説明

太陽電池モジュール及びその製造方法

【課題】軽量であり、温度サイクル試験の耐久性を有する太陽電池モジュールを低コストで製造する。
【解決手段】樹脂製の前面保護部材、無機材料を含有する裏面保護部材、シリコーン樹脂封止層、及び太陽光発電セルを備える太陽電池モジュールであって、前記前面保護部材と裏面保護部材とがシリコーン樹脂封止層を介して積層され、シリコーン樹脂封止層に太陽光発電セルが包埋されている太陽電池モジュール、及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量で、温度サイクル試験の耐久性を有し、かつ低コストに製造可能な太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池モジュールは太陽光の入射する面に透明なカバー材料を配し、裏面側に白色、黒色等の基板が配置されており、両者の間に透明な封止材料および太陽電池セルが配置されるという構造になっている。入射面の透明なカバー材料としては、太陽光線の透過率が高く、機械強度に優れた強化ガラスが採用されているものが殆どである。
【0003】
近年では軽量化を目的として透明な樹脂シートも検討されており、例えば、特許文献1には、太陽光線が入射する側に配設される前面カバー部材と、同じ材質からなる裏面カバー部材と、およびその間に充填する充填部材と、セル本体とからなる太陽電池モジュールにおいて、表裏面カバー部材がポリカーボネート、ポリエチレン及びポリエチレンテレフタレートのいずれかから形成されるものが開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、複数枚のアクリル板を軟質シリコーン樹脂封止層を介して積層し、積層アクリル板とする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−277187号公報
【特許文献2】特開2010−264751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された太陽電池モジュールの表裏面カバー材は、線膨張係数(CTE)が7〜11×10-5/℃程度である樹脂材料を用いており、太陽電池セルや配線等のモジュールを構成する無機材料とのCTEの差が大きいために、温度サイクル試験を行うとセルの割れ、配線の歪み等の不具合が起こることがあった。また、特許文献2ではシリコーン樹脂をアクリル板で挟み込んだ樹脂積層板が提案されているが、太陽電池への応用を考えた場合、モジュールの表裏面どちらも線膨張係数が高いアクリル板を用いており、温度サイクル試験に耐えられないことがあった。また、仮に厚みを薄くした場合では、積層体全体の剛性が低下し、太陽電池セルを保護することが難しいことがあった。
【0007】
本発明の目的は、軽量化を図りながら、温度サイクル試験の耐久性を有し、かつ低コストに製造可能な太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
鋭意検討の結果、本発明者らは前面を樹脂製の部材、裏面に無機材料を含有する板状物を用い、これらをシリコーン樹脂封止層を介して積層することで、温度サイクル時に太陽光発電セル(太陽電池セルともいう)および配線材料にかかる応力を低減することができ、温度サイクル試験の耐久性が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、樹脂製の前面保護部材、無機材料を含有する裏面保護部材、シリコーン樹脂封止層、及び太陽光発電セルを備える太陽電池モジュールであって、前記前面保護部材と裏面保護部材とがシリコーン樹脂封止層を介して積層され、シリコーン樹脂封止層に太陽光発電セルが包埋されている太陽電池モジュールである。
【0010】
また本発明は、前記裏面保護部材と太陽光発電セルをスペーサーを介して配置し、さらに前面保護部材をスペーサーを介して前記裏面保護部材と対向させて配置した後、前記前面保護部材と前記裏面保護部材とから形成される空間内に反応性シリコーン材を注入し固化させてシリコーン樹脂封止層を形成する前記太陽電池モジュールの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
軽量化を図りながら、温度サイクル試験の耐久性を有する太陽電池モジュールを低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】シリコーン樹脂封止層を有する太陽電池モジュールの断面図
【図2】2行2列に直列配線した4連太陽電池セルの概略図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0014】
本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施できる。
【0015】
また、本明細書中では、(共)重合/(共)重合体とは単独重合/単独重合体又は共重合/共重合体を意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。
【0016】
(太陽電池モジュール)
図1、2を参照しながら、本願発明の一実施形態を詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態における太陽電池モジュールの断面図を模式的に示した図である。図1に示すように、太陽電池モジュール10は、前面保護部材20、裏面保護部材30、太陽電池セル(図1には4連太陽電池セル80を示す)、シリコーン樹脂封止層50、スペーサー60aおよび60b、電極材料70とで構成されている。詳細には、太陽光線が入射する受光面側(表面側)に前面保護部材20が設けられ、受光面側と対向する面(裏面側)に裏面保護部材30が設けられている。
【0018】
図2は、太陽電池セルの接続例として、4連太陽電池セルを模式的に示した図である。この場合、4連太陽電池セル80は、4枚の太陽電池セル40が配線材料70により、2行2列に直列配線されることで構成されている。
【0019】
太陽電池モジュールの作製方法の例について以下に述べる。前記前面保護部材20と裏面保護部材30から形成される空間に太陽電池セルを配置するために、予め複数の太陽電池セルを配線材料70によって電気的に直列に接続し、これら太陽電池セル40を、スペーサー60aを介して裏面保護部材30に取り付けるとよい。スペーサー60aは、太陽電池セルの発電領域に干渉しない位置にとりつけるのが好ましい。
【0020】
また、前面保護部材20と裏面保護部材30とを対向するように配置するためには、前面保護部材20と裏面保護部材30との間にスペーサー60bを介在させることにより間隔をあけると共に、前面保護部材20とスペーサー60b、裏面保護部材30とスペーサー60bとを接着する。スペーサー60bを接着した後、前面保護部材20と裏面保護部材30とはジグを用いて固定してもよい。スペーサー60bは、たとえば、前面保護部材20と裏面保護部材30の対向する面の最外周部の全周囲にとりつけることができる。
【0021】
スペーサー60a,60bとしては、配置工程の作業性が高くなることから、両面接着テープが好ましいが、樹脂やセラミックスの成形品を用いることもできる。スペーサー60a,60bが成形品である場合には、成形品を前面保護部材20又は裏面保護部材30に接着剤により接着してもよいし、接着剤により接着せずにジグのみで前面保護部材20と裏面保護部材30とを固定してもよい。また、太陽電池セルから伸びる電極材料70はモジュール外部へ接続可能な状態になっている。
【0022】
さらに、前面保護部材20と裏面保護部材30から形成される空間に反応性シリコーン材を充填し、それを硬化させることによって、シリコーン樹脂封止層50を形成する。前記シリコーン材の充填方法としては、例えば、シリコーン材を注入するための針状ノズルをスペーサー部に刺し込み、その先端部を前面保護部材20と裏面保護部材30との間に挿入し、前記ノズルを介して反応性シリコーン材を徐々に注入して充填する方法を採ることができる。針状ノズルの挿入位置は、前記シリコーン材の粘度、太陽電池モジュールの構造や大きさ等によって適宜選択される。また、針状ノズルの本数は1本でもよいし、2本以上であってもよい。
【0023】
充填する反応性シリコーン材は予め脱気しておくことが好ましい。シリコーン材を脱気しておけば、前記封止層に気泡が生じることを抑制できる。
【0024】
反応性シリコーン材を硬化させるためには、シリコーン材がラジカル重合開始剤を含む場合には加熱する方法、光重合開始剤を含む場合には活性エネルギー線(紫外線、電子線等)を照射する方法が採られる。加熱する方法を採る場合には、熱風による加熱、赤外線照射による加熱が適用される。
【0025】
(前面保護部材)
前面保護部材20を構成する樹脂の種類は特に限定されないが、透明性および耐候性の観点から、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系単量体、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1,1,2,2,−テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート等のフッ素置換(メタ)アクリレート系単量体、フッ化ビニリデン等のフルオロカーボン系単量体、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ビニルベンゾエート、オルトクロロスチレン、パラフルオロスチレンまたはパライソプロピルスチレン等のスチレン系単量体、(メタ)アクリルアミド、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体、その他(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル等の単官能性単量体、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、1,2−ビス(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、1,4−ビス(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ブタン、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、メチレンビスアクリルアミド等の二官能性単量体、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシド変性トリアクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート等の三官能性単量体、コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸の縮合反応混合物、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等の四官能性以上の単量体、その他2官能以上のウレタンアクリレート、2官能以上のポリエステルアクリレート等、各種単量体から選ばれる単量体単位を1種もしくは2種以上含む(共)重合体を用いることができる。その他、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ジアセチルセルロース及びトリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン及びエチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系樹脂、ナイロン及び芳香族ポリアミド等のポリアミド系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂等が好適に用いられる。これら(共)重合体もしくは樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0026】
前記前面保護部材20は、1層構成でもよく、2層以上の多層構成でもよい。また、厚み方向に段階的に樹脂組成を変化させてもよい。例えば、多層構造の1層としてハードコート層を配して耐摩耗性を付与したり、フッ素系樹脂を有する層を配して耐候性、防汚性を付与することができる。多層構造を形成する方法は共押し出し、熱ラミネート等、公知の方法を用いることができる。
【0027】
また、前記前面保護部材20に紫外線吸収剤や光安定剤等の耐光安定剤を添加しても良い。前記紫外線吸収剤の種類は特に限定されないが、例えば、フェニルサリシレ−ト、p−tert−ブチルフェニルサリシレ−ト等のサリシル酸系、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ−ル、2−(2’ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ−ル等のベンゾトリアゾ−ル系、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレ−ト、エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレ−ト等のシアノアクリレ−ト系がある。また、これらの他にニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、(2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェノラ−ト)−n−ブチルアミンニッケル等を用いることができる。また、光安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケ−トのようなヒンダ−ドアミン系光安定剤を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用しても良い。
【0028】
耐光安定剤の添加量としては、樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部が好ましく、0.005〜5質量部が特に好ましい。0.001質量部以上であると、十分な耐光性を付与することが容易である。10質量部以下であると、耐光特性が飽和してコストアップを招くことを容易に防止でき、耐光安定剤のブリードアウト等により製品外観の低下等を引き起こし易くなることも容易に防止できる。従って、ブリードアウトを防止する観点から、性能を満足させるための最低限の添加量に抑えることが望ましい。
【0029】
さらに、前記前面保護部材20に難燃剤を添加しても良い。前記難燃剤の種類は特に限定されないが、例えば、2,4−ビス[(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−ピペリジン−4−イル)ブチルアミノ]−6−クロロ−s−トリアジンとN,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミンの反応生成物や、メラミンシアヌレート、ポリリン酸メラミン等のメラミン系難燃剤、三酸化アンチモン等の金属酸化物、ホウ酸亜鉛等の金属塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、トリアジン系化合物等の窒素系難燃剤、臭素化ポリスチレン、塩素化パラフィン、デクロランプラス、テトラブロモビスフェノールA、デカブロモジフェニルエーテル等のハロゲン系難燃剤、赤燐、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、t−ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ビス−(t−ブチルフェニル)フェニルホスフェート、トリス−(t−ブチルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ビス−(イソプロピルフェニル)ジフェニルホスフェート、トリス−(イソプロピルフェニル)ホスフェート等の芳香族リン酸エステル、レゾルシノールビス−ジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス−ジキシレニルホスフェート、ビスフェノールAビス−ジフェニルホスフェート等の縮合リン酸エステル、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、テトラキス(2クロロエチル)ジクロロイソペンチルジホスフェート、ポリオキシアルキレンビス(ジクロロアルキル)ホスフェート等の含ハロゲンリン酸エステル、リン酸アミド、赤燐、ポリリン酸アンモニウム、ホスファゼン化合物等のリン系難燃剤、シリコーン系難燃剤等が用いられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0030】
前記難燃剤の添加量としては、樹脂100質量部に対して、1〜30質量部が好ましく、5〜25質量部が特に好ましい。1質量部以上であると、十分な難燃性を付与することが容易であり、30質量部以下であると、コストアップを避けるとともに、樹脂成分の相対的な低下による破断強度等の物性低下を防止することが容易である。従って、難燃剤の添加量は、性能を満足させるための最低限の添加量に抑えることが望ましい。
【0031】
その他、必要に応じて、可塑剤、帯電防止剤、離型剤、染顔料、耐熱性向上剤、結晶核剤、流動性改良剤、導電性付与剤、界面活性剤、相溶化剤、防曇剤、発泡剤及び抗菌剤、蛍光剤等を添加してもよい。
【0032】
前記前面保護部材20は、表面に防汚性能、耐擦傷性を付与したり、さらに封止材層との接着性等を制御するためにプラズマ処理、コロナ処理、コート材の塗布等、表面処理を施しても良い。
【0033】
前記コート材の種類、膜の形成方法、厚みは特に限定されないが、たとえば、活性エネルギー線硬化性重合体原料を表面に塗付し、紫外線等の活性エネルギー線を照射して硬化膜を得る方法、シリコーン系、メラミン系の熱硬化性重合体原料を表面に塗付し、加熱して硬化膜を得る方法、ポリシラザン、シリカ化合物等、無機物を含む溶液を表面に塗布後に乾燥する方法等、公知の方法を用いることができる。
【0034】
(裏面保護部材)
裏面保護部材30としては、無機材料を含む板状物を用いることができる。無機材料を含む板状物の例としては、樹脂に無機材料等のフィラーを含有した樹脂組成物または無機材料を含む樹脂積層体等が挙げられる。
【0035】
樹脂に無機材料等のフィラーを含有した樹脂組成物を用いる場合、構成する樹脂の種類は特に限定されないが、前記前面保護部材20を構成する樹脂に例示した樹脂や、エポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂の種類としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、あるいはこれらを変性したエポキシ樹脂等の2官能性エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、テトラグリシジルアミンのようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタンやトリス(グリシジルオキシメタン)のようなグリシジルエーテル型エポキシ樹脂及びこれらを変性したエポキシ樹脂やこれらのエポキシ樹脂をブロム化したブロム化エポキシ樹脂等の3官能以上の多官能性エポキシ樹脂や、ビスフェノールS型エポキシ樹脂や、チオ骨格を有するエポキシ樹脂等の硫黄含有エポキシ樹脂等が用いられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上組み合わせてもよい。
【0036】
裏面保護部材30に含まれる無機材料の種類としては特に限定されないが、たとえば、ガラス、カーボンファイバー、酸化ケイ素(シリカ)、粘土(クレイ)、金属酸化物、金属ナノ粒子等の線膨張が低いものを用いることができる。
【0037】
裏面保護部材30に用いられるフィラーの形態としては、特に限定されず、一方向材、クロス、ペーパー、ウール、マット、短繊維、フレーク、粒子状物、多孔質体等、用途に応じて適宜選択することができる。
【0038】
フィラーは、樹脂との親和性、密着性を向上させて、空隙形成による成形品の透明性や強度の低下を抑制するために、従来公知の方法を用いてカップリング剤により表面処理することができる。ガラスフィラーの場合、カップリング剤としては、シラン系カップリング剤、ボラン系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤又はチタネート系カップリング剤等を使用することができる。
【0039】
また、無機材料を含む樹脂積層体を用いる場合には、例えば、無機層−樹脂組成物層−無機層の二種三層サンドイッチ構造の材料等を用いることができる。無機層の種類としては、チタン、アルミニウム(合金を含む)、ステンレス、鉄、銅、ガラス等、任意の無機材料を用いることができるが、比重を軽くするために、アルミを用いるのが特に好ましい。意匠性や太陽光の反射性能を付与するために、無機層の表面に塗装を行っても良い。また、耐擦傷性を付与したり、封止材層との接着性を制御したりするためにプラズマ処理、コロナ処理、コート材の塗布等、表面処理を施しても良い。樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類やポリエステル類等を用いることができる。
【0040】
さらに、樹脂層には難燃剤、酸化防止剤、金属害防止剤、耐電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与剤等の公知の添加剤を含有してもよい。上記添加剤としては特に限定されず、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、無機系リン化合物等が挙げられる。これらの添加剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
上記のような条件より、裏面保護部材30としてはガラス繊維強化樹脂シート(たとえば、ガラスクロスとエポキシ樹脂とからなるガラスエポキシシート、チョップドファイバー含有シート)、炭素繊維強化樹脂シート、アルミ−ポリエチレン複層板等を使用することができる。
【0042】
(シリコーン樹脂封止層)
シリコーン樹脂封止層50を構成するシリコーン樹脂は、反応性シリコーン材を硬化して得ることができる。前記シリコーン樹脂は、太陽電池モジュールが用いられる温度の範囲内で前面保護部材の寸法変化による応力を緩和できるものであれば特に種類は限定されない。前記シリコーン樹脂の貯蔵弾性率は1000Paから50MPaの範囲であることが好ましい。貯蔵弾性率が1000Pa以上であると板状の形状を保持することが容易であり、また、貯蔵弾性率が50MPa以下であると前面保護部材より受ける応力を緩和することが容易で、セルが割れたり配線材料に負担がかかったりすることを容易に防止できる。
【0043】
また、前面保護部材の形状を保つために、前記シリコーン材の硬化温度は120℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。そのためには反応性シリコーン材を硬化する際、低温で反応開始する開始剤を用いることが好ましい。さらに作業性の観点から、反応性シリコーン材の室温でのポットライフ(室温にて反応性シリコーン材の粘度が混合時の2倍になるまでの時間)が30分以上のものが好ましい。
【0044】
次に、本願発明の実施例を示す。
【実施例】
【0045】
(実施例1)
A:厚さ0.8mm、180mm四方のアクリル樹脂板(三菱レイヨン(株)製、MR−200(商品名)と、あらかじめ
B:電極配線した多結晶シリコンセル(Qセルズ製 6インチセル)
を厚さ0.5mmの両面接着テープで中心位置に貼り付けた
C:厚さ1.6mm、180mm四方のガラスエポキシ板(新神戸電機製、コウベライトKEL−GEF(商品名))
の中心位置をそろえて順に重ね合せ、対向する面の全周囲をAおよびCの最外周部に沿って厚さ1mm、幅5mmの両面接着テープで固定し、中空部を形成した。この中空部に、反応性シリコーン材(東レ・ダウコーニング(株)製、SE1740(商品名))の2液を1対1の割合で配合後、脱泡した混合物を注入し、80℃の高温オーブン内で30分間熱処理を行い、太陽電池モジュールを得た。得られたモジュールの総厚みは約3.6mmであった。
【0046】
このモジュールをJIS C8990(2004)の規格に定められた条件で温度サイクル試験(TC50)を実施したところ、セルの割れは認められなかった。
【0047】
(実施例2)
A:厚さ0.8mm、180mm四方のアクリル樹脂板(三菱レイヨン(株)製、MR−200(商品名)と、あらかじめ
B:電極配線した多結晶シリコンセル(Qセルズ製 6インチセル)を厚さ0.5mmの両面接着テープで中心位置に貼り付けた
C:厚さ1.6mm、180mm四方のガラスエポキシ板(新神戸電機製、コウベライトKEL−GEF(商品名))
の中心位置をそろえて順に重ね合せ、対向する面の全周囲をAおよびCの最外周部に沿って厚さ1mm、幅5mmの両面接着テープで固定し、中空部を形成した。この中空部に、反応性シリコーン材(東レ・ダウコーニング(株)製、SE1891H(商品名))の2液を1対1の割合で配合後、脱泡した混合物をシリンジを用いて注入し、60℃のオーブンで30分間熱処理し、太陽電池モジュールを得た。得られたモジュールの総厚みは約3.6mmであった。
【0048】
(実施例3)
A:厚さ0.8mm、400mm四方のアクリル樹脂板(三菱レイヨン(株)製、MR−200(商品名)と、あらかじめ
B:2行2列に直列配線した多結晶シリコンセル(Qセルズ製 6インチセル、図2)のセルを厚さ0.5mmの両面接着テープで中心位置を合わせて貼り付けた
C:厚さ1.6mm、400mm四方のガラスエポキシ板(新神戸電機製、コウベライトKEL−GEF(商品名))
の中心位置をそろえて順に重ね合せ、対向する面の全周囲をAおよびCの最外周部に沿って厚さ1mm、幅5mmの両面接着テープで固定し、中空部を形成した。この中空部に、反応性シリコーン材(東レ・ダウコーニング(株)製、SE1740(商品名))の2液を1対1の割合で配合後、脱泡した混合物を注入し、80℃の高温オーブン内で30分間熱処理を行い、太陽電池モジュールを得た。得られたモジュールは反りがなく、太陽電池として十分な剛性を有していた。
【0049】
(比較例1)
A:厚さ1.5mm、180mm四方のアクリル樹脂板(三菱レイヨン(株)製、MR−200(商品名))(合計で2枚使用した)、
B:エチレン酢酸ビニル共重合体のシート(サンビック製、ファストキュアタイプ)(合計で2枚使用した)、および
C:多結晶シリコンセル(Qセルズ製 6インチセル)
を、A−B−C−B−Aの順に中心位置をそろえて重ね合せ、真空ラミネーター((株)エヌ・ピー・シー製、LM−50×50−S(商品名))を用いて135℃でラミネートし、太陽電池モジュールを得た。
【0050】
得られたモジュールの総厚みは約4mmであった。
【0051】
(比較例2)
A:厚さ0.8mm、180mm四方のアクリル樹脂板(三菱レイヨン(株)製、MR−200(商品名))、
B:エチレン酢酸ビニル共重合体のシート(サンビック製、ファストキュアタイプ)(合計で2枚使用した)、
C:多結晶シリコンセル(Qセルズ製 6インチセル)、および、
D:厚さ1.6mm、180mm四方のガラスエポキシ板(新神戸電機製、コウベライトKEL−GEF)
を、A−B−C−B−Dの順に中心位置をそろえて重ね合せ、真空ラミネーター((株)エヌ・ピー・シー製、50×50−LM−S(商品名))を用いて135℃でラミネートしたところ、積層体に大きな反りが生じ、発電試験に供することができなかった。
【0052】
(比較例3)
A:厚さ1.5mm、400mm四方のアクリル樹脂板(三菱レイヨン(株)製、MR−200(商品名))と、あらかじめ
B:2行2列に直列配線した多結晶シリコンセル(Qセルズ製 6インチセル、図2)のセルを厚さ0.5mmの両面接着テープで中心位置を合わせて貼り付けた
C:厚さ1.5mm、400mm四方のアクリル板(三菱レイヨン(株)製、MR−200(商品名))
の中心位置をそろえて順に重ね合せ、対向する面の全周囲をAおよびCの最外周部に沿って厚さ1mm幅5mmの両面接着テープで固定し、中空部を形成した。この中空部に、反応性シリコーン材(東レ・ダウコーニング(株)製、SE1740(商品名))の2液を1対1の割合で配合後、脱泡した混合物をシリンジを用いて注入し、60℃のオーブンで30分間熱処理し、太陽電池モジュールを得た。得られたモジュールは、モジュールの一隅で支持すると全体がしなる状態となり、全体として剛性が不足していると判断した。
【0053】
実施例1、実施例2、比較例1、比較例3の太陽電池モジュールをJIS C8990の規格に示された温度サイクル試験(TC50)に供し、試験前後の外観変化および発電量の変化をみた(表1)。比較例1の例では、無機材料を含有する裏面保護部材を使用していないため膨張収縮によってセルやタブ線にダメージが加わり、試験後には発電量が大幅に低下していた。比較例3の例では、無機材料を含有する裏面保護部材を使用していないため膨張収縮によりタブ線が断線しており、発電特性が測定不可能な状態であった(電池として機能しない)。
【0054】
以上より、実施例の2点が比較例に比べて耐温度サイクル試験性能が高いことが確認された。
【0055】
【表1】

【符号の説明】
【0056】
10 太陽電池モジュール
20 前面保護部材
30 裏面保護部材
40 太陽電池セル
50 シリコーン樹脂封止層
60a スペーサー
60b スペーサー
70 電極材料
80 4連太陽電池セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の前面保護部材、無機材料を含有する裏面保護部材、シリコーン樹脂封止層、及び太陽光発電セルを備える太陽電池モジュールであって、前記前面保護部材と裏面保護部材とがシリコーン樹脂封止層を介して積層され、シリコーン樹脂封止層に太陽光発電セルが包埋されている太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記シリコーン樹脂封止層が、硬化温度が120℃以下である反応性シリコーン材の硬化物から構成される請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記裏面保護部材が含有する無機材料が、ガラスである請求項1または2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記裏面保護部材が、ガラスクロスとエポキシ樹脂とからなるガラスエポキシシートである請求項1または2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記裏面保護部材が無機化合物を含有する層と樹脂層の積層体である請求項1または2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
請求項1に記載の太陽電池モジュールの製造方法であって、
前記裏面保護部材と太陽光発電セルをスペーサーを介して配置し、さらに前面保護部材をスペーサーを介して前記裏面保護部材と対向させて配置した後、前記前面保護部材と前記裏面保護部材とから形成される空間内に反応性シリコーン材を注入し固化させてシリコーン樹脂封止層を形成する工程を有する
太陽電池モジュールの製造方法。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2013−62423(P2013−62423A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200648(P2011−200648)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】