説明

太陽電池構造体および太陽電池モジュール

【課題】太陽電池セルの薄型化に対応することができるとともに太陽電池モジュールの発電効率および特性を向上させることができ、さらには安価で簡易に作製することが可能な太陽電池構造体および太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】第1方向に配置された複数の太陽電池セルと太陽電池セルを接続する配線基板111とを備える太陽電池ストリングを有し、配線基板111には、セル接続用配線と、第1方向に隣接する太陽電池セル同士を接続する接続用電極と、第1方向の両端部に配置されて太陽電池セルが発生する電力を取り出すバスバー電極とが設けられ、太陽電池ストリングの複数が第1方向と交差する第2方向に複数配置され、隣り合うバスバー電極同士の少なくとも1組が導電性部材116または一体的にパターニングされた金属箔でによって電気的に接続されている太陽電池構造体と太陽電池モジュールである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池構造体および太陽電池モジュールに関し、特に、太陽電池セルの薄型化に対応することができるとともに太陽電池モジュールの発電効率および特性を向上させることができ、さらには安価で簡易に作製することが可能な太陽電池構造体および太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギ資源の枯渇の問題や大気中のCO2の増加のような地球環境問題等からクリーンなエネルギの開発が望まれており、特に、太陽電池セルを用いた太陽光発電が新しいエネルギ源として開発、実用化され、発展の道を歩んでいる。
【0003】
従来の太陽電池セルにおいては、たとえば単結晶または多結晶のシリコン基板の太陽光が入射する側の表面(受光面)にシリコン基板の導電型と反対の導電型となる不純物を拡散することによって受光面近傍にpn接合を形成するとともに、受光面に一方の電極を配置し、受光面の反対側にある表面(裏面)に他方の電極を配置して製造されたものが主流となっている。
【0004】
そして、上記の構成の太陽電池セルの複数をインターコネクタで電気的に接続することによって太陽電池ストリングを形成し、その太陽電池ストリングを樹脂で封止することによって太陽電池モジュールを作製して太陽光発電が行なわれている。
【0005】
図8に、従来の太陽電池モジュールの一例の模式的な断面図を示す。ここで、従来の太陽電池モジュールは、シリコン基板801のテクスチャ構造が形成された受光面上に反射防止膜802と共に受光面側電極(図示せず)を形成し、裏面に裏面側電極807を形成した太陽電池セルをインターコネクタ822で接続した太陽電池ストリングが透明樹脂818中に封止された構成を有している。また、太陽電池ストリングを封止した透明樹脂818の上面にはガラス基板817が設置されるとともに、下面には耐候性フィルム819が設置されており、その外周がアルミニウム枠820で取り囲まれている。また、太陽電池ストリングの両端部のインターコネクタ822には、他の太陽電池ストリングと電気的に接続するための接続用部材816が設けられている。
【0006】
現在、太陽光発電システムは、次第に普及が進んでいるが、火力発電等に比べて発電コストが高いため、さらに普及を進めるために発電コストの低減が強く求められている。
【0007】
発電コストを低減するための方法として、第1に、材料コストを低減する方法が挙げられる。第2に、太陽電池モジュールの発電効率を向上させる方法が挙げられる。すなわち、同一の材料コストで発電効率を向上させることができる場合には、相対的に発電コストの低減につながる。
【0008】
しかしながら、材料コストを低減するためにシリコン基板を薄型化した場合には、シリコン基板の薄型化に伴って太陽電池セルが薄型化した際に、太陽電池モジュールの作製時のインターコネクタによる太陽電池セルの配線作業において太陽電池セルに割れが発生することがあった。
【0009】
また、図8に示すように、インターコネクタ822を太陽電池セルの受光面側電極(図示せず)と他の太陽電池セルの裏面側電極807とを接続する際に、太陽電池セル間にインターコネクタ822を通すための隙間が必要となり、さらにその隙間は、太陽電池セルの端部にかかる負荷をできるだけ緩和するためにある程度の広さで開ける必要がある。そのため、太陽電池モジュール内における太陽電池セルの充填率が低くなり、ひいては、太陽電池モジュールの発電効率が低下する要因となっていた。
【0010】
また、近年、シリコン基板の裏面に第1導電型用電極と第2導電型用電極(すなわち、p型用電極とn型用電極)の双方を有するいわゆる裏面電極型太陽電池セルの開発が進められている。この裏面電極型太陽電池セルを用いることで、セル間の接続をセルの裏面側だけで行なうことができる。
【0011】
しかしながら、裏面電極型太陽電池セルにおいても、シリコン基板の薄型化による裏面電極型太陽電池セルの割れの発生の問題および太陽電池モジュールの発電効率の向上の問題がある。
【0012】
そこで、特許文献1においては、裏面電極型太陽電池セルの割れ防止および太陽電池モジュールのF.F向上のために、特許文献2においては、裏面電極型太陽電池セルの割れ防止のために、裏面電極型太陽電池セルを配線基板に接続する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2005−340362号公報
【特許文献2】特開2007−19334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1の方法においては、太陽電池モジュール内における裏面電極型太陽電池セルの充填率を向上させて、太陽電池モジュールの発電効率を向上させるという点についてまで想到するに至っていない。
【0015】
また、特許文献2の方法においては、1つの裏面電極型太陽電池セルに配線基板を接続してから、さらに配線基板を接続したそれぞれの裏面電極型太陽電池セル同士を接続するという複雑な工程を経て作製する必要がある。また、スルーホールを設けたプリント基板を用いて裏面電極型太陽電池セルを接続することで、太陽電池モジュール内の裏面電極型太陽電池セルの充填率を上げることを提案しているが、太陽電池モジュールのF.Fを低下させずに裏面電極型太陽電池セルの充填率を上げるという考えに至っていない。また、スルーホールを設けた両面プリント基板は、太陽電池モジュールへの使用を考えた場合には非常に高価であり、市販の太陽電池モジュールへの使用には適さない。
【0016】
上記の事情に鑑みて、本発明の目的は、太陽電池セルの薄型化に対応することができるとともに太陽電池モジュールの発電効率および特性を向上させることができ、さらには安価で簡易に作製することが可能な太陽電池構造体および太陽電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、第1方向に配置された複数の太陽電池セルと、太陽電池セルを接続する配線基板とを備える太陽電池ストリングを有し、配線基板には、セル接続用配線と、第1方向に隣接する太陽電池セル同士を接続する接続用電極と、第1方向の両端部に配置されて、太陽電池セルが発生する電力を取り出すバスバー電極とが設けられており、太陽電池ストリングの複数が第1方向と交差する第2方向に複数配置され、隣り合うバスバー電極同士の少なくとも1組が導電性部材によって電気的に接続されている太陽電池構造体である。
【0018】
また、本発明は、第1方向に配置された複数の太陽電池セルと、太陽電池セルを接続する配線基板とを備える太陽電池ストリングを有し、配線基板には、セル接続用配線と、第1方向に隣接する太陽電池セル同士を接続する接続用電極と、第1方向の両端部に配置されて太陽電池セルが発生する電力を取り出すバスバー電極とが設けられており、太陽電池ストリングの複数が第1方向と交差する第2方向に複数配置され、隣り合うバスバー電極同士の少なくとも1組が導電性部材によって電気的に接続されている太陽電池構造体である。
【0019】
ここで、本発明の太陽電池構造体において、太陽電池セルは、太陽電池セルの受光面側とは反対側の裏面にp型用電極およびn型用電極を備えた裏面電極型太陽電池セルであることが好ましい。
【0020】
また、本発明の太陽電池構造体においては、バスバー電極の少なくとも一部が、太陽電池セルの受光面側とは反対側に折り曲げられていることが好ましい。
【0021】
また、本発明の太陽電池構造体において、バスバー電極は、銅、アルミニウムおよび銀からなる群から選択された少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0022】
また、本発明の太陽電池構造体において、配線基板は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミドおよびエチレンビニルアセテートからなる群から選択された少なくとも1種を含む可撓性を有する基板であることが好ましい。
【0023】
さらに、本発明は、上記のいずれかの太陽電池構造体が樹脂で封止されている太陽電池モジュールである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、太陽電池セルの薄型化に対応することができるとともに太陽電池モジュールの発電効率および特性を向上させることができ、さらには安価で簡易に作製することが可能な太陽電池構造体および太陽電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の太陽電池モジュールの一例の模式的な断面図である。
【図2】図1に示す裏面電極型太陽電池セルの裏面の模式的な平面図である。
【図3】図1に示す配線基板の模式的な平面図である。
【図4】図2に示す裏面を有する裏面電極型太陽電池セルを図3に示す配線基板に電気的に接続して構成された太陽電池ストリングの模式的な概略断面図である。
【図5】本発明に用いられる太陽電池構造体の一例の模式的な平面図である。
【図6】本発明に用いられる太陽電池構造体の他の一例の模式的な平面図である。
【図7】図1に示す太陽電池モジュールを製造する方法の一例について図解するための模式的な断面図である。
【図8】従来の太陽電池モジュールの一例の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0027】
図1に、本発明の太陽電池モジュールの一例の模式的な断面図を示す。ここで、本発明の太陽電池モジュールにおいては、たとえばp型またはn型のシリコン基板101の裏面に形成されたパッシベーション膜103からの露出表面にn型領域104およびp型領域105がそれぞれ形成されている。そして、n型領域104上にn型用電極106が形成されるとともに、p型領域105上にp型用電極107が形成されており、シリコン基板101の受光面に反射防止膜102が形成された構成の裏面電極型太陽電池セル100を有している。なお、シリコン基板101の受光面はテクスチャ構造となっている。
【0028】
そして、裏面電極型太陽電池セル100のn型用電極106およびp型用電極107はそれぞれ、配線基板111上に設置されたn型用配線109およびp型用配線110に電気的に接続されており、隣接する裏面電極型太陽電池セルのうち一方の裏面電極型太陽電池セルのn型用電極106と他方の裏面電極型太陽電池セルのp型用電極107とが電気的に接続されることにより、隣接する裏面電極型太陽電池セルが直列に接続されて、太陽電池ストリングが構成されている。
【0029】
図2に、図1に示す裏面電極型太陽電池セル100の裏面の模式的な平面図を示す。ここで、n型用電極106およびp型用電極107はそれぞれ、シリコン基板101の裏面において櫛形状に形成されており、n型用電極106およびp型用電極107は、それぞれの櫛歯が噛み合わさって互い違いになるように設置されている。ここで、n型用電極106およびp型用電極107はそれぞれ金属材料で形成されることが好ましく、特に銀を含む材料で形成されることが好ましい。
【0030】
図3に、図1に示す配線基板111の模式的な平面図を示す。ここで、配線基板111の表面上には、n型用配線109とp型用配線110とが備えられているとともに、裏面電極型太陽電池セル100のn型用電極106に電気的に接続されるn型用配線109とp型用電極107に電気的に接続されるp型用配線110とを電気的に接続するための接続用電極113が備えられている。
【0031】
また、配線基板111の長手方向の一方の端部に設置されたp型用配線110には集電用のバスバーp電極114が電気的に接続されており、他方の端部に設置されたn型用配線109には集電用のバスバーn電極115が電気的に接続されている。
【0032】
さらに、バスバーp電極114およびバスバーn電極115にはそれぞれ位置決め用の開口部となるスリット112が形成されている。
【0033】
ここで、配線基板111としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、ポリイミドおよびエチレンビニルアセテートからなる群から選択された少なくとも1種の可撓性を有するフィルムを用いることが好ましい。
【0034】
また、n型用配線109、p型用配線110、接続用電極113、バスバーp電極114およびバスバーn電極115としては、銀、銅およびアルミニウムからなる群から選択された少なくとも1種を含む金属材料を用いることが好ましい。
【0035】
なお、図3においては、n型用配線109、p型用配線110、接続用電極113、バスバーp電極114およびバスバーn電極115のそれぞれの領域を破線によって分けているが、図3に示す分け方に限定されるものではない。
【0036】
図4に、図2に示す裏面を有する裏面電極型太陽電池セル100を図3に示す配線基板111に電気的に接続して構成された太陽電池ストリングの模式的な概略断面図を示す。ここで、裏面電極型太陽電池セル100のn型用電極106は、配線基板111上のn型用配線109と導電性物質108を介して電気的に接続されており、裏面電極型太陽電池セル100のp型用電極107は、配線基板111上のp型用配線110と導電性物質108を介して電気的に接続されている。ここで、導電性物質としては、たとえば、はんだまたは導電性接着剤等を用いることができる。
【0037】
図5に、本発明に用いられる太陽電池構造体の一例の模式的な平面図を示す。ここで、太陽電池構造体は、図2に示す裏面を有する裏面電極型太陽電池セル100を図3に示す配線基板111に電気的に接続して構成された隣接する太陽電池ストリングのうち一方の太陽電池ストリングのバスバーp電極114と他方の太陽電池ストリングのバスバーn電極115とを導電性部材116で電気的に接続することによって構成されている。
【0038】
図5に示す構成の太陽電池構造体においては、複数の裏面電極型太陽電池セル100を配線基板111上で電気的に接続して形成された太陽電池ストリング同士を電気的に接続することになるため、個々の太陽電池ストリングのハンドリングが容易であり、はんだや導電性接着剤等を用いた裏面電極型太陽電池セル100と配線基板111との接続のために使用するリフロー炉が小さくて済み、温度制御や作業性が容易であるとの利点がある。
【0039】
ここで、太陽電池モジュールのF.F(Fill Factor)を落とさないようにする観点からは、図5に示す太陽電池構造体においては、配線材の断面積を大きくすることが好ましく、特に太陽電池ストリングのバスバーp電極114と他方の太陽電池ストリングのバスバーn電極115および導電性部材116の断面積を大きくすることが重要である(図6においても同様)。
【0040】
図6に、本発明に用いられる太陽電池構造体の他の一例の模式的な平面図を示す。ここで、太陽電池構造体は、図2に示す裏面を有する複数の裏面電極型太陽電池セル100がp型用配線およびn型用配線が形成された1枚の配線基板111上に設置されて電気的に接続されることにより構成されている。
【0041】
また、図6に示す構成の太陽電池構造体においては、配線基板111が1枚しか用いられていないので、配線基板111同士を電気的に接続する必要がない点に利点がある。
【0042】
また、図6に示す太陽電池構造体において、太陽電池構造体の電気抵抗を低減する観点から、図6に示すように、裏面電極型太陽電池セル100の接続方向が反転する部分となるバスバー電極部122に導電性部材116を電気的に接続してもよい。
【0043】
なお、図5および図6に示す導電性部材116としては、導電性を有する材質からなる部材であれば特に限定されずに用いることができ、たとえば太陽電池分野で用いられている従来から公知のインターコネクタ等を用いることができる。
【0044】
そして、上記の構成の太陽電池構造体の裏面電極型太陽電池セル100の接続方向における両端部のバスバーp電極114およびバスバーn電極115が形成されている配線基板111の部分を裏面電極型太陽電池セル100の受光面側とは反対側に折り曲げた状態で太陽電池構造体を封止することによって、図1に示す太陽電池モジュールが得られる。
【0045】
ここで、太陽電池構造体は、たとえばガラス等からなる透明基板117と耐候性フィルム等からなる基材119との間のEVA等の透明樹脂118中に、太陽電池構造体の裏面電極型太陽電池セル100の接続方向における両端部が絶縁性の棒材121を軸として折り曲げられて封止される。そして、太陽電池構造体を封止している透明基板117、透明樹脂118および基材119の外周を取り囲むようにしてアルミニウム等の枠体120を嵌め込んで、図1に示す太陽電池モジュールが得られる。
【0046】
このように、バスバーp電極114、バスバーn電極115等のバスバー部が形成されている配線基板111の端部を裏面電極型太陽電池セル100の受光面側とは反対側に折り曲げた状態で太陽電池構造体を封止することによって、バスバー部および導電性部材116の設計自由度が上がり、太陽電池ストリング間の直列抵抗を低減するために、バスバー部および導電性部材116の幅を広くして断面積を大きくすることができるため、太陽電池モジュールの作製時のF.Fの低下を抑えることができ、高いF.Fの太陽電池モジュールを作製することができる。
【0047】
以下に、図7(a)〜(c)の模式的断面図を参照して、図1に示す太陽電池モジュールを製造する方法の一例について説明する。
【0048】
まず、図7(a)に示すように、上述した方法により、図5または図6に示す構成の太陽電池構造体を作製し、太陽電池構造体の両端部にそれぞれ形成されたスリット112の下方に絶縁性の棒材121を設置する。ここで、絶縁性の棒材121としては、たとえばアクリル等の絶縁材料からなる直径1〜2mm程度の棒材を用いることができる。また、棒材121は、裏面電極型太陽電池セル100の割れの発生を抑制する観点から、たとえば図7(a)に示すように、裏面電極型太陽電池セル100の接続方向の端部に配置された裏面電極型太陽電池セル100の外側に設置されることが好ましい。また、スリット112は、配線基板111上の配線の抵抗に影響が出ない程度の大きさに形成されることが好ましい。
【0049】
次に、図7(b)に示すように、棒材121を軸として、太陽電池構造体の両端部の配線基板111の部分を裏面電極型太陽電池セル100の受光面側とは反対側に折り曲げる。
【0050】
一般に、太陽電池構造体を透明樹脂118等に封止してその外周を枠体120で枠締めすると、透明基板117の周縁からたとえば5〜10mm程度の幅が枠体120で被覆されて発電に寄与しない影になる(太陽電池モジュールの受光面のうち枠体120による影以外の部分が太陽電池モジュールの受光部となる)。
【0051】
したがって、太陽電池モジュールの受光面内における裏面電極型太陽電池セル100の充填率に無駄が生じないように、配線基板111の折り曲げ後の太陽電池構造体の裏面電極型太陽電池セル100以外の周縁部(例えばバスバー部の一部や棒材121)が枠体120による影に収まるように、つまり、太陽電池モジュールの受光部には裏面電極型太陽電池セル100以外の部分をなるべく露出させないように設置されることが好ましい。
【0052】
また、ここでは、スリット112の部分を折り曲げ位置として棒材121を設置し、その棒材121を軸として太陽電池構造体の両端部の配線基板111の部分を折り曲げる形態について説明したが、本発明においては、棒材121を設置せずにスリット112の部分を折り曲げ位置として、裏面電極型太陽電池セル100の受光面側とは反対側に折り曲げてもよい。ただし、棒材121を用いずに折り曲げた場合には、折り曲げ部の折り目が鋭角になって配線が断線してしまう場合があることから、棒材121を軸として折り曲げることでその折り曲げ部分に対する負荷が軽減されるため、棒材121を使用して棒材121を軸として折り曲げることが好ましい。なお、棒材121は、太陽電池構造体の封止の際に取り外してもよく、そのまま残しておいてもよい。
【0053】
その後、図7(c)に示すように、太陽電池構造体の両端部の配線基板111の部分を裏面電極型太陽電池セル100の受光面側とは反対側に折り曲げた状態で、ガラス等の透明基板117と耐候性フィルム等の基材119との間の透明樹脂118中に封止し、その外周にアルミニウム等からなる枠体120を嵌め込むことによって、図1に示す構成の太陽電池モジュールを作製する。
【0054】
以上のようにして作製した太陽電池モジュールにおいては、太陽電池ストリング間の接続抵抗を低減するために配線の幅を広くする等の理由により、たとえば図5または図6に示される太陽電池構造体の裏面電極型太陽電池セル100の接続方向(たとえば図5および図6においては、図5および図6の紙面の上下方向)における太陽電池構造体の折り曲げ前の長さL1が、図1に示す裏面電極型太陽電池セル100の接続方向における太陽電池モジュールの受光部の長さL2よりも長くなる場合がある。
【0055】
このような場合でも、本発明においては、太陽電池構造体の両端部の配線基板111の部分を裏面電極型太陽電池セル100の受光面側とは反対側に折り曲げた状態で封止して太陽電池モジュールが作製されることから、太陽電池モジュールの受光部の面積に対する裏面電極型太陽電池100の受光面の総面積が占める割合である充填率を向上させることができるため、太陽電池モジュールの発電効率を向上することができる。また、本発明においては、配線基板111の配線の幅を広げて太陽電池ストリング間の接続抵抗を低減することができるため、太陽電池モジュールのF.F等の特性を向上することもできる。
【0056】
また、本発明においては、裏面電極型太陽電池セル100の裏面に配線基板111を設置することで電気的な接続が可能となり、従来の太陽電池セルの接続のように、インターコネクタを受光面から裏面に取り回す必要がなくなるため、太陽電池モジュールの作製時の裏面電極型太陽電池セル100への負荷が低減し、裏面電極型太陽電池セル100の割れの発生が低減する。したがって、本発明によれば、太陽電池モジュールの作製時の裏面電極型太陽電池セル100への負荷を低減することができるため、裏面電極型太陽電池セル100の薄型化への対応も可能となる。
【0057】
さらに、本発明においては、裏面電極型太陽電池セル100のそれぞれについて1枚づつ配線基板111を設ける必要がないことから、太陽電池モジュールの作製も容易化することができる。
【0058】
なお、本明細書において、裏面電極型太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの太陽光が入射する側の表面を受光面とし、受光面の反対側の表面を裏面とする。
【0059】
また、本発明においては、太陽電池セルとしては、上記で説明したように、シリコン基板等の半導体基板の裏面にp型用電極およびn型用電極の双方が形成された裏面電極型太陽電池セルを用いることが好ましい。
【0060】
また、上記においては、太陽電池構造体の裏面電極型太陽電池セル100の接続方向の両端部の双方を折り曲げる場合について説明したが、本発明においては太陽電池構造体の裏面電極型太陽電池セル100の接続方向の両端部のいずれか一方のみを折り曲げてもよい。ただし、太陽電池モジュールにおける裏面電極型太陽電池セル100の充填率を向上させる観点からは、太陽電池構造体の裏面電極型太陽電池セル100の接続方向の両端部の双方を折り曲げることが好ましい。
【0061】
また、本発明においては、シリコン基板以外の半導体基板を用いてもよく、p型とn型の導電型を入れ替えてもよい。
【実施例】
【0062】
まず、図2に示す構成の裏面を有する裏面電極型太陽電池セル100を用意する。ここで、裏面電極型太陽電池セル100の裏面は1辺が100mmの正方形であって、櫛形状のn型用電極106およびp型用電極107がそれぞれの櫛歯状電極が向かい合うように、かつ互いの櫛歯状電極が1本ずつ交互に配列されるように形成される。
【0063】
また、PENからなるフィルムからなる配線基板111の表面の全面に18μmの厚さの銅箔を形成した後に、図3に示す形状となるように、銅箔の一部をエッチングにより除去して、配線基板111上に残された銅箔からなるn型用配線109、p型用配線110、接続用電極113、バスバーp電極114およびバスバーn電極115を形成する。これにより、4枚の裏面電極型太陽電池セル100が直列に電気的に接続できるような配線が形成される。
【0064】
ここで、接続用電極113は、隣接する裏面電極型太陽電池セル100間の距離が1mmとなるように設計されている。また、スリット112より外側の銅箔は50mmとなるように設計されている。
【0065】
次に、リフロー炉を用いて、図4に示すように、裏面電極型太陽電池100のn型用電極106と配線基板111上のn型用配線109とをはんだからなる導電性物質108を介して電気的に接続するとともに、p型用電極107と配線基板111上のp型用配線110とをはんだからなる導電性物質108を介して電気的に接続することによって、裏面電極型太陽電池セル100を直列に接続した太陽電池ストリングを形成する。
【0066】
次に、図5に示すように、上記のようにして作製した太陽電池ストリングを4つ用意し、これらの太陽電池ストリングを導電性部材116としてインターコネクタを用いて直列に接続することによって、太陽電池構造体を作製する。ここで、インターコネクタからなる導電性部材116としては、太陽電池構造体の両端部の配線基板111を折り曲げたときに裏面電極型太陽電池セル100に負荷がかからないように、厚さ0.08mm、断面積が十分に大きくなるように幅30mmの銅箔をはんだコートした薄く幅の広いものを用いている。
【0067】
その後、ガラスからなる透明基板117にEVA(エチレンビニルアセテート)シートを設置した上に、裏面電極型太陽電池セル100の受光面側が下側になるように上記の太陽電池構造体を設置し、図7(a)に示すように、スリット112の位置に合わせて直径1.5mmのアクリル製の棒材121を設置する。
【0068】
その後、図7(b)に示すように、棒材121を軸として、スリット112の外側の太陽電池構造体の配線基板111の部分を裏面電極型太陽電池セル100の受光面側と反対側に折り曲げ、その上にEVAシートと耐候性フィルムからなる基材119を設置し、脱気加熱して重ね合わせたEVAシートを、さらに加熱することによってEVAを架橋することで太陽電池構造体をEVAからなる透明樹脂118中に封止する。
【0069】
最後に、枠体120により、基材119、透明樹脂118および透明基板117の積層体の外周を枠締めすることによって、図1に示す構成の太陽電池モジュールを作製する。ここで、太陽電池モジュールは、透明基板117の周縁から10mmの幅で影になる部分ができる。また、配線基板111を折り返したときに、裏面電極型太陽電池セル100よりも外側になる部分は5mmとなっている。また、枠体120の枠締めは、枠体120と枠体120に最近接する裏面電極型太陽電池セル100との距離が2mmとなるように行なっている。
【0070】
以上のようにして作製された太陽電池モジュールは、太陽電池モジュールの受光部に対して裏面電極型太陽電池セル100の充填率が非常に高くなるため、太陽電池モジュールの高い発電効率が得られる。また、太陽電池ストリング間の配線による直列抵抗を低くすることができるため、太陽電池モジュールの優れたF.Fを得ることができる。
【0071】
さらに、以上のようにして作製された太陽電池モジュールは、その作製が簡易であり、裏面電極型太陽電池セル100の薄型化にも対応することが可能である。
【0072】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明によれば、太陽電池セルの薄型化に対応することができるとともに太陽電池モジュールの発電効率および特性を向上させることができ、さらには簡易に作製することが可能な太陽電池構造体および太陽電池モジュールを提供することができる。
【符号の説明】
【0074】
100 裏面電極型太陽電池セル、101,801 シリコン基板、102,802 反射防止膜、103 パッシベーション膜、104 n型領域、105 p型領域、106 n型用電極、107 p型用電極、108 導電性物質、109 n型用配線、110 p型用配線、111 配線基板、112 スリット、113 接続用電極、114 バスバーp電極、115 バスバーn電極、116 導電性部材、117 透明基板、118,818 透明樹脂、119 基材、120 枠体、121 棒材、122 バスバー電極部、807 裏面側電極、816 接続用部材、817 ガラス基板、819 耐候性フィルム、820 アルミニウム枠、822 インターコネクタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に配置された複数の太陽電池セルと、前記太陽電池セルを接続する配線基板とを備える太陽電池ストリングを有し、
前記配線基板には、セル接続用配線と、前記第1方向に隣接する前記太陽電池セル同士を接続する接続用電極と、前記第1方向の両端部に配置されて、前記太陽電池セルが発生する電力を取り出すバスバー電極とが備えられており、
前記太陽電池ストリングの複数が前記第1方向と交差する第2方向に複数配置され、隣り合う前記バスバー電極同士の少なくとも1組が導電性部材によって電気的に接続されている、太陽電池構造体。
【請求項2】
第1方向に配置された複数の太陽電池セルと、前記太陽電池セルを接続する配線基板とを備える太陽電池ストリングを有し、
前記配線基板には、セル接続用配線と、前記第1方向に隣接する前記太陽電池セル同士を接続する接続用電極と、前記第1方向の両端部に配置されて前記太陽電池セルが発生する電力を取り出すバスバー電極とが備えられており、
前記太陽電池ストリングの複数が前記第1方向と交差する第2方向に複数配置され、隣り合う前記バスバー電極同士の少なくとも1組が一体的にパターニングされた金属箔で構成されることによって電気的に接続されている、太陽電池構造体。
【請求項3】
前記太陽電池セルは、前記太陽電池セルの受光面側とは反対側の裏面にp型用電極およびn型用電極を備えた裏面電極型太陽電池セルである、請求項1または2に記載の太陽電池構造体。
【請求項4】
前記バスバー電極の少なくとも一部が、前記太陽電池セルの受光面側とは反対側に折り曲げられている、請求項1から3のいずれか1項に記載の太陽電池構造体。
【請求項5】
前記バスバー電極は、銅、アルミニウムおよび銀からなる群から選択された少なくとも1種を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の太陽電池構造体。
【請求項6】
前記配線基板は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミドおよびエチレンビニルアセテートからなる群から選択された少なくとも1種を含む可撓性を有する基板である、請求項1から5のいずれか1項に記載の太陽電池構造体。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の太陽電池構造体が、樹脂で封止されている、太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−93610(P2013−93610A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−6309(P2013−6309)
【出願日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【分割の表示】特願2007−205681(P2007−205681)の分割
【原出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】