説明

太陽電池モジュール

【課題】裏面電極型太陽電池セル間の電気接続不良を抑制することができるとともに、絶縁基材の材料選択の制限を受けることなく裏面電極型太陽電池セルを容易に実装することが可能な太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】太陽電池モジュール1は、透光性基板2と、複数の太陽電池セル5と、太陽電池セル間を接続する電気配線8と、絶縁基板3とを有し、複数のセル5は封止層6によって透光性基板2と絶縁基板3との間に封止させる。透光性基板3は厚さ2mm〜4mmのガラスパネル、太陽電池セル5は厚さ100um〜300um以下の結晶系太陽電池セルをもちいた。この太陽電池モジュール1はYを太陽電池モジュール1の反り(単位:um)とし、Xを絶縁基板3の弾性率E(単位:GPa)と熱膨張係数α(単位:ppm)の積として、次式を満足する。
Y≦12.88X+521.7…(1)、Y≧0.0324X+83.69…(2)、Y≦1000,X≦700…(3)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏面に電極を備えるバックコンタクト方式の裏面電極型の裏面電極型太陽電池セルを封止した太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然エネルギーを利用する発電システムである太陽光発電の普及が急速に進められている。太陽光発電をするための太陽電池モジュールは、図8に示すように、受光側に配置された透光性基材120と、裏面側に配置されたバックシート110と、透光性基材120およびバックシート110の間に封止された多数の太陽電池セル130とを有している。太陽電池セル130は、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルム等の封止用フィルム140に挟まれて封止されている。
【0003】
従来、太陽電池モジュールにおいては、多数の太陽電池セル130,130,…が、幅1〜3mmの配線材150で電気的に直列に接続されていた。太陽電池セル130は、太陽の受光面である表面側にマイナス電極(N型半導体電極)131、裏面側にプラス電極(P型半導体電極)132が設けられているため、配線材150で接続すると、太陽電池セル130の受光面の上に配線材150が重なり、光電変換の面積効率が低下する傾向にあった。
【0004】
さらに上述した電極131,132の配置では、配線材150が太陽電池セル130の表側から裏側に回り込む構造になるため、各部材の熱膨張率の差が原因で配線材150が断線することがあった。
【0005】
そこで、これら問題を解決すべく、例えば特許文献1,2においては、プラス電極とマイナス電極の両電極がセルの裏面に設置されたバックコンタクト方式の太陽電池モジュールが提案されている。この方式の太陽電池モジュールにおける裏面電極型太陽電池セル同士の接続は、裏面電極型太陽電池セルの裏面側に配置された絶縁基材の回路により行われる。
【0006】
即ち、この太陽電池モジュールにおいては、絶縁基材の表面に回路層が積層され、この回路層の上に裏面電極型太陽電池セルがさらに積層された構造を有している。このため、裏面電極型太陽電池セル表面の受光面積が犠牲にならず光電変換の面積効率の低下を防止できる。さらに、配線材を表側から裏側に回り込む構造する必要がないため、各部材の熱膨張の差による配線材の断線も防止できるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−11869号公報
【特許文献2】特開2009−111122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述したようなバックコンタクト方式の太陽電池モジュールにおいては、絶縁基材の表面に配線材としての回路層が形成され、さらにこの回路層の上に裏面電極型太陽電池セルが積層された構造をなしているため、太陽電池モジュールの使用時に高温に曝された場合には、絶縁基材と回路層及び裏面電極型太陽電池セルとの線膨張率の違いによって、裏面電極型太陽電池セルが絶縁基材から剥離してしまうおそれがあった。
【0009】
即ち、絶縁基材は裏面電極型太陽電池セル及び透光性基材と比較して線膨張率が高いため、高温時においては絶縁基材が裏面電極型太陽電池セル及び透光性基材よりも大きく膨張し、この膨張差が、裏面電極型太陽電池セルが絶縁基材から剥離する原因につながってしまっていた。
【0010】
さらに、回路層が形成された絶縁基材上に直接的に裏面電極型太陽電池セルを実装する構造のため、絶縁基材に実装プロセス耐性が求められ、当該絶縁基材の材料選択の制限を受けてしまっていた。また、裏面電極型太陽電池セルは巨大なペアチップとして構成されているため、当該裏面電極型太陽電池セルを実装すること自体が技術的に困難であり、製造を容易に行うことができなかった。
【0011】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、各部材の剥離を抑制して、裏面電極型太陽電池セル間の電気接続不良を抑制することができるとともに、絶縁基材の材料選択の制限を受けることなく裏面電極型太陽電池セルを容易に実装することが可能な太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明は以下の手段を提案している。
即ち、本発明に係る太陽電池モジュールは、絶縁基材と、該絶縁基材の表面側において複数並設された裏面電極型太陽電池セルと、各前記裏面電極型太陽電池セルの裏面電極を略同一平面内で接続する電気配線と、絶縁基材の表面に積層され、前記裏面電極型太陽電池セルと前記電気配線とを前記絶縁基材に対して離間状態に封止する封止樹脂と、前記封止樹脂の表面に積層された透光性基材と、を備え、前記透光性基材は厚さ2mm以上4mm以下の酸化珪素からなり、前記裏面電極型太陽電池セルは厚さ100μm以上300μm以下の結晶系裏面電極型太陽電池セルからなり、下記(1)、(2)及び(3)式を満たすことを特徴とする。
Y≦12.88X+521.7 …(1)
Y≧0.0324X+83.69 …(2)
Y≦1000,X≦700 …(3)
但し、Y:太陽電池モジュールの反り
X:絶縁基材の弾性率と熱膨張係数の積
【0013】
本発明による太陽電池モジュールによれば、使用時等に、熱によって生じる太陽電池モジュールの反りY(単位μm)について、透光性基材と裏面電極型太陽電池セルの材質や厚さを規定するとともに、絶縁基材の弾性率と熱膨張係数の積Xで規定される伸び縮みし易さをパラメータとして規定することで、太陽電池モジュールの反りYを上述した各式の範囲内に規定することができる。これにより、太陽電池モジュールの反りYを、故障の生じないように抑制して信頼性を持たせることができる。
【0014】
なお、太陽電池モジュールの反りは0であることが理想的であるが現実には困難である。そのため、(1)、(2)式により、太陽電池モジュールの外径寸法に応じた反りの上限と下限を設定してその範囲内に納まるように、透光性基材と裏面電極型太陽電池セルの材質や厚さを規定するとともに、絶縁基材の弾性率と熱膨張係数との積Xによる伸び縮みし易さをパラメータとし、(1)、(2)式の範囲内に規定することで太陽電池モジュール全体の反りYを故障の生じないように低減できるようにした。また、同時に太陽電池モジュール全体の信頼性を維持できる程度の反りYの上限と絶縁基材の伸び縮みし易さである積Xの上限とを(3)式によって規定した。
【0015】
また、絶縁基材上に直接的に電気配線及び裏面電極型太陽電池セルが実装された構造ではなく、絶縁基材上に積層された封止層内にこれら電気配線及び裏面電極型太陽電池セルが封止された構成のため、絶縁基材に実装プロセス耐性が求められることはなく、当該絶縁基材の材料選択の幅を広げることができる。さらに、絶縁基材上において封止層によって電気配線及び裏面電極型太陽電池を封止することのみをもって、これらを絶縁基材上に固定一体化させることができるため、製造プロセスを簡略化することができる。
【0016】
また、本発明による太陽電池モジュールにおいて、反りYと積Xが下記(4)式を満たすことが好ましい。
Y≦500,X≦300 …(4)
太陽電池モジュールの反りと絶縁基材の弾性率と熱膨張係数の積Xについて上述の式を満足することで、より絶縁基材が伸び縮みしにくくなり、太陽電池モジュールの反りを一層低減させることができる。
【0017】
さらに、絶縁基材の膜厚は、20μm以上3000μm未満であることが好ましい。
絶縁基材がこの範囲の厚さであれば、薄層であるために使用時等における裏面電極型太陽電池セルの熱が一方の面から他方の面に伝達して放熱効果が高く表裏面の温度差による絶縁基材の反りを抑制でき、太陽電池モジュールの反りを抑制できる。
一方、絶縁基材の膜厚が20μm未満であると製造工程におけるハンドリング性が落ちて扱いにくくなり、膜厚の上限300μmとすることで上述したセルの放熱効果を十分発揮できる。また、3000μm以上であると表裏面の温度差による反りが次第に増大する。そのため、絶縁基材の膜厚は、20μm〜300μmの範囲であることが最も好ましい。
【0018】
また、絶縁基材は、ガラス繊維に絶縁樹脂を含浸させた構造をなしていることが好ましい。
この構成によって、絶縁基材の硬さを向上させて太陽電池モジュール全体の反りを抑えることができる。
【0019】
また、前記絶縁基材の裏面側にバックシートが積層されており、該バックシートが下記(5)式を満たすことが好ましい。
X≧(バックシートの弾性率×バックシートの熱膨張係数) …(5)
このようなバックシートを備えていれば、絶縁基材が比較的伸び縮みし易さのパラメータを確保した上に、バックシートによって絶縁基材の反りを抑えることで太陽電池モジュールの反りを一層押さえ込むことができる。
【0020】
また、前記バックシートが下記(6)式を満たすことがより好ましい。
0.9X≧(バックシートの弾性率×バックシートの熱膨張係数) …(6)
バックシートの伸び縮みし易さが絶縁基材の伸び縮みし易さの0.9倍以下としたことで、バックシートの硬さを向上させて伸び縮みを抑制し、全体の反りをさらに抑制できる。
【0021】
さらに、前記裏面電極型太陽電池セルが平面視にて千鳥状に配列されていることが好ましい。
複数の裏面電極型太陽電池セルを千鳥状に配列したことから、セルとセルとの間隙に生じ得る応力を六方向に分散させることができる。これにより従来技術の格子状に配列した場合と比較して、セルとセルとの間隙に生じる応力とより低減することができ、しわ等を生じにくい。
【0022】
また、裏面電極型太陽電池セルは六角形であることが好ましい。
複数の裏面電極型太陽電池セルを六角形状に形成して千鳥状に配列することで、セルとセルの間隙に生じ得る応力を六方向に分散させるとともに、裏面電極型太陽電池セル間の間隙を最小化できてセルを多数配設できて発電効率を高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明による太陽電池モジュールによれば、熱によって生じる太陽電池モジュールの反りについて、透光性基材と裏面電極型太陽電池セルとの材質や厚さを規定するとともに、絶縁基材の弾性率と熱膨張係数の積で規定される伸び縮みし易さをパラメータとして規定することで、太陽電池モジュールの反りを上述した各式の範囲内に低減できる。これにより、太陽電池モジュールの反りを抑制し、故障の生じないように信頼性を持たせることができる。
また、裏面電極型太陽電池セルを絶縁基材に実装することなく、裏面電極同士を電気配線で接続した状態で封止層によって封止することで、実装分留りを向上させて太陽電池モジュールの信頼性を高めることができる他、絶縁基材の実装プロセス耐性を考慮する必要がないため、絶縁基材の材料選択の幅を広げることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態の太陽電池モジュールの要部断面模式図である。
【図2】裏面電極型太陽電池セルの形状と配列を示す部分平面図である。
【図3】図1に示す太陽電池モジュールの製造工程を示す断面模式図である。
【図4】太陽電池モジュールの縦断面を擬似的に三層状に簡略化した状態を示す断面図である。
【図5】変形例による太陽電池モジュールを示すもので、絶縁基材の裏面にバックシートを設けた断面模式図である。
【図6】(a)は絶縁基材の膜厚に応じた、絶縁基材の弾性率及び熱膨張係数の積に対する太陽電池モジュールの反りを示す図、(b)は(a)と同じく絶縁基材の弾性率及び熱膨張係数及び厚さの積に対する太陽電池モジュールの反りを示す図である。
【図7】(a)、(b)、(c)、(d)は外径寸法の異なる太陽電池モジュールの各積層三層系における絶縁基材の弾性率及び線膨張係数の積と各積層三層系の反りとの関係を示す図である。
【図8】従来の太陽電池モジュールの一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態の太陽電池モジュールについて図面を参照して詳細に説明する。
図1に示す本実施形態による太陽電池モジュール1は、太陽光等の光を入射させる透光性基材2と、その裏面側に配設された絶縁基材3と、透光性基材2及び絶縁基材3の間に間隙を開けて配列された複数の裏面電極型太陽電池セル5とを積層した概略構成をなしている。
【0026】
そして、本実施形態においては、裏面電極型太陽電池セル5は、導電性接着剤10を介して電気配線8によって互いの裏面電極5aを電気接続されており、これら裏面電極型太陽電池セル5及び電気配線8は、透光性基材2及び絶縁基材3の間において封止層6によって封止されている。これら封止層6はその裏面側が絶縁基材3に接合されるとともに表面側が受光麺となる透光性基材2に接合されて一体化され、これによって太陽電池モジュール1が形成されている。
【0027】
なお、上記電気配線8は、図1に示すように同一平面上にて裏面電極型太陽電池セル5を接続するように配設されており、さらに、これら裏面電極型太陽電池セル5及び電気配線8は、絶縁基材3の表面に対して離間状態にて封止層6によって封止されている。
【0028】
次に太陽電池モジュール1を構成する各部材について説明する。
図1において、透光性基材2としては、例えばガラスパネル等の酸化珪素などが用いられる。なお、この透光性基材2として、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート等の透明樹脂基材を用いることも可能である。
【0029】
また、電気配線8は、裏面電極型太陽電池セル5を電気的に接続される配線である。この電気配線8は積層配列される多数の裏面電極型太陽電池セル5を電気的に直列に接続しており、特に本実施形態においては、上述したように裏面電極型太陽電池セル5の裏面側にて同一平面上に配されている。電気配線8を構成する材料として、電気抵抗が低い材料、例えば銅、アルミニウム、鉄−ニッケル合金などが使用される。
【0030】
導電性接着剤10は、電気配線8と裏面電極型太陽電池セル5との電気的接続を補助する部材であり、裏面電極型太陽電池セル5の裏面電極5aに対応して配設されている。
導電性接着剤10の材料として電気抵抗が低い材料が使用される。中でも電気配線8との電気抵抗が低くなることから、銀、銅、錫、鉛、ニッケル、金よりなる群から選ばれる1種以上の金属を含有することが好ましい。特に、導電性接着剤10は、銀、銅、錫、半田(銅と鉛が主成分である。)よりなる群から選ばれる1種以上の金属を含有する導電性ペーストにより形成されていることが好ましい。
【0031】
また、導電性接着剤10は低温硬化タイプであることが好ましい。導電性接着剤10が低温硬化タイプであれば、120〜160℃という低温で裏面電極型太陽電池セル5の裏面電極5aと電気配線8とを電気的に接続できる。120〜160℃は、封止層6を構成する封止用フィルムとして使用可能なEVAフィルムの軟化、溶融、架橋が生じる温度であるから、封止用フィルムとしてEVAフィルムを用いる場合には、容易に加工できるため、裏面電極型太陽電池セル5の裏面電極5aと導電性接着剤10とをより容易に電気的に接続させることができる。
【0032】
低温硬化タイプの導電性接着剤としては、ポリマーと導電性フィラーを含有し、ポリマーの硬化による導電性フィラーの物理的接触によって導電性を発現するもの、有機物に銀もしくは銅を配位、還元させたナノ粒子を含有し、低温焼結(120〜160℃)させることにより導電性を発現するものが挙げられる。電気抵抗がより低くなる点では、後者の材料が好ましい。
【0033】
次に、絶縁基材3について説明する。
絶縁基材3は、例えばPETやPENなどの高分子フィルム、もしくは単層のガラスクロス等、網目状のガラス繊維からなる。この場合、膜厚が薄いために裏面電極型太陽電池セル5の熱が一方の面から他方の面に伝達して放熱効果が高く表裏面の温度差による絶縁基材3の反りを抑制できるとともに、穴明けなどの加工が容易である。また、絶縁基材3は、網目状のガラス繊維に絶縁樹脂を含浸させた複合材料であってもよい。この場合には、単層のガラスクロスよりも硬さが増して伸び縮みし難くなる。
【0034】
ガラス繊維に絶縁樹脂を含浸させた複合材料の一例として、網目状のガラス繊維に樹脂が含浸させられた樹脂含有繊維からなるプリプレグが知られている。このプリプレグの繊維として、例えばガラスクロス、ガラス不織布、紙などが挙げられる。また、絶縁樹脂は、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、エポキシアクリレート樹脂またはウレタン樹脂等である。
なお、プリプレグはプリント配線板の一形態であり、プリプレグを熱で固めた完成品はプリント配線板と呼称される。ガラス繊維に絶縁樹脂を含浸させたプリプレグの完成品として、FR−4、FR−5、BT材等があてはまる。
【0035】
ここで、太陽電池モジュール1における透光性基材2として石英ガラス等のガラスパネルを用い、裏面電極型太陽電池セル5としてシリコン等の酸化珪素を用いた場合、表1に示すように、絶縁基材3として、従来用いられていたPETフィルムやPENフィルム等の高分子フィルムより、ガラスエポキシ基材等のガラスクロスを用いた方が、線膨張係数がガラスパネル等の透光性基材2やシリコン等の裏面電極型太陽電池セル5に近いため、太陽電池モジュール1の反りが小さい。
【0036】
【表1】

【0037】
そして、絶縁基材3は、その膜厚を薄層に形成することによって、裏面電極型太陽電池セル5の熱が裏面側に伝達されて放熱効果が高く、表裏面の温度差が小さいために反りを生じにくい利点がある。そのため、本実施形態の太陽電池モジュール1においては、絶縁基材3の膜厚を20μm〜300μmの範囲の薄層に構成した。膜厚が20μm未満であると製造工程におけるハンドリング性が落ちて扱いにくくなる。一方、膜厚の上限300μmは1枚物のプリント配線基材の一般的な上限である。そのため、絶縁基材3の上限は300μmを超えてもよいが、300μmを超えると伸び縮みし易さが次第に増大する。また、絶縁基材3の膜厚は、太陽電池モジュール1の反りを故障しない程度に抑制するために、3000μm未満であることが好ましく、少なくとも3000μm以下であることが好ましい。
【0038】
また、絶縁基材3の弾性率をE(GPa)とし、熱膨張係数をα(ppm)とした場合、弾性率Eと熱膨張係数αの積が小さいほど硬くて伸び縮みしにくい材料となる。また、絶縁基材3の膜厚が大きいほど反りが大きくなり易い。
この絶縁基材3を構成する絶縁基材は、単層のガラスクロス、あるいはこれに絶縁樹脂を含浸させてなる構成のため、耐熱性と絶縁性が高く、さらに電気信頼性が高い上に柔軟性と可撓性がある。そのため、積層する前の材料段階でロールに巻いて運搬や保管等をし易い特性、いわゆるロールツーロールし易いといった特性を有しており、スペースを取らずに取り扱いが容易に行うことができる。
【0039】
次に、裏面電極型太陽電池セル5について説明する。裏面電極型太陽電池セル5は、裏面にプラス電極及びマイナス電極の双方を備えるバックコンタクト方式のものである。裏面電極型太陽電池セル5はシリコンからなるものが好ましく、例えば単結晶シリコン型、多結晶シリコン型等の結晶系裏面電極型太陽電池セルが用いられる。これらの中でも、発電効率に優れる点では単結晶シリコン型が好ましい。裏面電極型太陽電池セル5の厚さは100μm〜300μmの範囲とする。
【0040】
裏面電極型太陽電池セル5は、例えば図2(a)、(b)に示すように、正方形板状や六角形板状に形成され、透光性基材2と絶縁基材3との間に互いに間隙Gを開けて正方晶状もしくは千鳥状に配列されている。複数の裏面電極型太陽電池セル5は互いに分離して配列されるが、透光性基材2と絶縁基材3は一枚板で構成されるため、裏面電極型太陽電池セル5、5間の間隙Gにシワ等の応力が集中する不具合がある。これに対し、裏面電極型太陽電池セル5を千鳥状に配列することで、この応力を六方向に分散させることができる。特に裏面電極型太陽電池セル5を六角形、好ましくは正六角形板状に形成することでセル5,5間の間隙Gを最小化させ、太陽電池モジュール1の面積全体に対するセル5の占有面積を増大させて発電効率を向上させることができる。
【0041】
封止層6は封止用フィルムにより形成される。封止用フィルムとして、例えばEVAフィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂フィルムなどが使用される。
【0042】
次に、上述の構成を有する太陽電池モジュール1による反りを抑制する構成について説明する。
太陽電池モジュール1において、上述したように、透光性基材2として厚さ2mm〜4mmの範囲のガラスパネル等の酸化珪素を用い、裏面電極型太陽電池セル5として厚さ100μm〜300μmの範囲の結晶系裏面電極型太陽電池セルを用いるものとする。透光性基材2の厚みが2mmに満たない場合や裏面電極型太陽電池セル5の厚みが100μmに満たない場合には、太陽電池モジュール1の強度が著しく低下し、破断のおそれが生じる。また、透光性基材2の厚みが4mmを超えた場合や裏面電極型太陽電池セル5の厚みが300μmを超えた場合には、太陽電池モジュール1の重量とコストが跳ね上がり実用上好ましくない。
【0043】
そして、熱による太陽電池モジュール1の熱による反りY(単位μm)は絶縁基材3の弾性率Eと熱膨張係数αの積Xをパラメータとして次式で規定できる。
Y≦12.88X+521.7 …(1)
Y≧0.0324X+83.69 …(2)
Y≦1000,X≦700 …(3)
【0044】
太陽電池モジュール1の反りが1000μm以下であれば、製品としての信頼性を確保できる。
なお、太陽電池モジュール1の反りYと、絶縁基材3の弾性率Eと熱膨張係数αの積Xとは、次式を満たすことがさらに好ましい。
Y≦500,X≦300 …(4)
【0045】
ここで、太陽電池モジュール1の反りは熱を受けても0であることが理想的であるが現実には困難である。そのため、(1)、(2)式により、太陽電池モジュール1の使用可能な外径寸法に応じた反りYの上限と下限を最小自乗法による一次式によって設定してその範囲内に納まるように、透光性基材2と裏面電極型太陽電池セル5の材質や厚さを規定するとともに、絶縁基材3の弾性率Eと熱膨張係数αとの積Xによる伸び縮みし易さをパラメータとした。
【0046】
そして、(1)、(2)式の範囲内に規定することで太陽電池モジュール1全体の反りYを故障の生じない程度に低減できるようにした。また、同時に(1)、(2)式に関連して、太陽電池モジュール全体の信頼性を維持できる程度の反りYの上限と絶縁基材3の伸び縮みし易さXの上限を(3)式によって規定した。
また、太陽電池モジュール1の反りYを一層好ましい範囲に低減させるためには、反りYと伸び縮みし易さXを(4)式の範囲に収めることが好ましい。
【0047】
次に、本実施形態による太陽電池モジュール1の製造方法について、図3に基づいて説明する。
まず、ガラス繊維にエポキシ樹脂を含浸させた市販のプリプレグ材料を加熱硬化させて、絶縁基材3を得る。
【0048】
次に、裏面電極型太陽電池セル5の裏面電極5aと電気配線と8を、導電性接着剤10を用いて接続する。導電性接着剤10の塗布方法としては、例えばスクリーン印刷、ディスペンス、転写などの方法を適用することができる。その際、容易に所望の形状にできることから、銀、銅、錫、半田よりなる群から選ばれる1種以上の金属を含有する導電性接着剤を用いることが好ましい。さらに、裏面電極型太陽電池セル5の裏面電極5aと導電性接着剤10とをより容易に電気的に接続させることができる点では、電極5aの表面を酸、アルカリ、紫外線、プラズマなどにより洗浄し、導電性接着剤10の濡れ性を向上させる事が望ましい。
【0049】
次いで、絶縁基材3上に、封止用フィルム6A、裏面電極型太陽電池セル5、封止用フィルム6B、透光性基材2を裏面側から表面側へとこの順番で順次積層する。そして、これら絶縁基材3、封止用フィルム6A、裏面電極型太陽電池セル5、封止用フィルム6B、透光性基材2の積層体に加熱加圧処理を施す。
【0050】
これにより、絶縁基材3、封止用フィルム6A、裏面電極型太陽電池セル5、封止用フィルム6B、透光性基材2を密着させることで、封止層6内に裏面電極型太陽電池セル5及び電気配線8が封止された図1に示す太陽電池モジュール1が得られる。なお、この太陽電池モジュール1においては、裏面電極型太陽電池セル5と電気配線8とは、それぞれ絶縁基材3と接触することなく完全に封止層6内に封止され、また、電気配線8は全て同一平面上に配置される。
【0051】
このような本実施形態の太陽電池モジュール1によれば、次の作用効果を奏する。
a) 本実施形態による太陽電池モジュール1において、熱による太陽電池モジュール1の反りY(単位μm)は、透光性基材2と裏面電極型太陽電池セル5の材質や厚さを規定するとともに、さらに絶縁基材3の弾性率Eと熱膨張係数αの積Xで規定される伸び縮みし易さをパラメータとして、(1)式と(2)式により規定できるから、太陽電池モジュール1の反りYを絶縁基材3の物性値である伸び縮みし易さによって抑制することができる。
【0052】
b) また、絶縁基材3として網目状のガラスエポキシ樹脂からなる単層のガラスクロスまたはこのガラスクロスに絶縁樹脂を含浸させたものを用いたから、従来、絶縁樹脂として用いていたPETフィルムやPENフィルム等の高分子フィルムと比較して、線膨張係数がガラスパネル等の透光性基材2やシリコン等の裏面電極型太陽電池セル5に近くなるため、太陽電池モジュール1の反りが少なくなる。
【0053】
c) また、絶縁基材3の膜厚を20μm〜300μmまたは20μm〜3000μmの範囲の薄層に形成したから、裏面電極型太陽電池セル5の熱が表面側から裏面側に伝達されて放熱効果が高く表裏面の温度差が小さいために反りを生じにくく、スタッドバンプ10等のための穴開け等の加工が容易である。
【0054】
d) さらに、透光性基材2と絶縁基材3との間に配列された裏面電極型太陽電池セル5は、複数の裏面電極型太陽電池セル5を千鳥状に配列したから、セル5とセル5の間隙Gに生じ得る応力を六方向に分散させることができる。しかも、裏面電極型太陽電池セル5を六角形に形成することで、セル5とセル5の間の間隙Gを最小化することができて発電効率を向上できる。
【0055】
e) また、裏面電極型太陽電池セル5と絶縁基材3が直接接続しておらず、個々の裏面電極型太陽電池セル5が同一平面上に配設された電気配線8により接続されているため、裏面電極型太陽電池セル5の設置自由度が増し、設置位置精度を緩和させることができる。これにより、裏面電極型太陽電池セルの製造分留りが向上する。
【0056】
f) さらに、絶縁基材3上に直接的に電気配線8及び裏面電極型太陽電池セル5が実装される構成ではないため、絶縁基材3に実装プロセス耐性が求められることはなく、当該絶縁基材3の材料選択の幅を広げることができる。また、絶縁基材3上において封止層6によって電気配線8及び裏面電極型太陽電池5を封止することのみをもって、これらを絶縁基材3上に固定することができるため、製造プロセスの簡略化を図ることができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、これらに限定されることはなく、多少の設計変更等も可能である。
例えば、変形例として、図5に示す構成の太陽電池モジュール11であってもよい。この変形例においては、絶縁基材3の裏面側、即ち、裏面電極型太陽電池セル5と反対側の面に太陽電池モジュール11の硬さを補強して、反りを一層低減するためのバックシート9が設けられている。
【0058】
この変形例の太陽電池モジュール11は、実施形態の太陽電池モジュール1の構成に加えて、絶縁基材3の裏面にバックシート9を取り付けられた構造をなしている。この場合、絶縁基材3とバックシート9との関係は、絶縁基材3の弾性率E×熱膨張係数αの積をパラメータXとして下記式(5)によって規定される。
X≧(バックシート9の弾性率F×熱膨張係数β) …(5)
【0059】
即ち、バックシート9を絶縁基材3よりも硬さを大きくして該絶縁基材3に被着し、絶縁基材3を含む太陽電池モジュール1のシート部分を伸び縮みしないようにすることで、太陽電池モジュール11全体の反りを抑制することができる。
【0060】
なお、上述の(5)式においては、絶縁基材3の弾性率E×熱膨張係数αの積Xがバックシート9の弾性率F×熱膨張係数β以上であることを要件としているが、バックシート9は少なくとも下記式(6)を満足すればよい。
0.9×X≧バックシート14の弾性率F×熱膨張係数β …(6)
これにより、太陽電池モジュール11の反り抑制効果を上述の実施形態による太陽電池モジュール1よりもさらに向上させることができる。
【0061】
なお、図5において、バックシート9としてはバリア層を設けることが好ましい。このバリア層は絶縁基材3の裏面に設けて空気透過を調整する層であり、水蒸気バリア性、酸素バリア性等の耐候性やや絶縁性を有する例えばフッ化ビニル樹脂(PVF)フィルム(商品名「テドラー」;登録商標)が用いられている。
【0062】
また、この他バリア層として、フッ化ビニル樹脂と同様な特性を有する他の樹脂フィルムを用いても良い。即ち、ポリエステル系フィルム(またはポリアミド系フィルム)の片面にガスバリア層としてガスバリア性の高い酸化アルミナ(またはシリカ)を設けた構成を有するセラミック蒸着フィルム(「GLフィルム」;凸版印刷株式会社の商品名)を用いてもよい。
【0063】
さらに、バリア層として、ガスバリア性積層フィルム(「GXフィルム」;凸版印刷株式会社製の商品名)を用いてもよい。ガスバリア性積層フィルムは特許第4013604号公報に詳しく開示されている。バリア層の絶縁基材3とは反対側の面にPETフィルムを被着して積層してもよく、PETフィルムを積層することで耐スクラッチ性を向上させることができる。
【実施例】
【0064】
次に、図1に示す実施形態の太陽電池モジュール1を、透光性基材2と裏面電極型太陽電池セル5と絶縁基材3とを組み合わせた三層積層系として近似し(図4参照)、各構成の物性値を特定して全体の反りを実測してその特性を規定した。そして、上記(1)〜(4)式を導き出す根拠となる試験例1,2を行った。
【0065】
まず、透光性基材2として石英ガラスを用い、その厚さを2mm〜4mmの範囲に設定した。実施例として、透光性基材2の厚さは3.3mmとした。また、裏面電極型太陽電池セル5としてシリコンチップを用い、厚さ100μm〜300μmの範囲に設定した。
【0066】
絶縁基材3としてガラスエポキシ基材を用い、その膜厚を20μm〜300μmの範囲に設定した。実施例1として絶縁基材3の厚さは100μmと200μmの2種類とした。
絶縁基材3の比較例1、比較例2として、PETとPENを用いた。
絶縁基材3の実施例、比較例1、比較例2における弾性率E、線膨張係数αは表1に示す通りとした。
【0067】
そして、三層積層系からなる太陽電池モジュール1について、絶縁基材3として実施例1、比較例1、比較例2をそれぞれ用い、透光性基材2と裏面電極型太陽電池セル5は実施例1、比較例1,2で互いに同一構成のものを用いてそれぞれサンプルを製作した。絶縁基材3の実施例1と比較例1と比較例2の膜厚はそれぞれ100μmと200μmの2種類とした。これら絶縁基材3の実施例1と比較例1と比較例2をそれぞれ備えた三層積層系である太陽電池モジュール1についても実施例1、比較例1、比較例2というものとし、各部材は互いに同一寸法で形成した。
【0068】
[試験例1]
試験例1では、実施例1、比較例1、2における光性基材2の寸法は外径寸法4×4インチ(10cm×10cm)とした。実施例1、比較例1、2における裏面電極型太陽電池セル5は、縦100mm×横100mm×厚さ200μmとした。
また、絶縁基材(ガラスエポキシ樹脂、PET、PENを含む)の寸法は透光性基材2と同様に外径寸法4×4インチ(10cm×10cm)とし、厚さは100μmと200μmの2種類とした。参考例1〜6として、絶縁基材に用いた従来技術によるPENフィルムの弾性率Eと熱膨張係数αのいずれか一方または両方を2倍、1/2倍にしたものも用いた。試験条件として、実施例、比較例1、2、参考例1〜6における各太陽電池モジュール1の表裏面の温度差100℃とし、各絶縁基材3の厚み100μm、200μm毎に各太陽電池モジュール1の反りを測定した。
なお、太陽電池モジュール1の反りは中心位置に対する太陽電池モジュール1の径方向に直交する方向の端部までの距離によって測定した。
その結果を表2に示す。
【0069】
【表2】

【0070】
表2に示す結果のデータを、図6(a),(b)のグラフに示す。図6(a)では、実施例1、比較例1,比較例2について、横軸に絶縁基材3(ガラスエポキシ樹脂、PET、PENを含む)の各弾性率×熱膨張率をとり、縦軸に太陽電池モジュール1の反り(μm)をとり、絶縁基材3の厚み100μm、200μm毎にプロットした。
図6(a)において、絶縁樹脂3の膜厚100μmの場合、各プロットを最小自乗法による一次式である最小自乗直線で接続すると、次の式(6)にまとめることができる。
Y=0.214X+127.1 …(7)
但し、Y:太陽電池モジュール1の反り
X:絶縁樹脂3の弾性率Eと熱膨張係数αの積
また、絶縁樹脂3の膜厚200μmの場合、各プロットを直線で接続すると、次の式(8)にまとめることができる。
Y=0.428X+127.1 …(8)
【0071】
また、図6(b)では、横軸に絶縁基材(ガラスエポキシ樹脂、PET、PEN)の弾性率×熱膨張率×の厚さをとり、縦軸に太陽電池モジュール1の反り(μm)をとり、絶縁基材の厚み100μm、200μmの場合の太陽電池モジュール1の反りをそれぞれプロットした。横軸に絶縁基材の弾性率×熱膨張率×厚さをとることで、太陽電池モジュール1の反りは絶縁基材の膜厚の大きさに関わらず次の一次式にまとめることができる。
Y=2.14X+127.1 …(9)
【0072】
[試験例2]
次に試験例2について説明する。
試験例2では、実施例2として絶縁基材3にガラスエポキシ樹脂を用い、太陽電池モジュール1の外径寸法を5×5インチ、6×6インチ、8×8インチ、12×12インチの円板型とし、石英ガラスを用いた透光性基材2、絶縁基材3も同一寸法とした。透光性基材2の厚さは表1に記載されたものを用い、絶縁基材3の厚さは25μmと3000μmの2種類とした。シリコンを用いた裏面電極型太陽電池セル5の寸法は試験例1と同様とした。参考例7、8、9として、絶縁基材3の弾性率Eと熱膨張係数αの一方または両方を1/2倍にしたものを用いた。
【0073】
試験例2における裏面電極型太陽電池セル5の寸法は、実施例2、参考例7、8、9共、厚さ200μmであり、外径寸法は、120mm×120mm、150mm×150mm、200mm×200mm、300mm×300mmの4種類とした。
試験条件として、実施例2、参考例7、8、9における各太陽電池モジュール1の表裏面の温度差100℃とした。そして、各絶縁基材3の外径寸法毎に厚さ25μm、3000μmに応じて各太陽電池モジュール1の反りを測定した。
その結果を表3に示す。
【0074】
【表3】

【0075】
表3に示す結果のデータを、太陽電池モジュール1の外径寸法毎に図7(a),(b),(c),(d)のグラフに示す。各グラフにおいて、横軸を絶縁基材3の弾性率E×熱膨張係数αとし、縦軸を太陽電池モジュール1の反りとして、絶縁基材3の厚さ25μm、3000μm毎に反りの大きさをプロットした。
【0076】
絶縁基材3の厚さ3000μmでは、弾性率Eのみ1/2倍とした場合と熱膨張係数αのみ1/2倍とした場合とで反りYの値が大きく異なる(表3、図7(a)〜(d)参照)。絶縁基材3の厚さが透光性基材2と同等になると、絶縁基材3の弾性率E×熱膨張係数αは良いパラメータではなくなる。そのため、試験例1と同様に最小自乗直線を各図中に記入した。絶縁基材3の弾性率Eが0に近づくと厚さ25μm、3000μmとも同じ反り値と近似するはずであるから、厚さ3000μmの最小自乗直線は下記のように変更した。
即ち、まず厚さ25μmの最小自乗直線を引き、そのy軸切片を求める。そして、厚さ3000μmで厚さ25μmの直線のy軸切片を通過する最小自乗直線を求めた。
【0077】
上述の手順により、実施例2、参考例7,8,9について、絶縁基材3の厚さ25μm、3000μm毎にそれぞれプロットして直線を引くと、図7(a)〜(d)に示す一次式にまとめることができる。
最も小さい外径寸法5インチの太陽電池モジュール1では、反りの絶対量が最も小さく、特に最も小さい厚み25μmの絶縁基材3では次の一次式(10)にまとめることができる。
Y=0.0324X+83.69 …(10)
また、最も大きい外径寸法12インチの太陽電池モジュール1では、反りの絶対量が最も大きく、特に最も大きい厚み3000μmの絶縁基材3では次の一次式(11)にまとめることができる。
Y=12.88X+521.7 …(11)
【0078】
そのため、上述した外径寸法の範囲を有する太陽電池モジュール1は、絶縁基材3の弾性率Eと熱膨張係数αとの積Xに関連して上記(10)式と(11)式で示す範囲内に反りYが納まるように反りYの範囲を規定できる。これを下記の式(1)、(2)で示すことができる。
Y≦12.88X+521.7 …(1)
Y≧0.0324X+83.69 …(2)
【0079】
ここで、太陽電池モジュール1の反りは、最大1000μm(Y≦1000μm)であれば太陽電池モジュール1の信頼性を確保できる。700μm以下であればさらに好ましい(Y≦700μm)。また、絶縁基材3における弾性率Eと熱膨張係数αの積Xは、ガラスクロスに含浸される絶縁樹脂であるエポキシ系、ポリイミド系、ビスマレイドトリアジン系の樹脂等の数値を考慮すると、700以下とする(X≦700μm)必要がある。好ましくは300以下とする(X≦300μm)。
【符号の説明】
【0080】
1 太陽電池モジュール
2 透光性基材
3 絶縁基材
5 裏面電極型太陽電池セル
5a 裏面電極
6 封止層
8 電気配線
9 バックシート(バリア層)
10 導電性接着剤
11 太陽電池モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基材と、
該絶縁基材の表面側において複数並設された裏面電極型太陽電池セルと、
各前記裏面電極型太陽電池セルの裏面電極を略同一平面内で接続する電気配線と、
絶縁基材の表面に積層され、前記裏面電極型太陽電池セルと前記電気配線とを前記絶縁基材に対して離間状態に封止する封止樹脂と、
前記封止樹脂の表面に積層された透光性基材と、を備え、
前記透光性基材は厚さ2mm以上4mm以下の酸化珪素からなり、
前記裏面電極型太陽電池セルは厚さ100μm以上300μm以下の結晶系裏面電極型太陽電池セルからなり、
下記(1)、(2)及び(3)式を満たすことを特徴とする太陽電池モジュール。
Y≦12.88X+521.7 …(1)
Y≧0.0324X+83.69 …(2)
Y≦1000,X≦700 …(3)
但し、Y:太陽電池モジュールの反り
X:絶縁基材の弾性率と熱膨張係数の積
【請求項2】
下記(4)式を満たすことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール。
Y≦500,X≦300 …(4)
【請求項3】
前記絶縁基材の膜厚は、20μm以上3000μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記絶縁基材は、ガラス繊維の絶縁樹脂を含浸させた構造をなしていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記絶縁基材の裏面側にバックシートが積層されており、該バックシートが下記(5)式を満たすことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
X≧(バックシートの弾性率×バックシートの熱膨張係数) …(5)
【請求項6】
前記バックシートが下記(6)式を満たすことを特徴とする請求項5に記載の太陽電池モジュール。
0.9X≧(バックシートの弾性率×バックシートの熱膨張係数) …(6)
【請求項7】
前記裏面電極型太陽電池セルが平面視にて千鳥状に配列されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項8】
前記裏面電極型太陽電池セルが平面視にて六角形状をなしていることを特徴とする請求項7に記載の太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−216779(P2011−216779A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85376(P2010−85376)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】