説明

太陽電池モジュール被覆固定用光硬化性プリプレグシート

【課題】建築物等の設置基材にフレキシブル太陽電池モジュール等の太陽電池モジュールを被覆固定するための光硬化性プリプレグシートの提供。
【解決手段】光により反応硬化するゲル化状態のラジカル硬化型樹脂組成物と補強繊維からなる太陽電池モジュール被覆固定用光硬化性プリプレグシート20であって、分光光度計を用いて測定される硬化後の400〜800nmの全波長領域の光の透過率の平均値が90%以上である前記プリプレグシート20、基材40上に太陽電池モジュール10が前記プリプレグシート20の硬化物によって被覆固定されている構造体、及び該構造体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール被覆固定用光硬化性プリプレグシート、それを用いた固定構造、及び太陽電池モジュールの固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、地球温暖化対策や資源保護のために再生可能エネルギーの普及が図られており、中でも太陽光発電は、発電部は可動部分が無く磨耗等による機械的な故障が起きない;発電時に廃棄物・温排水・排気・騒音・振動などの発生がなく都市部での設置が可能で送電損失が少ない;出力ピークが昼間電力需要ピークと重なりピーク電力の削減に効果がある等の点で、クリーンエネルギー源として優れた特徴を有している。そのため、太陽光発電は、石油、石炭等の化石燃料の代替候補として最も有力と考えられており、急速な普及とともに、発電効率の向上、コスト低減等について、技術開発が精力的に進められている。
【0003】
太陽光発電の装置としては、単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池等の結晶シリコン太陽電池が最も広く普及している。結晶シリコン太陽電池は高い発電効率を有するものであるが、結晶シリコンは可撓性がなく、変形や衝撃に弱いため、保護ガラスと金属製のフレームを用いた太陽電池パネルとして使用されている。また、結晶性シリコン太陽電池パネルは、重量が大きく、設置のために比較的強固なフレームが必要であり、設置材料や設置工事のコストが高い、既設建築物への設置において重量の制約があり、設置可能場所が限定される等の問題がある。
【0004】
一方、アモルファスシリコン太陽電池、化合物太陽電池、有機薄膜太陽電池等の結晶シリコンを用いない薄膜太陽電池が各種提案されており、その一部は実用化されている。これらの薄膜太陽電池は、プラスチックフィルム、金属箔等の可撓性材料の上に太陽電池セルが形成され、透明なプラスチックフィルムで保護、封止することにより、屈曲性のあるフレキシブル太陽電池モジュールとして用いることができる。また、フレキシブル太陽電池モジュールは、保護ガラスを用いた結晶シリコン太陽電池パネルと比較して軽量であり、耐荷重の小さい既設構造物への設置、壁面への設置等を有利に実施できることが期待されている。
【0005】
以下の特許文献1には、フレキシブル太陽電池モジュールの設置方法として、太陽電池モジュールの裏面全体に補強板を設け、この補強板を屋根にボルト等の固定金具で取り付ける方法が記載されている。
また、以下の特許文献2には、太陽電池モジュールの非発電領域に取付け穴を設け、さし込みピン又はタッピングネジ等の固定具や固定部材を介して屋根等に設置する方法が記載されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の太陽電池モジュールは、全面補強のためモジュール重量が増大する。また、特許文献1と特許文献2に記載された発明のいずれにおいても、特殊な固定金具が必要であるとともに、設置基材への加工が必要であり、施工の手間がかかるため設置のコストが高くなる。また、建築物の屋根、壁等の設置基材への穴あけ加工により、建築物が保有している防水性、強度等を損なう虞があり、施工に細心の注意が必要であるとともに、施工場所が制約される場合がある。
【0007】
一方、以下の特許文献3には、太陽電池モジュールの表面全面又は周辺部の上から、未硬化の光硬化性プリプレグFRPシートを、太陽電池モジュールと設置基材にまたがって貼り付け、光硬化させることにより、太陽電池モジュールを該設置面に固定することが記載されている。この方法によれば、軽量なフレキシブル太陽電池モジュールの特徴を活かし、耐荷重の小さい既設建築物や壁面等への設置を簡便な操作で実施することが可能となる。しかしながら、太陽電池モジュール全面を光硬化性プリプレグシートで被覆して固定する方法は、太陽電池の機械的保護、吸湿防止、風圧による脱落防止等の優れた特徴を有するものの、硬化したプリプレグシートによる光線吸収、該プリプレグシートの経時変化や表面の汚れにより、太陽電池モジュールの発電特性の低下の可能性があり、長期間に渡る信頼性の確保が課題であった。
【0008】
このように、フレキシブル太陽電池等の太陽電池モジュールを建築物等の設置基材への設置において種々の設置工法が知られているものの、各々前記した問題を伴っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第2651121号公報
【特許文献2】特開2007−123936号公報
【特許文献3】特開2010−245343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、建築物等の設置基材にフレキシブル太陽電池モジュール等の太陽電池モジュールを被覆固定するための光硬化性プリプレグシート、それを用いた固定構造、及び太陽電池モジュールの固定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、太陽電池モジュールを光硬化性プリプレグシートを用いて設置基材に固定するに際して、光硬化性プリプレグシートの硬化物の光線透過率が特定値を有する特定の光硬化性プリプレグシートを用いて被覆固定することによって、太陽電池モジュールの設置を、簡単に、低コストで実施し、かつ、発電効率を低下させることなく、太陽電池モジュールを機械的に保護し、強固に設置基材に固定できることを見出し、本発明を完成するに至った。
さらに、本発明者は、光硬化性プリプレグシートの硬化後に、特定の耐候性コーティング組成物、及び/または特定の防汚コーティング組成物を塗布することにより、強い紫外線や、飛来物、風圧、粉塵、化学物質等、厳しい環境下においても設置後の長期間に亘り太陽電池モジュールの発電効率を確保することができることを見出し、本発明に至ったものである。
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
【0012】
[1]光により反応硬化するゲル化状態のラジカル硬化型樹脂組成物と補強繊維からなる太陽電池モジュール被覆固定用光硬化性プリプレグシートであって、分光光度計を用いて測定される硬化後の400〜800nmの全波長領域の光の透過率の平均値が90%以上であることを特徴とする、前記プリプレグシート。
【0013】
[2]設置基材上に太陽電池モジュールが前記[1]に記載のプリプレグシートの硬化物によって被覆固定されていることを特徴とする構造体。
【0014】
[3]前記プリプレグシートの硬化物の表面にウレタン樹脂を含む耐候性コーティング層が形成されており、かつ、耐候試験機を用いて測定される1000時間暴露後の400〜800nmの全波長領域の光の透過率の平均値が80%以上である、前記[2]に記載の構造体。
【0015】
[4]前記プリプレグシートの硬化物の表面に光触媒を含む防汚コーティング層が形成されている、前記[2]又は[3]に記載の構造体。
【0016】
[5]太陽電池モジュールを設置基材上に固定する方法であって、以下の工程:
太陽電池モジュールを設置基材上に仮固定する工程;
該太陽電池モジュールの表面と該設置基材にまたがって前記[1]に記載の光硬化性プリプレグシートを貼り付ける工程;
該光硬化性プリプレグシートに光を照射して硬化させる工程;及び
該光硬化性プリプレグシートの硬化物にウレタン樹脂を含む耐候性コーティング組成物を塗布する工程;
を含む前記方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、固定金具を用いず、かつ簡易な方法により、フレキシブル太陽電池モジュール等の太陽電池を設置基材上に強固に固定することができる。
フレキシブル太陽電池モジュールは、1平方メートルあたり2kg程度と軽量であるため、結晶系シリコン太陽電池パネル(1平方メートルあたり10kg以上の重量を有する)では設置できなかった、軽量気泡コンクリート、軽量スレートやトタン等、耐荷重の小さい材料を用いた屋根に設置することができる。また、軽量でかつ強固な接着が可能なため、電柱や石垣、道路コンクリートのり面、ダムのコンクリート面に等の急傾斜面や垂直面への設置も可能である。また、フレキシブル太陽電池モジュールは、硬化前には柔軟であるため曲面や凹凸のある面にも追従して設置が可能である。更に、本発明の設置方法においては、設置基材への穴あけの必要がないため、建築物の屋根、壁等に設置する場合に、該建築物の防水性、強度等を損なうことがなく、追加の防水、補強工事の必要がなく、設置場所の制約が少ない。
【0018】
また、本発明の光硬化性プリプレグシートは、硬化後において400〜800nmの全波長領域の光を平均して少なくとも90%以上透過し、また、耐候試験後にも少なくとも80%以上の光線透過性を有するため、太陽電池モジュールの発電効率を長期にわたり低下させることがない。すなわち、本発明によれば、フレキシブル太陽電池モジュールを機械的に保護し、強固に基材に固定できことができ、設置後の長期間にわたって、強い紫外線や、飛来物、風圧、粉塵、化学物質等、厳しい環境下においても太陽電池モジュールの発電効率を確保することができ、自動車道路、歩道、鉄道等の法面、安全柵、遮音壁、等、物、人との接触、排気ガスによる汚染、風圧やそれに伴う飛来物の可能性のある場所や、工場、廃棄物処分場、廃理施設、下水処理場等においても長期間に亘って安定に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の方法で固定したフレキシブル太陽電池モジュールの概略図(断面図)。
【図2】本発明の方法で固定したフレキシブル太陽電池モジュールの概略図(平面図)。
【図3】フレキシブル太陽電池モジュールの概略図(断面図)。
【図4】本発明の方法を説明する概略図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
太陽電池モジュールとしては、可撓性を有し、かつ、厚みの小さいフレキシブル太陽電池が好ましく用いられる。
本発明で用いるフレキシブル太陽電池モジュール(10)は図3に例示されるように、太陽電池発電素子(13)の両面が、可撓性外装材(14)によって封止された構造を有するものであり、図示していない封止材、電極等の必要な要素によって構成されるものである。
【0021】
太陽電池発電素子(13)としては、アモルファスシリコン、化合物半導体、有機薄膜等の薄膜が用いられ、これらの薄膜は、通常、スパッタリング、蒸着、コーティング等の方法により可撓性基材上に形成されるものである。
【0022】
可撓性外装材(14)としては、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE),ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリオキシメチレン等のプラスチックフィルム、ステンレス、チタン等の金属箔を用いられ、透明性、耐久性の面から、ETFE、PVDF等のフッソ系ポリマーフィルムが好ましく用いられる。尚、フレキシブル太陽電池モジュール(10)は、前記可撓性基材を片面側の可撓性外装材として用いることもでき、また、これ以外の封止材、接着剤、緩衝材等を含むこともでき、太陽電池素子に接続する配線を有するものである。
【0023】
フレキシブル太陽電池モジュール(10)の大きさは、一片が20cm〜500cm程度の正方形又は長方形とすることができ、短辺50〜100cm、長辺150cm〜400cm程度のものが好ましく用いられ、また、厚さとして0.5mm〜5mm程度のもの、より好ましくは1〜3mm程度のものが用いられる。
【0024】
本発明の光硬化性プリプレグシートは、光により反応硬化するゲル化状態のラジカル硬化型樹脂組成物と補強繊維からなるものであり、繊維材やメッシュ材等の補強繊維に光により反応硬化するラジカル硬化型樹脂組成物を含浸させ、増粘によってゲル状態としたものであって、光照射によって硬化及び接着が可能なものをいう。
【0025】
ここで、光により反応硬化するラジカル硬化型樹脂組成物は、ラジカル硬化型樹脂、光重合開始剤、増粘剤からなるものであり、さらに必要により、難燃剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、充填材等の添加剤を添加したものである。
ラジカル硬化型樹脂は、ラジカル活性官能基を持つモノマー又はオリゴマーであり、例えば、エポキシアクリレートやウレタンアクリレートなどのアクリレート化合物、不飽和ポリエステル樹脂などから選択することができるが、以上の例に限定されるものではなく、一種類の化合物でも、複数の化合物を成分とした混合物として用いることもできる。また、これらの化合物に、硬化反応の促進及び粘度調整のため、重合性単量体を混合したものを用いることもできる。重合性単量体としては、スチレンモノマー、ビニルトルエン、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル等の各種のビニルモノマーが挙げられる。アクリル酸エステル類としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、2 − エチルヘキシルアクリレート、2 − ヒドロキシエチルアクリレート、2 − ヒドロキシプロピルアクリレート、グリシジルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニロキシエチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ペンタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等が挙げられる。メタクリル酸エステル類としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2 − エチルヘキシルメタクリレート、2 − ヒドロキシエチルメタクリレート、2 − ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、ペンタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート等が挙げられる。
ラジカル硬化型樹脂は、使用温度、環境雰囲気等の環境条件に応じて適宜選択することができるが、太陽電池の主要設置場所である都市環境においては、耐熱性、耐候性、耐薬品性が優れたエポキシアクリレートが好適に用いられる。エポキシアクリレートは、ビニルエステルともよばれ、エポキシ化合物に不飽和一塩基酸を付加させることによって得られる化合物である。
【0026】
エポキシアクリレートに用いるエポキシ化合物としては、ビスフェノール型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、脂肪族型、脂環式、単環式エポキシ化合物、アミン型エポキシ化合物等が挙げられる。ビスフェノール型エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF 型エポキシ化合物、ビスフェノールA D 型エポキシ化合物、ビスフェノールS 型エポキシ化合物、臭素化ビスフェノールA 型エポキシ化合物等が挙げられ、ノボラック型エポキシ化合物としては、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、臭素化ノボラック型エポキシ化合物等が挙げられる。脂肪族型エポキシ化合物としては、水素添加ビスフェノールA 型エポキシ化合物、プロピレングリコールポリグリシジルエーテル化合物等が挙げられ、脂環式エポキシ化合物としては、アリサイクリックジエポキシアセタール、ジシクロペンタジエンジオキシド、ビニルヘキセンジオキシド、ビニルヘキセンジオキシド、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
エポキシアクリレートに用いる不飽和一塩基酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸等が挙げられ、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく用いられる。
【0027】
光重合開始剤としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドなどのアシルホスフィンオキシド型開始剤、O−アシルオキシム型開始剤等の光ラジカル硬化剤等を用いることができる。
増粘剤は、光硬化性樹脂組成物をゲル化させて、硬化前の光硬化型プリプレグシートの腰を強くし、取扱いを容易にするという利点を与える。増粘剤の種類は特に限定されないが、例えば、酸化マグネシウム等の金属酸化物、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、イソシアネート化合物、熱可塑性樹脂粉末等が好ましい。
【0028】
難燃剤は、高温下、又は火炎に晒されたときに着火、延焼を防ぐ効果を有するものであり、特に、建築物の屋上、壁に設置される場合に、建築物の火災を防止する観点から添加されるものである。難燃剤を添加する場合、効果及び透明性の観点から、リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤が好ましく用いられ、さらに耐久性の観点から、リン系難燃剤がより好ましく用いられる。リン系難燃剤としては、例えば、リン酸アンモニウム、リン酸メラミン、トリクレジルホスフェート、トリ( β − クロロエチル) ホスフェート、トリ( ジクロロプロピル) ホスフェート、トリ( ジブロモプロピル) ホスフェート、2 , 3 −ジブロモプロピル− 2 , 3 − ジクロロプロピルホスフェート等が用いられる。塩素系難燃剤としては、例えば、テトラブロモ・ビスフェノールA 誘導体( T B A )、テトラブロモ・ビスフェノールS 誘導体、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルエーテル等が用いられる。これらの難燃剤の添加量としては、ラジカル硬化性樹脂組成物総重量に対し、1〜30重量%が好ましく、3〜20重量%がより好ましい。
【0029】
補強繊維としては、例えば、ガラス、ビニロン、フェノール樹脂、アラミド繊維、炭素繊維、ボロン繊維、セラミック、金属等の素材からなる織布、不織布、メッシュ、ニット、マット又はこれらの組合せを用いることができ、平織りのガラス繊維織物が好ましく用いられる。ガラス繊維としては、Eガラス(無アルカリガラス)繊維、Cガラス(含アルカリガラス)繊維、Sガラス繊維、Tガラス繊維、ARガラス繊維等が用いられ、Eガラス(無アルカリガラス繊維)の使用が好ましい。上記ガラス繊維は、シランカップリング剤、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の、被膜形成剤、潤滑剤、帯電防止剤、乳化剤等を成分とする繊維収束剤で処理したものを用いることができる。
【0030】
本発明の光硬化性プリプレグシートは、硬化後において400〜800nmの全波長領域の光の透過率が平均して少なくとも90%以上である光線透過性を有するものである。ここで、光線透過性は、光硬化性プリプレグシートを、紫外線蛍光灯を用い、2000μW/cmの照射強度で20分硬化して、光硬化性プリプレグシートのサンプルを得た後に測定したものである。尚、光硬化性プリプレグシートの硬化物は、太陽光等の光により経時変化して、光透過率が低下する傾向がある。したがって、長時間放置後の光線透過率が90%未満のものでも、経時変化前の測定により光の透過率が90%以上であれば、本発明の範囲内である。400〜800nmの全波長領域の光の透過率の平均値の測定は、分光光度計を用い、400〜800nmの範囲で、所定の波長間隔毎に光線透過率を求め、これを平均することにより求めることができる。本発明においては、光源として、AM(エアマス)1.5のフィルターを装着したソーラーシミュレータを用い、1Sun(100mW/cm)の強度でサンプルに光を照射し、透過光量を、先端プローブを取り付けたB&W TEK社製CCD分光光度計で測定し、波長400〜800nmの範囲で0.4nmピッチで各波長について光線透過率を求め、これを平均して400〜800nmの全波長領域の光線透過率の平均値を求めた。なお、サンプルサイズは100mm×100mm、サンプルとCCD分光光度計との距離は3.2mmとした。尚、このように高い光線透過性を有する光硬化性プレプリグシートを得るための手段として、(i)ラジカル硬化型樹脂樹脂組成物として透明度の高いものを用いる、(ii)樹脂硬化物と補強繊維の屈折率の差を小さくする、(iii)補強繊維の表面の処理により樹脂との馴染みをよくする、(iv)補強繊維の含浸においてラジカル硬化型樹脂組成物を十分に脱泡してミクロな気泡の発生を防ぐ、(v)補強繊維の太さ、配置間隔等の構造を光の反射、吸収が少ないものとする、(vi)補強繊維の太さ、配置間隔等の構造をラジカル硬化型樹脂組成物の含浸時にミクロな気泡が発生し難いものとする、(vii)フィラーのサイズ、量、表面処理等の調整等によりフィラーとラジカル硬化型樹脂組成物との界面での光の反射、吸収を少なくする、あるいはこれらの(i)〜(vii)のいずれかの組合せを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
また、本発明の光硬化性プリプレグシートはその硬化物が、太陽電池モジュールを基材に強固に固定するとともに、太陽電池モジュールを衝撃から守る機能を有するものであり、機械的強度が高く、耐衝撃性に優れたものが好ましく用いられる。このため、光硬化性プリプレグシートの硬化物の強度が重要であり、引張り強度40MPa以上とするのが好ましい。
さらに、光硬化性プリプレグシートの硬化物は、降雹、砂利等の落下物、飛来物に対し、光硬化性プリプレグシートの硬化物自体が破壊しないことと共に、太陽電池モジュールに対する衝撃力を緩和することが好ましく、落球試験(JIS R 3206-2003に準拠)において、約1kgの剛球を高さ50cmから落下した場合に、割れが生じないことが好ましい。また、太陽電池モジュールに貼付け、硬化した場合に、前記の落球試験後において、太陽電池モジュールの性能低下が起きないことが好ましい。このため、厚みを0.5mm以上とするのが好ましく、1mm以上とするのがより好ましく、一方、光硬化性プリプレグシートの硬化物の厚みが大き過ぎると、透過光量が低下し、発電効率が低下するため、2mm以下とするのが好ましく、1.5mm以下とするのがより好ましい。
【0032】
さらに、光硬化性プリプレグシートの硬化物が、良好な耐衝撃性を有し、かつ、高い光線透過率を有するために、光硬化性プリプレグシートを構成する前記のラジカル硬化型樹脂組成物の増粘剤として熱可塑性樹脂粉末を用いることが好ましい。熱可塑性樹脂粉末は、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物等の重合性単量体から選ばれた少なくとも1種の単量体を50質量%以上含有する単量体組成物を重合反応させることにより得られる。
【0033】
さらに、前記のラジカル硬化型樹脂の重合性単量体として、炭素数4以上の脂肪族多価アルコールのアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを、ラジカル硬化型樹脂に対して10重量%以上含有することが好ましい。炭素数4以上の脂肪族多価アルコールのアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルとしては、ブタンジオールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、ペンタンジオールジアクリレート、ペンタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート等を用いることができ、ネオペンチルグリコールジアクリレートが好ましく用いられる。
【0034】
本発明の光硬化性プリプレグシートの硬化物は、前記したように、高い光線透過率と、厚み、機械的強度を兼ね備えたものであり、さらに製造性の良いものであることが好ましい。このような性能を有する光硬化性プリプレグを得るためには、前記した透明化の手法(i)〜(vii)から適切な手法を組み合わせて用いると共に、特に、透明性と厚み、強度を兼ね備えたなものとするため、補強繊維として平織りのガラス繊維織物を用い、そのヤーンの太さ、織密度を適切に設計することが重要である。すなわち、ヤーンの太さ(番手)を、経糸、緯糸とも100tex〜200texとし、織り密度を経糸、緯糸とも25mm当り15〜30本とするのが好ましい。
ヤーンの太さが100tex以下であると、製造時の取り扱いが悪くなり、また、強度が低くなり、一方、ヤーンの太さが200texを超えると、含浸性が低下し、また、透明度が低下する。さらに、織密度を25mm当り15本以下とすると、機械的強度が低下し、一方、30本以上とすると、透明度が低下する。ここで、ガラス繊維織物の厚さは、100μm〜500μm程度とすることができる。
【0035】
本発明においては、光硬化性プリプレグシートの硬化物がその表面にウレタン樹脂を含む耐候性コーティング層が形成されたものであることが好ましい。表面へのウレタン樹脂を含む耐候性コーティング層の形成は、FRPシートの硬化後に、ウレタン樹脂を含む耐候性コーティング組成物を塗布することによって通常行なわれる。ウレタン樹脂を含む耐候性コーティング組成物剤は、ウレタン樹脂原料、イソシアナート、ポリオール、紫外線吸収剤、溶剤、必要に応じてその他の添加剤からなるものである。
【0036】
ウレタン樹脂原料は、反応硬化後にウレタン樹脂を形成する成分であり、イソシアネート化合物及びポリオール化合物が一般的に用いられる。
イソシアネート化合物としては、例えば、1, 6 − ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、2 , 2 , 4 − 又は2 , 4 , 4 − トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1 , 2 − プロピレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、1 , 3 − ブチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネート; m − 又はp − フェニレンジイソシアネート、4 , 4 − ジフェニルメタンジイソシアネート、2 , 4 − 又は2 , 6 − トリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート; 1 , 3 − 又は1 , 4 − シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1 , 3 − ビス( イソシアネートメチル) シクロヘキサン、メチル− 2 , 6 − シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート;1 , 3 − 又は1 , 4 − キシリレンジイソシアネート、1 , 3 − 又は1 , 4 − ビス( 1− イソシアネート− 1 − メチルエチル) ベンゼンなどの芳香脂肪族イソシアネートなどが挙げられる。
【0037】
ポリオール化合物としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオールなどが挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、多価カルボン酸と多価アルコールからなるポリエステルポリオールやラクトン環の開環重合で得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
ここで、多価カルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1 , 4 − シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの脂肪族、脂環族、芳香族などの多価カルボン酸が挙げられ、上記の多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1, 3 − プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、キシリレングリコール、ポリエチレングリコール、1 , 2 − 又は1 , 3 − プロパンジオール、1 , 2 − 、1 , 3 − 又は1 , 4 − ブタンジオール、1 , 5− ペンタンジオール、1 , 6 − ヘキサンジオール、3 − メチル− 1 , 5 − ペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの脂肪族、脂環族、芳香族などの多価アルコールが挙げられる。
【0038】
ポリエーテルポリオールとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのオキシラン化合物を、エチレングリコール、1 , 2 − プロパンジオール、グリセリンなどの多価アルコールを重合開始剤として重合して得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。
また、ポリエーテルエステルポリオールとしては、上記のポリエーテルポリオールと前記のアジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸などの二塩基酸との反応によって得られるポリエーテルエステルポリオールが挙げられる。
【0039】
本発明に用いる耐候性コーティング組成物は、上記のウレタン樹脂成分に加えて、紫外線吸収剤、溶剤、必要に応じてその他の添加剤を含有することができる。
紫外線吸収剤としては、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、酸化セリウム系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、酸化亜鉛系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤、酸化チタン系紫外線吸収剤などを挙げることができる。
【0040】
紫外線吸収剤の添加量は、耐候性コーティング組成物の樹脂固形分100重量部当たり0.5〜25重量部であることが好ましく、4〜10重量部であることがより好ましい。
紫外線吸収剤の成分がイソシアネート化合物又はポリオール化合物に結合した化合物を用いることにより、ウレタン樹脂に紫外線吸収剤を化学的に結合させることもできる。
【0041】
尚、耐候性コーティング組成物は、上記イソシアネート化合物を含む組成物と上記ポリオール化合物を含む組成物を別々に用意し、コーティングに使用する直前に二液を混合して用いることが通常行なわれるが、予め二成分を反応させてプレポリマーとして用いる、潜在硬化性の硬化剤を用いる等の方法で、一液性コーティング剤として用いることもできる。
ウレタン樹脂を含む耐候性コーティング層の厚みは、0.5〜100μmの範囲が好ましく、10〜40μmの範囲がより好ましい。
【0042】
本発明においては、光硬化性プリプレグシートの硬化物がその表面に光触媒粒子を含む防汚コーティング層が形成されたものであることができる。ここで、表面への防汚層の形成は、通常、光硬化性プリプレグシートの硬化後に、光触媒粒子を含む防汚コーティング組成物を塗布することによって行われる。
ここで、防汚コーティング層とは、光触媒粒子とバインダーからなるものであり、防汚コーティング組成物とは、これに加えて、溶媒、分散媒を含むものである。
光触媒粒子としては、バンドギャップエネルギーが、好ましくは1.2〜5.0eV、より好ましくは1.5〜4.1eVである半導体化合物の粒子を挙げることができる。光触媒の例としては、例えば、TiO、ZnO、SrTiO、BaTiO、BaTiO、BaTi、KNbO、Nb、Fe、Ta、KTaSi、WO、SnO、Bi、BiVO、NiO、CuO、RuO、CeO、さらにはTi、Nb、Ta、Vから選ばれる少なくとも1種の元素を有する層状酸化物等が挙げられる。これらの光触媒の中では、TiO(酸化チタン)が、化学的安定性に優れるため、より好ましい。
【0043】
光触媒粒子としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(ジメトキシエトキシ)シラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル等で表面処理したものが挙げられる。
光触媒粒子の大きさとしては、1〜400nmが好ましい。
【0044】
バインダーとしては、重合体エマルジョン粒子、加水分解性シリコーンの乾燥物、加水分解性シランの乾燥物、無定形の無機酸化物、アリカリシリケート等、種々の公知のものを用いることが可能であるが、重合体エマルジョン粒子の分散体が好ましく用いられる。
重合体エマルジョン粒子の分散体としては、種々公知のものを用いることができるが、例えば、アクリルエマルジョン、スチレン−ブタジエンエマルジョン、アクリルシリコンエマルジョン、シリコーンエマルジョン、PTFEエマルジョン等の重合体エマルジョン粒子の分散体が挙げられる。重合体エマルジョン粒子は、所定の単量体の乳化重合等の方法により得ることができる。
【0045】
溶剤、分散剤としては、光触媒粒子を分散し、かつバインダーを溶解、分散、乳化可能な任意のものが用いられ、作業環境の確保や環境負荷の観点から、水が好ましく用いられる。
防汚コーティング層の厚みとしては、0.1〜10μmが好ましく、0.5〜2μmがより好ましい。
【0046】
本発明においては、光硬化性プリプレグシートの硬化物は、耐候試験後に、400〜800nmの全波長領域の光の透過率の平均値が少なくとも80%以上である光線透過性を有することが好ましい。ここで、耐候試験としては、耐候性試験機(スガ試験機 スーパーキセノンウェザーメーター SX75)を用いて、1000時間の暴露を行なう。かかる耐候試験後の光線透過性は、少なくとも90%以上であることがより好ましい。
【0047】
本発明において、太陽電池モジュールを設置する設置基材の材質としては、コンクリート、モルタル、軽量スレート、軽量気泡コンクリート、金属、木材、FRP等任意のものが挙げられ、本発明は、平坦面、斜面、垂直面、凸面、凹面、波打ち面等各種の面に適用可能である。
【0048】
以下、図4を参照して、本発明の太陽電池モジュールを設置基材上に固定する方法を説明する。
本発明においては、必要により設置基材の表面の下地処理を行なった後、太陽電池モジュールを設置基材表面上に仮固定する。下地処理としては、ポリマーセメントモルタルによる不陸調整、ディスクサンダー、高圧洗浄装置による洗浄、プライマーの塗布等が挙げられる。また、仮固定の方法としては、設置基材表面又は太陽電池モジュールの裏面の全面又は一部に両面粘着テープ、両面接着テープを貼り付け、又は液体状接着材、液状コーキング材等を塗布することによって行なわれ、これにより、平坦性の向上、位置ずれの防止を図ることができるが、仮固定の方法はこれに限定されることはなく、例えば、平面への設置の場合に特別の手段を講ずることなく、重力により仮固定が可能な場合もある。
【0049】
本発明の方法において、前記光硬化性プリプレグシートを太陽電池モジュールの全面と設置基材にまたがって貼り付け、さらに光照射を行なうことによって硬化させ、太陽電池モジュールを設置基材に固定一体化する。光照射は、太陽光、紫外線蛍光灯等、光硬化性プリプレグシートが硬化する波長に出力を有する任意の光源を用いることができる。ここで、太陽光の照射による場合、通常20分程度で硬化が可能である。また、紫外線蛍光灯を用いた場合、例えば、2000μW/cmの照射強度で20分程度で硬化可能であり、これと同等な照射量で、照射強度、時間を変えて照射、硬化することもできる。また、光硬化性プリプレグシートの貼り付けに先立って、設置基材にプライマーを塗布することが接着強度を高めるために好ましく、設置基材と太陽電池モジュールの表面にプライマーを塗布することもできる。
【0050】
また、光硬化性プリプレグシートの表面には、耐光性を確保するため、表面にウレタン樹脂を含む耐候性コーティング組成物(前述)を塗布することが好ましい。塗布は、通常、光照射によりプリプレグが硬化した後に行なう。塗装方法としては、刷毛塗り、ローラー、スプレー、ロールコーター等の公知の方法を用いることができる。
【0051】
さらに、光硬化性プリプレグシートの表面には、防汚性を確保するため、表面に光触媒を含む前記コーティング組成物を塗布することが好ましい。塗布は、通常、光照射によりプリプレグが硬化した後に行なう。塗装方法としては、刷毛塗り、ローラー、スプレー、ロールコーター等の公知の方法が挙げられる。
耐候性コーティング組成物と防汚コーティング組成物に関しては、片方のみ又は両方を塗布することができる。耐候性コーティング組成物を塗布後、防汚コーティング組成物を塗布することがより好ましい。
【実施例】
【0052】
[実施例1]
ポリエステル製フィルムの上に、ガラスクロスを重ね、これに、ラジカル硬化型樹脂組成物を含浸させ、さらにポリエステルフィルムを重ねて、60℃で30分加熱し増粘して光硬化性プリプレグシートを作製した。シート全体の厚みは1.0mmであった。なお、ラジカル硬化型樹脂組成物は、ビスフェノールA型エポキシ化合物とメタクリル酸の付加物であるエポキシアクリレート樹脂を主成分とし、光重合開始剤として、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド0.3重量%、重合性単量体として、ネオペンチルグリコールジアクリレート12重量%、スチレン20重量%、難燃剤として、トリクレジルホスフェート10重量%、増粘剤として、微粒子ポリメチルメタクリレート8重量%を含むものである(ここで、重量%は、ラジカル硬化型樹脂組成物総量に基づくものである。)。使用したガラスクロスは、標準質量200g/m、厚さ0.25mmであり、135texのヤーンを、縦19本/25mm、横18本/25mmの密度で平織りされたものであり、シラン処理したものを用いた。
【0053】
得られた光硬化性プリプレグシートに、紫外線蛍光灯を用いて2000μW/cmの光を20分間照射して硬化させ、ポリエステル製フィルムを剥がし、分光光度計を用いて光線透過率を測定したところ、400nm〜800nmの範囲の光線透過率の平均値は95%であった。この光硬化性プリプレグシートの硬化物の引張り強度は、105MPaであった。また、この光硬化性プリプレグシートの硬化物は、落球試験(JIS R3206-2003に準拠)において、1Kgの剛球を高さ50cmから落下させたが、割れ、変形等は観察されなかった。
この硬化体の上に、ウレタン系耐候性コーティング組成物(公進ケミカル製、ハルスハイコート)を刷毛で塗布した。塗布厚は30μmとした。24時間放置後、さらに、酸化チタンを含む防汚コーティング組成物をスプレーで、塗布厚が乾燥後に1μmとなるように塗布した。24時間乾燥後、分光光度計を用いて光線透過率を測定したところ、400nm〜800nmの範囲の光線透過率の平均値は95%であった。
さらに、このサンプルを耐候性試験機(スガ試験機 スーパーキセノンウェザーメーター SX75)を用いて、1000時間暴露後、分光光度計を用いて光線透過率を測定したところ、400nm〜800nmの範囲の光線透過率の平均値は91%であった。
【0054】
[実施例2]
コンクリートブロック(2m×1.5m×1.5m)の垂直面に、フレキシブル太陽電池モジュール(大きさ;0.6m×1.8m、厚さ2mm;太陽電池発電素子はアモルファスシリコン、外装材は表裏ともETFE)を両面粘着テープを用いて仮固定し、実施例1で作製した光硬化性プリプレグシート(未硬化のもの)を、太陽電池のモジュール全面とコンクリート面にまたがってはりつけ、直射日光で20分間硬化させた。
こうして得た太陽電池を被覆固定している硬化したプリプレグシートの上に、実施例1と同様に、ウレタン系耐候性コーティング組成物及び防汚コーティング組成物を塗布した。
6ヶ月経過後、状況を観察したところ、良好な接着状態が保たれており、該プリプレグシートに黄変、白濁等の変化がないことを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の方法は、軽量気泡コンクリート、軽量スレート、トタン等の屋根、建築物の壁面、電柱や石垣、道路コンクリート法面、ダムのコンクリート面等の急傾斜面、垂直面等、各種の建築、土木構造物への適用が可能である太陽電池モジュールの設置方法として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0056】
10 太陽電池モジュール
13 太陽電池発電素子
14 可撓性外装材
20 光硬化性プリプレグシート
40 設置基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光により反応硬化するゲル化状態のラジカル硬化型樹脂組成物と補強繊維からなる太陽電池モジュール被覆固定用光硬化性プリプレグシートであって、分光光度計を用いて測定される硬化後の400〜800nmの全波長領域の光の透過率の平均値が90%以上であることを特徴とする前記プリプレグシート。
【請求項2】
設置基材上に太陽電池モジュールが請求項1に記載のプリプレグシートの硬化物によって被覆固定されていることを特徴とする構造体。
【請求項3】
前記プリプレグシートの硬化物の表面にウレタン樹脂を含む耐候性コーティング層が形成されており、かつ、耐候試験機を用いて測定される1000時間暴露後の400〜800nmの全波長領域の光の透過率の平均値が80%以上である、請求項2に記載の構造体。
【請求項4】
前記プリプレグシートの硬化物の表面に光触媒を含む防汚コーティング層が形成されている、請求項2又は3に記載の構造体。
【請求項5】
太陽電池モジュールを設置基材上に固定する方法であって、以下の工程:
太陽電池モジュールを設置基材上に仮固定する工程;
該太陽電池モジュールの表面と該設置基材にまたがって請求項1に記載の光硬化性プリプレグシートを貼り付ける工程;
該光硬化性プリプレグシートに光を照射して硬化させる工程;及び
該光硬化性プリプレグシートの硬化物にウレタン樹脂を含む耐候性コーティング組成物を塗布する工程;
を含む前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−62437(P2013−62437A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200975(P2011−200975)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】