説明

太陽電池用測定治具及び太陽電池セルの出力測定方法

【課題】バスバーレス構造の太陽電池セルに対しても電気的特性の測定方法を提供する。
【解決手段】太陽電池セル2の表面に形成された線状電極3aに当接される複数のプローブピン4と、プローブピン4を保持するホルダ5とを備え、複数のプローブピン4が配列されてなり、線状電極3a上に配置されることにより太陽電池セル2の電流特性を測定する電流測定端子6と、複数のプローブピン4が配列されてなり、線状電極3a上に配置されることにより太陽電池セル2の電圧特性を測定する電圧測定端子7とを有し、電流測定端子6と電圧測定端子7とが並列して設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールの電気的特性を測定する測定治具及び測定方法に関するものであり、特に太陽電池セルに接触する電極端子構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池セルの電気的特性の測定を行う測定治具としては、一般に太陽電池セルのバスバー電極に接触されるプローブピンを複数備えた測定治具が用いられている。この種の測定治具は、太陽電池セルに流れる電流を測定する電流測定用プローブピンと、太陽電池セルに発生する電圧を測定する電圧測定用プローブピンを有する。
【0003】
太陽電池セルの電気的特性の測定は、例えば、図19及び図20に示すように、これら電流測定用プローブピン50及び電圧測定用プローブピン51を、測定対象となる太陽電池セル53のバスバー電極54上に接触し、太陽電池セル53の受光面に疑似太陽光を照射しながら、太陽電池セル53に流れる電流及び太陽電池セル53に発生する電圧を測定するいわゆる4端子法によって行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−118983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、近年、太陽電池セルの製造工数を削減すると共に、Agペースト等の電極材料の使用量を削減し製造コストの低コスト化を図るために、バスバー電極を設けることなく、導電性接着フィルムを介してフィンガー電極と交差するように直接インターコネクタとなるタブ線を接続させる工法が提案されている。かかるバスバーレス構造の太陽電池セルにおいても、集電効率はバスバー電極を形成した太陽電池セルと同等以上となる。
【0006】
このようなバスバーレス構造の太陽電池セル55に対して電気的特性を測定する場合、プローブピン56を直接フィンガー電極57に接触させる必要がある。しかし、図21に示すように、プローブピン56の立設間隔とフィンガー電極57が形成される間隔とは一致しないことも多く、この場合、全てのフィンガー電極57に対して導通をとることができず、計測の対象から外れるフィンガー電極57が発生し、正確な電気的特性を測定することができなくなる。
【0007】
このような問題を解決するために、プローブピンを用いるのではなく、矩形板状のバー電極を測定端子に用い、全フィンガー電極と交叉するように太陽電池セルの受光面に配置する測定手法も提案されている。
【0008】
しかし、バー電極による測定手法においては、各フィンガー電極にバー電極の当接面を均一に当接させる必要があるが、バー電極の当接面の平面度を高精度に形成することや、バー電極の太陽電池セルに対する水平度の調整が困難となる。さらに、フィンガー電極の高さは太陽電池セルの面内において不均一である場合、全てのフィンガー電極にバー電極を充分な圧力で当接させることは難しい。
【0009】
そこで、本発明は、バスバー電極を備える太陽電池セルのみならず、バスバーレス構造の太陽電池セルに対しても電気的特性の測定を正確に行うことができる太陽電池用測定治具及び太陽電池セルの出力測定方法を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明に係る太陽電池用測定治具は、太陽電池セルの表面に形成された線状電極に当接される複数のプローブピンと、上記プローブピンを保持するホルダとを備え、複数の上記プローブピンが配列されてなり、上記線状電極上に配置されることにより上記太陽電池セルの電流特性を測定する電流測定端子と、複数の上記プローブピンが配列されてなり、上記線状電極上に配置されることにより上記太陽電池セルの電圧特性を測定する電圧測定端子とを有し、上記電流測定端子と上記電圧測定端子とが並列して設けられているものである。
【0011】
また、本発明に係る太陽電池セルの出力測定方法は、太陽電池セルの表面に形成された線状電極に当接される複数のプローブピンと、上記プローブピンを保持するホルダとを備える太陽電池用測定治具を用い、複数の上記プローブピンが配列されてなり上記太陽電池セルの電流特性を測定する電流測定端子と、複数の上記プローブピンが配列されてなり上記電流測定端子と並列して設けられた上記太陽電池セルの電圧特性を測定する電圧測定端子とを、上記線状電極上に配置し、上記太陽電池セルの表面に光を照射しながら、電気的特性を測定するものである。
【0012】
また、本発明に係る太陽電池用測定治具は、太陽電池セルの表面に形成された線状電極に当接され上記太陽電池セルの電気特性を測定する測定端子を構成する複数のプローブピンと、上記プローブピンを保持するホルダとを備え、複数の上記プローブピンが上記ホルダの長手方向に亘って配列され、隣接する上記プローブピン同士が、配列方向に一部オーバーラップしているものである。
【0013】
また、本発明に係る太陽電池セルの出力測定方法は、太陽電池セルの表面に形成された線状電極に当接され上記太陽電池セルの電気特性を測定する測定端子を構成する複数のプローブピンと、上記プローブピンを保持するホルダとを備え、複数の上記プローブピンが上記ホルダの長手方向に亘って配列され、隣接する上記プローブピン同士が、配列方向に一部オーバーラップしている太陽電池用測定治具を用い、上記測定端子を構成する上記プローブピンを上記線状電極上に配置し、上記太陽電池セルの表面に光を照射しながら、電気的特性を測定するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電流測定端子と電圧測定端子とを配列させることにより、線状電極に当接されるプローブピンの数を増加させることができ、とりわけ本発明に係る太陽電池用測定治具によれば全線状電極にプローブピンを当接させることができる。また、電流測定端子と電圧測定端子とが並列して形成されることにより、ホルダの幅を広げることがなく、電気的特性の測定にあたってホルダによるシャドーロスを低く抑え、出力低下を防止することができる。
【0015】
また、本発明によれば、ホルダの長手方向に亘って配設される複数のプローブピンが、配列方向に一部オーバーラップしているため、ホルダの幅を狭小化することとができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明が適用された太陽電池用測定治具によって太陽電池セルの電気的測定を行う工程を示す斜視図である。
【図2】本発明が適用された太陽電池用測定治具を示す斜視図である。
【図3】電流測定端子及び電圧測定端子の配列を示す底面図である。
【図4】電流測定端子及び電圧測定端子の他の配列を示す底面図である。
【図5】ジグザグ状に配列された電流測定端子をフィンガー電極に当接させる状態を示す側面図である。
【図6】プローブピンの当接部の他の例を示す底面図である。
【図7】プローブピンの当接部の他の例を示す底面図である。
【図8】プローブピンの当接部の他の例を示す側面図である。
【図9】太陽電池セル及び太陽電池モジュールを示す分解斜視図である。
【図10】太陽電池セルを示す断面図である。
【図11】太陽電池セルの裏面を示す底面図である。
【図12】導電性接着フィルムを示す断面図である。
【図13】太陽電池用測定装置による電流測定を説明するための図である。
【図14】太陽電池用測定装置による電圧測定を説明するための図である。
【図15】他の太陽電池用測定治具を示す斜視図である。
【図16】他の太陽電池用測定治具のプローブピンの配列を示す底面図である。
【図17】他の太陽電池用測定治具のプローブピンの配列を示す底面図である。
【図18】他の太陽電池用測定治具を示す斜視図である。
【図19】従来のプローブピンを用いた測定装置を用いて太陽電池セルの電気的特性の測定を行う状態を示す斜視図である。
【図20】従来のプローブピンを用いた測定装置による測定を説明するための図である。
【図21】従来のプローブピンを用いた測定装置によってバスバーレス構造の太陽電池セルの電気的特性の測定を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明が適用された太陽電池用測定治具及び太陽電池セルの出力測定方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0018】
[第1の太陽電池用測定治具]
本発明が適用された太陽電池用測定治具1は、図1、図2に示すように、太陽電池セル2の表面に形成された表面電極3に当接される複数のプローブピン4と、プローブピン4を保持するホルダ5とを備える。そして、太陽電池用測定治具1は、複数のプローブピン4が配列することにより電流測定端子6を構成し、また、複数のプローブピン4が配列することにより電圧測定端子7を構成する。
【0019】
そして、太陽電池用測定治具1は、電流測定端子6を構成する複数のプローブピン4の端部同士が、例えば銅線ケーブルのはんだ接続により接続されるとともに、電流計8と接続されている。同様に、太陽電池用測定治具1は、電圧測定端子7を構成する複数のプローブピン4の端部同士が、例えば銅線ケーブルのはんだ接続により接続されるとともに、電圧計9と接続されている。
【0020】
各プローブピン4は、ホルダ5に保持されるピン本体4aと、ピン本体4aの先端に設けられて太陽電池セルの表面電極3に当接される当接部4bとを有する。ピン本体4aは円柱状に形成され、当接部4bは、ピン本体4aよりも大径の円柱状に形成されている。
プローブピン4は、ピン本体4aがホルダ5に保持されることにより、当接部4bがホルダ5の下面5bから突出され、ピン本体4aの端部がホルダ5の上面5aから突出されている。そして、プローブピン4は、ホルダ5の上面5aから突出されているピン本体4aの端部同士が銅線ケーブルのはんだ接続等により結束されることにより、複数のプローブピン4がホルダ5の長辺方向に亘って配列されてなる電流測定端子6及び電圧測定端子7を構成する。
【0021】
プローブピン4を保持するホルダ5は、例えばガラスエポキシやアクリル、ポリカーボネート等の樹脂材料を用いて矩形板状に形成されている。ホルダ5の上下面5a,5bは、太陽電池セル2の一辺の長さに相当する長辺と、プローブピン4が所定形状に配列される幅を有する短辺とからなる。そして、ホルダ5は、上下面5a,5b間に亘って、複数のプローブピン4が電流測定端子6及び電圧測定端子7を構成する所定の配列で埋め込まれている。
【0022】
[直線状配列]
電流測定端子6及び電圧測定端子7は、図2、図3に示すように、ホルダ5の下面5bに、互いに並列して設けられている。また、電流測定端子6及び電圧測定端子7は、ともにホルダ5の下面5bの長辺方向に沿って直線状に形成されている。電流測定端子6及び電圧測定端子7を構成する各プローブピン4は、当接部4bが直径3.5mmの円柱状をなし、隣接する当接部4bとの間隙S1が、一般的なフィンガー電極の間隔よりも短い0.1mmとされている。
【0023】
電流測定端子6は、太陽電池セル2の表面電極3と当接される当接部4bの間隔S1が0.1mmとされることで、例えば表面電極3として互いに平行な複数のフィンガー電極3aのみが所定間隔で形成されているいわゆるバスバーレス構造の太陽電池セル2において、当該フィンガー電極3aの一般的な間隔(例えば1.0〜2.0mm)よりも短い間隔で当接部4bを配列することができる。したがって、太陽電池用測定治具1によれば、太陽電池セル2によってフィンガー電極3aの間隔にバラツキが生じている場合でも、全てのフィンガー電極3aの間隔に対応することができる。
【0024】
このように、太陽電池用測定治具1は、電流測定端子6と電圧測定端子7とが形成されることにより、1列のプローブ電極で電流測定端子及び電圧測定端子を兼ねる測定治具に比して、フィンガー電極3aに当接されるプローブピンの数を増加させることができ、とりわけ太陽電池用測定治具1によれば全フィンガー電極3aにプローブピン4の当接部4bを当接させることができる。また、電流測定端子6と電圧測定端子7とが並列して形成されることにより、ホルダ5の上下面5a,5bの幅を広げることがなく、電気的特性の測定にあたってホルダ5によるシャドーロスを低く抑え、出力低下を防止することができる。
【0025】
また、図3に示すように、電流測定端子6と電圧測定端子7とは、互いのプローブピン4が配列方向に一部オーバーラップしている。すなわち、電流測定端子6と電圧測定端子7とは、互いのプローブピン4がホルダ5の下面5bの長辺方向に沿って平行に配列され、この配列方向と直交するホルダ5の下面5bの幅方向から見て、一方のプローブピン4間に他方のプローブピン4の当接部4bの中心が位置するように配列されるとともに、互いの当接部4bとの間隔S2が例えば0.1mmと近接して配列されている。
【0026】
これにより、電流測定端子6と電圧測定端子7とは、互いのプローブピン4の当接部4bが配列方向からみて一部オーバーラップさせることで、ホルダ5の下面5bの幅方向に狭小化して配列させることができる。したがって、ホルダ5は、太陽電池セル2の表面に接するホルダ5の幅が狭小化され、シャドーロスによる出力低下を防止することができる。
【0027】
太陽電池用測定治具1は、例えば6インチの太陽電池セルの電流電圧特性の測定に用いる場合、ホルダ5の上下面5a,5bの長辺は、太陽電池セル2の一辺の長さに相当する156mmとされ、電流測定端子6を構成するプローブピン4がホルダ5の長辺方向に沿って直線状に、0.1mmの間隔を空けて43本配列され、そのとなりに平行して電圧測定端子7を構成するプローブピン4が、同様に、0.1mmの間隔を空けて42本配列されている。
【0028】
[ジグザグ配列]
また、太陽電池用測定治具1は、図4に示すように、電流測定端子6及び電圧測定端子7を、ともにホルダ5の下面5bの長辺方向に沿ってジグザグに形成してもよい。電流測定端子6及び電圧測定端子7は、各列のプローブピン4をジグザグに配列させることにより、それぞれ隣接するプローブピン4の当接部4b同士を、配列方向と直交する方向に一部オーバーラップさせることができる。すなわち、電流測定端子6は、プローブピン4がホルダ5の下面5bの長辺方向に沿ってジグザグに配列されるとともに、配列方向と直交するホルダ5の下面5bの幅方向から見て、隣接するプローブピン4の当接部4bの一部が重なるように配列されている。電圧測定端子7も、同様に構成されている。なお隣接するプローブピン4の当接部4b同士の間隔S3は、例えば0.1mmと近接して配列されている。
【0029】
このように、電流測定端子6及び電圧測定端子7は、それぞれ隣接するプローブピン4の当接部4bを配列方向と直交する方向に一部オーバーラップさせることにより、配列方向に亘って隙間がなくなる。したがって、この太陽電池用測定治具1によれば、図5に示すように、例えば表面電極3として互いに平行な複数のフィンガー電極3aのみが所定間隔で形成されているいわゆるバスバーレス構造の太陽電池セル2の電気的特性の測定において、当該フィンガー電極3aの間隔如何によらず、電流測定端子6及び電圧測定端子7を全てのフィンガー電極3aに当接させることができる。
【0030】
また、電流測定端子6及び電圧測定端子7は、それぞれ隣接するプローブピン4の当接部4bとのオーバーラップ幅Wを調整することにより、太陽電池セル2の表面に接するホルダ5の幅を狭小化し、シャドーロスによる出力低下を防止することができる。すなわち、プローブピン4がジグザグに配列された構成において、配列方向と直交する方向にオーバーラップさせる幅を増加させるには、隣接するプローブピン4をホルダ5の上下面5a,5bの幅方向に移動し、かつ配列方向に近接させることが必要となる。
【0031】
しかし、プローブピン4をホルダ5の上下面5a,5bの幅方向に移動すると、その分ホルダ5の幅が広がり、その結果ホルダ5が太陽電池セル2の表面を覆う面積が増加しシャドーロスによる出力低下を招く。
【0032】
一方で、電流測定端子6及び電圧測定端子7は、それぞれ隣接するプローブピン4の当接部4bと配列方向と直交する方向に一部でもオーバーラップしていれば、あらゆるフィンガー電極3aの間隔に対応することができる。
【0033】
そこで、電流測定端子6及び電圧測定端子7は、それぞれ隣接するプローブピン4の当接部4bとのオーバーラップ幅Wを所定幅以下、例えば0.1mm以下とすることで、あらゆるフィンガー電極3aの間隔に対応して当接部4bを当接可能とするとともに、ホルダ5の幅を狭小化しシャドーロスによる出力低下を防止することができる。
【0034】
太陽電池用測定治具1は、例えば6インチの太陽電池セルの電流電圧特性の測定に用いる場合、ホルダ5の上下面5a,5bの長辺は、太陽電池セル2の一辺の長さに相当する156mmとされ、電流測定端子6を構成するプローブピン4がホルダ5の長辺方向に沿ってジグザグ状に、0.1mmの間隔を空けるとともに配列方向と直交する方向に0.1mmのオーバーラップ幅Wを設けて45本配列され、そのとなりに平行して電圧測定端子7を構成するプローブピン4が、同様に、0.1mmの間隔を空けて44本配列されている。
【0035】
[揺動手段]
なお、太陽電池用測定治具1は、図示しないシリンダ治具をホルダ5に接続し、このシリンダ治具の操作に応じてホルダ5ごと上下動させることにより、あるいは手動等により、各プローブピン4を太陽電池セル2の表面電極3に垂直に押し当てる。
【0036】
[その他]
プローブピン4の当接部4bは、先端形状を円形とする以外にも、図6、図7に示すように、三角形状、菱形形状等、あらゆる形状としてもよい。また、図8に示すように、プローブピン4の当接部4bは、先端を半球形状としてもよい。
【0037】
[太陽電池セル2]
ここで、太陽電池用測定治具1によって電気的特性の測定が行われる太陽電池セル2について説明する。太陽電池セル2は、バスバー電極が形成されず、インターコネクタとなるタブ線11が直接フィンガー電極3aと交差するように接着されるものであり、太陽電池用測定治具1はこのようなバスバーレス構造の太陽電池セル2の測定に好適に用いられる。
【0038】
図9に示すように、バスバーレス構造の太陽電池セル2は、インターコネクタとなるタブ線11によって直列あるいは並列に接続されることにストリングス12を構成する。このストリングス12は、複数配列されることによりマトリクス13を構成し、このマトリクス13が封止接着剤のシート14で挟まれ、受光面側に設けられた表面カバー15及び裏面側に設けられたバックシート16とともに一括してラミネートされ、最後に、周囲にアルミニウムなどの金属フレーム17が取り付けられることにより太陽電池モジュール18が形成される。
【0039】
封止接着剤としては、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)等の透光性封止材が用いられる。また、表面カバー15としては、例えば、ガラスや透光性プラスチック等の透光性の材料が用いられる。また、バックシート16としては、ガラスやアルミニウム箔を樹脂フィルムで挟持した積層体等が用いられる。
【0040】
図10に示すように、太陽電池モジュール18の各太陽電池セル2は、光電変換素子20を有する。光電変換素子20は、単結晶型シリコン光電変換素子、多結晶型光電変換素子を用いる結晶シリコン系太陽電池や、アモルファスシリコンからなるセルと微結晶シリコンやアモルファスシリコンゲルマニウムからなるセルとを積層させた光電変換素子を用いた薄膜シリコン系太陽電池など、各種光電変換素子20を用いることができる。
【0041】
また、光電変換素子20は、受光面側に内部で発生した電気を集電するフィンガー電極3aが設けられている。フィンガー電極3aは、太陽電池セル2の受光面となる表面にAgペーストがスクリーン印刷等により塗布された後、焼成されることにより形成される。
また、フィンガー電極3aは、受光面の全面に亘って、例えば約50〜200μm程度の幅を有するラインが、所定間隔、例えば2mmおきに、ほぼ平行に複数形成され、導電性接着フィルム23によってタブ線11が全フィンガー電極3aと交差するように接続される。
【0042】
また、光電変換素子20は、受光面と反対の裏面側に、アルミニウムや銀からなる裏面電極22が設けられている。裏面電極22は、アルミニウムや銀からなる電極が例えばスクリーン印刷やスパッタ等により太陽電池セル2の裏面に形成される。図11に示すように、裏面電極22は、後述する導電性接着フィルム23を介してタブ線11が接続されるタブ線接続部24を有する。
【0043】
そして、太陽電池セル2は、タブ線11によって、表面に形成された各フィンガー電極3aと、隣接する太陽電池セル2の裏面電極22とが電気的に接続され、これにより直列に接続されたストリングス12を構成する。タブ線11とフィンガー電極3a及び裏面電極22とは、導電性接着フィルム23によって接続される。
【0044】
タブ線11は、図10に示すように、隣接する太陽電池セル2a、2b、2cの各間を電気的に接続する長尺状の導電性基材からなり、例えば、50〜300μm厚で後述する導電性接着フィルム23と略同幅のリボン状銅箔を使用し、必要に応じて金メッキ、銀メッキ、スズメッキ、ハンダメッキ等が施されている。
【0045】
[接着フィルム]
導電性接着フィルム23は、図12に示すように、導電性粒子26が高密度に含有された熱硬化性のバインダー樹脂層である。
【0046】
導電性接着フィルム23に用いられる導電性粒子26としては、特に制限されず、例えば、ニッケル、金、銀、銅などの金属粒子、樹脂粒子に金めっきなどを施したもの、樹脂粒子に金めっきを施した粒子の最外層に絶縁被覆を施したものなどを挙げることができる。
【0047】
導電性接着フィルム23のバインダー樹脂層の組成は、特に制限されないが、より好ましくは、膜形成樹脂と、液状エポキシ樹脂と、潜在性硬化剤と、シランカップリング剤とを含有する。
【0048】
そして、導電性接着フィルム23は、表面電極用2本及び裏面電極用2本を所定の長さに形成され、太陽電池セル2の表裏面の所定位置に仮貼りされる。このとき、導電性接着フィルム23は、太陽電池セル2の表面にほぼ平行に複数形成されている各フィンガー電極3aとほぼ直交するように仮貼りされる。
【0049】
同様に、所定の長さにカットされたタブ線11が導電性接着フィルム23上に重畳配置される。その後、導電性接着フィルム23は、タブ線11の上から加熱ボンダーによって所定の温度、圧力で所定時間熱加圧されることにより、バインダー樹脂が硬化すると共に導電性粒子26がタブ線11とフィンガー電極3a又は裏面電極22との間で挟持される。これにより、導電性接着フィルム23は、タブ線11を各電極上に接着させると共に、導通接続させることができる。
【0050】
なお、上記実施の形態では導電性接着フィルム23を用いる場合について説明したが、本発明は、フィルム形状の導電性接着剤に限らず、ペースト状の導電性接着剤や、導電性粒子を含有しない絶縁性接着フィルムや絶縁性接着ペーストを使用することもできる。
【0051】
[測定方法]
次いで、太陽電池用測定治具1を用いた太陽電池セル2の電気的特性の測定工程について説明する。
【0052】
太陽電池用測定治具1による太陽電池セル2の電気的特性の測定は、光電変換素子20にフィンガー電極3a及び裏面電極22が形成された段階で行う。具体的に、太陽電池セル2は、フィンガー電極3aが形成された受光面を上方に向けて載置台30に載置される。載置台30は、例えばCu板にAuメッキが施されることにより形成され、これにより太陽電池セル2の裏面電極22に対して導通が取られるようになっている。
【0053】
次いで、太陽電池用測定治具1は、図1に示すように、電流測定端子6及び電圧測定端子7の各プローブピン4と全てのフィンガー電極3aとが直交するように配置され、図示しない荷重手段によって所定の荷重で電流測定端子6及び電圧測定端子7が加圧される。
このとき、太陽電池用測定治具1は、電流測定端子6と電圧測定端子7とが形成されることにより、それぞれのプローブピン4の当接部4bがフィンガー電極3aと当接する。したがって、電流測定端子6は全フィンガー電極と当接可能となり、より高精度に電流特性を測定することができる。
【0054】
ここで、荷重手段による電流測定端子6及び電圧測定端子7に対する全荷重は、500g〜3000gの範囲が好ましい。全荷重が500gに満たないとプローブピン4の当接部4bとフィンガー電極3aとの接触が不十分となり出力の低下を招くおそれがあり、全荷重が3000gを超えるとプローブピン4によってフィンガー電極3aや太陽電池セル2を破損するおそれがある。
【0055】
太陽電池用測定治具1がセル表面に当接されることにより、図13及び図14に示すような回路構成をとり、疑似太陽光をセル表面に照射することにより、いわゆる4端子法によって太陽電池セル2の電気的特性の測定を行うことができる。
【0056】
ここで、太陽電池用測定治具1は、電流測定端子6と電圧測定端子7とが並列して形成されることにより、ホルダ5の上下面5a,5bの幅を広げることがなく、電気的特性の測定にあたってホルダ5によるシャドーロスを低く抑え、出力低下を防止することができる。
【0057】
また、電流測定端子6及び電圧測定端子7の各列のプローブピン4をジグザグに配列させた太陽電池用測定治具1を用いた場合には、それぞれ隣接するプローブピン4の当接部4b同士を、配列方向と直交する方向に一部オーバーラップさせることで、配列方向に亘って隙間をなくすことができる。したがって、フィンガー電極3aの間隔如何によらず、電流測定端子6を全てのフィンガー電極3aに当接させることができより高精度に電流特性を測定することができる。
【0058】
さらに、このようなジグザグ配列の電流測定端子6及び電圧測定端子7を有する太陽電池用測定治具1において、それぞれ隣接するプローブピン4の当接部4bとのオーバーラップ幅を所定幅以下、例えば0.1mm以下とすることで、あらゆるフィンガー電極3aの間隔に対応して当接部4bを当接可能とするとともに、ホルダ5の幅を狭小化しシャドーロスによる出力低下を防止することができ、より高精度な電流電圧特性の測定を行うことができる。
【0059】
なお、本発明が適用された太陽電池用測定治具1は、上述したいわゆるバスバーレス構造の太陽電池セル2の他、フィンガー電極3aと直交するバスバー電極が形成された太陽電池セルの電気的特性の測定にも用いることができる。この場合、太陽電池用測定治具1は、電流測定端子6及び電圧測定端子7をバスバー電極上に当接させるが、上述したとおり、フィンガー電極3aに当接させても問題なく測定可能である。
【実施例】
【0060】
次いで、本発明が適用された太陽電池用測定治具1を用いて、バスバーレス構造の太陽電池セル2及びバスバー電極が形成された太陽電池セルの各光電変換効率を測定した実施例について説明する。
【0061】
本実施例に用いたバスバーレス構造の太陽電池セル2は、6インチの単結晶シリコン光電変換素子を用い、受光面側にはフィンガー電極3aが2.4mm間隔で複数形成され、裏面側にはAg電極が全面に亘って形成されている。また、バスバー電極を形成された太陽電池セルは、バスバーレス構造の太陽電池セル2の構造に加え、フィンガー電極3aと直交するバスバー電極が形成されている。
【0062】
実施例1では、プローブピン4を直線状に2列配列することにより電流測定端子6及び電圧測定端子7を形成した太陽電池用測定治具1(図3参照)を用いて、バスバーレス構造の太陽電池セル2の光電変換効率を測定した。電流測定端子6及び電圧測定端子7の各プローブピン4の当接部4bは、隣接するプローブピン4の当接部4bとの間隙S1を、0.1mmとして配列されている。また、電流測定端子6及び電圧測定端子7に対する全荷重は、850gとした。
【0063】
実施例2では、プローブピン4をジグザグ状に2列配列することにより電流測定端子6及び電圧測定端子7を形成した太陽電池用測定治具1(図4参照)を用いて、バスバーレス構造の太陽電池セル2の光電変換効率を測定した。電流測定端子6及び電圧測定端子7の各プローブピン4の当接部4bは、隣接するプローブピン4の当接部4bと、配列方向と直交する方向に0.1mmの幅Wでオーバーラップさせた。また、電流測定端子6及び電圧測定端子7に対する全荷重は、500gとした。
【0064】
実施例3では、電流測定端子6及び電圧測定端子7に対する全荷重を850gとした以外は、実施例2と同様の構成とした。
【0065】
実施例4では、電流測定端子6及び電圧測定端子7に対する全荷重を2975gとした以外は、実施例2と同様の構成とした。
【0066】
実施例5では、バスバー電極が形成された太陽電池セルの当該バスバー電極上に電流測定端子6及び電圧測定端子7を当接させた以外は、実施例1と同様の構成とした。
【0067】
比較例1は、電流測定端子6及び電圧測定端子7に対する全荷重を400gとした以外は、実施例2と同様の構成とした。
【0068】
比較例2は、矩形板状のバー電極を測定端子に用いた太陽電池用測定治具を用いて、バスバーレス構造の太陽電池セル2の光電変換効率を測定した。比較例2では、バー電極を太陽電池セル2の全フィンガー電極3aと交叉するように配置して測定を行った。
【0069】
比較例3は、プローブピンを1列のみ配列した測定治具を用いてバスバーレス構造の太陽電池セル2の光電変換効率を測定した(図21参照)。電流測定端子6及び電圧測定端子7に対する全荷重は、850gとした。
【0070】
以上の実施例及び比較例について、光電変換効率の測定では、フィンガー電極3aあるいはバスバー電極上に電流測定端子6及び電圧測定端子7を接触させI−V特性を求め、これから最大電力Pmaxを求めた。また、光電変換効率の測定は、ソーラーシミュレーター(日清紡メカトロニクス社製、PVS1116i)を用いて、照度1000W/m、温度25℃、スペクトルAM1.5Gの条件(JIS C8913)にて行った。また、各実施例及び比較例にて、それぞれ5回測定し、最大電力Pmaxの平均と、標準偏差Pmaxσを求め、測定毎のバラツキがどの程度生じたかを検討した。
【0071】
光電変換効率の評価指針は以下の通りである。
◎:平均最大電力Pmaxが3.80(W)以上、標準偏差Pmaxσが0.018以下○:平均最大電力Pmaxが3.80(W)未満、標準偏差Pmaxσが0.018以下△:平均最大電力Pmaxが3.80(W)未満、標準偏差Pmaxσが0.018より 大きく0.03以下より小さい
×:平均最大電力Pmaxが3.80(W)未満、標準偏差Pmaxσが0.03以上
測定結果を表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
表1に示すように、バスバーレス構造の太陽電池セル2の電気的特性の測定を行った実施例1〜4では、実施例5に係るバスバー電極を形成した太陽電池セルの平均最大電力Pmaxとほぼ同一の値となり、かつ標準偏差Pmaxσが0.018以下と測定のバラツキも小さいことから、バスバーレス構造の太陽電池セルに対しても電気的特性の測定を正確かつ安定的に行えることがわかる。
【0074】
比較例1では、電流測定端子6及び電圧測定端子7に対する全荷重が400gと弱く、フィンガー電極3aとプローブピン4の当接部4bとの接触が不十分となったことから、標準偏差Pmaxσが0.036と、測定のバラツキが大きくなった。
【0075】
比較例2では、バー電極を用いていることから、フィンガー電極3aの高さのバラツキや、バー電極のフィンガー電極3aへの接触面の平坦度の影響を受けて、標準偏差Pmaxσが0.019と、測定のバラツキがやや大きくなった。
【0076】
比較例3では、プローブピンを1列直線状に形成していることから、プローブピンの立設間隔とフィンガー電極が形成される間隔とは一致せず、また、測定毎にプローブピンとフィンガー電極との当接位置のバラツキもあることから、プローブピンとフィンガー電極との接触が不十分となり、正確に電流、電圧測定ができず、また標準偏差Pmaxσが0.348と、測定のバラツキも大きくなった。
【0077】
また、実施例1と、実施例2〜4とを比較すると、プローブピン4をジグザグ状に2列配列することにより電流測定端子6及び電圧測定端子7を形成した測定治具では、プローブピン4を直線状に2列配列することにより電流測定端子6及び電圧測定端子7を形成した測定治具に比して、より高精度に電気的特性の測定が可能であることが分かる。これは、プローブピン4をジグザグ状に2列配列することにより、複数のフィンガー電極3aが配列する方向、すなわちプローブピン4の配列方向と直交する方向に当接部4bを一部オーバーラップさせることができる。これにより、プローブピン4は、複数のフィンガー電極3aが配列する方向に亘って隙間がなくなり(図5参照)、フィンガー電極3aの間隔如何によらず、全てのフィンガー電極3aに当接部4bを当接させることができるため、より高精度に電気的特性の測定が可能となるためである。
【0078】
[第2の太陽電池用測定治具]
上記では、各々複数のプローブピン4が直線状或いはジグザグ状に配列することにより構成された電流測定端子6及び電圧測定端子7を有する太陽電池用測定治具1について説明したが、本発明が適用された太陽電池用測定治具は、以下の構成を備えてもよい。なお、以下の説明において、上述した太陽電池用測定治具1と同様の構成については、同一の符号を付してその詳細を省略する。
【0079】
この太陽電池用測定治具40は、図15に示すように、太陽電池セル2の表面に形成されたフィンガー電極3aに当接され太陽電池セル2の電気特性を測定する測定端子41を構成する複数のプローブピン4と、プローブピン4を保持するホルダ5とを備える。
【0080】
複数のプローブピン4は、図16に示すように、配列方向に一部オーバーラップするようにジグザグ状に配列されることにより、一列の測定端子41を構成する。プローブピン4は、ホルダ5によって保持されている。
【0081】
ホルダ5は、導電性を有する材料、例えば金属を用いて矩形板状に形成されている。そして、ホルダ5は、上下面5a,5b間に亘って、複数のプローブピン4がジグザグ状に配列され、これにより一つの測定端子41を構成する。
【0082】
このとき、複数のプローブピン4は、隣接するプローブピン4同士が配列方向、すなわちホルダ5の長手方向に一部オーバーラップする。太陽電池用測定治具40は、プローブピンがジグザグ状に配列された一列の測定端子41を構成することにより、太陽電池セル2の電気的特性を計測する際に、ホルダ5が受光面上に作る影によって出力値が低下するシャドーロスを低減することができる。
【0083】
また、複数のプローブピン4は、図17に示すように、隣接するプローブピン4同士の配列方向の間隔Wを、バスバーレス構造の太陽電池セル2において、フィンガー電極3aの一般的な間隔(例えば1.0〜2.0mm)よりも短い間隔で形成することにより、フィンガー電極3aの間隔にバラツキが生じている場合でも、全てのフィンガー電極3aの間隔に対応することができる。
【0084】
さらに、複数のプローブピン4は、図16に示すように、隣接するプローブピン4同士を、配列方向すなわちホルダ5の長手方向と直交する幅方向に一部オーバーラップさせてもよい。太陽電池用測定治具40は、隣接するプローブピン4を配列方向と直交する方向に一部オーバーラップさせることにより、配列方向に亘って隙間がなくなる。したがって、この太陽電池用測定治具40によれば、バスバーレス構造の太陽電池セル2の電気的特性の測定において、当該フィンガー電極3aの間隔如何によらず、プローブピン4を全てのフィンガー電極3aに当接させることができる。
【0085】
また、ホルダ5は、長手方向の一端において、各々図示しないI−V計測装置に接続されている電流計測端子42及び電圧計測端子43が接続されている。これにより、太陽電池用測定治具40は、プローブピン4及びホルダ5が一つの測定端子を構成し、電流計測端子42及び電圧計測端子43を介して接続されたI−V計測装置によってI−V特性(電流、電圧値)、Isc(短絡電流)、Voc(開放電圧)、Pm(最大出力)、Ipm(最大出力動作電流)、Vpm(最大出力動作電圧)、Eff(変換効率)、FF(曲線因子)、MTemp(測定温度)等を測定することができる。
【0086】
[例示寸法]
太陽電池用測定治具40は、図16及び図18に示すように、例えば6インチの太陽電池セル2の電流電圧特性の測定に用いる場合、ホルダ5の上下面5a,5bの長辺は、太陽電池セル2の一辺の長さに相当する156mmとされ、当接部4bの直径を1.5mmとしたプローブピン4がホルダ5の長辺方向に沿ってジグザグ状に111本配列されている。そして、太陽電池用測定治具40は、隣接するプローブピン4同士の間隔S3、及び隣接するプローブピン4同士の配列方向と直交する方向に対するオーバーラップ幅Wを、それぞれ0.1mmとすると、ホルダの幅を2.5mmと狭小化することができる。
【0087】
なお、太陽電池用測定治具40は、上記太陽電池用測定治具1と同様に、バスバーレス構造の太陽電池セル2の他、バスバー電極が設けられた太陽電池セルの電流電圧測定にも用いることができる。また、太陽電池用測定治具40は、上記太陽電池用測定治具1と同様に、荷重手段により、測定端子41に対する全荷重が430〜3000g未満で荷重をかけることが好ましい。
【0088】
また、太陽電池用測定治具40においても、上記太陽電池用測定治具1と同様に、各プローブピン4を太陽電池セル2の表面電極3に垂直に押し当てる揺動手段を備えてもよい。また、プローブピン4の当接部4bは、先端形状を円形とする以外にも、三角形状、菱形形状等(図6、図7)、あらゆる形状としてもよい。また、プローブピン4の当接部4bは、先端を半球形状としてもよい(図8)。
【0089】
次いで、本発明の実施例2について説明する。実施例2では、太陽電池用測定治具40を用いて、バスバーレス構造の太陽電池セル2及びバスバー電極が形成された太陽電池セルの各光電変換効率を測定した。
【0090】
本実施例に用いたバスバーレス構造の太陽電池セル2は、6インチの単結晶シリコン光電変換素子を用い、受光面側にはフィンガー電極3aが2.4mm間隔で複数形成され、裏面側にはAg電極が全面に亘って形成されている。また、バスバー電極を形成された太陽電池セルは、バスバーレス構造の太陽電池セル2の構造に加え、フィンガー電極3aと直交するバスバー電極が形成されている。
【0091】
実施例6では、太陽電池用測定治具40を用いて、バスバーレス構造の太陽電池セル2の光電変換効率を測定した。測定端子を構成する各プローブピン4の当接部4bは、隣接するプローブピン4の当接部4bとの間隙S3を、0.1mmとして配列され、また、隣接するプローブピン4の当接部4bと、配列方向と直交する方向に0.1mmの幅Wでオーバーラップさせた。また、太陽電池用測定治具40に対する全荷重は、710gとした。
【0092】
実施例7では、太陽電池用測定治具40に対する全荷重を、2240gとした他は、実施例6と同じ条件とした。
【0093】
実施例8では、バスバー電極が形成された太陽電池セルの当該バスバー電極上にプローブピン4を当接させた以外は、実施例6と同じ条件とした。
【0094】
実施例9では、太陽電池用測定治具40に対する全荷重を、430gとした他は、実施例6と同じ条件とした。
【0095】
以上の実施例及び比較例について、光電変換効率の測定では、フィンガー電極3aあるいはバスバー電極上にプローブピン4を接触させI−V特性を求め、これから最大電力Pmaxを求めた。また、光電変換効率の測定は、ソーラーシミュレーター(日清紡メカトロニクス社製、PVS1116i)を用いて、照度1000W/m、温度25℃、スペクトルAM1.5Gの条件(JIS C8913)にて行った。また、各実施例及び比較例にて、それぞれ5回測定し、最大電力Pmaxの平均と、FF(曲線因子)を求めた。
【0096】
光電変換効率の評価指針は以下の通りである。
◎:平均最大電力Pmaxが3.85(W)以上、FFが0.77以上
○:平均最大電力Pmaxが3.80(W)以上、FFが0.77以上
△:平均最大電力Pmaxが3.80(W)未満
測定結果を表2に示す。
【0097】
【表2】

【0098】
表2に示すように、バスバーレス構造の太陽電池セル2の電気的特性の測定を行った実施例6,7,9では、実施例8に係るバスバー電極を形成した太陽電池セルの平均最大電力Pmax及びFF(曲線因子)とほぼ同一の値となり、バスバーレス構造の太陽電池セルに対しても電気的特性の測定を正確かつ安定的に行えることがわかる。
【0099】
また、実施例6,7,9を比較すると、プローブピン4に対する全荷重が大きいほど、平均最大電力Pmaxが実施例8と近似することから、より高精度に電気的特性の測定が可能であることが分かる。
【符号の説明】
【0100】
1 太陽電池用測定治具、2 太陽電池セル、3 表面電極、3a フィンガー電極、4 プローブピン、4a ピン本体、4b 当接部、5 ホルダ、6 電流測定端子、7 電圧測定端子、8 電流計、9 電圧計、11 タブ線、12 ストリングス、13 マトリクス、14 シート、15 表面カバー、16 バックシート、17 金属フレーム、18 太陽電池モジュール、20 光電変換素子、22 裏面電極、23 導電性接着フィルム、24 タブ線接続部、26 導電性粒子、40 太陽電池用測定治具、42 電流計測端子、43 電圧計測端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池セルの表面に形成された線状電極に当接される複数のプローブピンと、
上記プローブピンを保持するホルダとを備え、
複数の上記プローブピンが配列されてなり、上記線状電極上に配置されることにより上記太陽電池セルの電流特性を測定する電流測定端子と、
複数の上記プローブピンが配列されてなり、上記線状電極上に配置されることにより上記太陽電池セルの電圧特性を測定する電圧測定端子とを有し、
上記電流測定端子と上記電圧測定端子とが並列して設けられている太陽電池用測定治具。
【請求項2】
上記電流測定端子と上記電圧測定端子とは、上記プローブピンが直線状に配列されている請求項1記載の太陽電池用測定治具。
【請求項3】
上記電流測定端子と上記電圧測定端子とは、上記プローブピンが上記配列方向に一部オーバーラップしている請求項2記載の太陽電池用測定治具。
【請求項4】
上記電流測定端子と上記電圧測定端子は、上記プローブピンがジグザグに配列されている請求項1記載の太陽電池用測定治具。
【請求項5】
上記電流測定端子と上記電圧測定端子は、それぞれ隣接する上記プローブピン同士が、配列方向と直交する方向に一部オーバーラップしている請求項4記載の太陽電池用測定治具。
【請求項6】
上記オーバーラップする幅が最大0.1mmである請求項5記載の太陽電池用測定治具。
【請求項7】
上記プローブピンを長手方向に揺動させる揺動手段を備える請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の太陽電池用測定治具。
【請求項8】
太陽電池セルの表面に形成された線状電極に当接される複数のプローブピンと、上記プローブピンを保持するホルダとを備える太陽電池用測定治具を用い、
複数の上記プローブピンが配列されてなり上記太陽電池セルの電流特性を測定する電流測定端子と、複数の上記プローブピンが配列されてなり上記電流測定端子と並列して設けられた上記太陽電池セルの電圧特性を測定する電圧測定端子とを、上記線状電極上に配置し、
上記太陽電池セルの表面に光を照射しながら、電気的特性を測定する太陽電池セルの出力測定方法。
【請求項9】
上記太陽電池セルは、バスバーレス構造である請求項8記載の太陽電池セルの出力測定方法。
【請求項10】
荷重手段により、上記電流測定端子及び上記電圧測定端子に対する全荷重が430〜3000g未満で荷重をかける請求項8又は請求項9に記載の太陽電池セルの出力測定方法。
【請求項11】
太陽電池セルの表面に形成された線状電極に当接され上記太陽電池セルの電気特性を測定する測定端子を構成する複数のプローブピンと、
上記プローブピンを保持するホルダとを備え、
複数の上記プローブピンが上記ホルダの長手方向に亘って配列され、
隣接する上記プローブピン同士が、配列方向に一部オーバーラップしている太陽電池用測定治具。
【請求項12】
上記プローブピンは、ジグザグ状に配列された一つの測定端子を構成し、
上記ホルダは導電性を有し、計測装置と接続された電流計測端子及び電圧計測端子が接続されている請求項11記載の太陽電池用測定治具。
【請求項13】
上記プローブピンは、各々直線状に配列され、互いに並列する電流測定端子及び電圧測定端子を構成し、
上記ホルダは絶縁性を有し、
上記電流測定端子を構成する各上記プローブピンが連結されるとともに、上記電圧測定端子を構成する各上記プローブピンが連結される請求項11記載の太陽電池用測定治具。
【請求項14】
上記プローブピンは、各々ジグザグ状に配列され、互いに並列する電流測定端子及び電圧測定端子を構成し、
上記ホルダは絶縁性を有し、
上記電流測定端子を構成する各上記プローブピンが連結されるとともに、上記電圧測定端子を構成する各上記プローブピンが連結される請求項11記載の太陽電池用測定治具。
【請求項15】
上記測定端子は、隣接する上記プローブピン同士が、配列方向と直交する方向に一部オーバーラップしている請求項11〜14のいずれか1項に記載の太陽電池用測定治具。
【請求項16】
上記オーバーラップする幅が最大0.1mmである請求項11〜15のいずれか1項に記載の太陽電池用測定治具。
【請求項17】
上記プローブピンを長手方向に揺動させる揺動手段を備える請求項11〜請求項16のいずれか1項に記載の太陽電池用測定治具。
【請求項18】
太陽電池セルの表面に形成された線状電極に当接され上記太陽電池セルの電気特性を測定する測定端子を構成する複数のプローブピンと、上記プローブピンを保持するホルダとを備え、複数の上記プローブピンが上記ホルダの長手方向に亘って配列され、隣接する上記プローブピン同士が、配列方向に一部オーバーラップしている太陽電池用測定治具を用い、
上記測定端子を構成する上記プローブピンを上記線状電極上に配置し、
上記太陽電池セルの表面に光を照射しながら、電気的特性を測定する太陽電池セルの出力測定方法。
【請求項19】
上記太陽電池セルは、バスバーレス構造である請求項18記載の太陽電池セルの出力測定方法。
【請求項20】
荷重手段により、上記測定端子に対する全荷重が430〜3000g未満で荷重をかける請求項18又は請求項19に記載の太陽電池セルの出力測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−102121(P2013−102121A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−137951(P2012−137951)
【出願日】平成24年6月19日(2012.6.19)
【出願人】(000108410)デクセリアルズ株式会社 (595)
【Fターム(参考)】