説明

太陽電池モジュール及び太陽電池モジュールの製造方法

【課題】受光面積の増大によって更なる変換効率の向上を図る。
【解決手段】少なくとも受光面に表面電極が設けられた複数の太陽電池セル2と、一の太陽電池セルと、一の太陽電池セルと隣接する他の太陽電池セルとを電気的に接続するタブ線3と、太陽電池セル2の電極12とタブ線3とを接続する導電性接着剤17とを有し、タブ線3は、太陽電池セル2の受光面に接続される領域に第1の開口部15が設けられ、導電性接着剤17は、第1の開口部15に対応する第2の開口部18が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の太陽電池セルの電極がタブ線によって接続されてなる太陽電池モジュール及び太陽電池モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールでは、複数の隣接する太陽電池セルが、インターコネクタとして半田コートされたリボン状銅箔等からなるタブ線により接続されている。タブ線は、その一端側を一の太陽電池セルの表面電極に接続され、他端側を隣接する太陽電池セルの裏面電極に接続することにより、各太陽電池セルを直列に接続する。
【0003】
具体的に、太陽電池セルとタブ線との接続は、太陽電池セルの受光面に銀ペーストのスクリーン印刷により形成されたバスバー電極及び太陽電池セルの裏面接続部に形成されたAg電極と、タブ線とが半田処理により接続されている(特許文献1)。なお、太陽電池セル裏面の接続部以外の領域はAl電極やAg電極が形成されている。
【0004】
しかし、半田付けでは約260℃と高温による接続処理が行われるため、太陽電池セルの反りや、タブ線と表面電極及び裏面電極との接続部に生じる内部応力、さらにフラックスの残渣等により、太陽電池セルの表面電極及び裏面電極とタブ線との間の接続信頼性が低下することが懸念される。
【0005】
そこで、従来、太陽電池セルの表面電極及び裏面電極とタブ線との接続に、比較的低い温度での熱圧着処理による接続が可能な導電性接着フィルムが使用されている(特許文献2)。このような導電性接着フィルムとしては、平均粒径が数μmオーダーの球状または鱗片状の導電性粒子を熱硬化型バインダー樹脂組成物に分散してフィルム化したものが使用されている。
【0006】
導電性接着フィルムは、表面電極及び裏面電極とタブ線との間に介在された後、タブ線の上から熱加圧されることにより、バインダー樹脂が流動性を示して電極、タブ線間より流出されるとともに、導電性粒子が電極とタブ線間の導通を図り、この状態でバインダー樹脂が熱硬化する。これにより、タブ線によって複数の太陽電池セルが直列接続されたストリングスが形成される。
【0007】
導電性接着フィルムを用いてタブ線と表面電極及び裏面電極とが接続された複数の太陽電池セルは、ガラス、透光性プラスチックなどの透光性を有する表面保護材と、PET(Poly Ethylene Terephthalate)等のフィルムからなる背面保護材との間に、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)等の透光性を有する封止材により封止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−356349号公報
【特許文献2】特開2008−135654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、太陽電池は、クリーンでかつ潜在的エネルギー量などの観点から、再生可能エネルギーとして最も期待されており、また、近年では光電変換素子の改良や周辺技術の改善等により変換効率が向上してきているが、本格的な普及拡大を図るためには、更なる変換効率の向上とコストダウンが課題となっている。
【0010】
そこで、本発明は、受光面積の増大によって更なる変換効率の向上を図ることができる太陽電池モジュール及び太陽電池モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明に係る太陽電池モジュールは、少なくとも受光面に表面電極が設けられた複数の太陽電池セルと、一の上記太陽電池セルと、上記一の太陽電池セルと隣接する他の太陽電池セルとを電気的に接続するタブ線と、上記太陽電池セルの電極と上記タブ線とを接続する導電性接着剤とを有し、上記タブ線には、上記太陽電池セルの受光面に接続される領域に第1の開口部が設けられ、上記導電性接着剤には、上記第1の開口部に対応する第2の開口部が設けられているものである。
【0012】
また、本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法は、少なくとも受光面側に表面電極が設けられた複数の太陽電池セルの各電極に、導電性接着剤を介して、一の上記太陽電池セルと上記一の太陽電池セルと隣接する他の太陽電池セルとを電気的に接続するタブ線を貼り合わせる太陽電池モジュールの製造方法において、上記タブ線には、上記太陽電池セルの受光面に接続される領域に第1の開口部が設けられ、上記導電性接着剤には、上記第1の開口部と対応する第2の開口部が設けられ、上記タブ線及び上記導電性接着剤は、上記第1の開口部と上記第2の開口部とを位置合わせされ、上記電極上に配置されるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、表面電極が設けられた受光面に設けられるタブ線に第1の開口部が設けられ、タブ線を受光面に接続する導電性接着剤に第1の開口部に対応する第2の開口部が設けられている。したがって、本発明によれば、第1、第2の開口部を介して受光面が露出し、受光面積を増大させることができ、これにより変換効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を適用した太陽電池モジュールの構成を示す分解斜視図である。
【図2】太陽電池セルのストリングスを示す断面図である。
【図3】太陽電池セルの底面図である。
【図4】本発明を適用したタブ線及び導電性接着フィルムを示す斜視図である。
【図5】導電性接着フィルムを示す断面図である。
【図6】剥離基材が貼着されロール状に巻回された導電性接着フィルムを示す断面図である。
【図7】予め導電性接着フィルムが積層されたタブ線を示す斜視図である。
【図8】タブ線の直上にタブ線と同寸法の波長変換フィルムを設ける太陽電池モジュールを示す分解斜視図である。
【図9】太陽電池マトリクスと同寸法の波長変換フィルムを封止樹脂のシートと太陽電池セルとの間に配置する太陽電池モジュールを示す分解斜視図である。
【図10】太陽電池マトリクスと同寸法の波長変換フィルムを表面カバーと封止樹脂のシートとの間に配置する太陽電池モジュールを示す分解斜視図である。
【図11】太陽電池マトリクスと同寸法の波長変換フィルムを封止樹脂のシートとバックシートとの間に配置する太陽電池モジュールを示す分解斜視図である。
【図12】太陽電池マトリクスと同寸法の波長変換フィルムを太陽電池セルの裏面と封止樹脂のシートとの間に配置する太陽電池モジュールを示す分解斜視図である。
【図13】凹凸部が形成されたタブ線が接続される太陽電池セルを示す斜視図である。
【図14】凹凸部が形成されたタブ線が接続される太陽電池モジュールを示す断面図である。
【図15】凹凸部が形成されたタブ線が接続される太陽電池モジュールを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明が適用された太陽電池及び太陽電池モジュールの製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0016】
[太陽電池モジュール]
本発明が適用された太陽電池モジュール1は、図1〜図3に示すように、複数の太陽電池セル2がインターコネクタとなるタブ線3によって直列に接続されたストリングス4を有し、このストリングス4を複数配列したマトリクス5を備える。そして、太陽電池モジュール1は、このマトリクス5が封止接着剤のシート6で挟まれ、受光面側に設けられた表面カバー7及び裏面側に設けられたバックシート8とともに一括してラミネートされ、最後に、周囲にアルミニウムなどの金属フレーム9が取り付けられることにより形成される。
【0017】
封止接着剤としては、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)等の透光性封止材が用いられる。また、表面カバー7としては、例えば、ガラスや透光性プラスチック等の透光性の材料が用いられる。また、バックシート8としては、ガラスや、アルミニウム箔を樹脂フィルムで挟持した積層体等が用いられる。
【0018】
太陽電池モジュールの各太陽電池セル2は、光電変換素子10を有する。以下では、光電変換素子10として、単結晶シリコン型光電変換素子や多結晶シリコン型光電変換素子を用いる結晶シリコン系太陽電池を例に説明するが、本発明は、薄膜系太陽電池、有機系、量子ドット型など、各種光電変換素子を用いることができる。
【0019】
また、光電変換素子10は、受光面側に内部で発生した電気を集電する表面電極となるフィンガー電極12が設けられている。フィンガー電極12は、太陽電池セル2の受光面となる表面に、例えばAgペーストがスクリーン印刷等により塗布された後、焼成されることにより形成される。また、フィンガー電極12は、受光面の全面に亘って、例えば約50〜200μm程度の幅を有するラインが、所定間隔、例えば2mmおきに、ほぼ平行に複数形成されている。
【0020】
太陽電池セル2は、各フィンガー電極12と略直交することによりフィンガー電極12の電気を集電するバスバー電極が設けられていない、いわゆるバスバーレス構造とされている。したがって、太陽電池セル2は、後述するタブ線3が導電性接着フィルム17を介して直接フィンガー電極12と接続される。なお、本発明は、バスバー電極が形成された太陽電池セルを用いることもできる。
【0021】
また、光電変換素子10は、受光面と反対の裏面側に、アルミニウムや銀からなる裏面電極13が設けられている。裏面電極13は、図2及び図3に示すように、例えばアルミニウムや銀からなる電極が、スクリーン印刷やスパッタ等により太陽電池セル2の裏面に形成される。裏面電極13は、後述する導電性接着フィルム17を介してタブ線3が接続されるタブ線接続部14を有する。
【0022】
そして、太陽電池セル2は、タブ線3によって、表面に形成された各フィンガー電極12と、隣接する太陽電池セル2の裏面電極13とが電気的に接続され、これにより直列に接続されたストリングス4を構成する。タブ線3とフィンガー電極12及び裏面電極13とは、後述する導電性接着フィルム17によって接続される。
【0023】
[タブ線]
タブ線3は、図2に示すように、隣接する太陽電池セル2X、2Y、2Zの各間を電気的に接続する長尺状の導電性基材である。タブ線3は、例えば厚さ50〜300μmに圧延された銅箔やアルミ箔をスリットし、あるいは銅やアルミなどの細い金属ワイヤーを平板状に圧延することにより、導電性接着フィルム17とほぼ同じ幅の1〜3mm幅の平角の銅線を得る。そして、タブ線3は、この平角銅線に、必要に応じて金メッキ、銀メッキ、スズメッキ、ハンダメッキ等を施すことにより形成される。
【0024】
タブ線3は、一面3aを太陽電池セル2のフィンガー電極12が設けられた表面への接着面とされ、他面3bを太陽電池セル2の裏面電極13が設けられた裏面への接着面とされている。また、タブ線3は、長手方向の一端側を太陽電池セル2の表面に接続される表面接続部3cとされ、長手方向の他端側を太陽電池セル2の裏面に接続される裏面接続部3dとされている。
【0025】
本発明に係るタブ線3は、図4に示すように、太陽電池セル2の受光面となる表面に接続される表面接続部3cに、第1の開口部15が形成されている。第1の開口部15は、例えば矩形状に形成され、表面接続部3cに長手方向に亘って一又は複数形成されている。この第1の開口部15は、後述する導電性接着フィルム17に形成されている第2の開口部18と連続することにより太陽電池セル2の受光面を外方に露出させるものであり、これによりタブ線3及び導電性接着フィルム17によるシャドーロスを減少させ、受光面積の増大によって更なる変換効率の向上を図るものである。
【0026】
第1の開口部15は、長尺状に形成されたタブ線3の所定箇所を打ち抜くことにより形成される。あるいは、第1の開口部15は、穴開けポンチ等により形成される。
【0027】
第1の開口部15は、タブ線3の表面接続部3cに占める面積率を、5〜80%、好ましくは10〜30%とされている。第1の開口部15の面積率は、タブ線3の太陽電池セルの表面への接続強度及び抵抗値と受光面積の増大による変換効率の向上とを考慮して設定される。第1の開口部15の面積率が5%より小さいと受光面積の増加による変換効率の向上効果がなく、面積率が80%より大きいとタブ線3の接続強度が維持できなかったり、タブ線3の抵抗値が増大し、かえって変換効率の向上を阻害する。
【0028】
なお、第1の開口部15の形状や個数は、面積率や、変換効率の向上と接続強度とのバランスを考慮して、適宜設定することができる。また、第1の開口部15は、タブ線3の内側に形成される他、タブ線3の側面から内側に向かう切欠き部として形成してもよく、また、開口部と切欠き部とを混在させてもよい。
【0029】
[導電性接着剤]
次いで、タブ線3を太陽電池セル2の表面及び裏面に接続する導電性接着剤となる導電性接着フィルム17について説明する。導電性接着フィルム17は、図5に示すように、導電性粒子23が高密度に含有された熱硬化性のバインダー樹脂層である。
【0030】
タブ線3を太陽電池セルの表面に接続させる導電性接着フィルム17は、図4に示すように、上述したタブ線3の第1の開口部15に対応して第2の開口部18が形成されている。第2の開口部18は、第1の開口部15と同形の開口であり、導電性接着フィルム17を介してタブ線3が太陽電池セルの表面に接続されると、第1の開口部15と連続され、太陽電池セルの受光面となる表面を外方に露出させる。なお、第2の開口部18は、第1の開口部15に応じて形成されるものであり、上述した第1の開口部15と同形、同所に形成され、また導電性接着フィルム17における面積率も、第1の開口部15と同一とされている。
【0031】
かかる導電性接着フィルム17は、押し込み性の観点から、バインダー樹脂の最低溶融粘度が、100〜100000Pa・sであることが好ましい。導電性接着フィルム17は、最低溶融粘度が低すぎると低圧着から本硬化の過程で樹脂が流動してしまい接続不良やセル受光面へのはみ出しが生じやすく、受光率低下の原因ともなる。また、最低溶融粘度が高すぎてもフィルム貼着時に不良を発生しやすく、接続信頼性に悪影響が出る場合もある。なお、最低溶融粘度については、サンプルを所定量回転式粘度計に装填し、所定の昇温速度で上昇させながら測定することができる。
【0032】
導電性接着フィルム17に用いられる導電性粒子23としては、特に制限されず、例えば、ニッケル、金、銀、銅などの金属粒子、樹脂粒子に金めっきなどを施したもの、樹脂粒子に金めっきを施した粒子の最外層に絶縁被覆を施したものなどを挙げることができる。なお、導電性粒子23の平均粒子径は1〜50μmの範囲で使用が可能であり、10〜30μmの範囲を好ましく使用することができる。
【0033】
また、導電性接着フィルム17は、常温付近での粘度が10〜10000kPa・sであることが好ましく、さらに好ましくは、10〜5000kPa・sである。導電性接着フィルム17の粘度が10〜10000kPa・sの範囲であることにより、導電性接着フィルム17をタブ線3の一面3aあるいは他面3bに設け、リール21に巻装した場合において、いわゆるはみ出しによるブロッキングを防止することができ、また、所定のタック力を維持することができる。
【0034】
導電性接着フィルム17のバインダー樹脂層の組成は、上述のような特徴を害さない限り、特に制限されないが、より好ましくは、膜形成樹脂と、液状エポキシ樹脂と、潜在性硬化剤と、シランカップリング剤とを含有する。
【0035】
膜形成樹脂は、平均分子量が10000以上の高分子量樹脂に相当し、フィルム形成性の観点から、10000〜80000程度の平均分子量であることが好ましい。膜形成樹脂としては、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂等の種々の樹脂を使用することができ、その中でも膜形成状態、接続信頼性等の観点からフェノキシ樹脂が好適に用いられる。
【0036】
液状エポキシ樹脂としては、常温で流動性を有していれば、特に制限はなく、市販のエポキシ樹脂が全て使用可能である。このようなエポキシ樹脂としては、具体的には、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂などを用いることができる。これらは単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、アクリル樹脂など他の有機樹脂と適宜組み合わせて使用してもよい。
【0037】
潜在性硬化剤としては、加熱硬化型、UV硬化型などの各種硬化剤が使用できる。潜在性硬化剤は、通常では反応せず、何かしらのトリガーにより活性化し、反応を開始する。トリガーには、熱、光、加圧などがあり、用途により選択して用いることができる。なかでも、本願では、加熱硬化型の潜在性硬化剤が好適に用いられ、フィンガー電極12や裏面電極13に加熱押圧されることにより本硬化される。液状エポキシ樹脂を使用する場合は、イミダゾール類、アミン類、スルホニウム塩、オニウム塩などからなる潜在性硬化剤を使用することができる。
【0038】
シランカップリング剤としては、エポキシ系、アミノ系、メルカプト・スルフィド系、ウレイド系などを用いることができる。これらの中でも、本実施の形態では、エポキシ系シランカップリング剤が好ましく用いられる。これにより、有機材料と無機材料の界面における接着性を向上させることができる。
【0039】
また、その他の添加組成物として、無機フィラーを含有することが好ましい。無機フィラーを含有することにより、圧着時における樹脂層の流動性を調整し、粒子捕捉率を向上させることができる。無機フィラーとしては、シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等を用いることができ、無機フィラーの種類は特に限定されるものではない。
【0040】
図6は、導電性接着フィルム17の製品形態の一例を模式的に示す図である。この導電性接着フィルム17は、剥離基材24上にバインダー樹脂層が積層され、テープ状に成型されている。このテープ状の導電性接着フィルムは、リール25に剥離基材24が外周側となるように巻回積層される。剥離基材24としては、特に制限はなく、PET(Poly Ethylene Terephthalate)、OPP(Oriented Polypropylene)、PMP(Poly-4-methlpentene−1)、PTFE(Polytetrafluoroethylene)などを用いることができる。また、導電性接着フィルム17は、バインダー樹脂層上に透明なカバーフィルムを有する構成としてもよい。
【0041】
このとき、バインダー樹脂層上に貼付されるカバーフィルムとして上述したタブ線3を用いてもよい。導電性接着フィルム17は、バインダー樹脂層がタブ線3の太陽電池セル2の表面への接着面となる一面3aあるいは太陽電池セル2の裏面への接着面となる他面3bに積層される。このように、予めタブ線3と導電性接着フィルム17とを積層一体化させておくことにより、実使用時においては、剥離基材24を剥離し、導電性接着フィルム17のバインダー樹脂層をフィンガー電極12や裏面電極13のタブ線接続部14上に貼着することによりタブ線3と各電極12,13との接続が図られる。
【0042】
上記では、フィルム形状を有する導電性接着フィルムについて説明したが、ペースト状であっても問題は無い。本願では、導電性粒子を含有するフィルム状の導電性接着フィルム17またはペースト状の導電性接着ペーストを「導電性接着剤」と定義する。導電性接着ペーストを用いる場合にも、タブ線3は、予め太陽電池セル2の表面への接着面となる一面3aにこの導電性接着ペーストを塗布しておき、この導電性接着剤を太陽電池セル2の各電極12,13上に貼着してもよい。
【0043】
なお、導電性接着フィルム17は、リール形状に限らず、太陽電池セル2の表面の接続領域や裏面電極13のタブ線接続部14の形状に応じた短冊形状であってもよい。
【0044】
図6に示すように導電性接着フィルム17が巻き取られたリール製品として提供される場合、導電性接着フィルム17の粘度を10〜10000kPa・sの範囲とすることにより、導電性接着フィルム17の変形を防止し、所定の寸法を維持することができる。また、導電性接着フィルム17が短冊形状で2枚以上積層された場合も同様に、変形を防止し、所定の寸法を維持することができる。
【0045】
上述した導電性接着フィルム17は、導電性粒子23と、膜形成樹脂と、液状エポキシ樹脂と、潜在性硬化剤と、シランカップリング剤とを溶剤に溶解させる。溶剤としては、トルエン、酢酸エチルなど、又はこれらの混合溶剤を用いることができる。溶解させて得られた樹脂生成用溶液を剥離シート上に塗布し、溶剤を揮発させることにより、導電性接着フィルム17を得る。
【0046】
次いで、表面電極用の導電性接着フィルム17は、タブ線3に形成された第1の開口部15に応じて第2の開口部18が形成される。第2の開口部18は、長尺状に形成された導電性接着フィルム17の所定箇所を打ち抜くことにより形成される。あるいは、第2の開口部18は、穴開けポンチ等により形成される。
【0047】
第2の開口部18が形成されるとともに、表面電極用2本及び裏面電極用2本を所定の長さにカットされた導電性接着フィルム17は、太陽電池セル2の表裏面の所定位置に仮貼りされる。このとき、導電性接着フィルム17は、太陽電池セル2の表面にほぼ平行に複数形成されている各フィンガー電極12と交叉するように仮貼りされ、また、裏面電極13のタブ線接続部14上に仮貼りされる。
【0048】
次いで、同様に所定の長さにカットされたタブ線3が導電性接着フィルム17上に重畳配置される。このとき、タブ線3は、太陽電池セルの表面に配置される表面接続部3cの第1の開口部15が導電性接着フィルム17に形成された第2の開口部18と連続するように重畳配置される。これにより、太陽電池セル2は、第1、第2の開口部15,18が連続され、タブ線3の接続領域における受光面が、第1、第2の開口部15,18を介して外方に露出される。
【0049】
その後、導電性接着フィルム17は、タブ線3の上から加熱ボンダーによって所定の温度、圧力で熱加圧されることにより、タブ線3及び太陽電池セル2の表面及び裏面電極13のタブ線接続部14とが導電性粒子23を介して接続される。特に、フィンガー電極12とタブ線3との間では、バインダー樹脂がフィンガー電極12及びタブ線3間より流出されるとともに導電性粒子23がタブ線3とフィンガー電極12との間で挟持され、この状態でバインダー樹脂が硬化する。これにより、導電性接着フィルム17は、タブ線3を複数のフィンガー電極12と交叉させながら太陽電池セル2上に接着させると共に、導電性粒子23を介してフィンガー電極12とタブ線3とを導通接続させることができる。
【0050】
これにより複数の太陽電池セル2がタブ線3によって接続された太陽電池ストリングス4が形成される。ストリングス4が複数配列されたマトリクス5は、太陽電池セル2を封止するEVA等の透光性の封止接着剤のシート6が表裏面に積層され、受光面側に設けられた表面カバー7及び裏面側に設けられたバックシート8とともに一括してラミネートされ、最後に、周囲にアルミニウムなどの金属フレーム9が取り付けられ、太陽電池モジュール1が完成する。
【0051】
このような太陽電池モジュール1によれば、フィンガー電極12上を交叉して配置されている導電性接着フィルム17及びタブ線3の第1の開口部15と第2の開口部18とが連続することにより、太陽電池セル2の受光面となる表面が外方に露出されている。したがって、太陽電池モジュール1は、受光面積が増大することによって変換効率の向上を図ることができる。
【0052】
第1の開口部15と第2の開口部18とは、タブ線3の表面接続部3cに占める面積率を5〜80%とすることにより、受光面積の増加による変換効率の向上を図りつつ、タブ線3の接続強度を維持することができる。後述するように、太陽電池モジュール1では、好ましくは、第1の開口部15と第2の開口部18との面積率を10〜30%とすることにより、変換効率の向上とタブ線3の接続強度の維持をより確実に図ることができる。
【0053】
また、太陽電池モジュール1は、いわゆるバスバーレス構造の太陽電池セル2を用いることにより、バスバー電極と導電性接着フィルム17やタブ線3との位置合わせが不要となり、製造工数や部品点数の削減を図り、また製造コストを削減することができる。
【0054】
[他の実施例]
また、タブ線3は、太陽電池セル2の各電極12,13上に貼着される前に、図7に示すように、予め一面3aに導電性接着フィルム17が設けられ、あるいは導電性接着ペーストが塗布されることにより、各電極12,13上に導電性接着フィルム17を仮貼りする工程及び第1の開口部15と第2の開口部18とを位置合わせしてタブ線3を配置する工程が不要となり、製造工数の削減を図ることができる。
【0055】
すなわち、導電性接着フィルム17を電極12,13上に仮貼りする工法では、先ず導電性接着フィルム17を各電極12,13の長さに応じてカットし各電極12,13上に配置し、加熱ボンダーによってバインダー樹脂層が本硬化しないが流動性を示す程度に仮硬化させて仮貼りする。次いで、タブ線3を導電性接着フィルム17上に、第1の開口部15と第2の開口部18とを位置合わせして配置し、加熱ボンダーによってバインダー樹脂層が本硬化する所定の温度、圧力、時間で加熱押圧する。
【0056】
一方、予め導電性接着フィルム17をタブ線3の一面3aに積層させておく工法によれば、導電性接着フィルム17が設けられたタブ線3を各電極12,13上に配置し、加熱ボンダーで加熱押圧するだけでよく、タブ線3の接続工程における工数を削減することができる。このとき、導電性接着フィルム17とタブ線3とは、予め第1の開口部15と第2の開口部18とが連続されて積層されているため、第1の開口部15と第2の開口部18との位置合わせを行う工程を省くことができる。
【0057】
また、導電性接着フィルム17とタブ線3とは、積層後、第1の開口部15と第2の開口部18とを一括して打ち抜き形成することにより、効率よく第1の開口部15と第2の開口部18と形成し、連続させることができる。なお、導電性接着剤として、導電性接着ペーストを用いる場合には、導電性接着ペーストをタブ線3に塗布した後、第1の開口部15と第2の開口部18とを一括して打ち抜き形成することにより、連続する第1、第2の開口部15,18を効率よく形成することができる。
【0058】
なお、導電性接着フィルム17のタブ線3と積層しない外面に剥離処理層を形成することにより、リール21に巻回されたタブ線3の巻装体は、重畳部分が接着することがなく、フィンガー電極12や裏面電極13にタブ線3を配置する際に、リール21よりスムーズに送り出すことができる。
【0059】
[一括ラミネート]
なお、太陽電池モジュール1は、上述したように太陽電池セル2の各電極12,13上に導電性接着フィルム17及びタブ線3を配置した後、加熱ボンダーによってタブ線3上を熱加圧する工法の他、太陽電池セル2の表面及び裏面に導電性接着フィルム17、タブ線3及び太陽電池セル2を封止するEVA等の透光性の封止接着剤のシート6を順次積層させ、減圧ラミネーターにより一括してラミネート処理を行うことにより、タブ線3を各電極12,13上に熱加圧してもよい。
【0060】
[波長変換材]
また、太陽電池モジュール1は、図8〜図10に示すように、太陽電池セル2の受光面側に、波長変換材30を介在させてもよい。波長変換材30は、400nm未満の短波長域の光を吸収するとともに、400nm以上の光電変換効率の高い長波長域の光を発光するものである。
【0061】
波長変換材30は、例えば、透光性合成樹脂に蛍光体物質が溶解あるいは分散されてフィルム状に成型されることにより、波長変換フィルムとして構成される。蛍光体物質は、入射光に対して波長変換を行うものであり、光電変換層における光電変換効率の低い短波長域の光を吸収して光電変換効率の高い長波長域に光を変換、発光させる。
【0062】
波長変換フィルムは、表面カバー7を介して入射する太陽光及び拡散光の短波長域の光を表面で吸収するとともに、分光感度の高い長波長域の光に変換、再放出し、波長変換フィルムでその大部分を全反射させながらフィルム端面へ誘導し濃密化された状態で放出させる。よって波長変換フィルムの外周部は蛍光が集光され蛍光発色するが、非外周部は実質的に無色透明であり、光の入射を妨げない。よって、太陽電池モジュール1は、波長変換材30による効果と、タブ線3の反射との相乗効果により、さらに変換効率を向上させることができる。
【0063】
太陽電池モジュール1は、光電変換素子10を単結晶シリコンや多結晶シリコンから構成した場合、多少の相違はあるものの、波長500nm以下の光に対して吸収が小さくなり、波長400nm以下の光に対しては、その吸収が非常に小さい。
【0064】
したがって、このような光電変換素子10を用いる場合、波長変換材30の蛍光体物質としては、400nm未満、より好ましくは350nm以下の短波長域の光を吸収するとともに、より長波長域の発光波長を有する材料を用いる。
【0065】
このような蛍光体物質としては、無機蛍光体、ユーロピウム錯体、量子ドット、有機蛍光色素等を用いることができる。有機蛍光色素では、例えば、フルオレセイン、ローダミン、ピラミジン、ナフタルイミド、ペリレン等を用いることができるが、特にナフタルイミドやペリレンは耐候性及び熱安定性に優れ、また強い蛍光力と高い彩度を有し、しかも透光性合成樹脂との混和性が優れている。
【0066】
蛍光体物質を分散する透光性合成樹脂は、例えばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルブチラール、ポリスチレン・ポリエチレン・ポリブチレン・ポリスチレンブロック共重合体(SEBS)、ポリエチレン−ポリ酢酸ビニルランダム共重合体(EVA)、ポリエチルメタアクリル、メタアクリル樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂等を使用することができる。
【0067】
なお、上述したように、太陽電池セル2は、光電変換素子10として、上述した単結晶シリコンを用いたもの、多結晶シリコンを用いたものの他、公知の光電変換層のいずれも適用することができる。太陽電池セル2は、光電変換素子10によって固有のバンドギャップを有するために分光感度が異なっている。したがって、蛍光体物質として、発光スペクトルの波長域が、使用する太陽電池セル2の分光感度の波長域を包含しているものを選択する。
【0068】
波長変換材30の膜厚及び蛍光体物質の濃度は適宜調整すればよく、膜厚は1μm以上100μm以下が好ましい。濃度は1×10−7wt%〜20wt%であればよく、より好ましくは1×10−6wt%〜10wt%である。
【0069】
また、波長変換材30は、太陽電池セル2の受光面側に配設されていればよい。例えば、図8に示すように、波長変換材30は、タブ線3と同寸法に形成され、タブ線3の直上のみに積層させてもよい。また、波長変換材30は、図9に示すように、太陽電池マトリクス5と同寸法に形成され、太陽電池セル2の受光面側と封止接着材のシート6との間に配置してもよい。さらに、波長変換材30は、図10に示すように、太陽電池マトリクス5と同寸法に形成され、封止接着材のシート6と表面カバー7との間に配置してもよい。
【0070】
このうち、波長変換材30は、図10に示すように、太陽電池マトリクス5と同寸法に形成され、表面カバー7と封止接着剤のシート6との間に配設されることが好ましい。これは、波長変換材30は、表面カバー7の下方に配設されることにより外部環境から保護され、また封止接着材のシート6よりも上方に配設されることにより、EVA等のシート6によって短波長域の光が吸収される前に入射させ長波長域の光に変換することができ、より高い効果を発揮することができるためである。
【0071】
また、波長変換材30は、太陽電池セル2の受光面と反対側に配置してもよい。例えば、図11に示すように、波長変換材30は、太陽電池マトリクス5と同寸法に形成され、太陽電池セル2の受光面と反対側に設けられたバックシート8の直上、すなわちバックシート8と封止樹脂のシート6との間に配置してもよい。また、波長変換材30は、図12に示すように、太陽電池マトリクス5と同寸法に形成され、太陽電池セル2の受光面と反対側の面と封止樹脂のシート6との間に配置してもよい。
【0072】
このように、波長変換材30を太陽電池セル2の受光面と反対側に配置することにより、太陽電池モジュール1は、入射した光を、マトリクス5を構成する複数の太陽電池セル2の間を透過して波長変換材30によって長波長域の光に波長変換させるとともにバックシート8によって反射させ、太陽電池セル2に入射させることができ、これによりさらなる変換効率の向上を図ることができる。
【0073】
[凹凸部]
また、太陽電池モジュール1は、図13に示すように、タブ線として、フィンガー電極12と対峙する面と反対側の面に、長手方向に亘って連続する山部40a及び谷部40bが幅方向に交互に形成されてなる凹凸部40が形成されているタブ線41を用いてもよい。このようなタブ線41を用いることによって、図14に示すように、タブ線41の表面における凹凸部40に入射された入射光が凹凸部40によって散乱され、その散乱光がガラス等の表面カバー7にて反射して受光面に入射する。これにより、太陽電池モジュール1は、さらに変換効率を向上させることができる。
【0074】
タブ線41は、図13に示すように、フィンガー電極12と対峙する面と反対側の面において長手方向に亘って連続する凸部40a及び凹部40bが幅方向に交互に複数設けられていることにより凹凸部40が形成されている。凹凸部40は、例えば、メッキ処理されたリボン状銅箔をプレス成形することにより形成されている。
【0075】
また、このタブ線41を用いた太陽電池モジュール1では、裏面側に設けられた裏面電極13上に接続されたタブ線41の他方の裏面接続部における凹凸部40が、図15に示すように導電性接着フィルム17を介して太陽電池セル2の裏面電極13と接続される。このとき、太陽電池モジュール1は、凹凸部40の凸部40aが裏面電極13と接触するとともに、導電性接着フィルム17のバインダ樹脂が加熱によって流動して凹凸部40の凹部40bに入り込むことで、裏面電極13と接続信頼性(接着強度)を高めることができる。
【実施例1】
【0076】
次いで、本発明の実施例について説明する。本実施例では、以下に説明する実施例及び比較例に係る太陽電池セルの変換効率と、各太陽電池セルをモジュール化した当該太陽電池モジュールの変換効率を測定した。
【0077】
各サンプルにおける太陽電池セルとして多結晶シリコンからなる光電変換素子を用いた。また、実施例2〜9に係る波長変換フィルムは、以下のように作成した。先ずスチレン・エチレン−ブチレン・スチレン(SEBS)をトルエンに溶解し、25wt%溶液を調製し、蛍光物質LUMOGEN Violetの濃度が0.2wt%の溶液を用意した。これを38μm厚の剥離PET上にバーコーターで塗布し、80℃で5分乾燥した後、120℃で5分乾燥し、厚さ60μmの波長変換フィルムを得た。
【0078】
実施例1は、バスバーレス構造の太陽電池セルを用いた。また、実施例1では、太陽電池セルの受光面に接続される表面接続部に開口部が設けられたタブ線を用いた。タブ線は、開口部の表面接続部に占める面積率は30%であり、また太陽電池セルの表面に接続される面と反対側の面に凹凸部は設けられていない。タブ線を太陽電池セルに接続する導電性接着フィルムには、タブ線に形成された開口部に対応した開口部が設けられている。
【0079】
そして太陽電池セル表裏面へ導電性接着フィルムを介してタブ線を配置し、2Mpa、180℃で熱加圧することにより接続し、この太陽電池セルの変換効率ηを測定した。次いで、この太陽電池セルを、光入射側から白板ガラス、封止樹脂(EVA)、太陽電池セル、封止樹脂(EVA)、バックシート(アルミ箔入りフッ化ビニルシート)の順に積層し、ラミネートすることによりモジュール化し、この太陽電池モジュールの変換効率ηを測定した。なお、実施例1では、波長変換フィルムを配置していない。
【0080】
実施例2は、複数のフィンガー電極と交叉するバスバー電極を形成した太陽電池セルを用いた。また、開口部の表面接続部に占める面積率が10%のタブ線を用い、バスバー電極上に導電性接着フィルムを介して接続した。さらに、タブ線と同寸法の波長変換フィルムをタブ線上にのみ積層して太陽電池モジュールを形成した。その他の条件は実施例1と同じである。
【0081】
実施例3は、開口部の表面接続部に占める面積率が10%のタブ線を用いた。また、タブ線と同寸法の波長変換フィルムをタブ線上にのみ積層して太陽電池モジュールを形成した。その他の条件は実施例1と同じである。
【0082】
実施例4は、開口部の表面接続部に占める面積率が25%のタブ線を用いた。また、タブ線と同寸法の波長変換フィルムをタブ線上にのみ積層して太陽電池モジュールを形成した。その他の条件は実施例1と同じである。
【0083】
実施例5は、タブ線と同寸法の波長変換フィルムをタブ線上にのみ積層して太陽電池モジュールを形成した。その他の条件は実施例1と同じである。
【0084】
実施例6は、開口部の表面接続部に占める面積率が25%のタブ線を用いた。また、太陽電池マトリクス5と同寸法の波長変換フィルムを白板ガラスと封止樹脂との間に配設して太陽電池モジュールを形成した。その他の条件は実施例1と同じである。
【0085】
実施例7は、開口部の表面接続部に占める面積率が25%のタブ線を用いた。また、太陽電池マトリクス5と同寸法の波長変換フィルムを太陽電池セルの受光面側と封止樹脂との間に配設して太陽電池モジュールを形成した。その他の条件は実施例1と同じである。
【0086】
実施例8は、開口部の表面接続部に占める面積率が25%のタブ線を用いた。タブ線は、太陽電池セルの表面に接続される面と反対側の面に凹凸部が形成されている。また、太陽電池マトリクス5と同寸法の波長変換フィルムを太陽電池セルの受光面側と封止樹脂との間に配設して太陽電池モジュールを形成した。その他の条件は実施例1と同じである。
【0087】
実施例9は、開口部の表面接続部に占める面積率が25%のタブ線を用いた。タブ線は、太陽電池セルの表面に接続される面と反対側の面に凹凸部が形成されている。また、タブ線と同寸法の波長変換フィルムをタブ線上にのみ積層して太陽電池モジュールを形成した。その他の条件は実施例1と同じである。
【0088】
実施例10は、開口部の表面接続部に占める面積率が25%のタブ線を用いた。また、太陽電池マトリクス5と同寸法の波長変換フィルムをバックシートの直上、すなわちバックシートと封止樹脂との間に配設して太陽電池モジュールを形成した。その他の条件は実施例1と同じである。
【0089】
実施例11は、開口部の表面接続部に占める面積率が15%のタブ線を用いた。タブ線は、太陽電池セルの表面に接続される面と反対側の面に凹凸部が形成されている。また、太陽電池マトリクス5と同寸法の波長変換フィルムをバックシートの直上、すなわちバックシートと封止樹脂との間に配設して太陽電池モジュールを形成した。その他の条件は実施例1と同じである。
【0090】
比較例1は、バスバーレス構造の太陽電池セルを用いた。また、比較例1では、開口部が設けられていない従来のタブ線を用いた。また、タブ線は、太陽電池セルの表面に接続される面と反対側の面に凹凸部は設けられていない。タブ線を太陽電池セルに接続する導電性接着フィルムに、開口部は設けられていない。
【0091】
そして太陽電池セル表裏面へ導電性接着フィルムを介してタブ線を配置し、2Mpa、180℃で熱加圧することにより接続し、この太陽電池セルの変換効率ηを測定した。次いで、この太陽電池セルを、光入射側から白板ガラス、封止樹脂(EVA)、太陽電池セル、封止樹脂(EVA)、バックシート(アルミ箔入りフッ化ビニルシート)の順に積層し、ラミネートすることによりモジュール化し、この太陽電池モジュールの変換効率ηを測定した。なお、比較例1では、波長変換フィルムを配置していない。
【0092】
比較例2は、複数のフィンガー電極と交叉するバスバー電極を形成した太陽電池セルを用いた。また、比較例2では、太陽電池セルの受光面に接続される表面接続部に開口部が設けられたタブ線を用いた。タブ線は、開口部の表面接続部に占める面積率は30%である。
【0093】
そして太陽電池セル表裏面へ導電性接着フィルムを介してタブ線を配置し、2Mpa、180℃で熱加圧することにより接続した。このとき、タブ線の開口部内及びタブ線の外側に、導電性接着フィルムのバインダー樹脂のはみ出しが見られた。その他の条件は比較例1と同じである。
【0094】
比較例3は、複数のフィンガー電極と交叉するバスバー電極を形成した太陽電池セルを用いた。また、比較例3では、太陽電池セルの受光面に接続される表面接続部に開口部が設けられたタブ線を用いた。タブ線は、開口部の表面接続部に占める面積率は25%である。
【0095】
そして太陽電池セル表裏面へ導電性接着フィルムを介してタブ線を配置し、2Mpa、180℃で熱加圧することにより接続した。このとき、タブ線の開口部内及びタブ線の外側に、導電性接着フィルムのバインダー樹脂のはみ出しが見られた。
【0096】
また、比較例3では、太陽電池セルと同寸法の蛍光物質や有機蛍光色素を含有しないSEBSフィルムを白板ガラスと封止樹脂との間に配設して太陽電池モジュールを形成した。その他の条件は比較例1と同じである。
【0097】
比較例4は、複数のフィンガー電極と交叉するバスバー電極を形成した太陽電池セルを用いた。また、比較例4では、太陽電池セルの受光面に接続される表面接続部に開口部が設けられたタブ線を用いた。タブ線は、開口部の表面接続部に占める面積率は25%である。
【0098】
そして太陽電池セル表裏面へ導電性接着フィルムを介してタブ線を配置し、2Mpa、180℃で熱加圧することにより接続した。このとき、タブ線の開口部内及びタブ線の外側に、導電性接着フィルムのバインダー樹脂のはみ出しが見られた。
【0099】
また、比較例4では、太陽電池セルと同寸法の蛍光物質や有機蛍光色素を含有しないSEBSフィルムを封止樹脂と太陽電池セルとの間に配設して太陽電池モジュールを形成した。その他の条件は比較例1と同じである。
【0100】
各実施例及び比較例における太陽電池セル及び太陽電池モジュールの変換効率ηを、ソーラーシミュレータ(ワコム電創株式会社製、ソーラーシュミレーターWXS−200S)を用いて標準的な測定条件(照度1000W/m、温度25℃、スペクトルAM1.5G)で、発電効率(%)を測定した。なお、測定は、いわゆる4端子法にて行い、JIS C8913(結晶系太陽電池セル出力測定方法)に準拠して測定した。測定結果を表1に示す。
【0101】
【表1】

【0102】
表1に示すように、タブ線の表面接続部に開口部を設けると共に、導電性接着フィルムにタブ線の開口部に対応する開口部を設けた実施例1〜11においては、各開口部を通じて太陽電池セルの受光面が外方に露出している。したがって、実施例1〜11では、太陽電池セル単体における変換効率ηが14.59%以上、太陽電池モジュールにおける変換効率ηが15.61%以上と、変換効率の向上が図られた。
【0103】
一方、開口部が設けられていない従来のタブ線及び導電性接着フィルムを用いた比較例1や、タブ線のみ開口部が設けられた比較例2〜4では、太陽電池モジュールにおける変換効率ηは最大15.57%にとどまった。
【0104】
実施例1と実施例5を比較すると、ともにタブ線及び導電性接着フィルムの開口部の面積率を30%としたときには、波長変換フィルムを配設した実施例5がより良好な変換効率ηを示すことがわかる。
【0105】
また、実施例4、実施例6及び実施例7を比較すると、ともにタブ線及び導電性接着フィルムの開口部の面積率を30%とし、かつ波長変換フィルムを配設したときには、太陽電池セルと同寸法の波長変換フィルムを白板ガラスと封止樹脂との間に配設した実施例6が最も良好な変換効率ηを示すことがわかる。また、実施例10、実施例11によると、波長変換フィルムをバックシートの直上に配することによっても良好な変換効率ηを示した。
【0106】
また、実施例2と実施例3を比較すると、バスバー電極を設けた太陽電池セルであっても、良好な変換効率ηを示すことがわかる。なお、バスバーレス構造の太陽電池セルによれば、バスバー電極を作成する工程やバスバー電極と導電性接着フィルムやタブ線との位置合わせ工程を省くことができ、製造工程上のメリットがある。
【0107】
実施例7と実施例8、実施例4と実施例9、実施例10と実施例11とを比較すると、タブ線のフィンガー電極と対峙する面と反対側の面に、長手方向に亘って連続する山部及び谷部が幅方向に交互に形成されてなる凹凸部を設けた場合、凹凸部を設けない場合よりも太陽電池セル単体の変換効率ηは良好となることがわかる。なお、波長変換フィルムを配してモジュール化することにより、凹凸部の有無による変換効率ηの差は小さくなった。
【符号の説明】
【0108】
1 太陽電池モジュール、2 太陽電池セル、3 タブ線、4 ストリングス、5 マトリクス、6 シート、7 表面カバー、8 バックシート、9 金属フレーム、10 光電変換素子、12 フィンガー電極、13 裏面電極、14 タブ線接続部、15 第1の開口部、17 導電性接着フィルム、18 第2の開口部、21 リール、23 導電性粒子、24 剥離基材、25 リール、30 波長変換材、40 凹凸部、41 タブ線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも受光面に表面電極が設けられた複数の太陽電池セルと、
一の上記太陽電池セルと、上記一の太陽電池セルと隣接する他の太陽電池セルとを電気的に接続するタブ線と、
上記太陽電池セルの電極と上記タブ線とを接続する導電性接着剤とを有し、
上記タブ線には、上記太陽電池セルの受光面に接続される領域に第1の開口部が設けられ、
上記導電性接着剤には、上記第1の開口部に対応する第2の開口部が設けられている太陽電池モジュール。
【請求項2】
上記太陽電池セルには、上記受光面に形成される表面電極として、ライン状のフィンガー電極が複数形成されるとともにバスバーレスであり、
上記導電性接着剤及び上記タブ線が、複数の上記フィンガー電極と交叉して配置されている請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
上記太陽電池セルの受光面に接続される領域における上記第1の開口部の面積率が10〜30%である請求項1又は請求項2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
上記タブ線には、上記表面電極と対峙する面と反対側の面に、長手方向に亘って連続する山部及び谷部が幅方向に交互に形成されてなる凹凸部が形成されている請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
複数の上記太陽電池セルを封止する封止部と、モジュール表面を保護する透明基材とを備え、
上記封止部と上記透明基材との間には、波長変換材が設けられている請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
複数の上記太陽電池セルを封止する封止部と、モジュール裏面を保護するバックシートとを備え、
上記封止部と上記バックシートとの間には、波長変換材が設けられている請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項7】
少なくとも受光面側に表面電極が設けられた複数の太陽電池セルの各電極に、導電性接着剤を介して、一の上記太陽電池セルと上記一の太陽電池セルと隣接する他の太陽電池セルとを電気的に接続するタブ線を貼り合わせる太陽電池モジュールの製造方法において、
上記タブ線には、上記太陽電池セルの受光面に接続される領域に第1の開口部が設けられ、
上記導電性接着剤には、上記第1の開口部と対応する第2の開口部が設けられ、
上記タブ線及び上記導電性接着剤は、上記第1の開口部と上記第2の開口部とを位置合わせされ、上記電極上に配置される太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項8】
上記太陽電池セルの表面電極上に、加熱硬化型の上記導電性接着剤を仮貼りし、
上記導電性接着剤の上に上記タブ線を配置し、
上記タブ線上から加熱加圧を行う請求項7記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項9】
上記タブ線によって上記複数の太陽電池セルが接続されたストリングを形成し、
上記ストリングに封止材を積層させ、減圧ラミネートすることにより上記タブ線上から加熱加圧を行う請求項8記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項10】
予め上記タブ線に上記導電性接着剤が積層されるとともに、上記第1の開口部と上記第2の開口部とが連続され、
上記導電性接着剤を介して上記タブ線が上記電極に配置される請求項7記載の太陽電池モジュールの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2013−48201(P2013−48201A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255424(P2011−255424)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000108410)デクセリアルズ株式会社 (595)
【Fターム(参考)】