説明

太陽電池積層体ユニット及び太陽電池積層体ユニット−可撓性膜材複合構造物

【課題】クリープ特性などの耐荷重安定性に優れ、可撓性太陽電池セル構造体の形状安定性、及び可撓性太陽電池セル構造体の性能安定性に優れた太陽電池積層体ユニット及びこの太陽電池積層体ユニットを用いた膜構造物の提供。
【解決手段】可撓性太陽電池セル構造体裏面に、シート状物から形成された応力安定支持体層が架橋接着された積層体において、この応力安定支持体層の面積は、可撓性太陽電池セル構造体の面積の110〜330%であり、応力安定支持体層を形成しているシート状物が、500〜5000N/3cmの範囲の引張荷重を負荷したときのタテ方向の伸び率、及びヨコ方向の伸び率が、ともに3%以内である太陽電池積層体ユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池積層体ユニット及び太陽電池積層体ユニット−可撓性膜材複合構造物に関するものである。さらに詳しく述べるならば、本発明は可撓性太陽電池セル構造体を含み、耐荷重安定性、クリープ性、接着性、防湿・防水性、耐候性及び、防汚性に優れた太陽電池積層体ユニット及び太陽電池積層体ユニット−可撓性膜材複合構造物に関するものである。本発明の太陽電池積層体ユニット及び太陽電池積層体ユニット−可撓性膜材複合構造物は、巻き上げ或は屈曲させて、運搬又は収納を要する、大型テント構造物、テント倉庫、日除けテント、屋形テント、農業用ハウス、トラック幌、ブラインドなどの構成部材として有用なものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムまたは金属フィルムなどを基板として用いた薄膜系太陽電池は、そのフレキシビリティを生かし、ロールツーロール方式の製造方法により大量生産が可能となってきている。従来の太陽電池の建造物への利用については、単結晶シリコンや多結晶シリコンの太陽電池を屋根面に置く屋根置き型であり、屋根面に支持架台を設け、それに太陽電池を固定支持する方法であるが、近年では、直接屋根に組み込む方法が採られつつある。しかしながら、いずれもガラス基板で構成されたモジュールを使用しているため作業性、施工性に難点があるのが実情であった。
【0003】
一方では、屋根防水シートと言われる加硫ゴム系、塩化ビニル系やアスファルト系非加硫ゴム等の高分子シートの上面にフレキシブルタイプの太陽電池を一体化することにより、作業性、施工性が容易となることが提案されている(例えば、特許文献1)。しかし、上記のような直置きタイプの太陽電池一体型の防水シートでは、作業性、施工性などの人的負担が軽減されると言ったメリットはあるものの、防水シート、或いは膜材などのフレキシビリティや軽量性と言った特徴を十分に生かしているとは言い難い。そこで、屋根防水シートに限らずシート状基体などの膜材料にフレキシブルタイプの太陽電池を一体化させ、様々な場所に取り付けられることが提案されている(例えば、特許文献2)。フレキシブルタイプの太陽電池とは、太陽電池セルの両面に接着剤を介して、フッ素樹脂フィルムで表面保護したアモルファス太陽電池モジュールが上市されている。
【0004】
上記のごとく、シート状基体などの膜材に一体化させた太陽電池モジュールは、前記屋根防水太陽電池シートや、膜材に簡単に取り付け可能な太陽電池モジュールなどのように、静的な用途しか考慮されていないのが実情であった。
動的な要素を含む用途を考えた場合、例えば、各種テントを含む膜構造物への太陽電池モジュールの設置が考えられ、その要求特性として、接着耐久性、耐荷重性、クリープ性、及び形状安定性が必要となってくるが、実用上不十分であるのが現状である。動的用途に太陽電池モジュールを用いるためには、
(1)接着耐久性;テント構造物は長期間屋外に曝露されているため、高温高湿時の接着性、耐候性、等の耐久性が必要であり、
(2)耐荷重性、耐クリープ性;展張時の引張応力や、曝露中のクリープ性により、太陽電池セル構造体が膜材から剥離、脱落する可能性があるため、高温時の耐荷重性、耐クリープ性が必要であり、また
(3)太陽電池セル構造体の性能安定性;上記(1),(2)の性能が十分高く維持することが可能になると、はじめてモジュールの性能が安定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−50607
【特許文献2】特開平10−144947
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の可撓性膜状太陽電池積層体ユニットの上記問題点を解決し、実用上十分な可撓性を有し、かつ可撓性太陽電池セル構造体が、接着耐久性が高く、また、耐クリープ特性などの耐荷重安定性に優れた支持体上に支持されており、それによって、可撓性太陽電池セル構造体が高い形状安定性、及び優れた性能安定性をもって、支持されている太陽電池積層体ユニット、及びこの太陽電池積層体ユニット−可撓性膜材複合構造物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の太陽電池積層体ユニットは、可撓性太陽電池セル構造体と、その裏面に架橋接着されたシート状物から形成された応力安定支持体層とを含む積層体であって、前記応力安定支持体層は、前記可撓性太陽電池セル構造体の面積の110〜330%の面積を有し、かつ、前記応力安定支持体層を形成するシート状物が、500〜5000N/3cmの範囲内の引張荷重を負荷したときのタテ方向の伸び率、及びヨコ方向の伸び率が、ともに3%以内にあることを特徴とするものである。
本発明の太陽電池積層体ユニットにおいて、前記可撓性太陽電池セル構造体が、表面保護層、陽極集電電極及び陰極集電電極、及び集電コネクタを有する可撓性太陽電池モジュールであることが好ましい。
本発明の太陽電池積層体ユニットにおいて、前記応力安定支持体層が、耐熱性高分子シート、繊維布帛を芯材として含む高分子シート、及び金属製シートのいずれか1種以上からなることが好ましい。
本発明の太陽電池積層体ユニットにおいて、前記耐熱性高分子シートが、1471〜4903MPa(150〜500kgf/mm2)の引張弾性率(JIS K7113−1995)を有していることが好ましい。
本発明の太陽電池積層体ユニットにおいて、前記繊維布帛を芯材として含む高分子シートが、39226.6〜392266MPa(4000〜40000kgf/mm2)の引張弾性率(JIS K7113−1995)を有していることが好ましい。
本発明の太陽電池積層体ユニットにおいて、前記金属製シートが、ステンレス、鉄、鉄合金、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、タングステン、及びタングステン合金、から選ばれた1種以上であることが好ましい。
本発明の太陽電池積層体ユニットにおいて、前記可撓性太陽電池セル構造体の側面部、及び、前記可撓性太陽電池セル構造体の、前記側面部の上端に連続する上表面の周縁部、並びに前記可撓性太陽電池セル構造体の、前記側面部の下端を取り囲む前記応力安定支持体層上面の周囲部に、フッ素系樹脂を主成分として含む可撓性保護フィルムが架橋接着されていることが好ましい。
本発明の太陽電池積層体ユニット−可撓性膜材複合構造物は、前記本発明の太陽電池積層体ユニットの1個以上が、可撓性膜材上に、架橋接着及び弾性接着のいずれか又は両方により装着されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の太陽電池積層体ユニット及び太陽電池積層体ユニット−可撓性膜材複合構造物は、実用上十分な可撓性を有し、テント膜構造物に搭載して、長期間屋外で使用した場合においても、太陽電池セル構造体の形状安定性に優れ、及び可撓性膜材と太陽電池積層体ユニット間の接着耐久性に優れ、また、可撓性太陽電池セル構造体の端部断面部分から吸湿、吸水することもなく、発電素子への水分の浸入を防止することができるため、発電出力低下を防止する効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の太陽電池積層体ユニット−可撓性膜材複合構造物の断面説明図。
【図2】本発明の太陽電池積層体ユニットの一部分の平面説明図。
【図3(A)】本発明の太陽電池積層体ユニットの太陽電池セル構造体の一態様の一部断面説明図。
【図3(B)】本発明の太陽電池積層体ユニットの太陽電池セル構造体の他の態様の一部断面説明図。
【図3(C)】本発明の太陽電池積層体ユニットの太陽電池セル構造体の他の態様の一部断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の太陽電池積層体ユニットは、1個以上の可撓性太陽電池セル構造体と前記可撓性太陽電池セル構造体を支持する応力安定支持体層とを含むものであり、本発明の太陽電池積層体ユニット−可撓性膜材複合構造物は、前記太陽電池積層体ユニットの1個以上の前記応力安定支持体層の裏面が1枚の可撓性膜材上に装着固定されて構成されたものである。
図1は、本発明の太陽電池積層体ユニット−可撓性膜材複合構造物の一態様の、1個の太陽電池積層体ユニットを含む一部分の断面説明図である。図1において、太陽電池積層体ユニット5が当然具備している電極系及び集電系等の図示は省略されている。図1において、太陽電池積層体ユニット5は、その応力安定支持体層10の下面において、可撓性膜材4の上面に、架橋性接着剤層又は弾性接着剤層8cを介して、接着固定されている。
【0011】
図1及び図2において、太陽電池積層体ユニット5の太陽電池セル1は表面保護層11により包囲支持されて可撓性太陽電池セル構造体2が形成されている。この可撓性太陽電池セル構造体2の下面部2aは、架橋性接着剤層8aを介して、応力安定支持体層10の上面に接着されている。架橋性接着剤層8aは、太陽電池セル構造体2の下面部2aから応力安定支持体層10の上面上の、太陽電池セル構造体2の側面部の下端を囲む周囲に延び出て周囲部10aを形成している。また、太陽電池セル構造体2の側面部2b及び上面周縁部2cは、それぞれ保護フィルム3の部分3a及び3bに、架橋性接着剤層8bを介して接着され、保護フィルム3の部分3cは、応力安定支持体層10に、架橋接着剤層8aの周縁部10aを介して接着されている。図1及び2に示されているように、太陽電池セル1を含む太陽電池セル構造体2の側面部及び上面周縁部は可撓性保護フィルムの部分3a,3bにより被覆され、太陽電池セル構造体2と応力安定支持体層10との接合は、可撓性保護フィルムの部分3cにより補強されている。可撓性保護フィルム3は、太陽電池セル構造体2と、応力安定支持体層10との接着固定状態を強化し、安定化するために有効である。また接着された可撓性保護フィルム層は、太陽電池セル構造体2の吸湿・吸水防止耐久性を、著しく向上させることができる。
【0012】
図1及び、図2に示された、前記可撓性保護フィルム3としては、JIS Z0208において、フィルム厚さが50μmで、測定条件が、40℃、90%RHのときの水蒸気透過率が5g/m2/day以下のフッ素系樹脂フィルムを用いることが好ましい。水蒸気透過率が5g/m2/day以下のフッ素系樹脂フィルムとして、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フロロアルキルビニルエーテル及びエチレンからなる群から選ばれた2種以上のモノマーからなる少なくとも1種の共重合体樹脂フィルムが使用できる。特には、防湿性の点から、トリフルオロクロロエチレンフィルムを用いることが好ましい。可撓性樹脂フィルムの厚さは、0.025〜0.10mmであることが好ましく、特には、0.04〜0.075mmが好ましい。厚さが0.025mm未満であると防湿性が不十分となることがあり、またそれが0.10mmを越えると柔軟性が不充分となることがある。
【0013】
図1に示された太陽電池積層体ユニット5において、可撓性太陽電池セル構造体2を応力安定支持体層10に接着固定するための架橋性接着剤層8a及び、この接着固定を更に補強するための可撓性保護フィルム3を、可撓性太陽電池セル構造体2及び、応力安定支持体層10に接着するための架橋性接着剤層8bは、接着用可撓性樹脂と架橋剤とを含み、接着用可撓性樹脂が、架橋剤により架橋され、架橋後も実用上十分な可撓性を有するものである。架橋性樹脂層8a及び8a用接着用可撓性樹脂は、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、及びヒドロキシル基を含むフッ素系樹脂から選ばれた1種以上を含むものから選ばれることが好ましい。また、架橋剤としては、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物、及びカップリング剤などの1種以上を用いることができる。
【0014】
架橋性接着剤層8a,8b用可撓性樹脂として用いられるポリエステル系樹脂は、一般的に多価カルボン酸と多価アルコールとを重縮合させることにより得られる。上記多価カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの5員環もしくは6員環を含む脂環式ジカルボン酸;コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの3官能以上の多価カルボン酸などがある。これらの多価カルボン酸は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの直鎖状のアルカン系ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンジオールなどの3官能以上の多価アルコールがある。
【0015】
架橋性接着剤層8a,8b用可撓性樹脂として用いられるポリウレタン系樹脂を製造するには、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、カーボネートポリオールなどの主剤に対して、2官能以上のイソシアネート化合物が使用できる。ポリエステルポリオールは、具体的には、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸などの脂肪族系、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族系の二塩基酸の1種以上、及び、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオールなど脂肪族系、シクロヘキサンジオール、水添キシレングリコールなどの脂環式系、キシレングリコールなどの芳香族系ジオールの1種以上を用いることができる。また、ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのエーテル系のポリオールを用いることができる。カーボネートポリオールとしては、カーボネート化合物とジオールとを反応させて得ることができる。カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネートなどを用いることができる。ジオールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオールなどの脂肪族ジオール、シクロヘキサンジオール、水添キシリレングリールなどの脂環式ジオール、キシリレングリールなど芳香族ジオールなどの1種以上の混合物が用いられたカーボネートを用いることができる。
【0016】
上記ポリウレタン樹脂用のイソシアネート化合物としては、脂肪族ジイソシアネート類、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、及びリジンジイソシアネートなど;脂環式ジイソシアネート類、例えば、イソホロンジイソシアネート、及び水添トリレンジイソシアネートなど;芳香族ジイソシアネート類、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、及びキシレンジイソシアネートなど;イソシアヌレート類、例えば、トリス(ヘキサメチレンイソシアネート)イソシアヌレート、及びトリス(3−イソシアネートメチルベンジル)イソシアヌレートなど;並びにこれら化合物のイソシアネート基末端をフェノール類、オキシム類、アルコール類、ラクタム類などのブロック化剤でブロックしたブロックイソシアネートなどを用いることができる。
【0017】
また、架橋性接着剤層8a,8bに可撓性樹脂として使用されるシリコーン系樹脂としては、例えば、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトエチルトリメトキシシラン、メルカプトエチルトリエトメトキシシラン、ポリメチルシロキサン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのシラン化合物、これらのシラン化合物誘導体、これらのシラン化合物の混合物、これらのシラン化合物誘導体の混合物、これらシラン化合物とこれらシラン化合物誘導体の混合物などがある。また、架橋性接着剤層8a,8b用可撓性樹脂として用いられるヒドロキシル基含有フッ素系樹脂としては、ヒドロキシル基を含むフルオロオレフィン−ビニル共重合体樹脂、例えば、ヒドロキシル基を含むトリフルオロクロロエチレン−ビニル共重合体樹脂、ヒドロキシル基を含むテトラフルオロエチレン−ビニル共重合体樹脂などがある。
【0018】
前記架橋接着剤層8a,8bで使用される架橋剤として、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物、及びカップリング剤化合物から選ばれた1種以上の架橋剤の硬化物を含むことが好ましい。架橋性接着剤8a,8bにおいて、架橋剤用エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリコールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールグリシジルエーテル、グリセリングリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、及び1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンが使用できる。また、上記エポキシ樹脂をキレート剤、ウレタン樹脂、合成ゴム等で変性されたエポキシ樹脂も使用できる。架橋性接着剤層8a,8bの架橋剤用イソシアネート化合物としては、上記のイソシアネート化合物を使用することができる。また、架橋剤用カップリング剤化合物としては、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、及びジルコアルミニウム系カップリング剤から選ばれた少なくとも1種を用いることができる。
【0019】
シラン系カップリング剤としては、アミノシラン類、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、及びN−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシランなど;エポキシシラン類、例えば、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及びβ−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなど;ビニルシラン類、例えば、ビニルトリエトキシシラン、及びビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シランなど;メルカプトシラン類、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなど、が挙げられる。チタン系カップリング剤としては、アルコキシ類、例えば、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、及びテトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタンなど;アシレート類、例えば、トリ−n−ブトキシチタンステアレート、及びイソプロポキシチタントリステアレートなどが挙げられる。ジルコニウム系カップリング剤としては、例えば、テトラブチルジルコネート、テトラ(トリエタノールアミン)ジルコネート、及びテトライソプロピルジルコネートなどが挙げられる。アルミニウム系カップリング剤としては、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートが挙げられる。さらに、ジルコアルミニウム系カップリング剤としては、テトラプロピルジルコアルミネートが挙げられる。これらカップリング剤の中で、耐湿性、耐光性の観点から、特にはγ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及びβ−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシシランを用いることが好ましい。
【0020】
架橋性接着剤層8a,8bの架橋剤として用いられるエポキシ樹脂、イソシアネート化合物、及びカップリング剤化合物の添加量は、各架橋接着樹脂層の合計固形分質量に対し、0.5〜30質量%であることが好ましい。その添加量が0.5質量%未満では、シート状基体との接着性が不十分になることがあり、またそれが30質量%を超えると得られる積層体の柔軟性が不十分になることがある。また、図1に示されるように、太陽電池積層体ユニットを可撓性膜材4に接着固定するために前記架橋性接着剤層8c又は、弾性接着剤層8cを装着した。架橋性接着剤層8cは前記架橋性接着剤層8a及び8bと同種の接着剤を使用できる。弾性接着剤層8cの弾性樹脂又は、ゴムとしては、クロロプレンゴム系、ニトリルゴム系、スチレンブタジエンゴム系、ポリサルファイド系、ブチルゴム系、シリコーンゴム系、アクリルゴム系、変性シリコーンゴム系、ウレタンゴム、シリル化ウレタン樹脂系、テレケリックポリアクリレート系が用いられる。特に、耐久性、耐候性の面から、変性シリコーン系接着剤が好ましい。
【0021】
本発明の太陽電池積層体ユニット5中の可撓性太陽電池セル構造体2の一例の断面説明図が図3(A),(B)又は(C)に記載されている。図3(A),(B)又は(C)において太陽電池セル1には、陽極集電電極12a、陰極集電電極12b及びこれらの電極に接続された集電コネクタ(図示されていない)を含む集電手段が、具備され、これらは可撓性・接着性樹脂層1aにより被覆されている。図3(A)の可撓性太陽電池セル構造体2において太陽電池セル1を被覆する可撓性・接着性樹脂層1aの上・下両面上には、表面保護フィルム層9が接着され、全体として表面保護層11を構成している。前記表面保護フィルム層は、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂フィルムから形成されていることが好ましい。図3(B)に示されている可撓性太陽電池セル構造体2の表面保護層11中において、太陽電池セル1中の陽極集電電極12a及び陰極集電電極12bが、それぞれ導電部防湿層13により被覆されており、可撓性・接着性樹脂層1aの上面上のみに表面保護フィルム層9が接着されている。図3(C)の可撓性太陽電池セル構造体2の表面保護層11において、可撓性・接着性樹脂層1aの上面上に導電部防湿層13が接合され、その上に表面保護フィルム層9が形成されている。図3(C)の可撓性太陽電池セル構造体2においては陽極集電電極12a及び陰極集電電極12bは、可撓性接着性樹脂層1a上に配置された導電部防湿層13によって間接的に防湿保護される。
【0022】
太陽電池セル1は、フィルム状アモルファスシリコン太陽電池セルであることが好ましく、陽・陰両極導電部を直接的又は、間接的に被覆する導電部防湿層としては、防湿性フィルムで被覆することが好ましい。防湿フィルムは、ポリエステルフィルムと金属蒸着層又は、金属酸化物蒸着層とから構成されるものである。上記ポリエステルフィルム上に蒸着する金属としては、アルミニウム、スズ、チタン、インジウム、珪素、マグネシウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、コバルト、クロム、ニッケル等から選ばれたものが好ましい。また、上記蒸着層を形成する手段としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、各種CDV法等のいずれもが可能であるが、特に、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法が好ましく使用できる。金属蒸着層の厚さは、5〜500nmであることが好ましく、10〜200nmであることがより好ましい。また、上記ポリエステルフィルム上に蒸着する金属酸化物としては、珪素、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、ナトリウム、ホウ素、チタン、ジルコニウム、イットリウム等の金属の酸化物を使用できる。特には、珪酸酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物が好ましい。また、蒸着の厚さとしては、使用する金属、又は金属酸化物の厚さによって異なるが、5〜500nm、好ましくは、10〜200nmの範囲で任意に選択して形成することが望ましい。上記蒸着層を形成する手段としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、各種CDV法等のいずれもが可能であるが、特に、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法が好ましく使用できる。
【0023】
前記可撓性・接着性樹脂層1aを形成する可撓性・接着性樹脂としては、架橋性エチレン−酢酸ビニル共重合体組成物が使用される。エチレン−酢酸ビニル重合体樹脂は、酢酸ビニルの構成単位の含有量が1〜40mol%、好ましくは10〜35mol%のものが、樹脂の耐候性、透明性、機械特性の面でバランス良く使用できる。また、架橋性エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂組成物には、耐候性向上のために架橋剤を配合して架橋構造を持たせるが、この架橋剤としては、一般に、100℃以上でラジカルを発生する有機過酸化物が好ましく使用できる。このような有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,1’−ジ−t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチレンシクロヘキサン、1,3−ジ-(t−ブチルペルオキシ)−ジイソプロピルベンゼン等を使用することができる。これら有機過酸化物の配合量は、一般に、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂100重量部に対して、5重量部以下、好ましくは1〜3重量部であることが好ましい。上記可撓性・接着性樹脂は、120〜170℃の温度、1Torr以下の圧力下において、溶融して、太陽電池層と、可撓性表面保護フィルム層との間隙空間を充填し、架橋硬化することができる。
【0024】
図1に示されている本発明の太陽電池積層体ユニット−可撓性膜材複合構造体6(以下複合構造体6と記す)において、応力安定支持体層10が、可撓性太陽電池セル構造体2の裏面と、可撓性膜材4の上面との間に、架橋接着又は弾性接着されている。応力安定支持体層10の上面の面積は、可撓性太陽電池セル構造体2の下面の面積の110〜330%であり、130〜300%であることが好ましく、150〜250%であることがさらに好ましい。それが110%未満であると、複合構造体に引張荷重が負荷されたとき、可撓性太陽電池セル構造体2の、前記引張荷重の負荷方向における伸び率が過大になり、可撓性太陽電池セル構造体2が破損しやすくなり、そのため太陽電池セルの発電出力が低下する。また、それが330%を超えると、太陽電池積層体ユニット5及び複合構造物6の、可撓性が不十分になり、曲面または三次元的可撓性を有する太陽電池積層体ユニット5及び複合構造物6の構築が不可能になる。応力安定支持体層を形成するシート状物は、冬季の氷点下雰囲気や、夏季の炎天下雰囲気に晒される如何なる環境においても、常時500〜5000N/3cmの引張荷重に対しての伸び率が3%以内を保持することが好ましく、具体的には−10〜75℃の温度雰囲気範囲において500〜5000N/3cmの引張荷重に対する伸び率が3%以内であることが好ましい、本発明の太陽電池積層体ユニット及び太陽電池積層体ユニット−可撓性膜材複合構造物は、常温(25℃)〜65℃の範囲内の雰囲気下において、500〜5000N/3cmの範囲内の引張荷重を負荷したときのタテ方向の伸び率及びヨコ方向の伸び率がともに3%以内あるものであり、このときの伸び率は、2.5%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがさらに好ましい。前記引張負荷下における応力安定支持体層用シート状物の伸び率が、3%を超えると、得られる太陽電池セル構造体2及び複合構造物6の通常の使用条件下における外的引張負荷に対する寸法安定性が不十分になり、その外観を損じ、及びその機能(発電出力)を劣化させることがある。
【0025】
応力安定支持体層として、引張弾性率(JIS K7113−1995)が、150〜500kgf/mm2の耐熱性高分子シートを用いることができる。耐熱性高分子シートとしては、汎用プラスチック、汎用エンジニアリングプラスティック(汎用エンプラ)又は、スーパーエンジニアリングプラスティック(スーパーエンプラ)が使用される。特に、耐熱温度(熱変形温度)が80℃以上の高分子シートとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、硬質ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(メタクリル樹脂)。また、汎用エンプラとして、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)。また、スーパーエンプラとして、非晶ポリアリレート(PAR)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、フッ素樹脂、液晶ポリマー(LCP)が用いられる。特には、柔軟性、及び接着性の面から、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、硬質ポリ塩化ビニル、及びアクリル樹脂(メタクリル樹脂)が好ましい。前記高分子シートの厚さは、10〜500μmであることが好ましい。特には、25〜200μmがより好ましい。厚さが、10μm未満であると、強度が不足して可撓性太陽電池セル構造体が破損しやすくなることがあり、またそれが、500μmを超えると柔軟性が不十分になることがある。
【0026】
応力安定支持体層として、繊維布帛を芯材に含み、引張弾性率(JIS K7113−1995)が4000〜40000kgf/mm2の高分子シートを用いることができる。このような高分子シートは、0.3〜1.0mmの厚さ及び、250〜1000g/m2の単位面積当り質量(目付け)を有することが好ましい。応力安定支持体用高分子シートにおける繊維布帛芯材と高分子成分との構成質量比は、20〜90質量%:80〜10質量%であることが好ましく、特に25〜75質量%:75〜25質量%が好ましい。繊維布帛を形成する繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、ステンレス繊維、アラミド繊維、芳香族ヘテロ環ポリマー繊維、ポリアリレート繊維、芳香族ポリエーテル繊維などの高強度、高弾性繊維から選ばれた1種以上が用いられる。繊維布帛を形成する繊維材料は、モノフィラメント、マルチフィラメントのいずれの糸条であってもよい。また繊維布帛は織物または編物が好ましく、特に平織物、または糸条を2方向または多方向に多数配置してなる積重布が好ましい。特には、高分子との接着性、及び強伸度のバランスの面からガラス繊維平織布帛が好ましく用いられる。これらの繊維布帛を織編構成する糸条の一部には、必要に応じてナイロン6、ナイロン66等のポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル繊維(飽和ポリエステル)及びポリ乳酸繊維等の脂肪酸ポリエステル繊維、アクリル繊維、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン繊維及びポリ塩化ビニル繊維などの合成繊維糸条を併用することもできる。
【0027】
繊維布帛を芯材に含む高分子シートにおいて、高分子成分としては、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、架橋性熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の何れも使用することができる。熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル系共重合体樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素含有樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂などが挙げられ、また熱可塑性エラストマーとしてはポリエステル系共重合体樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、スチレン系共重合体樹脂(スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、及びこれらの水素添加物等)、フッ素系共重合体樹脂、シリコーン系共重合体樹脂などが挙げられ、また架橋性熱可塑性樹脂としてはアイオノマー系樹脂(エチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体の金属イオン架橋体等)の他、上記熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーに対して、イソシアネート化合物、またはカップリング剤化合物、またはイソシアネート化合物とカップリング剤化合物の併用物を0.5〜10質量%含む組成物が挙げられ、また熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂などが挙げられる。
【0028】
応力安定支持体層は、金属製シートにより構成されてもよい。金属製シートとして、ステンレス、鉄、鉄合金、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、タングステン、及びタングステン合金、から選ばれた1種以上が用いられる。特には、柔軟性と強度の面で、アルミニウムまたはステンレスが好ましく用いられる。
【0029】
本発明の太陽電池積層体ユニット−可撓性膜材複合構造物に用いられる可撓性膜材4は、可撓・防水性シートからなるものであって、0.1〜3.0mmの厚さ及び、150〜2500g/m2の単位面積当り質量(目付け)を有することが好ましい。可撓・防水性シートは必要により繊維布帛(織布、編布又は不織布)を基布として含んでいてもよい。この場合繊維布帛からなる基布の少なくとも一面、好ましくは両面に、可撓・防水性合成樹脂が、塗布又は含浸されていて、可撓・防水樹脂層が形成されていることが好ましい。基布用繊維布帛を形成する繊維としては、天然繊維、例えば、木綿、麻等、無機繊維、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維等、再生繊維、例えば、ビスコースレーヨン、キュプラ等、半合成繊維、例えば、ジ−及びトリアセテート繊維等、及び合成繊維、例えば、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド繊維、ケブラー等のアラミド繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル繊維(飽和ポリエステル)及びポリ乳酸繊維等の脂肪酸ポリエステル繊維、ポリアリレート繊維、芳香族ポリエーテル繊維、ポリイミド繊維、アクリル繊維、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン繊維及びポリ塩化ビニル繊維、等から選ばれた少なくとも1種からなるものを使用することができる。繊維性基布を形成している繊維材料は、短繊維紡績糸、長繊維糸状、スプリットヤーン、テープヤーン等、いずれの形状でも良い。また、繊維性基布の組織は、織物、編物、不織布又は、これらの複合体のいずれであっても良い。
【0030】
前記可撓性膜材用可撓・防水性シート用樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系共重合体樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体樹脂、アイオノマー系樹脂(エチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体の塩等)、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂(脂肪族ポリエステル系樹脂を含む)、アクリル系樹脂、フッ素含有樹脂、スチレン系共重合体樹脂(スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、及びこれらの水素添加物等)、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、シリコーン系樹脂、及び、その他の合成樹脂(熱可塑性エラストマーを包含する)等から選ぶことができる。これらの防水性合成樹脂は、単独、あるいは2種以上の混合物として使用してもよい。
【実施例】
【0031】
本発明の太陽電池積層体ユニット及び太陽電池積層体ユニット−可撓性膜材複合構造物を、下記実施例により更に説明する。
下記実施例及び比較例において製造された太陽電池積層体ユニット−可撓性膜材複合構造物は下記の試験に供された。
(1)発電出力測定
JIS−C8935−1995に基づき、供試体の環境試験前後の発電出力を測定した。
(2)耐荷重安定性
常温(25℃)又は65℃の雰囲気中において、幅:30cm、長さ:100cmの供試体のタテ方向試験片及びヨコ方向試験片の両端を、伸び率が、0.5%、1%、2%、及び3%になるように、引張速度200mm/分で、引張荷重をかけて、引張応力と発電出力保持率(%)を計測し、かつ外観(可撓性太陽電池モジュールの破損状態)を下記のように4段階に評価した。
(外観評価)
4:荷重前の状態に比べて変化なし。
3:供試体の一部分において、フィルム(表面被覆層、可撓性太陽電池モジュール層、 可撓性保護フィルム層)の一部にシワの発生がある。
2:供試体の一部分において、フィルム(上記)の浮き、剥がれが一部見られる。
1:供試体の全面にフィルム(上記)の浮き、剥がれが認められる。
(3)耐湿熱性
供試体を85℃、85%RHの環境下にて、1000時間放置後の発電出力保持率(%)を計測し、かつ外観(色相、フィルム剥がれ、浮き、その他)を下記のように4段階に評価した。
(外観評価)
4:測定開始前の状態に比べて変化なし。
3:着色が僅かに見られる。
2:黄変が認められ、供試体の一部分にフィルム(表面被覆層、可撓性太陽電池モジュ ール層、可撓性保護フィルム層)の浮き、剥がれが一部見られる。
1:黄変が認められ、供試体の全面にフィルム(上記)の浮き、剥がれが認められる。
【0032】
実施例1
可撓性膜材として、ガラス繊維糸状(繊維太さ:DEヤーン、織糸太さ:150tex)を経糸、緯糸に使用した平織物(目付け:380g/m2、密度:経糸29本/25.4mm、緯糸32本/25.4mm)を使用した。前記ガラス繊維平織物上に可撓・防水性樹脂フィルムを貼着して、可撓性膜材層を構成した。この可撓・防水性樹脂フィルムは、下記組成を有するポリ塩化ビニル樹脂組成物をカレンダー成形法により混練、圧延し、厚さ0.16mmのフィルムを作製したものであった。このフィルムを前記ガラス繊維平織物の表面上に165℃で2分間熱圧着して、可撓性膜材層を作製した。この膜材層の目付けは840g/m2であった。
塩化ビニル樹脂 100質量部
フタル酸エステル系可塑剤 50質量部
リン酸エステル系可塑剤 15質量部
エポキシ系化合物 3質量部
Ba−Ca系安定剤 1質量部
芳香族イソシアネート化合物 5質量部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 0.1質量部
顔料(酸化チタン) 5質量部
【0033】
上記前記可撓性膜材の表面に接着層を形成した。まず下記接着層用接着剤組成物の溶液をコーティングして、乾燥後厚さが約5μmの接着層を形成した。
メタクリル酸エステル系樹脂(メタクリル酸メチル樹脂
とアクリル酸ブチル樹脂の共重合体) 60質量部
希釈溶剤(トルエン) 40質量部
【0034】
次に、アンカー層用、メタクリル酸エステル系樹脂70質量%及びフッ化ビニリデン系樹脂30質量%からなる樹脂混合物と、及びトップ層用フッ化ビニリデン系樹脂80質量部、メタクリル酸エステル系樹脂20質量%からなる樹脂混合物とを溶融押出してアンカー層とトップ層とを一体化させた2層構造を有するフィルムを形成し、これを直ちに前記可撓性膜材の表面上に積層し接合した。
更に、トップ層の表面にコロナ放電処理を施して、接着性の向上を図った。
【0035】
応力安定支持体層として、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた。
【0036】
可撓性太陽電池セル構造物を下記のようにして製造した。幅37cm、長さ59cmの可撓性アモルファスシリコン太陽電池セル(商標:フレキシブルソーラーパネル、品番R−7の中間加工品、最大出力7W、米国Power Film社製)の陽極集電電極及び陰極集電電極を導電部防湿層により被覆し、得られた太陽電池セルを、可撓性・接着性樹脂層により被覆し、形成された可撓性・接着性樹脂層の上表面に可撓性表面保護フィルムを接合して可撓性太陽電池セル構造体を製造した。
前記導電部防湿層は、ポリエステルフィルム層とアルミニウム蒸着層とから構成された防湿フィルムにより形成した。
前記可撓性・接着性樹脂層は下記組成を有する樹脂組成物を用いて形成した。
成分 質量部
エチレン−酢酸ビニル重合体樹脂(酢酸ビニル含有量26質量%) 100
有機過酸化物(1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5
−トリメチルシクロヘキサン) 2
カップリング剤化合物(メタクリロキシ系シランカップリング剤) 1
架橋助剤(トリアリルイソシアヌレート) 3
紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系) 0.3
前記可撓性表面保護フィルムとしては、厚さ50μmのトリフルオロクロロエチレン樹脂フィルム(水蒸気透過率;0.1g/m2/day)を用いた。得られた可撓性太陽電池セル構造体の下面に、その面積の150%の面積を有する、前記応力安定支持体層用ポリエチレンテレフタレートフィルムを、積層し下記接着剤を介して接着して、太陽電池積層体ユニットを製造した。このときの接着剤として下記組成を有するものを用いた。
成分 質量部
ポリエステル系樹脂 100
イソシアネート化合物(ヘキサメチレンジイソシアネート) 10
エポキシ樹脂(ウレタン変性エポキシ樹脂) 15
カップリング剤化合物(エポキシ系シランカップリング剤) 1
希釈溶剤(酢酸エチル) 150
【0037】
前記太陽電池積層体ユニット2個を、互いに80mmの間隔を開けて、幅1200mm、長さ2000mmの、上記アンカー層及びトップ層を有する可撓性膜材の中央部に配置し、下記架橋性接着剤用樹脂組成物層を介して積層し、接合一体化した。
ポリエステル系樹脂 100質量部
イソシアネート化合物(ヘキサメチレンジイソシアネート;
イソシアネート含量13%) 7質量部
エポキシ樹脂(ウレタン変性エポキシ樹脂) 1質量部
カップリング剤化合物(エポキシ系シランカップリング剤) 2質量部
紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系) 2.5質量部
希釈溶剤(酢酸エチル) 140質量部
【0038】
次に、可撓性太陽電池セル構造体の側面部及び上面周縁部、並びに前記太陽電池セル構造体の側面部下端を取り囲む前記応力安定支持体層の周囲部に、可撓性保護フィルムを積層、接合一体化した。
この可撓性保護フィルムとして、厚さ50μmのエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂フィルムを使用した。このエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂フィルムの裏面にコロナ放電処理を施した後に、架橋性接着剤層用樹脂組成物をコーティングして、乾燥後厚みが20μmの架橋性接着剤層を形成した。前記のようにして形成された積層体を120℃の温度、及び1Torrの真空下に2分間真空加熱後、5分間大気圧下で加圧加熱して、すべての層を接着一体化させて、太陽電池積層体ユニット−可撓性膜材複合構造物を製造し、これを前記試験に供した。
試験結果を表1〜4に示す。
【0039】
実施例2
実施例1と同様にして、太陽電池積層体ユニット−可撓性膜材複合構造物を製造し、試験に供した。但し、可撓性太陽電池セル構造体を、幅460mm、長さ1733mmの可撓性太陽電池モジュール(品名;アモルファス太陽電池モジュール、形式:FPV1045COM1、公称最大出力:45W、製造元;富士電機システムズ(株))の裏面に前記応力安定支持体層を接合して製造した。
試験結果を表1〜4に示す。
【0040】
実施例3
実施例1と同様にして、太陽電池積層体ユニット−可撓性膜材複合構造物を製造し、試験に供した。但し、前記応力安定支持体層として、ガラス繊維糸条(繊維太さ:DEヤーン、織糸太さ;67.5tex)を経糸、及び緯糸に使用した平織物(目付け:200g/m2、密度:経糸40本/25.4mm、緯糸30本/25.4mm)を使用し、前記ガラス繊維平織物にエポキシ樹脂溶液を含浸(付着固形量:200g/m2)し、硬化させたものを用いた。
試験結果を表1〜4に示す。
【0041】
実施例4
実施例1と同様にして、太陽電池積層体ユニット−可撓性膜材複合構造物を製造し、試験に供した。但し、前記応力安定支持体層として、厚さ10μmのアルミニウム箔を用いた。
試験結果を表1〜4に示す。
【0042】
実施例5
実施例1と同様にして、太陽電池積層体ユニットを有する可撓性膜材を製造し、試験に供した。但し、可撓性膜材用繊維布帛として、ポリエステル繊維糸条(繊維太さ:84dtex)を経糸、緯糸に使用した平織物(目付け:160g/m2、密度:経糸40本/25.4mm、緯糸50本/25.4mm)を使用した。また、前記繊維布帛上に、可撓・防水性樹脂フィルムを貼着した。この可撓・防水性樹脂フィルムとして、実施例1において使用したものと同一のポリ塩化ビニル樹脂組成物をカレンダー成形法により混練、圧延して得られた、厚さ0.15mmのフィルムを使用した。このフィルムを前記繊維布帛の表面上に165℃で2分間熱圧着し、可撓性膜材を形成した。このシート状基材層の目付けは500g/m2であった。
試験結果を表1〜4に示す。
【0043】
比較例1
実施例1と同様にして、太陽電池積層体ユニット−可撓性膜材複合構造物を製造し、試験に供した。但し、前記応力安定支持体層を省略し、その代わりに下記架橋性接着剤用樹脂組成物層を介して可撓性太陽電池セル構造体を直接可撓性膜材に積層し、接合一体化した。
ポリエステル系樹脂 100質量部
イソシアネート化合物(ヘキサメチレンジイソシアネート;
イソシアネート含量13%) 7質量部
エポキシ樹脂(ウレタン変性エポキシ樹脂) 1質量部
カップリング剤化合物(エポキシ系シランカップリング剤) 2質量部
紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系) 2.5質量部
希釈溶剤(酢酸エチル) 140質量部
試験結果を表1〜4に示す。
【0044】
比較例2
実施例1と同様にして、太陽電池積層体ユニット−可撓性膜材複合構造物を製造し、試験に供した。但し、前記応力安定支持体層として、厚さ50μmの、熱変形温度が60℃である高密度ポリエチレン樹脂フィルムを用いて形成した。
試験結果を表1〜4に示す。
【0045】
比較例3
実施例1と同様にして、太陽電池積層体ユニット−可撓性膜材複合構造物を製造し、試験に供した。但し、前記応力安定支持体層として、ガラス繊維糸条(繊維太さ:DEヤーン、織糸太さ;67.5tex)を経糸、緯糸に使用した平織物(目付け:200g/m2、密度:経糸40本/25.4mm、緯糸30本/25.4mm)を使用したが、前記ガラス繊維布帛に高分子成分を含浸、硬化することを省略した。
試験結果を表1〜4に示す。
【0046】
比較例4
実施例1と同様にして、太陽電池積層体ユニット−可撓性膜材複合構造物を製造し、試験に供した。但し、可撓性太陽電池セル構造体の側面部及び上面周縁部、並びに前記太陽電池セル構造体の側面部下端を取り囲む応力安定支持体層の周囲部に、可撓性保護フィルム層を形成することを省略した。
試験結果を表1〜4に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
表1〜4に示されているように、本発明に係る実施例1〜5の太陽電池積層体ユニット−可撓性膜材複合構造物は、引張り荷重に対して、実用上十分小さな伸び率を示し、従って耐荷重安定性、並びに形状・寸法安定性が高く、かつ発電出力保持性にもすぐれている。
【符号の説明】
【0052】
1 太陽電池セル
1a 可撓性・接着性樹脂層
2 可撓性太陽電池セル構造体
3 可撓性保護フィルム
4 可撓性膜材
5 太陽電池積層体ユニット
6 太陽電池積層体ユニット−可撓性膜材複合構造物
2a セル構造体2の下面部
2b セル構造体2の側面部
2c セル構造体2の上面周縁部
3a 保護フィルム3の、セル構造体2の側面部2bに接合する部分
3b 保護フィルム3の、セル構造体2の上面周縁部2cに接合する部分
3c 保護フィルム3の、セル構造体2の応力安定支持体層10に接合する部分
8a セル構造体2の下面部2aに接着された架橋性接着剤層
8b 保護フィルム3の、各部分3a,3b,3cに接着された架橋性接着剤層
9 表面保護フィルム層
10 応力安定支持体層
8c 応力安定支持体層10の下面部に接着された架橋性接着剤層又は弾性接着剤層
10a 応力安定支持体層10の、セル構造体2の側面部下端を囲む架橋性接着剤層8aの周囲部
11 表面保護層
12a 陽極集電電極
12b 陰極集電電極
13 導電部防湿層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性太陽電池セル構造体と、その裏面に架橋接着されたシート状物から形成された応力安定支持体層とを含む積層体であって、前記応力安定支持体層は、前記可撓性太陽電池セル構造体の面積の110〜330%の面積を有し、かつ、前記応力安定支持体層を形成するシート状物が、500〜5000N/3cmの範囲内の引張荷重を負荷したときのタテ方向の伸び率、及びヨコ方向の伸び率が、ともに3%以内にあることを特徴とする太陽電池積層体ユニット。
【請求項2】
前記可撓性太陽電池セル構造体が、表面保護層、陽極集電電極及び陰極集電電極、及び集電コネクタを有する可撓性太陽電池モジュールである、請求項1に記載の太陽電池積層体ユニット。
【請求項3】
前記応力安定支持体層が、耐熱性高分子シート、繊維布帛を芯材として含む高分子シート、及び金属製シートのいずれか1種以上からなる、請求項1または2に記載の太陽電池積層体ユニット。
【請求項4】
前記耐熱性高分子シートが、1471〜4903MPa(150〜500kgf/mm2)の引張弾性率(JIS K7113−1995)を有している、請求項3に記載の太陽電池積層体ユニット。
【請求項5】
前記繊維布帛を芯材として含む高分子シートが、39226.6〜392266MPa(4000〜40000kgf/mm2)の引張弾性率(JIS K7113−1995)を有している、請求項3に記載の太陽電池積層ユニット。
【請求項6】
前記金属製シートが、ステンレス、鉄、鉄合金、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、タングステン、及びタングステン合金、から選ばれた1種以上である、請求項3に記載の太陽電池積層体ユニット。
【請求項7】
前記可撓性太陽電池セル構造体の側面部、及び、前記可撓性太陽電池セル構造体の、前記側面部の上端に連続する上表面の周縁部、並びに前記可撓性太陽電池セル構造体の、前記側面部の下端を取り囲む前記応力安定支持体層上面の周囲部に、フッ素系樹脂を主成分として含む可撓性保護フィルムが架橋接着されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の太陽電池積層体ユニット。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の太陽電池積層体ユニットの1個以上が、可撓性膜材上に、架橋接着及び弾性接着のいずれか又は両方により装着されていることを特徴とする太陽電池積層体ユニット−可撓性膜材複合構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3(A)】
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【図3(B)】
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【図3(C)】
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【公開番号】特開2012−74555(P2012−74555A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218508(P2010−218508)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000239862)平岡織染株式会社 (81)
【Fターム(参考)】