説明

太陽電池モジュールの製造方法

【課題】
太陽電池モジュールの一体化後の平面性を損なうことなく、軽量屋根材の建屋でも特段の屋根補強工事を必要とすることなく費用面にも有利な太陽電池モジュールを提供することにある。
【解決手段】
少なくともフッ素系フィルム(A)、第1の樹脂製封止材(B1)、太陽電池セル(C)、第2の樹脂製封止材(B2)、有色フィルム(D)、第3の樹脂製封止材(B3)および一方向にリブを有する中空状の構造体(E)をこの順に積層し、フッ素系フィルム(A)側から加熱するとともに、加圧して一体化する太陽電池モジュールの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的なガラスを始めとした受光面保護材、第1の樹脂製封止材、太陽電池セル、第2の樹脂製封止材、バックシートなどと呼称される裏面保護材の順で一体化された太陽電池モジュールと比べて軽量であるため特別な屋根補強を実施することなく設置することができる軽量な太陽電池モジュールを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、従来家屋や工場等の建築物の屋根面に敷設するものが一般的で、受光面保護部材がガラスで、四方側縁を金属製のフレームで囲まれたものが上市されているが、質量が大きいため、取付時のハンドリング性や安全性に問題があった。さらに従来の太陽光発電パネルは、設置架台を含めると約20 kg/m程度の積載質量になり、既存の屋根、特にスレート屋根や金属折板屋根のような軽量屋根材の建屋では、構造的に搭載できないケースがあり、補強を要する場合がある等適用に当たって制約があった。
【0003】
そこで太陽電池の軽量化を図るため、受光面保護部材(フィルムやシート)と太陽電池セル、樹脂製封止材層と、プラスチック段ボールがこの順で積層され一体化された太陽電池モジュールが開示されている。(例えば、特許文献1、2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3162513号
【特許文献2】米国公開2009/0272436
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1の構成では、受光面保護部材(フッ素系フィルムなど)、プラスチック段ボールの熱収縮率、および1mあたりの質量などの記載がなく、また、熱収縮率を特別に規定した有色フィルムなどの記載もない。この状態でモジュールを一体化した場合、平面性を維持できないという問題がある。
【0006】
ここで平面性とは、太陽電池モジュール一体化後、四方側縁を金属製のフレームなどを装着していない状態での水平度をいい、これが悪化すると、太陽電池モジュールに反りが発生する。
【0007】
一方、特許文献2にはこの問題への対応が意識されているが、多層構成の太陽電池モジュールとなっており、質量的にも十分には軽量といえないものであった。このような点に鑑み、平面性と軽量性を両立した太陽電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため本発明の太陽電池モジュールの製造方法は、以下の構成を有する。
すなわち、
(1)少なくともフッ素系フィルム(A)、第1の樹脂製封止材(B1)、太陽電池セル(C)、第2の樹脂製封止材(B2)、有色フィルム(D)、第3の樹脂製封止材(B3)および一方向にリブを有する中空状の構造体(E)をこの順に積層し、フッ素系フィルム(A)側から加熱するとともに、加圧して一体化する太陽電池モジュールの製造方法。
(2)前記中空状の構造体(E)がポリカーボネートからなる前記(1)に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
(3)前記中空状の構造体(E)の135℃×20分後の熱収縮率がリブの方向、ならびにリブと直交する方向とも0〜0.3%である前記(1)または(2)に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
(4)前記中空状の構造体(E)の1mあたりの質量が1.0kg/m以上である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の太陽電池モジュールの製造方法。
(5)前記有色フィルム(D)が酸化チタンを含有するポリエステルフィルムまたはポリオレフィンフィルムである前記(1)〜(4)のいずれかに記載の太陽電池モジュールの製造方法。
(6)前記有色フィルム(D)の135℃×20分後の熱収縮率が流れ方向、ならびに巾方向とも1.0%以下であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の太陽電池モジュールの製造方法。
(7)前記フッ素系フィルム(A)の135℃×20分後の熱収縮率が流れ方向、巾方向とも0.05〜3.5%である前記(1)〜(6)のいずれかに記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、平面性が良好でかつ軽量な太陽電池モジュールを製造することが可能となる。
【0010】
また、かかる製造方法により軽量な太陽電池モジュールを得ることでスレート屋根や金属折板屋根のような軽量屋根材の建屋でも特段の屋根補強工事を必要とすることなく費用面でも低コスト化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の太陽電池モジュールの製造方法において一体化前の積層状態をリブ方向から見た概略断面図である。
【図2】本発明の太陽電池モジュールの製造方法に用いられる中空状の構造体(E)の概略図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる太陽電池モジュールの一体化工程で使用する真空ラミネート装置の側面からみた断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明の太陽電池モジュール製造方法において、加熱および加圧して太陽電池モジュールとして一体化する前の積層状態をリブ方向から見た概略断面図である
本発明の太陽電池モジュールの製造方法は、少なくともフッ素系フィルム(A)2、第1の樹脂製封止材(B1)3、太陽電池セル(C)4、第2の樹脂製封止材(B2)5、有色フィルム(D)6、第3の樹脂製封止材(B3)7および一方向にリブを有する中空状の構造体(E)8がこの順に積層した、一体化する前の積層体1を、フッ素系フィルム(A)側から加熱するとともに、加圧して一体化して太陽電池モジュールとする製造方法である。
【0014】
図2に本発明の太陽電池モジュール製造方法において用いる中空状の構造体(E)8の概略断面図を示す。中空状の構造体(E)8は、2枚以上のシート状の表面板(3枚以上のシートを有する場合の内層に配置されるものもここでは便宜的に表面板と呼ぶこととする)の間に一方向に延在する芯材(リブ)9が表面板をつなぐように設けられた形状を有し、芯材(リブ)9に直交する断面において四角形などの中空部10が形成された構造体である。なお、形状が上記を満たす限り、シート状の表面板とリブが別個に成形されたものを接着等の一体加工されたものであっても、押し出し成形等で一体成形されたものであってもかまわない。好ましくは、中空状の構造体(E)8の材質が、透明性、耐熱性、難燃性などを兼ね備えたポリカーボネートであることが好ましく、剛性等の観点から押出し成形により一体成形されたものであればより好ましい。中空状の構造体(E)8の、両表面を形成する各シートは、単層であっても複数の層からなっても良く、複数の層からなる場合には外側の層に紫外線吸収剤や酸化チタンなどの粒子を含有させても良い。また、外側の層にポリメチルメタクリレートなどの異種素材を用いた構成としても良いが、そのような場合にはポリカーボネートの自己消火性などの特性を阻害しない範囲内で多層化することが好ましい。このような中空状の構造体としては、例えばSABICイノベーティブプラスチックスジャパン合同会社製の型番LTC/10/2RS/1700(1mあたりの質量1.7kg/m)があげられる。
【0015】
本発明の太陽電池モジュール製造方法において用いる中空状の構造体(E)8としては、135℃×20分後の熱収縮率がリブの方向、ならびにリブと直交する方向とも0〜0.3%であるものが好ましい。かかる熱収縮率の範囲内にすることで、太陽電池モジュールの一体化後に中空状の構造体(E)8に起因した平面性悪化(反り)の発生頻度を低下させることができるため好ましい。さらには、中空状の構造体(E)8の1mあたりの質量が1.0kg/m以上であることが好ましい。1.0kg/m以上とすることで、太陽電池モジュール一体化後に支持層として働き、平面性維持への寄与も期待できるため好ましい。一方、1.0kg/m未満の場合は、支持層として働かず、平面性を損ない、反りが発生する場合がある。また、特に上限は規定しないが、モジュールの1mあたりの質量が増加すること、費用が増大することから、1.0kg/m〜3.0kg/mの範囲が好ましい。
【0016】
ここで、熱収縮率の測定方法について、中空状の構造体(E)を例に取り説明するが、その他部材に対しても同様に測定を行う。
【0017】
500mm角の中空状の構造体(E)を準備し、リブ方向に400mm間隔が判るようにマジックなどで目印を付け、寸法を測る(加熱前寸法)。併せてリブと直交する方向においても同様に400mm間隔が判るようにマジックなどで目印を付け、寸法を測る(加熱前寸法)。目印を付けた中空状の構造体(E)を135℃のオーブン内に渡してある針金にクリップを用いて吊し、20分間加熱する。20分間の加熱後オーブン内から取り出し、冷却後に事前に付けてある目印間の寸法(加熱後寸法)を測り、下記式で熱収縮率を求める。
【0018】
熱収縮率(%)=〔(加熱前寸法−加熱後寸法)/加熱前寸法〕×100。
【0019】
本発明の太陽電池モジュール製造方法において用いる有色フィルム(D)6は、太陽電池セルの間を通り抜けた光を反射して再利用するための反射性を付与する役割を担うものであり、酸化チタンを含有するポリエステルフィルムまたはポリオレフィンフィルムを用いることが好ましい。ポリエステルフィルムは、単層であっても多層であっても良い。このようなポリエステルフィルムとしては、例えば東レ株式会社製の型番E20Fがあげられる。また、ポリオレフィンフィルムも単層であっても多層であっても良いが、多層の場合、直鎖状低密度ポリエチレンの層、ポリプロピレンの層などの多層構成であっても良い。反射性を付与するべく酸化チタンを含有するポリエステルフィルムまたはポリオレフィンフィルムの全光線透過率は20%以下が好ましく、さらに好ましくは15%以下、最も好ましくは10%以下である。なお、本全光線透過率の値は、ヘイズメーター(例えば、日本電色工業株式会社製、型番:NDH2000)で測定することができる。また、有色フィルム(D)6の135℃×20分後の熱収縮率は、流れ方向、ならびに巾方向とも1.0%以下であることが好ましい。通常、流れ方向とはフィルム製造時の走行方向を、幅方向とは走行方向に直行する方向をいい、各方向が区別できる場合には、それぞれについて、各方向が区別できない場合には、シートの縦方向および横方向が上記熱収縮率であれば良いものとする。かかる熱収縮率の範囲内にすることで、太陽電池モジュールの一体化後に有色フィルム(D)6が支持層として働き、平面性を維持することができる。
【0020】
本発明の太陽電池モジュール製造方法において用いるフッ素系フィルム(A)2は、太陽電池モジュールの受光面側の保護部材として用いられる。フッ素系フィルム(A)2は、熱収縮率が流れ方向、巾方向とも0.05〜3.5%であることが好ましい。なお、熱収縮率が流れ方向、巾方向とも0.05〜3.5%であるとは、各方向が区別できる場合には、それぞれについて、各方向が区別できない場合には、シートの縦方向および横方向が上記熱収縮率であれば良いものとする。かかる熱収縮率の範囲内にすることで、太陽電池モジュールの一体化後にフッ素系フィルム(A)2に起因する平面性悪化(反り)が発生する頻度を低減することができる。フッ素系フィルムとしては、水蒸気バリア性・透明性に優れるが製造コストが高いテトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン(FEP)や、製造コストは低いが水蒸気バリア性に劣るポリビニリデンフルオライド(PVDF)などがある。好ましくは、これら特性について突出した特性はないもののバランス良く兼ね備えるエチレンーテトラフルオロエチレン(ETFE)がある。厚みは降雹などの受光面側の衝撃から太陽電池セル(C)4を保護する役目と費用面から50μm以上200μm以下が好ましい。
【0021】
樹脂製封止材としては、公知の太陽電池用の封止材を使用でき、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、オレフィン系樹脂(とりわけグラフト変性ポリエチレン樹脂)、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)、アイオノマー樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられるが、各積層される部材との密着性から、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、オレフィン系樹脂(とりわけグラフト変性ポリエチレン樹脂)が好ましい。また、140℃以上の高温で実施されるモジュール一体化時に中空状の構造体(E)8のリブが倒れるなどの変形を防止するため、140℃以下で一体化(溶融→硬化→一体化)を可能とすることからもエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、オレフィン系樹脂(とりわけグラフト変性ポリエチレン樹脂)が好ましい。エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)としては、例えばサンビック株式会社製の型番fastcure PV−45FR00S、グラフト変性ポリエチレン樹脂としては、アルケマ株式会社製の型番LC3−UVやLC4−UVがあげられる。また、厚みに関しては第1の樹脂製封止材(B1)3は降雹などの受光面側の衝撃から太陽電池セル(C)4を保護する役目からも400μm以上が好まく、費用面から450μm〜800μmがさらに好ましい。第2の樹脂製封止材(B2)5、第3の樹脂製封止材(B3)7は費用面から100μm以上800μm以下が好ましい。
【0022】
太陽電池セル(C)4としては、単結晶シリコン型、多結晶シリコン型、アモルファスシリコン型、化合物型など多岐に渡るが、従来の受光面保護部材がガラスである太陽電池モジュールと比較して水蒸気透過度が劣るため、主に水蒸気の影響を受けにくい単結晶シリコン型、多結晶シリコン型が好ましい。
[太陽電池モジュールの一体化方法]
本発明において、少なくともフッ素系フィルム(A)、第1の樹脂製封止材(B1)、太陽電池セル(C)、第2の樹脂製封止材(B2)、有色フィルム(D)、第3の樹脂製封止材(B3)および一方向にリブを有する中空状の構造体(E)をこの順に積層した後、フッ素系フィルム(A)側から加熱するとともに、加圧して一体化する。その理由は、太陽電池モジュールを一体化する製造方法において、一方向にリブを有する中空状の構造体(E)8側から加熱すると、中空状であることが影響し、一体化に要する時間が長くなり、中空状の構造体(E)を構成する両表面の間で加熱温度差が生じるため、平面性を損ない、反りが発生しやすくなるためである。
【0023】
一体化する方法について、その一例として、真空ラミネート方式に関し、図3により説明する。図3において、太陽電池モジュールとして一体化する前の積層体1は予め135℃に加熱された真空ラミネート装置11の加熱板12上のダミーガラス(例えば、厚み3.2mmt、図示せず)や金属板(図示せず)の上に、フッ素系フィルム(A)、第1の樹脂製封止材(B1)、配線を施した太陽電池セル(C)、第2の樹脂製封止材(B2)、有色フィルム(D)、第3の樹脂製封止材(B3)および一方向にリブを有する中空状の構造体(E)の順に積層して、静置する。しかる後、真空ラミネート装置11の上筐体13を閉じて密閉し、下筐体14に取り付けられた排気管15から図示しない排気装置でモジュール1が静置されている空間部16の空気を排気するとともに、同時に上筐体13に取り付けられた給排気管17からもゴム製ダイアフラム18と上筐体13とで形成する空間部19の空気を排気し、空間部16および空間部19を減圧する。このとき、空間部19の真空度を若干高くしてゴム製ダイアフラム18を上筐体13の内壁面20に張り付いた状態とすることが好ましい。この状態を4分間保持した後、給排気管17から空気を導入して、空間部16と空間部19の圧力差によりゴム製ダイアフラム18を太陽電池モジュールとして一体化する前の積層体1に押し当て加圧する。かかる加圧状態は、使用する樹脂製封止材のラミネート推奨時間に依存する場合や中空状の構造体(E)の変形を防止する点から16〜36分間保持することが好ましい。以上のように加熱加圧を行うことにより、太陽電池モジュールを形成することができる。なお、空間部16と空間部19の圧力差は、中空状の構造体(E)の変形を防止する点から50〜100kPa程度が好ましい。また、真空ラミネート装置11の加熱板12の温度は使用する樹脂製封止材のラミネート推奨温度にも依存するが、130〜150℃が好ましく、さらに好ましくは、中空状の構造体(E)の変形を防止する点から130〜140℃が好ましく、最も好ましくは130〜135℃である。
【0024】
また、上記真空ラミネート方式は、一例に過ぎず、公知のラミネート方式を適用することができる。
【実施例】
【0025】
以下本発明を実施例にて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例においては、本発明の製造方法による太陽電池モジュールとして300mm角のモデルサンプル(以降、モデルサンプルと略記する)を作製して評価している。かかるサイズであれば、フルサイズの太陽電池モジュールでの評価との対応が取れるためである。
[特性の評価方法]
(1)平面性評価
実施例および比較例で作製したモデルサンプル(300mm角)の四方側縁に金属製のフレームなどを装着しない状態で反りが凸状になる面が上になるように水平面に静置し、水平面から最も離れた部位までの水平面からの距離を直定規にて計測する。3枚の評価サンプルを評価し、その平均値を平面性評価とした。
[使用材料]
(フッ素系フィルム(A))
フッ素系フィルムとして、熱収縮率がそれぞれ異なる東レフィルム加工株式会社製のエチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE) 型番75ELを用いた。
【0026】
(樹脂製封止材(B1〜B3))
第1〜第3の樹脂製封止材として、厚み450μmのサンビック株式会社製のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA) 型番fastcure PV−45FR00Sを用いた。
【0027】
(太陽電池セル(C))
太陽電池セルとして、5インチシリコン単結晶セル Big Sun Energy Technology Incorporation製 型番B125SD1−1640T1をストリングス方向2枚×2列(計4枚)用いた。配線は、公知のセル自動配線装置にて、ストリングス方向のセル間を接続するタブを2本並列にして接続した。
【0028】
(有色フィルム(D))
有色フィルムとして、酸化チタンを含有する白色ポリエステルフィルムである東レ株式会社製の型番E20F(厚み50μm 全光線透過率14.1%)、もしくは日本電色工業株式会社製のヘイズメーター(型番NDH2000)で測定した全光線透過率が6.8%である白色ポリオレフィンフィルム(厚み150μm)を用いた。
【0029】
(中空状の構造体(E))
中空状の構造体として、SABICイノベーティブプラスチックスジャパン合同会社製の型番LTC/10/2RS/1700(1mあたりの質量1.7kg/m:(E1)と記す)、LT2UV62RS13(1mあたりの質量1.3kg/m:(E2)と記す)、PTS/4/2RS/820(1mあたりの質量0.82kg/m:(E3)と記す)の3種のものを用いた。
【0030】
(実施例1)
135℃×20分における熱収縮率が流れ方向0.3%、巾方向2.5%のフッ素系フィルム(A)、135℃×20分における熱収縮率が流れ方向0.25%、巾方向0.12%の有色フィルム(D)である白色ポリエステルフィルム、1.7kg/mの1mあたりの質量で、かつ135℃×20分における熱収縮率がリブ方向0.11%、リブと直交する方向0.05%である中空状の構造体(E1)を用いた。135℃に加熱された真空ラミネート装置の加熱板上にダミーガラス(厚み3.2mmt)、フッ素系フィルム(A)、第1の樹脂製封止材(B1)、太陽電池セル(C)、第2の樹脂製封止材(B2)、有色フィルム(D)、第3の樹脂製封止材(B3)および一方向にリブを有する中空状の構造体(E)の順に300mm角の各材料を積層し、静置した。しかる後、真空ラミネート装置の上筐体を閉じて密閉し、下筐体に取り付けられた排気管から排気装置でモジュールが静置されている空間部の空気を排気するとともに、同時に上筐体に取り付けられた給排気管からもゴム製ダイアフラムと上筐体とで形成する空間部の空気を排気し、空間部16および空間部19を減圧状態とした。この時、空間部19の真空度を空間部16に対し若干高くしたのでゴム製ダイアフラムは上筐体の内壁面に張り付いていた。
【0031】
この状態を4分間維持し、その後、ゴム製ダイアフラムと上筐体とで形成する空間部に給排気管から空気を導入し、空間部16と空間部19の圧力差でゴム製ダイアフラムにより16分間真空加圧して一体化した。なお、空間部16と空間部19の圧力差は、中空状の構造体(E)の変形を防止する点から70kPaとした。
【0032】
上記方法にて300mm角のモデルサンプルを作製した。なお、以降の実施例、比較例とも全て各種フィルムの流れ方向と中空状の構造体(E)のリブ方向が同じ方向になるようにしている。
【0033】
(実施例2)
135℃×20分における熱収縮率が流れ方向0.3%、巾方向2.5%のフッ素系フィルム(A)、135℃×20分における熱収縮率が流れ方向0.50%、巾方向0.50%の有色フィルム(D)である白色ポリオレフィンフィルム、1.7kg/mの1mあたりの質量で、かつ135℃×20分における熱収縮率がリブ方向0.11%、リブと直交する方向0.05%である中空状の構造体(E1)を用いて、実施例1と同様にして300mm角のモデルサンプルを作製した。
【0034】
(比較例1)
有色フィルム(D)と第3の樹脂製封止材(B3)を用いないこと以外、実施例1と同様にしてモデルサンプルを作製した。
【0035】
(実施例3)
中空状の構造体(E1)の代わりに、1mあたりの質量1.3kg/mで、かつ135℃×20分における熱収縮率がリブ方向0.65%、リブと直交する方向0.50%である中空状の構造体(E2)を使用すること以外、実施例1と同様にしてモデルサンプルを作製した。
【0036】
(実施例4)
有色フィルム(D)である白色ポリエステルフィルムの135℃×20分における熱収縮率が流れ方向1.20%、巾方向0.10%であること以外、実施例1と同様にしてモデルサンプルを作製した。
【0037】
(実施例5)
フッ素系フィルム(A)の135℃×20分における熱収縮率が流れ方向4.0%、巾方向1.0%であること以外、実施例1と同様にしてモデルサンプルを作製した。
【0038】
(実施例6)
中空状の構造体(E1)の代わりに、1mあたりの質量0.82kg/mで、かつ135℃×20分における熱収縮率がリブ方向0.11%、リブと直交する方向0.08%である中空状の構造体(E3)を使用すること以外、実施例1と同様にしてモデルサンプルを作製した。
【0039】
(比較例2)
中空状の構造体(E1)の代わりに、1mあたりの質量0.82kg/mで、かつ135℃×20分における熱収縮率がリブ方向0.11%、リブと直交する方向0.08%である中空状の構造体(E3)を使用し、真空ラミネート装置の加熱板上への積層順が逆転(加熱板上に一方向にリブを有する中空状の構造体(E)、第3の樹脂製封止材(B3)、有色フィルム(D)、第2の樹脂製封止材(B2)、太陽電池セル(C)、第1の樹脂製封止材(B1)およびフッ素系フィルム(A)の順に積層)していること以外、実施例1と同様にしてモデルサンプルを作製した。
【0040】
【表1】

【0041】
(実施例と、比較例1の比較)
実施例と比較例1との比較より、有色フィルム(D)層がない場合、モデルサンプル作製後の平面性が悪化することがわかる。
【0042】
(実施例1と、実施例3の比較)
実施例1と実施例3との比較より、中空構造体(E)の135℃×20分における熱収縮率がリブの方向、ならびにリブと直交する方向とも0〜0.3%の範囲にない場合、モデルサンプル作製後の平面性は、やや悪化することがわかる。しかしながら、実施例3の平面性レベルの場合、四方側縁をフレームで囲むことで実用上問題ない平面性レベルに修正することが可能な範囲であった。
【0043】
(実施例1,2と、実施例4の比較)
実施例1,2と実施例4との比較より、有色フィルム(D)の135℃×20分後の熱収縮率が流れ方向、ならびに巾方向とも1.0%以下でない場合、モデルサンプル作製後の平面性は、やや悪化することがわかる。しかしながら、実施例4の平面性レベルの場合、四方側縁をフレームで囲むことで実用上問題ない平面性レベルに修正することが可能な範囲であった。
【0044】
(実施例1と、実施例5の比較)
実施例1と実施例5との比較より、フッ素系フィルム(A)の135℃×20分後の熱収縮率が流れ方向、巾方向とも0.05〜3.5%の範囲にない場合、モデルサンプル作製後の平面性は、やや悪化することがわかる。しかしながら、実施例5の平面性レベルの場合、四方側縁をフレームで囲むことで実用上問題ない平面性レベルに修正することが可能な範囲であった。
【0045】
(実施例1と、実施例6の比較)
実施例1と実施例6との比較より、中空状の構造体(E)の1mあたりの質量が1.0kg/m以上ない場合、モデルサンプル作製後の平面性は、やや悪化することがわかる。しかしながら、実施例6の平面性レベルの場合、四方側縁をフレームで囲むことで実用上問題ない平面性レベルに修正することが可能な範囲であった。
【0046】
(実施例1と、比較例2の比較)
実施例1と比較例2との比較より、モデルサンプルとして一体化する前の積層体への加熱方向を逆にした場合、モデルサンプル作製後の平面性が悪化することがわかる。比較例2の平面性レベルの場合、四方側縁をフレームで囲んでも実用性を満たす平面性レベルにはならない。
【符号の説明】
【0047】
1 太陽電池モジュールとして一体化する前の積層体
2 フッ素系フィルム(A)
3 第1の樹脂製封止材(B1)
4 太陽電池セル(C)
5 第2の樹脂製封止材(B2)
6 有色フィルム(D)
7 第3の樹脂製封止材(B3)
8 一方向にリブを有する中空状の構造体(E)
9 芯材(リブ)
10 中空部
11 真空ラミネート装置
12 加熱板
13 上筐体
14 下筐体
15 排気管
16 空間部
17 給排気管
18 ゴム製ダイアフラム
19 空間部
20 内壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともフッ素系フィルム(A)、第1の樹脂製封止材(B1)、太陽電池セル(C)、第2の樹脂製封止材(B2)、有色フィルム(D)、第3の樹脂製封止材(B3)および一方向にリブを有する中空状の構造体(E)をこの順に積層し、フッ素系フィルム(A)側から加熱するとともに、加圧して一体化する太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記中空状の構造体(E)がポリカーボネートからなる請求項1に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記中空状の構造体(E)の135℃×20分後の熱収縮率がリブの方向、ならびにリブと直交する方向とも0〜0.3%である請求項1または2に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記中空状の構造体(E)の1mあたりの質量が1.0kg/m以上である請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項5】
前記有色フィルム(D)が酸化チタンを含有するポリエステルフィルムまたはポリオレフィンフィルムである請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項6】
前記有色フィルム(D)の135℃×20分後の熱収縮率が流れ方向、ならびに巾方向とも1.0%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項7】
前記フッ素系フィルム(A)の135℃×20分後の熱収縮率が流れ方向、巾方向とも0.05〜3.5%である請求項1〜6のいずれかに記載の太陽電池モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−182270(P2012−182270A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43554(P2011−43554)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】