太陽電池用封止シートの製造方法
【課題】 本発明は、有機過酸化物、紫外線吸収剤及び光安定剤が含浸されてなる太陽電池用封止シートの製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の太陽電池用封止シートの製造方法は、液状の有機過酸化物に固体状の紫外線吸収剤及び固体状の光安定剤を３０〜４５℃にて溶解させて混合溶液を製造し、エチレン系共重合体ペレットと上記混合溶液とを回転容器内に供給して上記エチレン系共重合体ペレットを加熱しながら上記回転容器を回転させることによって上記エチレン系共重合体ペレット中に上記混合溶液を液状にて含浸させて混合溶液含有ペレットを製造し、この混合溶液含有ペレットを押出機に供給し溶融混練して上記押出機から押出して太陽電池用封止シートを製造することを特徴とする。
【解決手段】 本発明の太陽電池用封止シートの製造方法は、液状の有機過酸化物に固体状の紫外線吸収剤及び固体状の光安定剤を３０〜４５℃にて溶解させて混合溶液を製造し、エチレン系共重合体ペレットと上記混合溶液とを回転容器内に供給して上記エチレン系共重合体ペレットを加熱しながら上記回転容器を回転させることによって上記エチレン系共重合体ペレット中に上記混合溶液を液状にて含浸させて混合溶液含有ペレットを製造し、この混合溶液含有ペレットを押出機に供給し溶融混練して上記押出機から押出して太陽電池用封止シートを製造することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、太陽電池用封止シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
近年、原油などの化石燃料の枯渇や、化石燃料を使用することによって生じる地球温暖化などの環境破壊が世界的な問題となっている。化石燃料に代わるクリーンエネルギーとして、潮流、海流、波などの海洋エネルギー、太陽光発電、風力発電、水力発電、バイオマス、地熱、温度差の利用などの色々なエネルギーについて検討が行われている。
【０００３】
太陽光発電はクリーンエネルギーとして特に注目されており、太陽電池の開発が進められている。太陽電池モジュールは、太陽電池を表裏から太陽電池用封止シートによって封止すると共に、表側太陽電池用封止シート上にガラス板などの表面側透明保護部材が、裏側太陽電池用封止シート上に裏面側保護部材（バックシート）が積層一体化されてなる。
【０００４】
上記太陽電池用封止シートとして、特許文献１には、有機過酸化物を含有するエチレン共重合体からなる太陽電池モジュール用保護シートにおいて、有機過酸化物として、ジアルキルパーオキサイド（Ａ）と、アルキルパーオキシエステル及びパーオキシケタールからなる群より選ばれる少なくとも１種の過酸化物（Ｂ）を、（Ａ）／（Ｂ）の重量比が１０／９０〜９０／１０の割合で配合したものを用いた太陽電池モジュール用保護シートが開示されている。
【０００５】
ここで、合成樹脂中に添加剤を混合する場合には、合成樹脂と添加剤とを単に押出機に供給して溶融混練しただけでは添加剤が合成樹脂中に均一に混合しないことから、通常、添加剤を高濃度で合成樹脂中に含有させてなるマスターバッチを作製し、このマスターバッチを合成樹脂と共に押出機に供給して溶融混練することによって合成樹脂中に添加剤を均一に混合させることが行われている。
【０００６】
そして、特許文献１の太陽電池モジュール用保護シートは、実施例１において、エチレン−酢酸ビニル共重合体及び有機過酸化物、その他の添加剤を押出機に供給してＴダイ法によって製造されており、明確に記載されていないものの、この実施例１においても、有機過酸化物及びその他の添加剤を高濃度で含有するマスターバッチを予め作製しておき、この添加剤のマスターバッチとエチレン−酢酸ビニル共重合体とを押出機に供給してＴダイ法によって太陽電池モジュール用保護シートを製造しているものと考えられる。
【０００７】
上記添加剤のマスターバッチは、有機過酸化物や、紫外線吸収剤や光安定剤などの他の添加剤を合成樹脂と共に押出機に供給して溶融混練して製造される。従って、太陽電池モジュール用保護シートを製造するにあたって、有機過酸化物は押出機に二回に亘って供給されて溶融混練されており、複数回に亘る押出機内での加熱や混練に伴う摩擦熱によって分解し易い。
【０００８】
そのため、太陽電池モジュール用保護シートをＴダイ法によって製造するにあたって、有機過酸化物が押出機やＴダイ内で分解してエチレン−酢酸ビニル共重合体が架橋し、得られる太陽電池モジュール用保護シートの厚みが不均一となり、或いは、太陽電池モジュール用保護シートの表面に斑点状にゲルが発生する、所謂、フィッシュアイが発生し表面性が低下するといった問題点を有している。
【０００９】
そこで、特許文献２では、エチレン系共重合体シートの表面に有機過酸化物を液状で接触させ、有機過酸化物をシート内部に浸透させる架橋性シートの製造方法が開示されている。
【００１０】
しかしながら、上記架橋性シートの製造方法では、エチレン系共重合体シートの内部に有機過酸化物が充分に含浸しておらず、架橋性シートを架橋させた時に均一に架橋されないといった問題点を有している。
【００１１】
又、上記架橋性シートの製造方法では、紫外線吸収剤や光安定剤などの固体状の添加剤を架橋性シートの表面に付着させることはできても、架橋性シートの内部に含有させることが困難である。そして、架橋性シートの表面に固体状の添加剤を付着させただけでは太陽電池モジュールの製造工程中において固体状の添加剤が架橋性シートの表面から脱落する虞れがあり、架橋性シートに必要量の添加剤を含有させることができず、長期間に亘って使用される太陽電池用封止シートとして用いるには耐久性が不充分であるという問題を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【００１２】
【特許文献１】特開平１１−２６７９１号公報
【特許文献２】特開昭５９−１３８２３４号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【００１３】
本発明は、所望量の有機過酸化物、紫外線吸収剤及び光安定剤が含有されて均一に架橋することができ且つフィッシュアイのない太陽電池用封止シートの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【００１４】
本発明の太陽電池用封止シートの製造方法は、液状の有機過酸化物に固体状の紫外線吸収剤及び固体状の光安定剤を３０〜４５℃にて溶解させて混合溶液を製造し、エチレン系共重合体ペレットと上記混合溶液とを回転容器内に供給して上記エチレン系共重合体ペレットを加熱しながら上記回転容器を回転させることによって上記エチレン系共重合体ペレット中に上記混合溶液を液状にて含浸させて混合溶液含有ペレットを製造し、この混合溶液含有ペレットを押出機に供給し溶融混練して上記押出機から押出して太陽電池用封止シートを製造することを特徴とする。
【００１５】
エチレン系共重合体ペレットを構成しているエチレン系共重合体としては、特に限定されず、例えば、エチレンと、エチレンと共重合しうる共重合性モノマーとの共重合体であり、このような共重合性モノマーとしては、得られる太陽電池用封止シートの接着性及び透明性の観点から、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸エステルが挙げられ、酢酸ビニルが好ましい。なお、共重合性モノマーはエチレンと単独で共重合されていてもよいし、二種以上の共重合性モノマーがエチレンと共重合されていてもよい。
【００１６】
エチレン系共重合体中に含まれる共重合性モノマーの含有量は、少ないと、太陽電池用封止シートの透明性が低下して太陽電池モジュールの発電性能が低下することがあり、多いと、太陽電池用封止シートの製膜性が低下することがあるので、５〜５０重量％が好ましい。
【００１７】
エチレン系共重合体ペレットの製造方法としては、特に限定されず、例えば、エチレン系共重合体を押出機に供給し溶融混練して押出機からストランド状（棒状）又はシートに押出し、このストランド状又はシート状の成形体をペレタイザを用いてペレット状に切断してエチレン系共重合体ペレットを製造する方法などが挙げられる。
【００１８】
上記エチレン系共重合体ペレットに後述の要領で混合溶液を含浸させるが、この混合溶液は、液状の有機過酸化物に固体状の紫外線吸収剤及び固体状の光安定剤を溶解させて製造される。
【００１９】
本発明で用いられる有機過酸化物は、紫外線吸収剤及び光安定剤を溶解させる条件下及び回転容器内においてエチレン系共重合体ペレットに混合溶液を含浸させる条件下にて液状であればよい。
【００２０】
このような有機過酸化物としては、例えば、１，１−ジ（ｔ−ブチルパーオキシ）シクロヘキサン（１１１℃）、２，２−ジ（４，４−ジ−（ｔ−ブチルパーオキシ）シクロヘキシル）プロパン（１１４℃）、ｔ−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート（１１５℃）、ｔ−ブチルパーオキシラウレート（１１８℃）、ｔ−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート（１１８℃）、ｔ−ブチルパーオキシマレイン酸（１１９℃）、ｔ−ブチルパーオキシ−３，５，５−トリメチルヘキサノエート（１１９℃）、ｔ−ブチルパーオキシ２−エチルヘキシルモノカーボネート（１１９℃）、ｔ−ヘキシルパーオキシベンゾエート（１１９℃）、２，５−ジメチル−２，５−ジ（ベンゾイルパーオキシ）ヘキサン（１１９℃）、ｔ−ブチルパーオキシアセテート（１２１℃）、２，２−ジ（ｔ−ブチルパーオキシ）ブタン（１２２℃）、ｔ−ブチルパーオキシベンゾエート（１２５℃）、ｎ−ブチル４，４−ジ−（ｔ−ブチルパーオキシ）バレレート（１２７℃）、ジクミルパーオキサイド（１３６℃）、ジ−ｔ−ヘキシルパーオキサイド（１３６℃）、ｔ−ブチルクミルパーオキサイド（１３７℃）、ジ（２−ｔ−ブチルパーオキシイソプロピル）ベンゼン（１３８℃）、２，５−ジメチル−２，５−ジ（ｔ−ブチルパーオキシ）ヘキサン（１３８℃）などが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なお、括弧内の温度は、有機過酸化物の一時間半減期温度である。
【００２１】
有機過酸化物の一時間半減期温度は、低いと、エチレン系共重合体ペレットが回転容器内において分解するので、１００℃以上が好ましく、高すぎると、太陽電池モジュールを作成する時のラミ温度を高温度にする必要があるなど、生産性が低下することがあるので、１００〜１６０℃がより好ましく、１００〜１４０℃が特に好ましい。
【００２２】
紫外線吸収剤としては、有機過酸化物に溶解させる条件下において固体状、好ましくは粉状であって且つ３０〜４５℃にて有機過酸化物に溶解可能であればよい。なお、紫外線吸収剤は、回転容器内においてエチレン系共重合体ペレットに混合溶液を含浸させる条件下にて固化及び気化せず、有機過酸化物に溶解した状態を維持することが必要である。
【００２３】
このような紫外線吸収剤としては、例えば、２−ヒドロキシ−４−メトキシベンゾフェノン、２−ヒドロキシ−４−ｎ−オクトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。なお、紫外線吸収剤は単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【００２４】
有機過酸化物に溶解させる紫外線吸収剤の量は、少ないと、紫外線吸収剤の効果を得ることができないことがあり、多いと、有機過酸化物に紫外線吸収剤を完全に溶解させることができないことがあるので、有機過酸化物１００重量部に対して１０〜１０００重量部が好ましく、１００〜５００重量部がより好ましい。
【００２５】
光安定剤としては、有機過酸化物に溶解させる条件下において固体状、好ましくは粉状であって且つ３０〜４５℃にて有機過酸化物に溶解可能であればよい。なお、光安定剤は、回転容器内においてエチレン系共重合体ペレットに混合溶液を含浸させる条件下にて固化及び気化せず、有機過酸化物に溶解した状態を維持することが必要である。
【００２６】
このような光安定剤としてはヒンダードアミン系光安定剤が好ましい。ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、ビス（２，２，６，６−テトラメチル−４−ピペリジル）セバケート、コハク酸ジメチル−１−（２−ヒドロキシエチル）−４−ヒドロキシ−２，２，６，６−テトラメチルピペリジン重縮合物、テトラキス（２，２，６，６−テトラメチル−４−ピペリジル）−１，２，３，４−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ｛［６−［（１，１，３，３‐テトラメチルブチル）アミノ］−１，３，５−トリアジン−２，４−ジイル］［（２，２，６，６−テトラメチル−４−ピペリジル）イミノ］ヘキサメチレン［（２，２，６，６−テトラメチル−４−ピペリジル）イミノ］｝などが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されもよい。
【００２７】
有機過酸化物に溶解させる光安定剤の量は、少ないと、光安定剤の効果を得ることができないことがあり、多いと、有機過酸化物に光安定剤を完全に溶解させることができないことがあるので、有機過酸化物１００重量部に対して１０〜１０００重量部が好ましく、１００〜５００重量部がより好ましい。
【００２８】
混合溶液は、有機過酸化物に紫外線吸収剤及び光安定剤を３０〜４５℃にて溶解させて製造される。なお、有機過酸化物に紫外線吸収剤及び光安定剤を溶解させる際には加圧及び減圧を行わず常圧下にて行われることが好ましい。このように、固体状である紫外線吸収剤及び光安定剤を液状の有機過酸化物に溶解させて混合溶液としておくことによって、後述する要領で混合溶液をエチレン系共重合体ペレットに含浸させる際に、紫外線吸収剤及び光安定剤を有機過酸化物と共にエチレン系共重合体ペレットに内部まで充分に含浸させてなる混合溶液含有ペレットを製造することができる。
【００２９】
そして、混合溶液含有ペレットを用いて押出成形によって太陽電池用封止シートを製造することによって、有機過酸化物、紫外線吸収剤及び光安定剤が全体的に略均一に含有されてなる太陽電池用封止シートを製造することができる。
【００３０】
更に、紫外線吸収剤及び光安定剤は、混合溶液含有ペレットの内部に含浸された状態となっているので、混合溶液含有ペレットを用いて太陽電池用封止シートを製造する工程中に、混合溶液含有ペレットに含有させた紫外線吸収剤及び光安定剤が脱落してしまうことはなく、混合溶液含有ペレットを用いることによって太陽電池用封止シートに所望量の紫外線吸収剤及び光安定剤を精度良く含有させることができ、耐久性に優れた太陽電池用封止シートを製造することができる。
【００３１】
有機過酸化物に紫外線吸収剤及び光安定剤を溶解させる要領としては、特に限定されず、例えば、有機過酸化物、紫外線吸収剤及び光安定剤を公知の撹拌装置に供給して有機過酸化物が３０〜４５℃となるように加熱して有機過酸化物に紫外線吸収剤及び光安定剤を溶解させればよい。
【００３２】
有機過酸化物に紫外線吸収剤及び光安定剤を溶解させる温度は、低いと、有機過酸化物に紫外線吸収剤又は光安定剤を溶解させることができないことがあり、高いと、有機過酸化物が分解する虞れがあるので、有機過酸化物が３０〜４５℃となるように調整される。
【００３３】
上記撹拌装置としては、特に限定されないが、撹拌翼を備えた撹拌装置が好ましい。撹拌翼としては、例えば、タービン翼、プロペラ翼、パドル翼、タービン翼、糸巻翼、馬蹄翼、リボン翼などが挙げられ、タービン翼が好ましい。
【００３４】
上記混合溶液はエチレン系共重合体ペレットと共に回転容器内に供給されるが、回転容器内に供給する混合溶液の総量は、少ないと、得られる太陽電池用封止シートの架橋性が低下し、太陽電池用封止シートを充分に架橋することができないことがあり、多いと、太陽電池用封止シートの表面に余分な有機過酸化物がブリードアウトすることがあるので、回転容器内に供給されるエチレン系共重合体ペレットの総量１００重量部に対して０．３〜７０重量部が好ましく、５〜６０重量部がより好ましい。
【００３５】
次に、エチレン系共重合体ペレットと混合溶液とを回転容器内に供給する。この回転容器としては、エチレン系共重合体ペレットと混合溶液とを混合させてエチレン系共重合体ペレットに混合溶液を含浸させることができればよい。このような回転容器を備えた装置としては、タンブラーミキサー、ロータリーミキサーなどが挙げられ、タンブラーミキサーが好ましい。
【００３６】
そして、回転容器を回転させて、エチレン系共重合体ペレットと混合溶液とを回転容器内において攪拌、接触させて、混合溶液をエチレン系共重合体ペレットに含浸させて混合溶液含有ペレットを製造する。なお、エチレン系共重合体ペレットは、回転容器を回転させる前にエチレン系共重合体ペレットを回転容器内に全量、供給することが好ましい。一方、混合溶液は、回転容器を回転させる前に回転容器内に全量、供給してもよいし、分割して供給してもよいが、エチレン系共重合体ペレットに均一に含浸させることができるので、回転容器内に分割して供給することが好ましい。
【００３７】
エチレン系共重合体ペレットに混合溶液を含浸させるときのエチレン系共重合体ペレットの温度は、低いと、エチレン系共重合体ペレットに混合溶液を含浸させるのに長時間を要し、高いと、エチレン系共重合体ペレット同士が融着し、或いは、エチレン系共重合体ペレットが回転容器の内面に融着して、エチレン系共重合体ペレットに混合溶液を均一に含浸できないので、２５〜４５℃が好ましく、３０〜４０℃がより好ましい。エチレン系共重合体ペレットの温度とは、エチレン系共重合体ペレットの表面温度をいう。エチレン系共重合体ペレットに混合溶液を含浸させるときも加圧及び減圧をせずに常圧下にて行われることが好ましい。
【００３８】
又、エチレン系共重合体ペレットに混合溶液を含浸させる時間は、短いと、混合溶液をエチレン系共重合体ペレットにその内部まで充分に含浸させることができないことがあり、長くても、エチレン系共重合体ペレットに混合溶液を含浸させる効果に変化はないので、２〜７時間が好ましく、３〜５時間がより好ましい。
【００３９】
なお、回転容器内には、エチレン系共重合体及び有機過酸化物以外に、太陽電池用封止シートの物性を損なわない範囲内において、架橋助剤、カップリング剤などの添加剤を供給してもよい。
【００４０】
架橋助剤としては、特に限定されず、例えば、アリル基、ビニル基、アクリロイル基又はメタクリロイル基を２個以上有する多官能モノマーが挙げられ、このような多官能モノマーとしては、例えば、フタル酸ジアリル、イタコン酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルフォスフェート、ジビニルベンゼン；１，６−ヘキサンジオールジ（メタ）アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールＡジ（メタ）アクリレート、トリメチロールプロパントリ（メタ）アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ（メタ）アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ（メタ）アクリレート、ε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールなどの（メタ）アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールの（メタ）アクリレートなどが挙げられ、単独で使用されてもよいし、二種以上が併用されてもよい。
【００４１】
回転容器に供給される架橋助剤の総量は、少ないと、太陽電池用封止シートの架橋が不充分となることがあり、多いと、太陽電池用封止シートの製膜時に押出機やダイ内において架橋が進行してゲルを生じ、或いは、厚みの不均一な太陽電池用封止シートしか得られないことがあるので、回転容器内に供給するエチレン系共重合体ペレットの総量１００重量部に対して０．０１〜２０重量部が好ましい。
【００４２】
上記カップリング剤としては、特に限定されず、例えば、アミノ基、グリシジル基、メタクリロキシ基及びメルカプト基からなる群より選ばれた一種又は二種以上の官能基を有するシランカップリング剤が好適に用いられ、例えば、３−アミノプロピルトリエトキシシラン、３−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、３−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、３−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【００４３】
回転容器に供給されるカップリング剤の総量は、少ないと、カップリング剤の効果が得られ難くなり、多いと、エチレン系共重合体ペレットに含浸されずに残ることがあるので、回転容器内に供給するエチレン系共重合体ペレットの総量１００重量部に対して０．１〜１０重量部が好ましい。
【００４４】
上述のように、エチレン系共重合体ペレットに混合溶液を含浸させるにあたって、回転容器内にエチレン系共重合体ペレット及び混合溶液、必要に応じて添加剤を供給して回転容器を回転させているので、エチレン系共重合体ペレットや混合溶液が、攪拌羽根を有する攪拌装置を用いた場合のように攪拌羽根との間において摩擦熱を受けることはなく、有機過酸化物を分解させることなく、エチレン系共重合体ペレットに有機過酸化物を確実に含浸させている。この際、有機過酸化物には紫外線吸収剤及び光安定剤が溶解しているので、紫外線吸収剤及び光安定剤も有機過酸化物と共にエチレン系共重合体ペレットに含浸し、よって、エチレン系共重合体ペレットには有機過酸化物と共に紫外線吸収剤及び光安定剤が確実に含浸される。
【００４５】
そして、回転容器内に混合溶液以外の添加剤を供給した場合、回転容器内においてエチレン系共重合体ペレットに混合溶液を含浸させる条件下にて添加剤が液状である場合には、エチレン系共重合体ペレットに混合溶液と共に添加剤も確実に含浸される。又、回転容器内においてエチレン系共重合体ペレットに混合溶液を含浸させる条件下にて添加剤が固体状である場合には、エチレン系共重合体ペレットに混合溶液が付着することによって、エチレン系共重合体ペレットの表面に粘着性が発現し、この粘着性によって固体状の添加剤がエチレン系共重合体ペレットの表面に均一に且つ確実に付着する。
【００４６】
次に、混合溶液含有ペレットと、このペレットとは別の有機過酸化物を含有していないエチレン系共重合体ペレットとを押出機に供給し必要に応じて有機過酸化物の一時間半減期温度よりも低い温度で溶融混練して押出機の先端に取り付けたＴダイなどのダイから押し出して太陽電池用封止シートを得ることができる。なお、有機過酸化物が二種以上含有されている場合には、最も低い有機過酸化物の一時間半減期温度よりも低い温度にて溶融混練すればよい。なお、押出機に混合溶液含有ペレットのみを供給してもよい。
【００４７】
このように、本発明では、有機過酸化物は押出機内を一回だけ通過するものであるので、有機過酸化物が、押出機内における加熱や、スクリュー羽根との摩擦熱によって分解するのをできるだけ抑えることができ、よって、有機過酸化物が押出機内やダイ内において不測に分解し、得られる太陽電池用封止シートの厚みが不均一となり或いは太陽電池用封止シートの表面にフィッシュアイが生じるなどの問題は生じない。
【００４８】
更に、混合溶液含有ペレットには所望量の紫外線吸収剤及び光安定剤が含有されているので、上述のようにして得られた太陽電池用封止シートには所望量の紫外線吸収剤及び光安定剤が含有されており、太陽電池用封止シートは優れた耐久性を有している。
【００４９】
又、後述する太陽電池モジュールの製造時において、太陽電池、表面側透明保護部材又は裏面側保護部材と、太陽電池用封止シートとの間における脱気性を向上させるために、太陽電池用封止シートの表面にエンボス加工を施すことが好ましい。
【００５０】
太陽電池用封止シートの表面にエンボス加工を施す方法としては、特に限定されず、Ｔダイから押出された直後の溶融シートを、表面にエンボス模様が施されたエンボスロールと、このエンボスロールに対峙して配設されたゴムロールとの間に供給し、エンボスロールを溶融シートに押圧させて、太陽電池用封止シートの表面にエンボス加工を施す方法が挙げられる。なお、一旦製造された太陽電池用封止シートを再度、加熱して溶融状態とした上で上述の要領でエンボス加工を施してもよい。
【００５１】
そして、本発明の太陽電池用封止シートを用いた太陽電池モジュールの製造方法としては、例えば、（１）太陽電池の表面に表側太陽電池用封止シートを介して表面側透明保護部材を、裏面に裏側太陽電池用封止シートを介して裏面側保護部材を積層して積層体を製造し、この積層体を減圧下にて加熱することによって表裏太陽電池用封止シートを架橋させながら太陽電池を表裏太陽電池用封止シートによって表裏から封止すると共に太陽電池の表裏面に表裏太陽電池用封止シートを介して保護部材を積層一体化させる太陽電池モジュールの製造方法、（２）基板上に、光の照射によって電気を発生させる薄膜状の太陽電池素子が形成されてなる太陽電池を用意し、この太陽電池の基板における太陽電池素子の形成面上に太陽電池用封止シートを積層すると共に太陽電池用封止シート上に裏面側保護部材を積層して積層体を製造し、この積層体を減圧下にて加熱することによって太陽電池用封止シートを架橋させながら太陽電池素子を太陽電池用封止シートと基板とによって表裏から封止すると共に太陽電池素子上に太陽電池用封止シートを介して裏面側保護部材を積層一体化させる太陽電池モジュールの製造方法が挙げられる。
【００５２】
なお、積層体を加熱する際の条件としては、有機過酸化物の一分間半減期温度にて５〜１０分間に亘って加熱すればよい。例えば、有機過酸化物の一分間半減期温度が１６０℃であれば、１６０℃にて５〜１０分間に亘って積層体を加熱すればよい。
【００５３】
又、上記（２）にて用いられる太陽電池における基板としては、特に限定されず、例えば、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォンなどの耐熱性樹脂からなるシートが挙げられる。又、薄膜状の太陽電池素子は、単結晶シリコン、単結晶ゲルマニウム、多結晶シリコン、微結晶シリコンなどの結晶系半導体、アルモルファスシリコンなどのアモルファス系半導体、ＧａＡｓ、ＩｎＰ、ＡｌＧａＡｓ、ＣｄＳ、ＣｄＴｅ、Ｃｕ2Ｓ、ＣｕＩｎＳｅ2、ＣｕＩｎＳ2などの化合物半導体、フタロシアニン、ポリアセチレンなどの有機半導体などから汎用の要領で形成される。
【００５４】
上記（１）で用いられる太陽電池としては、例えば、光が照射されると電流を生じる機能を有するシリコン半導体素子やセレン半導体素子のウエハをインターコネクターを用いて直接又は並列に接続してなる太陽電池素子を備えた太陽電池などが挙げられる。
【発明の効果】
【００５５】
本発明の太陽電池用封止シートの製造方法は、上述のように、エチレン系共重合体ペレットに混合溶液を含浸させるにあたって、エチレン系共重合体ペレットと混合溶液とを回転容器に供給して回転容器を回転させているので、エチレン系共重合体ペレットと有機過酸化物に摩擦応力や剪断応力をできるだけ加えることなく、エチレン系共重合体ペレットに有機過酸化物を該有機過酸化物を分解させることなく均一に含浸させて混合溶液含有ペレットを製造することができる。
【００５６】
更に、固体状の紫外線吸収剤及び固体状の光安定剤を予め有機過酸化物に溶解させて均一な混合溶液としているので、固体状の紫外線吸収剤及び光安定剤をエチレン系共重合体ペレットに容易に内部まで含浸させることができ、そして、その後の製造工程においても、混合溶液含有ペレットから紫外線吸収剤及び光安定剤が不測に脱落するようなことはなく、混合溶液含有ペレットには所望量の紫外線吸収剤及び光安定剤を含有、維持させた上で太陽電池用封止シートの製造に供することができ、得られる太陽電池用封止シートには所望量の紫外線吸収剤及び光安定剤が所望量、精度良く含有されている。
【００５７】
そして、上記混合溶液含有ペレットを用いて押出機から汎用の要領で押出すことによって太陽電池用封止シートを製造しているので、有機過酸化物を押出機に供給する回数を一回とし、有機過酸化物が押出機内において熱や摩擦を受ける時間を短くして分解するのを概ね防止している。
【００５８】
従って、得られる太陽電池用封止シートは、この太陽電池用封止シートに含まれている有機過酸化物の分解が防止されており、厚みが均一であり且つフィッシュアイなどが生じておらず表面平滑性にも優れている。
【００５９】
このような太陽電池用封止シートを用いて太陽電池を封止することによって、太陽電池を確実に封止することができると共に、太陽電池の封止時に充分に架橋させて耐候性に優れたものとし、更に、太陽電池用封止シートには紫外線吸収剤及び光安定剤が精度良く所望量含有されているので紫外線によるエチレン系共重合体の劣化をできるだけ抑えることができ、太陽電池の性能を長期間に亘って確実に維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【００６０】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【００６１】
（実施例１）
液状の有機過酸化物としてジクミルパーオキサイド（一時間半減期温度：１３６℃）１００重量部と、紫外線吸収剤として２−ヒドロキシ−４−ｎ−オクトキシベンゾフェノン３００重量部と、光安定剤としてビス（２，２，６，６−テトラメチル−４−ピペリジル）セバケート３００重量部とを攪拌翼を備えた撹拌装置に供給し、ジクミルパーオキサイドの温度が４０℃となるように加圧及び減圧をすることなく常圧下にて加熱、調整しながら撹拌翼を回転させて撹拌して、ジクミルパーオキサイドに２−ヒドロキシ−４−ｎ−オクトキシベンゾフェノン及びビス（２，２，６，６−テトラメチル−４−ピペリジル）セバケートの全量を溶解させて混合溶液を製造した。
【００６２】
次に、エチレン−酢酸ビニル共重合体ペレット（酢酸ビニル含有量：２５重量％、メルトフローレイト：２０ｇ／１０分）１００重量部及び上記混合溶液５０重量部をタンブラーの回転容器（タンブラーミキサー）に供給してエチレン系共重合体ペレットが４０℃となるように加熱しながら加圧及び減圧をすることなく常圧下にて回転容器を３時間に亘って回転させてエチレン−酢酸ビニル共重合体ペレットに混合溶液を含浸させて混合溶液含有ペレットを製造した。なお、混合溶液は、エチレン−酢酸ビニル共重合体ペレットに含浸させている工程中は均一な溶液であった。
【００６３】
得られた混合溶液含有ペレット１０重量部と、有機過酸化物及びその他の添加剤を一切含有していないエチレン−酢酸ビニル共重合体ペレット（酢酸ビニル含有量：２５重量％、メルトフローレイト：２０ｇ／１０分）９０重量部とを押出機に供給し１２０℃にて溶融混練してＴダイから吐出量１５ｋｇ／時間で押出して厚みが５００μｍの太陽電池用封止シートを得た。
【００６４】
（実施例２）
実施例１と同様の要領で混合溶液を製造した。次に、エチレン−酢酸ビニル共重合体ペレット（酢酸ビニル含有量：２５重量％、メルトフローレイト：２０ｇ／１０分）１００重量部、上記混合溶液５０重量部、架橋助剤としてトリアリルイソシアヌレート３重量部、及び、カップリング剤として３−アミノプロピルトリエトキシシラン１重量部をタンブラーの回転容器（タンブラーミキサー）に供給してエチレン系共重合体ペレットが４０℃となるように加熱しながら加圧及び減圧をすることなく常圧下にて回転容器を３時間に亘って回転させてエチレン−酢酸ビニル共重合体ペレットに混合溶液、トリアリルイソシアヌレート及び３−アミノプロピルトリエトキシシランを含浸させて混合溶液含有ペレットを製造した。なお、混合溶液は、エチレン−酢酸ビニル共重合体ペレットに含浸させている工程中は均一な溶液であった。
【００６５】
得られた混合溶液含有ペレット１０重量部と、有機過酸化物及びその他の添加剤を一切含有していないエチレン−酢酸ビニル共重合体ペレット（酢酸ビニル含有量：２５重量％、メルトフローレイト：２０ｇ／１０分）９０重量部とを押出機に供給し１２０℃にて溶融混練してＴダイから吐出量１５ｋｇ／時間で押出して厚みが５００μｍの太陽電池用封止シートを得た。
【００６６】
（比較例１）
エチレン−酢酸ビニル共重合体ペレット（酢酸ビニル含有量：２５重量％、メルトフローレイト：２０ｇ／１０分）１００重量部、液状の有機過酸化物としてジクミルパーオキサイド（一時間半減期温度：１３６℃）１０重量部と、紫外線吸収剤として２−ヒドロキシ−４−ｎ−オクトキシベンゾフェノン３０重量部と、光安定剤としてビス（２，２，６，６−テトラメチル−４−ピペリジル）セバケート３０重量部とを予め混合することなくそれぞれをタンブラーの回転容器（タンブラーミキサー）に供給してエチレン系共重合体ペレットが４０℃となるように加熱しながら加圧及び減圧をすることなく常圧下にて回転容器を３時間に亘って回転させてエチレン−酢酸ビニル共重合体ペレットにジクミルパーオキサイド、２−ヒドロキシ−４−ｎ−オクトキシベンゾフェノン及びビス（２，２，６，６−テトラメチル−４−ピペリジル）セバケートを含浸させて有機過酸化物含有ペレットを製造した。
【００６７】
得られた有機過酸化物含有ペレット１０重量部と、有機過酸化物及びその他の添加剤を一切含有していないエチレン−酢酸ビニル共重合体ペレット（酢酸ビニル含有量：２５重量％、メルトフローレイト：２０ｇ／１０分）９０重量部とを押出機に供給し１２０℃にて溶融混練してＴダイから吐出量１５ｋｇ／時間で押出して厚みが５００μｍの太陽電池用封止シートを得た。
【００６８】
混合溶液含有ペレット及び有機過酸化物含有ペレットを目視観察し、ペレットの外観及び浸透性を下記基準に基づいて測定し、その結果を表１に示した。
【００６９】
（外観）
混合溶液含有ペレット及び有機過酸化物含有ペレットの外観を目視観察し、ペレット表面に粉体が付着してなかった場合を「○」、ペレット表面に粉体が付着していた場合を「×」として評価した。
【００７０】
（浸透性）
混合溶液含有ペレット及び有機過酸化物含有ペレットをそれぞれ２０ｋｇ採取し、採取したペレットを１０メッシュの篩上に載せて篩を篩振動機に配設し、篩を１０分間に亘って振動させ、ペレットの表面から脱離した粉体の総重量を測定した。
【００７１】
【表１】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、太陽電池用封止シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
近年、原油などの化石燃料の枯渇や、化石燃料を使用することによって生じる地球温暖化などの環境破壊が世界的な問題となっている。化石燃料に代わるクリーンエネルギーとして、潮流、海流、波などの海洋エネルギー、太陽光発電、風力発電、水力発電、バイオマス、地熱、温度差の利用などの色々なエネルギーについて検討が行われている。
【０００３】
太陽光発電はクリーンエネルギーとして特に注目されており、太陽電池の開発が進められている。太陽電池モジュールは、太陽電池を表裏から太陽電池用封止シートによって封止すると共に、表側太陽電池用封止シート上にガラス板などの表面側透明保護部材が、裏側太陽電池用封止シート上に裏面側保護部材（バックシート）が積層一体化されてなる。
【０００４】
上記太陽電池用封止シートとして、特許文献１には、有機過酸化物を含有するエチレン共重合体からなる太陽電池モジュール用保護シートにおいて、有機過酸化物として、ジアルキルパーオキサイド（Ａ）と、アルキルパーオキシエステル及びパーオキシケタールからなる群より選ばれる少なくとも１種の過酸化物（Ｂ）を、（Ａ）／（Ｂ）の重量比が１０／９０〜９０／１０の割合で配合したものを用いた太陽電池モジュール用保護シートが開示されている。
【０００５】
ここで、合成樹脂中に添加剤を混合する場合には、合成樹脂と添加剤とを単に押出機に供給して溶融混練しただけでは添加剤が合成樹脂中に均一に混合しないことから、通常、添加剤を高濃度で合成樹脂中に含有させてなるマスターバッチを作製し、このマスターバッチを合成樹脂と共に押出機に供給して溶融混練することによって合成樹脂中に添加剤を均一に混合させることが行われている。
【０００６】
そして、特許文献１の太陽電池モジュール用保護シートは、実施例１において、エチレン−酢酸ビニル共重合体及び有機過酸化物、その他の添加剤を押出機に供給してＴダイ法によって製造されており、明確に記載されていないものの、この実施例１においても、有機過酸化物及びその他の添加剤を高濃度で含有するマスターバッチを予め作製しておき、この添加剤のマスターバッチとエチレン−酢酸ビニル共重合体とを押出機に供給してＴダイ法によって太陽電池モジュール用保護シートを製造しているものと考えられる。
【０００７】
上記添加剤のマスターバッチは、有機過酸化物や、紫外線吸収剤や光安定剤などの他の添加剤を合成樹脂と共に押出機に供給して溶融混練して製造される。従って、太陽電池モジュール用保護シートを製造するにあたって、有機過酸化物は押出機に二回に亘って供給されて溶融混練されており、複数回に亘る押出機内での加熱や混練に伴う摩擦熱によって分解し易い。
【０００８】
そのため、太陽電池モジュール用保護シートをＴダイ法によって製造するにあたって、有機過酸化物が押出機やＴダイ内で分解してエチレン−酢酸ビニル共重合体が架橋し、得られる太陽電池モジュール用保護シートの厚みが不均一となり、或いは、太陽電池モジュール用保護シートの表面に斑点状にゲルが発生する、所謂、フィッシュアイが発生し表面性が低下するといった問題点を有している。
【０００９】
そこで、特許文献２では、エチレン系共重合体シートの表面に有機過酸化物を液状で接触させ、有機過酸化物をシート内部に浸透させる架橋性シートの製造方法が開示されている。
【００１０】
しかしながら、上記架橋性シートの製造方法では、エチレン系共重合体シートの内部に有機過酸化物が充分に含浸しておらず、架橋性シートを架橋させた時に均一に架橋されないといった問題点を有している。
【００１１】
又、上記架橋性シートの製造方法では、紫外線吸収剤や光安定剤などの固体状の添加剤を架橋性シートの表面に付着させることはできても、架橋性シートの内部に含有させることが困難である。そして、架橋性シートの表面に固体状の添加剤を付着させただけでは太陽電池モジュールの製造工程中において固体状の添加剤が架橋性シートの表面から脱落する虞れがあり、架橋性シートに必要量の添加剤を含有させることができず、長期間に亘って使用される太陽電池用封止シートとして用いるには耐久性が不充分であるという問題を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【００１２】
【特許文献１】特開平１１−２６７９１号公報
【特許文献２】特開昭５９−１３８２３４号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【００１３】
本発明は、所望量の有機過酸化物、紫外線吸収剤及び光安定剤が含有されて均一に架橋することができ且つフィッシュアイのない太陽電池用封止シートの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【００１４】
本発明の太陽電池用封止シートの製造方法は、液状の有機過酸化物に固体状の紫外線吸収剤及び固体状の光安定剤を３０〜４５℃にて溶解させて混合溶液を製造し、エチレン系共重合体ペレットと上記混合溶液とを回転容器内に供給して上記エチレン系共重合体ペレットを加熱しながら上記回転容器を回転させることによって上記エチレン系共重合体ペレット中に上記混合溶液を液状にて含浸させて混合溶液含有ペレットを製造し、この混合溶液含有ペレットを押出機に供給し溶融混練して上記押出機から押出して太陽電池用封止シートを製造することを特徴とする。
【００１５】
エチレン系共重合体ペレットを構成しているエチレン系共重合体としては、特に限定されず、例えば、エチレンと、エチレンと共重合しうる共重合性モノマーとの共重合体であり、このような共重合性モノマーとしては、得られる太陽電池用封止シートの接着性及び透明性の観点から、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸エステルが挙げられ、酢酸ビニルが好ましい。なお、共重合性モノマーはエチレンと単独で共重合されていてもよいし、二種以上の共重合性モノマーがエチレンと共重合されていてもよい。
【００１６】
エチレン系共重合体中に含まれる共重合性モノマーの含有量は、少ないと、太陽電池用封止シートの透明性が低下して太陽電池モジュールの発電性能が低下することがあり、多いと、太陽電池用封止シートの製膜性が低下することがあるので、５〜５０重量％が好ましい。
【００１７】
エチレン系共重合体ペレットの製造方法としては、特に限定されず、例えば、エチレン系共重合体を押出機に供給し溶融混練して押出機からストランド状（棒状）又はシートに押出し、このストランド状又はシート状の成形体をペレタイザを用いてペレット状に切断してエチレン系共重合体ペレットを製造する方法などが挙げられる。
【００１８】
上記エチレン系共重合体ペレットに後述の要領で混合溶液を含浸させるが、この混合溶液は、液状の有機過酸化物に固体状の紫外線吸収剤及び固体状の光安定剤を溶解させて製造される。
【００１９】
本発明で用いられる有機過酸化物は、紫外線吸収剤及び光安定剤を溶解させる条件下及び回転容器内においてエチレン系共重合体ペレットに混合溶液を含浸させる条件下にて液状であればよい。
【００２０】
このような有機過酸化物としては、例えば、１，１−ジ（ｔ−ブチルパーオキシ）シクロヘキサン（１１１℃）、２，２−ジ（４，４−ジ−（ｔ−ブチルパーオキシ）シクロヘキシル）プロパン（１１４℃）、ｔ−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート（１１５℃）、ｔ−ブチルパーオキシラウレート（１１８℃）、ｔ−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート（１１８℃）、ｔ−ブチルパーオキシマレイン酸（１１９℃）、ｔ−ブチルパーオキシ−３，５，５−トリメチルヘキサノエート（１１９℃）、ｔ−ブチルパーオキシ２−エチルヘキシルモノカーボネート（１１９℃）、ｔ−ヘキシルパーオキシベンゾエート（１１９℃）、２，５−ジメチル−２，５−ジ（ベンゾイルパーオキシ）ヘキサン（１１９℃）、ｔ−ブチルパーオキシアセテート（１２１℃）、２，２−ジ（ｔ−ブチルパーオキシ）ブタン（１２２℃）、ｔ−ブチルパーオキシベンゾエート（１２５℃）、ｎ−ブチル４，４−ジ−（ｔ−ブチルパーオキシ）バレレート（１２７℃）、ジクミルパーオキサイド（１３６℃）、ジ−ｔ−ヘキシルパーオキサイド（１３６℃）、ｔ−ブチルクミルパーオキサイド（１３７℃）、ジ（２−ｔ−ブチルパーオキシイソプロピル）ベンゼン（１３８℃）、２，５−ジメチル−２，５−ジ（ｔ−ブチルパーオキシ）ヘキサン（１３８℃）などが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なお、括弧内の温度は、有機過酸化物の一時間半減期温度である。
【００２１】
有機過酸化物の一時間半減期温度は、低いと、エチレン系共重合体ペレットが回転容器内において分解するので、１００℃以上が好ましく、高すぎると、太陽電池モジュールを作成する時のラミ温度を高温度にする必要があるなど、生産性が低下することがあるので、１００〜１６０℃がより好ましく、１００〜１４０℃が特に好ましい。
【００２２】
紫外線吸収剤としては、有機過酸化物に溶解させる条件下において固体状、好ましくは粉状であって且つ３０〜４５℃にて有機過酸化物に溶解可能であればよい。なお、紫外線吸収剤は、回転容器内においてエチレン系共重合体ペレットに混合溶液を含浸させる条件下にて固化及び気化せず、有機過酸化物に溶解した状態を維持することが必要である。
【００２３】
このような紫外線吸収剤としては、例えば、２−ヒドロキシ−４−メトキシベンゾフェノン、２−ヒドロキシ−４−ｎ−オクトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。なお、紫外線吸収剤は単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【００２４】
有機過酸化物に溶解させる紫外線吸収剤の量は、少ないと、紫外線吸収剤の効果を得ることができないことがあり、多いと、有機過酸化物に紫外線吸収剤を完全に溶解させることができないことがあるので、有機過酸化物１００重量部に対して１０〜１０００重量部が好ましく、１００〜５００重量部がより好ましい。
【００２５】
光安定剤としては、有機過酸化物に溶解させる条件下において固体状、好ましくは粉状であって且つ３０〜４５℃にて有機過酸化物に溶解可能であればよい。なお、光安定剤は、回転容器内においてエチレン系共重合体ペレットに混合溶液を含浸させる条件下にて固化及び気化せず、有機過酸化物に溶解した状態を維持することが必要である。
【００２６】
このような光安定剤としてはヒンダードアミン系光安定剤が好ましい。ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、ビス（２，２，６，６−テトラメチル−４−ピペリジル）セバケート、コハク酸ジメチル−１−（２−ヒドロキシエチル）−４−ヒドロキシ−２，２，６，６−テトラメチルピペリジン重縮合物、テトラキス（２，２，６，６−テトラメチル−４−ピペリジル）−１，２，３，４−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ｛［６−［（１，１，３，３‐テトラメチルブチル）アミノ］−１，３，５−トリアジン−２，４−ジイル］［（２，２，６，６−テトラメチル−４−ピペリジル）イミノ］ヘキサメチレン［（２，２，６，６−テトラメチル−４−ピペリジル）イミノ］｝などが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されもよい。
【００２７】
有機過酸化物に溶解させる光安定剤の量は、少ないと、光安定剤の効果を得ることができないことがあり、多いと、有機過酸化物に光安定剤を完全に溶解させることができないことがあるので、有機過酸化物１００重量部に対して１０〜１０００重量部が好ましく、１００〜５００重量部がより好ましい。
【００２８】
混合溶液は、有機過酸化物に紫外線吸収剤及び光安定剤を３０〜４５℃にて溶解させて製造される。なお、有機過酸化物に紫外線吸収剤及び光安定剤を溶解させる際には加圧及び減圧を行わず常圧下にて行われることが好ましい。このように、固体状である紫外線吸収剤及び光安定剤を液状の有機過酸化物に溶解させて混合溶液としておくことによって、後述する要領で混合溶液をエチレン系共重合体ペレットに含浸させる際に、紫外線吸収剤及び光安定剤を有機過酸化物と共にエチレン系共重合体ペレットに内部まで充分に含浸させてなる混合溶液含有ペレットを製造することができる。
【００２９】
そして、混合溶液含有ペレットを用いて押出成形によって太陽電池用封止シートを製造することによって、有機過酸化物、紫外線吸収剤及び光安定剤が全体的に略均一に含有されてなる太陽電池用封止シートを製造することができる。
【００３０】
更に、紫外線吸収剤及び光安定剤は、混合溶液含有ペレットの内部に含浸された状態となっているので、混合溶液含有ペレットを用いて太陽電池用封止シートを製造する工程中に、混合溶液含有ペレットに含有させた紫外線吸収剤及び光安定剤が脱落してしまうことはなく、混合溶液含有ペレットを用いることによって太陽電池用封止シートに所望量の紫外線吸収剤及び光安定剤を精度良く含有させることができ、耐久性に優れた太陽電池用封止シートを製造することができる。
【００３１】
有機過酸化物に紫外線吸収剤及び光安定剤を溶解させる要領としては、特に限定されず、例えば、有機過酸化物、紫外線吸収剤及び光安定剤を公知の撹拌装置に供給して有機過酸化物が３０〜４５℃となるように加熱して有機過酸化物に紫外線吸収剤及び光安定剤を溶解させればよい。
【００３２】
有機過酸化物に紫外線吸収剤及び光安定剤を溶解させる温度は、低いと、有機過酸化物に紫外線吸収剤又は光安定剤を溶解させることができないことがあり、高いと、有機過酸化物が分解する虞れがあるので、有機過酸化物が３０〜４５℃となるように調整される。
【００３３】
上記撹拌装置としては、特に限定されないが、撹拌翼を備えた撹拌装置が好ましい。撹拌翼としては、例えば、タービン翼、プロペラ翼、パドル翼、タービン翼、糸巻翼、馬蹄翼、リボン翼などが挙げられ、タービン翼が好ましい。
【００３４】
上記混合溶液はエチレン系共重合体ペレットと共に回転容器内に供給されるが、回転容器内に供給する混合溶液の総量は、少ないと、得られる太陽電池用封止シートの架橋性が低下し、太陽電池用封止シートを充分に架橋することができないことがあり、多いと、太陽電池用封止シートの表面に余分な有機過酸化物がブリードアウトすることがあるので、回転容器内に供給されるエチレン系共重合体ペレットの総量１００重量部に対して０．３〜７０重量部が好ましく、５〜６０重量部がより好ましい。
【００３５】
次に、エチレン系共重合体ペレットと混合溶液とを回転容器内に供給する。この回転容器としては、エチレン系共重合体ペレットと混合溶液とを混合させてエチレン系共重合体ペレットに混合溶液を含浸させることができればよい。このような回転容器を備えた装置としては、タンブラーミキサー、ロータリーミキサーなどが挙げられ、タンブラーミキサーが好ましい。
【００３６】
そして、回転容器を回転させて、エチレン系共重合体ペレットと混合溶液とを回転容器内において攪拌、接触させて、混合溶液をエチレン系共重合体ペレットに含浸させて混合溶液含有ペレットを製造する。なお、エチレン系共重合体ペレットは、回転容器を回転させる前にエチレン系共重合体ペレットを回転容器内に全量、供給することが好ましい。一方、混合溶液は、回転容器を回転させる前に回転容器内に全量、供給してもよいし、分割して供給してもよいが、エチレン系共重合体ペレットに均一に含浸させることができるので、回転容器内に分割して供給することが好ましい。
【００３７】
エチレン系共重合体ペレットに混合溶液を含浸させるときのエチレン系共重合体ペレットの温度は、低いと、エチレン系共重合体ペレットに混合溶液を含浸させるのに長時間を要し、高いと、エチレン系共重合体ペレット同士が融着し、或いは、エチレン系共重合体ペレットが回転容器の内面に融着して、エチレン系共重合体ペレットに混合溶液を均一に含浸できないので、２５〜４５℃が好ましく、３０〜４０℃がより好ましい。エチレン系共重合体ペレットの温度とは、エチレン系共重合体ペレットの表面温度をいう。エチレン系共重合体ペレットに混合溶液を含浸させるときも加圧及び減圧をせずに常圧下にて行われることが好ましい。
【００３８】
又、エチレン系共重合体ペレットに混合溶液を含浸させる時間は、短いと、混合溶液をエチレン系共重合体ペレットにその内部まで充分に含浸させることができないことがあり、長くても、エチレン系共重合体ペレットに混合溶液を含浸させる効果に変化はないので、２〜７時間が好ましく、３〜５時間がより好ましい。
【００３９】
なお、回転容器内には、エチレン系共重合体及び有機過酸化物以外に、太陽電池用封止シートの物性を損なわない範囲内において、架橋助剤、カップリング剤などの添加剤を供給してもよい。
【００４０】
架橋助剤としては、特に限定されず、例えば、アリル基、ビニル基、アクリロイル基又はメタクリロイル基を２個以上有する多官能モノマーが挙げられ、このような多官能モノマーとしては、例えば、フタル酸ジアリル、イタコン酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルフォスフェート、ジビニルベンゼン；１，６−ヘキサンジオールジ（メタ）アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールＡジ（メタ）アクリレート、トリメチロールプロパントリ（メタ）アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ（メタ）アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ（メタ）アクリレート、ε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールなどの（メタ）アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールの（メタ）アクリレートなどが挙げられ、単独で使用されてもよいし、二種以上が併用されてもよい。
【００４１】
回転容器に供給される架橋助剤の総量は、少ないと、太陽電池用封止シートの架橋が不充分となることがあり、多いと、太陽電池用封止シートの製膜時に押出機やダイ内において架橋が進行してゲルを生じ、或いは、厚みの不均一な太陽電池用封止シートしか得られないことがあるので、回転容器内に供給するエチレン系共重合体ペレットの総量１００重量部に対して０．０１〜２０重量部が好ましい。
【００４２】
上記カップリング剤としては、特に限定されず、例えば、アミノ基、グリシジル基、メタクリロキシ基及びメルカプト基からなる群より選ばれた一種又は二種以上の官能基を有するシランカップリング剤が好適に用いられ、例えば、３−アミノプロピルトリエトキシシラン、３−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、３−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、３−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【００４３】
回転容器に供給されるカップリング剤の総量は、少ないと、カップリング剤の効果が得られ難くなり、多いと、エチレン系共重合体ペレットに含浸されずに残ることがあるので、回転容器内に供給するエチレン系共重合体ペレットの総量１００重量部に対して０．１〜１０重量部が好ましい。
【００４４】
上述のように、エチレン系共重合体ペレットに混合溶液を含浸させるにあたって、回転容器内にエチレン系共重合体ペレット及び混合溶液、必要に応じて添加剤を供給して回転容器を回転させているので、エチレン系共重合体ペレットや混合溶液が、攪拌羽根を有する攪拌装置を用いた場合のように攪拌羽根との間において摩擦熱を受けることはなく、有機過酸化物を分解させることなく、エチレン系共重合体ペレットに有機過酸化物を確実に含浸させている。この際、有機過酸化物には紫外線吸収剤及び光安定剤が溶解しているので、紫外線吸収剤及び光安定剤も有機過酸化物と共にエチレン系共重合体ペレットに含浸し、よって、エチレン系共重合体ペレットには有機過酸化物と共に紫外線吸収剤及び光安定剤が確実に含浸される。
【００４５】
そして、回転容器内に混合溶液以外の添加剤を供給した場合、回転容器内においてエチレン系共重合体ペレットに混合溶液を含浸させる条件下にて添加剤が液状である場合には、エチレン系共重合体ペレットに混合溶液と共に添加剤も確実に含浸される。又、回転容器内においてエチレン系共重合体ペレットに混合溶液を含浸させる条件下にて添加剤が固体状である場合には、エチレン系共重合体ペレットに混合溶液が付着することによって、エチレン系共重合体ペレットの表面に粘着性が発現し、この粘着性によって固体状の添加剤がエチレン系共重合体ペレットの表面に均一に且つ確実に付着する。
【００４６】
次に、混合溶液含有ペレットと、このペレットとは別の有機過酸化物を含有していないエチレン系共重合体ペレットとを押出機に供給し必要に応じて有機過酸化物の一時間半減期温度よりも低い温度で溶融混練して押出機の先端に取り付けたＴダイなどのダイから押し出して太陽電池用封止シートを得ることができる。なお、有機過酸化物が二種以上含有されている場合には、最も低い有機過酸化物の一時間半減期温度よりも低い温度にて溶融混練すればよい。なお、押出機に混合溶液含有ペレットのみを供給してもよい。
【００４７】
このように、本発明では、有機過酸化物は押出機内を一回だけ通過するものであるので、有機過酸化物が、押出機内における加熱や、スクリュー羽根との摩擦熱によって分解するのをできるだけ抑えることができ、よって、有機過酸化物が押出機内やダイ内において不測に分解し、得られる太陽電池用封止シートの厚みが不均一となり或いは太陽電池用封止シートの表面にフィッシュアイが生じるなどの問題は生じない。
【００４８】
更に、混合溶液含有ペレットには所望量の紫外線吸収剤及び光安定剤が含有されているので、上述のようにして得られた太陽電池用封止シートには所望量の紫外線吸収剤及び光安定剤が含有されており、太陽電池用封止シートは優れた耐久性を有している。
【００４９】
又、後述する太陽電池モジュールの製造時において、太陽電池、表面側透明保護部材又は裏面側保護部材と、太陽電池用封止シートとの間における脱気性を向上させるために、太陽電池用封止シートの表面にエンボス加工を施すことが好ましい。
【００５０】
太陽電池用封止シートの表面にエンボス加工を施す方法としては、特に限定されず、Ｔダイから押出された直後の溶融シートを、表面にエンボス模様が施されたエンボスロールと、このエンボスロールに対峙して配設されたゴムロールとの間に供給し、エンボスロールを溶融シートに押圧させて、太陽電池用封止シートの表面にエンボス加工を施す方法が挙げられる。なお、一旦製造された太陽電池用封止シートを再度、加熱して溶融状態とした上で上述の要領でエンボス加工を施してもよい。
【００５１】
そして、本発明の太陽電池用封止シートを用いた太陽電池モジュールの製造方法としては、例えば、（１）太陽電池の表面に表側太陽電池用封止シートを介して表面側透明保護部材を、裏面に裏側太陽電池用封止シートを介して裏面側保護部材を積層して積層体を製造し、この積層体を減圧下にて加熱することによって表裏太陽電池用封止シートを架橋させながら太陽電池を表裏太陽電池用封止シートによって表裏から封止すると共に太陽電池の表裏面に表裏太陽電池用封止シートを介して保護部材を積層一体化させる太陽電池モジュールの製造方法、（２）基板上に、光の照射によって電気を発生させる薄膜状の太陽電池素子が形成されてなる太陽電池を用意し、この太陽電池の基板における太陽電池素子の形成面上に太陽電池用封止シートを積層すると共に太陽電池用封止シート上に裏面側保護部材を積層して積層体を製造し、この積層体を減圧下にて加熱することによって太陽電池用封止シートを架橋させながら太陽電池素子を太陽電池用封止シートと基板とによって表裏から封止すると共に太陽電池素子上に太陽電池用封止シートを介して裏面側保護部材を積層一体化させる太陽電池モジュールの製造方法が挙げられる。
【００５２】
なお、積層体を加熱する際の条件としては、有機過酸化物の一分間半減期温度にて５〜１０分間に亘って加熱すればよい。例えば、有機過酸化物の一分間半減期温度が１６０℃であれば、１６０℃にて５〜１０分間に亘って積層体を加熱すればよい。
【００５３】
又、上記（２）にて用いられる太陽電池における基板としては、特に限定されず、例えば、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォンなどの耐熱性樹脂からなるシートが挙げられる。又、薄膜状の太陽電池素子は、単結晶シリコン、単結晶ゲルマニウム、多結晶シリコン、微結晶シリコンなどの結晶系半導体、アルモルファスシリコンなどのアモルファス系半導体、ＧａＡｓ、ＩｎＰ、ＡｌＧａＡｓ、ＣｄＳ、ＣｄＴｅ、Ｃｕ2Ｓ、ＣｕＩｎＳｅ2、ＣｕＩｎＳ2などの化合物半導体、フタロシアニン、ポリアセチレンなどの有機半導体などから汎用の要領で形成される。
【００５４】
上記（１）で用いられる太陽電池としては、例えば、光が照射されると電流を生じる機能を有するシリコン半導体素子やセレン半導体素子のウエハをインターコネクターを用いて直接又は並列に接続してなる太陽電池素子を備えた太陽電池などが挙げられる。
【発明の効果】
【００５５】
本発明の太陽電池用封止シートの製造方法は、上述のように、エチレン系共重合体ペレットに混合溶液を含浸させるにあたって、エチレン系共重合体ペレットと混合溶液とを回転容器に供給して回転容器を回転させているので、エチレン系共重合体ペレットと有機過酸化物に摩擦応力や剪断応力をできるだけ加えることなく、エチレン系共重合体ペレットに有機過酸化物を該有機過酸化物を分解させることなく均一に含浸させて混合溶液含有ペレットを製造することができる。
【００５６】
更に、固体状の紫外線吸収剤及び固体状の光安定剤を予め有機過酸化物に溶解させて均一な混合溶液としているので、固体状の紫外線吸収剤及び光安定剤をエチレン系共重合体ペレットに容易に内部まで含浸させることができ、そして、その後の製造工程においても、混合溶液含有ペレットから紫外線吸収剤及び光安定剤が不測に脱落するようなことはなく、混合溶液含有ペレットには所望量の紫外線吸収剤及び光安定剤を含有、維持させた上で太陽電池用封止シートの製造に供することができ、得られる太陽電池用封止シートには所望量の紫外線吸収剤及び光安定剤が所望量、精度良く含有されている。
【００５７】
そして、上記混合溶液含有ペレットを用いて押出機から汎用の要領で押出すことによって太陽電池用封止シートを製造しているので、有機過酸化物を押出機に供給する回数を一回とし、有機過酸化物が押出機内において熱や摩擦を受ける時間を短くして分解するのを概ね防止している。
【００５８】
従って、得られる太陽電池用封止シートは、この太陽電池用封止シートに含まれている有機過酸化物の分解が防止されており、厚みが均一であり且つフィッシュアイなどが生じておらず表面平滑性にも優れている。
【００５９】
このような太陽電池用封止シートを用いて太陽電池を封止することによって、太陽電池を確実に封止することができると共に、太陽電池の封止時に充分に架橋させて耐候性に優れたものとし、更に、太陽電池用封止シートには紫外線吸収剤及び光安定剤が精度良く所望量含有されているので紫外線によるエチレン系共重合体の劣化をできるだけ抑えることができ、太陽電池の性能を長期間に亘って確実に維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【００６０】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【００６１】
（実施例１）
液状の有機過酸化物としてジクミルパーオキサイド（一時間半減期温度：１３６℃）１００重量部と、紫外線吸収剤として２−ヒドロキシ−４−ｎ−オクトキシベンゾフェノン３００重量部と、光安定剤としてビス（２，２，６，６−テトラメチル−４−ピペリジル）セバケート３００重量部とを攪拌翼を備えた撹拌装置に供給し、ジクミルパーオキサイドの温度が４０℃となるように加圧及び減圧をすることなく常圧下にて加熱、調整しながら撹拌翼を回転させて撹拌して、ジクミルパーオキサイドに２−ヒドロキシ−４−ｎ−オクトキシベンゾフェノン及びビス（２，２，６，６−テトラメチル−４−ピペリジル）セバケートの全量を溶解させて混合溶液を製造した。
【００６２】
次に、エチレン−酢酸ビニル共重合体ペレット（酢酸ビニル含有量：２５重量％、メルトフローレイト：２０ｇ／１０分）１００重量部及び上記混合溶液５０重量部をタンブラーの回転容器（タンブラーミキサー）に供給してエチレン系共重合体ペレットが４０℃となるように加熱しながら加圧及び減圧をすることなく常圧下にて回転容器を３時間に亘って回転させてエチレン−酢酸ビニル共重合体ペレットに混合溶液を含浸させて混合溶液含有ペレットを製造した。なお、混合溶液は、エチレン−酢酸ビニル共重合体ペレットに含浸させている工程中は均一な溶液であった。
【００６３】
得られた混合溶液含有ペレット１０重量部と、有機過酸化物及びその他の添加剤を一切含有していないエチレン−酢酸ビニル共重合体ペレット（酢酸ビニル含有量：２５重量％、メルトフローレイト：２０ｇ／１０分）９０重量部とを押出機に供給し１２０℃にて溶融混練してＴダイから吐出量１５ｋｇ／時間で押出して厚みが５００μｍの太陽電池用封止シートを得た。
【００６４】
（実施例２）
実施例１と同様の要領で混合溶液を製造した。次に、エチレン−酢酸ビニル共重合体ペレット（酢酸ビニル含有量：２５重量％、メルトフローレイト：２０ｇ／１０分）１００重量部、上記混合溶液５０重量部、架橋助剤としてトリアリルイソシアヌレート３重量部、及び、カップリング剤として３−アミノプロピルトリエトキシシラン１重量部をタンブラーの回転容器（タンブラーミキサー）に供給してエチレン系共重合体ペレットが４０℃となるように加熱しながら加圧及び減圧をすることなく常圧下にて回転容器を３時間に亘って回転させてエチレン−酢酸ビニル共重合体ペレットに混合溶液、トリアリルイソシアヌレート及び３−アミノプロピルトリエトキシシランを含浸させて混合溶液含有ペレットを製造した。なお、混合溶液は、エチレン−酢酸ビニル共重合体ペレットに含浸させている工程中は均一な溶液であった。
【００６５】
得られた混合溶液含有ペレット１０重量部と、有機過酸化物及びその他の添加剤を一切含有していないエチレン−酢酸ビニル共重合体ペレット（酢酸ビニル含有量：２５重量％、メルトフローレイト：２０ｇ／１０分）９０重量部とを押出機に供給し１２０℃にて溶融混練してＴダイから吐出量１５ｋｇ／時間で押出して厚みが５００μｍの太陽電池用封止シートを得た。
【００６６】
（比較例１）
エチレン−酢酸ビニル共重合体ペレット（酢酸ビニル含有量：２５重量％、メルトフローレイト：２０ｇ／１０分）１００重量部、液状の有機過酸化物としてジクミルパーオキサイド（一時間半減期温度：１３６℃）１０重量部と、紫外線吸収剤として２−ヒドロキシ−４−ｎ−オクトキシベンゾフェノン３０重量部と、光安定剤としてビス（２，２，６，６−テトラメチル−４−ピペリジル）セバケート３０重量部とを予め混合することなくそれぞれをタンブラーの回転容器（タンブラーミキサー）に供給してエチレン系共重合体ペレットが４０℃となるように加熱しながら加圧及び減圧をすることなく常圧下にて回転容器を３時間に亘って回転させてエチレン−酢酸ビニル共重合体ペレットにジクミルパーオキサイド、２−ヒドロキシ−４−ｎ−オクトキシベンゾフェノン及びビス（２，２，６，６−テトラメチル−４−ピペリジル）セバケートを含浸させて有機過酸化物含有ペレットを製造した。
【００６７】
得られた有機過酸化物含有ペレット１０重量部と、有機過酸化物及びその他の添加剤を一切含有していないエチレン−酢酸ビニル共重合体ペレット（酢酸ビニル含有量：２５重量％、メルトフローレイト：２０ｇ／１０分）９０重量部とを押出機に供給し１２０℃にて溶融混練してＴダイから吐出量１５ｋｇ／時間で押出して厚みが５００μｍの太陽電池用封止シートを得た。
【００６８】
混合溶液含有ペレット及び有機過酸化物含有ペレットを目視観察し、ペレットの外観及び浸透性を下記基準に基づいて測定し、その結果を表１に示した。
【００６９】
（外観）
混合溶液含有ペレット及び有機過酸化物含有ペレットの外観を目視観察し、ペレット表面に粉体が付着してなかった場合を「○」、ペレット表面に粉体が付着していた場合を「×」として評価した。
【００７０】
（浸透性）
混合溶液含有ペレット及び有機過酸化物含有ペレットをそれぞれ２０ｋｇ採取し、採取したペレットを１０メッシュの篩上に載せて篩を篩振動機に配設し、篩を１０分間に亘って振動させ、ペレットの表面から脱離した粉体の総重量を測定した。
【００７１】
【表１】
【特許請求の範囲】
【請求項１】
液状の有機過酸化物に固体状の紫外線吸収剤及び固体状の光安定剤を３０〜４５℃にて溶解させて混合溶液を製造し、エチレン系共重合体ペレットと上記混合溶液とを回転容器内に供給して上記エチレン系共重合体ペレットを加熱しながら上記回転容器を回転させることによって上記エチレン系共重合体ペレット中に上記混合溶液を液状にて含浸させて混合溶液含有ペレットを製造し、この混合溶液含有ペレットを押出機に供給し溶融混練して上記押出機から押出して太陽電池用封止シートを製造することを特徴とする太陽電池用封止シートの製造方法。
【請求項２】
架橋助剤を回転容器内に供給してエチレン系共重合体ペレットに上記架橋助剤を含浸させることを特徴とする請求項１に記載の太陽電池用封止シートの製造方法。
【請求項３】
カップリング剤を回転容器内に供給してエチレン系共重合体ペレットに上記カップリング剤を含浸させることを特徴とする請求項１又は請求項２に記載の太陽電池用封止シートの製造方法。
【請求項１】
液状の有機過酸化物に固体状の紫外線吸収剤及び固体状の光安定剤を３０〜４５℃にて溶解させて混合溶液を製造し、エチレン系共重合体ペレットと上記混合溶液とを回転容器内に供給して上記エチレン系共重合体ペレットを加熱しながら上記回転容器を回転させることによって上記エチレン系共重合体ペレット中に上記混合溶液を液状にて含浸させて混合溶液含有ペレットを製造し、この混合溶液含有ペレットを押出機に供給し溶融混練して上記押出機から押出して太陽電池用封止シートを製造することを特徴とする太陽電池用封止シートの製造方法。
【請求項２】
架橋助剤を回転容器内に供給してエチレン系共重合体ペレットに上記架橋助剤を含浸させることを特徴とする請求項１に記載の太陽電池用封止シートの製造方法。
【請求項３】
カップリング剤を回転容器内に供給してエチレン系共重合体ペレットに上記カップリング剤を含浸させることを特徴とする請求項１又は請求項２に記載の太陽電池用封止シートの製造方法。
【公開番号】特開２０１２−７９９９６（Ｐ２０１２−７９９９６Ａ）
【公開日】平成２４年４月１９日（２０１２．４．１９）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−２２５５０４（Ｐ２０１０−２２５５０４）
【出願日】平成２２年１０月５日（２０１０．１０．５）
【出願人】（５９６１１１２７６）積水フイルム株式会社 (133)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２４年４月１９日（２０１２．４．１９）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年１０月５日（２０１０．１０．５）
【出願人】（５９６１１１２７６）積水フイルム株式会社 (133)
【Ｆターム（参考）】
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