説明

太陽電池封止材及びそれを用いた太陽電池モジュール

【課題】高い耐光性を有すると共に、耐湿熱性が向上することにより接着性に優れ、かつ、太陽電池封止材に含まれる樹脂の劣化を抑制することができる太陽電池封止材、並びに、該太陽電池封止材を有する太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】特定の構造を有する化合物(紫外線吸収剤)、樹脂及び特定の構造を有するシランカップリング剤を含有する太陽電池封止材、並びに、該太陽電池封止材を有する太陽電池モジュール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池封止材及びそれを用いた太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
次世代の電力供給方法として、太陽光を利用した太陽電池によって発電された電力を供給する電力供給方法が注目されている。太陽電池による発電は、CO排出削減の効果が望めるだけでなく、従来の電力供給方法とは異なり、電力をその場で作り、消費することができるため、送電ロスも極めて少なく抑えることができ、エネルギーを効率的に活用することができる。
【0003】
太陽電池は、電気を起こす最小単位である「セル(以下、“太陽電池セル”とも呼ぶ)」からなり、これを集積して「太陽電池モジュール(以下、モジュールということがある。)」を構成する。該「モジュール」は、太陽電池の発電効果を下げることなく、過酷な使用環境にも充分耐えうるよう、各種材料で封止する必要がある。
【0004】
前記封止に求められる機能としては、例えば、強度、耐熱性、耐光性、耐湿性などが挙げられる。屋上や屋根の上への設置が多いことを考えると、台風など強風時に風圧で損傷しないこと、雪や霜、雹などに耐えること、汚れがつきにくく、デザイン的にも優れたものであることなども求められている。
【0005】
太陽電池モジュールは、一般的にシリコン、ガリウム−砒素、銅−インジウム−セレンなどの太陽電池素子を上部透明保護材と下部基板保護材とで保護し、太陽電池素子と保護材とを封止材で固定し、パッケージ化したものである。
【0006】
例えば特許文献1は、吸湿性が少なく、酢酸発生の恐れのない太陽電池封止材として、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体をベースポリマーとし、これと有機過酸化物及び架橋助剤を含有する架橋性の樹脂組成物からなる太陽電池封止材を開示している。また特許文献2は、透明性、耐熱性、柔軟性などに優れた太陽電池封止材として、特定の非晶性又は低結晶性のα−オレフィン系共重合体からなる太陽電池封止材を開示している。しかしながら、特許文献1及び2の太陽電池封止材は耐光性が低く、その改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第07/094445号
【特許文献2】特開2006−210906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1及び2の太陽電池封止材は、耐光性が低く、その改善が求められていた。
本発明の目的は、高い耐光性を有すると共に、耐湿熱性が向上することにより接着性に優れ、かつ、太陽電池封止材に含まれる樹脂の劣化を抑制することができる太陽電池封止材を提供することにある。また本発明の別の目的は、該太陽電池封止材を有する太陽電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題について詳細に検討した結果、UV−A領域まで遮蔽効果を示し、これまでにない耐光性を有するトリアジン系化合物を、樹脂及び特定の構造を有するシランカップリング剤と共に太陽電池封止材に含有させることで本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の課題は、以下の手段によって達成された。
【0010】
〔1〕
下記一般式(1)で表される化合物、樹脂及び下記一般式(S1)で表されるシランカップリング剤を含有する太陽電池封止材。
【化1】

[R1a、R1b、R1c、R1d及びR1eは、互いに独立して、水素原子又はヒドロキシ基を除く1価の置換基を表し、置換基のうち少なくとも1つは、ハメット則のσp値が正である置換基を表す。また置換基同士で結合して環を形成しても良い。R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pは、互いに独立して、水素原子又は1価の置換基を表す。また置換基同士で結合して環を形成しても良い。]
【化2】

[Rはアルキル基を表す。Rは重合性基を有する基を表す。Rはアルキル基を表す。xは1〜3の整数であり、yは1〜3の整数であり、zは0〜2の整数であり、x+y+zは4である。]
〔2〕
前記重合性基が不飽和基である、上記〔1〕に記載の太陽電池封止材。
〔3〕
前記1価の置換基が、ハロゲン原子、置換又は無置換の炭素数1〜20のアルキル基、シアノ基、カルボキシル基、置換又は無置換のアルコキシカルボニル基、置換又は無置換のカルバモイル基、置換又は無置換のアルキルカルボニル基、ニトロ基、置換又は無置換のアミノ基、ヒドロキシ基、置換又は無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換又は無置換のアリールオキシ基、置換又は無置換のスルファモイル基、チオシアネート基、又は置換又は無置換のアルキルスルホニル基であり、前記1価の置換基が置換基を有する場合の置換基がハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルボニル基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、アリールオキシ基、スルファモイル基、チオシアネート基又はアルキルスルホニル基である、上記〔1〕又は〔2〕に記載の太陽電池封止材。
〔4〕
前記R1b、R1c及びR1dの少なくとも一つが、ハメット則のσp値が正である置換基である、上記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の太陽電池封止材。
〔5〕
前記ハメット則のσp値が正である置換基が、COOR、CONR、シアノ基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、ニトロ基及びSOMからなる群より選択される基である、上記〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の太陽電池封止材。ここで、R及びRは、互いに独立して、水素原子又は1価の置換基を表す。Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す。
〔6〕
前記ハメット則のσp値が正である置換基がCOOR、シアノ基又はトリフルオロメチル基である、上記〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の太陽電池封止材。ここで、Rは、水素原子又は1価の置換基を表す。
〔7〕
前記R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pが、水素原子である、上記〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の太陽電池封止材。
〔8〕
前記樹脂がエチレン系共重合体又はポリビニルアセタールである、上記〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の太陽電池封止材。
〔9〕
前記樹脂がエチレン系共重合体であり、該エチレン系共重合体がエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、又はエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体である、上記〔8〕に記載の太陽電池封止材。
〔10〕
更に、架橋剤を含有する、上記〔1〕〜〔9〕のいずれか1項に記載の太陽電池封止材。
〔11〕
更に、架橋助剤を含有する、上記〔1〕〜〔10〕のいずれか1項に記載の太陽電池封止材。
〔12〕
シート状である上記〔1〕〜〔11〕のいずれか1項に記載の太陽電池封止材。
〔13〕
上記〔1〕〜〔12〕のいずれか1項に記載の太陽電池封止材を有する太陽電池モジュール。
【発明の効果】
【0011】
本発明の太陽電池封止材は、長波長領域においても紫外線遮蔽効果を示し、耐光性を有する前記一般式(1)で表される化合物を、樹脂及び特定の構造を有するシランカップリング剤と共に含有することにより、高い耐光性を有すると共に、耐湿熱性が向上することにより接着性に優れ、かつ、前記樹脂の劣化を抑制することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の太陽電池モジュールの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
(太陽電池封止材)
本発明の太陽電池封止材は、後述の一般式(1)で表される化合物、樹脂及び後述の一般式(S1)で表されるシランカップリング剤を含有する。本発明の太陽電池封止材が、長波長領域においても紫外線遮蔽効果を示し、耐光性を有する一般式(1)で表される化合物を、樹脂及び特定の構造を有するシランカップリング剤と共に含有することにより、高い耐光性を有すると共に、耐湿熱性が向上することにより接着性に優れ、かつ、前記樹脂の劣化を抑制することが可能となる理由は定かではないが以下のように推測される。
一般式(1)で表される化合物は、長波長領域においても紫外線遮蔽効果を示し、耐光性を有する。また本発明の前記一般式(1)で表される化合物は、電子求引性基を有する化合物であるため、励起寿命が短く、高い耐光性を有している。そのため、前記樹脂の光による劣化を効果的に抑制することが可能である。また、一般式(S1)で表されるシランカップリング剤は重合性基を有するものであり、前記一般式(1)で表される化合物のように、電子求引性基の存在により、トリアジン環の塩基性が低下した化合物と共に含有されることにより、一般式(S1)で表されるシランカップリング剤の重合性基と、一般式(1)で表される化合物のヒドロキシル基との反応や相互作用が増す。そのため耐湿熱性が向上し、太陽電池セルや、ガラス及び樹脂などの保護材との接着性に優れたものになると考えられる。
まず、下記一般式(1)で表される化合物について説明する。
【0014】
〔一般式(1)で表される化合物〕
【0015】
【化3】

【0016】
[R1a、R1b、R1c、R1d及びR1eは、互いに独立して、水素原子又はヒドロキシ基を除く1価の置換基を表し、置換基のうち少なくとも1つは、ハメット則のσp値が正である置換基を表す。また置換基同士で結合して環を形成しても良い。R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pは、互いに独立して、水素原子又は1価の置換基を表す。また置換基同士で結合して環を形成しても良い。]
【0017】
1a、R1b、R1c、R1d、R1eは、互いに独立して、水素原子又はヒドロキシ基を除く1価の置換基を表し、置換基のうち少なくとも1つは、ハメット則のσp値が正である置換基を表す。
1a、R1b、R1c、R1d、R1eが表す置換基のうち1〜3個がハメット則のσp値が正である置換基を表すことが好ましく、1〜2個がハメット則のσp値が正である置換基を表すことがより好ましい。
またR1b、R1c及びR1dの少なくとも一つが、ハメット則のσp値が正である置換基であることが、耐光性の観点で好ましい。
ハメット則のσp値が正である置換基の具体例及び好ましい範囲は、後述の第一の態様で説明するものと同様である。
【0018】
前記一般式(1)における1価の置換基(以下Aとする)としては、例えば、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素数1〜20のアルキル基(例えばメチル、エチル)、炭素数6〜20のアリール基(例えばフェニル、ナフチル)、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル)、置換又は無置換のカルバモイル基(例えばカルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル)、アルキルカルボニル基(例えばアセチル)、アリールカルボニル基(例えばベンゾイル)、ニトロ基、置換又は無置換のアミノ基(例えばアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、置換スルホアミノ基)、アシルアミノ基(例えばアセトアミド、エトキシカルボニルアミノ)、スルホンアミド基(例えばメタンスルホンアミド)、イミド基(例えばスクシンイミド、フタルイミド)、イミノ基(例えばベンジリデンアミノ)、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基(例えばメトキシ)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ)、アシルオキシ基(例えばアセトキシ)、アルキルスルホニルオキシ基(例えばメタンスルホニルオキシ)、アリールスルホニルオキシ基(例えばベンゼンスルホニルオキシ)、スルホ基、置換又は無置換のスルファモイル基(例えばスルファモイル、N−フェニルスルファモイル)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ)、アリールチオ基(例えばフェニルチオ)、チオシアネート基、アルキルスルホニル基(例えばメタンスルホニル)、アリールスルホニル基(例えばベンゼンスルホニル)、炭素数6〜20のヘテロ環基(例えばピリジル、モルホリノ)などを挙げることができる。
また、置換基は更に置換されていても良く、置換基が複数ある場合は、同じでも異なっても良い。その際、置換基の例としては、上述の1価の置換基Aを挙げることができる。また置換基同士で結合して環を形成しても良い。
【0019】
置換基同士で結合して形成される環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピリダジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、シロール環、ゲルモール環、ホスホール環等が挙げられる。
【0020】
前記一般式(1)における1価の置換基としては、ハロゲン原子、置換又は無置換の炭素数1〜20のアルキル基、シアノ基、カルボキシル基、置換又は無置換のアルコキシカルボニル基、置換又は無置換のカルバモイル基、置換又は無置換のアルキルカルボニル基、ニトロ基、置換又は無置換のアミノ基、ヒドロキシ基、置換又は無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換又は無置換のアリールオキシ基、置換又は無置換のスルファモイル基、チオシアネート基、又は置換又は無置換のアルキルスルホニル基であり、前記1価の置換基が置換基を有する場合の置換基がハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルボニル基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、アリールオキシ基、スルファモイル基、チオシアネート基又はアルキルスルホニル基であることが好ましく、OR(Rは、水素原子又は1価の置換基を表す。)、アルキル基、アミド基がより好ましく、OR、アルキル基が更に好ましい。
は、水素原子又は1価の置換基を表し、1価の置換基としては前記置換基Aを挙げることができる。中でも炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖アルキル基を表すことが好ましい。炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖アルキル基が更に好ましく、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、t−ペンチル基、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基、t−ヘキシル基を挙げることができ、メチル又はエチルが好ましく、メチルが特に好ましい。
【0021】
本発明における好ましい第一の態様として、R1a、R1c、R1eのうち少なくとも1つが、ハメット則のσp値が正である置換基を表す態様を挙げることができる。R1cがハメット則のσp値が正である置換基を表すことがより好ましい。
1cがハメット則のσp値が正である置換基であり、R1a、R1b、R1d、R1eは水素原子を表すことが更に好ましい。
1cがハメット則のσp値が正である置換基を表す場合、電子求引性基によりLUMOが安定化されるため、励起寿命が短くなり、耐光性が向上するため好ましい。
【0022】
また、好ましい第二の態様として、R1a、R1c及びR1eが、水素原子を表し、R1b及びR1dが、互いに独立して、水素原子又はハメット則のσp値が正である置換基を表し、少なくとも1つは、ハメット則のσp値が正である置換基である態様を挙げることができる。これにより、一般式(1)で表される化合物は、特に溶剤溶解性及びシランカップリング剤との相溶性に優れ、該化合物を含む太陽電池封止材は、接着性に優れ、樹脂の劣化を抑制し、かつ耐光性に優れた太陽電池封止材を形成し得る効果を有する。
溶剤溶解性とは、酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエンなどの有機溶剤への溶解性を意味し、シランカップリング剤との相溶性の点で、溶剤を使用する場合には、使用する溶剤に対し、10質量%以上溶解することが好ましく、30質量%以上溶解することがより好ましい。
【0023】
<好ましい第一の態様>
第一の態様においては、前記一般式(1)におけるハメット則のσp値が正である置換基として、好ましくは、σ値が0.1〜1.2の電子求引性基であり、より好ましくは、σ値が0.3〜1.2の電子求引性基である。σ値が0.1以上の電子求引性基の具体例としては、COOR(Rは、水素原子又は1価の置換基を表し、水素原子、アルキル基が挙げられ、好ましくは水素原子である。)、CONR(Rは、水素原子又は1価の置換基を表す。)、シアノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、SOM(Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す。)、アシル基、ホルミル基、アシルオキシ基、アシルチオ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアルキルホスフィニル基、ジアリールホスフィニル基、ホスホリル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アシルチオ基、スルファモイル基、チオシアネート基、チオカルボニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、カルボキシ基(又はその塩)、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基(例えばトリフルオロメチル基)、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルコキシ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアリールオキシ基、アシルアミノ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキルアミノ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキルチオ基、σ値が0.2以上の他の電子求引性基で置換されたアリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アゾ基、セレノシアネート基などが挙げられる。ハメットのσp値については、Hansch,C.;Leo,A.;Taft,R.W.Chem.Rev.1991,91,165−195に詳しく記載されている。
【0024】
前記一般式(1)におけるハメット則のσp値が正である置換基として、より好ましくは、COOR、CONR、シアノ基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、ニトロ基、SOMである[R、Rは、互いに独立して、水素原子又は1価の置換基を表す。Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す]。この中でもCOOR、シアノ基又はトリフルオロメチル基がより好ましく、COOR、であることが更に好ましい。優れた耐光性と溶剤溶解性及び相溶性を有するためである。
【0025】
、Rとしては水素原子又は1価の置換基を表し、1価の置換基としては前記置換基Aを挙げることができる。中でも直鎖又は分岐鎖アルキル基が好ましく、炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖アルキル基がより好ましく、炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖アルキル基が更に好ましい。炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、t−ペンチル基、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基、t−ヘキシル基、n−オクチル基、t−オクチル基、i−オクチル基、2−エチルヘキシル基、[7−メチル−2−(3−メチルブチル)]オクチル基、2−ヘキシルデシル基、[8−メチル−2−(4−メチルヘキシル)]デシル基、[5,7,7−トリメチル−2−(1,3,3−トリメチルブチル)]オクチル基、2−ヘプチルウンデシル基、[5,9−ジメチル−2−(1,5−ジメチルヘキシル)]デシル基、3,5,5−トリメチル−1−ヘキシル基を挙げることができ、メチル基、エチル基、2−エチルヘキシル基、[7−メチル−2−(3−メチルブチル)]オクチル基、2−ヘキシルデシル基、[8−メチル−2−(4−メチルヘキシル)]デシル基、[5,7,7−トリメチル−2−(1,3,3−トリメチルブチル)]オクチル基、2−ヘプチルウンデシル基、[5,9−ジメチル−2−(1,5−ジメチルヘキシル)]デシル基、3,5,5−トリメチル−1−ヘキシル基が好ましく、メチル基、2−エチルヘキシル基、[7−メチル−2−(3−メチルブチル)]オクチル基、2−ヘキシルデシル基、[8−メチル−2−(4−メチルヘキシル)]デシル基、[5,7,7−トリメチル−2−(1,3,3−トリメチルブチル)]オクチル基、2−ヘプチルウンデシル基、[5,9−ジメチル−2−(1,5−ジメチルヘキシル)]デシル基、3,5,5−トリメチル−1−ヘキシル基が特に好ましい。
【0026】
前記一般式(1)で表される化合物において、R1cがCOOR、CONR、シアノ基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、ニトロ基、SOM(Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す。)のいずれかであることが好ましく、COOR、シアノ基又はトリフルオロメチル基がより好ましく、COORが更に好ましい。
【0027】
また、本発明において、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pが1価の置換基を表す場合は、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pのうち少なくとも1つが、前記ハメット則のσp値が正である置換基を表すことがより好ましく、R1g、R1h、R1i及びR1jのうち少なくとも1つが、前記ハメット則のσp値が正(好ましくは0.1〜1.2、より好ましくは0.3〜1.2)である置換基を表すことがより好ましく、R1hが前記ハメット則のσp値が正である置換基を表すことが更に好ましい。R1c及びR1hが前記ハメット則のσp値が正(好ましくは0.1〜1.2、より好ましくは0.3〜1.2)である置換基を表すことが特に好ましい。優れた耐光性を有するためである。
本発明において、R1h又はR1nがそれぞれ独立に水素原子、COOR、CONR、シアノ基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、ニトロ基、SOM(Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す。)のいずれかであることが好ましく、R1h又はR1nが水素原子であることがより好ましく、R1h及びR1nが水素原子であることが更に好ましく、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pが水素原子を表すことが特に好ましい。優れた耐光性を示すためである。
【0028】
前記一般式(1)で表される化合物において、R1cがハメット則のσp値が正(好ましくは0.1〜1.2、より好ましくは0.3〜1.2)である置換基であって、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pは水素原子を表すことが好ましく、R1cがCOOR、CONR、シアノ基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、ニトロ基、SOM(Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す。)のいずれかであって、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pは水素原子であることがより好ましい。優れた耐光性を示すためである。
【0029】
前記一般式(1)で表される化合物はpKaが−5.0〜−7.0の範囲であることが好ましい。更に−5.2〜−6.5の範囲であることがより好ましく、−5.4〜−6.0の範囲であることが特に好ましい。
【0030】
<好ましい第二の態様>
好ましい第二の態様として、R1a、R1c及びR1eが、水素原子を表し、R1b及びR1dが、互いに独立して、水素原子又はハメット則のσp値が正である置換基を表し、少なくとも1つは、ハメット則のσp値が正である置換基である態様を挙げることができる。ハメット則のσp値が正である置換基の具体例及び好ましい範囲は、前述の第一の態様で説明するものと同様である。
1a、R1c及びR1eが、水素原子を表し、R1b及びR1dが、互いに独立して、水素原子又はハメット則のσp値が正である置換基を表し、少なくとも1つは、ハメット則のσp値が正である置換基である第二の態様においては、前記一般式(1)におけるハメット則のσp値が正である置換基として、より好ましくは、COOR、CONR、シアノ基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、ニトロ基、又はSOMである[R、Rは、互いに独立して、水素原子又は1価の置換基を表す。Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す]。
、Rの1価の置換基としては、前述のように前記置換基Aを挙げることができる。
前記一般式(1)におけるハメット則のσp値が正である置換基として、より好ましくは、COOR、シアノ基又はトリフルオロメチル基であり、COORであることが更に好ましい。ハメット則のσp値が正である置換基がシアノ基である場合、優れた耐光性を示すためである。また、ハメット則のσp値が正である置換基がCOORである場合、優れた溶剤溶解性及び相溶性を示すためである。さらに、ハメット則のσp値が正である置換基がトリフルオロメチル基ある場合、優れた耐光性を示すためである。
は水素原子又はアルキル基を表すことが好ましく、炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖アルキル基がより好ましく、炭素数1〜15の直鎖又は分岐鎖アルキル基が更に好ましい。
【0031】
は、溶剤に対する溶解性及びシランカップリング剤との相溶性の観点からは、炭素数5〜20の分岐鎖アルキル基がより好ましい。
分岐鎖アルキル基は2級炭素原子又は3級炭素原子を有し、2級炭素原子又は3級炭素原子を1〜5個含むことが好ましく、1〜3個含むことが好ましく、1又は2個含むことが好ましく、2級炭素原子及び3級炭素原子を1又は2個含むことがより好ましい。また、不斉炭素を1〜3個含むことが好ましい。
は、溶剤に対する溶解性及びシランカップリング剤との相溶性の観点からは、2級炭素原子及び3級炭素原子を1又は2個含み、不斉炭素を1又は2個含む炭素数5〜20の分岐鎖アルキル基であることが特に好ましい。これは、化合物構造の対称性がくずれ、溶剤に対する溶解性及び相溶性が向上するためである。
【0032】
一方、紫外線吸収能の観点からは、炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖アルキル基がより好ましく、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖アルキル基が更に好ましい。
炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、t−ペンチル基、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基、t−ヘキシル基、n−オクチル基、t−オクチル基、i−オクチル基、2−エチルヘキシル基、[7−メチル−2−(3−メチルブチル)]オクチル基、2−ヘキシルデシル基、[8−メチル−2−(4−メチルヘキシル)]デシル基、[5,7,7−トリメチル−2−(1,3,3−トリメチルブチル)]オクチル基、2−ヘプチルウンデシル基、[5,9−ジメチル−2−(1,5−ジメチルヘキシル)]デシル基、7−メチルオクチル基、3,5,5−トリメチル−1−ヘキシル基を挙げることができ、メチル基、エチル基、2−エチルヘキシル基、[7−メチル−2−(3−メチルブチル)]オクチル基、2−ヘキシルデシル基、[8−メチル−2−(4−メチルヘキシル)]デシル基、[5,7,7−トリメチル−2−(1,3,3−トリメチルブチル)]オクチル基、2−ヘプチルウンデシル基、[5,9−ジメチル−2−(1,5−ジメチルヘキシル)]デシル基、7−メチルオクチル基、3,5,5−トリメチル−1−ヘキシル基が好ましく、メチル基、2−エチルヘキシル基、[7−メチル−2−(3−メチルブチル)]オクチル基、2−ヘキシルデシル基、[8−メチル−2−(4−メチルヘキシル)]デシル基、[5,7,7−トリメチル−2−(1,3,3−トリメチルブチル)]オクチル基、2−ヘプチルウンデシル基、[5,9−ジメチル−2−(1,5−ジメチルヘキシル)]デシル基、7−メチルオクチル基、3,5,5−トリメチル−1−ヘキシル基が特に好ましい。
【0033】
また、本発明において、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pが1価の置換基を表す場合は、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pのうち少なくとも1つが、前記ハメット則のσp値が正である置換基を表すことがより好ましく、R1g、R1h、R1i及びR1jのうち少なくとも1つが、前記ハメット則のσp値が正(好ましくは0.1〜1.2、より好ましくは0.3〜1.2)である置換基を表すことがより好ましく、R1hが前記ハメット則のσp値が正である置換基を表すことが更に好ましい。R1b又はR1d、及びR1hが前記ハメット則のσp値が正(好ましくは0.1〜1.2、より好ましくは0.3〜1.2)である置換基を表すことが特に好ましい。優れた耐光性を有するためである。
本発明において、R1h又はR1nがそれぞれ独立に水素原子、COOR、CONR、シアノ基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、ニトロ基、SOM(Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す。)のいずれかであることが好ましく、R1h又はR1nが水素原子であることがより好ましく、R1h及びR1nが水素原子であることが更に好ましく、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pが水素原子を表すことが特に好ましい。優れた耐光性を示すためである。
【0034】
前記一般式(1)で表される化合物において、R1b又はR1d、がハメット則のσp値が正(好ましくは0.1〜1.2、より好ましくは0.3〜1.2)である置換基であって、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pは水素原子を表すことが好ましく、R1b又はR1d、がCOOR、CONR、シアノ基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、ニトロ基、SOM(Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す。)のいずれかであって、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pは水素原子であることがより好ましい。優れた耐光性を示すためである。
【0035】
前記一般式(1)で表される化合物はpKaが−5.0〜−7.0の範囲であることが好ましい。更に−5.2〜−6.5の範囲であることがより好ましく、−5.4〜−6.0の範囲であることが特に好ましい。
【0036】
前記一般式(1)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれに限定されない。
なお、下記の具体例中Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Buはtert−ブチル基を表し、Phはフェニル基を表し、−C13はn−ヘキシルを表す。
【0037】
【化4】

【0038】
【化5】

【0039】
【化6】

【0040】
【化7】

【0041】
【化8】

【0042】
【化9】

【0043】
【化10】

【0044】
【化11】

【0045】
【化12】

【0046】
【化13】

【0047】
前記一般式(1)で表される化合物は、構造とその置かれた環境によって互変異性体を取り得る。本発明においては代表的な形の一つで記述しているが、本発明の記述と異なる互変異性体も本発明の化合物に含まれる。
【0048】
前記一般式(1)で表される化合物は、同位元素(例えば、H、H、13C、15N、17O、18Oなど)を含有していてもよい。
【0049】
前記一般式(1)で表される化合物は、任意の方法で合成することができる。
例えば、公知の特許文献や非特許文献、例えば、特開平7−188190号公報、特開平11−315072、特開2001−220385号公報、「染料と薬品」第40巻12号(1995)の325〜339ページなどを参考にして合成できる。具体的には、例示化合物(16)はサリチルアミドと3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゾイル クロリドと2−ヒドロキシベンズアミジン塩酸塩とを反応させることにより合成できる。また、サリチルアミドとサリチル酸と3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンズアミジン塩酸塩とを反応させることによっても合成できる。
【0050】
本発明にかかる一般式(1)で表される化合物は、有機溶媒に対する溶解性及びシランカップリング剤との相溶性に優れるという特徴を有する。また、特定の位置にハメット則のσp値が正である置換基を有するため、電子求引性基によりLUMOが安定化されるため、励起寿命が短くなり、優れた耐光性を有するという特徴を有する。紫外線吸収剤として用いた際にも、既知のトリアジン系化合物では、高い濃度で使用した場合、接着性が十分ではなく、樹脂の劣化を示し、分解して黄変したりするなど悪影響を及ぼすが、それに対して、本発明にかかる一般式(1)で表される化合物は優れた溶剤溶解性及び相溶性と耐光性を有するため高い濃度で使用した場合でも接着性に優れ、樹脂の劣化を抑制し、かつ耐光性に優れた太陽電池封止材を形成し得る。また、長時間使用した場合でも分解せず黄変することがないという効果が得られる。
本発明の太陽電池封止材において、前記一般式(1)で表される化合物は、一種のみ用いてもよく、異なる構造を有する二種以上を併用することもできる。
【0051】
本発明における前記化合物は、有機材料を光、酸素又は熱による損傷に対して安定化させるのに特に適している。中でも前記一般式(1)で表される化合物は、紫外線吸収剤として好適に用いることができる。
【0052】
前記一般式(1)で表される化合物の極大吸収波長は、特に限定されないが、好ましくは250〜400nmであり、より好ましくは280〜380nmである。半値幅は好ましくは20〜100nmであり、より好ましくは40〜80nmである。
【0053】
本発明において規定される極大吸収波長及び半値幅は、当業者が容易に測定することができる。測定方法に関しては、例えば日本化学会編「第4版実験化学講座7分光II」(丸善,1992年)180〜186ページなどに記載されている。具体的には、適当な溶媒に試料を溶解し、石英製又はガラス製のセルを用いて、試料用と対照用の2つのセルを使用して分光光度計によって測定される。用いる溶媒は、試料の溶解性と合わせて、測定波長領域に吸収を持たないこと、溶質分子との相互作用が小さいこと、揮発性があまり著しくないこと等が要求される。上記条件を満たす溶媒であれば、任意のものを選択することができる。本発明においては、酢酸エチル(EtOAc)を溶媒に用いて測定を行うこととする。
【0054】
本発明において、化合物の極大吸収波長及び半値幅は、酢酸エチルを溶媒として、濃度約5×10−5mol・dm−3の溶液を調製し、光路長10mmの石英セルを使用して測定した値を使用する。
【0055】
スペクトルの半値幅に関しては、例えば日本化学会編「第4版実験化学講座3 基本操作III」(丸善、1991年)154ページなどに記載がある。なお、上記成書では波数目盛りで横軸を取った例で半値幅の説明がなされているが、本発明における半値幅は波長目盛りで軸を取った場合の値を用いることとし、半値幅の単位はnmである。具体的には、極大吸収波長における吸光度の1/2の吸収帯の幅を表し、吸収スペクトルの形を表す値として用いられる。半値幅が小さいスペクトルはシャープなスペクトルであり、半値幅が大きいスペクトルはブロードなスペクトルである。ブロードなスペクトルを与える紫外線吸収化合物は、極大吸収波長から長波側の幅広い領域にも吸収を有するので、黄色味着色がなく長波紫外線領域を効果的に遮蔽するためには、半値幅が小さいスペクトルを有する紫外線吸収化合物の方が好ましい。
【0056】
時田澄男著「化学セミナー9 カラーケミストリー」(丸善、1982年)154〜155ページに記載されているように、光の吸収の強さすなわち振動子強度はモル吸光係数の積分に比例し、吸収スペクトルの対称性がよいときは、振動子強度は極大吸収波長における吸光度と半値幅の積に比例する(但しこの場合の半値幅は波長目盛りで軸を取った値である)。このことは遷移モーメントの値が同じとした場合、半値幅が小さいスペクトルを有する化合物は極大吸収波長における吸光度が大きくなることを意味している。このような紫外線吸収化合物は少量使用するだけで極大吸収波長周辺の領域を効果的に遮蔽できるメリットがあるが、波長が極大吸収波長から少し離れると急激に吸光度が減少するために、幅広い領域を遮蔽することができない。
【0057】
前記一般式(1)で表される化合物は、極大吸収波長におけるモル吸光係数が20000以上であることが好ましく、30000以上であることがより好ましく、50000以上であることが特に好ましい。20000以上であれば、前記一般式(1)で表される化合物の質量当たりの吸収効率が十分得られるため、紫外線領域を完全に吸収するための前記一般式(1)で表される化合物の使用量を低減できる。これは皮膚刺激性や生体内への蓄積を防ぐ観点、及び接着性に優れ、樹脂の劣化を抑制し、かつ耐光性に優れた太陽電池封止材を形成し得る点から好ましい。なお、モル吸光係数については、例えば日本化学会編「新版実験化学講座9 分析化学[II]」(丸善、1977年)244ページなどに記載されている定義を用いたものであり、上述した極大吸収波長及び半値幅を求める際に合わせて求めることができる。
【0058】
本発明の太陽電池封止材は、前記一般式(1)で表される化合物を、所望の性能を付与するために必要な任意の量で含有させることができる。これらは用いる化合物やシランカップリング剤によって異なるが、適宜含有量を決定することができる。前記一般式(1)で表される化合物の含有量としては、樹脂100質量部に対し、0.01〜5質量部であることが好ましく、0.05〜4質量部であることがより好ましく、0.1〜3質量部であることが更に好ましい。含有量が上記の範囲であればより紫外線遮蔽効果が得られ、封止材の色相変化や劣化をより効果的に抑制できるため好ましい。
【0059】
〔一般式(S1)で表されるシランカップリング剤〕
本発明の太陽電池封止材は、下記一般式(S1)で表されるシランカップリング剤を含有する。シランカップリング剤は、加水分解性の基ORと、反応性の有機官能基Rとを併せ持つ有機珪素化合物であり、下記一般式(S1)で表される構造を有することにより太陽電池セルや、ガラス及び樹脂などの保護材との密着性が向上するといった効果が得られる。
【0060】
【化14】

【0061】
[Rはアルキル基を表す。Rは重合性基を有する基を表す。Rはアルキル基を表す。xは1〜3の整数であり、yは1〜3の整数であり、zは0〜2の整数であり、x+y+zは4である。]
【0062】
はアルキル基を表し、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、更に好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0063】
は重合性基を有する基を表す。Rで表される基が有する重合性基としては特に制限されないが、ラジカル、カチオン又は加熱により重合反応する結合を有する基が好ましく、不飽和基(炭素−炭素不飽和二重結合など)、エポシキ基、オキセタン基等を挙げることができ、不飽和基であることがアクリル樹脂やポリオレフィン樹脂との反応や相互作用の観点でより好ましい。
【0064】
炭素−炭素不飽和基としては、ラジカル重合性基、カチオン重合性基又は加熱により反応する結合を有する基が好ましい。このような炭素−炭素不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、チオ(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、プロパルギル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、スチリル基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基、アリルエーテル基、アリルエステル基、プロパルギルエーテル基、プロパルギルエステル基、ジシクロペンテニル基が好ましく、樹脂との反応や相互作用の観点で、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基が特に好ましく、(メタ)アクリロイル基が最も好ましい。
で表される重合性基を有する基は、好ましくは炭素数2〜20であり、より好ましくは炭素数2〜10である。Rで表される重合性基を有する基としては、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイル基を有する炭素数1〜6のアルキル基、ビニル基又はアリル基が好ましく、(メタ)アクリロイル基を有する炭素数1〜6のアルキル基、ビニル基又はアリル基がより好ましく、(メタ)アクリロイル基を有する炭素数1〜6のアルキル基が更により好ましい。
【0065】
はアルキル基を表し、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、更に好ましくはメチル基である。
【0066】
xは1〜3の整数であり、ガラス等の無機材料との反応性の観点で、2又は3であることが好ましい。
yは1〜3の整数であり、樹脂との反応や相互作用の観点で、1であることが好ましい。
zは0〜2の整数であり、ガラス等の無機材料との反応性の観点で、0又は1であることが好ましい。但し、x+y+zは4である。
【0067】
本発明の太陽電池封止材は、前記一般式(S1)で表されるシランカップリング剤を、所望の性能を付与するために必要な任意の量で含有させることができる。これらは用いるシランカップリング剤や前記一般式(1)で表される化合物によって異なるが、適宜含有量を決定することができる。前記一般式(S1)で表されるシランカップリング剤の含有量としては、樹脂100質量部に対し、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.05〜5質量部であることがより好ましく、0.1〜2質量部であることが更に好ましい。含有量が上記の範囲であればより封止効果が得られるため好ましい。
【0068】
前記一般式(S1)で表されるシランカップリング剤の具体例を以下に示すが、本発明はこれに限定されない。
【0069】
【化15】

【0070】
〔樹脂〕
本発明の太陽電池封止材は、樹脂を含有する。本発明の太陽電池封止材に含有される樹脂としては特に限定されないが、封止効果の観点から、エチレン系共重合体又はポリビニルアセタールであることが好ましく、エチレン系共重合体であることがより好ましい。
エチレン系共重合体としては、封止効果の観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、又はエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体であることが好ましく、エチレン−酢酸ビニル共重合体又はエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体であることがより好ましく、エチレン−酢酸ビニル共重合体が最も好ましい。
以下に各樹脂について説明する。
【0071】
(エチレン−酢酸ビニル共重合体)
エチレン−酢酸ビニル共重合体系の樹脂としては、ホットメルト型、エマルション型等を挙げることができる。エマルション型は、ポリビニルアルコール、界面活性剤などの乳化剤の存在下で少なくとも酢酸ビニル及びエチレンを共重合することによって得られる。市販品を用いることもでき、例えば、S450HQ(住化ケムテックス株式会社製、Tg0℃、不揮発分55%、商品名)、S205HQ(住化ケムテックス株式会社製、Tg−20℃、不揮発分55%、商品名)、#59(電気化学工業株式会社製、Tg−18℃、不揮発分56%)、#90(電気化学工業株式会社製、Tg1℃、不揮発分55%、トルエン不溶分70%、商品名)等を挙げることができる。ホットメルト型としては、例えば、酢酸ビニル含量が20〜30%、メルトインデックスが2〜5g/10分、軟化点が150〜190℃のエチレン酢酸ビニル共重合樹脂であり、例えばエバフレックス360〔三井・デュポンポリケミカル(株)〕をベースとするものを挙げることができる。また190℃、2160g荷重におけるメルトフローレート(JIS K7210−1999)が、0.5〜150g/10分の範囲が好ましく、1〜100g/10分の範囲がより好ましい。
【0072】
(エチレン−プロピレン共重合体)
エチレン−プロピレン共重合体系の樹脂としては、タフマーP0275(三井化学株式会社製)、エスプレン201(住友化学工業株式会社製)等を挙げることができる。
【0073】
(エチレン−ブテン共重合体)
エチレン−ブテン共重合体系の樹脂としては、タフマーA4085(三井化学株式会社製)、エスプレンSPO N0416(住友化学工業株式会社製)等を挙げることができる。
【0074】
(エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体)
エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体系の樹脂としては、アクリフトWH202(住友化学工業株式会社製)、ニュクレル(三井デュポンポリケミカル株式会社製)等を挙げることができる。
【0075】
(ポリビニルアセタール)
ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコールを塩酸や硫酸のような酸触媒の存在下でアルデヒドと反応させて、ポリビニルアルコールの水酸基の一部又は全部をアセタール化したものである。例えば、ポリビニルアルコールとホルムアルデヒドによる反応物はポリビニルホルマール(ビニロン)であり、ポリビニルアルコールとブチルアルデヒドとの反応物はポリビニルブチラールである。
ポリビニルアセタールとしては、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルエチラール等が挙げられ、ポリビニルブチラール、ポリビニルエチラールが好ましく、ポリビニルブチラールであることが接着性の観点から最も好ましい。以下にポリビニルブチラールについて説明する。
【0076】
(ポリビニルブチラール)
ポリビニルブチラールは、ポリビニルアルコールの一種である。ポリビニルブチラールとしては、分子内にビニルブチラール基を有する重合体であれば特に制限されないが、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル及びポリビニルアルコールが分子内にランダム重合した重量平均分子量が10000〜500000の重合体であることが好ましい。ポリビニルブチラール樹脂の具体例としては、電気化学工業(株)製、商品名:電化ブチラール3000−1、3000−K、4000−2、5000−A、6000−C、6000−EP、積水化学工業(株)製、エスレックBHシリーズ、BXシリーズ、KSシリーズ、BLシリーズ、BMシリーズ、クラレ(株)製、商品名:モビタール(Mowital)シリーズの他、ソルーシア(Solutia)社製、ビュートバー(Butvar)シリーズなどが挙げられる。
【0077】
本発明の太陽電池封止材は、上述のように紫外線吸収剤として、異なる構造を有する二種類以上の前記一般式(1)で表される化合物を含有していてもよい。また、前記一般式(1)で表される化合物とそれ以外の構造を有する一種類以上の紫外線吸収剤とを併用してもよい。基本骨格構造の異なる二種類(好ましくは三種類)の紫外線吸収剤を併用すると、広い波長領域の紫外線を吸収することができる。また、二種類以上の紫外線吸収剤を併用すると、紫外線吸収剤の分散状態が安定化する作用もある。前記一般式(1)以外の構造を有する紫外線吸収剤としては、いずれのものでも使用でき、トリアジン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、メロシアニン系、シアニン系、ジベンゾイルメタン系、桂皮酸系、シアノアクリレート系、安息香酸エステル系などの化合物が挙げられる。例えば、ファインケミカル、2004年5月号、28〜38ページ、東レリサーチセンター調査研究部門発行「高分子用機能性添加剤の新展開」(東レリサーチセンター、1999年)96〜140ページ、大勝靖一監修「高分子添加剤の開発と環境対策」(シーエムシー出版、2003年)54〜64ページなどに記載されている紫外線吸収剤が挙げられる。
【0078】
前記一般式(1)以外の構造を有する紫外線吸収剤として好ましくは、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サリチル酸系化合物、ベンゾオキサジノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ベンゾオキサゾール系化合物、メロシアニン系化合物、トリアジン系化合物である。より好ましくは、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、シアノアクリレート系化合物である。特に好ましくはベンゾフェノン系化合物である。上記一般式(1)以外の構造を有する紫外線吸収剤は、特願2008−273950号公報の段落番号〔0117〕〜〔0121〕に詳述されており、該公報に記載の材料は、本発明においても適用することができる。
【0079】
本発明の太陽電池封止材は、必要に応じてその他の成分を更に含んでいてもよい。前記その他の成分としては、架橋剤、架橋助剤、酸化防止剤、難燃剤、光拡散剤、変色防止剤、光安定剤などが挙げられる。本発明の太陽電池封止材は、封止効果向上の観点から、架橋剤を含有することが好ましく、また架橋密度を高める観点から、架橋助剤を含有することも好ましく、架橋剤及び架橋助剤の両方を含有することが、高い封止効果が得られるのでより好ましい。
【0080】
〔架橋剤〕
架橋剤としては、分解温度(半減期が1時間である温度)が70〜180℃、とくに90〜160℃の有機過酸化物を用いるのが好ましい。このような有機過酸化物として、例えば、第3ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、第3ブチルパーオキシアセテート、第3ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(第3ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ第3ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(第3ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,1−ビス(第3ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(第3ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、メチルエチルケトンパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ビスパーオキシベンゾエート、第3ブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロルベンゾイルパーオキサイド、第3ブチルパーオキシイソブチレート、ヒドロキシヘプチルパーオキサイド、ジクロヘキサノンパーオキサイド等を挙げることができる。
本発明の太陽電池封止材が架橋剤を含有する場合の架橋剤の含有量としては、樹脂100質量部に対し、0.05〜10質量部であることが好ましく、0.1〜5質量部であることがより好ましく、0.5〜3質量部であることが更に好ましい。含有量が上記の範囲であればより架橋効果が得られるため好ましい。
【0081】
〔架橋助剤〕
架橋助剤としては、ポリアリル化合物やポリ(メタ)アクリロキシ化合物のような多不飽和化合物を例示することができる。より具体的には、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルフマレート、ジアリルマレエートのようなポリアリル化合物、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートのようなポリ(メタ)アクリロキシ化合物、ジビニルベンゼン等を挙げることができる。
本発明の太陽電池封止材が架橋助剤を含有する場合の架橋助剤の含有量としては、樹脂100質量部に対し、0.05〜10質量部であることが好ましく、0.1〜7質量部であることがより好ましく、0.5〜5質量部であることが更に好ましい。含有量が上記の範囲であればより架橋反応促進効果が得られるため好ましい。
【0082】
〔太陽電池封止材の製造方法〕
本発明の太陽電池封止材の製造方法としては、上述のような太陽電池封止材の材料を必要に応じて乾燥し、公知の溶融押出機に供給し、スリット状のダイから前記材料を押出し、その後冷却して太陽電池封止材を得る方法が挙げられる。
太陽電池封止材の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばシート状や、フィルム状、ペースト状が挙げられ、封止効果の観点から、シート状であることが好ましい。太陽電池封止材がシート状又はフィルム状のとき、その厚みは好ましくは0.01〜2mmであり、より好ましくは0.05〜1mmである。厚みが上記の範囲であればより柔軟性、接着性効果が得られるため好ましい。
溶融押出機による太陽電池封止材の材料の加工温度は、成形性の観点から、好ましくは80〜180℃であり、より好ましくは100〜150℃である。
【0083】
〔太陽電池モジュール〕
本発明の太陽電池モジュールは、本発明の太陽電池封止材を有する。
具体的には、本発明の太陽電池封止材と用い、太陽電池素子を上下の保護材で固定することにより太陽電池モジュールを作製することができる。このような太陽電池モジュールとしては、種々のタイプのものを例示することができる。例えば上部透明保護材/封止材/太陽電池素子/封止材/下部保護材のように太陽電池素子の両側から封止材で挟む構成のもの、下部基板保護材の内周面上に形成させた太陽電池素子上に封止材と上部透明保護材を形成させるような構成のもの、上部透明保護材の内周面上に形成させた太陽電池素子、例えばフッ素樹脂系透明保護材上にアモルファス太陽電池素子をスパッタリング等で作製したものの上に封止材と下部保護材を形成させるような構成のものなどを挙げることができる。
【0084】
本発明の太陽電池モジュールにおいて、本発明の太陽電池封止材は太陽電池を封止する限り、特にその形態に制限はなく、太陽電池封止材の形状に合わせて種々の形態で使用可能である。
例えば、太陽電池封止材をセル上に固定するときは、太陽電池封止材がシート状又はフィルム状であれば、ロール加圧後加熱密着、真空加圧後加熱密着等の方法により太陽電池を封止することが可能であり、太陽電池封止材がペースト状であれば、ロールコート、バーコート、スプレーコート、スクリーン印刷等の方法により太陽電池を封止することが可能である。
また太陽電池の周縁をフレームで囲み、該フレームと太陽電池外縁の間を封止樹脂で封止するときは、本発明の太陽電池封止材は、前記封止樹脂として使用可能である。
【0085】
太陽電池素子としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、微結晶シリコン及びこれらを組み合わせたハイブリッドタイプあるいは薄膜タイプなどのシリコン系、ガリウム−砒素、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルルなどのIII−V族やII−VI族化合物半導体系等の各種太陽電池素子を用いることができる。透明電極として使用される金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化錫、酸化インジウム及びこれらの酸化物にある種の元素がドープされたものを例示することができる。
【0086】
太陽電池モジュールを構成する上部保護材としては、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、フッ素含有樹脂などを例示することができる。ガラスについては、発電効率の点で有利であるところから、UV吸収能を持つCeOを添加しないガラスを好適例として例示することができる。下部保護材としては、金属や各種熱可塑性樹脂フィルムなどの単体もしくは多層のシートであり、例えば、錫、アルミ、ステンレススチールなどの金属、ガラス等の無機材料、ポリエステル、無機物蒸着ポリエステル、フッ素含有樹脂、ポリオレフィンなどの1層もしくは多層の保護材を例示することができる。
【0087】
図1は、本発明の太陽電池モジュールの一例を示す概略図である。図1中31は強化ガラス(上部保護材)、32は本発明の太陽電池封止材、33は熱可塑性樹脂フィルム(下部保護材)、34は太陽電池(セル)、35はフレーム、36は封止樹脂、37は配線、38は接着層をそれぞれ表す。
【0088】
次に、上記太陽電池モジュールの製造方法について、図1を参照して説明する。
(1)清浄な強化ガラス31の上にシート状の本発明の太陽電池封止材32を載せ、その上に太陽電池(セル)34を配置する。
(2)その上に熱可塑性樹脂フィルム33を重ねて置き、この状態で1時間ほど加熱する。
(3)強化ガラスに沿って余分な本発明の太陽電池封止材をカットする。
(4)作製した部材を強化ガラス31側(太陽光が入射するおもて面になる)からフレーム35に押し込む。
(5)本発明の太陽電池封止材32及び熱可塑性樹脂フィルム33を一部カットして太陽電池セルの端子部分へ配線37を半田付けする。
(6)カット部をシリコーン樹脂やシリコーンゴムを塗布して端子部分を封止樹脂36により封止する。
(7)必要により、端子ボックスを設け、配線を行う。
【0089】
本発明の太陽電池モジュールは、本発明の前記太陽電池封止材を用いているので、高い耐光性を有すると共に、耐湿熱性が向上することにより接着性に優れ、かつ、太陽電池封止材に含まれる樹脂の劣化を抑制することができ、製造が容易である。
【実施例】
【0090】
本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
なお、以下の説明において[部]とは、特に断らない限り質量基準に基づく「質量部」を表す。
〔合成例〕
合成例1(例示化合物(1)の調製)
サリチルアミド160.0gにアセトニトリル600mLとDBU(ジアザビシクロウンデセン(1,8−diazabicyclo[5.4.0]undec−7−ene))356.2gを添加し溶解させた。この溶液に4−(クロロホルミル)安息香酸メチル231.7gを添加し、室温で24時間攪拌した。この反応液に水1800mLと35%塩酸170mLを添加し、得られた固体を濾過、水洗浄して合成中間体Aを343.0g得た(収率98%)。
【0091】
【化16】

【0092】
合成中間体A200.0gにアセトニトリル1200mLと硫酸98.1gを添加し、90℃で4時間攪拌した。この反応液にトリエチルアミン600mLを添加し、室温まで冷却した。得られた固体を濾過、水洗浄して合成中間体Bを182.3g得た(収率97%)。
【0093】
【化17】

【0094】
【化18】

【0095】
(X−2の合成)
3つ口フラスコに、アセトキシム39.5g(1.1モル当量)、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)600mL、カリウム−t−ブトキシド60.6g(1.1モル当量)を入れて室温で30分攪拌した。その後、内温を0℃とし、そこへ化合物(X−1)60g(1.0モル当量)をゆっくり滴下した。滴下後、内温を25℃まで昇温し、その温度で1時間攪拌した。
反応混合物を塩化アンモニウム水溶液と酢酸エチルで抽出・分液操作を行い、得られた有機相に飽和食塩水を加えて洗浄し分液した。こうして得られた有機相を、ロータリーエバポレータで濃縮して得られた残留物を化合物(X−2)の粗生成物として得た。
【0096】
(X−3の合成)
3つ口フラスコに、上記で得られた化合物(X−2)の粗生成物を全量を入れ、エタノール700mLと1mol/lの塩酸水500mLを加えて、反応混合物を内温80℃まで昇温しその温度で3時間攪拌した。
反応混合物を内温25℃まで冷却し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と酢酸エチルで抽出・分液操作を行い、得られた有機相に飽和食塩水を加えて洗浄し分液した。こうして得られた有機相を、ロータリーエバポレータで濃縮して得られた残留物を化合物(X−3)の粗生成物として得た。
【0097】
(X−4の合成)
3つ口フラスコに、フラスコ内を窒素ガスで満たした後に10%Pd−C(和光純薬工業社製)を6.5g添加し、エタノールを2,000mL、上記で得られた化合物(X−3)の粗生成物を全量加えて加熱・還流した。そこへギ酸55mL(3モル当量)をゆっくり滴下し、この温度で5時間攪拌した。その後反応混合物を内温25℃まで冷却し、セライトろ過を行い炉別した母液に1,5−ナフタレンジスルホン酸を105g加えて、内温を70℃まで昇温し、30分攪拌した。その後、徐々に室温まで冷却して結晶を濾別し化合物(X−4)を100g得た。収率は化合物(X−1)を出発物質として72%であった。得られた結晶は、淡茶色であった。H NMR(重DMSO):δ6.95−6.98(1H)、δ7.02−7.04(1H)、δ7.40−7.51(3H)、δ7.90−7.95(1H)、δ8.75(1H)、δ8.85−8.88(2H)、δ9.03(2H)、δ10.89(1H)
【0098】
化合物(X−4)5.5gにメタノール50mLと28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液3.8gを添加した。この溶液に合成中間体B5.0gを添加し、60℃で3時間攪拌した。この反応液を室温まで冷却した後、塩酸を0.2mL添加した。得られた固体を濾過、水とメタノールで洗浄して例示化合物(1)を6.8g得た(収率95%)。
MS:m/z 400(M+)H NMR(CDCl):δ7.04−7.12(4H),δ7.53−7.57(2H),δ8.24−8.27(2H),δ8.51−8.53(4H),δ12.91(2H) λmax=353nm(EtOAc)
【0099】
合成例2(例示化合物(2)の調製)
サリチルアミド160.0gにアセトニトリル600mLとDBU355.2gを添加し溶解させた。この溶液に4−シアノベンゾイル クロリド193.2gを添加し、室温で24時間攪拌した。この反応液に水1200mLと塩酸150mLを添加し、得られた固体を濾過、水洗浄して合成中間体Cを292.8g得た(収率94%)。
【0100】
【化19】

【0101】
合成中間体C200.0gにアセトニトリル1200mLと硫酸110.5gを添加し、90℃で4時間攪拌した。この反応液にトリエチルアミン600mLを添加し、室温まで冷却した。得られた固体を濾過、水洗浄して合成中間体Dを177.2g得た(収率95%)。
【0102】
【化20】

【0103】
化合物(X−4)6.2gにメタノール50mLと28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液4.3gを添加した。この溶液に合成中間体D5.0gを添加し、60℃で3時間攪拌した。この反応液を室温まで冷却した後、塩酸を0.2mL添加した。得られた固体を濾過、水とメタノールで洗浄して例示化合物(2)を7.1g得た(収率96%)。
MS:m/z 367(M+)H NMR(CDCl):δ7.01−7.13(4H),δ7.56−7.59(2H),δ7.91−7.93(2H),δ8.52−8.54(2H),δ8.58−8.60(2H),δ12.77(2H)λmax=355nm(EtOAc)
【0104】
合成例3(例示化合物(4)の調製)
サリチルアミド200.0gにアセトニトリル800mLとDBU444.0gを添加し溶解させた。この溶液に4−クロロベンゾイルクロリド255.0gを添加し、室温で24時間攪拌した。この反応液に水2000mLと塩酸200mLを添加し、得られた固体を濾過、水洗浄して合成中間体Eを389.9g得た(収率97%)。
【0105】
【化21】

【0106】
合成中間体E38.0gにアセトニトリル240mLと硫酸20.2gを添加し、90℃で4時間攪拌した。この反応液にトリエチルアミン150mLを添加し、室温まで冷却した。得られた固体を濾過、水洗浄して合成中間体Fを30.8g得た(収率94%)。
【0107】
【化22】

【0108】
化合物(X−4)6.0gにメタノール50mLと28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液4.1gを添加した。この溶液に合成中間体F5.0gを添加し、60℃で3時間攪拌した。この反応液を室温まで冷却した後、塩酸を0.2mL添加した。得られた固体を濾過、水とメタノールで洗浄して例示化合物(4)を6.8g得た(収率93%)。
MS:m/z 376(M+)H NMR(CDCl):δ7.04−7.12(4H),δ7.53−7.60(4H),δ8.41−8.43(2H),δ8.53−8.55(2H),δ12.96(2H)λmax=352nm(EtOAc)
【0109】
合成例4(例示化合物(3)の調製)
サリチルアミド200.0gにアセトニトリル800mLとDBU444.0gを添加し溶解させた。この溶液に4−(トリフルオロメチル)ベンゾイルクロリド303.9gを添加し、室温で24時間攪拌した。この反応液に水2000mLと塩酸200mLを添加し、得られた固体を濾過、水洗浄して合成中間体Iを428.3g得た(収率95%)。
【0110】
【化23】

【0111】
合成中間体I34.0gにアセトニトリル240mLと硫酸20.2gを添加し、90℃で4時間攪拌した。この反応液にトリエチルアミン150mLを添加し、室温まで冷却した。得られた固体を濾過、水洗浄して合成中間体Jを34.8g得た(収率94%)。
【0112】
【化24】

【0113】
化合物(X−4)6.8gにメタノール50mLと28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液4.6gを添加した。この溶液に合成中間体J5.0gを添加し、60℃で3時間攪拌した。この反応液を室温まで冷却した後、塩酸を0.2mL添加した。得られた固体を濾過、水とメタノールで洗浄して例示化合物(3)を6.7g得た(収率95%)。MS:m/z 409(M+)
【0114】
合成例5(例示化合物(m−1)の調製)
サリチルアミド160.0gにアセトニトリル600mLとDBU356.2gを添加し溶解させた。この溶液に3−(クロロホルミル)安息香酸メチル231.7gを添加し、室温で24時間攪拌した。この反応液に水1800mLと35%塩酸170mLを添加し、得られた固体を濾過、水洗浄して合成中間体Kを329.0g得た(収率94%)。
【0115】
【化25】

【0116】
合成中間体K200.0gにアセトニトリル1200mLと硫酸98.1gを添加し、90℃で4時間攪拌した。この反応液にトリエチルアミン600mLを添加し、室温まで冷却した。得られた固体を濾過、水洗浄して合成中間体Lを178.5g得た(収率95%)。
【0117】
【化26】

【0118】
化合物(X−4)5.5gにメタノール50mLと28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液3.8gを添加した。この溶液に合成中間体L5.0gを添加し、60℃で3時間攪拌した。この反応液を室温まで冷却した後、塩酸を0.2mL添加した。得られた固体を濾過、水とメタノールで洗浄して例示化合物(m−1)を6.9g得た(収率96%)。MS:m/z 400(M+)
【0119】
合成例6(例示化合物(98)の調製)
3−ヒドロキシ−2−ナフトアミド20.0gにアセトニトリル80mLとDBU32.4gを添加し溶解させた。この溶液に4−(クロロホルミル)安息香酸メチル21.2gを添加し、室温で24時間攪拌した。この反応液に水100mLと35%塩酸20mLを添加し、得られた固体を濾過、水洗浄して合成中間体Uを35.1g得た(収率94%)。
【0120】
【化27】

【0121】
合成中間体U20.0gにアセトニトリル200mLと硫酸9.1gを添加し、90℃で4時間攪拌した。この反応液にトリエチルアミン80mLを添加し、室温まで冷却した。得られた固体を濾過、水洗浄して合成中間体Vを17.9g得た(収率94%)。
【0122】
【化28】

【0123】
化合物(X−4)5.5gにメタノール100mLと28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液3.0gを添加した。この溶液に合成中間体V5.0gを添加し、60℃で3時間攪拌した。この反応液を室温まで冷却した後、35%塩酸を0.2mL添加した。得られた固体を濾過、水とメタノールで洗浄して例示化合物(98)を6.1g得た(収率94%)。MS:m/z 449(M+)
【0124】
合成例7
(例示化合物(m−21)の調製)
サリチルアミド160.0gにアセトニトリル600mLとDBU355.2gを添加し溶解させた。この溶液に3−シアノベンゾイル クロリド193.2gを添加し、室温で24時間攪拌した。この反応液に水1200mLと塩酸150mLを添加し、得られた固体を濾過、水洗浄して合成中間体Mを296.0g得た(収率95%)。
【0125】
【化29】

【0126】
合成中間体M200.0gにアセトニトリル1200mLと硫酸110.5gを添加し、90℃で4時間攪拌した。この反応液にトリエチルアミン600mLを添加し、室温まで冷却した。得られた固体を濾過、水洗浄して合成中間体Nを177.3g得た(収率95%)。
【0127】
【化30】

【0128】
化合物(X−4)6.2gにメタノール50mLと28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液4.3gを添加した。この溶液に合成中間体N5.0gを添加し、60℃で3時間攪拌した。この反応液を室温まで冷却した後、塩酸を0.2mL添加した。得られた固体を濾過、水とメタノールで洗浄して例示化合物(m−2)を6.9g得た(収率93%)。MS:m/z 367(M+)
【0129】
例示化合物(m−2)25gに3,5,5−トリメチルヘキサノール250mLと硫酸13gを添加して150℃で10時間攪拌した。この反応液を50℃まで冷却した後、トルエン100mLと水100mLを添加して攪拌した後、水層を除去した。メタノール850mLを添加して、得られた固体を濾過、水とメタノールで洗浄して例示化合物(m−21)を31.4g得た(収率90%)MS:m/z 512(M+)H NMR(CDCl):δ0.88−0.93(9H),δ1.07−1.08(3H),δ1.14−1.92(1H),δ1.32−1.37(1H),δ1.67−1.88(3H),δ4.40−4.45(2H),δ6.99−7.06(4H),δ7.48−7.53(2H),δ7.64−7.68(1H),δ8.29−8.32(1H),δ8.46−8.57(3H),δ9.08(1H),δ12.86(2H)λmax=354nm(EtOAc)
【0130】
なお例示化合物(m−31)は、例示化合物(1)の調整における4−(クロロホルミル)安息香酸メチルを3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゾイルクロリドに変更する以外は同様にして合成可能である。例示化合物(5)及び(10)も、例示化合物(1)の調整における4−(クロロホルミル)安息香酸メチルを、各化合物に対応する酸クロライドに変更する以外は同様にして合成可能である。例示化合物(67)は、例示化合物(1)の調整におけるサリチルアミドを4−ヘキサノキシサリチルアミドに変更する以外は同様にして合成可能である。例示化合物(8)は、例示化合物(1)の調整におけるサリチルアミドを4−メトキシサリチルアミドに変更し、4−(クロロホルミル)安息香酸メチルを、対応する酸クロライドする以外は同様にして合成可能である。
【0131】
(実施例1)
下記表1に記載される質量部の樹脂(P−1)、シランカップリング剤(S−4)、及び紫外線吸収剤(1)と、1.5質量部の2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(架橋剤)、及び2質量部のトリアリルイソシアヌレート(架橋助剤)とを混合し、T−ダイ押出機(スクリュー径40mm、スクリュー有効長(L/D)=26、スクリューフルフライト 圧縮比(CR)=2.6 東芝機械株式会社製)を用いて加工温度100℃で厚み0.5mmのシートを作成した。得られたシートについて、各種の物性を測定した。
【0132】
(実施例2〜22、比較例1〜9)
実施例1において、表1に記載される樹脂、シランカップリング剤及び紫外線吸収剤を使用した以外は、実施例1と同様にして厚み0.5mmのシートを作成した。また、実施例20においては、架橋剤を添加しないこと以外は、実施例1と同様にして厚み0.5mmのシートを作成した。また、実施例21においては、架橋剤と架橋助剤を添加しないこと以外は、実施例1と同様にして厚み0.5mmのシートを作成した。得られたシートについて、各種の物性を測定した。
【0133】
<評価>
〔破断強度変化〕
作成した各シートについて、メタルハライドランプ(約290nm以下カットフィルター存在下)(商品名:アイスーパーUVテスター、岩崎電気製)で照度90mW/cm、温度63℃、湿度50%RHの条件で1000時間光照射した。
照射後、ストログラフVE10D(東洋精機製)を使用して、引っ張り試験を行い、破断強度を測定し、照射前の破断強度との差を下記の基準で評価し、破断強度変化として表1に記載した。
○: 照射後破断強度値/照射前破断強度値X100≧80 … 極めて良好
△:80>照射後破断強度値/照射前破断強度値X100≧50 … 良好
×:50>照射後破断強度値/照射前破断強度値X100 … 不良
【0134】
〔色相〕
更に、破断強度変化の評価における照射前と照射後の、色相を目視で観察し、その色相変化を評価した。○は色相変化なし、△はわずかに着色、×は大きく着色を表す。結果を表1に示す。
【0135】
〔耐光性〕
成形した各シートを、メタルハライドランプ(約290nm以下カットフィルター存在下)(商品名:アイスーパーUVテスター、岩崎電気製)で照度90mW/cm、温度63℃、湿度50%RHの条件で光照射した。
評価は以下のように判断し下表1に示した。
各シートにおいて光照射前の遮蔽率が1%である波長で、光照射後に遮蔽率が5%になるまでにかかった時間を評価した。比較例3を試験した際にかかった時間を1(基準)としたとき、耐光性を下記の基準で評価した。
◎:比較例3に対して4以上の場合
○:比較例3に対して2以上4未満の場合
△:比較例3に対して1以上2未満の場合
×:比較例3に対して0.1以上1未満の場合
【0136】
〔接着性〕
3mm厚みのガラス2枚の間に上記で作成した厚み0.5mmのシートを挟み、150℃15分で真空貼り合わせ機にて貼り合わせを行い、接着性を測定した。
シートを貼り合わせたガラスを、温度85℃、湿度85%RHの環境下に1000時間放置し、外観上の変化を評価した。○は外観変化なし、△はわずかな剥がれが存在、×は大きな剥がれが存在を表す。なお実用上は、△以上の評価が求められる。
【0137】
【表1】

【0138】
表1に記載の材料について説明する。
【0139】
樹脂
(P−1):エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー株式会社製、商品名:ウルトラセン751)
(P−2):エチレン−プロピレン共重合体(三井化学株式会社製、商品名:タフマーP0275)
(P−3):エチレン−ブテン共重合体(三井化学株式会社製、商品名:タフマーA4085)
(P−4):エチレン−アクリル酸エチル共重合体(住友化学工業株式会社製、商品名:アクリフトWH202)
(P−5):ポリビニルブチラール(積水化学株式会社製、商品名:エスレックBM−1)
【0140】
シランカップリング剤
(S−1):アリルトリメトキシシラン
(S−2):ビニルトリメトキシシラン
(S−3):ビニルトリエトキシシラン
(S−4):3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
(S−5):3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン
比較用シランカップリング剤
(S−6):3−アミノプロピルトリメトキシシラン
【0141】
【化31】

【0142】
【化32】

【0143】
紫外線吸収剤
本発明に係る紫外線吸収剤として、前掲の一般式(1)で表される化合物を使用した。表1に記載の紫外線吸収剤の番号は、前記具体例化合物の番号に対応する。
また比較用の紫外線吸収剤として、以下のa−1〜a−6を使用した。
a−1: TINUVIN1577(BASFジャパン株式会社製)
a−2: TINUVIN326(BASFジャパン株式会社製)
a−3: CHIMASSORB81(BASFジャパン株式会社製)
a−4: 2−ヒドロキシ−4−オクロキシベンゾフェノン
a−5: 下記構造の化合物
a−6: 下記構造の化合物
なおa−5及びa−6の化合物は、いずれもハメット則のσp値が正である置換基を有しない化合物である。
【0144】
【化33】

【0145】
【化34】

【0146】
表1の結果から明らかのように、一般式(1)で表される化合物、樹脂及び一般式(S1)で表されるシランカップリング剤を含有する実施例の太陽電池封止材は、一般式(1)で表される化合物を含有しない比較例1〜4及び7〜9の太陽電池封止材や、一般式(S1)で表されるシランカップリング剤を含有しない比較例5及び6の太陽電池封止材と比べて、高い耐光性を有すると共に、接着性に優れ、かつ、破断強度変化及び色相変化のような樹脂の劣化を抑制することが可能であった。
【符号の説明】
【0147】
31・・・強化ガラス(上部保護材)
32・・・太陽電池封止材
33・・・熱可塑性樹脂フィルム(下部保護材)
34・・・太陽電池(セル)
35・・・フレーム
36・・・封止樹脂
37・・・配線
38・・・接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物、樹脂及び下記一般式(S1)で表されるシランカップリング剤を含有する太陽電池封止材。
【化1】

[R1a、R1b、R1c、R1d及びR1eは、互いに独立して、水素原子又はヒドロキシ基を除く1価の置換基を表し、置換基のうち少なくとも1つは、ハメット則のσp値が正である置換基を表す。また置換基同士で結合して環を形成しても良い。R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pは、互いに独立して、水素原子又は1価の置換基を表す。また置換基同士で結合して環を形成しても良い。]
【化2】

[Rはアルキル基を表す。Rは重合性基を有する基を表す。Rはアルキル基を表す。xは1〜3の整数であり、yは1〜3の整数であり、zは0〜2の整数であり、x+y+zは4である。]
【請求項2】
前記重合性基が不飽和基である、請求項1に記載の太陽電池封止材。
【請求項3】
前記1価の置換基が、ハロゲン原子、置換又は無置換の炭素数1〜20のアルキル基、シアノ基、カルボキシル基、置換又は無置換のアルコキシカルボニル基、置換又は無置換のカルバモイル基、置換又は無置換のアルキルカルボニル基、ニトロ基、置換又は無置換のアミノ基、ヒドロキシ基、置換又は無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換又は無置換のアリールオキシ基、置換又は無置換のスルファモイル基、チオシアネート基、又は置換又は無置換のアルキルスルホニル基であり、前記1価の置換基が置換基を有する場合の置換基がハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルボニル基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、アリールオキシ基、スルファモイル基、チオシアネート基又はアルキルスルホニル基である、請求項1又は2に記載の太陽電池封止材。
【請求項4】
前記R1b、R1c及びR1dの少なくとも一つが、ハメット則のσp値が正である置換基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池封止材。
【請求項5】
前記ハメット則のσp値が正である置換基が、COOR、CONR、シアノ基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、ニトロ基及びSOMからなる群より選択される基である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池封止材。ここで、R及びRは、互いに独立して、水素原子又は1価の置換基を表す。Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す。
【請求項6】
前記ハメット則のσp値が正である置換基がCOOR、シアノ基又はトリフルオロメチル基である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の太陽電池封止材。ここで、Rは、水素原子又は1価の置換基を表す。
【請求項7】
前記R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pが、水素原子である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の太陽電池封止材。
【請求項8】
前記樹脂がエチレン系共重合体又はポリビニルアセタールである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の太陽電池封止材。
【請求項9】
前記樹脂がエチレン系共重合体であり、該エチレン系共重合体がエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、又はエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体である、請求項8に記載の太陽電池封止材。
【請求項10】
更に、架橋剤を含有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の太陽電池封止材。
【請求項11】
更に、架橋助剤を含有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の太陽電池封止材。
【請求項12】
シート状である請求項1〜11のいずれか1項に記載の太陽電池封止材。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の太陽電池封止材を有する太陽電池モジュール。

【図1】
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【公開番号】特開2012−114125(P2012−114125A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259578(P2010−259578)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】