説明

太陽電池用ポリエステルフィルム

【課題】 熱寸法安定性に優れ、優れた耐久性、特に耐加水分解性を備える太陽電池用ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 損失弾性率の最高温ピーク温度が120〜200℃であることを特徴とする太陽電池用ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池の構成部材、特に太陽電池の保護膜として用いる太陽電池用ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代のエネルギー源として太陽電池が注目を浴びており、建築分野を始め電気電子部品まで開発が進められている。
太陽電池の構成部材として、ガラスが一般に用いられてきたが、プラスチックフィルムを用いることも検討されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
太陽電池は、自然環境の下で使用され、日光や雨、風を受けるため、プラスチックを太陽電池の構成部材として用いるためには、高い耐久性、特に耐加水分解性を備えることが必要である。そこで、本発明の目的は、熱寸法安定性に優れ、優れた耐久性、特に耐加水分解性を備える太陽電池用ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち本発明は、損失弾性率の最高温ピーク温度が120〜200℃であることを特徴とする太陽電池用フィルムである。本発明はまた、太陽電池保護膜として用いられる損失弾性率の最高温ピーク温度が120〜200℃であることを特徴とする太陽電池用ポリエステルフィルムである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、熱寸法安定性に優れ、優れた耐久性、特に耐加水分解性を備える太陽電池用ポリエステルフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を詳細に説明する。
[損失弾性率の最高温ピーク温度]
本発明の太陽電池用ポリスエステルフィルムは、損失弾性率の最高温ピーク温度が120〜200℃、好ましくは120〜195℃、さらに好ましくは120〜190℃であることに特徴がある。損失弾性率の最高温ピーク温度が120℃未満であると、太陽電池用フィルムとして十分な耐加水分解性が得られない。他方、フィルムの製膜技術上、損失弾性率の最高温ピーク温度として200℃を超える温度を達成することは困難であり、最高温ピーク温度は高々200℃である。
【0007】
[ポリエステル]
損失弾性率の最高温ピーク温度を本発明の範囲とするために、本発明の太陽電池用ポリエステルフィルムは、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートからなる。
かかるポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートは、主たるジカルボン酸成分として2,6−ナフタレンジカルボン酸が用いられ、主たるグリコール成分としてエチレングリコールが用いられる。ここで「主たる」とは、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの基材層を構成するポリマーにおいて、全繰返し単位の少なくとも90モル%、好ましくは少なくとも95モル%を意味する。
【0008】
本発明におけるポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートは、単独でも他のポリエステルとの共重合体、2種以上のポリエステル混合体のいずれであってもかまわない。共重合体または混合体における他の成分は、繰返し構造単位の全モル数を基準として10モル%以下、さらに5モル%以下であることが好ましい。
【0009】
共重合体である場合、共重合体を構成する共重合成分として、分子内に2つのエステル形成性官能基を有する化合物を用いることができ、例えば、蓚酸、アジピン酸、フタル酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸等の如きジカルボン酸、p−オキシ安息香酸、p−オキシエトキシ安息香酸の如きオキシカルボン酸、或いはトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサンメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールスルホンのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ジエチレングリコール、ポリエチレンオキシドグリコールの如き2価アルコールを用いることができる。
【0010】
これらの化合物は1種のみ用いてもよく、2種以上を用いてもよい。またこれらの中で好ましくは酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、p−オキシ安息香酸であり、グリコール成分としてはトリメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールスルホンのエチレンオキサイド付加物である。
【0011】
また、本発明におけるポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートは、例えば安息香酸、メトキシポリアルキレングリコールなどの一官能性化合物によって末端の水酸基および/またはカルボキシル基の一部または全部を封鎖したものであってよく、また極く少量の例えばグリセリン、ペンタエリスリトール等の如き三官能以上のエステル形成性化合物で実質的に線状のポリマーが得られる範囲内で共重合したものであってもよい。
【0012】
本発明におけるポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートは、従来公知の方法、例えばジカルボン酸とグリコールの反応で直接低重合度ポリエステルを得る方法や、ジカルボン酸の低級アルキルエステルとグリコールとを従来公知のエステル交換触媒である、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、マンガン、コバルトを含む化合物の一種または二種以上を用いて反応させた後、重合触媒の存在下で重合反応を行う方法で得ることができる。重合触媒としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンのようなアンチモン化合物、二酸化ゲルマニウムで代表されるようなゲルマニウム化合物、テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラフェニルチタネートまたはこれらの部分加水分解物、蓚酸チタニルアンモニウム、蓚酸チタニルカリウム、チタントリスアセチルアセトネートのようなチタン化合物を用いることができる。
【0013】
エステル交換反応を経由して重合を行う場合は、重合反応前にエステル交換触媒を失活させる目的でトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、正リン酸等のリン化合物が通常は添加される。リン化合物の好ましい含有量は、リン元素としてのポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート中の含有量が20〜100重量ppmである。リン化合物の含有量が20ppm未満では、エステル交換反応触媒が完全に失活せず熱安定性が悪く、機械強度が低下する場合がある。一方、リン化合物の含有量が100ppmを超えると熱安定性が悪く、機械強度が低下する場合がある。
【0014】
なお、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートは、溶融重合後これをチップ化し、加熱減圧下または窒素などの不活性気流中において更に固相重合を施してもよい。
【0015】
本発明におけるポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートの固有粘度は、o−クロロフェノール中、35℃において、好ましくは0.40dl/g以上、さらに好ましくは0.40〜0.90dl/gである。固有粘度が0.40dl/g未満では工程切断が多発することがあり好ましくなく、0.90dl/gを超えると溶融粘度が高いため溶融押出しが困難であるうえ重合時間が長く不経済であり好ましくない。
【0016】
[不活性粒子]
本発明の太陽電池用ポリエステルフィルムは、フィルムを構成するポリエステル組成物の重量100重量%あたり不活性粒子を例えば5〜80重量%、好ましくは10〜70重量%、さらに好ましくは15〜60重量%含有してもよい。不活性粒子を含有する場合、5%未満であると太陽電池用フィルムに十分な反射光や白度が得られないことがあり好ましくなく、80%を超えると製膜時に切断が発生しやすく好ましくない。
【0017】
不活性粒子としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、二酸化珪素、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ケイ酸ソーダ、水酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化錫、三酸化アンチモン、カーボンブラック、二硫化モリブデン等の無機微粒子、アクリル系架橋重合体、スチレン系架橋重合体、架橋シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、ナイロン樹脂、ポリエチレンワックス等の有機微粒子を例示することができる。好ましくは、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、二酸化珪素を用いる。特に酸化チタンの中でもルチル型のものは、アナターゼ型のものよりも光線を長時間ポリエステルフィルムに照射した後の黄変が少なく、色差の変化を抑制するのに適している。
【0018】
不活性粒子の平均粒径は、好ましくは0.1〜3.0μm、さらに好ましくは0.2〜2.5μm、特に好ましくは0.3〜2.0μmである。平均粒径が0.1μm未満であると分散性が悪くなり、粒子の凝集が起こるため、生産工程上のトラブルが発生しやすく、フィルムに粗大突起を形成し、光沢の劣ったフィルムになる可能性があり好ましくない。3.0μmを超えるとフィルムの表面が粗くなり、光沢が低下するばかりか、適切な範囲に光沢度をコンロトールすることが困難となり好ましくない。
【0019】
ルチル型酸化チタンを用いる場合には、分散性を向上させるために、ステアリン酸等の脂肪酸およびその誘導体により処理して用いると、フィルムの光沢度を一層向上させることができるため好ましい。
【0020】
なお、ルチル型酸化チタンを用いる場合には、ポリエステルに添加する前に、精製プロセスを用いて、粒径調整、粗大粒子除去を行うことが好ましい。精製プロセスの工業的手段としては、粉砕手段で例えばジェットミル、ボールミルを適用することができ、分級手段としては、例えば乾式もしくは湿式遠心分離機を適用することができる。なお、これらの手段は2種以上を組み合わせ、段階的に精製してもよい。
【0021】
また、不活性粒子をポリエステル組成物に含有させる方法としては各種の方法を用いることができる。その代表的な方法として、下記のような方法を挙げることができる。
(ア) ポリエステル合成時のエステル交換反応もしくはエステル化反応終了前に添加、もしくは重縮合反応開始前に添加する方法。
(イ) ポリエステルに添加し、溶融混練する方法。
(ウ) 上記(ア)、(イ)の方法において不活性粒子を多量添加したマスターペレットを製造し、これらと添加剤を含有しないポリエステルとを混練して所定量の添加物を含有させる方法。
(エ) 上記(ウ)のマスターペレットをそのまま使用する方法。
【0022】
なお、前記(ア)のポリエステル合成時に添加する方法を用いる場合には、酸化チタンにおいてはグリコールに分散したスラリーとして、反応系に添加することが好ましい。
【0023】
一般的に不活性粒子は、凝集して粗大凝集粒子となることが多い。本発明では、粗大凝集粒子の個数を減らすために、製膜時のフィルターとして線径15μm以下のステンレス鋼細線よりなる平均目開き10〜100μm、好ましくは平均目開き20〜50μmの不織布型フィルターを用い、溶融ポリマーを濾過することが好ましい。
不活性粒子として、反射率の向上を目的として、白色以外にも黒色や青色等に着色したものを用いてもよい。
【0024】
[添加剤]
フィルムを構成するポリエステル組成物には、添加剤として、例えば酸化アルミニウム、酸化マグネシウムやアクリル樹脂、尿素樹脂、メラニン樹脂のような有機フィラー、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンターポリマー、オレフィン系アイオノマーのような他の樹脂、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤を本発明の範囲を逸脱しない範囲内で、必要に応じて混合して含有させてもよい。
【0025】
蛍光増白剤を用いる場合、蛍光増白剤は、ポリエステル組成物100重量部あたり好ましくは0.005〜0.2重量%、さらに好ましくは0.01〜0.1重量%で配合できる。0.005重量%未満では、350nm付近の波長域の反射率が十分でなく、反射板とした時に照度が十分なものとならないため好ましくない。0.2重量%を越えると、蛍光増白剤の持つ特有の色が現れてしまうため好ましくない。蛍光増白剤としては、市販品を用いることができ、例えば、OB−1(イーストマン社製)、Uvitex−MD(チバガイギー社製)、JP−Conc(日本化学工業所製)を用いることができる。
【0026】
また、本発明のポリエステルフィルムは、フィルムを構成するポリエステルと実質的に非相溶な樹脂成分を実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、ポリエステル組成物100重量%あたりの含有量が通常0〜3重量%、好ましくは0〜1%、さらに好ましくは0〜0.5%である。非相溶な樹脂を実質的に含有すると、太陽電池用ポリエステルフィルムとして求められる反射率や白度を得られるないため好ましくない。
【0027】
[易接着層]
本発明の太陽電池用ポリエステルフィルムは、特に太陽電池の表面保護膜または裏面保護膜として用いる。この場合、本発明のフィルムのうえには、太陽電池素子の封止材が設けられる。ポリエステルフィルムと封止材との密着性を向上させるために、ポリエステルフィルムと封止材との間に易接着層を設けることができる。
【0028】
この易接着層の厚みは、好ましくは10〜200nm、さらに好ましくは20〜150nmである。易接着層の厚みが10nm未満であると密着性を向上させる効果が乏しく好ましくない。200nmを超えると易接着層の凝集破壊が発生しやすくなり密着性が低下することがあり好ましくない。
【0029】
易接着層は、フィルムが形成された後に設てもよく、ポリエステルフィルムの整合工程で塗工により設けてもよい。特にポリエステルフィルムの製造において延伸・熱固定等を実施する場合、これらの工程が完了する前に塗布するのが好ましい。ここで、結晶配向が完了する前のプラスチックフィルムとは、未延伸フィルム、未延伸フィルムを縦方向または横方向の何れか一方に配向せしめた一軸配向フィルム、さらには縦方向および横方向の二方向に低倍率延伸配向せしめたもの(最終的に縦方向また横方向に再延伸せしめて配向結晶化を完了せしめる前の二軸延伸フィルム)等を含むものである。
【0030】
易接着層の構成材としては、ポリエステルフィルムとEVA(エチレンビニルアセテート)の双方に優れた接着性を示す構成材であることが好ましく、具体的には、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタンアクリル樹脂、シリコンアクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリシロキサン樹脂が例示できる。これらの樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を例えば混合物として用いてもよい。
【0031】
[フィルムの製造方法]
本発明の太陽電池用ポリエステルフィルムを製造するためには、上述のポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートをフィルム状に溶融押出し、キャスティングドラムで冷却固化させて未延伸フィルムとし、この未延伸フィルムをTg〜(Tg+60)℃で縦方向、横方向に倍率3.5〜7.0倍で2軸に延伸し、(Tm−100)〜(Tm―5)℃の温度で1〜100秒間熱固定するとよい。ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを用い、この製膜条件をとることによって、損失弾性率の最高温ピーク温度が120〜200℃である本発明の太陽電池用ポリエステルフィルムを得ることができる。ここで、Tgは、ポリマーのガラス転移温度、Tmはポリマーの融点を表わす。
【0032】
なお、延伸は一般に用いられる方法を用いることができ、例えばロールによる方法やステンターを用いる方法で行うことができる。縦方向、横方向を同時に延伸してもよく、また縦方向、横方向に逐次延伸してもよい。
【0033】
易接着層を設ける場合で、フィルムを逐次延伸法で延伸する場合、一方向に延伸した1軸配向フィルムに、水性塗液を塗布し、そのままもう一方向に延伸し熱固定する。
塗工方法としてはロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレー法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法等を単独または組み合わせて用いることができる。
【0034】
[フィルム厚み]
本発明の太陽電池用ポリエステルフィルムの厚みは、好ましくは25〜250μm、さらに好ましくは30〜220μm、特に好ましくは40〜200μmである。フィルム厚みが25μm未満であると太陽電池用フィルム、特に太陽電池用表面保護フィルムまたは裏面保護フィルムとしての適正な腰の強さが得られず加工性に優れないため好ましくない。250μmを超えるとこれ以上厚くしても反射率の上昇が望めないことから好ましくない。
【0035】
[熱収縮率]
本発明の太陽電池用ポリエステルフィルムは、150℃×30分における熱収縮率がフィルムの長手方向および幅方向のいずれも、好ましくは0〜1%、さらに好ましくは0〜0.8%、特に好ましくは0〜0.6%である。
【0036】
なお、長手方向とはフィルムが連続製膜されるときの進行方向である。この方向はまたフィルムの製膜方向、縦方向、MD方向と称することがある。幅方向とはフィルム面内方向における長手方向に直交する方向である。この方向はまた横方向またはTD方向と称することもある。150℃×30の熱収縮率が1%を超えると、封止材を用いてバックシートを熱接着する際に熱変形が大きく、反りが発生した部分的にシワや凹凸が発生して平面性が悪化するため好ましくない。
【0037】
[数平均分子量]
本発明の太陽電池用ポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、後述するゲル浸透クロマトグラフ法(GPC)で測定した数平均分子量(Mn)が、好ましくは5000〜40000、さらに好ましくは6000〜38000、特に好ましくは7000〜35000である。数平均分子量が5000未満であると耐加水分解性に欠けるため好ましくない。数平均分子量が40000を超えると実質上重合ができず、溶融成形性、二軸延伸性の面からも好ましくない。
【実施例】
【0038】
以下、実施例による本発明を更に詳細に説明する。なお、各特性値は以下の方法で測定した。なお、表において「PEN」はポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを、「PET」はポリエチレンテレフタレートを表わす。
【0039】
(1)数平均分子量(Mn)
ゲル浸透クロマトグラフ法(GPC)で、複合また単体のフィルムをサンプリングしてゲル浸透クロマトグラフGPC−244(WATERS社製)を用いて測定した。なお、複合フィルムは顕微鏡観察しながら該当フィルムを研磨してサンプリングした。
【0040】
(2)フィルム厚み
ポリエステルフィルムについて、電子マイクロメータ(アンリツ(株)製の商品名「K−312A型」)を用いて針圧30gにて10点フィルム厚みを測定し、その平均値をフィルム厚みとした。
【0041】
(3)熱収縮率
ポリエステルフィルムサンプルに30cm間隔で標点をつけ、荷重をかけずに150℃の温度のオーブンで30分間熱処理を実施し、熱処理後の標点間隔を測定して、フィルム連続製膜方向(MD方向)と、製膜方向に垂直な方向(TD方向)において、下記式にて熱収縮率Rを算出した。
R(%)={(L1−L2)/L1}×100
【0042】
(4)耐加水分解性
85℃−85%RHの雰囲気にフィルムを2000時間処理した後、ASTM−D61Tによりフィルムの破断伸度を測定し、処理前の破断伸度を100%にしたときの比(保持率)で比較し下記の基準で判定した。
○:保持率が50%以上
△:保持率が30%〜50%
×:保持率が30%未満
【0043】
(5)損失弾性率の最高温ピーク温度
動的粘弾性測定装置を用いて、ポリエステルフィルムのサンプルについて測定周波数10Hz、動的変位±25×10−4cmにて損失弾性率を求め、このときの最高温ピーク温度をもって示す。
【0044】
[実施例1]
ナフタレン−2,6−ジカルボン酸ジメチル100部、およびエチレングリコール60部を、エステル交換触媒として酢酸マンガン四水塩0.03部を使用し、150℃から238℃に徐々に昇温させながら120分間エステル交換反応を行った。途中反応温度が170℃に達した時点で三酸化アンチモン0.024部を添加し、エステル交換反応終了後、リン酸トリメチル(エチレングリコール中で135℃、5時間0.11〜0.16MPaの加圧下で加熱処理した溶液:リン酸トリメチル換算量で0.023部)を添加した。その後反応生成物を重合反応器に移し、290℃まで昇温し、27Pa以下の高真空下にて重縮合反応を行って、固有粘度が0.61dl/gの、実質的に粒子を含有しないポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを得た。
【0045】
このポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートのペレットを170℃で6時間乾燥後、押出機ホッパーに供給し、溶融温度305℃で溶融し、平均目開きが17μmのステンレス鋼細線フィルターで濾過し、3mmのスリット状ダイを通して表面温度60℃の回転冷却ドラム上で押出し、急冷して未延伸フィルムを得た。このようにして得られた未延伸フィルムを120℃にて予熱し、さらに低速、高速のロール間で15mm上方より900℃のIRヒーターにて加熱して縦方向に4.0倍に延伸した。続いてテンターに供給し、145℃にて横方向に4.5倍に延伸した。得られた二軸配向フィルムを240℃の温度で40秒間熱固定し厚み100μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。このフィルムをPEN−1とする。
【0046】
一方、12μmの二軸配向ポリエステルフィルム(帝人テュポンフィルム製‘テイジンテトロンフィルム NS−12)に酸化珪素(SiO)をスパッタリングし800オングストロームの厚さの酸化珪素膜形成フィルムを得た。該スパッタリングフィルムをウレタン系接着剤(東洋モートン社製 アドコード 76P1)を介してPEN−1のフィルムの片面(アルミニウム蒸着面の反対面)に積層した。上記接着剤は、主剤10重量部に対し硬化剤1重量部の割合で混合し、酢酸エチルで30重量%に調整し、スパッタリングフィルムの非スパッタリング面にグラビアロール法で溶剤乾燥後の塗布厚みが5μmとなるよう塗布した。乾燥温度は100℃とした。また、積層の条件はロールラミネーターで60℃の温度で1kg/cmの圧力で行い、硬化条件は60℃で3日間とした。得られた封止フィルムの特性を表1に示す。本実施例により、熱寸法安定性、耐加水分解性に優れたフィルムを得ることができた。
【0047】
[実施例2]
重縮合反応段階において、平均粒径が1.5μmである酸化チタン粒子を25重量%となるように添加し白色化させたこと以外は実施例1と同様の方法によって封止フィルムを得た。得られたフィルムは熱寸法安定性、耐加水分解性に優れたものであった。
【0048】
[実施例3]
縦延伸後にフィルムの片面に下記の塗剤Aを乾燥後の塗布厚みが0.05μmになるようにロールコーターで塗工したこと以外は実施例1と同様の方法によって封止フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。得られたフィルムは熱寸法安定性、耐加水分解性に優れたものであった。
【0049】
<塗剤A>
四つ口フラスコに、界面活性剤としてラウリルスルホン酸ナトリウム3部、およびイオン交換水181部を仕込んで窒素気流中で60℃まで昇温させ、次いで重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5部、亜硝酸水素ナトリウム0.2部を添加し、更にモノマー類である、メタクリル酸メチル54.9部、アクリル酸エチル40.0部、N−メチロールアクリルアミド3.0部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル2.1部の混合物を3時間にわたり、液温が60〜70℃になるよう調整しながら滴下した。滴下終了後も同温度範囲に2時間保持しつつ、攪拌下に反応を継続させ、次いで冷却して固形分が35%重量のアクリルの水分散体を得た。
【0050】
一方で、シリカフィラー(平均粒径:100nm)(日産化学株式会社製 商品名スノーテックスZL)を0.2重量%、N,N,N’,N’−テトラグリシジルメタキシリレンジアミン0.3重量%、濡れ剤として、ポリオキシエチレン(n=7)ラウリルエーテル(三洋化成株式会社製 商品名ナロアクティーN−70)の0.3重量%添加した水溶液を作成した。
アクリルの水分散体10重量部と水溶液90重量部を混合して、塗剤Aを作成した。
【0051】
[実施例4]
メチルテレフタレート96部、エチレングリコール58部、酢酸マンガン0.038部及び三酸化アンチモン0.041部を夫々反応器に仕込み、攪拌下内温が240℃になるまでメタノールを留出せしめながらエステル交換反応を行い、該エステル交換反応が終了したのちトリメチルホスフェート0.097部を添加した。引き続いて、反応生成物を昇温し、最終的に高真空下280℃の条件で重縮合を行って固有粘度([η])0.64のポリエチレンテレフタレートのチップを得た。
【0052】
次に、このポリエチレンテレフタレートのチップを170℃で3時間乾燥したのち、二軸押出機に供給し、280℃で溶融混練し、急冷固化してマスターチップを得た。
このポリエチレンテレフタレートのペレットを160℃で3時間乾燥後、押出機ホッパーに供給し、溶融温度295℃で溶融し、20℃に保持した冷却ドラム上で急冷固化せしめ未延伸フィルムを得た。該未延伸フィルムを95℃で縦方向に4.1倍に延伸し、次いで縦延伸後のフィルムの片面に上記の塗布層用の塗剤を乾燥後の塗膜厚みが0.1μmになるように塗布し、110℃で横方向に4.5倍に延伸したのち、215℃で熱固定し、厚み100μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。該フィルムに実施例1の方法で太陽電池用封止フィルムを作成した。得られた封止フィルムの特性を表1に示す。得られたフィルムは耐加水分解性に優れたものであった。
【0053】
[比較例1]
縦方向の延伸倍率を3.6倍、横方向の延伸倍率を3.9倍とし、二軸延伸フィルムを225℃で固定したこと以外は実施例4と同様の方法によって封止フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。得られたフィルムは熱寸法安定性に欠けるのに加え、耐加水分解性に劣るフィルムであった。
【0054】
[比較例2]
実施例4と同様に重合を行い、重縮合時間を調節することによって固有粘度([η])0.75のポリエチレンテレフタレートのチップを得た。このポリエチレンテレフタレートのマスターチップを、温度180℃、真空度0.5mmHg、時間2時間の真空乾燥を行い、160℃で3時間乾燥後、押出機ホッパーに供給し、溶融温度295℃で溶融し、20℃に保持した冷却ドラム上で急冷固化せしめ未延伸フィルムを得た。該未延伸フィルムを95℃で縦方向に3.1倍に延伸し、次いで縦延伸後のフィルムの片面に上記の塗布層用の塗剤を乾燥後の塗膜厚みが0.1μmになるように塗布し、110℃で横方向に3.3倍に延伸したのち、220℃で熱固定し、厚み100μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。耐加水分解性が不十分で、熱収縮率が大きく寸法安定性に欠けるフィルムであった。また、固有粘度が高いポリマーを使用するのは溶融粘度が高いため溶融押出が困難であるうえ、重合時間が長く不経済であるため好ましくない。
【0055】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、太陽電池の構成部材、特に太陽電池の保護膜として用いる太陽電池用ポリエステルフィルムを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
損失弾性率の最高温ピーク温度が120〜200℃であることを特徴とする太陽電池用ポリエステルフィルム。
【請求項2】
太陽電池保護膜として用いられる、請求項1記載の太陽電池用ポリエステルフィルム。