10,20への加圧力を調整している。これにより、加熱加圧ヘッド152による積層体10,20への加圧力の変動を防止している。また、第2の加熱加圧ユニット105は、第1の加熱加圧ユニット104と同様に、図示しない上位コントローラからのプロセス指令に基づき任意のタイミングで加圧力の調整が可能である。
【0039】
第2の加熱加圧ユニット105に搬送された積層体10,20は、加熱ステージ151と加熱加圧ヘッド152に挟持されて、予め設定された温度、圧力、時間で2回目の加熱加圧処理が施される。そして、積層体10,20に設けられた封止樹脂2(図1及び図2参照)が溶融する。また、封止樹脂2として熱硬化性樹脂を用いた場合は、重合を起こして硬化する。なお、第2の加熱加圧ユニット105の温度、圧力、時間と、このときの積層体10,20の状態については、後述する。
【0040】
第2の加熱加圧ユニット105のよって、2回目の加熱加圧が施された積層体10,20は、取り出しステージ106に搬送される。図3に示すように、取り出しステージ106は、投入ステージ101と同様に複数のローラ161からなるローラコンベアである。積層体10は、取り出しステージ106によって自然冷却により速やかに冷却されつつ、図示しない搬出機構により搬出される。
【0041】
[太陽電池モジュールの封止方法]
次に、図5〜図7を参照して太陽電池モジュールの封止方法について説明する。
図5は、本例の積層体10,20の封止処理の流れを示すフローチャート、図6は、本例の処理条件を示す条件図、図7は、各工程における積層体の封止樹脂の温度を示すグラフである。図6に示すワーク温度、加圧力、及び処理時間は、封止樹脂2の材質や積層体の種類によって適宜設定されるものである。なお、図6に示す条件は、薄膜系太陽電池モジュールに対応したものである。
【0042】
なお、予め太陽電池形成工程において、図1に示す積層体10では、ガラス板1aの上に太陽電池薄膜1bと配線1cが設けられてガラス基板1が形成されている。また、図2に示す積層体20では、複数のセル24aが配線24bによって連結されてセルストリング24が形成される。
【0043】
まず、一対の板材であるガラス基板1及び板材3と、封止樹脂2を重ね合わせる積層工程を行う(ステップS1)。なお、図2に示す積層体20では、一対の板材であるガラス板21及び板材23と、セルストリング24と、封止樹脂2を重ね合わせる。ステップS1の積層工程は、図3に示す投入ステージ101で行ってもよく、あるいは他のステージで積層工程を行い、投入ステージ101に搬送してもよい。この積層工程において、相互の位置決めはされているが、接着はされていない。
【0044】
次に、予熱ユニット103によって積層体10,20を温める予熱工程を行う(ステップS2)。ステップS2の予熱工程における、ワーク温度は、封止樹脂2が軟化しない温度に設定されている。例えば、図6に示すように、ワーク温度が90度に設定されており、処理時間は、120秒に設定されている。この予熱工程によって、封止樹脂2の昇温中の温度ムラを軽減することができる。
【0045】
ステップS2における予熱工程が終了すると、図3に示すように、積層体10,20は、第1の加熱加圧ユニット104に搬送される。次に、積層体10,20を第1の加熱加圧ユニット104によって1回目の加熱加圧である第1の加熱加圧工程を行う(ステップS3)。
【0046】
ステップS3におけるワーク温度は、封止樹脂2の軟化温度付近であって、わずかな流動性を示す温度に設定されている。また、加圧力は、封止樹脂2の表面に形成された微少な凹凸が変形しない程度、あるいは若干変形する程度の圧力に設定されている。例えば、図6に示すように、ワーク温度は、100度に設定され、加圧力は、0.05MPaに設定されている。また、処理時間は、120秒に設定されている。
【0047】
この第1の加熱加圧工程によって、積層体10,20の封止樹脂2は、加圧によって内部流動が生じ、一対の板材(積層体10では、ガラス基板1と板材3、積層体20では、ガラス板21と板材23)の間の隙間を埋めるように変形する。これにより、封止樹脂2が一対の板材の間に形成された空間に馴染む。なお、封止樹脂2が完全に溶融まで至らないため、積層体10,20内では、場所によって空気が残留する。
【0048】
次に、積層体10,20を第2の加熱加圧ユニット105(図4参照)に搬送する。そして、この第2の加熱加圧ユニット105によって積層体10,20に対して2回目の加熱加圧である第2の加熱加圧工程を行う(ステップS4)。なお、ステップS3において、封止樹脂2は、完全に固着していないが、軽く粘着している。そのため、第1の加熱加圧ユニット104から第2の加熱加圧ユニット105に搬送する際に、積層体10,20を構成する部材がずれることがなくなる。
【0049】
ステップS4である第2の加熱加圧工程によって、封止樹脂2は、完全に溶融する。なお、封止樹脂2として熱硬化性樹脂を用いた場合は、溶融し、さらに加熱されることで重合する。
【0050】
ステップS4におけるワーク温度、加圧力及び処理時間は、封止樹脂2が完全に溶融する温度、加圧力及び処理時間に設定されている。例えば、図6に示すように、周辺部ヒータ151b,152bのワーク温度は、160度に設定されており、中央部ヒータ151a,152aのワーク温度は、周辺部ヒータ151b,152bよりも高い165度に設定されている。また、加圧力は、0.05MPaに設定されており、処理時間は、120秒に設定されている。
【0051】
ここで、第2の加熱加圧ユニット105における中央部ヒータ151a,152aのワーク温度は、周辺部ヒータ151b,152bよりも高い温度に設定している。そのため、積層体10,20における封止樹脂2の中央部は、図7に示すように、周辺部よりも先に昇温する。そして、封止樹脂2は、積層体10,20の中央部から溶融する。よって、積層体10,20に残留する空気は、溶融した封止樹脂2によって積層体10,20の中央部から周辺部に滞りなく押し出される。その結果、積層体10,20内に残留する空気の量を軽減することができる。
【0052】
また、ステップS3の第1の加熱加圧工程において、封止樹脂2の表面に形成されたシボ加工された凹凸が完全に潰れておらず、封止樹脂2の粘りが微少である。そのため、ステップS4の第2の加熱加圧工程によって、シボ加工が施された封止樹脂2の表面の微少な凹凸の間から空気をスムーズに押し出すことができる。
【0053】
そして、このステップS4の第2の加熱加圧工程によって、積層体10,20は、封止樹脂2により封止される。
【0054】
次に、ステップ4における第2の加熱加圧工程が終了すると、積層体10,20は、取り出しステージ106に搬送され、自然冷却によって速やかに冷却される(ステップS5)。そして、冷却された積層体10,20は、次工程に搬出される(ステップS6)。一般には次工程は積層体10,20の太陽電池モジュールの周辺部のコーキング工程である。これにより、積層体10,20の封止処理が完了する。
【0055】
なお、本例の太陽電池モジュールの封止方法によれば、積層体10,20を加熱加圧する工程を2回に分けることで、1回の加熱加圧工程に要する処理時間を短縮することができ、他の工程とのタクトのバランスを整えることができる。その結果、ラインタクトが乱れることを防止でき、作業効率の向上を図り処理時間を短縮することができる。
【0056】
2.第2の実施の形態例
次に、本発明の太陽電池モジュールの封止装置の第2の実施の形態例について図8及び図9を参照して説明する。
図8は、第2の実施の形態例にかかる第2の加熱加圧ユニットを示す概略構成図、図9は、第2の実施の形態例にかかる第2の加熱加圧ユニットを用いた際の各工程における積層体の封止樹脂の温度を示すグラフである。
【0057】
この第2の実施の形態例にかかる封止装置200が、第1の実施の形態例にかかる封止装置100と異なる点は、第2の加熱加圧ユニットの構成である。そのため、ここでは、第2の加熱加圧ユニットについて説明し、第1の実施の形態例にかかる封止装置100と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0058】
図8に示すように、第2の実施の形態例にかかる封止装置200の第2の加熱加圧ユニット205は、加熱ステージ251と、加熱加圧ヘッド252と、加熱加圧ヘッド252を昇降駆動する加圧機構253とを有している。
【0059】
加熱ステージ251には、中央部ヒータ251aと周辺部ヒータ251bが内蔵されている。また、加熱加圧ヘッド252には、中央部ヒータ252aと周辺部ヒータ252bが内蔵されている。加熱ステージ251と加熱加圧ヘッド252に内蔵している中央部ヒータ251a、252aと周辺部ヒータ251b,252bは、それぞれ同じ温度に設定されている(図9参照)。
【0060】
また、加熱加圧ヘッド252における積層体10,20と当接する先端部は、その中央部が加熱ステージ251側、すなわち積層体10,20側に向けて膨出している。加熱加圧ヘッド252の加圧面は、円天井状に二軸方向に曲率があっても良く、あるいは円柱の側面のように一方向のみ曲率があってもよい。
【0061】
よって、加熱加圧ヘッド252は、積層体10,20の周辺部よりも先に積層体10,20の中央部に接触する。これにより、図9に示すように、積層体10,20の封止樹脂2の温度は、周辺部よりも先に中央部が昇温され、溶融する。
【0062】
その他の構成は、上述した第1の実施の形態例にかかる第2の加熱加圧ユニット105と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する第2の加熱加圧ユニット205によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる第2の加熱加圧ユニット105と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0063】
なお、加熱ステージ251におけるベルト121を介して積層体10,20が載置される一面、すなわち加熱加圧ヘッド252と対向する一面を、その中央部が加熱ステージ側に向けて膨出するように形成してもよい。加熱加圧ヘッド252と加熱ステージ251のどちらか一方の対向する面の中央部を積層体10,20側に向けて膨出するように形成すればよい。
【0064】
3.第3の実施の形態例
次に、本発明の太陽電池モジュールの封止装置300の実施の形態例について図10及び図11を参照して説明する。
図10は、第2の実施の形態例にかかる第2の加熱加圧ユニットを示す概略構成図である。図11は、第3の実施の形態例にかかる第2の加熱加圧ユニットを用いた際の各工程における積層体の封止樹脂の温度を示すグラフである。
【0065】
この第3の実施の形態例にかかる封止装置300が、第1の実施の形態例にかかる封止装置100と異なる点は、第2の加熱加圧ユニットの構成である。そのため、ここでは、第2の加熱加圧ユニットについて説明し、第1の実施の形態例にかかる封止装置100と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0066】
図10に示すように、第3の実施の形態例にかかる封止装置300の第2の加熱加圧ユニット305は、加熱ステージ351と、加熱加圧ヘッド352と、加熱加圧ヘッド352を昇降駆動する加圧機構353とを有している。
【0067】
加熱ステージ351には、中央部ヒータ351aと周辺部ヒータ351bが内蔵されている。また、加熱加圧ヘッド352には、中央部ヒータ352aと周辺部ヒータ352bが内蔵している。加熱ステージ351と加熱加圧ヘッド352に内蔵している中央部ヒータ351a、252aと周辺部ヒータ351b,352bは、それぞれ同じ温度に設定されている。
【0068】
また、加熱ステージ351における中央部ヒータ351aと周辺部ヒータ351bの伝熱特性が異なっている。同様に、加熱加圧ヘッド352における中央部ヒータ352aと周辺部ヒータ352bの伝熱特性が異なっている。具体的には、中央部ヒータ351a,352aの熱伝導率は、周辺部ヒータ351b,352bの熱伝導率よりも高く設定されている。熱伝導率を変化させるために、中央部ヒータ351a,352aの周りに熱伝導率の高い材質、例えば、銅を含ませ、周辺部ヒータ351b、352bの周りに熱伝導率の低い材質、例えばステンレスを含ませる。
【0069】
この第3の実施の形態例にかかる第2の加熱加圧ユニット305によれば、図11に示すように、中央部ヒータ351a,352aの熱伝導率が周辺部ヒータ351b,352bの熱伝導率よりも高いため、積層体10,20の中央部を周辺部よりも早く昇温させることができる。そして、第3の実施の形態例にかかる第2の加熱加圧ユニット305を用いた際における積層体10,20の封止樹脂2の温度変化は、積層体10,20の封止樹脂2の温度は、周辺部よりも早く中央部が昇温され、溶融する。
【0070】
その他の構成は、上述した第1の実施の形態例にかかる第2の加熱加圧ユニット105と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する第2の加熱加圧ユニット305によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる第2の加熱加圧ユニット105と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0071】
また、この第3の実施の形態例にかかる第2の加熱加圧ユニット305では、加熱ステージ351及び加熱加圧ヘッド352の両方とも中央部と周辺部の熱伝導率を変化させたが、これに限定されるものではない。加熱ステージ351または加熱加圧ヘッド352のうちどちらか一方の熱伝導率を変化させてもよい。
【0072】
なお、第2の実施の形態例及び第3の実施の形態例にかかる第2の加熱加圧ユニット205,305では、全てのヒータの温度を同じに設定したが、これに限定されるものではない。例えば、第1の実施の形態例にかかる第2の加熱加圧ユニット105と同様に、中央部ヒータ251a,252a,351a,352aの温度を周辺部ヒータ251b,252b,352b,352bよりも高く設定してもよい。さらに、中央部ヒータ251a,252a,351a,352aを加熱加圧の途中で温度を周辺部ヒータヒータ251b,252b,352b,352bよりも高くなるように変更してもよい。
【0073】
以上、本発明の太陽電池モジュールの封止方法及び封止装置の実施の形態について、その作用効果も含めて説明した。しかしながら、本発明の太陽電池モジュールの封止方法及び封止装置は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0074】
例えば、加熱加圧ヘッドの先端部の表面に取り付けられるクッションシートの中央部の厚みを周辺部よりも薄くすることで、積層体の中央部を周辺部よりも先に昇温させるようにしてもよい。また、クッションシートの中央部のゴムを周辺部に比べ熱伝導性に優れた配合とすることで、同様の効果を得ることもできる。
【0075】
さらに、第1の実施の形態例にかかる第2の加熱加圧ユニット105では、中央部と周辺部を別々の制御系に分けることで、中央部のヒータを周辺部のヒータよりも高温とする例を示したが、これを図12に示すように単一の制御系で実施することも可能である。
【0076】
図12は、さらに他の実施の形態例にかかる第2の加熱加圧ユニットのヒータを示す説明図である。
この図12に示すように、ヒータ線452cをヒータ452の加圧面における中央部に集中して配置し、周辺部は、疎となるように配置する。そして、中央部に配置した温度センサ456で、温度調節することで、中央部から周辺部に行くにしたがって、ヒータ452の加圧面の温度が低くなるように構成することも可能である。
【0077】
また、上述した実施の形態例では、真空排気は不要として記述したが、真空排気を併用することで、空気の押し出しを補助することも当然可能である。
【符号の説明】
【0078】
1…ガラス基板(板材)、 1a…ガラス板、 1b…太陽電池薄膜、 1c…配線、 2…封止樹脂、 3…板材、 10,20…積層体、 21…ガラス板(板材)、 23…板材、 24…セルストリング、 24a…セル、 24b…配線、 100,200,300…封止装置、 101…投入ステージ、 102…搬送ユニット、 103…予熱ユニット、 104…第1の加熱加圧ユニット、 105,205,305…第2の加熱加圧ユニット、 106…取り出しステージ、 151,251,351…加熱ステージ、 151a,152a,251a,252a,351a,352a…中央部ヒータ(中央部のヒータ)、 151b,152b,251b,252b,351b,352b…周辺部ヒータ(周辺部のヒータ)、 152,252,352…加熱加圧ヘッド、 153,253,353…加圧機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の板材の間に封止樹脂を介在させて太陽電池モジュールの封止を行う太陽電池モジュールの封止方法であって、
前記一対の板材及び前記封止樹脂を積層させて積層体を形成する積層工程と、
前記封止樹脂が溶融する温度よりも低い温度で前記積層体を加熱加圧する第1の加熱加圧工程と、
前記第1の加熱加圧工程によって加熱加圧された前記積層体を前記第1の加熱加圧工程よりも高い温度で加熱加圧し、前記積層体の中央部から昇温させて前記封止樹脂を溶融させる第2の加熱加圧工程と、
を有する太陽電池モジュールの封止方法。
【請求項2】
前記第1の加熱加圧工程は、前記封止樹脂が軟化する温度以下で前記積層体を加熱加圧する請求項1に記載の太陽電池モジュールの封止方法。
【請求項3】
前記第1の加熱加圧工程を行う前に、前記積層体を温める予熱工程を行う請求項1又は2に記載の太陽電池モジュールの封止方法。
【請求項4】
一対の板材の間に封止樹脂を介在させて太陽電池モジュールの封止を行う太陽電池モジュールの封止装置であって、
前記一対の板材及び前記封止樹脂が積層された積層体を前記封止樹脂が溶融する温度よりも低い温度で加熱加圧する第1の加熱加圧ユニットと、
前記積層体を前記第1の加熱加圧ユニットよりも高い温度で加熱加圧し、前記積層体の中央部から昇温させて前記封止樹脂を溶融させる第2の加熱加圧ユニットと、
を備えた太陽電池モジュールの封止装置。
【請求項5】
前記第2の加熱加圧ユニットは、
前記積層体の中央部を加熱する中央部のヒータと、
前記積層体の周辺部を加熱する周辺部のヒータと、有し、
前記中央部のヒータの温度は、前記周辺部のヒータの温度よりも高い温度である
請求項4に記載の太陽電池モジュールの封止装置。
【請求項6】
前記第2の加熱加圧ユニットは、
前記積層体が載置される加熱ステージと、
前記加熱ステージと対向し、加圧機構に昇降可能に支持される加熱加圧ヘッドと、を有し、
前記加熱ステージ及び前記加熱加圧ヘッドのうち少なくともどちらか一方の対向面の中央部は、前記加熱ステージ側または前記加熱加圧ヘッド側に向けて膨出している
請求項4または5に記載の太陽電池モジュールの封止装置。
【請求項7】
前記第2の加熱加圧ユニットは、前記積層体の周辺部を加熱する箇所の熱伝導率よりも前記積層体の中央部を加熱する箇所の熱伝導率が高くされている
請求項4〜6のいずれかに記載の太陽電池モジュールの封止装置。
【請求項1】
一対の板材の間に封止樹脂を介在させて太陽電池モジュールの封止を行う太陽電池モジュールの封止方法であって、
前記一対の板材及び前記封止樹脂を積層させて積層体を形成する積層工程と、
前記封止樹脂が溶融する温度よりも低い温度で前記積層体を加熱加圧する第1の加熱加圧工程と、
前記第1の加熱加圧工程によって加熱加圧された前記積層体を前記第1の加熱加圧工程よりも高い温度で加熱加圧し、前記積層体の中央部から昇温させて前記封止樹脂を溶融させる第2の加熱加圧工程と、
を有する太陽電池モジュールの封止方法。
【請求項2】
前記第1の加熱加圧工程は、前記封止樹脂が軟化する温度以下で前記積層体を加熱加圧する請求項1に記載の太陽電池モジュールの封止方法。
【請求項3】
前記第1の加熱加圧工程を行う前に、前記積層体を温める予熱工程を行う請求項1又は2に記載の太陽電池モジュールの封止方法。
【請求項4】
一対の板材の間に封止樹脂を介在させて太陽電池モジュールの封止を行う太陽電池モジュールの封止装置であって、
前記一対の板材及び前記封止樹脂が積層された積層体を前記封止樹脂が溶融する温度よりも低い温度で加熱加圧する第1の加熱加圧ユニットと、
前記積層体を前記第1の加熱加圧ユニットよりも高い温度で加熱加圧し、前記積層体の中央部から昇温させて前記封止樹脂を溶融させる第2の加熱加圧ユニットと、
を備えた太陽電池モジュールの封止装置。
【請求項5】
前記第2の加熱加圧ユニットは、
前記積層体の中央部を加熱する中央部のヒータと、
前記積層体の周辺部を加熱する周辺部のヒータと、有し、
前記中央部のヒータの温度は、前記周辺部のヒータの温度よりも高い温度である
請求項4に記載の太陽電池モジュールの封止装置。
【請求項6】
前記第2の加熱加圧ユニットは、
前記積層体が載置される加熱ステージと、
前記加熱ステージと対向し、加圧機構に昇降可能に支持される加熱加圧ヘッドと、を有し、
前記加熱ステージ及び前記加熱加圧ヘッドのうち少なくともどちらか一方の対向面の中央部は、前記加熱ステージ側または前記加熱加圧ヘッド側に向けて膨出している
請求項4または5に記載の太陽電池モジュールの封止装置。
【請求項7】
前記第2の加熱加圧ユニットは、前記積層体の周辺部を加熱する箇所の熱伝導率よりも前記積層体の中央部を加熱する箇所の熱伝導率が高くされている
請求項4〜6のいずれかに記載の太陽電池モジュールの封止装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−38269(P2013−38269A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174020(P2011−174020)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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