説明

太陽電池用カバーガラスの製造方法及び製造装置

【課題】太陽電池用カバーガラスの幅方向の厚さムラの発生を防止すること。
【解決手段】表面に規則的なパターンが刻印された第1ロール1と表面に不規則な凹凸が刻印された第2ロール2との間に溶融ガラス3を通すことによって太陽電池用カバーガラス22を成形する太陽電池用カバーガラスの製造方法であって、第2ロール2として、第1ロール1と第2ロール2の間を通過後の溶融ガラス3の幅方向の厚さが均一となるように幅方向のロール径が調整されたものが用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池用カバーガラスの製造方法及び製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、太陽電池に向かって入射光を集め案内することを可能にするテクスチャ付きガラス基板を有する太陽光発電モジュールが開示されている。また、そのガラス基板の製造方法として、溶融状態のガラスを2つの金属ロールの間を通すことによって成形すること、及び金属ロールとして表面にテクスチャを有するものを使用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−528483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
板ガラスをロールにて圧延成形する場合には、板ガラスの幅方向端部は中央部と比較して冷え易いため、幅方向に圧延ムラが生じ、板ガラスの幅方向に厚さムラが発生するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、幅方向の厚さムラの発生を防止できる太陽電池用カバーガラスの製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、表面に規則的なパターンが刻印された第1ロールと表面に不規則な凹凸が刻印された第2ロールとの間に溶融ガラスを通すことによって太陽電池用カバーガラスを成形する太陽電池用カバーガラスの製造方法であって、前記第2ロールとして、前記第1ロールと前記第2ロールの間を通過後の溶融ガラスの幅方向の厚さが均一となるように幅方向のロール径が調整されたものが用いられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第2ロールとして第1ロールと第2ロールの間を通過後の溶融ガラスの幅方向の厚さが均一となるように幅方向のロール径が調整されたものが用いられるため、太陽電池用カバーガラスの幅方向の厚さムラの発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】太陽電池モジュールの分解模式図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る太陽電池用カバーガラスの製造装置である。
【図3】第1ロール、第2ロール、及び溶融ガラスを溶融ガラスの進行方向から見た断面模式図である。
【図4】第1ロール、第2ロール、及び溶融ガラスを溶融ガラスの進行方向から見た断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0010】
まず、図1を参照して、太陽電池モジュール20について説明する。太陽電池モジュール20は、太陽エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池セル21と、太陽電池セル21を保護する太陽電池用カバーガラス(以下、単に「カバーガラス」という。)22と、太陽電池セル21とカバーガラス22との間に介在される樹脂材23とを備える。
【0011】
カバーガラス22は、透明な板ガラスである。カバーガラス22の入射光が入射する表面22aには、不規則な凹凸が形成される。この不規則な凹凸は、入射光を乱反射させるためのものであり防眩処理である。一方、カバーガラス22の太陽電池セル21に対峙する表面22bには、規則的なパターンが形成される。この規則的なパターンは、入射光を太陽電池セル21内に効率良く取り込むためのものである。
【0012】
次に、図2を参照して、カバーガラス22の製造装置100について説明する。
【0013】
製造装置100は、第1ロール1と第2ロール2の間にガラス素地である溶融ガラス3を通すことによって板状のカバーガラス22を成形するロールアウト成形装置である。
【0014】
溶融槽4内には溶融ガラス3が貯留される。溶融槽4の排出口4aには溶融ガラス3を第1ロール1と第2ロール2の間に案内するリップタイル5が接続される。リップタイル5には、溶融ガラス3が第1ロール1と第2ロール2に案内される際に、幅方向からの溶融ガラス3の漏れを防止するガイドブロック6が設けられる。溶融槽4の排出口4aには、溶融ガラス3の排出流量を調節するカットナイフ7が設けられる。
【0015】
第1ロール1は、固定装置8によって回転自在に支持される。また、第2ロール2は、固定装置9によって回転自在に支持される。
【0016】
第1ロール1と第2ロール2の間を通過して成形された成形ガラスは、搬送プレート10及び搬送ロール11を通じて搬送される。搬送プレート10は、成形ガラスが付着しないように冷却される。冷却には、風冷、水冷等によるクーラーが用いられる。
【0017】
溶融槽4から排出された溶融ガラス3は、成形温度まで冷却された後、第1ロール1と第2ロール2の間を通過して圧延成形される。第1ロール1の表面には規則的なパターンが刻印され、第2ロール2の表面には不規則な凹凸が刻印されている。したがって、溶融ガラス3が第1ロール1と第2ロール2の間を通過することによって、成形ガラスの一方の表面には第1ロール1に刻印された規則的なパターンが転写され、他方の表面には第2ロール2に刻印された不規則な凹凸が転写される。第1ロール1の表面に刻印された規則的なパターンの溝深さは220μm程度であり、第2ロール2の表面に刻印された不規則な凹凸の溝深さは5μm程度である。
【0018】
次に、図3及び図4を参照して、第1ロール1及び第2ロール2について詳しく説明する。
【0019】
厚さが4mm以下のカバーガラス22を製造する場合には、幅方向中央部の厚さが両端部の厚さと比較してやや厚くなってしまう。具体的には、幅方向中央部の厚さが両端部の厚さよりも0.1mm程度厚くなってしまう。これは、溶融ガラス3は成形温度になると粘度が高くなり、また、幅方向両端部の方が中央部と比較して固まり易い(冷え易い)ため、幅方向へ圧延される力に対して反力が生じるためであり、結果的として幅方向中央部がやや厚くなってしまう。
【0020】
一方、厚さが6mm以上のカバーガラス22を製造する場合には、幅方向両端部に延びきらなかったガラスが溜まり、幅方向両端部の厚さが中央部の厚さと比較してやや厚くなってしまう。
【0021】
そこで、第1ロール1と第2ロール2の間を通過後の溶融ガラス3の幅方向の厚さが均一となるように、第2ロール2として幅方向のロール径が調整されたものが用いられる。本明細書において、第1ロール1及び第2ロール2のロール径とは、第1ロール1及び第2ロール2の表面に刻印された溝を考慮しない場合のロール外径である。つまり、第1ロール1及び第2ロール2の表面に溝が形成されていないと仮定した場合のロール外径である。
【0022】
厚さが4mm以下のカバーガラス22を製造する場合には、幅方向中央部の厚さが両端部の厚さと比較してやや厚くなる傾向があるため、第2ロール2として、図3に示すような太鼓型の形状のものが用いられる。具体的には、第2ロール2は、幅方向左右両端部のロール径が同じであり、幅方向中央部のロール径が幅方向両端部のロール径と比較して大きい形状である。一方、厚さが6mm以上のカバーガラス22を製造する場合には、図4に示すようつつみ太鼓型の形状のものが用いられる。具体的には、第2ロール2は、幅方向左右両端部のロール径が同じであり、幅方向中央部のロール径が幅方向両端部のロール径と比較して小さい形状である。つまり、第2ロール2は、幅方向中央部と幅方向両端部のロール径が異なった径に調整される。また、第2ロール2は、ロール径が幅方向に曲面状に滑らかに連続的に変化するように形成される。このような形状の第2ロール2を用いることによって、第1ロール1と第2ロール2の間を通過した後の溶融ガラス3の幅方向の厚さを均一にすることができる。
【0023】
第1ロール1は、ロール径が幅方向に一様に形成される。第1ロール1は、成形ガラスの表面に規則的なパターンを転写するものであるため、ロール径が幅方向に一様である必要がある。これに対して、第2ロール2は、成形ガラスの表面に不規則な凹凸を転写するものであるため、ロール径が幅方向に一様である必要がない。したがって、第2ロール2では、幅方向中央部と両端部のロール径を異なった径に調整することが可能となる。
【0024】
第2ロール2の表面に刻印される不規則な凹凸は、第2ロール2の表面に砂粒を吹き付けるサンドブラスト処理によって加工される。また、第2ロール2のロール径の調整は、このサンドブラスト処理と同時に行われる。つまり、サンドブラスト処理によって第2ロール2の表面に不規則な凹凸を加工するのと同時に、幅方向のロール径も所望の径に調整される。第2ロール2のロール径は、吹き付ける砂粒の粒度、吹き付け圧力、吹き付け時間等を調節することによって調整される。第2ロール2のロール径は330〜350mmの範囲であり、好ましくは340〜350mmの範囲である。幅方向中央部と両端部のロール径の差は0.05〜0.25mm程度である。また、第2ロール2の幅方向の長さは3000〜3100mmである。
【0025】
以上に示す実施の形態によれば、第2ロール2として第1ロール1と第2ロール2の間を通過後の溶融ガラス3の幅方向の厚さが均一となるように幅方向のロール径が調整されたものが用いられるため、カバーガラス22の幅方向の厚さムラの発生を防止できる。
【0026】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0027】
例えば、上記実施の形態では、第1ロール1が溶融ガラス3の下方に配置され、第2ロール2が溶融ガラス3の上方に配置される場合について説明したが、第1ロール1と第2ロール2の配置を入れ替えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、太陽電池用カバーガラスの製造方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 第1ロール
2 第2ロール
3 溶融ガラス
4 溶融槽
4a 排出口
20 太陽電池モジュール
21 太陽電池セル
22 カバーガラス
100 太陽電池用カバーガラスの製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に規則的なパターンが刻印された第1ロールと表面に不規則な凹凸が刻印された第2ロールとの間に溶融ガラスを通すことによって太陽電池用カバーガラスを成形する太陽電池用カバーガラスの製造方法であって、
前記第2ロールとして、前記第1ロールと前記第2ロールの間を通過後の溶融ガラスの幅方向の厚さが均一となるように幅方向のロール径が調整されたものが用いられることを特徴とする太陽電池用カバーガラスの製造方法。
【請求項2】
前記第2ロールは、サンドブラスト処理によって表面に不規則な凹凸が刻印されると共に、当該サンドブラスト処理によって幅方向のロール径が調整されることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池用カバーガラスの製造方法。
【請求項3】
前記第2ロールは、幅方向中央部と両端部のロール径が異なった径に調整されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の太陽電池用カバーガラスの製造方法。
【請求項4】
表面に規則的なパターンが刻印された第1ロールと、
表面に不規則な凹凸が刻印された第2ロールと、を備え、
前記第1ロールと前記第2ロールの間に溶融ガラスを通すことによって太陽電池用カバーガラスを成形する太陽電池用カバーガラスの製造装置であって、
前記第2ロールは、前記第1ロールと前記第2ロールの間を通過後の溶融ガラスの幅方向の厚さが均一となるように幅方向のロール径が調整されてなることを特徴とする太陽電池用カバーガラスの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−65606(P2013−65606A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201944(P2011−201944)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】