説明

太陽電池モジュール

【課題】AL層を内部に介在させているカバーフィルムと棒状のモジュール支持部材とを接着剤にて固定した太陽電池モジュールにおいて、カバーフィルムのAL層とモジュール支持部材との間での放電リスクを低減し、絶縁性を高める。
【解決手段】モジュール支持部材と、カバーフィルムとが、2個以上離散的に配置されてなる2mm以上の厚みを有し少なくとも1つの面に粘着材が配置されてなる面状のスペーサーによって確実に離間されてなり、かつ、互いに対向する面の間の面状のスペーサー以外の少なくとも一部分で接着剤を介して互いに接着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の薄膜系の太陽電池モジュールは、モジュール面積の大面積化に伴い、力学的な強度及び耐候性を持たせるべく、枠体にはめ込まれた状態で使用される。この場合、太陽電池モジュールの強度を維持するために、枠体の板厚を増加させたり、モジュール構成部材の厚みを増加させたり、特殊な強化ガラスなどを用いる手法が用いられているが、全体の重量増加や構成部材のコスト増加といった問題があった。また、必要な強度を得るために、太陽電池モジュールの表面基板の厚みを増やすと、入射光量の減少により光電変換効率が低下するといった問題もあった。
【0003】
そこで、このような問題を解消し、太陽電池モジュールの構成部材の厚みをほとんど増やすことなく、太陽電池モジュールの力学的強度を維持する手法が従来から提案されている。
【0004】
例えば特許文献1に記載のような従来の太陽電池モジュールは、太陽電池モジュール本体と、太陽電池モジュール本体の周囲を保持する枠体と、この枠体に両端部が固定されたモジュール支持部材とで構成されている。モジュール支持部材の底面と太陽電池モジュール本体の裏面とが接着剤、あるいは、基材を用いた接着部材(すなわち両面テープのようなもの)によって接着固定されている。
【0005】
すなわち、従来の太陽電池モジュールは、モジュール支持部材を設けることで、太陽電池モジュールの構成部材の厚みをほとんど増やすことなく、太陽電池モジュールに必要な強度を保持できる構成となっている。
【0006】
例えば特許文献2に記載のような従来の太陽電池モジュールにおいては、[0020]や特許文献2の図5において、太陽電池パネルの外縁部にフレームを取り付けた中間組立体に裏面側から補強フレームを挿入するような太陽電池モジュールが記載されている。特許文献2の図6は、挿入した補強フレームを回転させて固定位置に移動させる様子が示されている。特許文献2の図7は、挿入した補強フレームを回転させて固定位置に移動させる様子が示されており、特許文献2の図6の一点鎖線にて囲まれた部分の拡大図なども記載されている。特許文献2の図7の19aなどのパネル側壁の上に補強フレームを配置している構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−34417号公報
【特許文献2】特開2011−114035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような構造の太陽電池モジュールにおいて、太陽電池モジュールの裏面側に配置されているカバーフィルムは、防湿性確保のために、例えばポリエステルフィルム/アルミニウム(AL)/ポリエステルフィルムの3層構造となっている。すなわち、ポリエステルフィルムだけでは、付着する水滴の浸入は防止できても水蒸気の浸入は防止できないため、水蒸気の浸入を防止できる金属層(防水層)であるAL層を内部に介在させている。そのため、モジュール支持部材の底面とカバーフィルムのAL層とが非常に接近した状態で配置されることになる。
【0009】
一方、このような太陽電池モジュール本体の裏面側に接着されるモジュール支持部材は、強度を確保するためにAL、SUS等の金属材料によって形成されている。そのため、高電圧がセルに印加されたときモジュール支持部材とカバーフィルムのAL層との間で放電が発生する場合がある。そのため、この間の絶縁を高める必要があった。この場合、上記接着剤シリコーン樹脂を用いると、このシリコーン樹脂が絶縁材料として機能できるが、この絶縁が悪い場合には、絶縁試験を行うと、放電が発生する可能性があった。先行文献1によると接着剤付きモジュール支持部材をカバーフィルムに接着する時に、接着圧が不均衡にかかった場合、接着厚みが一定に保持できない問題がある。そのためモジュールに高電圧を印加した時にモジュール支持部材とカバーフィルムのAL層との間で放電する可能性がある。
【0010】
例えば、前記の特許文献1では、接着剤あるいは基材を用いた接着部材(すなわち両面テープのようなもの)が支持部材とカバーフィルムとの間に存在するが、太陽電池を設置した状態で、支持部材がたわむなどによって、支持部材とカバーフィルムとが接する、あるいは接するに等しい、ような場合も有り、その場合、放電する可能性は有る。また接着剤のみを用いた場合、規定厚みが保持されているかを確認する検査工程が別途必要となり手間が増える。
【0011】
また前記の特許文献2でも、特許文献2の図7の19aなどのパネル側壁の上に補強フレームを配置している構成が開示されているが、太陽電池を設置した状態で、補強フレームがたわむなどによって、補強フレームとカバーフィルムとが接するような場合も有り、その場合、放電する可能性は有る。
【0012】
本発明は、前記のような、支持部材がたわむなどによって、支持部材とカバーフィルムとが接するような場合を発生させないことを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明ではこれらの問題点を解決するためにモジュール支持部材とカバーフィルムとを接着剤にて固定する際に、さらに、一定厚みのスペーサーを2以上好ましくは3以上配置することにより、放電リスクを低減し、絶縁性を高めた太陽電池モジュールを提供することにある。
【0014】
上記課題を解決するため、本発明の太陽電池モジュールは、表面基板と、太陽電池セルと、充填材と、カバーフィルムとが順次積層された太陽電池モジュール本体の前記カバーフィルムに、1または複数のモジュール支持部材が接着剤により接着された構造の太陽電池モジュールにおいて、前記モジュール支持部材の前記カバーフィルムを接着剤により固定するために、接着剤に加えて、さらに、一定厚みのスペーサーを2以上好ましくは3以上配置することを特徴としている。
【0015】
スペーサーはアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系発泡樹脂、ペット樹脂などにて構成されている。両面もしくは片面にはアクリル系もしくはエポキシ系の粘着材が塗布されており、モジュール支持部材の任意の形状で任意の位置に設置できる。厚みは2.0mm以上のものが好ましい。例えば3.0mmのものがある。
【0016】
また、本発明に使用されるスペーサー付き前記モジュール支持部材はカバーフィルムとは接着剤で接着され、またモジュール支持部材の両端は周囲の枠体とネジにより固定されている。
【0017】
ネジで固定されるときに回転方向に傾く可能性がある。そのためスペーサーを使用することにより、モジュール支持部材とカバーフィルムとの距離が均一に保持され絶縁性を高めることができる。
【0018】
支持部材(モジュール支持部材、補強桟)の両端には切り欠き部分が有り、金属面が露出している。そのためモジュールに高電圧を印加するとバックシート内のAL箔と切り欠き間で放電する可能性がある。そこでスペーサーにて一定距離を保持すれば切り欠き部分があっても絶縁性を高めることが出来る。
【0019】
本発明の第1は、「略四角形の透明基板と、太陽電池セルと、充填材と、カバーフィルムとが順次積層されてなり少なくとも前記充填材の端部とカバーフィルムの端部とが端部封止材によって封止されてなる略四角形の太陽電池パネルと、
前記太陽電池パネルの周囲を保持する1以上の部材からなる略四角形状の枠体と、
前記略四角形状の枠体の4辺のうち対向する2辺の間に渡設され固定されてなる1以上の棒状の支持部材と、
前記支持部材と前記カバーフィルムとを離間するスペーサーと、
を備える太陽電池モジュールであって、
前記棒状の支持部材の長手方向に垂直な断面が、四角形、三角形、多角形、H字型、T字型、I字型、円形、楕円形及び不定形からなる群から選択される1以上であり、前記スペーサーは2mm以上の厚みを有し少なくとも1つの面に粘着材が配置されてなる面状のスペーサーであり、
前記棒状の支持部材のカバーフィルムと対向する面には前記棒状の支持部材の長手方向に対して2個以上離散的に配置されてなる前記面状のスペーサーを備え、
前記支持部材と前記カバーフィルムとは前記2個以上離散的に配置されてなる面状のスペーサーによって、前記支持部材の長手方向の全域に渡って離間されてなり、
前記棒状の支持部材と前記カバーフィルムとは互いに対向する面の間の前記面状のスペーサー以外の少なくとも一部分で接着剤を介して互いに接着されてなる、太陽電池モジュール」、である。この構成によって、支持部材とカバーフィルムとは支持部材の長手方向の全域に渡って離間されることとなり、放電の可能性が無くなる。
【0020】
本発明は、また、「前記2個以上とは、3個以上である、前記の太陽電池モジュール」である。この構成によって、面状のスペーサーの使用量(使用長さ)を減らすことも可能となる。例えば面状のスペーサーの支持部材の長手方向における、スペーサーの合計使用長さに着目した場合、2個のスペーサーで例えば合計6割(3割と、3割)の長さを占めていた面状のスペーサーを、3個のスペーサーで合計4割(1割と、2割と、1割)とすることも、可能となる。このように、スペーサーを3個以上とすることによって、スペーサーの使用量(使用長さ)を減らすことも可能となるため、これに伴い、面状のスペーサーのコストを削減することも、可能となる。なお、本発明において、「1個以上のスペーサー」とせずに「2個以上のスペーサー」としている理由の一つは、1個のスペーサーではスペーサーの使用長さを長くする必要が高まりコストアップにつながると予想されるためである。
【0021】
本発明は、また、「前記スペーサーが前記棒状の支持部材のカバーフィルムと対向する面において長手方向に対して3個以上離散的に粘着されて配置されてなる位置は、少なくとも前記支持部材の略中央部と略両端部であることを特徴とする、前記の太陽電池モジュール」、である。この構成によって、いかなる外力が加わって、支持部材がたわむような事が有ったとしても、支持部材とカバーフィルムとは支持部材の長手方向の全域に渡って離間されることとなり、放電の可能性が無くなる。
【0022】
本発明は、また、「前記スペーサーは基材層と粘着材層とにより構成されており、前記基材層の両面または片面に粘着材層を有することを特徴とする、前記の太陽電池モジュール」、である。この構成によって、スペーサーを確実に、支持部材に配置することができる。
【0023】
本発明は、また、「前記スペーサーの厚みは2mm以上3mm以下である、前記の太陽電池モジュール」、である。この構成によって、支持部材がたわむような事が有ったとしても、支持部材とカバーフィルムとは支持部材の長手方向の全域に渡って離間されることとなり、放電の可能性が、さらに低減される。
【0024】
本発明は、また、「前記スペーサーは、前記基材層がアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系発泡樹脂、及びペット樹脂からなる群から選択される1以上からなり、前記粘着材層がアクリル系粘着材又はエポキシ系粘着材からなるものであることを特徴とする、前記の太陽電池モジュール」、である。この構成によって、市販で入手可能性が高いにも関わらず、従来とは飛躍的に放電の可能性が低減された太陽電池モジュールを提供することが、できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、モジュール支持部材をカバーフィルムに接着する時に使用するスペーサーの厚みを2mm以上にすることにより、モジュールに高電圧を印加したときモジュール支持部材とカバーフィルム中のAL箔間との絶縁性を高めることができる。
【0026】
本発明は、裏面カバーフィルムを備える太陽電池モジュールの強度を高めるための、棒状の支持部材の取付けられ方を特徴とする発明であって、支持部材と裏面カバーフィルムとの間に一定のスペースを設けて離間させることにより、太陽電池モジュールの耐絶縁性を向上させることができる。
【0027】
近年、太陽電池モジュールを設置する単位面積当たりの発電効率を高めることやコスト削減などの観点から、太陽電池モジュールの面積が増大化しており、裏面に棒状の支持部材が設けられるものも散見される。しかしながら、カバーフィルムと支持部材とを備える太陽電池モジュールにおいて、カバーフィルム中の金属と支持部材の金属との間で、絶縁性が確保し難い場合が有るという課題が有った。
【0028】
本発明は、裏面カバーフィルムと棒状の支持部材との間に、接着剤を配置し、かつ、2以上好ましくは3以上の面状のスペーサーを配置することによって、積極的にスペースを設けて離間させるものである。民生用電機製品で求められる徹底的なコストダウンの要請に反して、本発明では2以上好ましくは3以上の面状のスペーサーを採用することによって部材点数を増やしその貼り付けに工数を要するため、一見コストアップの方向となる。
【0029】
従来、接着剤、あるいは、基材を用いた接着部材(すなわち両面テープのようなもの)は使われていたが、これらを併用し、かつ、面状のスペーサーを2以上好ましくは3以上用いるとの思想は従来技術には無く、これらの併用は材料費や工数が増大する方向であることが予想されるため、これらを併用して採用することには、当業者には阻害要因が有り、容易には想到できない。
【0030】
この阻害要因を克服して、本発明の構成にすることによって、簡便な構造であるにも関わらず、接着剤によって耐候性を発揮し、2以上好ましくは3以上の面状スペーサーによってカバーフィルムと支持部材とを確実に離間させることができるという、絶縁性向上において極めて著しい効果を発現する。
【0031】
太陽電池モジュールの面積の増大化は今後も続くと考えられ、本発明は、簡便な構造にて著しい効果を発現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例1に係る太陽電池全体を背面図である。
【図2】本発明の実施例1に係る支持部材(モジュール支持部材)のA-A断面図である。
【図3】本発明の実施例1に係る支持部材(モジュール支持部材)のB-B断面図である。
【図4】本発明の実施例1に係るスペーサーの貼付箇所を示す図である。
【図5】本発明の実施例1に係る接着剤の塗布形状の上面図である。
【図6】本発明の実施例1に係る接着剤の塗布形状の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明において、前記支持部材と前記カバーフィルムとは当該3個以上配置されたスペーサーによって離間されており、かつ、前記モジュール支持部材と前記カバーフィルムとは接着剤を介して互いに接着されている。
【0034】
本発明の実施の形態を説明する。但し、本実施形態に記載された構成部品の種類、形状、その相対配置等は、本発明の範囲をそれのみに限定するものではなく、本発明の思想に基づいて適宜に変更可能である。
【0035】
ガラス基板上に直接薄膜太陽電池セルが形成されている。ガラス基板上の薄膜太陽電池セルの周囲の薄膜は除去されている。さらに薄膜太陽電池セルが充填材と、バックカバーとによって封止され薄膜太陽電池パネルを構成している。薄膜太陽電池パネルの周縁部には端部封止材が接着塗布され、ガスケットを介してAL等の枠体に組み込まれている。これを太陽電池モジュールとする。
【0036】
ガラスの材質としては、青板ガラスまたは鉄分を除いた赤外領域の光透過性を改善した白板ガラスが用いられる。ただしこれらに限定されるものではない。価格的には高価になるが、半導体に悪影響を及ぼす不純物を含まないホウケイ酸ガラスや石英ガラスなどが信頼性を得る上では好ましい。
【0037】
これらのガラスは一般的に強化ガラスもしくは通常のガラスを用いる場合がある。太陽電池モジュールの強度を維持するためには、強化ガラスで3mm、通常ガラスで5mm程度の厚みのものを用いる。一般的にガラスの切断面には微小なクラックがあり、面内に比べ強度が低くはまかけ(ハマ欠け:貝殻のような形状をした「欠け」が、主に端面部や、板であれば角にできる現象)が起こりやすい。R面とりやC面取りを行うことによりガラス(端部)の強度を上げている。(これらのガラスの表面に半導体への不純物の拡散を防止する目的で酸化ケイ素を100nm程度形成した後、SnOあるいはZnOなどの透明導電膜を形成する。透明導電膜の厚みは100nmから1000nmの間であり、導電率や材料の結晶性を応用した凹凸の程度、さらには透明導電膜の光透過率を考慮して適宜厚みを設計する。好適な一例として透明導電膜を形成したガラスの表面導電率は10Ω/□以下、透過率は80%以上、凹凸のヘイズ率は10%以上である。
【0038】
透明電極付のガラス基板は、レーザ加工により素子形状にパターン化される。この加工した基板の上にはPN接合、PIN接合をもつ半導体が形成されている。この単位を太陽電池セルと呼び太陽電池セルの種類は、アモルファスシリコン、薄膜多結晶シリコンあるいはゲルマニウムの化合物などが良く知られている。その他にも本発明が適用されるものとしては、CdS/CdTe、CIS、CIGSなどの化合物半導体が知られているがこれらに限定されるものではない。また、太陽電池セルは一層のみではなく、複数の太陽電池セルを積層したものも考えられる。
【0039】
半導体層をレーザ加工などでパターン化した後に、裏面電極を形成する。裏面電極には数十nmのZnO等の反射層と10nm程度の反射金属が積層され、半導体/裏面電極界面の反射率が高いものが用いられる。同じく、裏面電極はレーザ加工でパターン化されてガラス基板上の発電素子が形成される。
【0040】
通常において大面積の太陽電池においては100段程度のセルが直列接続され、電圧として80Vから150V程度となる。
【0041】
これらの薄膜は、一般的に化学気相堆積法(CVD法)にて順次各層が形成され、積層構造になっており、ガラス基板の周辺部を含んで全面に形成される。太陽電池モジュールで発生した電力の電圧は、一枚の太陽電池モジュールで100V前後に及ぶ場合があり。漏電の危険性があるために、ガラス基板の縁の部分から、所定の幅で、透明電極、半導体、裏面電極の全層を除去した領域を設けることで、ガラス基板の中側にて発生した電力をガラス基板の周縁と絶縁する。
【0042】
ガラス基板上に形成された薄膜太陽電池セルは、銅条(リード)で配線され、充填材とバックカバーで封止・保護される。
【0043】
充填材としては、EVA、PVB、アイオノマーが用いられている。カバーフィルムとしては、PVF、PVDF、ETFEのようなフッ素樹脂系フィルムとAL等からなる金属箔や無機防湿膜をコートしたフィルムからなる防湿層そしてポリエステルフィルムのような絶縁フィルムをドライラミネートした積層フィルムが好ましい。
【0044】
ガラス基板の太陽電池セル形成面に、ガラス基板には充填材とカバーフィルムを、配線のためのリードを穴から通して重ねる。これを真空ラミネート装置にて、充填材を熱溶融・脱気した後、オーブンにて充填材を熱架橋させて、封止工程が行われる。
【0045】
封止したガラス基板の端部はカバーフィルム、充填材の断面が露出している。この断面から水分進入を阻止するために端部封止材が必要である。
【0046】
端部封止材の材料としては、水分の透過が充填材よりも少ないことが望ましく、完成した状態で水分の透過を抑制できる厚みで設置できる材料を使用することが望ましい。例えばブチルゴムがある。端部封止材の塗布方法としては、加熱等の方法により所定の粘度状態にした樹脂を、塗布速度に追随した吐出量に制御しながら、上記設置部に対応した形状のノズルをモジュール端部に沿わせながら塗布するディスペンス法が望ましい。
【0047】
塗布の始点・終点はモジュールを実際に屋外に設置するときの上辺部とする。また上辺部でも角部よりも辺部とすることが好ましい。降雨等でモジュールが水に濡れた場合でも、上辺は水にさらされる時間が最も少なく、継ぎ目からの水浸入の影響が少ないためである。
【0048】
更に、塗布の始点・終点以外では、ガラス基板の端部、特に充填材の露出部に密着して端面封止剤が塗布されることが重要である。
【0049】
そのためには、角部においてもノズルをガラス基板の端部から離すことなく樹脂を途切れさせることなく全周にわたり一筆書きで塗布することなどで実現される。
【0050】
上記工程でガラス基板の端部に端部封止材が設置された薄膜太陽電池モジュールの端部にはアルミニウムなどでできた枠体が取り付けられる。枠体には、排水口を設けられていることが望ましい。枠体のみでは風圧に耐えがたい場合が有るため、本発明では太陽電池モジュールの背面に枠体と同素材あるいは他の素材で出来た1又は2以上の支持部材(モジュール支持部材、補強桟)を、モジュール背面(パネル背面)とは接着剤により、枠体とはネジにより取り付ける。
【0051】
モジュール背面(パネル背面)に用いられる接着剤は、一般的にはシリコン系の接着剤が使用される。
【0052】
本発明のスペーサーは、面状であり、2mm以上の厚みを有し少なくとも1つの面に粘着材が配置されたものである。
【0053】
前記スペーサーは前記モジュール支持部材の長手方向に3個以上配置されている。
【0054】
本発明のスペーサーに用いられる粘着材は、例えばアクリル系粘着材がある。
【0055】
モジュールに高電圧が印加された場合、流動性のあるシリコン接着剤のみではモジュール支持部材とカバーフィルムとの間を一定に保つことが難しいため、接着剤の一部が薄くなり、モジュール支持部材とカバーフィルム中のアルミ箔との距離が短くなるため放電するリスクがある。より詳しく述べると特に薄膜太陽電池のガラス基板は、その上に形成された膜の内部応力あるいは充填材やカバーフィルムの収縮等の原因によりたわむ場合が有ることが知られている。そのため例えば支持部材(モジュール支持部材、補強桟)の中央部あるいは端部でカバーフィルムとの距離が近くなることが観察される場合が有る。また基材つきテープのみを使用した場合、モジュール支持部材とカバーフィルム間を一定に保つことは可能であるが、20年以上の長期にわたる耐候性が無いおそれが有る。
【0056】
これに対して本発明では、モジュール支持部材(補強桟)の長手方向に少なくとも3箇所(特に両端部と略中央部)にスペーサーを配置し、支持部材(モジュール支持部材)とカバーフィルムとを3個以上のスペーサーによって確実に離間させることができ、かつ、併用して接着剤を備え、モジュール支持部材とカバーフィルムとをモジュール背面にて互いに接着することによって、モジュール支持部材とカバーフィルムとの間を一定に保つことができるとともに、20年以上の長期にわたる耐候性が有る太陽電池モジュールを提供することができる。本発明の太陽電池モジュールは、高電圧が印加されても支持部材(モジュール支持部材、補強桟)とカバーフィルム内のアルミ箔との間で放電しない。また一定面積に接着剤を塗布することなどによって、モジュール支持部材とカバーフィルムとが接着剤を介することによって接着されているため、接着剤とスペーサーとを併用する本発明の太陽電池モジュールにおいては、長期耐候性を確保できる。
【0057】
薄膜太陽電池パネルは直接枠体に取り付けるのではなく、端部を覆う樹脂製のガスケットを介在させて枠体の溝に取り付けてもよい。
【0058】
枠体及び支持部材(モジュール支持部材)は通常ALあるいはその合金で作られており、表面はアルマイト処理層1層もしくは樹脂コート層との複合皮膜により覆われており、この枠体と太陽電池パネルのガラスとを直接に接触させた場合には、実際の使用環境において、太陽光を吸収して熱せられたガラス基板と枠体の温度差がガラス基板内の熱勾配となって部分的にガラスの膨張量に差異が生じ、ガラスが割れる熱割れの可能性がある。
【0059】
ガスケットは断熱により熱割れの問題を解消すると共に、ガラス基板への外部応力を緩和し、枠体の溝とガラス基板の間の応力の局所化を緩和する働きを有する。 また、枠体の溝とガスケットで太陽電池パネルを補強する構造としては、ガラス基板の端部を避けて補強する方法とコの字状で全体に支える場合とがある。
【0060】
端部封止材には、機械的な応力がかからないことが望ましい。特にガラス基板の端部から端部封止材を引き剥がす方向に応力が働くと封止面から端部封止材が剥離する可能性がある。その影響を防止するために、ガスケットと枠体の補強方法を工夫して端部封止材に他の部材が接触しない構造あるいは、ガスケットを枠体の溝の内部で特にガラス基板の端部において自在に動くようにしておくことが好ましい。
【0061】
ガスケットの材質としては、EPDM、熱可塑性エラストマー(商品例:サントプレン)などがある。
【0062】
端部封止材の性質としては、太陽電池モジュールが使用される際に到達する温度で流動しないことが望ましく、設置するために塗布する場合に装置を用いて粘度性液体になることが望ましい。また、枠体の溝内部で発生する応力に対して大きな変形が生じないとともに、ひび割れが生じない硬度であることが望ましい。
【0063】
材料の例としては、ブチルゴム、シリコーン樹脂やアクリル粘着材の群の材料の少なくとも一つがあげられる。
【0064】
水蒸気透過性の点では、ブチルゴム、アクリル粘着材は透過量が少なく望ましく、密着性ではシリコーン樹脂、ついでブチルゴムが優れる。しかしながら、シリコーンは水蒸気透過性では劣っており、これらの全ての観点で、ブチルゴムが優れている。ブチルゴムの性質は配合等により調整が可能であるが、使用温度で溶融せず、室温でタック性があるものの容易に変形しないことが望ましい。
【0065】
具体的には、軟化点が100℃以上230℃以下であり、タイプAディロメーターで測定した硬度が20〜100であるブチルゴムを使用することが望ましい。
【0066】
上述のように防水性樹脂を全周途切れなく塗布した場合でも、始点・終点で継ぎ目が1箇所できるが、ここにこの溶融の手法を適用すると全周で完全に継ぎ目をなくすことができるので、さらに好ましい。以上を実施例で説明する。本実施例は発明の形態を示すものであり、発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0067】
(実施例1)
図1は、本発明の太陽電池モジュール1を裏面側から見た図であり、本実施形態の太陽電池モジュール1を示す。太陽電池モジュール1本体は、太陽電池パネルと、周囲を保持する枠体2と、スペーサー3及び接着剤4がついた支持部材(モジュール支持部材)5が枠体に固定されることによって、構成されている。図1の6は、太陽電池パネルのカバーフィルムである。
【0068】
図2に支持部材(モジュール支持部材)5の断面図を示す。25mm×30mm×約1073mmの角パイプであり、支持部材(モジュール支持部材)の下側水平面と各側面との成す角部分は面取りをした形状7となっている。また支持部材の両端部には、枠体と支持部材とをネジ9で固定するためにネジ穴8が形成されている。
【0069】
カバーフィルム6としては支持部材側5からPVF/AL/ポリエステルフィルムを積層したものを使用した。角部分に尖った部分を無くすことにより、支持部材5とカバーフィルム6内のAL箔間の絶縁性を高めることが出来る。
支持部材5の両端は図3のように切り欠いた形状を示している。両端部には枠体2と固定するためにネジ穴8が形成されている。またガラス基板端部には端部封止材10がカバーフィルムの端部を覆うようにして塗布されている。
【0070】
図4に3個のスペーサー3の接着位置を示す。10mm×30mmスペーサー3(3個)は、支持部材5長辺(長手方向)に対して水平方向に貼り、略両端部に2個と、支持部材5中央部に1個、位置される。支持部材5長辺端部からスペーサー3までの寸法は15mmとする。支持部材5端部には25mm×32mm支持部材5のカバーフィルム6と接着される面に両面もしくは片面粘着のある厚み約2mmのスペーサー3を予め支持部材5の所定箇所に添付する。スペーサー3はアクリル系粘着材、アクリルフォーム、アクリル系粘着剤、はく離ライナーの積層体で構成されている両面テープ(例えば日東電工製のハイパージョイント)である。
【0071】
図5にモジュール支持部材5上に接着剤4を塗布した状態を示す。接着剤4は中央部に貼付したスペーサー3両側に塗布し、幅は約8mmになるように塗布する。図5に記載のように、本発明では3個以上の面状のスペーサー3と、接着剤4とを併用することに特徴が有る。
【0072】
図6に接着剤の塗布形状を示す。接着剤4の高さは約3.5mm、接着剤間隔(接着剤の塗布幅)は約4mmとする。モジュール支持部材とフィルム接着面中央部に最大幅4〜5mm程の未充填スペース11が発生し、モジュール支持部材とフィルム間のスペースに対しては、80%以上の充填率となるように塗布する。
【0073】
(実施例2)
本試験で用いる耐電圧試験は印加電圧に対してカバーフィルム中のポリエステルフィルムが十分な絶縁耐力があるかどうかまた絶縁破壊をしないかどうかを確認する試験である。十分な絶縁耐力がないとポリエステルフィルムが破損し、使用者生命の危険を脅かし、感電、火災、の事故が発生する危険がある場合が有る。本試験の国際的な規格としてInternational Electrotechnical Commission(以下IEC)61730-2の規格があり、これの10.6 Dielectric withstand test MST 16に基づき実施した。印加電圧は太陽電池システムの最大値により決定され次式(1)により定義される。
【0074】
印加電圧=2000V+4×最大システム電圧 (1)
本モジュールはシステム電圧600V仕様のため印加電圧は4400Vである。昇圧は500V/sで行い、最大値で1分間保持する。電圧の昇圧及び保持中に漏れ電流が50μA以下を合格とする。IEC規格以外にもUnderwriters Laboratories(以下UL)1703.26 Dielectric Voltage-withstand testにて同様の試験がある。耐電圧試験は菊水電子工業製のTOS9200で測定した。
【0075】
(実施例3)
本試験においては上記規格の約1.4倍の6000Vにて実施した。試験結果を下記表1に示す。スペーサーの厚みは1.3mm、1.6mm、2.0mm、3.0mmのものを使用した。結果、厚み1.3mm、1.6mmのものを使用した場合、放電があった。厚み2.0mm、3.0mmのものでは放電は無かった。適切なスペーサーとして、一例として、日東電工製のハイパージョイントを使用した。
【0076】
【表1】

【0077】
表1は、スペーサー厚みに対する放電有無を表す。
【0078】
(実施例4)
先行技術文献1(特許文献1)によるとモジュール支持部材をカバーフィルムに接着剤を用いて接着した時に、モジュール支持部材とカバーフィルムの間の接着剤はスペーサーを使用していないため接着圧が不均一にかかった場合、モジュール支持部材とカバーフィルム間距離が一定に保つことができない。そのため、電圧印加時に放電する危険性がある。先行技術文献1(特許文献1)ではスペーサーを使用しないため、モジュール支持部材とカバーフィルム間を一定厚みに保つためには多くの接着剤を使用しなければならない。そのため、接着剤の硬化に時間がかかり、作業工程に不要な時間が発生する。また湿気硬化型シリコーン接着剤を多く使用した場合、接着剤内部に未硬化な部分が発生し、十分な接着強度が得られない可能もある。
【0079】
そこで、実施例4では、支持部材のカバーフィルムと接着される面に両面もしくは片面粘着のある厚み2mmのスペーサーを予め支持部材の所定箇所に3以上、添付する。この実施例4では、接着剤が塗布された支持部材をカバーフィルムに接着する場合、3以上の面状のスペーサーを備える結果、支持部材に不均一に接着圧がかかってもスペーサーがあるため、支持部材とカバーフィルム間距離が一定に保つことができ、絶縁性を高めることができる。
【符号の説明】
【0080】
1 太陽電池モジュール
2 枠体
3 スペーサー
4 接着剤
5 支持部材
6 カバーフィルム
7 支持部材角部の面取りをした形状
8 ネジ穴
9 ネジ
10 端部封止材
11 未充填スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略四角形の透明基板と、太陽電池セルと、充填材と、カバーフィルムとが順次積層されてなり少なくとも前記充填材の端部とカバーフィルムの端部とが端部封止材によって封止されてなる略四角形の太陽電池パネルと、
前記太陽電池パネルの周囲を保持する1以上の部材からなる略四角形状の枠体と、
前記略四角形状の枠体の4辺のうち対向する2辺の間に渡設され固定されてなる1以上の棒状の支持部材と、
前記支持部材と前記カバーフィルムとを離間するスペーサーと、
を備える太陽電池モジュールであって、
前記棒状の支持部材の長手方向に垂直な断面が、四角形、三角形、多角形、H字型、T字型、I字型、円形、楕円形及び不定形からなる群から選択される1以上であり、前記スペーサーは2mm以上の厚みを有し少なくとも1つの面に粘着材が配置されてなる面状のスペーサーであり、
前記棒状の支持部材のカバーフィルムと対向する面には前記棒状の支持部材の長手方向に対して2個以上離散的に配置されてなる前記面状のスペーサーを備え、
前記支持部材と前記カバーフィルムとは前記2個以上離散的に配置されてなる面状のスペーサーによって、前記支持部材の長手方向の全域に渡って離間されてなり、
前記棒状の支持部材と前記カバーフィルムとは互いに対向する面の間の前記面状のスペーサー以外の少なくとも一部分で接着剤を介して互いに接着されてなる、太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記2個以上とは、3個以上である、請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記スペーサーが前記棒状の支持部材のカバーフィルムと対向する面において長手方向に対して3個以上離散的に粘着されて配置されてなる位置は、少なくとも前記支持部材の略中央部と略両端部であることを特徴とする、請求項2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記スペーサーは基材層と粘着材層とにより構成されており、前記基材層の両面または片面に粘着材層を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記スペーサーの厚みは2mm以上3mm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
前記スペーサーは、前記基材層がアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系発泡樹脂、及びペット樹脂からなる群から選択される1以上からなり、前記粘着材層がアクリル系粘着材又はエポキシ系粘着材からなるものであることを特徴とする、請求項4または5に記載の太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−46025(P2013−46025A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184934(P2011−184934)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】