説明

太陽電池用導電性接着剤及びこれを用いた接続方法、太陽電池モジュール、太陽電池モジュールの製造方法

【課題】タクトタイムの短縮化と耐熱性、接続信頼性の向上を図る。
【解決手段】少なくともエポキシ樹脂と、硬化剤と、導電性粒子23とを備え、硬化剤は、イミダゾール系硬化剤及び有機酸ジヒドラジド硬化剤を含有した導電性接着剤17を用い、太陽電池セル2に形成された電極11,13上に導電性接着剤を介してタブ線3を配置し、タブ線3上を所定の温度及び圧力で所定時間熱加圧することにより、導電性接着剤17を熱硬化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池セルに形成された電極とタブ線とを接続する太陽電池用導電性接着剤及びこれを用いた接続方法、太陽電池モジュール、太陽電池モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールでは、複数の隣接する太陽電池セルが、インターコネクタとして半田コートされたリボン状銅箔等からなるタブ線により接続されている。タブ線は、その一端側を一の太陽電池セルの表面電極に接続され、他端側を隣接する太陽電池セルの裏面電極に接続することにより、各太陽電池セルを直列に接続する。
【0003】
具体的に、太陽電池セルとタブ線との接続は、太陽電池セルの受光面に銀ペーストのスクリーン印刷により形成されたバスバー電極及び太陽電池セルの裏面接続部に形成されたAg電極と、タブ線とが半田処理により接続されている(特許文献1)。なお、太陽電池セル裏面の接続部以外の領域はAl電極やAg電極が形成されている。
【0004】
しかし、半田付けでは約260℃と高温による接続処理が行われるため、太陽電池セルの反りや、タブ線と表面電極及び裏面電極との接続部に生じる内部応力、さらにフラックスの残渣等により、太陽電池セルの表面電極及び裏面電極とタブ線との間の接続信頼性が低下することが懸念される。
【0005】
そこで、従来、太陽電池セルの表面電極及び裏面電極とタブ線との接続に、比較的低い温度での熱圧着処理による接続が可能な導電性接着フィルムが使用されている(特許文献2)。このような導電性接着フィルムとしては、平均粒径が数μmオーダーの球状または鱗片状の導電性粒子を熱硬化型バインダー樹脂組成物に分散してフィルム化したものが使用されている。
【0006】
導電性接着フィルムは、表面電極及び裏面電極とタブ線との間に介在された後、タブ線の上から熱加圧されることにより、バインダー樹脂が流動性を示して電極、タブ線間より流出されるとともに、導電性粒子が電極とタブ線間の導通を図り、この状態でバインダー樹脂が熱硬化する。これにより、タブ線によって複数の太陽電池セルが直列接続されたストリングスが形成される。
【0007】
導電性接着フィルムを用いてタブ線と表面電極及び裏面電極とが接続された複数の太陽電池セルは、ガラス、透光性プラスチックなどの透光性を有する表面保護材と、PET(Poly Ethylene Terephthalate)等のフィルムからなる背面保護材との間に、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)等の透光性を有する封止材により封止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−356349号公報
【特許文献2】特開2008−135654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、太陽電池モジュールは10年以上の長期信頼性が求められており、特にタブ線と太陽電池セルに形成された電極との接続不良は、発電効率の低下を招くだけでなく、ホットスポット現象の原因にもなることから、高温高湿環境下に長期に亘って晒された場合においても耐候性を有し、耐熱性、接続信頼性を確保する必要がある。
【0010】
一方で、タブ線の接続工程においては、タクトタイムの短縮化が求められおり、速硬化で、かつ接続信頼性に長ける導電性接着剤が求められる。
【0011】
しかし、一般に用いられているアニオン系エポキシ樹脂では、タブ線の接続工程におけるタクトタイムの短縮化や高Tg化による耐熱性、接続信頼性の向上は困難であった。すなわち、アニオン系エポキシ樹脂で速硬化を行う際は、反応速度の遅いいわゆる重付加型よりも、3級アミンやイミダゾール類を用いたいわゆるアニオン重合型が有効となる。しかし、潜在性が付与された1液タイプの導電性接着フィルムに適用した場合は、アニオン重合型は同じ圧着条件において重付加型に比して耐熱性が弱いという欠点がある。
【0012】
一方、有機酸ヒドラジドの重付加反応を用いた系では、硬化反応がゆっくり進むためセルの反りの抑制、硬化物のTgを適正な範囲に制御するには好都合であるが、反応速度の点で問題がある。
【0013】
そこで、本発明は、硬化反応速度と耐熱性とを両立させ、タブ線の接続工程においてはタクトタイムの短縮化を図ることができ、かつ耐熱性、接続信頼性の向上が図られた太陽電池モジュールの製造方法、接続方法、太陽電池用の導電性接着剤及び太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決するために、本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法は、少なくともエポキシ樹脂と、硬化剤と、導電性粒子とを備え、上記硬化剤は、イミダゾール系硬化剤及び有機酸ジヒドラジド硬化剤を含有した導電性接着剤を用い、太陽電池セルに形成された電極上に上記導電性接着剤を介してタブ線を配置し、上記タブ線上を所定の温度及び圧力で所定時間熱加圧することにより、上記導電性接着剤を熱硬化させるものである。
【0015】
また、本発明に係る接続方法は、少なくともエポキシ樹脂と、硬化剤と、導電性粒子とを備え、上記硬化剤は、イミダゾール系硬化剤及び有機酸ジヒドラジド硬化剤を含有した導電性接着剤を用い、太陽電池セルに形成された電極上に上記導電性接着剤を介してタブ線を配置し、上記タブ線上を所定の温度及び圧力で所定時間熱加圧することにより、上記導電性接着剤を熱硬化させるものである。
【0016】
また、本発明に係る導電性接着剤は、太陽電セルに形成された電極とタブ線とを接続する導電性接着剤において、少なくともエポキシ樹脂と、硬化剤と、導電性粒子とを備え、上記硬化剤は、イミダゾール系硬化剤及び有機酸ジヒドラジド硬化剤を含有するものである。
【0017】
また、本発明に係る太陽電池モジュールは、導電性接着剤を用いて太陽電池セルに形成された電極とタブ線とが接続された太陽電池モジュールにおいて、上記導電性接着剤は、少なくともエポキシ樹脂と、硬化剤と、導電性粒子とを備え、上記硬化剤は、イミダゾール系硬化剤及び有機酸ジヒドラジド硬化剤を含有するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、導電性接着剤の硬化剤として、イミダゾール系硬化剤及び有機酸ジヒドラジド硬化剤を含有しているため、タブ線の熱加圧条件が低温低圧短時間の条件下において、基板の反りや損傷を防止し、かつタクトタイムの短縮化を図ることができるとともに、エポキシの反応率を向上させ、接着層のガラス転移温度(Tg)の最適化、タブ線の接着性、接続信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】太陽電池モジュールを示す分解斜視図である。
【図2】太陽電池セルのストリングを示す断面図である。
【図3】太陽電池セルの裏面電極及び接続部を示す平面図である。
【図4】導電性接着フィルムを示す断面図である。
【図5】リール状に巻回された導電性接着フィルムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明が適用された太陽電池モジュールの製造方法、接続方法、太陽電池用の導電性接着剤及び太陽電池モジュールについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0021】
[太陽電池モジュール]
本発明が適用された太陽電池モジュール1は、図1〜図3に示すように、複数の太陽電池セル2がインターコネクタとなるタブ線3によって直列に接続されたストリングス4を有し、このストリングス4を複数配列したマトリクス5を備える。そして、太陽電池モジュール1は、このマトリクス5が封止材のシート6で挟まれ、受光面側に設けられた表面カバー7及び裏面側に設けられたバックシート8とともに一括してラミネートされ、最後に、周囲にアルミニウムなどの金属フレーム9が取り付けられることにより形成される。
【0022】
封止材としては、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)等の透光性封止材が用いられる。また、表面カバー7としては、例えば、ガラスや透光性プラスチック等の透光性の材料が用いられる。また、バックシート8としては、ガラスや、アルミニウム箔を樹脂フィルムで挟持した積層体等が用いられる。
【0023】
太陽電池モジュールの各太陽電池セル2は、光電変換素子10を有する。以下では、光電変換素子10として、単結晶シリコン型光電変換素子や多結晶シリコン型光電変換素子を用いる結晶シリコン系太陽電池を例に説明するが、本発明は、薄膜系太陽電池、有機系、量子ドット型など、各種光電変換素子を用いることができる。
【0024】
また、光電変換素子10は、受光面側に内部で発生した電気を集電するフィンガー電極12とフィンガー電極12の電気を集電するバスバー電極11とが設けられている。バスバー電極11及びフィンガー電極12は、太陽電池セル2の受光面となる表面に、例えばAgペーストがスクリーン印刷等により塗布された後、焼成されることにより形成される。また、フィンガー電極12は、受光面の全面に亘って、例えば約50〜200μm程度の幅を有するラインが、所定間隔、例えば2mmおきに、ほぼ平行に複数形成されている。バスバー電極11は、フィンガー電極12と略直交するように形成され、また、太陽電池セル2の面積に応じて複数形成されている。
【0025】
なお、太陽電池セル2は、バスバー電極が設けられていない、いわゆるバスバーレス構造とすることもできる。この場合、太陽電池セル2は、後述するタブ線3が導電性接着フィルム17を介して直接フィンガー電極12と接続される。
【0026】
また、光電変換素子10は、受光面と反対の裏面側に、アルミニウムや銀からなる裏面電極13が設けられている。裏面電極13は、図2及び図3に示すように、例えばアルミニウムや銀からなる電極が、スクリーン印刷やスパッタ等により太陽電池セル2の裏面に形成される。裏面電極13は、後述する導電性接着フィルム17を介してタブ線3が接続されるタブ線接続部14を有する。
【0027】
そして、太陽電池セル2は、タブ線3によって、表面に形成されたバスバー電極11と、隣接する太陽電池セル2の裏面電極13とが電気的に接続され、これにより直列に接続されたストリングス4を構成する。タブ線3とバスバー電極11及び裏面電極13とは、後述する導電性接着フィルム17によって接続される。
【0028】
[タブ線]
タブ線3は、図2に示すように、隣接する太陽電池セル2X、2Y、2Zの各間を電気的に接続する長尺状の導電性基材である。タブ線3は、例えば厚さ50〜300μmに圧延された銅箔やアルミ箔をスリットし、あるいは銅やアルミなどの細い金属ワイヤーを平板状に圧延することにより、導電性接着フィルム17とほぼ同じ幅の1〜3mm幅の平角の銅線を得る。そして、タブ線3は、この平角銅線に、必要に応じて金メッキ、銀メッキ、スズメッキ、ハンダメッキ等を施すことにより形成される。
【0029】
タブ線3は、一面3aを太陽電池セル2のバスバー電極11が設けられた表面への接着面とされ、他面3bを太陽電池セル2の裏面電極13が設けられた裏面への接着面とされている。また、タブ線3は、長手方向の一端側を太陽電池セル2の表面に接続される表面接続部3cとされ、長手方向の他端側を太陽電池セル2の裏面に接続される裏面接続部3dとされている。
【0030】
[導電性接着剤]
次いで、タブ線3を太陽電池セル2の表面及び裏面に接続する導電性接着剤となる導電性接着フィルム17について説明する。導電性接着フィルム17は、図4及び図5に示すように、少なくともエポキシ樹脂と、硬化剤とを有する熱硬化性のバインダー樹脂層22に導電性粒子23が高密度に充填されたものである。また、導電性接着フィルム17の硬化剤は、イミダゾール系硬化剤及び有機酸ジヒドラジド硬化剤を含有する。イミダゾール系硬化剤及び有機酸ジヒドラジド硬化剤の配合比率は、イミダゾール系硬化剤:有機酸ジヒドラジド=1:4〜4:1の範囲で使用可能であり、イミダゾール系硬化剤:有機酸ジヒドラジド硬化剤=1:3〜3:1の範囲で好ましく使用することができる。
【0031】
導電性接着フィルム17に用いられる導電性粒子23としては、特に制限されず、例えば、ニッケル、金、銀、銅などの金属粒子、樹脂粒子に金めっきなどを施したもの、樹脂粒子に金めっきを施した粒子の最外層に絶縁被覆を施したものなどを挙げることができる。なお、導電性粒子23の平均粒子径は1〜50μmの範囲で使用が可能であり、10〜30μmの範囲を好ましく使用することができる。
【0032】
導電性接着フィルム17の熱硬化性のバインダー樹脂層22の組成は、少なくともエポキシ樹脂と、硬化剤とを含有し、好ましくは、さらに膜形成樹脂と、シランカップリング剤とを含有する。
【0033】
エポキシ樹脂としては、特に制限はなく、市販のエポキシ樹脂が全て使用可能である。このようなエポキシ樹脂としては、具体的には、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂などを用いることができる。これらは単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、アクリル樹脂など他の有機樹脂と適宜組み合わせて使用してもよい。
【0034】
硬化剤は、イミダゾール系硬化剤及び有機酸ジヒドラジド硬化剤を含有するものを使用する。この硬化剤は、潜在性を有していてもよい。潜在性硬化剤は、通常では反応せず、何かしらのトリガーにより活性化し、反応を開始する。トリガーには、熱、光、加圧などがあり、用途により選択して用いることができる。なかでも、本願では、加熱硬化型の潜在性硬化剤が好適に用いられ、バスバー電極11や裏面電極13に加熱押圧されることにより本硬化される。
【0035】
膜形成樹脂は、平均分子量が10000以上の高分子量樹脂に相当し、フィルム形成性の観点から、10000〜80000程度の平均分子量であることが好ましい。膜形成樹脂としては、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂等の種々の樹脂を使用することができ、その中でも膜形成状態、接続信頼性等の観点からフェノキシ樹脂が好適に用いられる。
【0036】
シランカップリング剤としては、エポキシ系、アミノ系、メルカプト・スルフィド系、ウレイド系などを用いることができる。これらの中でも、本実施の形態では、エポキシ系シランカップリング剤が好ましく用いられる。これにより、有機材料と無機材料の界面における接着性を向上させることができる。
【0037】
また、その他の添加組成物として、無機フィラーを含有することが好ましい。無機フィラーを含有することにより、圧着時における樹脂層の流動性を調整し、粒子捕捉率を向上させることができる。無機フィラーとしては、シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等を用いることができ、無機フィラーの種類は特に限定されるものではない。
【0038】
図5は、導電性接着フィルム17の製品形態の一例を模式的に示す図である。この導電性接着フィルム17は、剥離基材24上にバインダー樹脂層22が積層され、テープ状に成型されている。このテープ状の導電性接着フィルムは、リール25に剥離基材24が外周側となるように巻回積層される。剥離基材24としては、特に制限はなく、PET(Poly Ethylene Terephthalate)、OPP(Oriented Polypropylene)、PMP(Poly-4-methlpentene−1)、PTFE(Polytetrafluoroethylene)などを用いることができる。また、導電性接着フィルム17は、バインダー樹脂層22上に透明なカバーフィルムを有する構成としてもよい。
【0039】
このとき、バインダー樹脂層22上に貼付されるカバーフィルムとして上述したタブ線3を用いてもよい。導電性接着フィルム17は、バインダー樹脂層22がタブ線3の太陽電池セル2の表面への接着面となる一面3aあるいは太陽電池セル2の裏面への接着面となる他面3bに積層される。このように、予めタブ線3と導電性接着フィルム17とを積層一体化させておくことにより、実使用時においては、剥離基材24を剥離し、導電性接着フィルム17のバインダー樹脂層22をバスバー電極11や裏面電極13のタブ線接続部14上に貼着することによりタブ線3と各電極11,13との接続が図られる。
【0040】
上記では、フィルム形状を有する導電性接着フィルムについて説明したが、ペースト状であっても問題は無い。本願では、導電性粒子を含有するフィルム状の導電性接着フィルム17またはペースト状の導電性接着ペーストを「導電性接着剤」と定義する。導電性接着ペーストを用いる場合にも、この導電性接着ペーストをバスバー電極11やタブ線接続部14上に塗布した後にタブ線3を重畳させる他、予め太陽電池セル2への接着面となるタブ線3の一面3aや他面3bにこの導電性接着ペーストを塗布しておくことにより、導電性接着ペーストを介してタブ線3を太陽電池セル2の各電極11,13上に貼着してもよい。
【0041】
なお、導電性接着フィルム17は、リール形状に限らず、太陽電池セル2の表面のバスバー電極11や裏面電極13のタブ線接続部14の形状に応じた短冊形状であってもよい。
【0042】
図5に示すように導電性接着フィルム17が巻き取られたリール製品として提供される場合、導電性接着フィルム17の粘度を10〜10000kPa・sの範囲とすることにより、導電性接着フィルム17の変形を防止し、所定の寸法を維持することができる。また、導電性接着フィルム17が短冊形状で2枚以上積層された場合も同様に、変形を防止し、所定の寸法を維持することができる。
【0043】
[製造工程]
上述した導電性接着フィルム17は、導電性粒子23と、エポキシ樹脂と、硬化剤と、膜形成樹脂と、シランカップリング剤とを溶剤に溶解させる。溶剤としては、トルエン、酢酸エチルなど、又はこれらの混合溶剤を用いることができる。溶解させて得られた樹脂生成用溶液を剥離シート上に塗布し、溶剤を揮発させることにより、導電性接着フィルム17を得る。
【0044】
表面電極用2本及び裏面電極用2本を所定の長さにカットされた導電性接着フィルム17は、太陽電池セル2の表裏面の所定位置に仮貼りされる。このとき、導電性接着フィルム17は、太陽電池セル2の表面に形成されている各バスバー電極11上や裏面のタブ線接続部14上に載置され、仮貼りヘッドによって流動性を生じさせるが本硬化を生じさせない程度の温度(例えば70℃)及び圧力(例えば0.5MPa)で所定時間(例えば0.5秒)熱加圧される。
【0045】
次いで、同様に所定の長さにカットされたタブ線3が導電性接着フィルム17上に重畳配置される。このとき、タブ線3は、一面3aの表面接続部3cがバスバー電極11上に配置され、他面3bの裏面接続部3dが裏面電極13のタブ線接続部14上に配置される。次いで、タブ線3は、加熱押圧ヘッドによって導電性接着フィルム17のバインダー樹脂が熱硬化する所定の温度(例えば180℃程度)及び所定の圧力(例えば2MPa程度)で所定時間(例えば15秒程度)熱加圧される。これにより、導電性接着フィルム17を介して、タブ線3とバスバー電極11又は裏面電極13とが電気的及び機械的に接続される。
【0046】
このように、太陽電池セル2は、一枚ずつ加熱押圧ヘッドの直下に搬送され、順次、タブ線3がバスバー電極11及び裏面電極13に接着されると共に、タブ線3を介して隣接する太陽電池セル2と直列又は並列に接続され、ストリングス4、マトリクス5を構成していく。
【0047】
その後、ストリングス4あるいはマトリクス5は、EVA等の透光性の封止材のシート6が表裏両面に積層され、表面カバー7及びバックシート8とともに、減圧ラミネータによって一括ラミネートされる。このときも、導電性接着フィルム17は、所定の温度(例えば160℃)で所定時間(例えば20分程度)加熱される。最後に、周囲にアルミニウムなどの金属フレーム9が取り付けられることにより太陽電池モジュール1が形成される。
【0048】
[作用・効果]
ここで、太陽電池セル2は、導電性接着フィルム17の硬化剤として、イミダゾール系硬化剤及び有機酸ジヒドラジド硬化剤を含有している。有機酸ジヒドラジド硬化剤は、エポキシ環に対して重付加反応を引き起こし、水酸基を形成させイミダゾールの硬化反応を促進させる。これにより、導電性接着フィルム17は、加熱押圧ヘッドによるタブ線3の熱加圧条件が180℃、2MPa、15秒という低温低圧短時間の条件下においても、エポキシの反応率を55%以上とすることができ、さらに、減圧ラミネート時に、エポキシの反応率を95%以上とすることができる。また、太陽電池モジュールは、導電性接着フィルム17が熱硬化することにより形成される接着層のガラス転移温度(Tg)が170℃以上となる。
【0049】
すなわち、タブ線の接続工程において、低温低圧短時間で熱加圧し、次いで減圧ラミネート圧着工程において2段階で熱加圧を行うことで、太陽電池セルの反りや割れ等を防止でき、また、硬化物反応を促進させエポキシの反応率を95%まで向上させて、Tgの最適化(170℃以上)、タブ線の接着性、接続信頼性の向上を図ることができる。
【0050】
したがって、導電性接着フィルム17及び太陽電池モジュール1によれば、タブ線3が低温低圧短時間の熱加圧条件において、基板の反りや損傷を防止し、かつタクトタイムの短縮化を図ることができるとともに、タブ線3の接着性を良好とすることができ、さらに、太陽電池モジュール製造初期及び太陽電池モジュールが高温高湿環境下に長時間晒された場合においても、良好な接続信頼性を維持することができる。
【0051】
なお、タブ線の本圧着時におけるエポキシの反応率は55〜85%が好ましい。85%を超えるとラミネート工程で押し込むことができず、55%に満たないとラミネート工程によっても充分な反応率に達し得ず、いずれも接続信頼性に不具合が発生する場合がある。
【実施例1】
【0052】
次いで、本発明の実施例について説明する。本実施例では、導電性接着フィルムの硬化剤としてイミダゾールと有機酸ジヒドラジドとの配合比を変えた実施例について、有機酸ジヒドラジドを含有しない硬化剤を用いた比較例と比較して、これらのエポキシの反応率、Tg、タブ線の接着力及び接続信頼性を測定した。
【0053】
各サンプルにおける太陽電池セルとして、多結晶シリコンからなる光電変換素子を用い、表面にAgペーストを塗布、焼成してなるフィンガー電極及びバスバー電極が設けられ、裏面に全面に亘ってAg電極が設けられた太陽電池セルを用意した。実施例及び比較例に係る導電性接着フィルムを介して太陽電池セルに接続されるタブ線として、銅箔をメッキコーティングしたタブ線を用いた。
【0054】
各サンプルにおける導電性接着フィルムは、下記実施例及び比較例に係る硬化剤;20質量部、及び導電性粒子;10質量部と、
フェノキシ樹脂(PKHH:InChem社製);20質量部、
液状エポキシ樹脂(jer604:三菱化学株式会社製);30質量部、
アクリルゴム(テイサンレジンSGP3:ナガセケムテックス株式会社製);15質量部、
ポリブタジエンゴム(RKBシリーズ:レジナス化成株式会社製);15質量部、
とをトルエン(100質量部)に溶解させ樹脂組成物を調整した。その後、溶解させて得られた樹脂生成用溶液を剥離シート上に塗布し、オーブンにて溶剤を揮発させることにより、導電性接着フィルムを得た。
【0055】
また、下記実施例に用いる有機酸ジヒドラジドとして、有機酸ジヒドラジドA、Bを用意した。有機酸ジヒドラジドAは以下のようにして作成した。攪拌装置を備えた三口フラスコに4−イソプロピル−2−イミダゾリドン(Imidazolidone)、メタノールを計り、室温で攪拌しながら、アクリル酸メチルを滴下した。滴下終了後、一夜放置し、濃縮乾固して化合物を得た。この化合物をメタノールに溶解し、抱水ヒドラジン80%水溶液を加え、攪拌下4時間加熱還流した。濃縮乾固した後、残渣をメタノールに溶かし、一夜放置した。析出した結晶を濾取しメタノールで洗浄後、減圧乾燥し有機酸ジヒドラジドAを得た。また、有機酸ジヒドラジドBは、以下のようにして作成した。7,11−オクタデカジエン−1,18−ジカルボン酸メチルをメタノールに溶解し、抱水ヒドラジン80%水溶液を加え、攪拌下4時間加熱還流した。濃縮乾固した後、残渣をメタノールに溶かし、一夜放置した。析出した結晶を濾取しメタノールで洗浄後、減圧乾燥し有機酸ジヒドラジドBを得た。
【0056】
実施例1は、硬化剤(20質量部)としてイミダゾール系硬化剤(ノバキュアHX3941:旭化成イーマテリアルズ製)と有機酸ジヒドラジドA(融点120℃)とを1:1の割合で配合した。また、導電性粒子(10質量部)として、10μmの置換メッキ銀コート銅粉を用いた。
【0057】
この置換メッキ銀コート銅粉は、いわゆるアトマイズ法と呼ばれる製法により得られたアトマイズ銅粉を、さらに機械的粉砕を施して得られた銅微粉を使用した。なお、機械的粉砕時には、銅粉同士の凝集による粗大化を防止する目的で脂肪酸が添加されていると推察される。具体的には日本アトマイズ加工(株)製フレーク銅微粉(型番:AFS−Cu 7μm)を使用した。この銅微粉はレーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量累積粒径D50は7.9μmであった。
【0058】
このフレーク状の銅微粉500gを大気中で250℃、5分間、熱処理した。その後、酸化処理した銅微粉を乳鉢にて粗砕した。この銅微粉500gを1%水酸化カリウム水溶液1000mlに加えて20分間攪拌し、続いて一次デカンテーション処理を行い、さらに純水1000mlを加えて数分間攪拌した。
【0059】
その後、二次デカンテーション処理を行い、硫酸濃度15g/Lの硫酸水溶液2500mlを加えて30分間攪拌した。さらに、硫酸水溶液による酸洗浄をもう1回繰り返した。さらに、三次デカンテーション処理を行い、純水2500mlを加えて数分間攪拌した。そして、四次デカンテーション処理を行い、濾過洗浄、吸引脱水することでフレーク状の銅微粉と溶液とを濾別し、フレーク状の銅微粉を90°Cの温度で2時間の乾燥を行った。
【0060】
次いで、乾燥済みのフレーク状の銅微粉に硫酸濃度7.5g/Lの硫酸水溶液2500mlを加えて30分間攪拌した。さらに、五次デカンテーション処理を行い、純水2500mlを加えて数分間攪拌した。
【0061】
さらに、六次デカンテーション処理を行い、1%酒石酸ナトリウムカリウム溶液2500mlを加えて数分間攪拌し、銅スラリーを形成させた。該銅スラリーに希硫酸又は水酸化カリウム溶液を加えて、銅スラリーのpHを3.5〜4.5になるように調整した。
【0062】
pHを調整した銅スラリーに硝酸銀アンモニア溶液1000ml(硝酸銀87.5gを水に添加してアンモニア水を加え、1000mlとして調整したもの)を、30分間の時間をかけてゆっくりと添加しながら置換反応処理及び還元反応処理を行い、さらに30分間の攪拌をして銀メッキ銅微粉を得た。
【0063】
その後、七次デカンテーション処理を行い、純水3500mlを加えて数分間攪拌した。さらに八次デカンテーション処理を行い、純水3500mlを加えて数分間攪拌した。そして、濾過洗浄、吸引脱水することで銀メッキ銅微粉と溶液とを濾別し、銀メッキ銅微粉を90°Cの温度で2時間の乾燥を行った。
【0064】
上記の銀メッキ銅微粉500gを管状炉に入れ、水素気流下(3.0〜3.5l/min)の還元性雰囲気中で200°C、30分間熱処理した。熱処理済みの銀メッキ銅微粉を乳鉢で粉砕した。上記の熱処理済みの銀メッキ銅微粉500gを0.5%ステアリン酸イソピルアルコール溶液1000mlに分散させ、30分間攪拌した。
【0065】
そして、濾過洗浄、吸引脱水することで熱処理済みのステアリン酸被覆銀メッキ銅微粉と溶液とを濾別し、熱処理済みのステアリン酸被覆銀メッキ銅微粉を90°Cの温度で2時間の乾燥を行い、熱処理済みのステアリン酸被覆銀メッキ銅微粉を得た(特開2010−174311号公報参照)。
【0066】
実施例2は、硬化剤の配合割合を、イミダゾール系硬化剤:有機酸ジヒドラジドA=2:1とした以外は、実施例1と同様の構成とした。
【0067】
実施例3は、硬化剤の配合割合を、イミダゾール系硬化剤:有機酸ジヒドラジドA=1:2とした以外は、実施例1と同様の構成とした。
【0068】
実施例4は、硬化剤(20質量部)として、イミダゾール系硬化剤(ノバキュアHX3941:旭化成イーマテリアルズ製)と、有機酸ジヒドラジドB(融点160℃)とを2:1の割合で配合した。また、導電性粒子として実施例1と同様の銀コート銅粉を用いた。
【0069】
実施例5は、硬化剤の配合割合を、イミダゾール系硬化剤:有機酸ジヒドラジドB=1:1とした以外は、実施例4と同様の構成とした。
【0070】
実施例6は、硬化剤の配合割合を、イミダゾール系硬化剤:有機酸ジヒドラジドB=1:2とした以外は、実施例4と同様の構成とした。
【0071】
実施例7は、硬化剤の配合割合を、イミダゾール系硬化剤:有機酸ジヒドラジドB=1:3とした以外は、実施例4と同様の構成とした。
【0072】
実施例8は、硬化剤の配合割合を、イミダゾール系硬化剤:有機酸ジヒドラジドB=3:1とした以外は、実施例4と同様の構成とした。
【0073】
実施例9は、導電性粒子として、10μm銅粉(T−220;三井金属鉱業株式会社製)を用いた以外は、実施例5と同様の構成とした。
【0074】
実施例10は、硬化剤の配合割合を、イミダゾール系硬化剤:有機酸ジヒドラジドB=1:4とした以外は、実施例1と同様の構成とした。
【0075】
実施例11は、硬化剤の配合割合を、イミダゾール系硬化剤:有機酸ジヒドラジドB=4:1とした以外は、実施例1と同様の構成とした。
【0076】
比較例1は、硬化剤(20質量部)として、イミダゾール系硬化剤(ノバキュアHX3941:旭化成イーマテリアルズ製)と、フェノール系硬化剤(TD−2131:DIC株式会社製)とを1:2の割合で配合した。また、導電性粒子として銀コート銅粉を用いた。
【0077】
比較例2は、硬化剤(20質量部)として、イミダゾール系硬化剤(ノバキュアHX3941:旭化成イーマテリアルズ製)と、酸無水物系硬化剤(HNA−100:新日本理化株式会社製)とを1:2の割合で配合した以外は、比較例1と同様の構成とした。
【0078】
比較例3は、硬化剤(20質量部)として、イミダゾール系硬化剤(ノバキュアHX3941:旭化成イーマテリアルズ製)を用いた以外は、比較例1と同様の構成とした。
【0079】
比較例4は、硬化剤(20質量部)として、フェノール系硬化剤(TD−2131:DIC株式会社製)を用いた以外は、比較例1と同様の構成とした。
【0080】
比較例5は、硬化剤(20質量部)として、酸無水物系硬化剤(HNA−100:新日本理化株式会社製)を用いた以外は、比較例1と同様の構成とした。
【0081】
比較例6は、導電性粒子として、10μm銅粉(T−220;三井金属鉱業株式会社製)を用いた以外は、比較例3と同様の構成とした。
【0082】
実施例及び比較例に係る各導電性接着フィルムは、太陽電池セルのバスバー電極上及び裏面Ag電極上に、70℃、0.5MPa、0.5秒の熱加圧条件で仮貼りした。次いで、導電性接着フィルムの上にタブ線を積層し、180℃、2MPa、15秒の熱加圧条件で本圧着し、バスバー電極及び裏面Ag電極と接続した。このとき、エポキシの反応率を測定した。反応率は、硬化反応前、及び硬化反応後のサンプルに対してIR測定を行い、得られたチャートのエポキシ基のピーク(914cm−1)強度の比を残存するエポキシ基の割合として求め、これを1から差し引いたものを反応率(%)として求めた。
【0083】
その後、EVA樹脂からなる封止材のシートを太陽電池セルの表裏面に積層し、減圧ラミネータを用いて一括ラミネートを行い太陽電池モジュールのサンプルを作成した。ラミネート条件は、160℃、20分である。各太陽電池セルのサンプルについて、上記と同様にエポキシの反応率(%)を求めた。また、導電性接着フィルムが硬化してできた接着層のガラス転移温度(Tg)を測定した。また、タブ線をバスバー電極、裏面Ag電極から90°方向で剥離する90°剥離試験(JIS K6854−1)を行い、ピール強度(N/mm)を測定し、タブ線の接着性を求めた。さらに、デジタルマルチメータ(デジタルマルチメータ7561;横川電機株式会社製)を用いて4端子法にて電流2mAを流した際の接続抵抗を、太陽電池モジュールの製造初期及び高温高湿試験後(85℃85%RH250hr/85℃85%RH500hr)において測定し、タブ線の接続信頼性を求めた。
【0084】
なお、タブ線の接着性は、ピール強度が2.0N/mm以上を◎、1.5N/mm以上2.0N/mm未満を○、1.0N/mm以上1.5N/mm未満を△、1.0N/mm未満を×とした。タブ線の接続信頼性は、抵抗値が4mΩ未満を◎、4mΩ以上5mΩ未満を○、5mΩ以上6mΩ未満を△、6mΩ以上を×とした。測定結果を表1に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
表1に示すように、実施例1〜11に係る導電性接着フィルムによれば、硬化剤として、イミダゾール系硬化剤及び有機酸ジヒドラジド硬化剤を含有しているため、加熱押圧ヘッドによるタブ線の熱加圧条件が180℃、2MPa、15秒という低温低圧短時間の条件下においても、エポキシの反応率を55%以上とすることができる。
【0087】
また、実施例1〜11に係る導電性接着フィルムによれば、硬化剤として、イミダゾール系硬化剤及び有機酸ジヒドラジド硬化剤を含有し、かつタブ線接続時においてエポキシの反応率を55%以上とされているため、タブ線接続後の減圧ラミネータによるラミネート圧着工程において、エポキシの反応率を95%以上とすることができ、また、硬化後のガラス転移温度(Tg)を170℃以上とすることができる。
【0088】
ここで、EVA等の透光性の封止材のシート6の減圧ラミネート圧着工程は、例えば160℃で20分と時間がかかるが、実施例1〜9に係る導電性接着フィルムによれば、タブ線の接続工程と、減圧ラミネート圧着工程において2段階で熱加圧を行うことで、最終的にエポキシの反応率を95%以上とすることができる。すなわち、タブ線の接続工程において、低温低圧短時間で熱加圧し、次いで減圧ラミネート圧着工程において2段階で熱加圧を行うことで、太陽電池セルの反りや割れ等を防止でき、また、硬化物反応を促進させエポキシの反応率を95%まで向上させて、Tgの最適化(170℃以上)、タブ線の接着性、接続信頼性の向上を図ることができる。
【0089】
これにより、実施例1〜11に係る導電性接着フィルムによれば、タブ線の接着性がいずれも◎と良好であった。また、タブ線の接続信頼性も高温高湿試験を経た後も、抵抗値が最大5mΩ以上6mΩ未満に抑えられ、実用上問題ないことが分かった。すなわち、実施例1〜9に係る導電性接着フィルムによれば、タブ線の熱加圧条件が180℃、2MPa、15秒という低温低圧短時間の条件下においても耐熱性を維持し、タクトタイムの短縮化と耐熱性、接続信頼性の向上を図ることができる。
【0090】
一方、比較例1〜6は、いずれも硬化剤として有機酸ジヒドラジド硬化剤を含有していないため、タブ線接続時におけるエポキシの反応率が低く、またラミネート圧着後のエポキシの反応率も最大90%に留まった。また、タブ線の接着性がいずれも△となり、接続信頼性試験も接続抵抗値が上昇し、高温高湿試験(85℃85%RH500hr)を経た後にはいずれも抵抗値が6mΩ以上となり実用に耐えられないことが分かった。
【0091】
なお、実施例10と実施例11とを比較すると、実施例10では、イミダゾール系硬化剤及び有機酸ジヒドラジド硬化剤の配合割合を1:4としたため、エポキシの反応率が下がり、硬化後のガラス転移温度(Tg)、タブ線の接着性、接続信頼性が低下した。また、実施例11では、イミダゾール系硬化剤及び有機酸ジヒドラジド硬化剤の配合割合を4:1としたため、有機酸ジヒドラジド硬化剤を添加することによる効果が、タブ線の接着性や接続信頼性の維持といった面でやや低下した。これにより、イミダゾール系硬化剤及び有機酸ジヒドラジド硬化剤の配合割合は、1:3〜3:1の範囲がより好ましいことが分かる。
【符号の説明】
【0092】
1 太陽電池モジュール、2 太陽電池セル、3 タブ線、4 ストリングス、5 マトリクス、6 シート、7 表面カバー、8 バックシート、9 金属フレーム、10 光電変換素子、11 バスバー電極、12 フィンガー電極、13 裏面電極、14 タブ線接続部、17 導電性接着フィルム、23 導電性粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともエポキシ樹脂と、硬化剤と、導電性粒子とを備え、上記硬化剤は、イミダゾール系硬化剤及び有機酸ジヒドラジド硬化剤を含有した導電性接着剤を用い、
太陽電池セルに形成された電極上に上記導電性接着剤を介してタブ線を配置し、
上記タブ線上を所定の温度及び圧力で所定時間熱加圧することにより、上記導電性接着剤を熱硬化させる太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項2】
上記タブ線が接続された上記太陽電池セルに封止樹脂を重畳配置し、
一括ラミネート圧着することにより、上記導電性接着剤をさらに所定の温度及び圧力で所定時間熱加圧する請求項1記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項3】
上記イミダゾール系硬化剤:上記有機酸ジヒドラジド硬化剤の配合比が3:1〜1:3である請求項2記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項4】
上記イミダゾール系硬化剤:上記有機酸ジヒドラジド硬化剤の配合比が2:1〜1:2である請求項3記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項5】
上記有機酸ジヒドラジド硬化剤の融点が120℃〜160℃である請求項3又は請求項4記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項6】
少なくともエポキシ樹脂と、硬化剤と、導電性粒子とを備え、上記硬化剤は、イミダゾール系硬化剤及び有機酸ジヒドラジド硬化剤を含有した導電性接着剤を用い、
太陽電池セルに形成された電極上に上記導電性接着剤を介してタブ線を配置し、
上記タブ線上を所定の温度及び圧力で所定時間熱加圧することにより、上記導電性接着剤を熱硬化させる接続方法。
【請求項7】
太陽電セルに形成された電極とタブ線とを接続する導電性接着剤において、
少なくともエポキシ樹脂と、硬化剤と、導電性粒子とを備え、
上記硬化剤は、イミダゾール系硬化剤及び有機酸ジヒドラジド硬化剤を含有する導電性接着剤。
【請求項8】
上記イミダゾール系硬化剤:上記有機酸ジヒドラジド硬化剤の配合比が3:1〜1:3である請求項7記載の導電性接着剤。
【請求項9】
上記イミダゾール系硬化剤:上記有機酸ジヒドラジド硬化剤の配合比が2:1〜1:2である請求項8記載の導電性接着剤。
【請求項10】
上記有機酸ジヒドラジド硬化剤の融点が120℃〜160℃である請求項8又は請求項9記載の導電性接着剤。
【請求項11】
上記電極と上記タブ線との間に重畳され、上記タブ線の上より所定の温度及び圧力で所定時間熱加圧されることにより上記タブ線を上記電極上に接続した後、さらに封止樹脂とともに一括ラミネート圧着されることにより所定の温度及び圧力で所定時間熱加圧される太陽電池セルの製造工程に用いられる請求項7〜請求項10のいずれか1項に記載の導電性接着剤。
【請求項12】
導電性接着剤を用いて太陽電セルに形成された電極とタブ線とが接続された太陽電池モジュールにおいて、
上記導電性接着剤は、少なくともエポキシ樹脂と、硬化剤と、導電性粒子とを備え、
上記硬化剤は、イミダゾール系硬化剤及び有機酸ジヒドラジド硬化剤を含有する太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−45994(P2013−45994A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184371(P2011−184371)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000108410)デクセリアルズ株式会社 (595)
【Fターム(参考)】