説明

太陽電池モジュールの絶縁抵抗の測定方法及びその装置

【課題】太陽電池モジュールに帯電している電荷をできる限り小さく、又は平衡化させ、絶縁抵抗の測定時間だけでなく、絶縁抵抗の測定及び絶縁耐力試験を含めた全体の実施時間も短縮化する。
【解決手段】太陽電池モジュール2の絶縁抵抗の測定方法であって、太陽電池モジュール2に抵抗器15を介してアース線16を接続し、アース線16を介して、太陽電池モジュール2に溜まった電荷を放電させ、放電完了後に、アース線16の接続を解き、絶縁抵抗計10を用いて、太陽電池モジュール2の絶縁抵抗の測定を行う構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、太陽電池モジュールの絶縁抵抗の測定方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールでは、電気設備技術基準に基づき、据付工事完了後等に、太陽電池モジュールに電圧を印加し、当該電圧によって絶縁破壊の発生の有無を判断する絶縁耐力試験の測定を行う必要があり、この絶縁耐力試験の前後には、絶縁抵抗の測定を実施する必要がある。
【0003】
なお、絶縁抵抗の測定は、絶縁耐力試験の前後以外にも、太陽電池モジュールの絶縁状態を確認し、通電して良いか否かを判断するために行われるものであり、運転開始時、定期点検時、更に、事故時に不良箇所の特定をしたい場合等に行われる。
【0004】
例えば、特許文献1の従来技術では、太陽電池モジュールを製造する場合、太陽電池素子を含む通電部(活電部)と外郭導体部との間の絶縁性能や耐電圧性能を確認するために、通常、絶縁抵抗試験及び耐電圧試験(=絶縁耐力試験)またはそのいずれか一方が行われている旨が示されている。
【特許文献1】特開2001−345472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、太陽電池モジュールは、大地から絶縁されているため、電路を含め帯電する。つまり、太陽電池モジュールに電荷が溜まる。溜まった電荷は、太陽電池モジュールの極に対して平衡しておらず、溜まる電荷の量も天候によって変化する。
【0006】
このように帯電状況が著しく変化する太陽電池モジュールについて、絶縁抵抗を測定すると、太陽電池モジュールに帯電している電荷の影響で、絶縁抵抗値が著しく変化してしまい、太陽電池モジュールの正しい絶縁抵抗値を測定するのが難しい。一方、時間をかければ、絶縁抵抗値は安定し、測定も可能となるが、絶縁抵抗の測定そのものだけでなく、絶縁抵抗の測定及び絶縁耐力試験の測定を含めた一連の実施に時間がかかることとなる。
【0007】
また、太陽電池モジュールについて種々の測定や試験を行う場合、各測定や試験に合わせて、太陽電池モジュールに対して、配線等の機器の接続を直接行う必要がある。そのため、機器の接続に時間がかかると共に、測定や試験を実施する作業員等が機器の接続を誤る可能性があった。太陽電池モジュールについて複数の測定や試験を行う場合には特に、機器の接続作業が煩雑となり、時間もかかることとなっている。
【0008】
そこで、この発明は、上記従来技術を考慮したものであって、太陽電池モジュールに帯電している電荷をできる限り小さく、又は平衡化させ、絶縁抵抗の測定時間だけでなく、絶縁抵抗の測定及び絶縁耐力試験の測定を含めた一連の実施時間も短縮化すると共に、太陽電池モジュールに対して、直接、各機器の接続を行う必要がなく、太陽電池モジュールに対する各機器の接続が簡単化する太陽電池モジュールの絶縁抵抗の測定方法及びその装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、請求項1の発明では、太陽電池モジュールの絶縁抵抗の測定方法であって、
太陽電池モジュールに抵抗を介してアース線を接続し、
当該アース線を介して、太陽電池モジュールに溜まった電荷を放電させ、
放電完了後に、前記アース線の接続を解き、絶縁抵抗計を用いて、太陽電池モジュールの絶縁抵抗の測定を行う、絶縁抵抗の測定方法とした。
【0010】
請求項2の発明では、太陽電池モジュールと各機器とを接続させる測定装置であって、
当該測定装置には、太陽電池モジュールを接続させる太陽電池モジュール接続端子と、
絶縁抵抗計を接続させる絶縁抵抗測定端子が設けられ、
前記太陽電池モジュール接続端子は、測定装置内で第1開閉器から、第3開閉器、抵抗器を介してアース線に接続されており、
当該アース線を介して、太陽電池モジュールに溜まった電荷を放電させることが可能であり、
前記絶縁抵抗測定端子は、前記太陽電池モジュール接続端子と前記アース線とに接続されている、測定装置とした。
【0011】
請求項3の発明では、前記太陽電池モジュール接続端子に太陽電池モジュールを接続し、
前記第1開閉器及び前記第3開閉器を閉じて、前記アース線を通じて太陽電池モジュールに溜まった電荷を放電させ、
放電完了後に第3開閉器を開き、絶縁抵抗計を用いて絶縁抵抗の測定を行う、請求項2に記載の測定装置を用いた絶縁抵抗の測定方法とした。
【0012】
請求項4の発明では、前記測定装置には、試験電圧発生器を接続させる試験電圧発生器接続端子が設けられ、
前記太陽電池モジュール接続端子は、測定装置内で第1開閉器及び第2開閉器を介して前記試験電圧発生器接続端子と電気的に接続されている、請求項2に記載の測定装置とした。
【0013】
請求項5の発明では、前記太陽電池モジュール接続端子に太陽電池モジュールを接続し、
前記第1開閉器及び前記第3開閉器を閉じて、前記アース線を通じて太陽電池モジュールに溜まった電荷を放電させ、
放電完了後に第3開閉器を開き、絶縁抵抗計を用いて絶縁抵抗の測定を行い、
また、前記第1開閉器及び前記第2開閉器を閉じ、前記試験電圧発生器を用いて電圧を印加して絶縁耐力試験の測定を行う、請求項4に記載の測定装置を用いた絶縁抵抗と絶縁耐力試験の測定方法とした。
【0014】
請求項6の発明では、前記測定装置には、記録計を接続させる記録計接続端子と、
表示手段を接続させる表示手段接続端子とが設けられている、請求項2又は4に記載の測定装置とした。
【0015】
請求項7の発明では、前記測定装置内の、前記太陽電池モジュール接続端子と前記各接続端子とを接続する電路に、通電の有無を示す表示器が設けられている、請求項2、4、6のいずれかに記載の測定装置とした。
【発明の効果】
【0016】
請求項1〜7の発明によれば、太陽電池モジュールに溜まった電荷を放電したうえで、当該太陽電池モジュールの絶縁抵抗を測定する構成であるため、太陽電池モジュールの帯電している電荷をできる限り小さく、又は平衡化させ、絶縁抵抗の測定時間を短縮化する。そのため、絶縁抵抗の測定及び絶縁耐力試験の測定を含めた一連の実施時間も短縮化する。
【0017】
また特に、請求項2、4、6、7の発明によれば、切替装置として測定装置を用いる構成であるため、絶縁抵抗の測定又は絶縁耐力試験の測定に合わせて、太陽電池モジュールに対して、直接、各機器の接続をする必要がなくなり、太陽電池モジュールに対する各機器の接続が簡単化する。そのため、絶縁抵抗の測定時間だけでなく、絶縁抵抗の測定及び絶縁耐力試験の測定を含めた一連の実施時間が更に短縮化する。
【0018】
また特に、請求項6の発明によれば、測定装置に記録計及び表示手段を接続させる構成とすることによって、絶縁抵抗の測定時及び絶縁耐力試験の測定時の測定データを、自動的に取得し、記録すると共に、当該測定データをリアルタイムで表示させることができ、便宜である。
【0019】
また特に、請求項7の発明によれば、測定装置内の、太陽電池モジュール接続端子と各接続端子とを接続する電路に、通電の有無を示す表示器が設けられている構成とすることによって、通電状態を作業員が認識することができ、絶縁抵抗の測定や絶縁耐力試験の測定を行う作業員の安全性が高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明は、太陽電池モジュールの絶縁抵抗の測定方法であって、太陽電池モジュールに抵抗を介してアース線を接続し、当該アース線を介して、太陽電池モジュールに溜まった電荷を放電させ、放電完了後に、前記アース線の接続を解き、絶縁抵抗計を用いて、太陽電池モジュールの絶縁抵抗の測定を行う構成とすることにより、太陽電池モジュールの帯電している電荷をできる限り小さく、又は平衡化させ、絶縁抵抗の測定時間を短縮化する。
【実施例1】
【0021】
図1は、この発明に係る太陽電池モジュールの絶縁抵抗の測定及び絶縁耐力試験の測定に用いる測定装置の外観を示す平面図であり、図2は、この発明に係る測定装置の内部構成を全体的に示す回路図である。この発明に係る測定装置1は、絶縁抵抗の測定及び絶縁耐力試験の測定に合わせて、太陽電池モジュール2に接続する機器等を変更する切替装置としての役割を果たすものである。
【0022】
測定装置1の上面には、図1に示すように、太陽電池モジュール接続端子3と、発電電圧計接続端子4と、試験電圧発生器接続端子5と、接地端子6と、共用接続端子7、第1開閉器12、第2開閉器13、切替スイッチ20が設けられている。
【0023】
太陽電池モジュール接続端子3は、太陽電池モジュール2を接続するため、プラス極の接続端子3aとマイナス極の接続端子3bの2つの端子から構成されている。また、太陽電池モジュール2は、例えば、太陽光を受けて発電を行う太陽光発電システムに用いられている複数の太陽電池モジュールであって、この太陽電池モジュール2を対象として絶縁抵抗の測定及び絶縁耐力試験の測定を行う。
【0024】
発電電圧計接続端子4は、発電電圧計8を接続するため、プラス極の接続端子4aとマイナス極の接続端子4bの2つの端子から構成されている。また、発電電圧計8は、絶縁抵抗の測定及び絶縁耐力試験の測定の際に、太陽光により発電を行う太陽電池モジュール2の発電電圧を監視する。
【0025】
試験電圧発生器接続端子5は、試験電圧発生器9を接続するためのものであり、プラス極の接続端子5aとマイナス極の接続端子5bの2つの端子から構成されている。また、試験電圧発生器9は、絶縁耐力試験の測定の際に、太陽電池モジュール2の公称開放電圧を最大使用電圧とみなして、最大使用電圧の1.5倍の直流電圧又は1倍の交流電圧を10分間印加する電源である。なお、試験電圧発生器9を測定装置1に接続する場合には、試験電圧発生器9のプラス極を、試験電圧発生器接続端子5のマイナス極の接続端子5bに接続し、試験電圧発生器9を接地させるため、試験電圧発生器9のマイナス極を、接地端子6の接続端子6a(後述)に接続する。
【0026】
接地端子6は、アース(=グラウンド)の役割を果たすものであり、接続端子6aと接続端子6bの2つの端子から構成されており、接続端子6aと接続端子6bとは、相互に接続されている。また、接続端子6bはアース線18によって大地と接続されている。
【0027】
共用接続端子7は、絶縁抵抗測定端子及び発生電圧計接続端子としての役割を果たし、絶縁抵抗計10及び発生電圧計11を接続するためのものである。また、共用接続端子7は、プラス極の接続端子7aとマイナス極の接続端子7bと接地端子7cの3つの端子から構成されている。また、絶縁抵抗計10は、絶縁抵抗の測定の際に、25V〜2000Vの検査電圧を印加して、太陽電池モジュール2と大地(アース)間の絶縁抵抗を測定する。なお、絶縁抵抗計10を測定装置1に接続する場合には、絶縁抵抗計10をプラス極の接続端子7aと接地端子7cに接続する。
【0028】
発生電圧計11は、絶縁耐力試験の際に、試験電圧発生器9から印加される試験電圧を確認するためのものである。なお、発生電圧計11を測定装置1に接続する場合には、発生電圧計11をプラス極の接続端子7aと接地端子7cに接続する。
【0029】
切替スイッチ20は、第3開閉器14及び第4開閉器21(後述)の開閉状態を切り替えるためのものである。切替スイッチ20と、第3開閉器14及び第4開閉器21は接続されており、作業員等が切替スイッチ20を操作すると、第3開閉器14及び第4開閉器21は連動して、電路を開閉する。詳しくは、切替スイッチ20を図1に示す「測定」の位置にすると、第3開閉器14が開き、第4開閉器21が閉じた状態になる。切替スイッチ20を「開放」の位置にすると、第3開閉器14及び第4開閉器21は開いた状態になる。切替スイッチ20を「接地」の位置にすると、第3開閉器14が閉じ、第4開閉器21は開いた状態になる。
【0030】
また、図2に示すように、太陽電池モジュール接続端子3は、測定装置1内で第1開閉器12及び第2開閉器13を介して試験電圧発生器接続端子5と電気的に接続され、電路17を構成している。また、太陽電池モジュール接続端子3は、第1開閉器12、第3開閉器14、抵抗器15を介してアース線16に接続されている。
【0031】
また、発電電圧計接続端子4は、測定装置1内で太陽電池モジュール接続端子3と試験電圧発生器接続端子5とを接続する電路17に、並列に接続されている。また、共用接続端子7は、前記電路17とアース線16に並列に接続されている。
【0032】
第1開閉器12は、常開型の開閉器であって、太陽電池モジュール2と他の機器等との電路を開閉する。なお、絶縁抵抗の測定及び絶縁耐力試験の測定を行う場合には、第1開閉器12を閉じる必要がある。
【0033】
第2開閉器13は、常開型の開閉器であって、試験電圧発生器9と他の機器等との電路を開閉する。なお、絶縁耐力試験の測定を行う場合には、第2開閉器13を閉じる必要がある。
【0034】
第3開閉器14は、常開型の開閉器であって、抵抗器15及びアース線16と、他の機器等との電路を開閉する。なお、絶縁抵抗の測定の前に、太陽電池モジュール2に溜まった電荷を大地に放電させる場合には、第3開閉器14を閉じる必要がある。
【0035】
第4開閉器21は、常開型の開閉器であって、絶縁抵抗計10及び発生電圧計11と、他の機器等との電路を開閉する。なお、絶縁抵抗計10を用いて絶縁抵抗の測定を行う場合及び絶縁耐力試験の測定の際に発生電圧計11を用いる場合には、第4開閉器21を閉じる必要がある。
【0036】
抵抗器15は、例えば、20KΩの抵抗を有する抵抗器であって、安全を考慮してアース線16に流れる電流を低減させるためのものである。
【0037】
アース線16は、接続端子6aに接続されており、太陽電池モジュール2に溜まった電荷は、アース線16、接続端子6a、接続端子6b、アース線18を通じて大地に放電される。
【0038】
なお、本実施例においては、試験電圧発生器9を、接続端子5bと接続端子6aに接続し、また、絶縁抵抗計10等を接続端子7aと接地端子7cに接続し、接続端子5a及び接続端子7bを使用しない構成を示した。しかし、試験電圧発生器9及び絶縁抵抗計10等の有する機能に基づく、試験電圧発生器9及び絶縁抵抗計10等が印加可能な電圧の種類によっては、試験電圧発生器9を、接続端子5aと接続端子6aに接続し、また、絶縁抵抗計10等を接続端子7bと接地端子7cに接続する構成としても良い。つまり、測定装置1の試験電圧発生器接続端子5及び共用接続端子7にプラス極の接続端子(5a、7a)とマイナス極の接続端子(5b、7b)の2つが設けられているのは、試験電圧発生器9及び絶縁抵抗計10等の有する機能に基づく、試験電圧発生器9及び絶縁抵抗計10等が印加可能な電圧の種類に対して柔軟に対応できるようにするためである。例えば、試験電圧発生器9が、マイナスの電荷を印加する構成の場合には、試験電圧発生器9を接続端子5aと接続端子6aに接続し、接続端子5bは使用しない。一方、試験電圧発生器9が、プラスの電荷を印加する構成の場合には、接続端子5bと接続端子6aに接続し、接続端子5aは使用しない。
【0039】
従って、太陽電池モジュール2の絶縁抵抗の測定及び絶縁耐力試験の測定に用いる試験電圧発生器9及び絶縁抵抗計10等があらかじめ決められている場合には、当該試験電圧発生器9及び絶縁抵抗計10等が印加可能な電圧の種類に応じて、プラス極の接続端子(5a、7a)又はマイナス極の接続端子(5b、7b)のいずれか一方のみを、測定装置1に設ける構成としても良い。
【0040】
次に、この発明の測定装置1を用いた絶縁抵抗の測定及び絶縁耐力試験の測定の流れを説明する。
【0041】
まず、準備として、接続端子6bをアース線18によって大地と接続した上で、太陽電池モジュール2を太陽電池モジュール接続端子3に、発電電圧計8を発電電圧計接続端子4に、試験電圧発生器9を試験電圧発生器接続端子5に、夫々接続する。なお、第1開閉器12、第2開閉器13、第3開閉器14、第4開閉器21は、上述したように常開型であるため、開いた状態である。その場合、第3開閉器14及び第4開閉器21の開閉状態を切り替える切替スイッチ20は、「開放」の位置になっている。
【0042】
このように、太陽電池モジュール2や発電電圧計8等の各機器が測定装置1に接続されていることを確認した上で、絶縁耐力試験前の絶縁抵抗の測定を開始する。
【0043】
まず、図3に示すように、第1開閉器12を閉じる。それから切替スイッチ20を「接地」の位置に動かして、第3開閉器14を閉じる。これにより、太陽電池モジュール2に溜まった電荷が抵抗器15を介して、アース線16を流れ、接地端子6及びアース線18を通じて大地に放電される。
【0044】
次に、図4に示すように、絶縁抵抗計10を共用接続端子7に接続する。また太陽電池モジュール2に溜まった電荷の放電は、通常10秒程度で完了し、切替スイッチ20を「測定」の位置に動かして、放電完了後に第3開閉器14を開き、第4開閉器21を閉じる。そして絶縁抵抗計10を用いて、太陽電池モジュール2と大地(アース)間の絶縁抵抗を測定する。絶縁抵抗の測定終了後には、共用接続端子7から絶縁抵抗計10を取り外す。以上で、太陽電池モジュール2の絶縁耐力試験前の絶縁抵抗の測定は完了する。
【0045】
次に図5に示すように発生電圧計11を共用接続端子7に接続する。なお、発生電圧計11を測定装置1に接続する場合には、発生電圧計11をプラス極の接続端子7aと接地端子7cに接続する。また、切替スイッチ20は「測定」の位置にあり、第3開閉器14が開き、第4開閉器21が閉じている。そして第2開閉器13を閉じる。試験電圧発生器9を用いて、試験電圧として、最大使用電圧の1.5倍の直流電圧又は1倍の交流電圧を10分間印加する。なおこの際、発生電圧計11には、試験電圧発生器9によって印加された試験電圧と対地電圧と太陽電池モジュール2の発電による発電電圧の3つの合計値が表示される。試験電圧の印加終了後には、第2開閉器13を開く。以上で、太陽電池モジュール2の絶縁耐力試験は完了する。
【0046】
次に、切替スイッチ20を「接地」の位置に動かして、第3開閉器14を閉じ、第4開閉器21を開く。これにより、太陽電池モジュール2に溜まった電荷が抵抗器15を介して、アース線16を流れ、接地端子6及びアース線18を通じて大地に放電される。そして、絶縁抵抗計10を共用接続端子7に接続する。また放電完了後に、切替スイッチ20を「測定」の位置に動かして、第3開閉器14を開き、第4開閉器21を閉じる。絶縁抵抗計10を用いて、太陽電池モジュール2と大地(アース)間の絶縁抵抗を測定する。絶縁抵抗の測定終了後には、共用接続端子7から絶縁抵抗計10を取り外す。以上で、太陽電池モジュール2の絶縁耐力試験後の絶縁抵抗の測定は完了し、第1開閉器12を開き、切替スイッチ20を「開放」の位置に動かして、第4開閉器21を開く。
【0047】
このように、太陽電池モジュール2に溜まった電荷を放電したうえで、太陽電池モジュール2の絶縁抵抗を測定する構成であるため、太陽電池モジュール2に帯電している電荷をできる限り小さく、又は平衡化させ、太陽電池モジュール2の絶縁抵抗の測定時間が短縮化する。そのため絶縁抵抗の測定及び絶縁耐力試験の測定を含めた一連の実施時間も短縮化する。また、切替装置として測定装置1を用いる構成であるため、絶縁抵抗の測定又は絶縁耐力試験の測定に合わせて、太陽電池モジュール2に対して、配線等の機器の接続をし直す手間が省け、絶縁抵抗の測定及び絶縁耐力試験の測定を含む一連の実施時間が更に短縮化する。
【0048】
更に、切替スイッチ20の操作に連動して、第3開閉器14及び第4開閉器21が電路を開閉する構成としたため、作業員が第3開閉器14及び第4開閉器21の開閉操作を誤ることがなくなり、作業員は切替スイッチ20を操作することによって、簡単に第3開閉器14及び第4開閉器21を適切な開閉状態に切り替えることができ、便宜である。
【0049】
上述した本実施例においては、測定装置1に、太陽電池モジュール接続端子3、発電電圧計接続端子4、試験電圧発生器接続端子5、接地端子6、共用接続端子7の5つの端子を設ける構成を示したが、この構成に限定されるものではない。
【0050】
例えば、測定装置1に記録計接続端子(図示省略)を設け、当該端子にデータロガやレコーダ等の記録計(図示省略)を接続する構成としても良い。そのような構成にすれば、当該記録計が、太陽電池モジュール2の絶縁抵抗の測定時及び絶縁耐力試験の測定時の測定データを、自動的に取得し、記録するため、便宜である。
【0051】
また、測定装置1に表示手段接続端子(図示省略)を設け、当該端子に液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示手段を接続する構成としても良い。そのような構成とすれば、絶縁抵抗の測定時及び絶縁耐力試験の測定時の測定データをリアルタイムで表示させることができ、便宜である。
【0052】
また、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示手段を備えた記録計を用いる、あるいは、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示手段を記録計に接続する構成としても良い。そのような構成とすれば、絶縁抵抗の測定時及び絶縁耐力試験の測定時の測定データをリアルタイムで表示させることができるだけでなく、後日に行われる分析等の際に、記録計に記憶された測定データを表示させることができ、更に便宜である。
【0053】
また例えば、測定装置1に測定器接続端子(図示省略)と、太陽電池モジュール接続端子3と測定器接続端子とを接続する電路に第5開閉器(図示省略)を設け、測定器接続端子にオシロスコープやデジタルマルチメータ等の測定器(図示省略)を接続する構成としても良い。そのような構成にすれば、太陽電池モジュール2の保守点検等の際に、測定装置1を用いて短絡電流の測定を行うことができ便宜である。
【0054】
また、同様に測定器接続端子にI−Vカーブトレーサー等の太陽電池評価装置(図示省略)を接続する構成としても良い。そのような構成にすれば、太陽電池モジュール2の製造時等に、太陽電池モジュール2の性能試験を行うことができ便宜である。
【0055】
また例えば、太陽光による発電や試験電圧発生器9による電圧の印加等によって、太陽電池モジュール2から測定装置1側に電圧が印加されている状態が作業員に分かるように、図6に示すように、第1開閉器12と、太陽電池モジュール接続端子3との間の電路等に、例えばLED(=発光ダイオード)からなるパイロットランプ等の表示器19を並列に設ける構成としても良い。更に、表示器19は、その際の太陽電池モジュール2の極性が分かるように、極性によって発光色を変化させ、又は表示器19を点滅させるように構成しても良い。また、太陽電池モジュール2から、発電電圧計8等の、測定装置1を通じて接続された各機器に充電されている状態が作業員に分かるように、例えば、第1開閉器12と、発電電圧計接続端子4との間の電路にも、表示器19を設ける構成としても良い。なお、各表示器19は、表示器19の発光の有無が測定装置1の外部から認識できるように設けられている。
【0056】
このように、測定装置1内の、太陽電池モジュール接続端子3と各接続端子とを電気的に接続する電路の適宜の箇所に、通電の有無を示す表示器19を設ける構成とすれば、通電状態を作業員が認識することができ、太陽電池モジュール2の絶縁抵抗の測定や絶縁耐力試験の測定を行う作業員の安全性が高まる。
【0057】
また、本実施例においては、測定装置1を太陽電池モジュール2の絶縁抵抗の測定及び絶縁耐力試験の測定に用いる構成を示したが、この構成に限定されるものではなく、例えばNAS電池(=ナトリウム・硫黄電池)等の蓄電池や列車や路面列車等の直流回路の絶縁抵抗の測定や絶縁耐力試験の測定にも利用が可能である。
【0058】
また、本実施例においては、測定装置1に発電電圧計接続端子4を設け、絶縁抵抗の測定又は絶縁耐力試験の測定の際に、発電電圧計8や発生電圧計11を用いる構成を示したが、この構成に限定されるものではなく、絶縁抵抗の測定の際に、絶縁抵抗計10のみを用い、絶縁耐力試験の測定の際に、試験電圧発生器9のみを用いる構成としても良い。その場合には、測定装置1の発電電圧計接続端子4は不要となり、共用接続端子7は、絶縁抵抗測定端子の役割のみを果たすこととなる。
【0059】
また、本実施例では、太陽電池モジュール2の絶縁耐力試験の前後に、絶縁抵抗の測定を実施する構成を示したが、この構成に限定されるものではなく、例えば、太陽光発電システムの太陽電池モジュール2の絶縁抵抗の測定のみを実施する構成としても良い。
【0060】
また、本実施例では、絶縁抵抗測定端子及び発生電圧計接続端子として、1つの共用接続端子7を用いる構成を示したが、絶縁抵抗測定端子及び発生電圧計接続端子を夫々別個に、測定装置1に設ける構成としても良い。
【0061】
また、発電電圧計8や絶縁抵抗計10等の機器を接続する各接続端子と、太陽電池モジュール接続端子3との間の電路の適宜の箇所に開閉器を夫々設ける構成としても良い。このような構成とすれば、各開閉器を開閉することによって、太陽電池モジュール2と各機器とを電気的に接続したり、解除したりすることができ、各開閉器が各機器のスイッチとしての役割を果たすため、各機器を接続端子から取り外す必要がなくなり便宜である。
【0062】
また、測定装置1の接続端子や開閉器を太陽電池モジュール2に対して行う試験や測定等の用途に応じて構成し、それに合わせて、測定装置1内で太陽電池モジュール接続端子3と各接続端子とを接続する電路を構成しても良い。
【0063】
このような構成とすれば、太陽電池モジュール2に対して、直接、各機器の接続をする必要がなくなり、太陽電池モジュール2に対する各機器の接続が簡単化する。そのため、太陽電池モジュール2に対して行う種々の試験や測定の実施時間が短縮化する。
【0064】
すなわち本実施例では、太陽電池モジュール2の絶縁抵抗の測定及び絶縁耐力試験の測定に特化した測定装置1の構成を示し、上述した変形例では、その構成に短絡電流を測定する機能を付加した構成、あるいは性能試験を実施する機能を付加した構成等を示したが、これらの構成に限定されるものではなく、測定装置1を、絶縁抵抗の測定のみに特化した構成、絶縁耐力試験の測定のみに特化した構成、短絡電流の測定に特化した構成、性能試験の実施に特化した構成としても良い。または、測定装置1を、短絡電流の測定及び性能試験の実施に特化した構成、絶縁抵抗の測定及び短絡電流の測定に特化した構成、絶縁抵抗の測定及び性能試験の実施に特化した構成としても良く、太陽電池モジュール2に対して行う試験や測定等の用途に応じて、測定装置1を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】この発明に係る太陽電池モジュールの絶縁抵抗の測定及び絶縁耐力試験の測定に用いる測定装置の外観を示す平面図である。
【図2】この発明に係る測定装置の内部構成を全体的に示す回路図である。
【図3】この発明に係る測定装置の内部構成を全体的に示す回路図である。
【図4】この発明に係る測定装置の内部構成を全体的に示す回路図である。
【図5】この発明に係る測定装置の内部構成を全体的に示す回路図である。
【図6】この発明に係る測定装置の内部構成を全体的に示す回路図である。
【符号の説明】
【0066】
1:測定装置、2:太陽電池モジュール、3:太陽電池モジュール接続端子、3a:接続端子、3b:接続端子、4:発電電圧計接続端子、4a:接続端子、4b:接続端子、5:試験電圧発生器接続端子、5a:接続端子、5b:接続端子、6:接地端子、6a:接続端子、6b:接続端子、7:共用接続端子、7a:接続端子、7b:接続端子、7c:接地端子、8:発電電圧計、9:試験電圧発生器、10:絶縁抵抗計、11:発生電圧計、12:第1開閉器、13:第2開閉器、14:第3開閉器、15:抵抗器、16:アース線、17:電路、18:アース線、19:表示器、20:切替スイッチ、21:第4開閉器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池モジュールの絶縁抵抗の測定方法であって、
太陽電池モジュールに抵抗を介してアース線を接続し、
当該アース線を介して、太陽電池モジュールに溜まった電荷を放電させ、
放電完了後に、前記アース線の接続を解き、絶縁抵抗計を用いて、太陽電池モジュールの絶縁抵抗の測定を行うことを特徴とする、絶縁抵抗の測定方法。
【請求項2】
太陽電池モジュールと各機器とを接続させる測定装置であって、
当該測定装置には、太陽電池モジュールを接続させる太陽電池モジュール接続端子と、
絶縁抵抗計を接続させる絶縁抵抗測定端子が設けられ、
前記太陽電池モジュール接続端子は、測定装置内で第1開閉器から、第3開閉器、抵抗器を介してアース線に接続されており、
当該アース線を介して、太陽電池モジュールに溜まった電荷を放電させることが可能であり、
前記絶縁抵抗測定端子は、前記太陽電池モジュール接続端子と前記アース線とに接続されていることを特徴とする、測定装置。
【請求項3】
前記太陽電池モジュール接続端子に太陽電池モジュールを接続し、
前記第1開閉器及び前記第3開閉器を閉じて、前記アース線を通じて太陽電池モジュールに溜まった電荷を放電させ、
放電完了後に第3開閉器を開き、絶縁抵抗計を用いて絶縁抵抗の測定を行うことを特徴とする、請求項2に記載の測定装置を用いた絶縁抵抗の測定方法。
【請求項4】
前記測定装置には、試験電圧発生器を接続させる試験電圧発生器接続端子が設けられ、
前記太陽電池モジュール接続端子は、測定装置内で第1開閉器及び第2開閉器を介して前記試験電圧発生器接続端子と電気的に接続されていることを特徴とする、請求項2に記載の測定装置。
【請求項5】
前記太陽電池モジュール接続端子に太陽電池モジュールを接続し、
前記第1開閉器及び前記第3開閉器を閉じて、前記アース線を通じて太陽電池モジュールに溜まった電荷を放電させ、
放電完了後に第3開閉器を開き、絶縁抵抗計を用いて絶縁抵抗の測定を行い、
また、前記第1開閉器及び前記第2開閉器を閉じ、前記試験電圧発生器を用いて電圧を印加して絶縁耐力試験の測定を行うことを特徴とする、請求項4に記載の測定装置を用いた絶縁抵抗と絶縁耐力試験の測定方法。
【請求項6】
前記測定装置には、記録計を接続させる記録計接続端子と、
表示手段を接続させる表示手段接続端子とが設けられていることを特徴とする、請求項2又は4に記載の測定装置。
【請求項7】
前記測定装置内の、前記太陽電池モジュール接続端子と前記各接続端子とを接続する電路に、通電の有無を示す表示器が設けられていることを特徴とする、請求項2、4、6のいずれかに記載の測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−146931(P2012−146931A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6131(P2011−6131)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000141060)株式会社関電工 (115)
【Fターム(参考)】